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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240626BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20240626BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240626BHJP
   C09J 167/06 20060101ALI20240626BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J167/00
C09J11/06
C09J167/06
C09J11/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020133974
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2021028385
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2019147570
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雄大
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-209279(JP,A)
【文献】特開2018-197291(JP,A)
【文献】特開2015-131897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、ポリエステル系粘着ポリマー、硬化性樹脂、架橋剤及びシリコーン系化合物を含有し、
前記粘着テープの前記粘着剤層側をガラス板に貼り付けて250℃で10分間加熱した後の粘着力が0.05N/inch以上2N/inch以下である、粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層は、測定周波数1Hzで動的粘弾性測定を行ったときの250℃におけるせん断貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である、請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層は、測定周波数1Hzで動的粘弾性測定を行ったときの損失正接のピーク温度が-50℃以上-10℃以下である、請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層は、ポリエステル系粘着ポリマーを50重量%以上含有する、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層は、重合開始剤を含有する、請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記ポリエステル系粘着ポリマーは、ラジカル重合性の不飽和結合を有する、請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層中における前記硬化性樹脂の含有量は前記ポリエステル系粘着ポリマー100重量%に対して10重量%以上50重量%以下である、請求項5又は6記載の粘着テープ。
【請求項8】
記粘着剤層は、窒素条件下(流量50mL/分)において示差熱熱重量同時測定装置を用いて25℃から昇温速度10℃/分で測定した3%重量減少温度が250℃以上、かつ、5%重量減少温度が300℃以上である、請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温工程に供した際の剥離を抑制しながらも接着亢進も抑制できる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着テープは各種産業分野に用いられている。電気電子分野ではモジュール組み立て、モジュールの筐体への貼り合わせ等に両面粘着テープが用いられている。具体的には、例えば、画像表示装置又は入力装置を搭載した携帯電子機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末等)において、組み立てのために両面粘着テープが用いられている。より具体的には、例えば、携帯電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために両面粘着テープが用いられている。このような両面粘着テープは、例えば、額縁状等の形状に打ち抜かれ、表示画面の周辺に配置されるようにして用いられる(例えば、特許文献1、2)。また、車輌部品(例えば、車載用パネル)を車両本体に固定する用途にも両面粘着テープが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-242541号公報
【文献】特開2009-258274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着テープの用途によっては、粘着テープを被着体に貼りつけたまま高温の熱処理工程を行い、その後、粘着テープを剥離する必要がある。例えば、半導体チップ等の電子部品の製造工程において、粘着テープを介して半導体ウエハを支持板に接着して補強した状態で、250℃を超えるような高温の熱処理工程を行い、その後に半導体ウエハを支持板から剥離することが行われる。この際、耐熱性の高くない粘着テープを用いると、高温に耐えきれずに粘着テープが剥がれてしまい、部品を固定することができないという問題がある。高温による剥離を抑えるためには、粘着テープの粘着力を向上させることが有効であるが、粘着力を高めた場合、高温工程の熱によって接着亢進が起こってしまい、逆に粘着テープが剥離し難くなってしまうという問題が生じる。このように高温工程中の剥離の抑制と接着亢進の抑制はトレードオフの関係にあるため、両者を抑制することは非常に困難である。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、高温工程に供した際の剥離を抑制しながらも接着亢進も抑制できる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、窒素条件下(流量50mL/分)において示差熱熱重量同時測定装置を用いて25℃から昇温速度10℃/分で測定した3%重量減少温度が250℃以上、かつ、5%重量減少温度が300℃以上であり、前記粘着テープの前記粘着剤層側をガラス板に貼り付けて250℃で10分間加熱した後の粘着力が0.05N/inch以上2N/inch以下である、粘着テープである。
以下に第1の本発明を詳述する。
【0007】
本発明の粘着テープは、粘着層を有する粘着テープであって、上記粘着剤層は、窒素条件下(流量50mL/分)において示差熱熱重量同時測定装置を用いて25℃から昇温速度10℃/分で測定した3%重量減少温度が250℃以上、かつ、5%重量減少温度が300℃以上である。
粘着テープの3%重量減少温度及び5%重量減少温度が上記下限以上であることで、250℃を超えるような高温工程に用いられた場合であっても粘着テープが分解し難くなり、アウトガスの発生を抑えられることから、高温下での粘着テープの剥離を抑えることができる。上記3%重量減少温度は270℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。上記3%重量減少温度の上限は特に限定されず高いほどよいものであるが、例えば、400℃である。また、上記5%重量減少温度は、320℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。上記5%重量減少温度の上限は特に限定されず高いほどよいものであるが、例えば、400℃である。なお、上記3%重量減少温度及び5%重量減少温度は、粘着剤層を構成する粘着剤の種類によって調節することができる。具体的には、粘着剤のモノマーの種類や組成、ポリマーの種類や組成、硬化性樹脂の種類や量、架橋剤の種類や量、分子量分布等により調整することができる。
【0008】
ここで、3%重量減少温度及び5%重量減少温度とは、上記条件で25℃から粘着剤層を加熱したときに、粘着剤層の重量が3%又は5%減少したときの温度のことを指す。上記3%重量減少温度及び5%重量減少温度は、具体的には以下の方法で測定することができる。
粘着剤層を基材から剥離させ、粘着剤層のみからなる測定サンプルを得る。得られた測定サンプルの重量を測定し、測定雰囲気を窒素条件下(窒素フロー、流量50mL/分)として、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA;STA7200、日立ハイテクサイエンス社製又はその同等品)を用いて、昇温速度10℃/minで25℃から昇温し、重量減少量を測定する。加熱前の重量から重量減少率を算出し、重量減少率が3%及び5%となった時の温度を3%重量減少温度及び5%重量減少温度とする。なお、粘着剤層が光硬化性の場合、405nmの紫外線を粘着剤層への照射量が3000mJ/cmとなるように照射して粘着剤層を硬化させた後に、測定を行う。
【0009】
本発明の粘着テープは、粘着テープの上記粘着剤層側をガラス板に貼り付けて250℃で10分間加熱した後の粘着力(以下、加熱後粘着力という)が0.05N/inch以上2N/inch以下である。
加熱後粘着力が上記範囲であることで、250℃を超えるような高温工程に用いられた場合であっても工程終了後に粘着テープを容易に剥離することができる。上記加熱後粘着力は、0.1N/inch以上であることが好ましく、0.3N/inch以上であることがより好ましく、1.0N/inch以下であることが好ましく、0.5N/inch以下であることがより好ましい。上記加熱後粘着力は、粘着剤層を構成する粘着剤の種類やシリコーン系化合物や硬化性樹脂等の添加剤の種類、配合量によって調節することができる。なお、上記加熱後粘着力は具体的には、以下の方法で測定することができる。
【0010】
粘着テープを25mm幅にカットし、試験片を作製する。得られた試験片をガラス板(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2、又はその同等品)に粘着剤層が接するように接触させる。室温23℃、相対湿度50%にて、粘着テープ上を2kgのゴムローラーで1往復させて貼り付け、測定サンプルを得る。次いで、得られた測定サンプルを空気下で250℃に加熱したオーブンに入れ、10分間静置する。測定サンプルを取り出し放冷した後、JIS Z 0237に準拠して剥離速度300mm/minで180°剥離試験を行うことで加熱後粘着力を測定する。なお、粘着剤層が光硬化性の場合、測定サンプルを作成後に405nmの紫外線を粘着剤層への照射量が3000mJ/cmとなるように照射して粘着剤層を硬化させた後に、オーブンに入れ加熱処理を行う。
【0011】
上記粘着剤層は、測定周波数1Hzで動的粘弾性測定を行ったときの250℃におけるせん断貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることが好ましい。
粘着剤層の250℃におけるせん断貯蔵弾性率が上記範囲であることで、高温工程時の粘着テープの剥離をより抑えることができるとともに、接着亢進もより抑えることができる。上記粘着剤層の250℃におけるせん断貯蔵弾性率は、5.0×10Pa以上であることがより好ましく、1.0×10Pa以上であることが更に好ましく、5.0×10Pa以下であることがより好ましく、1.0×10Pa以下であることが更に好ましい。上記せん断貯蔵弾性率は、粘着剤層を構成する粘着剤の種類や硬化性樹脂等の添加剤の種類、配合量等によって調節することができる。なお、上記せん断貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200、レオメトリックス社製「ARES」又はその同等品)を用いて、動的粘弾性測定のせん断モード、測定周波数1Hz、速度5℃/minの条件で-50℃から300℃まで測定を行うことで得ることができる。
なお粘着剤層が光硬化性の場合、405nmの紫外線を粘着剤層への照射量が3000mJ/cmとなるように照射して粘着剤層を硬化させた後に、測定を行う。
【0012】
上記粘着剤層は、測定周波数1Hzで動的粘弾性測定を行ったときの損失正接のピーク温度が-50℃以上-10℃以下であることが好ましい。
粘着剤層の損失正接のピーク温度が上記範囲であることで、粘着剤層が適度な硬さとなり、粘着テープを剥離した際の糊残りを抑えることができる。上記損失正接のピーク温度は-40℃以上であることがより好ましく、-35℃以上であることが更に好ましく、-20℃以下であることがより好ましく、-30℃以下であることが更に好ましい。上記損失正接のピーク温度は、粘着剤層を構成する粘着剤の種類や硬化性樹脂等の添加剤の種類や配合量等によって調節することができる。なお、上記損失正接のピーク温度は、上記せん断貯蔵弾性率と同様の条件で動的粘弾性測定を行うことで得ることができる。
【0013】
上記粘着剤層を構成する粘着剤は上記3%重量減少温度、5%重量減少温度及び加熱後粘着力の範囲を満たしていれば特に限定されないが、これらの範囲を満たしやすいことと、耐熱性に優れアウトガスが発生しにくいことから、ポリエステル系粘着ポリマーを含有することが好ましい。
【0014】
上記ポリエステル系粘着ポリマーは特に限定されず、例えば、多価カルボン酸成分とポリオール成分とを重縮合させることで得ることができる。なお、上記ポリエステル系粘着ポリマーは単独で用いてもよく複数を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
上記多価カルボン酸成分としては、ジカルボン酸が好適に用いられる。
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p-フタル酸などが挙げられる。上記ポリエステル系粘着ポリマーは多価カルボン酸成分を1種のみ含んでもよく2種以上含んでもよい。
【0016】
上記ポリオール成分としては、ジオールが好適に用いられる。
ジオールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ビスフェノールAまたはビスフェノールSのエチレンオキシド付加体などが挙げられる。上記ポリエステル系粘着ポリマーはポリオール成分を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
【0017】
上記ポリエステル系粘着ポリマーの市販品としては、例えば、日本合成化学(株)製の“ニチゴーポリエスター(登録商標)”、東洋紡績(株)製の“バイロン(登録商標)”、東レ・ファインケミカル(株)製の“ケミット(登録商標)”、東亜合成(株)製の“アロンメルト(登録商標)”などが挙げられる。
【0018】
上記ポリエステル系粘着ポリマーは水酸基又はカルボキシ基を有することが好ましく、水酸基又はカルボキシ基をポリエステル系粘着ポリマーの末端に有することが好ましい。
上記水酸基又はカルボキシ基を有することで、せん断貯蔵弾性率、熱重量減少の調整が容易となる。
上記ポリエステル系粘着ポリマーが有する官能基は、せん断貯蔵弾性率及び加熱後粘着力の制御の観点で水酸基であることが好ましい。
【0019】
上記ポリエステル系粘着ポリマーは後述する硬化性樹脂に由来する構成単位、又は、ラジカル重合性の不飽和結合を有することが更に好ましい。
硬化性樹脂に由来する構成単位又はラジカル重合性の不飽和結合を有することで、光照射や加熱などにより、硬化し、架橋密度を上げることができる。これにより、粘着剤組成物からなる粘着剤層の弾性率がより向上して、接着亢進をより抑えることができる。また、弾性率が向上することで、糊残りを抑えることもできる。また、上記ポリエステル系粘着ポリマーと硬化性樹脂を併用すると、上記粘着ポリマー間で架橋構造を構築できるだけでなく、遊離の硬化性樹脂とも架橋構造を構築することができる。これにより、高温工程時の剥離をより抑制できるとともに接着亢進もより抑制できる。これは、硬化性樹脂を硬化させたときに、ポリエステル系粘着ポリマーの中に凝集した硬化性樹脂が点在する海島構造を形成するためと考えられる。
【0020】
上記ラジカル重合性の不飽和結合を有するポリエステル系粘着ポリマーを製造する方法としては、例えば、官能基を有する粘着ポリマーをあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させる方法等が挙げられる。また、上記硬化性樹脂に由来する構成単位を有するポリエステル系粘着ポリマーを製造する方法としては、例えば、後述する硬化性樹脂と粘着ポリマーとを架橋剤を介して架橋させる方法等が挙げられる。
【0021】
上記粘着剤層中における上記ポリエステル系粘着ポリマーの含有量は50重量%以上であることが好ましい。
ポリエステル系粘着ポリマーの含有量が上記範囲であることで、上記3%重量減少温度、5%重量減少温度及び加熱後粘着力をより上記範囲に調節しやすくすることができる。上記ポリエステル系粘着ポリマーの含有量は、60重量%以上であることがより好ましく、70%重量以上であることが更に好ましい。上記ポリエステル系粘着ポリマーの含有量の上限は特に限定されないが、90重量%以下であることが好ましい。上記ポリエステル系粘着ポリマーの含有量の上限が上記範囲であることで、250℃におけるせん断貯蔵弾性率を上記範囲に調整しやすくすることができる。その結果、高温工程時における粘着テープの剥離及び接着亢進を更に抑制することができる。
【0022】
上記ポリエステル系粘着ポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば、多価カルボン酸成分とポリオール成分を、触媒存在下、公知の方法により重縮合反応することによって製造することができる。なお、上記ポリエステル系粘着ポリマーは単独で用いてもよく複数を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記粘着剤層は、硬化性樹脂を含有することが好ましい。
粘着剤層が硬化性樹脂を含有すると、硬化性樹脂を硬化させることによって粘着剤層の弾性率を上げることができる。このため、粘着テープ貼付時は充分な粘着力を持ちながらも、貼付後粘着剤層を硬化することで、高温工程時の接着亢進を抑えて粘着テープをより剥離しやすくすることができる。また、上記ポリエステル系粘着ポリマーと硬化性樹脂を併用すると、高温工程時の剥離をより抑制できるとともに接着亢進もより抑制できる。これは、硬化性樹脂を硬化させたときに、ポリエステル系粘着ポリマーの中に凝集した硬化性樹脂が点在する海島構造を形成するためと考えられる。
【0024】
上記硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂は単独で用いてもよく複数を組み合わせて用いてもよい。なかでも粘着剤層の粘着力の調節が容易であることから、アクリル系樹脂であることが好ましく、多官能アクリル系樹脂であることがより好ましい。上記多官能アクリル系樹脂は特に限定されないが、粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有することが好ましい。上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられる。なかでも、上記3%重量減少温度、5%重量減少温度及び加熱後粘着力をより上記範囲に調節しやすいことから、水酸基であることが好ましい。上記多官能アクリル系樹脂としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロルプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0025】
上記硬化性樹脂は一部が後述する架橋剤を介して、上記ポリエステル系粘着ポリマーと架橋されていることが好ましい。すなわち、上記ポリエステル系粘着ポリマーは上記硬化性樹脂に由来する構成単位を有することが好ましく、上記硬化性樹脂に由来する構成単位が不飽和結合を有することが更に好ましい。
上記硬化性樹脂に由来する構成単位を有することで、光照射や加熱などにより、硬化し、架橋密度を上げることができる。これにより、粘着剤組成物からなる粘着剤層の弾性率がより向上して、接着亢進をより抑えることができる。また、弾性率が向上することで、糊残りを抑えることもできる。また、上記ポリエステル系粘着ポリマーと硬化性樹脂を併用すると、上記粘着ポリマー間で架橋構造を構築できるだけでなく、遊離の硬化性樹脂とも架橋構造を構築することができる。これにより、高温工程時の剥離をより抑制できるとともに接着亢進もより抑制できる。これは、硬化性樹脂を硬化させたときに、ポリエステル系粘着ポリマーの中に凝集した硬化性樹脂が点在する海島構造を形成するためと考えられる。
【0026】
上記粘着剤層中における上記硬化性樹脂の含有量は粘着ポリマー100重量%に対して、10重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
上記硬化性樹脂の含有量が上記範囲であることで、上記3%重量減少温度、5%重量減少温度及び加熱後粘着力をより上記範囲に調節しやすくすることができる。上記硬化性樹脂の含有量は15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることが更に好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることが更に好ましい。
なお上記硬化性樹脂の含有量は、上記粘着ポリマーと架橋したもの及び遊離のものを合わせた量を意味する。
【0027】
上記粘着剤層は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤を含有することで、上記硬化性樹脂の硬化を促進させることができる。上記重合開始剤は特に限定されず、光重合開始剤であっても熱重合開始剤であってもよいが、高温工程時の熱によって硬化が可能であり、硬化のための設備や工程が不要となることから、熱重合開始剤であることが好ましい。なお、上記重合開始剤が光重合開始剤である場合は、光硬化させるための設備や工程が必要になるものの、より均一で確実な硬化が可能となる。また、上記重合開始剤は単独で用いてもよく複数を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記熱重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエール、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0029】
上記光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0030】
上記粘着剤層は、架橋剤を含有することが好ましい。
架橋剤を含有することで、上記粘着剤層を構成する粘着ポリマー同士及び粘着ポリマーと硬化性樹脂を架橋することができるため、高温工程時の剥離を抑制しつつも接着亢進も抑制できるような粘着力に調節しやすくすることができる。上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤層を構成する粘着剤100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部であり、より好ましい下限が0.1重量部、より好ましい上限が3重量部である。
【0031】
上記粘着剤層は、シリコーン系化合物を含有することが好ましい。
粘着剤層がシリコーン系化合物を含有することで、粘着剤層と被着体との界面に離型剤としてブリードアウトする。このため、高温工程を行った場合であっても接着亢進を抑えることができ、処理終了後に粘着テープを容易かつ糊残りなく剥離することができる。また、シリコーン系化合物は耐熱性に優れるため、250℃を超える加熱処理を行う場合であっても粘着剤層の焦げ付き等を抑制し、糊残りを抑制することができる。上記シリコーン系化合物としては、シリコーンオイル、シリコンジアクリレート、シリコーン系グラフト共重合体等が挙げられる。なかでも、粘着剤層と被着体との界面に集まりやすく、接着亢進や糊残りをより抑制できることから、シリコーン系グラフト共重合体であることが好ましい。
【0032】
上記シリコーン系化合物は、上記粘着剤層を構成する粘着剤と架橋可能な官能基を有することが好ましい。
シリコーン系化合物が上記粘着剤層を構成する粘着ポリマー又は硬化性樹脂と架橋可能な官能基を有することで、シリコーン系化合物が粘着剤層を構成する粘着剤と化学反応して取り込まれることから、被着体にシリコーン化合物が付着することによる汚染が抑制される。上記官能基は粘着剤層を構成する粘着剤に含まれる官能基によって適宜決定される。
【0033】
上記シリコーン系グラフト共重合体は特に限定されないが、初期粘着力及び熱処理工程後の粘着力の制御を有利に行うことができる観点から、粘着剤層を構成する粘着剤と架橋可能な官能基を有するモノマーと、シリコーンマクロモノマーと、必要に応じてその他のモノマーとを含有する原料モノマー混合物を共重合させたものであることが好ましい。すなわち、上記シリコーン系グラフト共重合体は、粘着剤層を構成する粘着剤と架橋可能な官能基を有するモノマーに由来する構成単位とシリコーンマクロモノマーに由来する構成単位を有することが好ましい。
【0034】
上記シリコーンマクロモノマーとしては、例えば、アクリル系シリコーンマクロモノマー、スチレン系シリコーンマクロモノマー等が挙げられる。なかでも耐熱性及び耐候性に優れていることから、アクリル系シリコーンマクロモノマーが好ましく、下記構造式(1)、(2)に示すようなアクリル系シリコーンマクロモノマーであることがより好ましい。
【0035】
【化1】
【0036】
ここで、Rは(メタ)アクリロイル基含有官能基、例えば(メタ)アクリロイル基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、0以上の整数を表す。なお、X及びYの上限は、特に限定されないが、例えば500以下、特に200以下である。
【0037】
上記シリコーン系グラフト共重合体における、上記シリコーンマクロモノマーに由来する構成単位の含有量は、1重量%以上90重量%以下であることが好ましい。
シリコーンマクロモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲であることで、高温下での接着亢進をより抑えることができる。高温下での接着亢進を更に抑える観点から、上記シリコーンマクロモノマーに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は5重量%、更に好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は80重量%、更に好ましい上限は60重量%である。
【0038】
上記粘着剤層を構成する粘着剤と架橋可能な官能基は、上記粘着剤層を構成する粘着剤の有する官能基によって適宜選択されるが、例えば、粘着剤層を構成する粘着剤の有する官能基が水酸基である場合はイソシアネート基、カルボキシ基である場合はエポキシ基等が挙げられる。イソシアネート基含有モノマーとしては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
上記シリコーン系グラフト共重合体における上記粘着剤層を構成する粘着剤と架橋可能な官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。上記粘着剤層を構成する粘着剤と架橋可能な官能基を有するモノマーの配合量が上記範囲であることで、粘着剤層を構成する粘着剤とシリコーン系グラフト共重合体とが充分に架橋しながらも、粘着剤層を構成する粘着剤内でも充分な架橋構造を構築できるため、高温下での接着亢進をより抑えることができる。高温下での接着亢進を更に抑える観点から、上記粘着剤層を構成する粘着剤と架橋可能な官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は0.5重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上であることが更に好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
上記シリコーン系化合物は極性官能基を有することが好ましい。
シリコーン系化合物が極性官能基を有することで、得られる粘着テープの初期粘着力を向上させることができる。
上記極性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基等が挙げられる。なかでも、初期粘着力をより向上できることから、水酸基が好ましい。上記極性官能基は、上記原料モノマー混合物に上記極性官能基を有するモノマーを用いることで導入することができる。
上記水酸基を有するモノマーとしては、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記カルボキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、接着亢進を更に抑える点から水酸基を有するモノマーであることが好ましい。また、耐熱性、耐候性に優れることから、水酸基を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0041】
上記シリコーン系グラフト共重合体中における上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲であることで、得られる粘着テープの初期粘着力をより向上させることができるとともに、シリコーン系グラフト共重合体を被着体との界面に集まりやすくすることができる。初期粘着力をより向上させシリコーン系グラフト共重合体を被着体との界面により集まりやすくする観点から、上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は0.5重量%以上であることがより好ましく、1重量%以上であることが更に好ましく、2重量%以上であることが更により好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが更に好ましい。
【0042】
上記その他のモノマーとしては、例えば、2-エチルへキシルアクリレート、ブチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、適度な粘着力を付与できることから、2-エチルへキシルアクリレートが好ましい。
【0043】
上記シリコーン系グラフト共重合体は、重量平均分子量が40万以下であることが好ましい。
シリコーン系グラフト共重合体の分子量が上記範囲であると、シリコーン系グラフト共重合体が粘着剤層中を移動しやすくなり、被着体との界面により集まることができるため、接着亢進をより抑えることができる。接着亢進を更に抑える観点から上記重量平均分子量は、20万以下であることがより好ましく、10万以下であることが更に好ましい。上記重量平均分子量の上限は特に限定されないが、被着体への汚染を抑える観点から5000以上であることが好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、例えばGPC法によりポリスチレン標準で求めることができる。具体的には、例えば、測定機器としてWater社製「2690 Separations Module」、カラムとして昭和電工社製「GPC KF-806L」溶媒として酢酸エチルを用い、サンプル流量1mL/min、カラム温度40℃の条件で測定することができる。
【0044】
上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量は粘着ポリマー100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。
上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量が0.1重量部以上であることで、高温時における接着亢進をより抑えることができる。上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量が10重量部以下であることで、粘着剤層の白濁を抑えることができ、粘着テープ越しにアライメント等の光を用いた工程を行うことができる。また、シリコーン系グラフト共重合体は被着体の界面に集まりやすいため、従来のシリコーン化合物よりも少ない量で接着亢進を抑えることができる。高温時の接着亢進と白濁をより抑える観点から、上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量は1.5重量部以上であることがより好ましく、3重量部以上であることが更に好ましく、8重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることが更に好ましい。
【0045】
上記シリコーン系グラフト共重合体の製造方法は、特に限定されず、上記原料モノマー混合物を溶媒中でラジカル重合することによって得ることができる。上記ラジカル重合の重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記粘着剤層はフィラーを含有していてもよい。
粘着剤層がフィラーを含有することで耐熱性を向上させることができる。上記フィラーとしては例えば、シリカフィラー、アルミニウムフィラー、カルシウムフィラー、ホウ素フィラー、マグネシウムフィラー、ジルコニアフィラー等が挙げられる。なかでもシリカフィラーであることが好ましい。
【0047】
上記フィラーの平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.06μm、より好ましい下限が0.07μm、好ましい上限が2μm、より好ましい上限が1μmである。フィラーの平均粒子径が上記範囲であることで、粘着剤層を構成する粘着剤に対する分散性をより向上させることができる。
【0048】
上記フィラーの含有量は特に限定されないが、上記粘着剤層を構成する粘着剤100重量部に対する好ましい下限が2重量部、好ましい上限が20重量部である。
フィラーの含有量が2重量部以上であることで、より得られる粘着テープの耐熱性を向上させることができる。シリカフィラーの含有量が20重量部以下であることで、充分な粘着力を持った粘着テープとすることができる。粘着テープの耐熱性の更なる向上の観点から、上記粘着剤層を構成する粘着剤100重量部に対する上記シリカフィラーの含有量は、より好ましい下限が6重量部、更に好ましい下限が8重量部、より好ましい上限が18重量部、更に好ましい上限が15重量部、特に好ましい上限が13重量部である。
【0049】
上記粘着剤層は、気体発生剤を含有していてもよい。
上記粘着剤層が気体発生剤を含有することによって、工程終了後に刺激を与えて気体を発生させることで、被着体と粘着テープとの間に気体による隙間が生じることから、より容易に粘着テープを剥離することができる。
上記気体発生剤は特に限定されないが、高温工程に用いることができることから光によって気体を発生させる気体発生剤であることが好ましい。なかでも、加熱を伴う処理に対する耐性に優れることから、フェニル酢酸、ジフェニル酢酸、トリフェニル酢酸等のカルボン酸化合物又はその塩や、1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5,5-アゾビス-1H-テトラゾール等のテトラゾール化合物又はその塩等が好適である。このような気体発生剤は、紫外線等の光を照射することにより気体を発生する一方、260℃程度の高温下でも分解しない高い耐熱性を有する。
【0050】
上記粘着剤層は、光増感剤を含有してもよい。上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができる。
上記光増感剤としては、例えば2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物や、ジブチルアントラセン、ジプロピルアントラセン等のアントラセン系化合物、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。これらの光増感剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。なお、上記光増感剤は高温下で熱分解してアウトガスを発生させ、粘着剤層を発泡させるため、大量に用いると糊残りや意図せぬ剥離の原因となってしまうことがある。そのため、上記光増感剤はできる限り用いる量を少なくすることが好ましい。
【0051】
上記粘着剤層は、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0052】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、下限が3μm、上限が100μmであることが好ましい。上記粘着剤層の厚みが上記範囲であると充分な粘着力で被着体と接着することができる。同様の観点から、上記粘着剤層の厚さのより好ましい下限は、5μm、より好ましい上限は50μmである。
【0053】
本発明の粘着テープは、基材を有するサポートタイプであってもよく、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。
本発明の粘着テープがサポートタイプである場合、上記基材を構成する材料は特に限定されないが、耐熱性を有することが好ましい。耐熱性を持つ材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れることからポリイミドが好ましい。
【0054】
上記基材の厚さは特に限定されないが、好ましい下限が25μm、より好ましい下限が50μm、好ましい上限が250μm、より好ましい上限が125μmである。上記基材がこの範囲であることで取り扱い性に優れる粘着テープとすることができる。
【0055】
本発明の粘着テープの製造方法としては特に限定されず、例えば、以下のような方法が挙げられる。まず、上記ポリエステル系粘着ポリマーの溶液に、上記硬化性樹脂、上記方法で製造した上記シリコーン系グラフト共重合体、上記重合開始剤、上記架橋剤及び必要に応じて他の添加剤を加えて混合することで粘着剤溶液を得る。次いで、離型フィルムに粘着剤溶液を塗工、乾燥して粘着剤層を形成し、上記基材と貼り合わせて粘着テープを製造する。
【0056】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、250℃を超える高温下でも粘着テープが剥離し難い一方、接着亢進も抑えられることから、半導体デバイスの製造等の250℃を超えるような熱処理工程を有する物の製造において部材を保護する粘着テープとして好適に用いることができる。
【0057】
第2の本発明は、粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層はポリエステル系粘着ポリマー、硬化性樹脂及び架橋剤を含有し、前記粘着テープの前記粘着剤層側をガラス板に貼り付けて250℃で10分間加熱した後の粘着力が0.05N/inch以上2N/inch以下である、粘着テープである。
以下第2の本発明について説明する。
【0058】
上記ポリエステル系粘着ポリマー、上記硬化性樹脂、上記架橋剤、シリコーン系化合物等の上記粘着剤層に用いることができる添加剤及び上記粘着剤層以外の構成については第1の本発明と同様のものを用いることができる。
【0059】
上記粘着力は、第1の本発明の粘着力と同様の方法で測定することができる。
【0060】
第2の本発明は、第1の本発明と同様の方法で製造することができる。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、高温工程に供した際の剥離を抑制しながらも接着亢進も抑制できる粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0063】
以下の市販品を粘着テープの製造に用いた。
(ベースポリマー)
粘着剤層を構成する粘着剤のベースポリマーとして以下のポリマーを用いた。
ポリエステルA:“ニチゴーポリエスター”NP-110S50EO、日本合成化学社製
ポリエステルB:“ニチゴーポリエスター”LP-050S50TO、日本合成化学社製
(硬化性樹脂)
PE-3A:ライトアクリレートPE-3A、ペンタエリスリトールトリアクリレート、共栄社化学社製
TMPTA:ライトアクリレートTMP-A、トリメチロルプロパントリアクリレート、共栄社化学社製
4EG-A:ライトアクリレート4EG-A、PEG200#ジアクリレート、共栄社化学社製
(架橋剤)
イソシアネート系架橋剤:コロネートL45、日本ポリウレタン社製
(重合開始剤)
熱重合開始剤:パーブチルO、日油社製
光重合開始剤:エサキュアワン、日本シイベルヘグナー社製
(シリコーン系化合物)
メタアクリレート基を有するシリコーン:EBECRYL350、ダイセル・オルネクス社製
(気体発生剤)
テトラゾール系化合物:セルテトラBHT-PIPE、永江化成工業社製、ビステトラゾールピペラジン塩
(フィラー)
シリカフィラー:MT-10、トクヤマ社製
【0064】
(アクリルAの調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)79重量部、アクリル酸(AAc)1重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)20重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分60重量%、重量平均分子量60万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、官能基含有不飽和化合物として2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)8重量部を加えて反応させて粘着ポリマー(アクリルA)の酢酸エチル溶液を得た。
【0065】
(シリコーン系グラフト共重合体Aの合成)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意した。この反応器内に、2-エチルへキシルアクリレート89重量部、シリコーンマクロモノマー10重量部、アクリル酸1重量部、ラウリルメルカプタン0.60重量部、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、シリコーン系グラフト共重合体Aを得た。GPC測定によって重合平均分子量(Mw)を測定したところ、Mw:7.1万であった。なお、シリコーンマクロモノマーは以下のものを用いた。
シリコーンマクロモノマー:KF-2012、片末端メタクリロイル変性PDMS、信越化学社製
【0066】
(シリコーン系グラフト共重合体Bの合成)
2-エチルへキシルアクリレート39重量部、シリコーンマクロモノマー60重量部とした以外はシリコーン系グラフト共重合体Aの合成と同様にして、シリコーン系グラフト共重合体Bを得た。
GPC測定によって重合平均分子量(Mw)を測定したところ、Mw:5.6万であった。
【0067】
(実施例1~15、比較例1~4)
表1又は2に記載の種類及び量の原料を75重量部の酢酸エチルに溶かし、混合することで粘着剤溶液を得た。次いで、粘着剤溶液を表面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面上に乾燥皮膜の厚さが40μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱乾燥させて粘着剤層を得た。得られた粘着剤層と片面にコロナ処理を施した厚さ25μmのポリイミドフィルムのコロナ処理面とを貼り合わせて、粘着テープを得た。なお、ポリイミドフィルムは以下のものを用いた。
ポリイミドフィルム:ユーピレックス25-S、宇部興産社製
【0068】
<物性>
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて、以下の方法により物性の測定を行った。
結果を表1、2に示した。
【0069】
(1)重量減少温度の測定
粘着剤層を基材から剥離させ測定サンプルを得た。得られた測定サンプルの重量を測定し、窒素条件下(窒素フロー、流量50mL/分)において示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA;STA7200、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて昇温速度10℃/minで25℃から昇温し、重量減少量を測定した。加熱前の重量から重量減少率を算出し、重量減少率が3%及び5%となった時の温度を3%重量減少温度及び5%重量減少温度とした。
【0070】
(2)加熱後粘着力の測定
粘着テープを25mm幅にカットし、試験片を作製した。得られた試験片をガラス板(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に室温23℃、相対湿度50%下で貼り付け、粘着テープ上を2kgのゴムローラーで1往復させて、測定サンプルを得た。次いで、得られた測定サンプルを空気下で250℃に加熱したオーブンに入れ、10分間静置した。なお、実施例12については、オーブンに入れる前に高圧水銀UV照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着剤層への照射量が3000mJ/cmとなるように照射して粘着剤層を硬化させた。測定サンプルを取り出し放冷した後、JIS Z 0237に準拠して剥離速度300mm/minで180°剥離試験を行うことで加熱後粘着力を測定した。なお、実施例10については、放冷後、超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線を粘着テープ表面への照射強度が80mW/cmとなるよう照度を調節して1分間照射し、気体発生剤から気体を発生させた後に180°剥離試験を行った。
【0071】
(3)せん断貯蔵弾性率及び損失正接のピーク温度の測定
上記粘着テープの製造方法と同様の方法で6mm×10mmの粘着剤層のみからなる測定サンプルを作製した。得られた測定サンプルについて、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200)を用いて、動的粘弾性測定のせん断モード、角周波数1Hz、速度5℃/minの条件で-50℃から300℃まで動的粘弾性測定を行い、250℃におけるせん断貯蔵弾性率及び損失正接のピーク温度を得た。なお、実施例12については、測定前に高圧水銀UV照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着剤層への照射量が3000mJ/cmとなるように照射して粘着剤層を硬化させた。
【0072】
<評価>
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1、2に示した。
【0073】
(耐剥離性の評価)
上記加熱後粘着力の測定において加熱工程後の粘着テープを目視にて観察し、下記基準で耐剥離性を評価した。
◎:剥離なし
○:わずかに剥離あり(貼付面積の10%以下)
×:全面に剥離あり(貼付面積の10%より広範囲)
【0074】
(汚染性の評価)
加熱後粘着力の測定後のガラス板を目視にて観察し、下記基準で残渣を評価した。
◎:残渣なし
○:一部に残渣あり(貼付面積の10%以下)
×:全面に残渣あり(貼付面積の10%より広範囲)
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、高温工程に供した際の剥離を抑制しながらも接着亢進も抑制できる粘着テープを提供することができる。