(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240626BHJP
C09J 201/02 20060101ALI20240626BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240626BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240626BHJP
C09J 133/04 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/02
C09J11/08
C09J11/06
C09J133/04
(21)【出願番号】P 2020133975
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2019149880
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】下地頭所 彰
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雄大
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-073629(JP,A)
【文献】特開2018-162452(JP,A)
【文献】特開2008-001817(JP,A)
【文献】国際公開第2020/184310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着ポリマーと、前記粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有するシリコーン系グラフト共重合体と、重合開始剤とを含有する粘着剤層を有し、
前記粘着ポリマーは分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有し、前記シリコーン系グラフト共重合体は、粘着ポリマーと架橋可能な官能基を含有するモノマーに由来する構成単位を3重量%以上20重量%以下含有し、前記粘着剤層の加熱前におけるゲル分率が70重量%以下である、粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層は、熱重合開始剤を含
有する、請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着ポリマーと架橋可能な官能基が水酸基である、請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記シリコーン系グラフト共重合体は、シリコーンマクロモノマーに由来する構成単位を1重量%以上90重量%以下含有する、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記シリコーン系グラフト共重合体は、重量平均分子量が40万以下である、請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記シリコーン系グラフト共重合体の含有量が粘着ポリマー100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下である、請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層はイソシアネート系架橋剤を含有する、請求項1、2、3、4、5又は6記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体として金属を用いて高温工程を経た場合であっても容易に剥離することができ、被着体に糊残りが生じ難い粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子分野ではモジュール組み立て、モジュールの筐体への貼り合わせ等に両面粘着テープが用いられている。具体的には、例えば、画像表示装置又は入力装置を搭載した携帯電子機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末等)において、組み立てのために両面粘着テープが用いられている。より具体的には、例えば、携帯電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために両面粘着テープが用いられている。このような両面粘着テープは、例えば、額縁状等の形状に打ち抜かれ、表示画面の周辺に配置されるようにして用いられる(例えば、特許文献1、2)。また、車輌部品(例えば、車載用パネル)を車両本体に固定する用途にも両面粘着テープが用いられている。
【0003】
一方、粘着テープの用途によっては、粘着テープを被着体に貼りつけたまま高温の熱処理工程を行い、その後、粘着テープを剥離する必要がある。このような粘着テープに用いられる接着剤組成物には、加工工程中にウエハや半導体チップ等の被着体を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後にはウエハや半導体チップ等の被着体を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離を実現した接着剤組成物として、特許文献3には紫外線等の光を照射することにより硬化して粘着力が低下する光硬化型粘着剤を用いた粘着テープが開示されている。粘着剤として光硬化型粘着剤を用いることで、加工工程中には確実に被着体を固定できるとともに、紫外線等を照射することにより容易に剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-242541号公報
【文献】特開2009-258274号公報
【文献】特開平5-32946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属のような被着体は、粘着テープを貼り付けたまま加熱処理等の高温処理が行われる場合、接着亢進が他の材料よりも大きく起こるため、従来の粘着テープでは容易に剥離することが難しかったり、糊残りが生じやすかったりすることがある。また、金属のような被着体は光を通さないため、金属同士を貼り合わせる金属間の固定に従来の光硬化型の粘着テープを用いると粘着テープを充分に硬化させることができず、剥離の際に糊残りが生じてしまうこともある。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、被着体として金属を用いて高温工程を経た場合であっても容易に剥離することができ、被着体に糊残りが生じ難い粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、粘着ポリマーと、前記粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有するシリコーン系グラフト共重合体と、重合開始剤とを含有する粘着剤層を有し、前記シリコーン系グラフト共重合体は、粘着ポリマーと架橋可能な官能基を含有するモノマーに由来する構成単位を3重量%以上20重量%以下含有し、前記粘着剤層の加熱前におけるゲル分率が70重量%以下である、粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の粘着テープは、粘着ポリマーと、前記粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有するシリコーン系グラフト共重合体と、重合開始剤とを含有し、前記粘着剤層の加熱前におけるゲル分率が70重量%以下である粘着剤層を有する。
粘着剤層にシリコーン系グラフト共重合体を含有させることで、粘着テープを高温の熱処理工程に供したときに、粘着剤層と被着体との界面にシリコーン系グラフト共重合体が集まるため、接着亢進を防止することができる。その結果、粘着テープを容易に剥離することができ、被着体に糊残りを生じ難くすることができる。また、シリコーン系グラフト共重合体が粘着剤層の主成分となる粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有していることで、被着体との界面に集まったシリコーン系グラフト共重合体が粘着ポリマーと架橋剤等を介して固定された場合、接着亢進の抑制効果を高めることができる。また、シリコーン系グラフト共重合体が粘着ポリマーに固定されることにより、シリコーン系グラフト共重合体による被着体の汚染を抑えることができる。また、重合開始剤を含有することで、硬化前は粘着剤層が被着体に良好に密着することが可能となるため、貼り付け時に高い粘着力を発現できる。そして、粘着ポリマーを硬化させることによって粘着剤層の弾性率を上昇させることができるため、熱処理工程の前や熱処理工程の際に粘着剤層を硬化させることで、高温下での接着亢進を抑えることができる。更に、粘着剤の弾性率が上昇することにより、被着体への糊残りも抑えることができる。
【0009】
上記粘着ポリマーは特に限定されないが、耐熱性、耐候性に優れ、幅広い被着体に適用可能であることからアクリル系粘着剤であることが好ましい。上記粘着ポリマーの構造は特に限定されず、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体、グラフト共重合体でもよい。
【0010】
上記粘着ポリマーは、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有することが好ましい。
上記粘着ポリマーが分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有することで、他の架橋性官能基を用いるよりも架橋点の極性が下がり、硬化時に架橋密度を上げることができることから、粘着ポリマーの弾性率がより向上して接着亢進をより抑えることができる。また、ラジカル重合性の不飽和結合による架橋により弾性率が向上することで、糊残りを抑えることもできる。上記ラジカル重合性の不飽和結合は、例えば、上記粘着ポリマーを合成する際に、ラジカル重合性の不飽和結合を有するモノマーを用いたり、上記粘着ポリマーにラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物を反応させたりすることで導入することができる。
【0011】
上記粘着ポリマーにラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物を反応させて導入する方法としては、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマーをあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物と反応させることにより得ることができる。以下、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマーを官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーといい、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物を官能基含有不飽和化合物という。
なお、本明細書中において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0012】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数が通常2~18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと、官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとをラジカル重合等の常法により共重合させることにより得られるものである。これは、常温で粘着性を有するポリマーである一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様である。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万~200万程度である。
【0013】
上記官能基含有モノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
上記共重合可能な他の改質用モノマーは、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0014】
上記ラジカル重合の重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられる。また、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられる。また、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられる。更に、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0016】
上記粘着剤層は、多官能オリゴマー又はモノマーを含有してもよい。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2~20個のものである。このようなより好ましい多官能オリゴマー又はモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
上記重合開始剤としては、光重合開始剤や熱重合開始剤等が挙げられる。なかでも、熱処理工程の熱によって粘着剤層を硬化させることができるため別途粘着剤層を硬化させる工程を必要としないこと、また、光を通さない基材や支持体を用いた場合や、金属同士を貼り合わせる金属間の固定に用いた場合であっても硬化が可能であることから、熱重合開始剤であることが好ましい。
【0018】
上記光重合開始剤は、例えば、250~800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような光重合開始剤は、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
上記熱重合開始剤は、例えば、熱により分解し、重合反応を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられる。上記熱重合開始剤は10時間半減期温度が30℃以上200℃以下であることが好ましい。具体的には例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエール、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0020】
上記粘着剤層は、多官能オリゴマー又はモノマーとして、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することが好ましい。ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、光硬化性、熱硬化性がより向上する。
上記ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーは、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2~20個のものである。
【0021】
上記ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらのラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記シリコーン系グラフト共重合体は上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基とシリコーン基を含有するグラフト鎖を有していれば特に限定されない。なかでも、初期粘着力及び熱処理工程後の粘着力の制御を有利に行うことができる観点から、粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有するモノマーと、シリコーンマクロモノマーと、必要に応じてその他のモノマーとを含有する原料モノマー混合物を共重合させたものであることが好ましい。
【0023】
上記シリコーンマクロモノマーとしては、例えば、アクリル系シリコーンマクロモノマー、スチレン系シリコーンマクロモノマー等が挙げられる。なかでも耐熱性及び耐候性に優れていることから、アクリル系シリコーンマクロモノマーが好ましく、下記構造式(1)、(2)に示すようなアクリル系シリコーンマクロモノマーであることがより好ましい。
【0024】
【0025】
ここで、Rは(メタ)アクリロイル基含有官能基、例えば(メタ)アクリロイル基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、0以上の整数を表す。なお、X及びYの上限は、特に限定されないが、例えば500以下、特に200以下である。
【0026】
上記シリコーン系グラフト共重合体は、上記シリコーンマクロモノマーに由来する構成単位を1重量%以上90重量%以下含有することが好ましい。上記シリコーンマクロモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲であることで、高温下での接着亢進を抑えることができるとともに糊残りをより生じ難くすることができる。接着亢進と糊残りを更に抑える観点から、シリコーン系グラフト共重合体中における上記シリコーンマクロモノマーに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は5重量%、更に好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は80重量%、更に好ましい上限は60重量%である。
【0027】
上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基は、上記粘着ポリマーの有する官能基によって適宜選択されるが、例えば、カルボキシ基、ラジカル重合性の不飽和結合、水酸基、アミド基、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、被着体が金属である場合に特に接着亢進を抑えて糊残りを生じ難くすることができることから、上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基は、水酸基であることが好ましい。
上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基は、例えば、上記原料モノマー混合物に上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有するモノマーを用いることで導入できる。
【0028】
上記シリコーン系グラフト共重合体は、上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有するモノマーに由来する構成単位を3重量%以上20重量%以下含有する。
上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲であることで、粘着ポリマーとシリコーン系グラフト共重合体とが充分に架橋しながらも、粘着ポリマー内でも充分な架橋構造を構築できるため、高温下での接着亢進と糊残りを抑えることができる。高温下での接着亢進と糊残りをより抑える観点から、上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は5重量%以上であることが好ましく、8重量%以上であることがより好ましく、18重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましい。
【0029】
上記シリコーン系化合物は極性官能基を有することが好ましい。
シリコーン系化合物が極性官能基を有することで、得られる粘着テープの初期粘着力を向上させることができる。
上記極性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基等が挙げられる。なかでも、初期粘着力をより向上できることから、水酸基が好ましい。上記極性官能基は、上記原料モノマー混合物に上記極性官能基を有するモノマーを用いることで導入することができる。
上記水酸基を有するモノマーとしては、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記カルボキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、接着亢進を更に抑える点から水酸基を有するモノマーであることが好ましい。また、耐熱性、耐候性に優れることから、水酸基を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0030】
上記シリコーン系グラフト共重合体中における上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲であることで、得られる粘着テープの初期粘着力をより向上させることができるとともに、シリコーン系グラフト共重合体を被着体との界面に集まりやすくすることができる。初期粘着力をより向上させシリコーン系グラフト共重合体を被着体との界面により集まりやすくする観点から、上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は0.5重量%以上であることがより好ましく、1重量%以上であることが更に好ましく、2重量%以上であることが更により好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが更に好ましい。
【0031】
上記その他のモノマーとしては、例えば、2-エチルへキシルアクリレート、ブチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、適度な粘着力を付与できることから、2-エチルへキシルアクリレートが好ましい。
【0032】
上記シリコーン系グラフト共重合体は、重量平均分子量が40万以下であることが好ましい。
シリコーン系グラフト共重合体の分子量が上記範囲であると、シリコーン系グラフト共重合体が粘着剤層中を移動しやすくなり、被着体との界面により集まることができるため、接着亢進をより抑えることができる。接着亢進を更に抑える観点から上記重量平均分子量は、20万以下であることがより好ましく、10万以下であることが更に好ましい。上記重量平均分子量の上限は特に限定されないが、被着体への汚染を抑える観点から5000以上であることが好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、例えばGPC法によりポリスチレン標準で求めることができる。具体的には、例えば、測定機器としてWater社製「2690 Separations Module」、カラムとして昭和電工社製「GPC KF-806L」、溶媒として酢酸エチルを用い、サンプル流量1mL/min、カラム温度40℃の条件で測定することができる。
【0033】
上記シリコーン系グラフト共重合体の製造方法は、特に限定されず、上記原料モノマー混合物を溶媒中でラジカル重合することによって得ることができる。上記ラジカル重合の重合方法としては、上記粘着ポリマーと同様の方法を用いることができる。
【0034】
上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量は粘着ポリマー100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。
上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量が0.1重量部以上であることで、高温時における接着亢進をより抑えることができる。上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量が10重量部以下であることで、粘着剤層の白濁を抑えることができ、粘着テープ越しのアライメント等の光を用いた工程を行うことができる。また、シリコーン系グラフト共重合体は被着体の界面に集まりやすいため、従来のシリコーン化合物よりも少ない量で接着亢進を抑えることができる。高温時の接着亢進と白濁をより抑える観点から、上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量は1重量部以上であることがより好ましく、1.5重量部以上であることが更に好ましく、3重量部以上であることが更により好ましく、8重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることが更に好ましい。
【0035】
上記粘着剤層の加熱前におけるゲル分率は70重量%以下である。本明細書において加熱前とは、粘着剤層を構成する粘着剤の硬化前を意味し、粘着剤層を構成する粘着剤が熱硬化型以外の粘着剤である場合は、加熱及び硬化処理を行う前の状態を意味する。
上記ゲル分率であることで、適度な初期粘着力を発揮することができる。初期粘着力を更に高める観点から、上記粘着剤層の加熱前のゲル分率は60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることが更に好ましい。上記粘着剤層の加熱前のゲル分率の下限は特に限定されないが、取り扱い性の観点から20重量%以上であることが好ましい。上記粘着剤層の加熱前のゲル分率は、上記粘着ポリマーの種類及び架橋剤の種類や量によって調節することができる。なお、上記粘着剤層の加熱前のゲル分率は具体的には以下の方法で測定することができる。
まず、粘着剤層から粘着剤を0.1gこそぎ取ってトルエン50ml中に浸漬し、振とう機で温度23℃、200rpmの条件で24時間振とうする。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、トルエンとトルエンを吸収し膨潤した粘着剤を分離する。分離後の粘着剤を110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=100×(W1-W2)/W0 (1)
(W0:初期粘着剤重量、W1:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤重量、W2:金属メッシュの初期重量)
【0036】
上記粘着剤層を200℃で1時間加熱した後のゲル分率(以下、加熱後のゲル分率という)は85重量%以上であることが好ましい。
粘着剤層を200℃で1時間加熱した後のゲル分率が85重量%以上であることで、加熱及び硬化により弾性率が上昇して粘着剤層が固くなることから、糊残りを生じ難くすることができるとともに、粘着テープを容易に剥離しやすくすることができる。ここで、200℃で1時間加熱とは、200℃下のオーブンに粘着テープを入れて1時間静置することを指す。また、粘着剤層が熱硬化型以外の硬化型粘着剤である場合は、硬化を行ってから上記加熱を行う。例えば、粘着剤層が光硬化型の硬化型粘着剤である場合は、オーブンに入れる前に高圧水銀UV照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着剤層への照射量が3000mJ/cm2となるように照射して粘着剤層を硬化させる。
糊残りを更に抑える観点から、上記粘着剤層の加熱後のゲル分率は90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることが更に好ましい。上記粘着剤層の加熱後のゲル分率の上限は特に限定されないが、意図せぬ剥離を抑える観点から99重量%以下であることが好ましい。上記粘着剤層の加熱後のゲル分率は、上記粘着ポリマーの種類や上記重合開始剤の種類及び量等によって調節することができる。なお、上記粘着剤層の加熱後のゲル分率は、測定前に200℃で1時間の加熱工程を行う以外は上記粘着剤層の加熱前のゲル分率と同様の方法で測定することができる。
【0037】
上記粘着剤層は、加熱前における着滴5秒後の対水接触角(以下、単に対水接触角という)が118°以上であることが好ましい。
粘着剤層の加熱前の対水接触角が118°以上であることで、粘着力が高くなりすぎず、高温工程を経た場合であっても接着亢進を抑えることができる。ここで加熱前とは、粘着剤層を構成する粘着剤の硬化前を意味し、粘着剤層を構成する粘着剤が熱硬化型以外の粘着剤である場合は、加熱及び硬化処理を行う前の状態を意味する。加熱を行った際の接着亢進を更に抑える観点から、加熱前の上記対水接触角は、119°以上であることがより好ましく、120°以上であることが更に好ましい。加熱前の上記対水接触角の上限は特に限定されないが、初期粘着力とのバランスの観点から126°以下であることが好ましい。上記対水接触角は、上記シリコーン系グラフト共重合体の種類及び含有量によって調節することができる。なお、上記対水接触角は、JIS R3257に準拠した方法で測定することができ、具体的には以下の方法で測定することができる。
粘着テープを25mm幅に裁断し、測定サンプルを得る。JIS.R.3257:1999に準じ、接触角測定装置(例えば、協和界面科学社製、DMo-701等)を用いて粘着剤層の対水接触角を測定する。具体的には、室温25℃、湿度40%の環境下で水平に置いた粘着テープの粘着剤層表面へ水滴2μL(超純水)を滴下する。滴下してから5秒後の純水と粘着剤層表面とのなす角度を対水接触角とする。測定はそれぞれ5回行い、それらを平均し測定値とする。なお、対水接触角は、画像解析ソフト(例えば、協和界面科学社製、FAMAS等)を用いた真円フィッティング法により、画像データを解析することで算出することができる。
【0038】
上記粘着剤層は架橋剤を含有することが好ましい。
架橋剤を含有することで加熱前におけるゲル分率を上記範囲内に調整することが容易となる。また上記粘着ポリマーと、上記粘着ポリマーと架橋可能な官能基を有するシリコーン系グラフト共重合体とが架橋剤を介して架橋されることで、シリコーン系グラフト共重合体による被着体への汚染をより抑えることができる。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。なかでも、粘着剤層の加熱前におけるゲル分率を調整しやすいこと、より粘着剤成分の凝集力が高まることからイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0039】
上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、より適度な加熱前ゲル分率とする観点から、上記粘着剤層を構成する粘着剤100重量部に対する上記粘着剤層を構成する粘着剤100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が1重量部であり、より好ましい下限が0.1重量部、より好ましい上限が0.5重量部である。
【0040】
上記粘着剤層は、必要に応じて、刺激により気体を発生する気体発生剤や、無機充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0041】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、下限が3μm、上限が100μmであることが好ましい。上記粘着剤層の厚みが上記範囲であると充分な粘着力で支持体と接着することができる。同様の観点から、上記粘着剤層の厚さのより好ましい下限は、5μm、より好ましい上限は50μmである。
【0042】
本発明の粘着テープは、基材を有するサポートタイプであってもよく、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。
本発明の粘着テープがサポートタイプである場合、上記基材を構成する材料は特に限定されないが、耐熱性を有することが好ましい。耐熱性を持つ材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れることからポリイミドが好ましい。
【0043】
上記基材の厚さは特に限定されないが、好ましい下限が25μm、より好ましい下限が50μm、好ましい上限が250μm、より好ましい上限が125μmである。上記基材がこの範囲であることで取り扱い性に優れる粘着テープとすることができる。
【0044】
本発明の粘着テープは、粘着テープを鏡面SUSに貼り付けて200℃で1時間加熱し、剥離した後の上記粘着剤層の着滴5秒後の対水接触角(以下、加熱後の対水接触角という)が90°以上110°以下であることが好ましい。鏡面SUSに貼り付けて加熱した後の対水接触角が上記範囲であることで、糊残りをより生じ難くして粘着テープをより容易に剥離しやすくすることができる。なお、粘着剤層が熱硬化型以外の硬化型粘着剤である場合は、硬化を行ってから上記加熱を行う。例えば、粘着剤層が光硬化型の硬化型粘着剤である場合は、オーブンに入れる前に高圧水銀UV照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着剤層への照射量が3000mJ/cm2となるように照射して粘着剤層を硬化させる。また、200℃で1時間加熱とは、200℃下のオーブンに粘着テープを入れて1時間静置することを指す。
更に糊残りを生じ難くして、粘着テープを剥離しやすくする観点から、上記粘着剤層の加熱後の対水接触角は94°以上であることがより好ましく、97°以上であることが更に好ましく、107°以下であることがより好ましく、104°以下であることが更に好ましい。上記粘着剤層の加熱後の対水接触角は、上記粘着ポリマー、上記シリコーン系グラフト共重合体、上記架橋剤の種類や量によって調節することができる。なお、上記粘着剤層の加熱後の対水接触角は、以下の方法で測定することができる。
25mm幅の粘着テープの粘着剤層を鏡面SUS(SUS304、ユタカパネルサービス社製)と対向するように重ね、2kgの圧着ゴムローラーを用いて10mm/secの速度で貼り付けることで測定サンプルを得る。次いで、200℃まで加熱したオーブンに測定サンプルを入れ1時間静置する。その後、測定サンプルを取り出し常温まで放冷し、粘着テープを剥離する。剥離後の粘着テープの粘着剤層について、上記加熱前の上記対水接触角と同様の方法で着滴5秒後の対水接触角を測定する。
【0045】
本発明の粘着テープの製造方法としては特に限定されず、例えば、以下のような方法が挙げられる。まず、上記方法で製造した粘着ポリマーの溶液に上記方法で製造した上記シリコーン系グラフト共重合体及び架橋剤等の必要に応じて他の添加剤を加えて混合することで粘着剤溶液を得る。次いで、離型フィルムに粘着剤溶液を塗工、乾燥して粘着剤層を形成し、上記基材と貼り合わせて粘着テープを製造する。
【0046】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、金属のような接着亢進を起こしやすい被着体に用いて高温工程を経た場合であっても接着亢進が起き難いことから、200℃を超えるような熱処理工程を有する物(例えば半導体デバイス)の製造において、金属材料を保護する粘着テープとして好適に用いることができる。また、上記粘着剤層が熱重合開始剤を含有する場合は、光を通さない被着体、支持体及び基材であっても硬化が可能であることから、金属材料間の固定や保護に高い効果を発揮する。
【0047】
本発明者らは、本発明の粘着テープを用いることで接着亢進が起き難くなる要因について検討を進めた結果、加熱前の粘着剤層の対水接触角や加熱前後のゲル分率が影響を与えていることを見出した。そして更に検討を進めた結果、加熱前の粘着剤層の対水接触角や加熱前後のゲル分率が特定の範囲となっていることで本発明の粘着テープの効果が発揮されていることを見出した。
即ち、上記粘着剤層の加熱前における着滴5秒後の対水接触角が118°以上であることで、粘着力が高くなりすぎず、高温工程を経た場合であっても接着亢進を抑えることができる。加熱を行った際の接着亢進を更に抑える観点から、加熱前の上記対水接触角は、119°以上であることが好ましく、120°以上であることがより好ましい。加熱前の上記対水接触角の上限は特に限定されないが、初期粘着力とのバランスの観点から126°以下であることが好ましい。ここで加熱前とは、粘着剤層を構成する粘着剤の硬化前を意味し、粘着剤層を構成する粘着剤が熱硬化型以外の粘着剤である場合は、加熱及び硬化処理を行う前の状態を意味する。上記対水接触角は、上記シリコーン系グラフト共重合体の種類及び含有量によって調節することができる。なお、上記対水接触角は、JIS R3257に準拠した方法で測定することができ、具体的には以下の方法で測定することができる。
粘着テープを25mm幅に裁断し、測定サンプルを得る。JIS.R.3257:1999に準じ、接触角測定装置(例えば、協和界面科学社製、DMo-701等)を用いて粘着剤層の対水接触角を測定する。具体的には、室温25℃、湿度40%の環境下で水平に置いた粘着テープの粘着剤層表面へ水滴2μL(超純水)を滴下する。滴下してから5秒後の純水と粘着剤層表面とのなす角度を対水接触角とする。測定はそれぞれ5回行い、それらを平均し測定値とする。なお、対水接触角は、画像解析ソフト(例えば、協和界面科学社製、FAMAS等)を用いた真円フィッティング法により、画像データを解析することで算出することができる。
【0048】
また、上記粘着剤層の加熱前におけるゲル分率が70重量%以下であることで、適度な初期粘着力を発揮することができる。初期粘着力を更に高める観点から、上記粘着剤層の加熱前のゲル分率は60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることが更に好ましい。上記粘着剤層の加熱前のゲル分率の下限は特に限定されないが、取り扱い性の観点から20重量%以上であることが好ましい。上記粘着剤層の加熱前のゲル分率は、上記粘着ポリマーの種類によって調節することができる。また、加熱前とは、粘着剤層を構成する粘着剤の硬化前を意味し、粘着剤層を構成する粘着剤が熱硬化型以外の粘着剤である場合は、加熱及び硬化処理を行う前の状態を意味する。なお、上記粘着剤層の加熱前のゲル分率は具体的には以下の方法で測定することができる。
まず、粘着剤層から粘着剤を0.1gこそぎ取ってトルエン50ml中に浸漬し、振とう機で温度23℃、200rpmの条件で24時間振とうする。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、トルエンとトルエンを吸収し膨潤した粘着剤を分離する。分離後の粘着剤を110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=100×(W1-W2)/W0 (1)
(W0:初期粘着剤重量、W1:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤重量、W2:金属メッシュの初期重量)
【0049】
また、上記粘着剤層を200℃で1時間加熱した後のゲル分率が85重量%以上であることで、弾性率が上昇して粘着剤層が固くなることから、糊残りを生じ難くすることができるとともに、粘着テープを容易に剥離しやすくすることができる。ここで、200℃で1時間加熱とは、200℃下のオーブンに粘着テープを入れて1時間静置することを指す。また、粘着剤層が熱硬化型以外の硬化型粘着剤である場合は、硬化を行ってから上記加熱を行う。例えば、粘着剤層を構成するが光硬化型の硬化型粘着剤である場合は、オーブンに入れる前に高圧水銀UV照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着剤層への照射量が3000mJ/cm2となるように照射して粘着剤層を硬化させる。糊残りを更に抑える観点から、上記粘着剤層の加熱後のゲル分率は90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましい。上記粘着剤層の加熱後のゲル分率の上限は特に限定されないが、意図せぬ剥離を抑える観点から99重量%以下であることが好ましい。上記粘着剤層の加熱後のゲル分率は、上記粘着ポリマーの種類や上記重合開始剤の種類及び量等によって調節することができる。なお、上記粘着剤層の加熱後のゲル分率は、測定前に200℃で1時間の加熱工程を行う以外は上記粘着剤層の加熱前のゲル分率と同様の方法で測定することができる。
【0050】
更に、粘着テープを鏡面SUSに貼り付けて200℃で1時間加熱し、剥離した後の上記粘着剤層の着滴5秒後の対水接触角が90°以上110°以下であることで、糊残りをより生じ難くして粘着テープをより容易に剥離しやすくすることができる。また、粘着剤層が熱硬化型以外の硬化型粘着剤である場合は、硬化を行ってから上記加熱を行う。例えば、粘着剤層が光硬化型の硬化型粘着剤である場合は、オーブンに入れる前に高圧水銀UV照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着剤層への照射量が3000mJ/cm2となるように照射して粘着剤層を硬化させる。
ここで、200℃で1時間加熱とは、200℃下のオーブンに粘着テープを入れて1時間静置することを指す。更に糊残りを生じ難くして、粘着テープを剥離しやすくする観点から、上記粘着剤層の加熱後の対水接触角は94°以上であることがより好ましく、97°以上であることが更に好ましく、107°以下であることがより好ましく、104°以下であることが更に好ましい。上記粘着剤層の加熱後の対水接触角は、上記粘着ポリマー、上記シリコーン系グラフト共重合体、上記架橋剤の種類や量によって調節することができる。なお、上記粘着剤層の加熱後の対水接触角は、以下の方法で測定することができる。
25mm幅の粘着テープの粘着剤層を鏡面SUS(SUS304、ユタカパネルサービス社製)と対向するように重ね、2kgの圧着ゴムローラーを用いて10mm/secの速度で貼り付けることで測定サンプルを得る。次いで、200℃まで加熱したオーブンに測定サンプルを入れ1時間静置する。その後、測定サンプルを取り出し常温まで放冷し、粘着テープを剥離する。剥離後の粘着テープの粘着剤層について、上記加熱前の上記対水接触角と同様の方法で着滴5秒後の対水接触角を測定する。
【0051】
このような、粘着剤層を有する粘着テープであって、シリコーン系グラフト共重合体を含有し、粘着剤層の加熱前における着滴5秒後の対水接触角が118°以上であり、かつ、前記粘着剤層の加熱前におけるゲル分率が70重量%以下であり、かつ、前記粘着剤層を200℃で1時間加熱した後のゲル分率が85重量%以上である、粘着テープもまた、本発明の1つである。
なお、上記粘着剤層は、上述した粘着ポリマー、シリコーン系グラフト共重合体、重合開始剤及びその他の添加剤と同様のものを用いることができ、上記粘着剤層以外の構成についても、上述したものと同様のものを用いることができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、被着体として金属を用いて高温工程を経た場合であっても容易に剥離することができ、被着体に糊残りが生じ難い粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0054】
(粘着ポリマー1の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)79重量部、アクリル酸(AAc)1重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)20重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分50重量%、重量平均分子量60万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、官能基含有不飽和化合物として2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)8重量部を加えて反応させて粘着ポリマー1の酢酸エチル溶液を得た。
【0055】
次いで、得られた粘着ポリマー1含有溶液をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍に希釈して得られた希釈液を、ポア径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで濾過した。その後、得られた濾液をゲルパミエーションクロマトグラフに供給してGPC測定を行った。粘着ポリマー1のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。その結果、Mw:60万Da、Mw/Mn:5.3であった。なお、測定機器と測定条件は以下の通りとした。
ゲルパミエーションクロマトグラフ:e2695 Separations Module(Waters社製)
検出器:示差屈折計(2414、Waters社製)
カラム:GPC KF-806L(昭和電工社製)
標準試料:STANDRAD SM-105(昭和電工社製)
サンプル流量:1mL/min
カラム温度:40℃
【0056】
(粘着ポリマー2の調製)
MOIを反応させなかった以外は粘着ポリマー1と同様にして粘着ポリマー2の酢酸溶液を得た。粘着ポリマー1と同様にして粘着ポリマー2のMw及びMw/Mnを求めたところ、Mw:60万Da、Mw/Mn:5.3だった。
【0057】
【0058】
(シリコーン系グラフト共重合体Aの調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意した。この反応器内に、2-エチルへキシルアクリレート37重量部、シリコーンマクロモノマー60重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート3重量部、ラウリルメルカプタン0.60重量部、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、シリコーン系グラフト共重合体Aを得た。上記粘着ポリマーと同様にしてMw及びMw/Mnを測定したところ、Mw:5.3万、Mw/Mn:1.8であった。なお、シリコーンマクロモノマーは以下のものを用いた。
シリコーンマクロモノマー:KF-2012、片末端メタクリロイル変性PDMS、信越化学社製
【0059】
(シリコーン系グラフト共重合体B~D、F、Gの調製)
モノマー組成を表1の通りとした以外はシリコーン系グラフト共重合体Aの調製と同様にして、シリコーン系グラフト共重合体B~D、F、Gを得て、Mw及びMw/Mnを測定した。結果を表2に示した。
【0060】
(シリコーン系グラフト共重合体Eの調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、2-エチルヘキシルアクリレート30重量部、シリコーンマクロモノマー60重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート10重量部、ラウリルメルカプタン0.60重量部、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、官能基含有アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。その後、得られた官能基含有アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート5重量部を加えて反応させることで、シリコーン系グラフト共重合体E含有溶液を得た。得られたシリコーン系グラフト共重合体Eについて粘着ポリマー1と同様の方法でMw及びMw/Mnを測定した。結果を表2に示した。
【0061】
【0062】
(実施例1)
得られた粘着ポリマー1の酢酸エチル溶液の固形分100重量部に対して離型剤としてシリコーン系グラフト共重合体A5.0重量部、重合開始剤として熱重合開始剤1.0重量部、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤0.1重量部を加えて粘着剤組成物溶液を得た。次いで、粘着剤組成物溶液を表面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面上に乾燥皮膜の厚さが40μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱乾燥させて粘着剤層を得た。得られた粘着剤層と片面にコロナ処理を施した厚さ25μmの透明なポリイミドフィルムのコロナ処理面とを貼り合わせて、粘着テープを得た。なお、熱重合開始剤及び架橋剤としては以下のものを用いた。
熱重合開始剤:パーブチルO、日油社製
イソシアネート系架橋剤:コロネートL45、日本ポリウレタン社製
ポリイミドフィルム:ユーピレックス25-S、宇部興産社製
【0063】
(実施例2~12、比較例1~7)
用いる離型剤の種類及び配合量と重合開始剤の種類及び配合量と、架橋剤の種類及び配合量を表3、4の通りとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。なお、シリコーンジアクリレート、シリコーンオイル、光重合開始剤及びエポキシ系架橋剤としては以下のものを用いた。
シリコーンジアクリレート:EBECRYL350、ダイセル・オルネクス社製
シリコーンオイル:KF-96-10cs、信越化学社製
光重合開始剤:エサキュアワン、日本シイベルヘグナー社製
エポキシ系架橋剤:テトラッドC、三菱ガス化学社製
【0064】
<物性>
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて、以下の測定を行った。結果を表3、4に示した。
【0065】
(対水接触角の測定)
粘着テープを25mm幅に裁断し、測定サンプルを得た。JIS.R.3257:1999に準じ、接触角測定装置(協和界面科学社製、DMo-701)を用いて粘着剤層の加熱前における着滴5秒後の対水接触角(加熱前接触角)を測定した。具体的には、室温25℃、湿度40%の環境下で水平に置いた粘着テープの粘着剤層表面へ水滴2μL(超純水)を滴下した。滴下してから5秒後の純水と粘着剤層表面とのなす角度を対水接触角とした。測定はそれぞれ5回行い、それらを平均し測定値とした。なお、対水接触角は、画像解析ソフト(協和界面科学社製、FAMAS)を用いた真円フィッティング法により、画像データを解析することで算出した。
【0066】
続いて、25mm幅の粘着テープの粘着剤層を鏡面SUS(SUS304、ユタカパネルサービス社製)と対向するように重ね、2kgの圧着ゴムローラーを用いて10mm/secの速度で貼り付けることで測定サンプルを得た。次いで、200℃まで加熱したオーブンに測定サンプルを入れ1時間静置した。その後、測定サンプルを取り出し常温まで放冷し、粘着テープを剥離した。剥離後の粘着テープの粘着剤層について、上記加熱前の上記対水接触角と同様の方法で対水接触角を測定することで、粘着剤層の加熱後における着滴5秒後の対水接触角(加熱後接触角)を測定した。なお、実施例10については、オーブンに入れる前に高圧水銀UV照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着テープ側から粘着剤層への照射量が3000mJ/cm2となるように照射して粘着剤層を硬化させた。
【0067】
(ゲル分率の測定)
粘着剤層から粘着剤を0.1gこそぎ取ってトルエン50ml中に浸漬し、振とう機で温度23℃、200rpmの条件で24時間振とうした。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、トルエンとトルエンを吸収し膨潤した粘着剤を分離した。分離後の粘着剤を110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤の重量を測定し、下記式(1)を用いて粘着剤層の加熱前のゲル分率(加熱前ゲル分率)を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W1-W2)/W0 (1)
(W0:初期粘着剤重量、W1:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤重量、W2:金属メッシュの初期重量)
【0068】
別の粘着テープを200度に加熱したオーブンに入れ1時間静置した。その後、常温で放冷し、同様の方法でゲル分率を測定することで、粘着剤層の加熱後のゲル分率(加熱後ゲル分率)を算出した。なお、実施例10については、オーブンに入れる前に高圧水銀UV照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着剤層への照射量が3000mJ/cm2となるように照射して粘着剤層を硬化させた。
【0069】
<評価>
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表3、4に示した。
【0070】
(粘着力の評価)
粘着テープを25mm幅に切り出して試験片を得た。得られた試験片の粘着剤層をガラス板(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)上に載せた。次いで、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラーを一往復させることにより、試験片とガラス板とを貼り合わせた。その後、23℃で1時間静置して試験サンプルを作製した。静置後の試験サンプルについて、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、初期粘着力を測定した。
次いで、別の試験サンプルを200℃に加熱したオーブンに入れ1時間静置した。その後常温で放冷し、同様の引張試験を行うことで加熱後粘着力を測定した。得られた初期粘着力及び加熱後粘着力について下記基準で評価した。なお、実施例10については、オーブンに入れる前に高圧水銀UV照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着テープ側から粘着剤層への照射量が3000mJ/cm2となるように照射して粘着剤層を硬化させた。
初期粘着力
「○」:1N/25mm以上
「×」:1N/25mm未満
加熱後粘着力
「◎」:0.5N/25mm以下
「○」:0.5N/25mmより大きく2N/25mm以下
「×」:0.1N/25mmより大きい又は全面に糊残り
【0071】
(汚染性の評価)
上記加熱後における着滴5秒後の対水接触角の測定において、粘着テープを剥離した後の鏡面SUSを目視にて観察し、糊残りがなかった場合を「◎」、僅かに糊残りがあった場合を「○」、全面に糊残りがあった場合を「×」として汚染性を評価した。
【0072】
【0073】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、被着体として金属を用いて高温工程を経た場合であっても容易に剥離することができ、被着体に糊残りが生じ難い粘着テープを提供することができる。