(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】舵システム
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240626BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240626BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20240626BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20240626BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D101:00
B62D113:00
B62D119:00
(21)【出願番号】P 2020143535
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】小林 来実
(72)【発明者】
【氏名】富澤 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 尚志
(72)【発明者】
【氏名】坂井 利光
(72)【発明者】
【氏名】山下 正治
(72)【発明者】
【氏名】柴田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋介
(72)【発明者】
【氏名】高山 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊博
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐志
(72)【発明者】
【氏名】安部 健一
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 雄吾
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-136735(JP,A)
【文献】特開2019-004682(JP,A)
【文献】特開2004-338563(JP,A)
【文献】特開2018-130007(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033884(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
B62D 101/00
B62D 113/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舵機構(10、20)を駆動する第1モータ部(13A、22A)及び前記第1モータ部を制御する第1制御部(40A、45A)を備える第1系統と、前記舵機構を駆動する第2モータ部(13B、22B)及び前記第2モータ部を制御する第2制御部(40B、45B)を備える第2系統と、を備えるステア・バイ・ワイヤ型舵システム(100)であって、
前記第1制御部及び前記第2制御部は、前記第1モータ部及び第2モータ部を協調させるように制御する協調制御を行い、
前記協調制御を行うことができない場合に、前記第1制御部による前記第1モータ部の制御、及び前記第2制御部による前記第2モータ部の制御のうち、一方の制御を続行し、他方の制御を停止
し、
前記第1制御部は、前記協調制御を行うことができない場合に、前記第1モータ部の制御を続行し、
前記第2制御部は、前記協調制御を行うことができず、且つ前記第1制御部による前記第1モータ部の制御が続行可能であると判定したことを条件として、前記第2モータ部の制御を停止する、舵システム。
【請求項2】
前記第1制御部と前記第2制御部とは、通信により前記協調制御に必要な情報を互いに送受信し、
前記協調制御を行うことができない場合とは、前記第1制御部と前記第2制御部とが通信を行うことができない場合である、請求項
1に記載の舵システム。
【請求項3】
前記第1モータ部に供給される電圧を検出する電圧検出部(41、46)を備え、
前記第2制御部は、前記電圧検出部により検出された電圧が閾値を超えたことを条件として、前記第1制御部による前記第1モータ部の制御が続行可能であると判定する、請求項
1又は
2に記載の舵システム。
【請求項4】
前記第1制御部をGNDに接続する配線の断線を検出する断線検出部(42、47)を備え、
前記第2制御部は、前記断線検出部により前記配線が断線していないと検出されたことをさらに条件として、前記第1制御部による前記第1モータ部の制御が続行可能であると判定する、請求項
3に記載の舵システム。
【請求項5】
舵機構(10、20)を駆動する第1モータ部(13A、22A)及び前記第1モータ部を制御する第1制御部(40A、45A)を備える第1系統と、前記舵機構を駆動する第2モータ部(13B、22B)及び前記第2モータ部を制御する第2制御部(40B、45B)を備える第2系統と、を備えるステア・バイ・ワイヤ型舵システム(100)であって、
前記第1制御部及び前記第2制御部は、前記第1モータ部及び第2モータ部を協調させるように制御する協調制御を行い、
前記協調制御を行うことができない場合に、前記第1制御部による前記第1モータ部の制御、及び前記第2制御部による前記第2モータ部の制御のうち、一方の制御を続行し、他方の制御を停止し、
前記第1制御部と前記第2制御部とは、通信により前記協調制御に必要な情報を互いに送受信し、
前記第1制御部は、前記第1制御部と前記第2制御部とが通信を行うことができ、且つ前記協調制御を行うことができない場合に、前記第1モータ部の制御を続行し、前記第2制御部による前記第2モータ部の制御を停止させる
、舵システム。
【請求項6】
前記舵機構としての反力機構(10)と転舵機構(20)とを含み、
前記第1系統は、前記反力機構を駆動する前記第1モータ部としての第1反力モータ部(13A)及び前記第1反力モータ部を制御する前記第1制御部しての第1反力制御部(40A)と、前記転舵機構を駆動する前記第1モータ部としての第1転舵モータ部(22A)及び前記第1転舵モータ部を制御する前記第1制御部しての第1転舵制御部(45A)と、を含み、
前記第2系統は、前記反力機構を駆動する前記第2モータ部としての第2反力モータ部(13B)及び前記第2反力モータ部を制御する前記第2制御部しての第2反力制御部(40B)と、前記転舵機構を駆動する前記第2モータ部としての第2転舵モータ部(22B)及び前記第2転舵モータ部を制御する前記第2制御部として第2転舵制御部(45B)と、を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の舵システム。
【請求項7】
舵機構(10、20)を駆動する第1モータ部(13A、22A)及び前記第1モータ部を制御する第1制御部(40A、45A)を備える第1系統と、前記舵機構を駆動する第2モータ部(13B、22B)及び前記第2モータ部を制御する第2制御部(40B、45B)を備える第2系統と、を備えるステア・バイ・ワイヤ型舵システム(100)であって、
前記第1制御部及び前記第2制御部は、前記第1モータ部及び第2モータ部を協調させるように制御する協調制御を行い、
前記協調制御を行うことができない場合に、前記第1制御部による前記第1モータ部の制御、及び前記第2制御部による前記第2モータ部の制御のうち、一方の制御を続行し、他方の制御を停止し、
前記舵機構としての反力機構(10)と転舵機構(20)とを含み、
前記第1系統は、前記反力機構を駆動する前記第1モータ部としての第1反力モータ部(13A)及び前記第1反力モータ部を制御する前記第1制御部しての第1反力制御部(40A)と、前記転舵機構を駆動する前記第1モータ部としての第1転舵モータ部(22A)及び前記第1転舵モータ部を制御する前記第1制御部しての第1転舵制御部(45A)と、を含み、
前記第2系統は、前記反力機構を駆動する前記第2モータ部としての第2反力モータ部(13B)及び前記第2反力モータ部を制御する前記第2制御部しての第2反力制御部(40B)と、前記転舵機構を駆動する前記第2モータ部としての第2転舵モータ部(22B)及び前記第2転舵モータ部を制御する前記第2制御部として第2転舵制御部(45B)と、を含む、舵システム。
【請求項8】
前記第1反力制御部と前記第2反力制御部とは、通信により前記協調制御に必要な情報を互いに送受信し、
前記第1転舵制御部と前記第2転舵制御部とは、通信により前記協調制御に必要な情報を互いに送受信し、
前記第1反力制御部及び前記第2反力制御部は、前記第1反力制御部と前記第2反力制御部とが通信を行うことができない場合に、前記第1転舵制御部及び前記第2転舵制御部を介して通信を行い、
前記第1転舵制御部及び前記第2転舵制御部は、前記第1転舵制御部と前記第2転舵制御部とが通信を行うことができない場合に、前記第1反力制御部及び前記第2反力制御部を介して通信を行う、請求項
6又は7に記載の舵システム。
【請求項9】
前記第1反力制御部及び前記第2反力制御部は、前記第1反力制御部と前記第2反力制御部とが通信を行うことができない場合に、前記第1転舵制御部及び前記第2転舵制御部による前記協調制御を停止させ、
前記第1転舵制御部及び前記第2転舵制御部は、前記第1転舵制御部と前記第2転舵制御部とが通信を行うことができない場合に、前記第1反力制御部及び前記第2反力制御部による前記協調制御を停止させる、請求項
8に記載の舵システム。
【請求項10】
前記第1制御部は前記第1モータ部の制御を続行可能であり、且つ前記第2制御部は前記第2モータ部の制御を続行可能であり、且つ前記協調制御を行うことができない場合に、前記第1制御部による前記第1モータ部の制御、及び前記第2制御部による前記第2モータ部の制御のうち、一方の制御を続行し、他方の制御を停止する、請求項
1~9のいずれか1項に記載の舵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数系統のモータ部及び制御部を備える舵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1操舵反力モータに対する反力制御を行う第1反力ECU、第2操舵反力モータに対する反力制御を行う第2反力ECU、第1転舵モータに対する転舵制御を行う第1転舵ECU、及び第2転舵モータに対する転舵制御を行う第2転舵ECUを備える舵システムがある(特許文献1参照)。特許文献1に記載の舵システムでは、2つの操舵反力モータの1つが失陥(正しく動作しないか、全く動作しない)すると正常な1つの操舵反力モータにより制御を続行し、2つの転舵モータの1つが失陥すると正常な1つの転舵モータにより制御を続行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の舵システムでは、反力制御において2つの操舵反力モータ(モータ部)に対する協調制御を行い、転舵制御において2つの転舵モータ(モータ部)に対する協調制御を行っている。モータが失陥していなくても協調制御を行うことができなくなった場合に、モータにより駆動される舵機構の振動や、舵機構のロックが発生するおそれがあることに、本願発明者は着目した。この点、特許文献1に記載の舵システムは、2つのモータのうち1つが失陥した場合に制御を続行することができるものの、協調制御を行うことができなくなった場合に、舵機構の駆動を適切に続行することができないおそれがある。
【0005】
なお、2つのモータを備える舵システムに限らず、2重巻線モータの2つの巻線(モータ部)に対して協調制御を行う場合も、上記実情は概ね共通している。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、複数系統のモータ部及び制御部を備える舵システムにおいて、協調制御を行うことができなくなった場合に、舵機構の駆動を適切に続行することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、
舵機構(10、20)を駆動する第1モータ部(13A、22A)及び前記第1モータ部を制御する第1制御部(40A、45A)を備える第1系統と、前記舵機構を駆動する第2モータ部(13B、22B)及び前記第2モータ部を制御する第2制御部(40B、45B)を備える第2系統と、を備えるステア・バイ・ワイヤ型舵システム(100)であって、
前記第1制御部及び前記第2制御部は、前記第1モータ部及び第2モータ部を協調させるように制御する協調制御を行い、
前記協調制御を行うことができない場合に、前記第1制御部による前記第1モータ部の制御、及び前記第2制御部による前記第2モータ部の制御のうち、一方の制御を続行し、他方の制御を停止する。
【0008】
上記構成によれば、舵システムは、第1系統と第2系統とを備えている。第1系統は、舵機構を駆動する第1モータ部、及び第1モータ部を制御する第1制御部を備えている。第2系統は、舵機構を駆動する第2モータ部、及び第2モータ部を制御する第2制御部を備えている。第1制御部及び第2制御部は、第1モータ部及び第2モータ部を協調させるように制御する協調制御を行う。このため、舵機構の振動や、舵機構のロックが発生することを抑制することができる。
【0009】
ここで、協調制御を行うことができない場合に、第1制御部による第1モータ部の制御、及び第2制御部による第2モータ部の制御を続行すると、舵機構の振動や、舵機構のロックが発生するおそれがある。この点、協調制御を行うことができない場合に、第1制御部による第1モータ部の制御、及び第2制御部による第2モータ部の制御のうち、一方の制御を続行し、他方の制御を停止する。このため、舵機構の振動や、舵機構のロックが発生することを抑制することができる。したがって、協調制御を行うことができなくなった場合に、舵機構の駆動を適切に続行することができる。
【0010】
第1制御部は第1モータ部の制御を続行可能であり、且つ第2制御部は第2モータ部の制御を続行可能であっても、協調制御を行うことができない場合がある。この場合に、第1制御部による第1モータ部の制御、及び第2制御部による第2モータ部の制御を続行すると、舵機構の振動や、舵機構のロックが発生するおそれがある。
【0011】
この点、第2の手段では、前記第1制御部は前記第1モータ部の制御を続行可能であり、且つ前記第2制御部は前記第2モータ部の制御を続行可能であり、且つ前記協調制御を行うことができない場合に、前記第1制御部による前記第1モータ部の制御、及び前記第2制御部による前記第2モータ部の制御のうち、一方の制御を続行し、他方の制御を停止する。したがって、舵機構の振動や、舵機構のロックが発生するおそれがある場合に、舵機構の振動や、舵機構のロックが発生することを抑制することができる。
【0012】
第3の手段では、前記第1制御部は、前記協調制御を行うことができない場合に、前記第1モータ部の制御を続行し、前記第2制御部は、前記協調制御を行うことができず、且つ前記第1制御部による前記第1モータ部の制御が続行可能であると判定したことを条件として、前記第2モータ部の制御を停止する。
【0013】
上記構成によれば、第1制御部は、協調制御を行うことができない場合に、第1モータ部の制御を続行する。このため、協調制御を行うことができない場合であっても、舵機構の駆動を続行することができる。第2制御部は、協調制御を行うことができず、且つ第1制御部による第1モータ部の制御が続行可能であると判定したことを条件として、第2モータ部の制御を停止する。すなわち、第2制御部は、協調制御を行うことができなくなっても、第1制御部による第1モータ部の制御が続行可能であると判定していない場合は、第2モータ部の制御を停止しない。したがって、協調制御を行うことができなくなった場合に、第1制御部による第1モータ部の制御、及び第2制御部による第2モータ部の制御のいずれも行われなくなることを抑制することができる。
【0014】
第4の手段では、前記第1制御部と前記第2制御部とは、通信により前記協調制御に必要な情報を互いに送受信し、前記協調制御を行うことができない場合とは、前記第1制御部と前記第2制御部とが通信を行うことができない場合である。
【0015】
上記構成によれば、第1制御部と第2制御部とは、通信により協調制御に必要な情報を互いに送受信する。第1制御部と第2制御部とが通信を行うことができない場合は、協調制御を行うことができなくなるとともに、第1制御部と第2制御部とは相手が制御を続行しているか否か分からなくなる。この点、第1制御部と第2制御部とが通信を行うことができない場合に、舵機構の振動等を抑制しつつ舵機構の駆動を続行することができる。
【0016】
第5の手段では、前記第1モータ部に供給される電圧を検出する電圧検出部(41、46)を備え、前記第2制御部は、前記電圧検出部により検出された電圧が閾値を超えたことを条件として、前記第1制御部による前記第1モータ部の制御が続行可能であると判定する。
【0017】
上記構成によれば、電圧検出部は、第1モータ部に供給される電圧を検出する。第2制御部は、電圧検出部により検出された電圧が閾値を超えたことを条件として、第1制御部による第1モータ部の制御が続行可能であると判定する。したがって、第1制御部と第2制御部とが通信を行うことができない場合であっても、第1制御部による第1モータ部の制御が続行可能であるか否か判定することができる。
【0018】
第6の手段では、前記第1制御部をGNDに接続する配線の断線を検出する断線検出部(42、47)を備え、前記第2制御部は、前記断線検出部により前記配線が断線していないと検出されたことをさらに条件として、前記第1制御部による前記第1モータ部の制御が続行可能であると判定する。
【0019】
上記構成によれば、断線検出部は、第1制御部をGNDに接続する配線の断線を検出する。第2制御部は、断線検出部により配線が断線していないと検出されたことをさらに条件として、第1制御部による第1モータ部の制御が続行可能であると判定する。したがって、第1制御部と第2制御部とが通信を行うことができない場合であっても、第1制御部による第1モータ部の制御が続行可能であるか否かをより慎重に判定することができる。
【0020】
第7の手段では、前記第1制御部と前記第2制御部とは、通信により前記協調制御に必要な情報を互いに送受信し、前記第1制御部は、前記第1制御部と前記第2制御部とが通信を行うことができ、且つ前記協調制御を行うことができない場合に、前記第1モータ部の制御を続行し、前記第2制御部による前記第2モータ部の制御を停止させる。
【0021】
協調制御を行うことができない場合でも、第1制御部と第2制御部とが通信を行うことができる場合がある。
【0022】
上記構成によれば、第1制御部は、第1制御部と第2制御部とが通信を行うことができ、且つ協調制御を行うことができない場合に、第1モータ部の制御を続行し、第2制御部による第2モータ部の制御を停止させる。こうした構成によっても、舵機構の振動等が発生するおそれがある場合に、舵機構の振動等を抑制しつつ舵機構の駆動を続行することができる。
【0023】
第8の手段では、前記舵機構としての反力機構(10)と転舵機構(20)とを含み、前記第1系統は、前記反力機構を駆動する前記第1モータ部としての第1反力モータ部(13A)及び前記第1反力モータ部を制御する前記第1制御部しての第1反力制御部(40A)と、前記転舵機構を駆動する前記第1モータ部としての第1転舵モータ部(22A)及び前記第1転舵モータ部を制御する前記第1制御部しての第1転舵制御部(45A)と、を含み、前記第2系統は、前記反力機構を駆動する前記第2モータ部としての第2反力モータ部(13B)及び前記第2反力モータ部を制御する前記第2制御部しての第2反力制御部(40B)と、前記転舵機構を駆動する前記第2モータ部としての第2転舵モータ部(22B)及び前記第2転舵モータ部を制御する前記第2制御部として第2転舵制御部(45B)と、を含む。
【0024】
上記構成によれば、舵機構としての反力機構と転舵機構とを含む舵システムにおいて、反力機構と転舵機構とでそれぞれ第1~第7の手段の作用効果を奏することきができる。
【0025】
第9の手段では、前記第1反力制御部と前記第2反力制御部とは、通信により前記協調制御に必要な情報を互いに送受信し、前記第1転舵制御部と前記第2転舵制御部とは、通信により前記協調制御に必要な情報を互いに送受信し、前記第1反力制御部及び前記第2反力制御部は、前記第1反力制御部と前記第2反力制御部とが通信を行うことができない場合に、前記第1転舵制御部及び前記第2転舵制御部を介して通信を行い、前記第1転舵制御部及び前記第2転舵制御部は、前記第1転舵制御部と前記第2転舵制御部とが通信を行うことができない場合に、前記第1反力制御部及び前記第2反力制御部を介して通信を行う。
【0026】
上記構成によれば、第1反力制御部と第2反力制御部とは、通信により協調制御に必要な情報を互いに送受信し、第1反力モータ部及び第2反力モータ部に対して協調制御を行うことができる。また、第1転舵制御部と第2転舵制御部とは、通信により協調制御に必要な情報を互いに送受信し、第1転舵モータ部及び第2転舵モータ部に対して協調制御を行うことができる。
【0027】
第1反力制御部及び第2反力制御部は、第1反力制御部と第2反力制御部とが通信を行うことができない場合に、第1転舵制御部及び第2転舵制御部を介して通信を行う。このため、第1反力制御部及び第2反力制御部で、通信を行うことができない原因を送受信したり、自身とは別の系統が制御を続行可能であることを確認したり、第1転舵制御部及び第2転舵制御部を介して第1反力モータ部及び第2反力モータ部に対して協調制御を行ったりすることができる。また、第1転舵制御部及び第2転舵制御部においても、同様の制御を行うこときができる。
【0028】
第10の手段では、前記第1反力制御部及び前記第2反力制御部は、前記第1反力制御部と前記第2反力制御部とが通信を行うことができない場合に、前記第1転舵制御部及び前記第2転舵制御部による前記協調制御を停止させ、前記第1転舵制御部及び前記第2転舵制御部は、前記第1転舵制御部と前記第2転舵制御部とが通信を行うことができない場合に、前記第1反力制御部及び前記第2反力制御部による前記協調制御を停止させる。こうした構成によれば、第1反力制御部及び第2反力制御部による協調制御、及び第1転舵制御部及び第2転舵制御部による協調制御の一方ができない場合は、他方の協調制御も停止させることができる。したがって、協調制御が複雑になること抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、車両に搭載したステアリングシステムに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1に示すように、ステアリングシステム100(舵システム)は、いわゆるステア・バイ・ワイヤ型のステアリングシステムである。すなわち、ステアリングシステム100は、運転者の操作力を伝達する伝達経路に、機械的に接続されていない部分である非接続部分を含んでいる。ステアリングシステム100は、運転者の操舵を受け付ける反力機構10と、反力機構10が受け付けた操舵量に応じて、車輪16を転舵する転舵機構20とを備えている。
【0032】
反力機構10(舵機構)は、運転者の操作により回転するステアリング11と、ステアリング11の回転に伴って回転するステアリングシャフト12と、第1反力モータ13A,第2反力モータ13Bと、反力減速機14と、を備えている。第1反力モータ13A(第1反力モータ部、第1モータ部),第2反力モータ13B(第2反力モータ部、第2モータ部)は、反力減速機14を介してステアリングシャフト12に連結されており、運転者のステアリング11の操作に応じた反力を付与する。反力減速機14は、第1反力モータ13A,第2反力モータ13Bの回転速度を減速して、ステアリングシャフト12へ伝達する。第1反力モータ13A,第2反力モータ13Bは、交流電力により回転駆動する交流モータである。また、第1反力モータ13A,第2反力モータ13Bは、それぞれ第1反力インバータ15A,第2反力インバータ15Bを介して電源に接続されている。第1反力インバータ15A,第2反力インバータ15Bは、電源からの直流電力を交流電力に変換し、それぞれ第1反力モータ13A,第2反力モータ13Bに給電する。
【0033】
ステアリングシャフト12の先端には、クラッチ12bを介してピニオン軸12aが設けられている。車両の通常の運転時ではクラッチ12bは切断状態となっており、ステアリングシャフト12の回転はピニオン軸12aへ伝達されない。例えば、ステアリングシステム100の異常時等にクラッチ12bが接続状態となることにより、ステアリングシャフト12の回転は、ピニオン軸12aへ伝達される。
【0034】
転舵機構20(舵機構)は、車輪16の向きを変化させるラック軸21と、第1転舵モータ22A,第2転舵モータ22Bと、転舵減速機23と、を備えている。ラック軸21の両端には、タイロッドを介して車輪16が連結されている。第1転舵モータ22A(第1転舵モータ部、第1モータ部),第2転舵モータ22B(第2転舵モータ部、第2モータ部)は、転舵減速機23を介してラック軸21に連結されており、ラック軸21に対して車輪16の向きを変化させる力である転舵力を付与する。転舵減速機23は、第1転舵モータ22A,第2転舵モータ22Bの回転速度を減速して、ラック軸21へ伝達する。第1転舵モータ22A,第2転舵モータ22Bは、それぞれ第1転舵インバータ24A,第2転舵インバータ24Bを介して電源に接続されている。第1転舵インバータ24A,第2転舵インバータ24Bは、電源からの直流電力を交流電力に変換し、それぞれ第1転舵モータ22A,第2転舵モータ22Bに給電する。
【0035】
ピニオン軸12aは、ラック軸21に噛み合っており、クラッチ12bの切断状態では、ステアリングシャフト12はラック軸21に機械的に連結されていない状態である。そのため、運転者のステアリング11の操作に伴うステアリングシャフト12の回転は、ラック軸21の直線運動に変換されない。一方、クラッチ12bの接続状態では、ステアリングシャフト12はラック軸21に機械的に連結された状態である。そのため、運転者のステアリング11の操作に伴うステアリングシャフト12の回転運動は、ラック軸21の直線運動に変換される。
【0036】
反力機構10のステアリングシャフト12には、運転者の操舵に応じた操舵トルクThを検知するトルクセンサ17が設けられている。トルクセンサ17は、検知した操舵トルクThを、第1反力ECU(Electronic Control Unit)40A,第2反力ECU40B,第1転舵ECU45A,第2転舵ECU45Bへ出力する。また、転舵機構20のラック軸21には、ラック軸21の直線移動量である変位量Xを検知するラックストロークセンサ25が設けられている。ラックストロークセンサ25は、検知した変位量Xを、第1反力ECU40A,第2反力ECU40B,第1転舵ECU45A,第2転舵ECU45Bへ出力する。
【0037】
ステアリングシステム100は、第1反力ECU40A,第2反力ECU40Bと、第1転舵ECU45A,第2転舵ECU45Bとを備えている。第1反力ECU40A,第2反力ECU40B、及び第1転舵ECU45A,第2転舵ECU45Bは、図示しない中央処理装置(CPU)、メモリ(ROM,RAM)、入出力インターフェース等をそれぞれ備えている。メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、第1反力モータ13A,第2反力モータ13B、及び第1転舵モータ22A,第2転舵モータ22Bへの電力供給が制御される。なお、第1反力モータ13A、第1反力インバータ15A、第1反力ECU40A、第1転舵モータ22A、第1転舵インバータ24A、及び第1転舵ECU45Aは、第1系統を構成している。第2反力モータ13B、第2反力インバータ15B、第2反力ECU40B、第2転舵モータ22B、第2転舵インバータ24B、及び第2転舵ECU45Bは、第2系統を構成している。
【0038】
第1反力ECU40A(第1反力制御部、第1制御部),第2反力ECU40B(第2反力制御部、第2制御部)は、運転者の操舵に伴うステアリングシャフト12の回転量(絶対角)を示す反力側絶対角Y1と、操舵トルクThと、車速Vcとに基づいて、第1反力モータ13A,第2反力モータ13Bに対するトルクの指令値である反力トルク指令値を演算する。そして、この反力トルク指令値に基づいて、第1反力インバータ15A,第2反力インバータ15Bを操作するための操作信号をそれぞれ演算する。
【0039】
この際に、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとは通信を行い、互いに情報を送受信する。第1反力ECU40A,第2反力ECU40Bは、第1反力モータ13A及び第2反力モータ13Bを協調させるように制御する協調制御を行う。詳しくは、第1反力ECU40A,第2反力ECU40Bは、通信により第1反力モータ13A,第2反力モータ13Bの電流検出値や電流指令値を互いに送受信し、第1反力モータ13A,第2反力モータ13Bを同期させて駆動する。すなわち、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとは、通信により協調制御に必要な情報を互いに送受信する。例えば、第1反力ECU40A,第2反力ECU40Bは、一方をマスターとして他方をスレーブとし、マスターからの指令に応じてスレーブを協調させる。絶対角は、車両を直進走行させる場合のステアリング11の角度を中立位置とし、この中立位置から、車輪16を左右のいずれかの操舵限界角度まで操舵する場合の回転角度を示す値である。
【0040】
第1転舵ECU45A(第1転舵制御部、第1制御部),第2転舵ECU45B(第2転舵制御部、第2制御部)は、ステアリングシャフト12の回転量(絶対角)を示す転舵側絶対角Y2と、変位量Xと、操舵トルクThと、車速Vcとに基づいて、第1転舵モータ22A,第2転舵モータ22Bに対するトルクの指令値である転舵トルク指令値を演算する。そして、この転舵トルク指令値に基づいて、第1転舵インバータ24A,第2転舵インバータ24Bを操作するための操作信号をそれぞれ演算する。
【0041】
この際に、第1転舵ECU45Aと第2転舵ECU45Bとは通信を行い、互いに情報を送受信する。第1転舵ECU45A,第2転舵ECU45Bは、第1転舵モータ22A及び第2転舵モータ22Bを協調させるように制御する協調制御を行う。詳しくは、第1転舵ECU45A,第2転舵ECU45Bは、通信により第1転舵モータ22A,第2転舵モータ22Bの電流検出値や電流指令値を互いに送受信し、第1転舵モータ22A,第2転舵モータ22Bを同期させて駆動する。すなわち、第1転舵ECU45Aと第2転舵ECU45Bとは、通信により協調制御に必要な情報を互いに送受信する。
【0042】
また、第1反力ECU40Aと第1転舵ECU45Aとは通信を行い、互いに情報を送受信する。例えば、第1反力ECU40Aと第1転舵ECU45Aとは、第1反力ECU40A,第1反力モータ13A,第1反力インバータ15A,第1転舵ECU45A,第1転舵モータ22A,第1反力インバータ15Aの状態に関する情報、それらの故障や異常に関する情報を互いに送受信する。さらに、第1反力ECU40Aは第2反力ECU40Bと互いに情報を送受信しており、第1転舵ECU45Aは第2転舵ECU45Bと互いに情報を送受信している。第1反力ECU40Aと第1転舵ECU45Aとは、これらの送受信で取得した情報も互いに送受信する。
【0043】
同様に、第2反力ECU40Bと第2転舵ECU45Bとは通信を行い、互いに情報を送受信する。例えば、第2反力ECU40Bと第2転舵ECU45Bとは、第2反力ECU40B,第2反力モータ13B,第2反力インバータ15B,第2転舵ECU45B,第2転舵モータ22B,第2反力インバータ15Bの状態に関する情報、それらの故障や異常に関する情報を互いに送受信する。さらに、第2反力ECU40Bは第1反力ECU40Aと互いに情報を送受信しており、第2転舵ECU45Bは第1転舵ECU45Aと互いに情報を送受信している。第2反力ECU40Bと第2転舵ECU45Bとは、これらの送受信で取得した情報も互いに送受信する。
【0044】
すなわち、第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bは、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bを介して通信を行うことができる。また、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bは、第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bを介して通信を行うことができる。
【0045】
反力電圧センサ41(電圧検出部)は、第1反力モータ13Aに供給される電圧を検出する。反力断線センサ42(断線検出部)は、第1反力ECU40AをGND(グランド)に接続する配線の断線を検出する。反力電圧センサ41及び反力断線センサ42は、検出結果を第2反力ECU40Bへ出力する。転舵電圧センサ46(電圧検出部)は、第1転舵モータ22Aに供給される電圧を検出する。転舵断線センサ47(断線検出部)は、第1転舵ECU45AをGND(グランド)に接続する配線の断線を検出する。転舵電圧センサ46及び転舵断線センサ47は、検出結果を第2転舵ECU45Bへ出力する。
【0046】
ところで、例えば第2反力モータ13Bが失陥していなくても、第1反力モータ13A及び第2反力モータ13Bに対する協調制御を行うことができなくなった場合に、反力機構10の振動や、反力機構10のロックが発生するおそれがある。失陥とは、正しく動作しないか、全く動作しない状態である。協調制御を行うことができない場合として、例えば第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bが同期を取ることができない場合等がある。
【0047】
そこで、第1反力ECU40Aは第1反力モータ13Aの制御を続行可能であり、且つ第2反力ECU40Bは第2反力モータ13Bの制御を続行可能であり、且つ第1反力モータ13A及び第2反力モータ13Bに対する協調制御を行うことができない場合に、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御を続行し、第2反力ECU40Bによる第2反力モータ13Bの制御を停止する。すなわち、第1反力ECU40Aは第1反力モータ13Aの制御を続行可能であり、且つ第2反力ECU40Bは第2反力モータ13Bの制御を続行可能であり、且つ第1反力モータ13A及び第2反力モータ13Bに対する協調制御を行うことができない場合に、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御、及び第2反力ECU40Bによる第2反力モータ13Bの制御のうち、一方の制御を続行し、他方の制御を停止する。
【0048】
例えば、第1反力ECU40Aは、第2反力ECU40Bと通信を行うことができない場合に、第1反力モータ13Aの制御を続行する。一方、第2反力ECU40Bは、第1反力ECU40Aと通信を行うことができず、且つ第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御が続行可能であると判定したことを条件として、第2反力モータ13Bの制御を停止する。第2反力ECU40Bは、反力電圧センサ41により検出された電圧が閾値を超えたこと、且つ反力断線センサ42により配線が断線していないと検出されたことを条件として、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御が続行可能であると判定する。すなわち、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合は、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御を続行し、第2反力ECU40Bによる第2反力モータ13Bの制御を停止すると予め設定されている。
【0049】
さらに、第1反力ECU40Aは、第2反力ECU40Bと通信を行うことができない場合に、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bによる協調制御を停止させる。詳しくは、第1反力ECU40Aは、第2反力ECU40Bと通信を行うことができない場合に、第1転舵ECU45Aと通信を行い、第1転舵モータ22A及び第2転舵モータ22Bに対する協調制御を停止するように第1転舵ECU45Aに指令する。また、第2反力ECU40Bは、第1反力ECU40Aと通信を行うことができない場合に、第2転舵ECU45Bと通信を行い、第1転舵モータ22A及び第2転舵モータ22Bに対する協調制御を停止するように第2転舵ECU45Bに指令する。すなわち、第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bは、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合に、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bによる協調制御を停止させる。
【0050】
そして、第1転舵モータ22A及び第2転舵モータ22Bに対する協調制御を停止する場合は、第1転舵ECU45Aによる第1転舵モータ22Aの制御を続行し、第2転舵ECU45Bによる第2転舵モータ22Bの制御を停止する。
【0051】
また、第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bは、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合に、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bを介して通信を行うこともできる。そして、第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bは、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない原因(異常内容)を互いに送受信したり、自身とは別の系統が制御を続行可能であることを確認したりしてもよい。
【0052】
上記では、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合を例に説明したが、第1転舵ECU45Aと第2転舵ECU45Bとが通信を行うことができない場合も、「反力」と「転舵」とを入れ替えて同様に制御を行う。
【0053】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0054】
・協調制御を行うことができない場合に、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御、及び第2反力ECU40Bによる第2反力モータ13Bの制御を続行すると、反力機構10の振動や、反力機構10のロックが発生するおそれがある。この点、協調制御を行うことができない場合に、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御、及び第2反力ECU40Bによる第2反力モータ13Bの制御のうち、一方の制御を続行し、他方の制御を停止する。このため、反力機構10の振動や、反力機構10のロックが発生することを抑制することができる。したがって、協調制御を行うことができなくなった場合に、反力機構10の駆動を適切に続行することができる。
【0055】
・第1反力ECU40Aは第1反力モータ13Aの制御を続行可能であり、且つ第2反力ECU40Bは第2反力モータ13Bの制御を続行可能であり、且つ協調制御を行うことができない場合に、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御、及び第2反力ECU40Bによる第2反力モータ13Bの制御のうち、一方の制御を続行し、他方の制御を停止する。したがって、反力機構10の振動や、反力機構10のロックが発生するおそれがある場合に、反力機構10の振動や、反力機構10のロックが発生することを抑制することができる。
【0056】
・第1反力ECU40Aは、協調制御を行うことができない場合に、第1反力モータ13Aの制御を続行する。このため、協調制御を行うことができない場合であっても、反力機構10の駆動を続行することができる。第2反力ECU40Bは、協調制御を行うことができず、且つ第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御が続行可能であると判定したことを条件として、第2反力モータ13Bの制御を停止する。すなわち、第2反力ECU40Bは、協調制御を行うことができなくなっても、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御が続行可能であると判定していない場合は、第2反力モータ13Bの制御を停止しない。したがって、協調制御を行うことができなくなった場合に、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御、及び第2反力ECU40Bによる第2反力モータ13Bの制御のいずれも行われなくなることを抑制することができる。
【0057】
・第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとは、通信により協調制御に必要な情報を互いに送受信する。第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合は、協調制御を行うことができなくなるとともに、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとは相手が制御を続行しているか否か分からなくなる。この点、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合に、反力機構10の振動等を抑制しつつ反力機構10の駆動を続行することができる。
【0058】
・反力電圧センサ41は、第1反力モータ13Aに供給される電圧を検出する。第2反力ECU40Bは、反力電圧センサ41により検出された電圧が閾値を超えたことを条件として、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御が続行可能であると判定する。したがって、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合であっても、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御が続行可能であるか否か判定することができる。
【0059】
・反力断線センサ42は、第1反力ECU40AをGNDに接続する配線の断線を検出する。第2反力ECU40Bは、反力断線センサ42により配線が断線していないと検出されたことをさらに条件として、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御が続行可能であると判定する。したがって、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合であっても、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御が続行可能であるか否かをより慎重に判定することができる。
【0060】
・第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとは、通信により協調制御に必要な情報を互いに送受信し、第1反力モータ13A及び第2反力モータ13Bに対して協調制御を行うことができる。また、第1転舵ECU45Aと第2転舵ECU45Bとは、通信により協調制御に必要な情報を互いに送受信し、第1転舵モータ22A及び第2転舵モータ22Bに対して協調制御を行うことができる。
【0061】
・第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bは、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合に、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bを介して通信を行う。このため、第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bで、通信を行うことができない原因を送受信したり、自身とは別の系統が制御を続行可能であることを確認したりすることができる。また、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bにおいても、同様の制御を行うことができる。
【0062】
・第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bは、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合に、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bによる協調制御を停止させ、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bは、第1転舵ECU45Aと第2転舵ECU45Bとが通信を行うことができない場合に、第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bによる協調制御を停止させる。こうした構成によれば、第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bによる協調制御、及び第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bによる協調制御の一方ができない場合は、他方の協調制御も停止させることができる。したがって、協調制御が複雑になること抑制することができる。
【0063】
・第1転舵ECU45Aと第2転舵ECU45Bとが通信を行うことができない場合も、「反力」と「転舵」とを入れ替えて同様に制御を行うことができる。
【0064】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0065】
・反力断線センサ42を省略することもできる。この場合、第2反力ECU40Bは、反力電圧センサ41により検出された電圧が閾値を超えたことを条件として、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御が続行可能であると判定すればよい。
【0066】
・反力電圧センサ41を省略することもできる。この場合、第2反力ECU40Bは、反力断線センサ42により配線が断線していないと検出されたことを条件として、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御が続行可能であると判定すればよい。
【0067】
・協調制御を行うことができない場合でも、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができる場合がある。そこで、第1反力ECU40Aは、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができ、且つ協調制御を行うことができない場合に、第1反力モータ13Aの制御を続行し、第2反力ECU40Bによる第2反力モータ13Bの制御を停止させてもよい。こうした構成によっても、反力機構10の振動等が発生するおそれがある場合に、反力機構10の振動等を抑制しつつ反力機構10の駆動を続行することができる。
【0068】
・第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bは、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合に、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bを介して第1反力モータ13A及び第2反力モータ13Bに対して協調制御を行うこともできる。
【0069】
・第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bは、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合に、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bによる協調制御のみを続行させてもよい。同様に、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bは、第1転舵ECU45Aと第2転舵ECU45Bとが通信を行うことができない場合に、第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bによる協調制御のみを続行させてもよい。
【0070】
・第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bは、第1反力ECU40Aと第2反力ECU40Bとが通信を行うことができない場合に、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bを介して通信を行うことを省略することもできる。同様に、第1転舵ECU45A及び第2転舵ECU45Bは、第1転舵ECU45Aと第2転舵ECU45Bとが通信を行うことができない場合に、第1反力ECU40A及び第2反力ECU40Bを介して通信を行うことを省略することもできる。
【0071】
・反力機構10のみが2系統により駆動され、転舵機構20は1系統により駆動されてもよい。この場合、反力機構10のみに上記実施形態の制御を適用すればよい。また、転舵機構20のみが2系統により駆動され、反力機構10は1系統により駆動されてもよい。この場合、転舵機構20のみに上記実施形態の制御を適用すればよい。
【0072】
・協調制御を行うことができない場合に、第1反力ECU40Aによる第1反力モータ13Aの制御を停止し、第2反力ECU40Bによる第2反力モータ13Bの制御を続行してもよい。
【0073】
・クラッチ12bを省略し、ステアリングシャフト12の回転がピニオン軸12aへ伝達されることがないようにしてもよい。
【0074】
・トルクセンサ17、及びラックストロークセンサ25をそれぞれ複数備え、多重系(冗長系)の各センサの検出結果に基づいて各制御を行ってもよい。こうした構成によれば、センサの一部に故障等が生じた場合も各制御を続行することができる。
【0075】
・第1系統及び第2系統により協調制御を行っている状態から、協調制御を行うことができなくなって一方の系統による制御のみを続行する状態に切り替える際に、制御を続行する一方の系統による出力トルクを、協調制御を行っていた時よりも増加させてもよい。こうした構成によれば、一方の系統による制御のみを続行する状態に切り替える際に、ステアリングシステム100全体の出力トルクが低下することを抑制することができる。
【0076】
・2つのモータを備える舵システムに限らず、2重巻線モータの2つの巻線(モータ部)に対して協調制御を行う舵システムに対して、上記実施形態を適用することもできる。例えば、第1反力モータ13A及び第2反力モータ13Bを備える反力機構10に代えて、第1巻線及び第2巻線を含む2重巻線モータを備える反力機構10に対して、上記実施形態を適用することもできる。同様に、第1転舵モータ22A及び第2転舵モータ22Bを備える転舵機構20に代えて、第1巻線及び第2巻線を含む2重巻線モータを備える転舵機構20に対して、上記実施形態を適用することもできる。
【符号の説明】
【0077】
10…反力機構、13A…第1反力モータ、13B…第2反力モータ、20…転舵機構、22A…第1転舵モータ、22B…第2転舵モータ、40A…第1反力ECU、40B…第2反力ECU、45A…第1転舵ECU、45B…第2転舵ECU。