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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
H04R9/02 103
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020149104
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043691
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 春祐
(72)【発明者】
【氏名】深田 真仁
(72)【発明者】
【氏名】奈良 篤史
(72)【発明者】
【氏名】藤本 嘉人
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0007471(US,A1)
【文献】実開昭56-128792(JP,U)
【文献】特開2018-088673(JP,A)
【文献】特表2020-524426(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038812(WO,A1)
【文献】特開2014-090311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動することにより音波を放射する振動面部を有する振動板と、
前記振動面部の裏面に固定されたボイスコイルと、
前記振動板を支持するフレームと、
前記ボイスコイルを振動させる磁気回路と、
前記振動板の表面と対向し、前記振動面部の質量を調整する質量調整部材と、を備え、
前記質量調整部材は、前記振動面部の前記表面に固定された板面部と、当該板面部から外側に延出するダンパーと、を有しており、
前記板面部は矩形状に形成されており、
前記ダンパーは、前記板面部の一対の側辺に一端が夫々接続され当該側辺から長板状に延出する複数の長板部と、複数の前記長板部の他端を接続する環状部とを有しているスピーカ。
【請求項2】
前記質量調整部材は、前記振動板よりも剛性が高い請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記振動板は、前記振動面部の周囲に延在するエッジ部を有しており、
前記エッジ部は、前記裏面側に凸形状で構成されている請求項1又は2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記振動板は、前記フレームに挟持される環状の周縁部を有しており、
前記環状部は、前記周縁部と重なった状態で前記周縁部と前記フレームとに挟持されている請求項に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記板面部は、前記振動面部よりも大きい表面積を有している請求項1からのいずれか一項に記載のスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパーを有するスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気回路により生成された磁場中にボイスコイルを配置し、このボイスコイルに音声電流を流すことにより、ボイスコイル自体が振動すると共にボイスコイルが接触する振動板が振動して音波を放射するダイナミック型スピーカが知られている(例えば、特許文献1~2参照)。特許文献1~2に記載のスピーカは、振動板の裏面側に配置されたフレームを備え、振動板の異常振動を抑制するためのダンパーを有している。
【0003】
特許文献1に記載のスピーカは、ドーム型の振動板と、振動板の外周縁部に一端が連結される表面側に凸形状となるエッジと、エッジの他端を固定するフレームとを備えている。この振動板の裏面には、質量付加部材となるボビンが結合されており、このボビンにボイスコイルが巻回されている。また、特許文献1に記載のスピーカは、ボビンの径方向外側に延在するダンパーを有しており、ボイスコイルと振動板との間のボビンの外周面にダンパーの一端が接着固定されており、フレームの底板にダンパーの他端が接着固定されている。
【0004】
特許文献2に記載のスピーカは、ドーム型の振動板が中央にドーム部を有すると共にドーム部の周囲に表面側に凸形状となるエッジ部を有し、ボビンがドーム部の外周縁部から垂下されており、このボビンにボイスコイルが巻回されている。ドーム部に一体形成されたダンパーが、ボビンの径方向外側に延在しており、ダンパーの先端部をフレームの底板に接着固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-30872号公報
【文献】特開2009-290815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、携帯電話等に用いられるマイクロスピーカが普及しており、スピーカの薄型化が求められている。特許文献1~2に記載のスピーカのように振動板と接続されたボビンを設け、このボビンにボイスコイルを巻回させるため、マイクロスピーカのような小型のスピーカにおいて組付けが困難であった。つまり、マイクロスピーカのような小型のスピーカにおいて、その構造上、ボビンを設けるスペースが無いことが多く、また、振動板の一部にボビンを形成することでボビンが薄くなるため、組付けが困難であった。しかも、特許文献1~2に記載のスピーカは、振動板の裏面側にダンパーを設けているため、ボイスコイルや磁気回路を回避してダンパーを配置する必要があり、設計自由度に劣り、スピーカの薄型化を図る上で支障となっていた。
【0007】
そこで、組付け性を向上しつつ小型化を図ることができるスピーカが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスピーカの特徴構成は、振動することにより音波を放射する振動面部を有する振動板と、前記振動面部の裏面に固定されたボイスコイルと、前記振動板を支持するフレームと、前記ボイスコイルを振動させる磁気回路と、前記振動板の表面と対向し、前記振動面部の質量を調整する質量調整部材と、を備え、前記質量調整部材は、前記振動面部の前記表面に固定された板面部と、当該板面部から外側に延出するダンパーと、を有しており、前記板面部は矩形状に形成されており、前記ダンパーは、前記板面部の一対の側辺に一端が夫々接続され当該側辺から長板状に延出する複数の長板部と、複数の前記長板部の他端を接続する環状部とを有している点にある。
【0009】
本構成では、振動板の裏面にボイスコイルを固定しているため、ボビンを設ける必要が無く、組付け性を向上させることができる。また、振動板の表面に対向する質量調整部材がダンパーを有しているため、部品点数を増やすことなく、振動板の異常振動を抑制することができる。
【0010】
さらに、ダンパーが、振動板の表面に対向する質量調整部材に設けられているため、振動板の裏面側に設けられるボイスコイルや磁気回路といった部品の収容スペースが確保され、設計自由度が高まると共に小型化を図ることができる。また、振動面部の表面に固定された板面部から外側に延出するダンパーにより、振動面部から板面部を介して伝播される異常振動に対して制振性能を高めることができる。
【0011】
さらに、ダンパーの長板部を板面部の一対の側辺から延出させれば、加工が容易であり、ダンパーによる制振性能を効果的に発揮することができる。また、長板部の他端を接続する環状部を設ければ、質量調整部材の取り扱いが容易となり、組付け性がより向上する。このように、組付け性を向上しつつ小型化を図ることができるスピーカを提供できた。
【0012】
他の特徴構成は、前記質量調整部材は、前記振動板よりも剛性が高い点にある。
【0013】
本構成のように、振動板の質量を調整する質量調整部材が振動板よりも剛性を高く構成すれば、最低共振周波数を低くして低音を出し易くなり、スピーカの音域を拡げることができる。
【0014】
他の特徴構成は、前記振動板は、前記振動面部の周囲に延在するエッジ部を有しており、前記エッジ部は、前記裏面側に凸形状で構成されている点にある。
【0015】
本構成のように、エッジ部を裏面側に凸形状とすれば、振動板に対する裏面側への引張応力が高まるため、振動板の歪みをより抑えることができる。しかも、振動板の表面に配置される質量調整部材のダンパーとエッジ部との干渉を気にせずに、振動板及び質量調整部材を配置することが可能となり、より小型化を図ることができる。
【0018】
他の特徴構成は、前記振動板は、前記フレームに挟持される環状の周縁部を有しており、前記環状部は、前記周縁部と重なった状態で前記周縁部と前記フレームとに挟持されている点にある。
【0019】
本構成のように、振動板の周縁部と質量調整部材の環状部とを重ねた状態で周縁部とフレームとに挟持させれば、組付け性がより高まるだけでなく、質量調整部材の姿勢を安定させることができる。
【0020】
他の特徴構成は、前記板面部は、前記振動面部よりも大きい表面積を有している点にある。
【0021】
本構成のように、板面部の表面積を振動面部の表面積よりも大きくすれば、振動面部と共に振動する板面部の有効面積が大きくなるため、音圧を上げることが可能となり、良好な音質を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】スピーカの外観斜視図である。
図2】スピーカの上方から視た分解斜視図である。
図3】スピーカの下方から視た分解斜視図である。
図4図1のIV-IV断面図である。
図5】その他の実施形態(1)に係る質量調整部材である。
図6】その他の実施形態(2)に係る質量調整部材である。
図7】その他の実施形態(3)に係る質量調整部材である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係るスピーカの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、スピーカXの一例として、ドーム形状のダイナミック型スピーカとして説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0024】
図4に示すように、本実施形態に係るスピーカXは、磁気回路4により生成された磁界中にボイスコイル2を配置し、このボイスコイル2に音声電流を流すことにより、ボイスコイル2自体が振動すると共にボイスコイル2が固定されている振動板1が振動して音波を放射するダイナミック型スピーカである。以下では、ボイスコイル2から見て振動板1の側を上、その逆を下と定義し、ボイスコイル2と振動板1の積層方向を上下方向とし、振動板1の両面のうちボイスコイル2の側を裏面、その逆を表面として説明する。
【0025】
図1図3に示すように、スピーカXは、振動により音波を放射する振動板1と、振動板1の裏面に固定されたボイスコイル2と、振動板1を支持するフレーム3と、フレーム3の内側に配置され、発生磁束を鎖交させてボイスコイル2を振動させる磁気回路4と、振動板1の表面に対向する質量調整部材5と、磁気回路4が固定された底板6と、を備えている。
【0026】
振動板1は、スピーカXに生じた振動を空気に伝達することで音波を放射する薄い板状の部材である。振動板1は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等を用いた樹脂フィルムや金属フィルム等の柔軟な部材で構成されている。図2図3に示すように、振動板1は、矩形環状の外周フレーム部11(周縁部の一例)と、外周フレーム部11の内周側に配置され、振動板1の裏面側となる下に凸形状の曲面で構成された矩形環状のエッジ部12と、エッジ部12の内周側に配置された矩形状の振動面を含む振動面部13とを有している。
【0027】
振動板1は、後述するフレーム3の第二フレーム3Bの第二枠部33上に固定され、フレーム3の第一フレーム3Aと第二フレーム3Bとの間に振動板1の外周フレーム部11が挟まれている。外周フレーム部11の裏面と第二フレーム3Bの第二枠部33の上面とは、例えば接着剤で接着されている。
【0028】
振動板1の外周フレーム部11は、円弧状の4つの角部11aと、4つの角部11aの間に夫々形成された4辺の直線状部11bとで形成されている。エッジ部12は、外周フレーム部11と振動面部13とを接続する環状可動部材である。このエッジ部12は、振動面部13の周囲に延在しており、振動面部13の振動により共振する。
【0029】
振動面部13は、ボイスコイル2から生じた振動エネルギーを空気に伝播することで音波を放射する。振動面部13の上面(表面)には、振動板1の振動状態を安定化させるための矩形板状の質量調整部材5が接着剤による接着等で固定されている(図1も参照)。質量調整部材5は、振動板1の振動面の質量の調整や制振などの音質調整をするための部材であり、詳細は後述する。
【0030】
ボイスコイル2は、導線を巻回して角筒状に形成した導電性部材であり、通電の方向と強弱に対応した磁界を発生させる磁界発生機構である。ボイスコイル2は、自己が生じた磁界と、後述する磁石Mから生じた磁界との相互作用により、通電された電気エネルギーを振動エネルギーに変換して、自己を上下方向に沿う振幅で振動させる。ボイスコイル2はこの振動により振動面部13を振動させる。
【0031】
ボイスコイル2は、矩形状の巻回部21と、一対のリード線22,22(引出線)とを有している。巻回部21の軸芯方向(厚み方向)は上下方向に沿い配置されている。この巻回部21の上面は振動面部13の下面に接着剤による接着等で固定されている。ボイスコイル2が上下方向に振動することにより生じた振動エネルギーは、振動面部13に伝達されて音波に変換される。一対のリード線22,22は、一対の端子7,7と電気的に接続されている。
【0032】
フレーム3は、ポリフタルアミド樹脂などの樹脂材料で形成された矩形環状の枠体である。フレーム3は、振動板1の表面側に配置される第一フレーム3Aと、振動板1の裏面側に配置される第二フレーム3Bとを有している。
【0033】
第一フレーム3Aは、矩形環状の第一枠部31と、第一枠部31の四隅の下面から下方に延出した複数(本実施形態では4個)の脚部32とを有している。第一枠部31は、下面に後述する質量調整部材5の環状部52bが配置された外枠部31aと、外枠部31aから上方に段落ちした内枠部31bとを含んでいる。この構成から内枠部31bと質量調整部材5との間には、空間が形成されている。脚部32は、第一枠部31の角部を構成する外枠部31aの交差する二辺に跨るように断面L字状に形成されており、第一枠部31の角部に対応する部分は、該角部を直方体状に切り欠いて貫通孔を形成した切欠孔部32aを有している。
【0034】
第二フレーム3Bは、矩形環状の第二枠部33と、第二枠部33の短辺となる両側部から内側に延出し、一対の端子7,7を支持する端子支持部34と、第二枠部33の四隅から長辺に沿って内側に延出し、底板6の四隅が接着固定される複数(本実施形態では4個)の底板固定部35と、を有している。本実施形態における端子7は、フレーム3側の一端がリード線22と電気的に接続されている。端子7の他端は、外部に露出した外部端子71と、外部端子71の他端からU字状に折り返された折り返し部72と、折り返し部72から内側に延在し、先端を屈曲させた延在部73とを含んでいる。
【0035】
第二枠部33の上面には、上面に上述した振動板1の外周フレーム部11の裏面が接着される。この第二枠部33は、四隅の角部に突出形成された複数(本実施形態では4個)の突起部33aと、突起部33aに対応する位置で第一フレーム3Aの脚部32の内形に沿った切り欠きとなる複数(本実施形態では4個)の切欠部33bとを含んでいる。切欠部33bを脚部32の内形に沿わせた状態で、突起部33aが脚部32の切欠孔部32aに係合することにより、第一フレーム3Aと第二フレーム3Bとが固定される(図1も参照)。
【0036】
端子支持部34は、上面に端子7の外部端子71が載置される端子台34aと、第二枠部33の1つの長辺における両端の角部にある切欠部33bの下面を窪ませて形成され、上面から下面に亘って端子7の折り返し部72が沿う支持凹部34bと、端子7の延在部73を下面で支持する支持壁部34cとを有している。この支持壁部34cのうち延在部73の屈曲した先端が配置される部位には、該先端が弾性変形可能な空間として、貫通孔34c1が形成されている。
【0037】
磁気回路4は、磁石MとポールピースBとを有している。磁石Mは、フェライト磁石などの永久磁石である。磁石Mは、磁界をボイスコイル2に作用させる。本実施形態では、磁石Mは、ボイスコイル2の巻回部21の軸芯方向に垂直な方向において、巻回部21の内側領域に配置された矩形板状の第一磁石41と、巻回部21の外側領域に配置された矩形板状の一対の第二磁石42,42とを含んでいる(図4も参照)。第一磁石41及び第二磁石42,42は、上下方向において、ボイスコイル2の巻回部21の下側領域に配置されている。また、第一磁石41及び第二磁石42,42は、底板6の上面に載置されている。本実施形態では、第一磁石41及び第二磁石42,42は、底板6の上面に接着剤などで固定されている。
【0038】
第一磁石41及び第二磁石42,42は、各板面が上下方向に対して交差(例えば直交)するような姿勢で配置されている。第一磁石41と第二磁石42,42とから発生する磁界の向きは逆向きになるように設定されている。例えば、第一磁石41の上面の磁極がN極である場合、第二磁石42,42の上面の磁極はS極である。この場合、第一磁石41から生ずる磁界は、上面から巻回部21の外周を通過して、第二磁石42,42の上面へ流れるようになっている。本実施形態における第二磁石42,42は、第二枠部33の長辺に長軸方向を沿わせて配置されている。
【0039】
ポールピースBは、巻回部21の内側領域に配置された矩形板状の第一ポールピース43と、巻回部21の外側領域に配置され、矩形板状の一対の第二ポールピース44,44とを含んでいる。第一ポールピース43は、第一磁石41の上面に接着剤による接着等で固定され、一対の第二ポールピース44,44は、夫々、一対の第二磁石42,42の上面に接着剤による接着等で固定されている。第一ポールピース43における上下方向に直交する水平面の断面形状は、第一磁石41の水平面における断面形状と同じ矩形状にされている。第一ポールピース43は、ボイスコイル2の巻回部21の内周面から内側に離間して配置されている(図4も参照)。第一磁石41の一部及び第一ポールピース43は、巻回部21の軸芯方向に垂直な方向視において、巻回部21と重複するように配置されている。つまり、第一ポールピース43の上面は、上下方向において巻回部21の上面と下面との間に位置するように配置されている。第一ポールピース43は、磁性材料(磁性体)で形成されており、第一磁石41で発生した磁束を巻回部21に鎖交させるように収束させる。
【0040】
一対の第二ポールピース44,44は、夫々、その長手方向を、第二磁石42,42の長手方向に沿わせて配置されている。第二ポールピース44,44は、巻回部21の外周面から外側に離間して配置されている。第二ポールピース44,44は、上下方向視において、第二磁石42,42と重複するように配置されており、第二磁石42,42の内側領域(ボイスコイル2に近接する領域)に位置している。第二磁石42,42の一部及び第二ポールピース44,44は、巻回部21の軸芯方向に垂直な方向視において、巻回部21と重複するように配置されている。つまり、第二ポールピース44,44の上面は、上下方向において巻回部21の上面と下面との間に位置するように配置されている。第二ポールピース44,44は、磁性材料(磁性体)で形成されており、第二磁石42,42が発生した磁束を巻回部21に収束させる。本実施形態においては、第二ポールピース44,44の上面は、第一ポールピース43の上面よりも低く、振動板1のエッジ部12の凸形状の曲面の最下端との間に間隙を有する(図4参照)。これにより、振動板1のエッジ部12が上下方向に振動したとき、第二ポールピース44,44がエッジ部12と接触することが防止される。
【0041】
このように、第一磁石41と第二磁石42,42との上面から発生する磁束は、夫々第一ポールピース43と第二ポールピース44,44とにより収束されて巻回部21に鎖交して流れる。これにより、ボイスコイル2に流れる電流が小さくてもボイスコイル2に大きな電磁力を作用させて大きな振動を生じさせることができ、スピーカXは、少ない電流で大きな音を発することが可能になる。
【0042】
質量調整部材5は、振動板1の振動面となる振動面部13の質量調整や制振などの音質調整をするための薄い板状の部材である。質量調整部材5は、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の振動板1よりも剛性の高い樹脂材料で構成されているが、金属薄板等でも構わない。
【0043】
質量調整部材5は、振動面部13の表面に固定された板面部51と、板面部51から外側に延出するダンパー52と、が一体形成されている。本実施形態における質量調整部材5においては、板面部51とダンパー52とは同一平面上に位置するように形成されている。
【0044】
板面部51は、振動面部13と同一の矩形板状且つ同一の表面積で構成されている。この板面部51の下面が振動面部13の表面に接着剤による接着等で固定されており、振動板1の振動状態を安定させる。なお、板面部51は、振動面部13よりも大きい表面積を有していても良い。この場合、振動面部13及び板面部51の振動する有効面積が大きくなるため、音圧を上げることが可能となり、スピーカXの音域を拡げることができる。
【0045】
ダンパー52は、板面部51の一対の側辺(長辺)に一端が夫々接続され側辺から振動板1の板面と平行に長板状に延出する複数(本実施形態では一対の側辺に夫々2個の計4個)の長板部52aと、複数の長板部52aの他端を矩形環状に接続する環状部52bとを有している。ダンパー52は、ボイスコイル2から振動面部13及び板面部51に伝達された異常振動を吸収(減衰)する制振機構である。
【0046】
夫々の長板部52aは、一端が板面部51の一対の長辺中央付近から延出し、他端が環状部52bの角部52b1近傍の短辺端部に接続されている。この長板部52aは、環状部52bの4つの直線状部52b2のうち、長辺となる一対の直線状部52b2に対して傾斜した傾斜部52a1と、環状部52bの4つの直線状部52b2のうち、内側に向かって傾斜部52a1から円弧状に湾曲する湾曲部52a2とを含んでいる。環状部52bは、円弧状の4つの角部52b1と、4つの角部52b1の間に夫々形成された4辺の直線状部52b2とで形成されており、振動板1の外周フレーム部11と同一の矩形板状且つ同一の表面積で構成されている。この環状部52bの下面は、振動板1の外周フレーム部11の表面に接着剤による接着等で固定されている。つまり、環状部52bは、振動板1の外周フレーム部11と上下方向視で重なった状態で第一フレーム3Aと外周フレーム部11(第二フレーム3B)との間に挟持されている。
【0047】
底板6は、冷間圧延鋼鈑などの金属製の磁性材料(磁性体)で形成されている。底板6は、平板部61と、平板部61のうち短辺を上方に屈曲させた屈曲部62とを含んでいる。平板部61の上面には、第一磁石41及び一対の第二磁石42,42が接着される位置に多数の有底孔が形成されており、この孔がアンカー効果を発揮して接着強度を高めている。平板部61の四隅には、長辺の角から短辺に沿って突出した複数(本実施形態では4個)の凸部61aが形成されており、長辺に沿った一対の凸部61aの間に複数(本実施形態では2個)の凹部61bが形成されている。これら凸部61a周辺が第二フレーム3Bの底板固定部35の下面に接着固定され、凹部61bから第二磁石42の下面の一部が視認できる(図4も参照)。また、屈曲部62は、端子支持部34の支持壁部34cと第一磁石41及び第一ポールピース43(ボイスコイル2の巻回部21)との間に配置されている。
【0048】
上述したように、振動板1の裏面にボイスコイル2を固定しているため、振動板1を垂下させたボビンを設ける必要が無く、組付け性を向上させることができる。また、振動板1の表面に対向する質量調整部材5がダンパー52を有しているため、部品点数を増やすことなく、振動板1の異常振動を抑制することができる。さらに、ダンパー52が、振動板1の表面に対向する質量調整部材5に設けられているため、振動板1の裏面側に設けられるボイスコイル2や磁気回路4といった部品の収容スペースが確保され、設計自由度が高めると共に小型化を図ることができる。また、質量調整部材5は振動面部13に固定された板面部51から外側に延出するダンパー52により、振動面部13から板面部51を介して伝播される異常振動に対して制振性能を高めることができる。しかも、質量調整部材5は、振動板1よりも剛性が高く構成されているので、最低共振周波数を低くして低音を出し易くなり、スピーカXの音域を拡げることができる。
【0049】
また、エッジ部12を振動板1の裏面側に凸形状とすれば、振動板1に対する裏面側への引張応力が高まるため、振動板1の歪みをより抑えることができる。しかも、振動板1の表面に配置される質量調整部材5のダンパー52とエッジ部12との干渉を気にせずに、振動板1及び質量調整部材5を配置することが可能となり、より小型化を図ることができる。また、ダンパー52の長板部52aを板面部51の一対の側辺から延出させているので、加工が容易であり、ダンパー52により制振性能を効果的に発揮することができる。この長板部52aの他端を接続する環状部52bを設けているので、質量調整部材5の取り扱いが容易となり、組付け性がより向上する。しかも、振動板1の外周フレーム部11と質量調整部材5の環状部52bとを重ねた状態で外周フレーム部11(第二フレーム3B)と第一フレーム3Aとに挟持させれば、組付け性がより高まるだけでなく、振動板1及び質量調整部材5の姿勢を安定させることができる。
【0050】
[その他の実施形態]
(1)図5に示すように、上述した実施形態における質量調整部材5のダンパー52は、環状部52bを省略して、長板部52aの先端部を折り曲げた折り曲げ部52cを設け、この折り曲げ部52cを振動板1の外周フレーム部11(第二フレーム3B)と第一フレーム3Aとの間に挟持させても良い。
【0051】
(2)図6に示すように、上述した実施形態における質量調整部材5のダンパー52は、長板部52aに加えて、板面部51と環状部52bとを接続する直線状の接続部52dを複数(図示では6個)設けても良い。
【0052】
(3)図7に示すように、上述した実施形態における質量調整部材5のダンパー52は、環状部52bに代えて、一対の長板部52aの先端部を連結させた連結部52eを設け、この連結部52eを振動板1の外周フレーム部11(第二フレーム3B)と第一フレーム3Aとの間に挟持させても良い。
【0053】
(4)上述した実施形態におけるダンパー52の長板部52aは、階段状や波状に構成しても良い。
(5)上述した実施形態における質量調整部材5に一体形成されたダンパー52を備えるスピーカXであれば、ボイスコイル2,フレーム3及び磁気回路4等の形状は特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ダンパーを有するスピーカに利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 :振動板
2 :ボイスコイル
3 :フレーム
5 :質量調整部材
4 :磁気回路
11 :外周フレーム部(周縁部)
12 :エッジ部
13 :振動面部
51 :板面部
52 :ダンパー
52a :長板部
52b :環状部
X :スピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7