(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】軒先構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/158 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
E04D13/158 501P
E04D13/158 501J
(21)【出願番号】P 2020161865
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 正人
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138034(JP,A)
【文献】特開2007-239312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00 - 3/40
E04D 13/00 - 15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上部外側面に、取付金具を介して、パラペットを取付けた軒先構造であって、
前記パラペットに、換気部が設けられ、
前記取付金具に、前記換気部から前記パラペットの内側へ入った風雨に含まれる水滴を止める水返部材が設けられ、
該水返部材は、前記取付金具における前記換気部の近傍の位置に設けられ
、
前記水返部材は、前記取付金具の外縁部における、前記換気部の真上の部分に形成された切欠部に取付けられていることを特徴とする軒先構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の軒先構造であって、
前記水返部材は、前記換気部から前記パラペットの内側へ入った風雨に含まれる水滴を受ける水滴受部を有していることを特徴とする軒先構造。
【請求項3】
請求項
2に記載の軒先構造であって、
前記水滴受部の下端部は、前記換気部へ向かって下方へ延びていることを特徴とする軒先構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軒先構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物には、建物の上部外側面に、取付金具を介して、パラペットを取付けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような軒先構造を備えた建物では、パラペットに換気部を設けることも行われている。パラペットに換気部を設けた場合には、換気部からパラペットの内側へ入った風雨に含まれる水滴を止めるための水返部材が必要になる。水返部材は、パラペットの内側に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存の建物の軒先構造では、水返部材を建物の防水ラインに近い位置に設けるようにしていたので、換気部から風雨と共にパラペットの内側へ吹き込まれた水滴が、パラペットの内奥部にある防水ラインに到達してしまうなどの問題があった。すると、防水ラインに到達した水滴によって、例えば、建物の外壁面に雨垂れの跡などが発生することになる。
【0006】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本発明は、
建物の上部外側面に、取付金具を介して、パラペットを取付けた軒先構造であって、
前記パラペットに、換気部が設けられ、
前記取付金具に、前記換気部から前記パラペットの内側へ入った風雨に含まれる水滴を止める水返部材が設けられ、
該水返部材は、前記取付金具における前記換気部の近傍の位置に設けられ、
前記水返部材は、前記取付金具の外縁部における、前記換気部の真上の部分に形成された切欠部に取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記構成によって、換気部から風雨と共にパラペットの内側へ入った水滴が、建物の防水ラインに到達しないように、換気部の近傍の位置にて早期に止めることなどができる。
水返部材は、取付金具の外縁部における、換気部の真上の部分に形成された切欠部に取付けられることで、水返部材を、切欠部を利用して換気部の近傍の位置に確実に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態にかかる建物の軒先構造を示す縦断面図である。
【
図4】比較例にかかる建物の軒先構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図4は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0011】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0012】
図1は、建物1の上部の外側面を示す縦断面図である。
【0013】
図中、建物1の本体(建物本体2)は、天井梁3と外壁4によって示された部分となっている。天井梁3は、ほぼ垂直な縦面3aと、この縦面3aの上下の端部から建物1の内側へ向けて延びる上下の横面3b,3cとを有するほぼC字断面の形鋼によって構成されている。外壁4は、天井梁3の下側に天井梁3の縦面3aよりもほぼ(外壁4の)厚み程度分だけ外側に位置するように設置されている。外壁4の上端部は、天井梁3の下側の横面3cよりも若干高い位置となっている。
【0014】
また、建物本体2の上部には、屋根部5が設置されている。屋根部5は、金属製の屋根フレーム6と、屋根フレーム6の側面上部に取付けられた野地板受木桟7の上に設置された野地板8と、野地板8の上に貼設された下地鋼板9と、下地鋼板9の上側に設置された縦カバー11とを備えている。
【0015】
屋根フレーム6は、天井梁3の上部に対し、補強プレート12などを介して、ボルト、ナットなどの締結具13で上下方向14に固定されている。屋根フレーム6の端部は、天井梁3の縦面3aに対して横方向の位置を揃えた状態で設置されている。縦カバー11の上部には、必要に応じて、太陽電池パネル15を設置することができる。
【0016】
このような建物1では、破線で示すような、天井梁3の縦面3aの位置、および、野地板8の下面の位置に沿って防水ライン16が形成されている。防水ライン16は、建物1を浸水被害から保護するために設定された防水のための境界線である。よって、建物1には、天井梁3の縦面3aの位置よりも内側、および、野地板8の下面よりも下側の部分に水が侵入しないように、必要な防水対策が施されている。
【0017】
なお、建物1は、どのような構造のものとしても良いが、この実施例の建物1は、ユニット建物となっている。ユニット建物は、予め工場で製造された建物ユニットを建築現場へ搬送して、建築現場で組み立てることにより、短期間にうちに構築できるようにした建物1である。上記した天井梁3は、建物ユニットの骨格部分を構成するユニットフレームの一部として設けられている。
【0018】
そして、このような建物1の軒先構造は、建物1の上部外側面に、取付金具17を介して、パラペット18を取付けたものとなっている。
【0019】
軒先構造は、建物1の軒先部分の構造のことである。図の建物1では、軒先部分は、外壁4に対して建物1の外側へ張出す張出部分がほとんどないものとされている。
【0020】
上部外側面は、建物1の上部の側面の外側部分のことである。
【0021】
取付金具17は、建物1の上部外側面にパラペット18を取付けるための金具である。取付金具17は、建物1の軒先部分に沿い、所要の間隔を有して複数設置される。
【0022】
取付金具17は、
図2に示すように、上下方向14および天井梁3の縦面3aとほぼ垂直方向な方向に広がる面を有する金具本体によって主に構成されている。取付金具17の縁部には、必要に応じて、補強部となり、また、建物1やパラペット18に対する当面や取付代などとなるフランジ部19が、単数または複数箇所形成される。フランジ部19は、金具本体に対して曲げ加工などによって一体的に形成される。フランジ部19は、金具本体とほぼ面直な面とされる。
【0023】
パラペット18は、建物1の軒先部分などに設置される化粧部材などのことである。パラペット18は、建物1の軒先部分に沿い、(紙面と垂直な方向に)連続して延びる長尺部材とされる。パラペット18は、長手方向の数カ所の位置を、上記した取付金具17によって、天井梁3の縦面3aに取付けられる。パラペット18は、例えば、アルミやアルミ合金などの軽金属の押出材などとして形成することができる。
【0024】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えることができる。
【0025】
(1)
図3に示すように、パラペット18に、換気部21が設けられる。
取付金具17に、換気部21からパラペット18の内側へ入った風雨22に含まれる水滴23を止める水返部材24が設けられる。
水返部材24は、取付金具17における(パラペット18の)換気部21の近傍の位置に設けられる。
【0026】
ここで、パラペット18について説明する。パラペット18は、
図1に示すように、単数または複数の部品で構成することができる。この実施例では、パラペット18は、上から順に、上部カバー25と、中間カバー26と、下部カバー27との3つの部材に分けて設けられている。
【0027】
即ち、パラペット18は、上側に、外側へ向けて下り勾配となる傾斜部分を有しており、この傾斜部分が上部カバー25によって形成される。
【0028】
また、パラペット18は、下側に、上側の傾斜部分とは逆の勾配となる、建物1の内側へ向かって下り勾配の逆傾斜部分を有しており、この逆傾斜部分が中間カバー26および下部カバー27によって形成される。
【0029】
そして、パラペット18の下側の逆傾斜部分は、途中で屈曲されることで、第一の逆傾斜部分と第二の逆傾斜部分を有している。屈曲部分よりも上側の第一の逆傾斜部分は、上下方向14を基準とした角度が比較的小さくなっている。屈曲部分よりも下側の第二の逆傾斜部分は、上下方向14を基準とした角度が第一の逆傾斜部分よりも大きくなっている。
【0030】
中間カバー26と下部カバー27とは、屈曲部分よりも下側の位置で上下に分けられている。
【0031】
より詳しくは、上部カバー25は、パラペット18の上側の傾斜部分を形成する単数または複数の傾斜部25a~25cを主有している。また、これらの傾斜部25a~25cの上端部と下端部に、下向きの屈曲縁部25e,55fをそれぞれ有している。
【0032】
上部カバー25の上端部の屈曲縁部25eは、水平に対し、屋根部5へ向けて僅かに下り勾配となるように屈曲されて縦カバー11の端部の上に延びている。上部カバー25の下端部の屈曲縁部55fは、ほぼ真下に向けて屈曲されている。
【0033】
また、上部カバー25の概略形状を形成している傾斜部25a~25cは、単一の下り傾斜としても良いが、勾配の異なる複数の下り部分によって構成しても良い。この実施例では、上部カバー25の傾斜部25a~25cは、例えば、上側から順に急、緩、急の異なる勾配の部分となっている。
【0034】
上部カバー25は、少なくとも、上側の急な傾斜部25aと、緩い傾斜部25bとを、取付金具17の外縁部の上部(のフランジ部19)にビスなどの固定部材28で上側からほぼ下へ向けて固定されている。
【0035】
中間カバー26は、上側に、第一の逆傾斜部分を形成する第一逆傾斜部26aを有し、下側に、第二の逆傾斜部分の一部を形成する第二逆傾斜部26bを有している。
【0036】
中間カバー26における、第一逆傾斜部26aの上端部には、取付縁部26cが形成されている。中間カバー26は、取付縁部26cが、取付金具17の外縁部の上部(のフランジ部19)にビスなどの固定部材29で上側からほぼ下へ向けて固定されている。
【0037】
中間カバー26の取付縁部26cは、上部カバー25の下側の急な傾斜部25cとほぼ平行な、傾斜した斜面とされ、急な傾斜部25cの下側に、急な傾斜部25cと間隔を有して設置される。そして、取付縁部26cと上部カバー25の下側の急な傾斜部25cとの間には、必要に応じて、シール部材31などが設置される。また、中間カバー26の第一逆傾斜部26aは、上部カバー25の下側の屈曲縁部25fの内側に間隔を有して(建物1の内外方向に)重なるように配設される。
【0038】
また、中間カバー26における、第二逆傾斜部26bの上部の内面側の位置には、取付金具17や建物1の側へ向けて係止爪部26dが突設されている。この係止爪部26dは取付金具17に設けられた被係止部17aに対して上側から(建物1の内外方向に)係止保持される。
【0039】
下部カバー27は、中間カバー26の第二逆傾斜部26bとほぼ連続する逆傾斜部27aを、主に有している。逆傾斜部27aは、第二逆傾斜部26bとほぼ同じ角度としても良いが、この実施例では、若干異なる角度となっている。
【0040】
下部カバー27の逆傾斜部27aの上部には、少なくとも、取付金具17や建物1の側へ向けてほぼ水平(または、先端側へ向けて若干上り勾配)に延びる横面部27bと、横面部27bの先端部分から上へ延びる縦面部27cとが順に形成されている。
【0041】
横面部27bは、取付金具17の外縁部に達する長さに延ばされる。縦面部27cは、取付金具17の外縁部に沿って、中間カバー26の第二逆傾斜部26bの下端部の位置よりも高い位置(ほぼ係止爪部26dと同じ高さか、係止爪部26dよりも若干低い高さ)まで延ばされる。下部カバー27は、縦面部27cの下部が取付金具17の外縁部の下側の部分(のフランジ部19)にビスなどの固定部材32で外側から横へ向けて固定されている。
【0042】
なお、逆傾斜部27aとその上部の横面部27bとの間や、横面部27bと縦面部27cとの間などには、角取部などを適宜設けても良い。
【0043】
下部カバー27の逆傾斜部27aの下部には、少なくとも外壁4の上端部へ向けて、外壁4の上端部を超えるように延び、外壁4の上端部に対して(建物1の内外方向に)重なるように設置される下部水平面部27dが設けられている。下部水平面部27dは、外壁4の上端部と、取付金具17の下端部との間に形成される隙間に挿入配置される。下部水平面部27dは、外壁4の上端部に当接する、または、載置されるようにしても良い。
【0044】
更に、下部カバー27の逆傾斜部27aの下部と下部水平面部27dとの間には、必要に応じて、図に示すような逆傾斜部27eや水平部27fや段差部27gなどからなる下方迂回部分を設けても良い。これらは、下部カバー27の下側の形状を整えて見栄えを良くするものになると共に、下方迂回部分の最下部となる水平部27fが、外壁4から離れた状態で、下部水平面部27dよりも低い位置に設置されることで、下方迂回部分(水平部27f)は、パラペット18全体の水切り部分となる。
【0045】
換気部21は、パラペット18の内側へ風雨22を取り込む換気経路の入り口部分を構成するものである。換気部21は、パラペット18を構成する複数の部材(上部カバー25、中間カバー26、下部カバー27)間の合わせ部分に隙間として形成することができる。この実施例では、換気部21は、中間カバー26(の下端部)と、下部カバー27(の逆傾斜部27aの上部)との合わせ部分が換気口となるように、隙間を形成している。換気部21は、水滴23が侵入し難いようにラビリンス状に形成するのが好ましい(ラビリンスシールまたはラビリンス通路)。
【0046】
この換気部21は、下部カバー27の逆傾斜部27aの上部の横面部27bと、中間カバー26の下端部の内面に設けた、取付金具17の側(内側)へ向けて取付金具17の外縁部に達しない長さでほぼ水平(または、先端側へ向けて若干下り勾配)に延びる内向フィン21aと、下部カバー27の縦面部27cの上端部の外面に、中間カバー26の側(内側)へ向けて中間カバー26に達しない長さでほぼ水平(または、先端側へ向けて若干下り勾配)に延びる外向フィン21bと、を有している。
【0047】
そして、横面部27bと、内向フィン21aと、外向フィン21bとは、上下方向14に対して下から順に、ほぼ一定の間隔を有してほぼ平行に配置されることで、上記したラビリンスシールを形成している。
【0048】
このような換気部21では、風雨22は、換気口から入って、ラビリンスシールを下側から上へ向けて、順に横に折り返しながら入って行くことになる。
【0049】
なお、上部カバー25と、中間カバー26との合わせ部分については、同様の換気部21としても良いが、この実施例では、上記したように、シール部材31によって塞がれている。
【0050】
水返部材24は、換気部21からパラペット18の内側へ入った風雨22に含まれる水滴23を(水返部材24の位置で)阻止するための部材である。水返部材24は、パラペット18と同様に、建物1の軒先部分に沿って連続して延びる長尺部材とされる。
【0051】
換気部21の近傍は、パラペット18の換気部21の近くまたは換気部21の周囲のことである。換気部21の近傍は、パラペット18内の外側に寄った位置や、防水ライン16から離れた位置などとなる。
【0052】
(2)水返部材24は、取付金具17の外縁部における、換気部21の真上の部分に形成された切欠部42(
図2)に取付けられても良い。
【0053】
ここで、取付金具17の外縁部は、取付金具17の外側(パラペット18側)となる縁部のことである。これに対し、取付金具17の内縁部は、取付金具17の内側(建物1側)となる縁部のことである。
【0054】
取付金具17の外縁部は、パラペット18の内面の形状にほぼ合った形状とされる。
【0055】
取付金具17の外縁部は、上側に、上部カバー25に沿い外側へ向けて下り勾配となる第一の辺部分44を有し、中間部に、中間カバー26に沿い、ほぼ垂直に近いが、第一の辺部分44とは逆の勾配となる、建物1の内側へ向かう下り勾配の第二の辺部分45を有し、下部に、中間カバー26の下部および下部カバー27から離れてほぼ上下方向14に延びる第三の辺部分46を有している。取付金具17の下部は、外壁4の上端部に達しない程度の長さとされる。
【0056】
第一の辺部分44は、単一の下り傾斜となるように形成しても良いが、上部カバー25に合わせて、例えば、急、緩、急を有する複数の下り傾斜の辺部44a~44cを有するように形成しても良い。
【0057】
第二の辺部分45は、上部に中間カバー26の内面の第一逆傾斜部26aに沿った逆傾斜の辺部45aを有している。逆傾斜の辺部45aの上部には、取付け用に、中間カバー26の取付縁部26cに沿った短い下り傾斜の辺部45bが形成される。
【0058】
短い辺部45bと第一の辺部分44の下り傾斜の辺部44cとの間は、短い辺部45bが低い段差になっており、この段差部分には、U字状の座繰部47が形成されている。この座繰部47は、例えば、太陽電池パネル15などの配線を通す配線スペースなどとして使用することができる。第二の辺部分45の下部は、水返部材24を取付けるための切欠部42となっている。
【0059】
第三の辺部分46は、第二の辺部分45に対し、段差部46aを有して、下部カバー27よりも内側となる位置に形成されたほぼ上下方向14に延びる辺とされている。第三の辺部分46は、切欠部42の奥部よりも建物1側に位置するように形成されている。段差部46aと切欠部42との間には、上記した被係止部17aが形成される。被係止部17aは、段差部46aと切欠部42との間に形成される細長い突出部分の先端に形成される。突出部分または段差部46aは、水平、または、外側へ向けて若干下り勾配に形成されている。
【0060】
一方、取付金具17の内縁部は、基本形状がほぼ上下方向14に延びる直線状の辺とされると共に、この直線状の辺の途中に凹部を一箇所形成することで凹凸状に形成されている。
【0061】
そのため、取付金具17の内縁部は、上側の垂直線部分48aと、中間に位置する凹部の底部となる中間の垂直線部分48bと、下側の垂直線部分48cとで、主に構成されている。
【0062】
上側の垂直線部分48aと、中間の垂直線部分48bとの間の段差は、外側へ向けて下り傾斜となる傾斜部分48dとされ、中間の垂直線部分48bと下側の垂直線部分48cとの間の凹部の段差は、ほぼ水平な水平部分48eとされている。
【0063】
上側の垂直線部分48aは、野地板8と太陽電池パネル15との間の位置に、この部分に設けられた水上鋼板51や水上鋼板受金具52と対向し近接するように配置されている。
【0064】
凹部となる中間の垂直線部分48bは、野地板8や屋根フレーム6と対向する部分に、野地板8や屋根フレーム6と離間した状態で配置されている。この凹部には、屋根部5の上側に設けた換気部21からパラペット18の内側へ入る風雨22の換気経路に対する水切部材53が挿入配置されるようになっている。水切部材53は、野地板8の上面の位置から外側へ向けて下り傾斜に延びて凹部内へ挿入されている。
【0065】
下側の垂直線部分48cは、天井梁3の縦面3aとほぼ対向する部分に、天井梁3の縦面3aと当接した状態で配置されている。そして、下側の垂直線部分48c(のフランジ部19)は、天井梁3の縦面3aに対し、建物1の内側から外側へ向かって延びるボルト・ナットなどの締結部材54によって横に固定されている。
【0066】
換気部21の真上の部分とは、パラペット18の外側面下部に設けられた換気部21のほぼ真上に位置する、パラペット18内の部分のことである。
【0067】
切欠部42は、切欠いたような形状の部分のことである。切欠部42は、水返部材24の断面形状と同じ形状に形成される。水返部材24の形状については後述する。
【0068】
(3)水返部材24は、換気部21からパラペット18の内側へ入った風雨22に含まれる水滴23を受ける水滴受部61を有しても良い。
【0069】
ここで、水滴受部61は、水返部材24に設けられた、水滴23を受けるための部分のことである。この実施例では、水滴受部61は、縦向きの面とされている。
【0070】
そして、この水返部材24は、水滴受部61の上端部にパラペット18へ向けて横へ延びる横向きの面を一体に有することで、側面視ほぼL字状のものとされている。この横向きの面は、換気部21からパラペット18の内側へ入った風雨22が、水滴受部61の外面に沿って上へ抜けてしまうのを止めるための吹抜防止部62となる。水滴受部61と吹抜防止部62との間には、ほぼ直角の屈曲部63が形成される。
【0071】
切欠部42は、側面視ほぼL字状の水返部材24に合わせて、横切欠部分42aと縦切欠部分42bとを有する形状とされている。水返部材24は、水滴受部61を、切欠部42の縦切欠部分42bに対してリベットなどの固定部材64を用いて横方向に固定される。
【0072】
なお、水返部材24は、側面視ほぼL字状に限るものではなく、例えば、側方から見て直線的な形状をしている水滴受部61と吹抜防止部62とを、それぞれ曲線状にし、屈曲部63をアール状にして滑らかに繋いだような曲面形状などとしても良い。水返部材24を、曲面形状にした場合には、切欠部42も曲面形状にする。
【0073】
(4)水滴受部61の下端部61a(
図3)は、換気部21へ向かって下方へ延びても良い。
【0074】
ここで、水滴受部61の下端部61aは、水滴受部61の下側の端縁部のことである。水滴受部61の下端部61aは、ほぼ真下へ向かって換気部21に到達しない程度に延びている。
【0075】
より具体的には、水滴受部61の下端部61aは、下部カバー27の外向フィン21bにおける幅中間部の真上に位置している。そして、水滴受部61の下端部61aと下部カバー27の外向フィン21bとの間には間隔が形成され、この間隔は、換気部21のラビリンスシールの通路幅とほぼ同程度の大きさとされている。これにより、水返部材24は、換気部21の出口部分の一部を構成する部材となる。
【0076】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0077】
住宅などの建物1に対し、建物1の上部外側面に、取付金具17を介して、パラペット18を取付ける。
【0078】
そして、パラペット18に換気部21を設ける。パラペット18の内側に、換気部21からパラペット18の内側へ入った風雨22に含まれる水滴23を止めるための水返部材24を設ける。
【0079】
既存の建物1の場合、
図4に示すように、水返部材71を建物1の防水ライン16に近い位置に設けていたので、換気部21から風雨22と共にパラペット18の内側へ吹き込まれた水滴23が、パラペット18の内奥部にある防水ライン16まで到達してしまう。すると、防水ライン16に到達した水滴23によって、例えば、建物1の外壁4に、水滴23などによる雨垂れの跡などが発生してしまう。
【0080】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0081】
(効果 1)この実施例の軒先構造では、水返部材24は、取付金具17における換気部21の近傍の位置に設けるようにしている。これにより、換気部21からパラペット18の内側へ入った風雨22に含まれる水滴23を、取付金具17における換気部21の近傍の位置に設けられた水返部材24によって早期に止めることができる。そのため、換気部21から風雨22と共にパラペット18の内側へ吹き込まれた水滴23が、パラペット18の内奥部へ入って防水ライン16にまで到達するのを抑制できる。
【0082】
よって、パラペット18の内奥部(にある防水ライン16の近くまで)到達する水滴23の量を大幅に減らして、水滴23が防水ライン16にほぼ到達しないようにすることができ、例えば、パラペット18の内奥部に達した水滴23が建物1の外壁4に沿って流下することで、外壁4に雨垂れの跡が発生するといった不具合を抑制、防止できる。
【0083】
(効果 2)軒先構造では、水返部材24は、取付金具17の外縁部における、換気部21の真上の部分に形成された切欠部42に取付けられても良い。これにより、水返部材24を、切欠部42を利用して換気部21の近傍の位置に確実に設けることができる。そして、取付金具17に設けた切欠部42に水返部材24を取付けることで、水返部材24を取付金具17の外縁部の位置で且つ換気部21の真上の部分に確実に設置することができる。
【0084】
(効果 3)軒先構造では、水返部材24は、換気部21からパラペット18の内側へ入った風雨22に含まれる水滴23を受ける水滴受部61を有しても良い。これにより、水返部材24は、水滴受部61によって、換気部21からパラペット18の内側へ入った風雨22に含まれる水滴23を確実に受けることができる。
【0085】
(効果 4)軒先構造では、水滴受部61の下端部61aは、換気部21へ向かって下方へ延びても良い。これにより、水滴受部61で受けた水滴23を水滴受部61に沿って換気部21へ流下させて、換気部21からパラペット18の外部へと導くことができる。
【0086】
この実施例では、換気部21からパラペット18の外部へ導かれた水滴23は、外向フィン21b、内向フィン21a、横面部27bに順に伝わり、下部カバー27の逆傾斜部27aの下端に位置する水平部27fから、外壁4に沿って流下することなく、そのまま地面に落下することになる。
【符号の説明】
【0087】
1 建物
17 取付金具
18 パラペット
21 換気部
22 風雨
23 水滴
24 水返部材
42 切欠部
61 水滴受部
61a 下端部