(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】金属容器の製造方法、及び、金属容器
(51)【国際特許分類】
B21D 26/025 20110101AFI20240626BHJP
B21D 51/18 20060101ALI20240626BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B21D26/025
B21D51/18 Z
B65D1/00 120
(21)【出願番号】P 2020162436
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓樹
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-234522(JP,A)
【文献】特開2000-135534(JP,A)
【文献】特開2004-314158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/02
B21D 51/18
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を略平面的
、且つ対向する2辺側の少なくとも一部において平面内の曲げ剛性を、残りの2辺側の平面内の曲げ剛性よりも低くした四方袋となるように形成する第1工程と、
前記第1工程において形成された前記四方袋の一面及び他面を第1及び第2平行板治具により挟む第2工程と、
前記第2工程において前記第1及び第2平行板治具に挟まれた前記四方袋に対して、前記第1及び第2平行板治具による接触状態を維持しつつ、前記四方袋の内部を加圧していき、前記第1及び第2平行板治具間の距離を広げながら前記四方袋の内部における容積空間を拡大していくことで、前記四方袋を略双四角錐台又は略直方体の容器とする第3工程と、
前記第2工程では、前記第1工程において形成された前記四方袋を平面視したときの面積よりも小さい四角形状の前記第1及び第2平行板治具により、前記四方袋の4辺よりも内側に収まり、且つ、前記四方袋の4辺と前記第1及び第2平行板治具の各辺とが平行となるようにして、前記四方袋の一面及び他面を挟み、
前記第1工程から前記第3工程までに間に実行され、前記四方袋の一面及び他面のうち、前記第1及び第2平行板治具が挟む領域それぞれの四方領域の少なくとも2方を、前記第1及び第2平行板治具と略平行の状態から当該平行に対して所定角度まで回動しつつ前記四方袋の中央側へ移動可能な複数のフラップ治具により挟む第4工程をさらに備え、
前記第3工程では、前記四方袋に対して、前記複数のフラップ治具による回動及び移動を伴う接触状態を維持しつつ、前記四方袋の内部を加圧していくことで、前記四方袋を略双四角錐台の斜面又は略直方体の側面を形成する
ことを特徴とする金属容器の製造方法。
【請求項2】
前記第4工程では、前記複数のフラップ治具を構成する複数の第1フラップ治具と複数の第2フラップ治具とのうち、前記四方領域の対向する2方を前記複数の第1フラップ治具により挟み込み、前記四方領域の対向する残りの2方を前記複数の第2フラップ治具により挟み込む
ことを特徴とする
請求項1に記載の金属容器の製造方法。
【請求項3】
前記複数の第2フラップ治具は、前記四方袋の角部側において、前記第1及び第2平行板治具の各頂点から前記四方袋のうち各第2フラップ治具側の辺に向かって延びる線分部位を有したウェッジを備え、
前記第3工程では、前記四方袋の内部における容積空間を拡大していく過程で、前記線分部位と前記各第2フラップ治具側の辺とのなす角度が鋭角から直角に近づくように、前記ウェッジを動作させる
ことを特徴とする
請求項2に記載の金属容器の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程では、前記第1及び第2平行板治具並びに前記複数のフラップ治具に対して、前記四方袋の内部の加圧による前記容積空間の拡大を抑える方向の力を付与する
ことを特徴とする
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金属容器の製造方法。
【請求項5】
略双四角錐台又は略直方体の金属容器であって、
容器の一面及び前記一面に対向する他面として形成される四角形状の2枚の天板と、
前記2枚の天板を接続する複数の側壁と、
前記2枚の天板のうち対向する頂点同士から互いに近づく斜辺を有して側方に突出し又は前記複数の側壁に対して沿うように折り畳まれた複数の耳部と、を備え、
前記複数の側壁のうち前記天板の対向する方向における中間部位は、対向する2辺側の少なくとも一部において平面内の曲げ剛性を、残りの2辺側の平面内の曲げ剛性よりも低くされており、
前記複数の耳部と前記複数の側壁との境界には谷折り部が形成されており、
前記谷折り部と前記斜辺との間には、前記頂点を回転中心とする1又は複数の谷折り痕が形成されている
ことを特徴とする金属容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属容器の製造方法、及び、金属容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステンレス等の金属板材の周端部を挟持固定すると共に、中央部をパンチで押し込むことにより深絞り加工を行う方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者は、内部に粉体等の真空断熱コア材料をもつ中空容器について研究している。特許文献1に記載の深絞り加工によって形成された板材を2つ組み合わせることで中空容器を製造することができる。しかし、特許文献1に記載の方法では、成形中の金属板に局所的に伸びを発生させてしまうことから、伸びにより金属板が破れてしまうことがある。
【0005】
また、コア材料を包装紙で包装するように金属板を成形することは困難性が高く、また真空維持できるようにするために、包装後の金属板の各所で封着することとなるが、立体成形物に対する封着を行うことは困難であり、かつ封着部箇所が多すぎて現実的でなかった。
【0006】
そこで、封筒状の四方袋を出発点とし、ガス圧成形により略双四角錐台(底面を有しない2つの四角錐台の底面側同士をつなげたもの)や略直方体の容器を作ることを試みている。しかし、四方袋を出発点としてガス圧成形を行う場合であっても、成形中の材料の過大な伸びにより破れてしまうことが分かった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、四方袋から容器を形成するにあたり、局所的な金属板の伸びによる破れを抑えることができる金属容器の製造方法を提供すると共に、その製造方法によって製造された金属容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る金属容器の製造方法は、金属板を略平面的、且つ対向する2辺側の少なくとも一部において平面内の曲げ剛性を、残りの2辺側の平面内の曲げ剛性よりも低くした四方袋となるように形成する第1工程と、前記第1工程において形成された前記四方袋の一面及び他面を第1及び第2平行板治具により挟む第2工程と、前記第2工程において前記第1及び第2平行板治具に挟まれた前記四方袋に対して、前記第1及び第2平行板治具による接触状態を維持しつつ、前記四方袋の内部を加圧していき、前記第1及び第2平行板治具間の距離を広げながら前記四方袋の内部における容積空間を拡大していくことで、前記四方袋を略双四角錐台又は略直方体の容器とする第3工程と、前記第2工程では、前記第1工程において形成された前記四方袋を平面視したときの面積よりも小さい四角形状の前記第1及び第2平行板治具により、前記四方袋の4辺よりも内側に収まり、且つ、前記四方袋の4辺と前記第1及び第2平行板治具の各辺とが平行となるようにして、前記四方袋の一面及び他面を挟み、前記第1工程から前記第3工程までに間に実行され、前記四方袋の一面及び他面のうち、前記第1及び第2平行板治具が挟む領域それぞれの四方領域の少なくとも2方を、前記第1及び第2平行板治具と略平行の状態から当該平行に対して所定角度まで回動しつつ前記四方袋の中央側へ移動可能な複数のフラップ治具により挟む第4工程をさらに備え、前記第3工程では、前記四方袋に対して、前記複数のフラップ治具による回動及び移動を伴う接触状態を維持しつつ、前記四方袋の内部を加圧していくことで、前記四方袋を略双四角錐台の斜面又は略直方体の側面を形成する。
【0010】
また、本発明に係る金属容器は、略双四角錐台又は略直方体の金属容器であって、容器の一面及び前記一面に対向する他面として形成される四角形状の2枚の天板と、前記2枚の天板を接続する複数の側壁と、前記2枚の天板のうち対向する頂点同士から互いに近づく斜辺を有して側方に突出し又は前記複数の側壁に対して沿うように折り畳まれた複数の耳部と、を備え、前記複数の側壁のうち前記天板の対向する方向における中間部位は、対向する2辺側の少なくとも一部において平面内の曲げ剛性を、残りの2辺側の平面内の曲げ剛性よりも低くされており、前記複数の耳部と前記複数の側壁との境界には谷折り部が形成されており、前記谷折り部と前記斜辺との間には、前記頂点を回転中心とする1又は複数の谷折り痕が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、四方袋から容器を形成するにあたり、局所的な金属板の伸びによる破れを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る金属容器の製造方法によって製造される金属容器を示す斜視図であり、(a)は第1の金属容器を示し、(b)は第2の金属容器を示している。
【
図2】
図1(a)に示した耳部の周辺の拡大図である。
【
図3】金属容器の製造に用いる四方袋を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る金属容器の製造装置の要部を示す概略構成図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【
図5】
図4に示した第2フラップ治具の詳細を示す一部拡大図であり、(a)はウェッジの最大突出状態を示し、(b)はウェッジの最小突出状態を示している。
【
図6】略直方体形状の容器を形成する過程における途中経過を示す斜視図であり、(a)は第1段階を示し、(b)は第2段階を示している。
【
図7】四方袋の作成工程を示す斜視図であり、(a)は金属板を示し、(b)は金属板を折った状態を示し、(c)は四方袋を示している。
【
図8】四方袋から略直方体形状の容器を形成する過程を示す工程図であり、(a)は四方袋を挟持した段階を示し、(b)は内部を加圧した第1段階を示し、(c)は内部を加圧した第2段階を示し、(d)は容器の完成段階を示している。
【
図9】四方袋の他の例を示す斜視図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る金属容器の製造方法によって製造される金属容器を示す斜視図であり、(a)は第1の金属容器を示し、(b)は第2の金属容器を示している。
【0015】
図1(a)に示すように、本実施形態において製造される金属容器Cは、例えば略直方体形状の容器C1であり、容器C1の一面及び一面に対向する他面として形成される四角形状の2枚の天板TBと、2枚の天板TBを接続する複数の側壁HPと、その製造の過程において容器C1の四つ角から突出する複数の耳部Dとを備えている。また、長辺LS側の端部にはシーム溶接部SWが形成されている。一方、長辺LSと直交する短辺SS側の端部(短辺SSの中間部)は溶接等されていないエッジ辺Eとなっている。
【0016】
また、
図1(b)に示すように、本実施形態において製造される金属容器Cは、例えば略双四角錐台形状の容器C2である。本実施形態において双四角錐台とは、底面を有しない四角錐台の底面側同士を接続したものである。容器C2は、容器C1と同様に、容器C2の一面及び一面に対向する他面として形成される四角形状の2枚の天板TBと、2枚の天板TBを接続する複数の側壁HPと、その製造の過程において容器C2の四つ角から突出する複数の耳部Dとを備えている。また、長辺LS側の端部にはシーム溶接部SWが形成されている。さらに、長辺LSと直交する短辺SS側の端部についても同様に溶接等されていないエッジ辺Eとなっている。
【0017】
なお、容器C1,C2は、製造方法によって短辺SS側にシーム溶接部SWが形成されていてもよいし、長辺LS側及び短辺SS側の双方(4辺側)にシーム溶接部SWが形成されていてもよい。
【0018】
図2は、
図1(a)に示した耳部Dの周辺の拡大図である。
図2に示すように、耳部Dは、2枚の天板TBの対向する頂点V同士から互いに近づく斜辺HYを有して側方に突出したものである。ここで、対向とは、一面と他面とを結ぶ方向に対向していることをいう。このような耳部Dと側壁HPとの間には谷折りされた谷折り部VFが形成されている。
【0019】
さらに、上記谷折り部VFと斜辺HYとの間には、頂点Vを回転中心とする複数(1つでも可)の谷折り痕VTが形成されている。谷折り痕VTは、後述するように、容器C1の製造過程において、過去に谷折り部VFであった箇所であり、過去に谷折りされていた形跡が残る箇所である。
【0020】
なお、
図2においては、
図1(a)の1つの耳部Dの周辺を図示しているが、他の箇所の耳部Dについても同様である。また、説明を省略するが、
図1(b)に示す略双四角錐台形状の容器C2についても同様に、谷折り部VFと斜辺HYとの間に、頂点Vを回転中心とする複数(1つでも可)の谷折り痕VTが形成されている。
【0021】
このような
図1(a)及び
図1(b)に示す金属容器Cは、四方袋から製造される。
図3は、金属容器Cの製造に用いる四方袋を示す斜視図である。
図3に示すように、四方袋Bは、金属板(例えば0.1mm厚程度のステンレス板)MP(後述の
図7参照)を折り畳み及び溶接等して形成される略平面的な四角形状(正方形状又は長方形状)の袋部材であって、その四方が(後述の開口を除き)閉じられた状態となったものである。この四方袋Bには、内部加圧用の開口(小孔)が形成されている。このような四方袋Bは開口を通じて内部が加圧されて内部の容積空間を拡大していく。容積空間拡大後には開口が封止されて、
図1(a)及び
図1(b)に示すような金属容器Cが製造される。
【0022】
図4は、本実施形態に係る金属容器Cの製造装置の要部を示す概略構成図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、製造装置1は、第1及び第2平行板治具11,12を備えている。第1及び第2平行板治具11,12は、
図4(a)に示すように平面視して四角形状(略正方形又は長方形状)となる平板である。なお、
図4(a)では製造装置1の一面側のみを図示しているが、他面側の第2平行板治具12及び後述のフラップ治具Fも一面側の第1平行板治具11及びフラップ治具Fと同一形状である。第1及び第2平行板治具11,12は、四方袋Bを平面視したときの面積よりも小さくなっており、四方袋Bの4辺よりも内側に収まった状態で、四方袋Bの一面及び他面を挟むようになっている。また、第1及び第2平行板治具11,12の各辺は、四方袋Bの4辺と平行となるようにして、四方袋Bの一面及び他面を挟むようになっている。この第1及び第2平行板治具11,12は、金属容器Cの天板TBを形成するものとなる。
【0023】
さらに、製造装置1は、複数のフラップ治具Fを備えている。フラップ治具Fは、四方袋Bの一面及び他面のうち、第1及び第2平行板治具11,12が挟む領域の四方領域、すなわち四方袋Bの端部側を挟むものである。このフラップ治具Fは、
図4(a)及び
図4(b)の矢印A1に示すように回動可能となっており、略直方体形状の容器C1の側面、又は、略双四角錐台形状の容器C2の斜面を形成するようになっている。
【0024】
このフラップ治具Fは、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、初期的に第1及び第2平行板治具11,12と略平行の状態となっており、製造過程において略平行の状態から当該平行に対して所定角度まで回動する(後述する
図8参照)。略直方体形状の容器C1を製造する製造装置1において所定角度は90°であり、略双四角錐台形状の容器C2を製造する製造装置1において所定角度は90°未満となる。
【0025】
また、フラップ治具Fは、後述する
図8に示すように、製造過程において四方袋Bの中央側へ移動する構成となっている。よって、フラップ治具Fは、金属容器Cの製造過程において、回動しながら四方袋Bの中央側へ移動することとなり、金属容器Cを側方から折り込むように動作することとなる。
【0026】
ここで、第1及び第2平行板治具11,12は、リンク機構Lを介してフラップ治具Fに接続されている。このため、フラップ治具Fは、第1及び第2平行板治具11,12が互いに離れる方向に移動する動作に合わせて、回動しながら四方袋Bの中央側へ移動するように動作することとなる。フラップ治具Fは、四方袋Bの内部の空間容積が拡大するのに合わせて、徐々に金属容器Cを側方から折り込むように形成していくこととなる。なお、後述するウェッジWについてもリンク機構Lを介して第1及び第2平行板治具11,12の動作と連動して動作することとなる。
【0027】
また、複数のフラップ治具Fは、四方領域の対向する2方(本実施形態においてシーム溶接部SW側の2方)を挟み込む複数の第1フラップ治具F1と、四方領域の対向する残りの2方(本実施形態においてエッジ辺E側の2方)を挟み込む複数の第2フラップ治具F2とを備えている。
図4(a)に示すように、第1フラップ治具F1は、平面視して台形状となっている。これに対して、第2フラップ治具F2は、平面視して長方形状となる本体部Hと、本体部Hの両端部側(すなわち四方袋Bの角部側)のウェッジWとを有して構成されている。
【0028】
図5は、
図4に示した第2フラップ治具F2の詳細を示す一部拡大図であり、(a)はウェッジWの最大突出状態を示し、(b)はウェッジWの最小突出状態を示している。
【0029】
ウェッジWは、第1及び第2平行板治具11,12の各頂点Vから、四方袋Bの第2フラップ治具F2側の辺(すなわちエッジ辺E)に向かって延びる線分部位W1を有している。金属容器Cの製造装置1において、ウェッジWは、四方袋Bの内部を加圧して内部における空間容積が拡大していく過程で、線分部位W1を移動させる。
【0030】
詳細にウェッジWは、
図5(b)に示すように、線分部位W1と四方袋Bの第2フラップ治具F2側の辺(すなわちエッジ辺E)とのなす角度θが鋭角から直角に近づくように回動しながら、本体部H側に移動する。この際、
図5(a)及び
図5(b)に示すスプリングSPと、本体部Hに形成された長円部LHと、ウェッジWと一体に連結され長円部LHに嵌まり込むビス部Sとの協働によって、ウェッジWの移動量が制御される。なお、ウェッジWの回動は不図示の適宜手段によって制御される。このようなウェッジWによって、本実施形態に係る金属容器Cの製造装置1は、後述の
図6に示すように、より一層容器Cを折り込むように作成することができる。
【0031】
図6は、略直方体形状の容器C1を形成する過程における途中経過を示す斜視図であり、(a)は第1段階を示し、(b)は第2段階を示している。本実施形態において略直方体形状の容器C1は、
図6(a)に示す第1段階、及び、
図6(b)に示す第2段階を経て、形成される。
【0032】
ここで、
図6(a)に示すように、本実施形態において略直方体形状の容器C1は、四方袋Bの内部を加圧しながら折り込むように形成されるため、
図6(a)に示す谷折り部VFが形成される。次に、四方袋Bの内部加圧を経て内部容積を更に拡大すると、
図6(b)に示す谷折り部VFが形成される。
【0033】
図6(a)及び
図6(b)に示す谷折り部VFを比較すると、エッジ辺Eに対する角度θが異なっている。すなわち、四方袋Bを折り込むようにして容器C1を形成する場合において、谷折り部VFはエッジ辺Eに対する角度θが変化している。本実施形態に係る金属容器Cの製造装置1は、この変化する角度θに合わせて
図5(b)に示すようにウェッジWの線分部位W1を移動させることで、より適切に容器C1を折り込むように形成できることとなる。
【0034】
なお、上記では略直方体形状の容器C1を例に説明したが、略双四角錐台形状の容器C2を作成する場合も同様である。
【0035】
次に、本実施形態に係る金属容器Cの製造方法を説明する。
図7は、四方袋Bの作成工程を示す斜視図であり、(a)は金属板MPを示し、(b)は金属板MPを折った状態を示し、(c)は四方袋Bを示している。
【0036】
まず、
図7(a)に示すように、長方形状の金属板MPが用意される。次いで、
図7(b)に示すように、長方形状の金属板MPの短辺MP1同士を付き合わせるように折り曲げられる。ここで、折り曲げられた部位が上記したエッジ辺Eとなる。その後、
図7(c)に示すように、短辺MP1同士が突き合わせ溶接されて突き合わせ溶接部BWが形成される。一方、エッジ辺Eと直交する辺はシーム溶接されてシーム溶接部SWとされる。以上により、金属板MPから略平面的な四方袋Bとされる。
【0037】
図8は、四方袋Bから略直方体形状の容器C1を形成する過程を示す工程図であり、(a)は四方袋Bを挟持した段階を示し、(b)は内部を加圧した第1段階を示し、(c)は内部を加圧した第2段階を示し、(d)は容器C1の完成段階を示している。
【0038】
まず、
図8(a)に示すように、第1及び第2平行板治具11,12により四方袋Bを挟み込む。この際、第1及び第2平行板治具11,12は、四方袋Bの4辺よりも内側に収まり、且つ、四方袋Bの4辺と第1及び第2平行板治具11,12の各辺とが平行となるように、四方袋Bの一面及び他面が挟み込まれる。
【0039】
さらに、
図8(a)に示すように、フラップ治具Fは、第1及び第2平行板治具11,12により挟まれる領域の四方領域、すなわち四方袋Bの端部側を挟み込む。より詳細には、
図4(a)に示すように、四方領域の対向する2方を第1フラップ治具F1で挟み込むと共に、四方領域の対向する残りの2方を第2フラップ治具F2で挟み込む。
【0040】
加えて、
図8(a)に示すように、本実施形態においては製造装置1等の上壁UWと第1平行板治具11との間にエアバックABを配置している。これにより、エアバックABが第1平行板治具11を押さえつけることとなり容積空間が拡大する際の反力(拡大を抑える方向の力)を付与するようになっている。さらに、第1平行板治具11と連動する第2平行板治具12、第1及び第2平行板治具11,12とリンク機構Lを介して連動するフラップ治具Fに対しても同様に反力を付与することとなる。
【0041】
次いで、
図8(a)の状態から四方袋Bの内部を加圧していく。これにより、
図8(b)及び
図8(c)に示すように四方袋Bの容積空間が拡大していく。この拡大の過程においてエアバックABの反力が付与されることで、四方袋Bは、第1及び第2平行板治具11,12、並びに、フラップ治具Fの形状に合致したものとなる。すなわち、第1及び第2平行板治具11,12、並びに、フラップ治具Fは、四方袋Bに対して接触状態を維持したまま、四方袋Bの空間容積が拡大されていく。
【0042】
加えて、
図8(b)及び
図8(c)に示すように四方袋Bの容積空間が拡大していく過程において、
図5(b)に示すように、ウェッジWの線分部位W1が回動しながら本体部Hに近づくこととなる。これにより、
図6(a)及び
図6(b)に示したように、容積空間の大きさに応じた谷折り部VFが形成される。
【0043】
その後、さらに容積空間が拡大して、
図8(d)に示すように略直方体形状の容器C1が作成されることとなる。
【0044】
なお、略直方体形状の容器C1ではなく、略双四角錐台形状の容器C2を形成する場合には、
図8(d)に示す状態まで四方袋Bの内部を加圧することなく、例えば
図8(c)の状態で終了すればよい。
【0045】
また、フラップ治具Fは四方領域を挟む場合に限らず、四方領域の2方又は3方のみを挟むようになっていてもよい。これによっても一定の折り込み効果を得ることができるからである。
【0046】
このようにして、本実施形態に係る金属容器Cの製造方法及び製造装置1によれば、四方袋Bに対して、第1及び第2平行板治具11,12による接触状態を維持しつつ、四方袋Bの内部を加圧していき、第1及び第2平行板治具11,12間の距離を広げながら四方袋Bの内部における容積空間を拡大していくため、端部側において比較的剛性が高く中央側において比較的剛性が低い四方袋Bにおいて、比較的剛性が低い部分を抑えながら四方袋Bの内部を加圧していくこととなり、四方袋Bから容器を形成するにあたり、局所的な金属板MPの伸びによる破れを抑えることができる。
【0047】
また、四方領域の少なくとも2方を、回動しつつ四方袋の中央側へ移動可能な複数のフラップ治具Fにより挟み、第1及び第2平行板治具11,12による接触状態を維持しつつ、且つ、複数のフラップ治具Fによる回動を伴う接触状態を維持しつつ、四方袋Bの内部を加圧していくため、フラップ治具Fを用いて略双四角錐台の斜面部分又は略直方体の側面部分を形成するようにできる。しかも、フラップ治具Fは中央側へ移動することから四方袋Bを折り込むようにして容器を形成することができ、一層破れを抑えつつ金属容器Cを形成することができる。
【0048】
また、四方領域の対向する2方を複数の第1フラップ治具F1により挟み込み、四方領域の対向する残りの2方を複数の第2フラップ治具F2により挟み込むため、略双四角錐台又は略直方体の容器C1,C2を形成する際に容器C1,C2の全面を押えることができ、一層四方袋Bを折り込むようにして容器C1,C2を形成することができ、破れの可能性を一層低減することができる。
【0049】
また、四方袋Bの内部における容積空間を拡大していく過程で、線分部位W1とエッジ辺Eとのなす角度θが鋭角から直角に近づくように、ウェッジWを動作させるため、略双四角錐台又は略直方体の容器C1,C2を形成するにあたり、谷折りに折り込むべき箇所にウェッジWの線分部位W1を当てるようにでき、より一層四方袋Bを折り込むようにして金属容器Cを形成することができ、破れの可能性をより大きく低減することができる。
【0050】
また、第1及び第2平行板治具11,12並びに複数のフラップ治具Fに対して、四方袋Bの内部の加圧による容積空間の拡大を抑える方向の力を付与するため、金属容器Cを第1及び第2平行板治具11,12並びに複数のフラップ治具Fに合致する形状とでき、よりきれいな形状の双四角錐台又は直方体とすることができる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る金属容器Cによれば、四方袋Bに基づいて局所的な金属板MPの伸びによる破れを抑えられた金属容器Cとすることができる。
【0052】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0053】
例えば、上記実施形態において金属容器Cの製造装置1はフラップ治具Fを有しているが、特にこれに限らず、フラップ治具Fを有していなくともよい。また、
図8に示す例において、第1及び第2平行板治具11,12により四方袋Bを挟む工程と、フラップ治具Fにより四方袋Bを挟む工程とは、同時に行われているが、これに限らず、第1及び第2平行板治具11,12により四方袋Bを挟む工程が先に行われてもよいし、フラップ治具Fにより四方袋Bを挟む工程が先に行われてもよい。
【0054】
また、四方袋Bは2枚の同じ面積の金属板MPを重ね合わせて、その周縁部を溶接する等、
図7に示した工程以外の工程で作成されてもよい。
【0055】
さらに、本実施形態において容器Cを形成する際には耳部Dが形成されることから、耳部Dを形成し易くするために、四方袋Bの対向する2辺の(少なくとも一部の)剛性が残りの2辺の剛性よりも低いことが好ましい。例えば
図2に示す四方袋Bにおいては、シーム溶接部SWが形成された長辺LS側において平面内の曲げ剛性が高くなり、エッジ辺Eを有する短辺SS側において平面内の曲げ剛性が低くなっている。よって、
図2に示した四方袋Bから容器Cを製造する場合には、耳部Dが形成し易いこととなる。
【0056】
これに対して、例えば4辺にシーム溶接部SWが形成された四方袋Bから容器Cを製造する場合には、対向する2辺の一方について平面内の曲げ剛性を低くする処理を施して、当該2辺(の少なくとも一部)において平面内の曲げ剛性を残りの2辺よりも低くしておくことが好ましい。
図9は、四方袋Bの他の例を示す斜視図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示している。
【0057】
図9(a)に示すように、例えば同じ面積の長方形状の金属板MP同士を重ね合わせ、4辺にシーム溶接を行ってシーム溶接部SWを形成して四方袋Bを製造したとする。このような四方袋Bから容器Cを製造する場合、例えば対向する2辺(短辺SS側)のシーム溶接部SWの両端側に、シーム溶接部SWの幅を小さくするための切り込み部Nを形成する。これにより、切り込み部Nの位置(少なくとも一部の位置)において平面内の曲げ剛性を低くし、この位置で折りを発生させ易くして、耳部Dを形成し易くすることができる。なお、切り込み部Nは、シーム溶接部SWの端部VMから最終的に製造される容器Cの高さの半分に相当する距離だけ離れた位置、又は当該位置からよりも端部VMに近い位置に形成される。
【0058】
さらに、
図9(b)に示すように、例えば対向する2辺(短辺SS側)のシーム溶接部SWを立ち上げ又は立ち下げるように折り曲げるようにしてもよい。これにより、折り曲げ部位BEが
図2に示したエッジ辺Eのように作用することとなり、折り曲げ部位BEにおける平面内の曲げ剛性を低くして、耳部Dを形成し易くすることができる。
【0059】
さらに、本実施形態において第2フラップ治具F2はウェッジWを備えているが、これに限らず、ウェッジWを備えていなくともよい。また、ウェッジWを備えない場合には、
図10に示す補助板APを備えていてもよい。
図10は、補助板APを示す平面図である。
図10に示すように、補助板APは、四方袋Bに重ねられるものであって、谷折り部VFが形成される位置に合わさるように重ねられる。詳細に補助板APには、複数の長円孔OVが形成されている。複数の長円孔OVは、補助板APの端部側から中央側に掛けて、エッジ辺Eとのなす角度θが大きくなるように(すなわち鋭角から直角となるように)変化している。このような補助板APを谷折り部VFが形成される位置に合わさるように重ねることで、ウェッジWを有しない製造装置1であっても谷折り部VFの形成を補助することができる。なお、この補助板APについては、シーム溶接部SWよりも平面内の曲げ剛性が低いエッジ辺E付近について補強しつつも、長円孔OVの部分については補強することはない。よって、一部(長円孔OVの部分)については、シーム溶接部SWを有する2辺よりも平面内の曲げ剛性を低くしていることとなる。
【0060】
また、金属容器Cは
図11のようにされていることが好ましい。
図11は、変形例に係る耳部Dの周辺の拡大図である。耳部Dは側方に突出したままでもよいが、
図11に示すように側壁HPに沿うように折り畳まれていることが好ましい。これにより、金属容器Cの形状を略直方体形状、又は略双四角錐台形状に近づけることができるためである。また、可能であれば、耳部Dを折り畳む際にシーム溶接部SWについても側壁HPに沿うように折り畳むことが好ましい。なお、耳部Dはエッジ辺Eを有する側の側壁HPに沿うように手前側に折り畳まれているが、これに限らず、逆方向に折り畳まれてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 :製造装置
11 :第1平行板治具
12 :第2平行板治具
AB :エアバック
AP :補助板
B :四方袋
BW :突き合わせ溶接部
C :金属容器
C1 :略直方体形状の容器
C2 :略双四角錐台形状の容器
D :耳部
E :エッジ辺
F :フラップ治具
F1 :第1フラップ治具
F2 :第2フラップ治具
H :本体部
HP :側壁
HY :斜辺
L :リンク機構
LH :長円部
LS :長辺
MP :金属板
MP1 :短辺
OV :長円孔
S :ビス部
SP :スプリング
SS :短辺
SW :シーム溶接部
TB :天板
UW :上壁
V :頂点
VF :谷折り部
VT :谷折り痕
W :ウェッジ
W1 :線分部位
θ :角度