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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】接続クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/14 20060101AFI20240626BHJP
   H01R 4/2408 20180101ALN20240626BHJP
【FI】
H01R11/14
H01R4/2408
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020171533
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022063144
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000207089
【氏名又は名称】大電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 大弥
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 康二
(72)【発明者】
【氏名】柿原 大輝
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭47-034074(JP,U)
【文献】特開2020-004495(JP,A)
【文献】特開平09-046843(JP,A)
【文献】実開昭53-021379(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/24-4/46
H01R 11/14
H01R 11/15
H01R 11/20
H02G 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略コ字形状で形成される開口部を有するクランプ本体と、当該クランプ本体の開口部内の一端に、連続する凹形状の溝部を有して被覆電線を収容して保持する電線保持手段と、当該クランプ本体の開口部内の他端で、当該クランプ本体の開口部内の一端に向かって出没自在に進出して当該被覆電線の被覆を押圧回転しつつ切削する切削手段と、を備える接続クランプ装置において、
前記電線保持手段が、
前記溝部の溝方向の中間位置で、且つ、前記溝部の溝方向と直交する面の全幅に亘って連続する内角40°~70°のV字形状で形成される突起部と、前記突起部に対して前記溝部の溝方向に隣接し、前記突起部よりも段差の低い空間から形成される段差部と、を備え、
前記切削手段が、前記突起部の対向位置に配設され、前記被覆電線の長手方向における前記切削手段及び前記突起部の各端面が各々同じ幅を有すると共に、前記被覆電線の長手方向における前記各端面の幅を一致させた状態で、前記切削手段が対向する前記突起部のV字形状内へ前記被覆電線の被覆を押圧回転しつつ切削することを特徴とする
接続クランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の接続クランプ装置において、
前記電線保持手段の突起部が、内角60°のV字形状で形成される
接続クランプ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の接続クランプ装置において、
前記電線保持手段の段差部の溝方向と直交する面が、U字形状で形成されるか、又は、前記突起部と同一の内角を有するV字形状で形成される
接続クランプ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の接続クランプ装置において、
前記電線保持手段が、前記クランプ本体から着脱可能に構成される
接続クランプ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の接続クランプ装置において、
前記切削手段が、前記被覆電線に接触する先端部分に段差を設けて構成される
接続クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電バイパス工法用機材として配電線路からバイパス線を引き出す際、配電線路の被覆電線の被覆を貫通して電気的接続を得る接続クランプ装置に関し、特に、小サイズの被覆電線(細線)に対して導体損傷を抑制可能な接続クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電バイパス工法において、配電線路からバイパス線や接地線を引き出す際には、被覆電線(ケーブル)の被覆を貫通して導体に接触して電気的接続を得る切削刃を備える接続クランプ装置が用いられている。この切削刃によって、被覆を剥ぎ取る工程と、被覆中の導体に直接接触してクランプする工程が一度に行える利点がある。
【0003】
近年、消費電力の小さい需要家に対しても無停電バイパス工法を適用することが増えているため、とりわけ小サイズの被覆電線(細線)を対象とする需要が高まっている。
【0004】
従来の接続クランプ装置では、太物電線(または硬銅線)用と、細線(細物銅線)用に大別されるが、以下に述べるように、太物電線用の接続クランプ装置を、そのまま小サイズの細線用に転用して用いることはできない。
【0005】
先ず、太物電線用の接続クランプ装置としては、高圧架空配電線に使用されるものと、低圧配電線用(軟銅線・硬銅線共用)に使用されるものがある。
【0006】
このうち高圧架空配電線に使用される接続クランプ装置では、その対象となる被覆電線としては、一般に導体が銅線(Cu)5mm~200mm2まで対応可能であり、その対象となる被覆電線の導体は、一定の硬度を有する硬銅線である。したがって、小サイズの被覆電線である細線であり、かつ硬銅線ほどの高い硬度が無い軟銅線に対してこのような接続クランプ装置をそのまま使用することができない。
【0007】
このような接続クランプ装置の一般的な形状は、被覆電線を収容する部材が山形形状で形成され、その山形形状の窪んだ溝に被覆電線を収容する。その山形形状の窪んだ溝を構成する内角の角度は作業性を考慮して一般に100°が採用されており、一般に山形形状の部材の両サイドに壁がない構造となっている。
【0008】
また、低圧配電線用に使用される接続クランプ装置では、その対象となる被覆電線の導体が、例えばCVケーブルやIV線等のように軟銅線が採用された概ね22mm2以下の場合は、切削刃によって導体を大きく損傷させるため、小サイズの被覆電線である細線は適用除外とされている。
【0009】
このような接続クランプ装置の一般的な形状は、被覆電線を収容する部材が山形形状で形成され、その山形形状の窪んだ溝に被覆電線を収容する。その山形形状の窪んだ溝を構成する内角の角度は作業性を考慮して一般に120°が採用されており、一般に山形形状の部材の両サイドに壁がない構造となっている。(この従来の接続クランプ装置を、後述の実施例1において、従来の比較例として「内角120°接続クランプ装置」ともいう)。
【0010】
上述のように、太物電線用の接続クランプ装置では、被覆電線を収容する山形形状の部材は、太さのある太物電線を収容可能とするために一般にその内角が100°および120°に設定され、山形形状の部材の両サイドに壁がない構造となっている。この構造の接続クランプ装置に、小サイズの被覆電線である細線(特に軟電線)を適用すると、導体のばらけによる導体損傷が生じ、その後の通電に支障を及ぼし得る。
【0011】
その一方で、細線用の従来の接続クランプ装置は、一般に高圧架空配電線の引下線(PDCまたはPDP)に使用されている。一般に、このような接続クランプ装置の被覆電線を収容する部材は山形形状で形成されており、その山形形状の窪んだ溝に被覆電線を収容するが、その溝は、個々の電線被覆外径に適合したサイズになっており、針状電極が押し込まれた際に被覆電線の形状がつぶれないように両サイドに壁を設けた構造となっている。
【0012】
このような小サイズの被覆電線(細線)を対象とする従来の接続クランプ装置としては、例えば、幅広溝が設けられた上顎部と、幅広溝に接近及び離間可能に対向配置されると共に幅広溝に接近した状態において幅広溝との間で電線を狭持する下顎部と、を備え、上顎部が幅広溝を規定する第一の内周面、及び、下顎部との間で幅広溝に対して電線を出し入れする出入口を形成する第二の内周面を含む被覆貫通クランプに着脱可能な被覆貫通クランプ用スペーサであって、幅狭溝が設けられた本体部と、本体部に接続された先端部と、を備え、被覆貫通クランプに固定された状態において、本体部は、幅狭溝が下顎部と対向するように上顎部の第一の内周面の内側に配置され、先端部は、上顎部の第二の内周面の延びる方向に延びると共に、出入口を狭くすべく、第二の内周面と下顎部との間に配置されるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2020-004495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、従来の接続クランプ装置では、例えば特許文献1でいうところの上顎部に収容固定された被覆電線が、切削刃により上顎部に向かって押し込まれるにつれて、当該押し込む向きと反対方向の反力を上顎部から受けることで、被覆電線が反り返ってしまって切削刃の位置を折曲点とする「くの字」に曲がり、被覆電線の導体が損傷してしまうという課題がある。
【0015】
さらには、被覆電線が、上記のように切削刃の位置を折曲点とする「くの字」に曲がる際に、被覆電線との接触面における切削刃の端部が鋭いエッジとなって、被覆電線の導体にさらに鋭利な損傷を与えしてしまうという課題もある。
【0016】
また、例えば、特許文献1のように、小サイズの被覆電線(細線)を対象とする接続クランプ装置であっても、被覆電線のサイズに応じて、個々の被覆電線径に適合するサイズの器具を都度用意する必要があるため、被覆電線の径がわずかに変わるだけで別の器具を用いなければならず、作業性及び利便性が低いものにとどまっている。例えば9.5mm径の被覆電線に適合する接続クランプ装置で使用すべきPDC線を、11mm径の被覆電線に適合する接続クランプ装置で使用すると、被覆電線の導体がつぶれてしまい、導体の損傷が激しくなり実用的ではない。
【0017】
このように、小サイズの被覆電線(細線)を対象とした従来の接続クランプ装置では、導体損傷が起きやすく作業性及び利便性にも課題がある。また、送配電線の安全管理上の観点から、被覆電線の導線を損傷させないことが強く要請されている。導体損傷を抑えて、作業性及び利便性にも優れ、各種サイズの被覆電線に適合できる汎用性の高い接続クランプ装置が切望されているが、そのような優れた接続クランプ装置は現在のところ見当たらない。
【0018】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、小サイズの被覆電線(細線)を対象として、導体損傷を抑えて、作業性及び利便性にも優れ、各種サイズの被覆電線に適合できる汎用性の高い接続クランプ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る接続クランプ装置は、略コ字形状で形成される開口部を有するクランプ本体と、当該クランプ本体の開口部内の一端に、連続する凹形状の溝部を有して被覆電線を収容して保持する電線保持手段と、当該クランプ本体の開口部内の他端で、当該クランプ本体の開口部内の一端に向かって出没自在に進出して当該被覆電線の被覆を切削する切削手段と、を備える接続クランプ装置において、前記電線保持手段が、前記溝部の溝方向の中間位置で、且つ、前記溝部の溝方向と直交する面の全幅に亘って連続する内角40°~70°のV字形状で形成される突起部と、前記突起部に対して前記溝部の溝方向に隣接し、前記突起部よりも段差の低い空間から形成される段差部と、を備え、前記切削手段が、前記突起部の対向位置に配設されるものである。
【0020】
このように、前記電線保持手段が、前記溝部の溝方向の中間位置で、且つ、前記溝部の溝方向と直交する面の全幅に亘って連続する内角40°~70°のV字形状で形成される突起部と、前記突起部に対して前記溝部の溝方向に隣接し、前記突起部よりも段差の低い空間から形成される段差部と、を備え、前記切削手段が、前記突起部の対向位置に配設されることから、前記被覆電線が、前記切削手段と前記突起部の両接触面で挟持されて固定されると共に、前記溝方向に沿って前記突起部に隣接する前記段差部の段差の低い空間内で遊嵌されることから、前記被覆電線が前記切削手段により前記電線保持手段に向かって押し込まれるにつれて、前記被覆電線が前記切削手段の当該押し込む向きと反対方向の反力を前記電線保持手段から受けないこととなり、前記被覆電線が、前記突起部により安定的に保持されると共に前記段差部により安定した形状を維持することができ、前記被覆電線が前記切削手段と接する位置を折曲点として「くの字」に屈曲することもなく、前記被覆電線の導体の損傷を抑制することができる。また、前記被覆電線が、上記のように「くの字」に屈曲せずにその形状を維持できることから、前記被覆電線と前記切削手段との接触面の端部に鋭いエッジも生じないものとなり、前記被覆電線の導体の損傷をさらに抑制することができる。
【0021】
本発明に係る接続クランプ装置は、必要に応じて、前記電線保持手段の突起部が、内角60°のV字形状で形成されるものである。このように、前記電線保持手段の突起部が、内角60°のV字形状で形成されることから、前記切削手段が被覆電線に接触する接触面と、前記突起部の当該V字形状とで、正三角形の断面形状が形成され、前記切削手段が被覆電線に接触する接触面と、前記突起部の当該V字形状とで形成される正三角形の断面形状の重心と、被覆電線の断面形状の重心とが、完全に一致することから、被覆電線が前記突起部でぶれることなく安定的に固定されることとなり、被覆電線が不安定な固定から「くの字」に屈曲してしまう現象が一層抑制され、被覆電線の導体のばらけに起因する導体損傷を一層抑制することができる。このように当該正三角形の断面内に被覆電線が収容されることで、被覆電線が当該突起部と切削手段からの3方向から安定的に固定されることとなり、被覆電線が不安定な固定から「くの字」に屈曲してしまう現象が抑制され、被覆電線の導体のばらけに起因する導体損傷を抑制することができる。
【0022】
本発明に係る接続クランプ装置は、必要に応じて、前記電線保持手段の段差部の溝方向と直交する面が、U字形状で形成されるか、又は、前記突起部と同一の内角を有するV字形状で形成されるものである。このように、前記電線保持手段の段差部の溝方向と直交する面が、U字形状で形成されるか、又は、前記突起部と同一の内角を有するV字形状で形成されることから、U字形状で形成される場合には、U字形状により容積が拡大された前記段差部で被覆電線を収容できることとなり、前記段差部で被覆電線が余裕をもって収容されるので、前記段差部での前記被覆電線の逃がし領域(遊び領域)が大きく形成され、特に前記電線保持手段に収容された前記被覆電線の被覆の厚みが大きい場合に適するものとなり、また、V字形状で形成される場合には、前記段差部が狭いV字形状内に被覆電線が押し込まれて収容されることとなり、前記段差部で被覆電線がしっかりと固定されて収容されるので、前記電線保持手段に収容された被覆電線の固定性を重視する際に適するものとなり、用途に応じて被覆電線の固定を安定的に行うことができる。
【0023】
本発明に係る接続クランプ装置は、必要に応じて、前記電線保持手段が、前記クランプ本体から着脱可能に構成されるものである。このように、前記電線保持手段が、前記クランプ本体から着脱可能に構成されることから、前記被覆電線の種類に応じて最適なサイズや形状の前記電線保持手段を選択できることとなり、より汎用性を高めることができる。また、前記電線保持手段の部品交換も簡易に行えることとなり、作業性及び利便性の向上が可能となる。
【0024】
本発明に係る接続クランプ装置は、必要に応じて、前記切削手段が、前記被覆電線に接触する先端部分に段差を設けて構成されるものである。このように、前記切削手段が、前記被覆電線に接触する先端部分に段差を設けて構成されることから、使用期間が進むにつれて先端部分が徐々に摩耗することで前記切削手段の使用状況が容易に判別されることとなり、前記切削手段の交換時期を視覚的に容易に判断することができ、作業性及び利便性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置及び電線保持アダプタの着脱状態を示す説明図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の電線保持アダプタの構成を示す説明図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の切削手段の構成を示す説明図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の切削手段の構成を示す説明図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の正面図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の切削手段の動作を示す説明図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の切削手段の動作を示す説明図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の切削手段の動作を示す説明図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の被覆電線の保持動作を示す説明図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の電線保持アダプタの開口幅と被覆電線の径との好適な関係を示す説明図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係る接続クランプ装置の動作を示す説明図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係る接続クランプ装置の電線保持アダプタの構成図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係る接続クランプ装置の電線保持アダプタの構成図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る接続クランプ装置の電線保持アダプタの構成図である。
図17】本発明の第2の実施形態に係る接続クランプ装置の電線保持アダプタの構成図である。
図18】本発明のその他の実施形態に係る接続クランプ装置の斜視図である。
図19】本発明の実施例1に係る形成されたバイパス回路を解除した後の導体損傷についての試験結果の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る接続クランプ装置は、図1に示すように、略コ字形状で形成される開口部(図中Zで示される)を有するクランプ本体10と、このクランプ本体10の開口部内の一端(図中X側)に、連続する凹形状の溝部を有して被覆電線100を収容して保持する電線保持手段1と、このクランプ本体10の開口部内の他端(図中Y側)で、このクランプ本体10の開口部内の一端に向かって出没自在に進出してこの被覆電線100の被覆を切削する切削手段2と、を備える接続クランプ装置において、この電線保持手段1が、この溝部の溝方向の中間位置で、且つ、この溝部の溝方向と直交する面の全幅に亘って連続する内角40°~70°のV字形状で形成される突起部12と、この突起部12に対してこの溝部の溝方向に隣接し、この突起部よりも段差の低い空間から形成される段差部13と、を備え、この切削手段2が、この突起部12の対向位置に配設される構成である。
【0027】
クランプ本体10は、略コ字形状で形成される。略コ字形状とは、コの字形状やUの字形状のように、平面視において、略四角形状を構成する四辺のうち、三辺が閉じた形状で連続して形成され、この三辺以外の残りの一辺のみが開放されている形状をいう。勿論、平面視において、略四角形状を構成する四辺のうち閉じた形状の三辺が、コの字のように、角が尖っている形状のみならず、Uの字のように、湾曲した形状のものも含まれる。
【0028】
この電線保持手段1は、図2に示すように、この突起部12および段差部13を含み連続して構成される凹形状の溝部に被覆電線100を溝方向Lに沿って収容して保持する電線保持アダプタ11から構成される。
【0029】
この電線保持アダプタ11は、図3(a)に示すように、クランプ本体10から着脱可能である。この電線保持アダプタ11とクランプ本体10との着脱の態様は、特に限定されないが、例えば、嵌合により行うことができる。この電線保持アダプタ11は、クランプ本体10の開口部内の一端側(図中X側)に向かってこの溝方向Lに沿って連続する凸形状の嵌合部14を備えることで、クランプ本体10の開口部内の一端側(図中X側)に配設された溝方向Lに沿って連続する凹形状の嵌合溝からなる嵌合受け部10aとの嵌合を可能とする。
【0030】
この電線保持アダプタ11とクランプ本体10との着脱の方法は、上述の嵌合に限定されず、この他にも、例えば、テープを用いて着脱可能に固定することも可能である。
【0031】
このように、この電線保持手段1が、このクランプ本体10から着脱可能に構成されることから、この被覆電線100の種類に応じて最適なサイズや形状の電線保持手段1を選択できることとなり、より汎用性を高めることができる。また、この電線保持手段1の部品交換も簡易に行えることとなり、作業性及び利便性の向上が可能となる。
【0032】
この電線保持アダプタ11は、図3(b)に示すように、この溝部の溝方向Lの中間位置Mで、且つ、この溝部の溝方向Lと直交する面の全幅に亘って連続する内角40°~70°のV字形状で形成される突起部12と、この突起部12に対してこの溝部の溝方向Lに沿って隣接し、この突起部12よりも段差の低い空間から形成される段差部13と、を備える。
【0033】
この電線保持アダプタ11の突起部12は、図4(a)および(b)に示すように、上記V字形状の内角θが40°~70°の範囲内で形成されるが、好ましくは内角45°~75°であり、より好ましくは内角50°~70°であり、さらに好ましくは内角55°~65°である。このV字形状は、V字の折り返し位置となる先端形状が、尖った形状でもよいし、角が取れたエッジの無い形状でもよい。角が取れたエッジの無い形状の場合には、被覆電線100の外周に密着して包み込むかたちとなり被覆電線100を収容しやすいという利点がある。この段差部13は、この突起部12よりも段差の低い空間から形成されるが、換言すると、この空間は、この突起部12と段差により形成されている。
【0034】
上記切削手段2については、上記図1に示すように、導電性材の円柱体で形成される円柱形状の接触電極21と、導電性材の円柱体で形成され接触電極21を上部に固着する螺子棒22と、この螺子棒22の内部に配設される接触子22aと、この螺子棒22に螺合する六角ナット23と、この螺子棒22に巻装する皿発条24と、この螺子棒22の下部に装着される絶縁体からなる長尺状の絶縁筒25と、この絶縁筒25の末端部に配設される把持部25aと、この螺子棒22と絶縁筒25を接続する連結金具としてのスプリングピン26と、この螺子棒22、六角ナット23及び皿発条24を収容すると共に一部に露出部分を有してこの六角ナット23及び皿発条24の一部が外部に露出されている収容ケース27と、この収容ケース27の露出部分を覆う蓋28と、収容ケース27の螺子孔に螺合して蓋28を固定する固定螺子28aを備える構成である。
【0035】
この螺子棒22の上部(接触電極21近傍側)には、六角ナット23と皿発条24を螺子棒22に通した状態で介装される。これにより、この螺子棒22に連結された把持部25aを回動させることのみによって、この螺子棒22は、この六角ナット23に螺合して回転し、上下方向に出没自在(進退自在)に往復移動することが可能となる。
【0036】
この切削手段2は、図2に示すように、収容ケース27の筐体上部に接触電極21が接続されており、収容ケース27の筐体下部に絶縁筒25及び把持部25aが接続されている。
【0037】
この切削手段2は、図2に示すように、この電線保持アダプタ11との位置関係では、接触電極21が、電線保持アダプタ11の突起部12の長手方向(進行方向)の延長線上に、この突起部12に対向して配設される。
【0038】
この切削手段2は、この収容ケース27の露出部分を覆う蓋28を取り外した状態では、図5に示すように、六角ナット23及び皿発条24の一部が外部に露出される。
【0039】
この接触電極21は、図6(a)に示すように、略円柱形状の導電性材、例えば銅合金からなり、この円柱形状の先端側に切欠きされた斜面形状の凹溝部21aと、被覆電線100に接触する円盤面からなるチップ21bと、このチップ21bの先端表面側に配設される超硬合金からなる切削刃21cと、このチップ21bの外周に沿って厚みをもって形成される段差21dとを備える構成である。この接触電極21は、その基台側が螺子棒22に接続されて固定される。
【0040】
この凹溝部21aは、円柱形状の内側から外側に向かって溝が深くなるように傾斜させて形成されると共に、中心からの放射位置よりやや偏位した位置に各々が切欠して形成される構成である。なお、切削刃21cを構成する超硬合金は、タングステンを主成分とする超硬合金や,ベリリウム銅等の銅合金や、高速度鋼又は工具鋼等から構成することができる。切削刃21cの逃げ角は、特に限定されず、被覆電線100の被覆の材質等に応じて最適に設定可能である。
【0041】
この凹溝部21aの配置数は、特に限定されないが、例えば、図6(a)に示すように、チップ21bの円盤面を3等分する位置(120°間隔)で3か所設けることもでき、また、図6(b)に示すように、チップ21bの円盤面を4等分する位置(90°間隔)で4か所設けることもできる。
【0042】
この切削刃21cは、接触電極21が被覆電線100に向かって前進する際に、被覆電線100の長手方向に対して垂直に切り込むものであり、この凹溝部21aで形成された傾斜面によって、この切削刃21cが被覆電線100に対して、被覆電線100の被覆に対して傾斜面から切裂くことから、より軽い力で効率的に切削刃21cを導線まで深く到達させることができる。この凹溝部21aの切削刃21cの上面に対してなす角度(傾斜角度)は、被覆電線100の被覆の材質等に応じて最適に設定可能である。
【0043】
本実施形態で対象となる被覆電線100は、小サイズの被覆電線100(細線)であれば特に限定されないが、被覆電線100中の導体については、より好ましくは、低圧用の軟銅線であり、例えば、固定配線用のJIS規格にあるような商用線路に使われるサイズの導体であり、そのJIS規格としては、JIS C 3307規格、JIS C 3342規格、およびJIS C 3605規格の軟銅線が例示的に挙げられ、例えば、SB導体又は丸撚り導体を用いた7本撚りの導体を対象とすることができる。
【0044】
また、被覆電線100の導体の被覆は、一般に絶縁体及びシースからなる二重構造で構成されている。例えば、絶縁体の素材として架橋ポリエチレンが用いられ、シースの素材としてビニル樹脂が用いられた被覆電線100は、架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVケーブル)と呼ばれ、電力用ケーブルとして幅広く普及している。
【0045】
本実施形態に係る接続クランプ装置は、この絶縁体及びシースの二層構造で構成される被覆に対して、この切削刃21cによる切削でバイパス回路を形成することができる。
【0046】
他方、被覆電線100のうち端子台に接続する箇所では、一般に被覆電線100の被覆は絶縁体のみからなる一層構造で構成されるが、本実施形態に係る接続クランプ装置は、このような絶縁体のみからなる一層構造で構成される箇所の被覆に対しても、この切削刃21cによる切削でバイパス回路を形成することができる。
【0047】
次に、上記構成に基づく本実施形態に係る接続クランプ装置におけるバイパス回路を形成する動作について説明する。
【0048】
先ず、図7に示すように、クランプ本体10の電線保持アダプタ11に形成された上記V字形状に被覆電線100を収容する。
【0049】
次に、把持部25aを回動させる。この把持部25aに連結された螺子棒22が六角ナット23に螺合していることから、図8に示すように、把持部25aを回動(回転方向A)させると、一体に回動するように連結された螺子棒22も同じ回転方向Aに回動する。この螺子棒22は、位置が固定された六角ナット23と螺合しているので、この螺子棒22の回動によって、この螺子棒22が被覆電線100側に向かう長手方向(進行方向B)に沿って上昇することとなり、螺子棒22の先端に設けられた接触電極21が被覆電線100に接近する。
【0050】
他方、上記回転方向Aとは逆向きに把持部25aを回動させることによって、接触電極21は、上記進行方向Bとは逆向きに、すなわち、被覆電線100に対して離間するように下降させることができる。このように、接触電極21は、把持部25aの回動によって、出没自在(進退自在)に移動することができ、この被覆電線100に対する接触電極21の位置を容易に微調整できる。
【0051】
図9(a)に示すように、この螺子棒22の上昇(上昇方向C)が進むにつれて、この接触電極21が被覆電線100の導体101を被覆する被覆102に当接する。この接触電極21が、電線保持アダプタ11の突起部12の対向位置に配設されていることから、図9(a)に示すように、この接触電極21が被覆電線100を電線保持アダプタ11の突起部12に押し付ける状態となり、被覆電線100が電線保持アダプタ11と接触電極21の間で挾持される。
【0052】
被覆電線100のうち、接触電極21によって電線保持アダプタ11の突起部12に押し付けられていない部分が生じるが、図10(a)に示すように、この部分の被覆電線100は、この突起部12よりも段差の低い空間(遊び領域E)から形成される段差部13内に収容され、ある程度の可動領域を持った状態で固定される。
【0053】
この点、従来の接続クランプ装置では、一般的に、図10(b)に示すように、従来の螺子棒220に接続された従来の接触電極210が、従来の電線保持部200に向かって被覆電線100を押圧する構成であるが、従来の電線保持部200が被覆電線100と広面積にわたって当接することから、被覆電線100が、従来の接触電極210が被覆電線100を押圧する方向と逆方向の反力(方向F)を従来の電線保持部200から受けて、被覆電線100が反り返ってしまい、従来の電線保持部200における被覆電線100の固定が不安定化してしまう。さらに、この反り返りが生じることによって、従来の接触電極210が被覆電線100を押圧するに従い、従来の接触電極210が被覆電線100に接触する端面で被覆電線100に鋭利なエッジGを生じ、この鋭利なエッジGの箇所で被覆電線100に鋭い切り込みを生じ損傷させてしまう。
【0054】
これに対して、本実施形態に係る接続クランプ装置では、上述の図10(a)で示した段差の低い空間(遊び領域E)から形成される段差部13によって、被覆電線100が固定されることなく浮いた状態が維持されることから、従来の接続クランプ装置に生じていた被覆電線100の反り返りや鋭利なエッジGによる被覆電線100の損傷が生じないものとなり、従来のような損傷を被覆電線100に与えることなく被覆電線100を安定的に固定することが可能となる。
【0055】
このように被覆電線100が電線保持アダプタ11と接触電極21の間で挾持された状態において、さらに把持部25aを回動させて螺子棒22が上昇すると、図9(b)に示すように、この接触電極21が所定値以上の押圧力で被覆電線100に当接した状態で回動し、切削刃21cがさらに上昇して被覆電線100の被覆102が切削除去され、この接触電極21の先端が被覆電線100の導体101に到達する。所定の締付けトルクを得た時点で把持部25aの回動を停止することで、接触電極21が導体101に対して強い締付け力を得て確実に導体101に接続する。
【0056】
この被覆102が切削されて生じた被覆体及びシースの切屑は、凹溝部21aの溝から外部に排出される。特に、この凹溝部21aが中心部分から外周辺に向かって深い溝となるように形成されていることから、この切削で発生した切屑が、この凹溝部21aを伝って順次外側へ押し出すように排出される。
【0057】
この切削刃21cが被覆電線100の被覆102を切削除去し、接触電極21の先端が被覆電線100の導体101に到達した状態において、接触子22aと電気的に接続している接触電極21を介して被覆電線100と接触子22aとが電気的に接続され、接触電極21と導体101間にバイパス電流が流れる。
【0058】
また、接触電極21が平面形状の先端部で導体101に面接触していることから、接触電極21と導体101との高面積で確実な接触が得られ、より大電流の通電が可能となる。この大電流の流路は絶縁配電線から面接触による接触電極21へ、この接触電極21から螺着による螺子棒22へ、この螺子棒22を通じて接触子22aへと形成される。
【0059】
このように接触電極21と導体101を同電位にできることからバイパス回路以外に短絡接地回路等にも利用することができる。さらに、接触電極21の先端に配設されたチップ21bにより切削動作を行なうことから、十分な耐摩耗性を維持して繰り返し使用による耐久性を向上させることができる。
【0060】
その後、電流が流れるに従って、被覆電線100の被覆102が加温されて柔らかくなり、図9(c)に示すように、電線保持アダプタ11側(接触電極21に直接接触していない側)に接触している被覆102が押しつぶされて、導体101と接触電極21とが当接する当接面Sの面圧が低下し得るが、この面圧の低下に伴って、それまで収縮状態であった皿発条55がバネの弾性力によって上昇し(上昇方向D)、これにより六角ナット23に上向きの力が加えられ、これにより接触電極21が上方に押上げられ、この螺子棒22が接触電極3と共に上昇する(上昇方向C)。これにより、この接触電極21に当接する導体101との当接面Sにおける面圧を経時的に一定に維持することが可能となる。
【0061】
また、接触電極21は、被覆電線100に接触する先端部分に段差21dを設けて構成されていることから、使用期間が進むにつれて先端部分の段差21dが徐々に摩耗していき、接触電極21の切削刃21cの消耗状況がこの段差21dの状態から容易に判別されることとなり、接触電極21の交換時期を視覚的に容易に判断することができ、作業性及び利便性の向上が可能となる。
【0062】
また、この電線保持アダプタ11の突起部12は、図11(a)に示すように、上記V字形状の内角θが40°~70°で形成される。これにより、この切削手段2が被覆電線100に接触する接触面と、この突起部12と、から形成される断面形状が、この突起部12のV字形状の二辺を等辺とする二等辺三角形として形成される。この切削手段2が被覆電線100に接触する接触面と、この突起部12のV字形状とで形成される二等辺三角形の断面形状の重心Hと、被覆電線100の断面形状の重心Iとが近傍位置に存在し、被覆電線100がこの突起部12で安定的に固定されることとなり、被覆電線100が不安定な固定から「くの字」に屈曲してしまう現象が抑制され、被覆電線100の導体101のばらけに起因する導体損傷を抑制することができる。
【0063】
さらに、より好ましくは、図11(b)に示すように、上記V字形状の内角θが、特に60°で形成されることである。これにより、この切削手段2が被覆電線100に接触する接触面と、この突起部12と、から形成される断面形状が、その断面形状がすべて等辺となる正三角形として形成される。
【0064】
すなわち、この切削手段2が被覆電線100に接触する接触面と、この突起部12のV字形状とで形成される正三角形の断面形状の重心Hと、被覆電線100の断面形状の重心Iとが、完全に一致することから、この突起部12による被覆電線100の固定強度が高められ、被覆電線100がこの突起部12でぶれることなく安定的に固定されることとなり、被覆電線100が不安定な固定から「くの字」に屈曲してしまう現象が一層抑制され、被覆電線100の導体101のばらけに起因する導体損傷を一層抑制することができる。
【0065】
この正三角形の断面内に被覆電線100が収容されることで、この突起部12のV字形状に接触する被覆電線100の面積と、この切削手段2が被覆電線100に接触する面積とが、同等になることから、被覆電線100がこの突起部12と切削手段2からの3方向から均等な力を受けて安定的に固定されることとなり、被覆電線100が不安定な固定から「くの字」に屈曲してしまう現象がさらに抑制され、被覆電線100の導体101のばらけに起因する導体損傷を一層抑制することができる。
【0066】
また、この電線保持アダプタ11に収容される被覆電線100と、この電線保持アダプタ11との径の関係については、特に限定されないが、図12(a)に示すように、好ましくは、この突起部12のV字形状の開口幅のうち、開口幅が最大となる最大開口幅Wが、この被覆電線100の直径Dより大きく構成されると共に、この突起部12のV字形状のV字を構成する等辺の中点を結んだ位置の開口幅である中点開口幅Wが、この被覆電線100の直径Dより小さく構成されることである。
【0067】
すなわち、図12(b)に示すように、この突起部12のV字形状の最大開口幅Wが、この被覆電線100の直径Dより大きく、この突起部12のV字形状の中点開口幅Wが、この被覆電線100の直径Dより小さいことであり、関係式で示すと、W<D<Wである。
【0068】
このように、この被覆電線100の直径Dに対する最大開口幅W及び中点開口幅Wの大きさによって、上述した突起部12のV字形状の内角θが40°~70°で形成されることと相俟って、この被覆電線100がこの突起部12の奥深くで確実に固定された状態で、被覆電線100がこの突起部12でぶれることなく強固に固定されることとなり、被覆電線100が不安定な固定から「くの字」に屈曲してしまう現象が一層抑制され、被覆電線100の導体101のばらけに起因する導体損傷を一層抑制することができる。
【0069】
以上の動作によって、図13に示すように、把持部25aを回動させることで、絶縁筒25が上昇し(上昇方向J)、これに伴って螺子棒22が上昇し(上昇方向J)、被覆電線100が接触電極21と突起部12により強固に挟持されてぶれることなく安定的に固定される。
【0070】
すなわち、この被覆電線100が、この切削手段2と突起部12の両接触面から挟持されて固定されると共に、前記溝方向に沿って突起部12に隣接する段差部13の段差の低い空間内で遊びをもった状態で収容されることから、この被覆電線100が切削手段2により電線保持手段1に向かって押し込まれるにつれて、この被覆電線100に対して切削手段2の押し込む向きと反対方向の反力を電線保持手段1から受けないこととなり、この被覆電線100が、この突起部12により安定的に保持されると共にこの段差部13により安定した形状を維持することができ、この被覆電線100がこの切削手段2と接する位置を折曲点として「くの字」に曲がることもなく、この被覆電線100の導体101の損傷を抑制することができる。また、この被覆電線100が、上記のように「くの字」に曲がらずにその形状を維持できることから、この被覆電線100とこの切削手段2との接触面の端部に、この被覆電線100の屈曲を起因とするような鋭いエッジも生じないものとなり、この被覆電線100の導体101の損傷をさらに抑制することができる。
【0071】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る接続クランプ装置は、第1の実施形態と同様に、前記クランプ本体10と、前記電線保持手段1と、前記切削手段2と、を備える接続クランプ装置において、さらに、図14および図15に示すように、前記電線保持手段1の段差部の溝方向と直交する面が、U字形状で形成される構成である。
【0072】
この電線保持アダプタ11の突起部12のV字形状については、図14(a)および(b)に示すように、V字の折り返し位置となる先端形状が、角が取れたエッジの無い形状とすることができる。また、図15(a)および(b)に示すように、V字の折り返し位置となる先端形状が、尖った形状でもよい
【0073】
このように、この電線保持手段1の段差部13の溝方向と直交する面が、U字形状で形成されるかことから、このU字形状により容積が拡大されたこの段差部13で被覆電線100を収容できることとなり、この段差部13で被覆電線100が余裕をもって収容されるので、この段差部13でこの被覆電線100の逃がし領域(遊び領域)が大きく形成され、特に電線保持手段1に収容された被覆電線100の被覆102の厚みが大きい場合に適するものとなり、用途に応じて被覆電線100の固定を安定的に行うことができる。
【0074】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る接続クランプ装置は、第1の実施形態と同様に、前記クランプ本体10と、前記電線保持手段1と、前記切削手段2と、を備える接続クランプ装置において、さらに、図16および図17に示すように、前記電線保持手段1の段差部13の長手方向と直交する面が、前記突起部12と同一のV字形状で形成される構成である。
【0075】
このV字形状については、図16(a)および(b)に示すように、V字の折り返し位置となる先端形状が、角が取れたエッジの無い形状から構成されることができる。これにより、被覆電線100の外周の曲率とV字の折り返し位置でのエッジの無い先端形状とが適合して収納されやすくなり、被覆電線100の保持強度を高めることが可能となる。この他にも、図17(a)および(b)に示すように、V字の折り返し位置となる先端形状が、尖った形状から構成されることもできる。
【0076】
このように、この電線保持手段1の段差部13の長手方向と直交する面が、この突起部12と同一の内角を有するV字形状で形成されることから、この段差部13が狭いV字形状内に被覆電線100が押し込まれて収容されることとなり、この段差部13で被覆電線100がしっかりと固定されて収容されるので、この電線保持手段1に収容された被覆電線100の固定性を重視する際に適するものとなり、用途に応じて被覆電線100の固定を柔軟に行うことができる。
【0077】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態に係る接続クランプ装置においては、前記電線保持アダプタ11は、前記クランプ本体10から着脱可能な構成としたが、この構成に限定されるものではなく、図18に示すように、前記電線保持アダプタ11と前記クランプ本体10とを同一筐体とする構成も可能である。
【0078】
このように、前記電線保持アダプタ11が、前記クランプ本体10と同一筐体で形成されることから、この被覆電線100の種類に応じて最適なサイズの前記電線保持アダプタ11を一体化した接続クランプ装置を選択できることとなり、前記電線保持アダプタ11の交換を不要とするユーザーや、前記電線保持アダプタ11と前記クランプ本体10とを一体化した接続クランプ装置を求めるユーザーのニーズにも応えられ、より利便性を高めることができる。
【0079】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
実施例1では、上記第1の実施形態と同じ構成の接続クランプ装置を作製し、バイパス回路を形成した後の導体損傷について、従来品(上述の「内角120°接続クランプ装置」)と視認により比較した。被覆電線は、低圧用の軟銅線であるCVケーブル8SQ、14SQ(JIS C 3605規格)を用いた。
【0081】
得られた結果を図19に示す。図19に示すように、実施例1の接続クランプ装置では、導体は直線形状を維持しており、導体のばらけも生じていなかったことから導体損傷を抑制できていることが確認された。これに対して、従来品では、導体にばらけが発生したことが確認された。
【0082】
(実施例2)
実施例2では、実施例1の接続クランプ装置について、突起部の断面V字形状の内角と導体損傷の度合いの関連性について検証した。
【0083】
【表1】
(凡例)〇:「くの字」曲がりなし、△:「くの字」曲がりあり)
【0084】
得られた結果から、突起部の断面V字形状の内角は、40°~70°のときに「くの字」曲がりもなく良好であったが、内角が70°より広い場合には「くの字」曲がりが発生していた。他方、内角が40°より小さい場合には、CVケーブルの被覆に突起部からの押し跡が残る傾向にあった。また、内角が40°より小さい場合には、実際には、CVケーブルが突起部から外れにくくなって作業性が低下する傾向にあり、また断面V字形状の溝幅がCVケーブル径に対して十分に広くなるまでより深くなる必要があるために、結果的に断面V字形状の高さが不必要に長いクランプ本体の形成が必要となり実用面でも不利な傾向にあった。
【符号の説明】
【0085】
10 クランプ本体
10a 嵌合受け部
11 電線保持アダプタ
12 突起部
13 段差部
14 嵌合部
21 接触電極
21a 凹溝部
21b チップ
21c 切削刃
21d 段差
22 螺子棒
22a 接触子
23 六角ナット
24 皿発条
25 絶縁筒
25a 把持部
26 スプリングピン
27 収容ケース
28 蓋
28a 固定螺子
100 被覆電線
101 導体
102 被覆
200 従来の電線保持部
210 従来の接触電極
220 従来の螺子棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19