IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オートリブ ディベロップメント エービーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20240626BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240626BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20240626BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/2338
B60R21/231
B60N2/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020172524
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2021098495
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2019230223
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】桜井 努
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0021964(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0161053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
B60R 21/2338
B60R 21/231
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内で車両の幅方向に並んで配置されたセパレートシートの、何れか一方の背もたれ部の前記幅方向の中央側の側面部に設けられ、衝突時に衝撃が加わった部位に向かう乗員の移動を抑制して当該乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、
クッションと、
センサーからの信号を受信してガスを発生し、前記クッションを膨張展開させるインフレータと、を備え、
前記クッションは、
前記信号の受信時、乗員の移動を抑制するために、隣り合う一方と他方の前記セパレートシートの前面に乗り上げる状態に膨張展開して乗員の側部を受け止める第1部分及び第2部分と、これら第1部分と第2部分の間に設けられる中央部分と、を有し、
前記中央部分に、クッションの膨張展開時、前記第1部分及び前記第2部分よりも、少なくとも車両の前方方向に突出して、乗員の頭部、及び、斜め前方に移動する乗員を受け止めることが可能な突出部を形成し
クッションの前記中央部分に上方への延長部を有し、当該延長部の上面が前記セパレートシートに着座した乗員の頭頂部と同じか前記頭頂部よりも上方に位置する場合、前記突出部は、前記延長部の前面に、当該延長部から前方方向に突出するように形成されている、サイドエアバッグ装置。
【請求項2】
車両内で車両の幅方向に並んで配置されたセパレートシートの、何れか一方の背もたれ部の前記幅方向の中央側の側面部に設けられ、衝突時に衝撃が加わった部位に向かう乗員の移動を抑制して当該乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、
クッションと、
センサーからの信号を受信してガスを発生し、前記クッションを膨張展開させるインフレータと、を備え、
前記クッションは、
前記信号の受信時、乗員の移動を抑制するために、隣り合う一方と他方の前記セパレートシートの前面に乗り上げる状態に膨張展開して乗員の側部を受け止める第1部分及び第2部分と、これら第1部分と第2部分の間に設けられる中央部分と、を有し、
前記中央部分に、クッションの膨張展開時、前記第1部分及び前記第2部分よりも、少なくとも車両の前方方向に突出して、乗員の頭部、及び、斜め前方に移動する乗員を受け止めることが可能な突出部を形成し、
クッションの前記中央部分に上方への延長部を有し、当該延長部の上面が前記セパレートシートに着座した乗員の頭頂部よりも下方に位置する場合、前記突出部は、上面が前記セパレートシートに着座した乗員の頭頂部よりも上方となるように、前記中央部分の上面に覆いかぶさり、当該覆いかぶさった部分と前記延長部の前面に、これらの前面から前方方向に突出するように形成されている、サイドエアバッグ装置。
【請求項3】
車両内で車両の幅方向に並んで配置されたセパレートシートの、何れか一方の背もたれ部の前記幅方向の中央側の側面部に設けられ、衝突時に衝撃が加わった部位に向かう乗員の移動を抑制して当該乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、
クッションと、
センサーからの信号を受信してガスを発生し、前記クッションを膨張展開させるインフレータと、を備え、
前記クッションは、
前記信号の受信時、乗員の移動を抑制するために、隣り合う一方と他方の前記セパレートシートの前面に乗り上げる状態に膨張展開して乗員の側部を受け止める第1部分及び第2部分と、これら第1部分と第2部分の間に設けられる中央部分と、を有し、
前記中央部分に、クッションの膨張展開時、前記第1部分及び前記第2部分よりも、少なくとも車両の前方方向に突出して、乗員の頭部、及び、斜め前方に移動する乗員を受け止めることが可能な突出部を形成し、
クッションの前記中央部分に上方への延長部を有さない場合、前記突出部は、上面が前記セパレートシートに着座した乗員の頭頂部よりも上方となるように、前記中央部分の上面に覆いかぶさり、当該覆いかぶさった部分が、前記中央部分の前面から前方方向に突出するように形成されている、サイドエアバッグ装置。
【請求項4】
車両内で車両の幅方向に並んで配置されたセパレートシートの、何れか一方の背もたれ部の前記幅方向の中央側の側面部に設けられ、衝突時に衝撃が加わった部位に向かう乗員の移動を抑制して当該乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、
クッションと、
センサーからの信号を受信してガスを発生し、前記クッションを膨張展開させるインフレータと、を備え、
前記クッションは、
前記信号の受信時、乗員の移動を抑制するために、隣り合う一方と他方の前記セパレートシートの前面に乗り上げる状態に膨張展開して乗員の側部を受け止める第1部分及び第2部分と、これら第1部分と第2部分の間に設けられる中央部分と、を有し、
前記中央部分に、クッションの膨張展開時、前記第1部分及び前記第2部分よりも、少なくとも車両の前方方向に突出して、乗員の頭部、及び、斜め前方に移動する乗員を受け止めることが可能な突出部を形成し、
前記第1部分、前記第2部分、前記中央部分は一つのチャンバで形成され、前記突出部は、前記第1部分、前記第2部分、及び前記中央部分とは分離された別チャンバで形成されている、サイドエアバッグ装置。
【請求項5】
車両内で車両の幅方向に並んで配置されたセパレートシートの、何れか一方の背もたれ部の前記幅方向の中央側の側面部に設けられ、衝突時に衝撃が加わった部位に向かう乗員の移動を抑制して当該乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、
クッションと、
センサーからの信号を受信してガスを発生し、前記クッションを膨張展開させるインフレータと、を備え、
前記クッションは、
前記信号の受信時、乗員の移動を抑制するために、隣り合う一方と他方の前記セパレートシートの前面に乗り上げる状態に膨張展開して乗員の側部を受け止める第1部分及び第2部分と、これら第1部分と第2部分の間に設けられる中央部分と、を有し、
前記中央部分に、クッションの膨張展開時、前記第1部分及び前記第2部分よりも、少なくとも車両の前方方向に突出して、乗員の頭部、及び、斜め前方に移動する乗員を受け止めることが可能な突出部を形成し、
前記突出部の前面下方部分或いは底面前方部分と、前記中央部分の前面下方部分或いは底面前方部分を繋ぐテザーを備える、サイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記第1部分、前記中央部分および前記第2部分が連続して一体的に形成されているチャンバに対し、
前記チャンバの前記第1部分、前記中央部分、前記第2部分の連続方向中央部の横断面の図心からこの横断面に直交する方向に延びる第1軸と、前記突出部の前後方向中央部の横断面の図心からこの横断面に直交する方向に延びる第2軸が、車両の上方から前記第1軸と前記第2軸を平面視した場合に、所要の角度で交差するように、
前記突出部が設けられている、請求項1~5の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記チャンバと、当該チャンバと別チャンバで形成された前記突出部とは、ベントホールを介して連通している、請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記チャンバにインフレータを設け、前記ベントホールは、前記チャンバの膨張展開の後半に、前記突出部にガスが流入するような大きさとなされている、請求項7に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両が側面から衝突された時(以下、側面衝突時という。)に、乗員を保護するため、車両に設置されるサイドエアバッグ装置に関するものである。特に、車室内で車両の幅方向に並んで設けられたセパレートシート(以下、単にシートという。)の、何れか一方の背もたれ部の前記幅方向の中央側(以下、ファーサイドという。)の側面部に設置されるサイドエアバッグ装置に関するものである。
【0002】
本願において、「上」「上方」とはシートの正規の位置に着座した乗員の頭部方向を、「下」「下方」とは同じく足元方向を意味する。また、「前」「前方」とはシートの正規の位置に着座した乗員の正面側の方向を、「後」「後方」とは同じく背面側の方向を意味する。また、「幅方向」とはシートの正規の位置に着座した乗員の右手と左手の方向を意味する。なお、上記説明中の「正規の位置」とは、シートを構成するシートクッションの幅方向の中心位置で、乗員の背中全体がシートの背もたれ部に接した状態で沿う位置をいう。
【背景技術】
【0003】
例えば側面衝突時、衝撃が加わった部位に向かう乗員の移動を抑制して乗員を保護するサイドエアバッグ装置は、シートの背もたれ部(以下、シートバックという。)の側方内部に設置される。
【0004】
このサイドエアバッグ装置は、衝撃を検知したセンサーが発信する信号によりインフレータが作動してガスを発生し、シートに着座した乗員の側方にクッションを膨張展開させる構成である。
【0005】
また、特許文献1では、車室内で車両の幅方向に並んで設けられている運転席と助手席の間に設置されたセンターコンソールに設けられる、ファーサイドのサイドエアバッグ装置(特許文献1の座席間エアバッグ装置)が開示されている。
【0006】
特許文献1に開示されたサイドエアバッグ装置は、正面視I字状に膨張展開する主バッグと、主バッグを通じてガスが供給され、主バッグの上下方向中央部から助手席側に突出して膨張展開する副バッグと、でクッションを構成している。
【0007】
前記副バッグは、主バッグの内圧が所定値未満の場合にはガスが供給されず、膨張展開しない構成となっている。そして、助手席に乗員が着座していると判断した場合は、主バッグのみが膨張展開する一方、助手席に乗員が着座していないと判断した場合は、主バッグと副バッグが膨張展開し、運転席や助手席に着座した乗員が助手席側や運転席側に移動するのを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-115947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1で開示されたサイドエアバッグ装置の場合、通常のサイドエアバッグ装置のインフレータに換えて例えば以下のインフレータが必要となり、さらに通常のサイドエアバッグ装置の構成部品に加えて以下の構成部品が必要になる。
【0010】
・主バッグの内圧を所定値未満とする第1の出力と、主バッグの内圧を所定値以上とする第2の出力とを切り替えることができる出力可変インフレータ
・助手席の乗員の有無を検出する検出器
・検出器による検出結果によりインフレータの前記出力を切り替える制御装置
【0011】
本発明が解決しようとする問題点は、特許文献1で開示されたファーサイドのサイドエアバッグ装置の場合、例えば、出力可変インフレータ、助手席の乗員の有無を検出する検出器、インフレータの出力を切り替える制御装置が必要になるという点である。
【0012】
本発明は、車両内で車両の幅方向に並んで設けられたシートに着座した乗員の、衝突時に衝撃が加わった部位に向かう移動を抑制するファーサイドのサイドエアバッグ装置を、一般的な構成部品だけで構成可能とすることを目的としている。そして、その際、シートに着座した乗員の頭部の移動や、斜め前方への乗員の移動も効果的に抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、車両内で車両の幅方向に並んで配置されたシートの、何れか一方のシートバックのファーサイドの側面部に設けられ、衝突時に衝撃が加わった部位に向かう乗員の移動を抑制して当該乗員を保護するサイドエアバッグ装置である。
【0014】
本発明のサイドエアバッグ装置は、クッションと、前記クッションの内部に設けられ、センサーからの信号を受信してガスを発生し、前記クッションを膨張展開させるインフレータと、を備えている。
【0015】
前記クッションは、前記信号の受信時、乗員の側部を受け止めて乗員の移動を抑制するために、隣り合う一方と他方のシートの前面に乗り上がる状態に膨張展開する第1部分及び第2部分と、これら第1部分と第2部分の間に設けられる中央部分を有している。
【0016】
そして、本発明では、前記中央部分に、クッションの膨張展開時、前記第1部分及び前記第2部分よりも、少なくとも車両の前方方向に突出して、乗員の頭部、及び斜め前方への乗員の移動を受け止めることが可能な突出部を形成したことが主要な特徴である。
【0017】
前記本発明では、例えば、出力可変インフレータ、助手席の乗員の有無を検出する検出器、インフレータの出力を切り替える制御装置のような特別な構成部品を必要としない。加えて、クッションの膨張展開時、中央部分に形成した突出部によって、シートに着座した乗員の頭部の移動や、斜め前方への乗員の移動を効果的に抑制することができる。
【0018】
また、本発明では、前記第1部分、前記中央部分および前記第2部分が連続して一体的に形成されているチャンバに対し、前記突出部は下記条件を充たすように設けることが望ましい。
条件:
前記チャンバの前記第1部分、前記中央部分、前記第2部分の連続方向中央部の横断面の図心からこの横断面に直交する方向に延びる第1軸と、前記突出部の前後方向中央部の横断面の図心からこの横断面に直交する方向に延びる第2軸が、車両の上方から前記第1軸と前記第2軸を平面視した場合に、所要の角度で交差していること。
【0019】
上記の場合、第1軸と第2軸は平面視した場合に90°±20°の範囲で交差していることが好ましい。第1軸と第2軸の角度がこの範囲内であれば、斜め衝突時やオフセット衝突時などで頭部が相対的に前方に移動する場合でも、前記突出部が乗員の頭部を十分に保護することができる。
【0020】
本発明では、クッションの突出部は、クッションの中央部分に上方への延長部を有するか否か、及び当該延長部の上面位置により、以下のように形成する。
【0021】
・クッションの中央部分に上方への延長部を有し、当該延長部の上面がシートに着座した乗員の頭頂部と同じか前記頭頂部よりも上方に位置する場合:
クッションの突出部は、中央部分の延長部の前面に、当該延長部から前方方向に突出するように形成する。
【0022】
・クッションの中央部分に上方への延長部を有し、当該延長部の上面がシートに着座した乗員の頭頂部よりも下方に位置する場合:
クッションの突出部は、上面がシートに着座した乗員の頭頂部よりも上方となるように、クッションの中央部分の上面に覆いかぶさり、当該覆いかぶさった部分と前記延長部の前面に、これらの前面から前方方向に突出するように形成する。
【0023】
・クッションの中央部分に上方への延長部を有さない場合:
クッションの突出部は、上面がシートに着座した乗員の頭頂部よりも上方となるように、クッションの中央部分の上面に覆いかぶさり、当該覆いかぶさった部分が、中央部分の前面から前方方向に突出するように形成する。
【0024】
いずれにせよ、クッションの延長部の上面または突出部の上面の一番高い部分は、乗員の頭頂部よりも上方に位置するように設置され、突出部は、延長部の上部から若しくは前面から車両の前方方向に向かって延在するように構成するのが好ましい。
【0025】
また、本発明では、クッションの、前記第1部分、前記第2部分、前記中央部分は一つのチャンバで形成し、当該チャンバとは分離された別チャンバで前記突出部を形成することが望ましい。このようにすることで、クッションの、前記チャンバの膨張展開と、当該チャンバとは別チャンバで形成された前記突出部の膨張展開との間にタイムラグをつけることができる。これにより、初期拘束時に必要な乗員の肩部などを早期に拘束できるほか、衝突後半の乗員の移動による頭部保護も適切に行うことができる。
【0026】
クッションの、前記チャンバの膨張展開と、当該チャンバとは別チャンバで形成された前記突出部の膨張展開との間にタイムラグをつけるには、ベントホールを介して前記チャンバと前記突出部を連通させることによって達成できる。例えば、前記チャンバにインフレータを設け、前記ベントホールは、前記チャンバの膨張展開が開始した後に、前記突出部にガスが流入するような大きさとすればよい。
【0027】
前記本発明において、前記突出部の前面下方部分或いは底面前方部分と、前記中央部分の前面下方部分或いは底面前方部分を繋ぐテザーを備えさせてもよい。このようなテザーを設けた場合には、膨張展開後の突出部の位置を効果的に維持できるので、乗員の頭部をより確実に受け止めることができ、衝突中の乗員に対する拘束力も得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、クッションの中央部分に突出部を形成することによって、特別な構成部品を必要とせず、一般的な構成部品だけで、シートに着座した乗員の頭部の移動や、斜め前方への乗員の移動を効果的に抑制することができる。
【0029】
その際、突出部と中央部分をテザーで繋いでおけば、乗員の頭部をより確実に受け止めることができ、衝突中の乗員に対する拘束力も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】本発明のサイドエアバッグ装置を構成するクッションの第1実施例を示した図で、膨張展開した状態を示す斜視図である。
図1B図1Aに示したクッションを備えた本発明のサイドエアバッグ装置の、前記クッションが膨張展開した状態を車両の側方から見た図である。
図1C図1Aに示したクッションを備えた本発明のサイドエアバッグ装置の、前記クッションが膨張展開した状態を車両の上方から見た図である。
図2A】本発明のサイドエアバッグ装置を構成するクッションの第1実施例の第1変形例を示した図1Aと同様の図である。
図2B図2Aに示したクッションを備えた本発明のサイドエアバッグ装置の、図1Bと同様の図である。
図2C図2Aに示したクッションを備えた本発明のサイドエアバッグ装置の、図1Cと同様の図である。
図3A】本発明のサイドエアバッグ装置を構成するクッションの第1実施例の第2変形例を示した図1Aと同様の図である。
図3B図3Aに示したクッションを備えた本発明のサイドエアバッグ装置の、図1Bと同様の図である。
図3C図3Aに示したクッションを備えた本発明のサイドエアバッグ装置の、図1Cと同様の図である。
図4】本発明のサイドエアバッグ装置を構成するクッションの第1実施例の第3変形例を示した図1Aと同様の図である。
図5】本発明のサイドエアバッグ装置を構成するクッションの第1実施例の第4変形例を示した図1Aと同様の図である。
図6】本発明のサイドエアバッグ装置を構成するクッションの第2実施例を示した図1Aと同様の図である。
図7】本発明のサイドエアバッグ装置を構成するクッションの第3実施例を示した図1Aと同様の図である。
図8A】本発明の特徴構成を有さないサイドエアバッグ装置のクッションを示した図1Aと同様の図である。
図8B図8Aに示したクッションを備えたサイドエアバッグ装置の、図1Bと同様の図である。
図8C図8Aに示したクッションを備えたサイドエアバッグ装置の、図1Cと同様の図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の目的は、車両内で車両の幅方向に並んで設けられたシートに着座した乗員の、車両側面や斜め方向などからの衝突時の移動を抑制し、衝撃を吸収するファーサイドのサイドエアバッグ装置を、一般的な構成部品だけで構成可能とすることである。そして、その際、乗員の頭部の移動や、斜め前方への乗員の移動を効果的に抑制できるようにすることである。
【0032】
本発明は、隣り合う一方と他方のシートの前面に乗り上がる状態に膨張展開するクッションの第1部分と第2部分の間に設けられる中央部分に、第1部分及び第2部分よりも少なくとも車両の前方方向に突出する突出部を形成することで、前記目的を実現した。
【0033】
以下、本発明の実施形態について添付図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、その用途の範囲を制限することを意図するものではない。
(第1実施例)
図1A図1Cは、本発明のサイドエアバッグ装置の第1実施例を示した図である。以下、この第1実施例を、本発明の特徴構成を有さない図8A図8Cに示すサイドエアバッグ装置と比較して説明する。
【0034】
図1A図1C及び図8A図8Cに示すサイドエアバッグ装置1は、車両内で車両の幅方向に並んで配置されたシート、例えば運転席Sdと助手席Snの、何れか一方のシートバックSBのファーサイドの側面内部に設けられる。
【0035】
このサイドエアバッグ装置1は、クッション2の内部に、センサーからの信号を受信してその外側面に設けた孔3aから前記クッション2の内部にガスを噴出する、例えば筒形状のインフレータ3を配置している。
【0036】
前記クッション2は、前記インフレータ3の前記孔3aの反対側の外側面に、その長手方向に適宜の間隔を存して突出状に設けられた2本のスタッドボルト3bを用いて、前記シートバックSBの内部のサイドフレームSFに取り付けられる。
【0037】
前記クッション2は、運転席Sdの前面と助手席Snの前面に乗り上がる状態に膨張展開する第1部分2a及び第2部分2bと、これら第1部分2aと第2部分2bの間で膨張展開する中央部分2cを有している。なお、これら第1部分2a、第2部分2b、中央部分2cの境界は厳密なものではない。
【0038】
図1A図1C及び図8A図8Cに示すサイドエアバッグ装置1では、これら第1部分2a、第2部分2b、及び中央部分2cを一つのチャンバ2dで一体的に形成している。このチャンバ2dは、車両の前方側から見た場合に、第1部分2a及び第2部分2bよりも上方に延長した延長部2caを中央部分2cに有する形状で、車両の前後方向に所要の厚みを有するように、適数枚の基布パネルを接合して形成している。
【0039】
前記の第1部分2aと第2部分2bは、乗員Pの胴体の側部、例えば肩部Ps、胸部Pc、上腕部Puaを受け止めることができる上下方向及び前後方向の長さを有している。また、中央部分2cは、乗員Pの前記側部に加え、その延長部2caによって、例えば、乗員Pの首Pnから耳Peまでの頭部Phの後側を受け止めることができる上下方向及び前後方向の長さを有している。
【0040】
前記サイドエアバッグ装置1では、側面衝突、斜め衝突、オフセット衝突などの時、センサーからの信号を受信したインフレータ3は、その外側面に設けた孔3aからチャンバ2dの内部にガスを噴出し、チャンバ2dを膨張展開させる。
【0041】
従って、側面衝突などの時、膨張展開して運転席Sd及び助手席Snの前面に乗り上がった第1部分2a及び第2部分2bで、前記衝撃によって移動する乗員Pの、例えば、肩部Ps、胸部Pc、上腕部Puaを受け止め、乗員Pの移動を抑制する。
【0042】
前記サイドエアバッグ装置1の場合、前記中央部2cの延長部2caは、乗員Pの頭部Phを受け止めるものである。しかしながら、車両衝突時の初期から当該衝突の影響がなくなる終期にかけて、乗員Pの頭部Phの全体をより確実に受け止めることができるように、更なる性能の向上が求められている。
【0043】
そこで、本実施形態では、前記クッション2の前記中央部分2cに、膨張展開時、前記第1部分2a及び前記第2部分2bよりも、少なくとも車両の前方方向に突出して乗員Pの頭部Phの全体を受け止めることが可能な突出部2eを形成している。この突出部2eは、斜め方向などからの衝突時に、斜め前方に移動する乗員Pを受け止める働きも有する。
【0044】
前記突出部2eは、図1A図1Cに示す第1実施例では、上面が運転席Sdや助手席Snに着座した乗員Pの頭頂部よりも上方となるように、前記延長部2caの上面に覆いかぶさるように設ける。そして、この覆いかぶさった部分と前記延長部2caの前面から前方方向に突出した形状となるように、適数枚の基布パネルで形成している。この突出部2eは、前記チャンバ2dとは分離された別チャンバで形成し、前記延長部2caの上面に設けたベントホール4を介して前記チャンバ2dと連通している。
【0045】
また、本実施形態では、第1部分2a、中央部分2cおよび第2部分2bが連続して一体的に形成されている前記チャンバ2dに対し、前記突出部2eは、次のように設けることが望ましい。
【0046】
先ず、チャンバ2dと突出部2eのそれぞれの向きを定めるために第1軸と第2軸を定義する。図1A中に想像線で示した第1軸Xは、チャンバ2dの第1部分2a、中央部分2c、第2部分2bの連続方向(言い換えればチャンバ2dの長手方向)中央部の横断面の図心からこの横断面に直交する方向に延びる軸である。また、同じく破線で示した第2軸Yは、突出部2eの車両の前後方向中央部の横断面の図心からこの横断面に直交する方向に延びる軸である。なお、図心とは、前記各横断面の輪郭形状に対して定まる幾何学的な重心である。
【0047】
上記のように定義した第1軸Xと第2軸Yを、図1Cに示すように車両の上方から平面視した場合、第1軸Xと第2軸Yが交差する交点Pを定めることができる。本発明では、交点Pから延びる第1軸Xと第2軸Yのなす角度θが、90°±20°の範囲となるように、突出部2eを設けることが好ましい。
【0048】
なお、第1実施例は第1軸Xと第2軸Yが90°で直交する場合の一例である。第1実施例において例えば第1軸Xの方を固定し、第2軸Yの好ましい範囲を示すと、図1C中に、Ymin(70°)、Ymax(110°)として示した範囲となる。このように第1軸Xと第2軸Yが70°以上110°以下の範囲となるように突出部2eを設ければ、例えば斜め衝突やオフセット衝突の場合でも、突出部2eが相対的に前方に移動する乗員Pの頭部Phを受け止めて十分に保護することができる。
【0049】
前記ベントホール4の内径は、前記チャンバ2dの膨張展開の後半に、前記突出部2eにガスが流入し、前記チャンバ2dの膨張展開と前記突出部2eの膨張展開との間にタイムラグが生じるような大きさとしている。
【0050】
前記延長部2caに突出部2eを設けた本発明のサイドエアバッグ装置1では、側面衝突時、センサーからの信号を受信したインフレータ3は、その外側面に設けた孔3aからチャンバ2dの内部にガスを噴出し、チャンバ2dを膨張展開させる。
【0051】
そして、チャンバ2dがある程度膨張展開した後、ベントホール4から突出部2eにガスが流入し、突出部2eが膨張展開する。この膨張展開した突出部2eにより、乗員Pの側方から衝撃が加わった場合のみならず、乗員Pの斜め前方から衝撃が加わった場合でも、前記衝撃によって移動する乗員Pやその頭部Phの全体を確実に受け止めることができる。
【0052】
(第1実施例の第1変形例)
図2A図2Cは、本発明のサイドエアバッグ装置の第1実施例の第1変形例を示した図である。
【0053】
この第1変形例は、図1A図1Cに示した第1実施例の、前記突出部2eの前面下方部分と、前記中央部分2cの底面前方部分を、テザー5で繋いだものであり、その他の構成は前記第1実施例と同じである。
【0054】
この第1変形例では、前記突出部2eと前記中央部分2cをテザー5で繋いだので、側面方向などからの衝突時、突出部2eの延長部2caの前方方向に膨張展開した部分に乗員Pの頭部Phが移動して衝突した場合でも、当該頭部Phの移動を効果的に抑制することができる。
【0055】
(第1実施例の第2変形例)
図3A図3Cは、本発明のサイドエアバッグ装置の第1実施例の第2変形例を示した図である。
【0056】
この第2変形例は、図2A図2Cに示した第1変形例のテザー5の、前記突出部2eへの取付け位置を、前面下方部分から底面前方部分に変更したものであり、この場合も前記第1変形例と同様の作用効果を奏する。
【0057】
(第1実施例の第3変形例)
図4は、本発明のサイドエアバッグ装置の第1実施例の第3変形例を示した図である。
【0058】
この第3変形例は、図2A図2Cに示した第1変形例のテザー5の、前記中央部分2cへの取付け位置を、底面前方部分から前面下方部分に変更したものであり、この場合も前記第1変形例と同様の作用効果を奏する。
【0059】
(第1実施例の第4変形例)
図5は、本発明のサイドエアバッグ装置の第1実施例の第4変形例を示した図である。
【0060】
この第4変形例は、図3A図3Cに示した第2変形例のテザー5の、前記中央部分2cへの取付け位置を、底面前方部分から前面下方部分に変更したものであり、この場合も前記第1変形例と同様の作用効果を奏する。
【0061】
(第2実施例)
図6は本発明のサイドエアバッグ装置の第2実施例を示した図である。
この第2実施例は、図8A図8Cに示したサイドエアバッグ装置1の、前記中央部分2cの延長部2caの上面位置が、乗員Pの頭部Phの頭頂部と同じ高さの場合もしくは前記頭頂部よりも上方の場合に対応した実施例である。
【0062】
このような上面位置の延長部2caを有するサイドエアバッグ装置1の場合、前記突出部2eの全体を延長部2caの前面に設け、この突出部2eとチャンバ2dを連通するベントホール4は延長部2caの前面に形成する。この第2実施例も図1A図1Cに示す前記第1実施例と同様に第1軸X、第2軸Yを定義することができ、前記第1実施例と同様の作用効果を奏する。
【0063】
また、この第2実施例も、前記第1実施例の変形例1~4と同様、突出部2eと中央部分2cをテザー5で繋いだ場合は、前記第1実施例の変形例1~4と同様の作用効果を奏する。
【0064】
(第3実施例)
図7は本発明のサイドエアバッグ装置の第3実施例を示した図である。
この第3実施例は、図8A図8Cに示したサイドエアバッグ装置1の、前記中央部分2cに延長部2caが無いもの、すなわち、中央部分2cの上面位置が、前記第1部分2a及び前記第2部分2bの上面位置と同じ場合に対応した実施例である。
【0065】
このような延長部2caの無い中央部分2cを有するサイドエアバッグ装置1の場合、前記突出部2eは、上面が運転席Sdや助手席Snに着座した乗員Pの頭頂部よりも上方となるように、前記中央部分2cの上面に覆いかぶさるように設ける。そして、当該覆いかぶさった部分を中央部分2cの前面から前方方向に突出させる。この場合、突出部2eとチャンバ2dを連通するベントホール4は、中央部分2cの上面に形成する。この第3実施例も図1A図1Cに示す前記第1実施例と同様に第1軸X、第2軸Yを定義することができ、前記第1実施例と同様の作用効果を奏する。
【0066】
また、この第3実施例も、前記第1実施例の変形例1~4と同様、突出部2eと中央部分2cをテザー5で繋いだ場合は、前記第1実施例の変形例1~4と同様の作用効果を奏する。
【0067】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0068】
すなわち、以上で述べたサイドエアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も含まれる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0069】
例えば、前記第1実施例では、延長部2caの上面にのみベントホール4を設けているが、延長部2caの上面に加えて前面にもベントホール4を設けてもよい。或いは、延長部2caの前面のみにベントホール4を設けたものでもよい。
【0070】
また、クッション2とテザー5との接合は、所定の強度が得られるのであれば、縫製、接着、溶着など、何れの方法で連結してもよい。
【0071】
また、前記実施例では、クッション2の第1部分2a、第2部分2b、中央部分2cや中央部分2cの延長部2caを一つのチャンバ2dで形成したものを示している。しかしながら、インフレータ3のガスを前記各部分2a~2c,2caに直接送り込むなどしてタイムラグの無い状態で膨張展開できるのであれば、複数のチャンバで形成してもよい。
【0072】
また、本発明のクッション2は、適数枚の基布パネルを縫製などによって接合したものの限らず、いわゆる「ワンピースウィービング(one-piece weaving)」技術を用いて形成したものでもよい。
【0073】
また、前記実施例では、本発明のサイドエアバッグ装置1を運転席Sdのファーサイドの側面部に収納しているが、助手席Snのファーサイドの側面部に収納してもよい。
【0074】
また、前後方向に3列のシートが設けられた車両の場合、2列目のシートが車両の幅方向に並んで配置されているときには、当該2列目のシートに本発明のサイドエアバッグ装置1を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 サイドエアバッグ装置
2 クッション
2a 第1部分
2b 第2部分
2c 中央部分
2ca 延長部
2d チャンバ
2e 突出部
3 インフレータ
4 ベントホール
5 テザー
Sd 運転席
Sn 助手席
SB シートバック
P 乗員
Ps 肩部
Pua 上腕部
Pc 胸部
Ph 頭部
X 第1軸
Y 第2軸
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C