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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】包装用樹脂フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20240626BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240626BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240626BHJP
   B65D 81/28 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B65D65/02 E
B29C48/08
B29C48/305
B65D81/28 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020176254
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067514
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 達暢
(72)【発明者】
【氏名】保坂 永一
(72)【発明者】
【氏名】滝瀬 潔
(72)【発明者】
【氏名】大手 道正
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-330625(JP,A)
【文献】特開2012-188548(JP,A)
【文献】特開平10-310671(JP,A)
【文献】特開2016-074889(JP,A)
【文献】特開2000-189129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/28
B65D 65/00-65/46
B65D 81/28
B32B 1/00-43/00
B29C 48/08
B29C 48/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル樹脂100質量部と、グリセリン脂肪酸エステル0.3質量部以上3質量部以下と、ポリ塩化ビニル樹脂用の防曇剤0.3質量部以上3質量部以下と、ポリ塩化ビニル樹脂用の可塑剤20質量部以上55質量部以下と、ポリ塩化ビニル樹脂用の安定剤1.2質量部以上1.5質量部以下とを含有し、
グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数を10とし、防曇剤を、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸炭素数が14以上22以下のグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルの少なくともいずれかとし、安定剤をCa‐Zn系液状安定剤とし、
JIS B 0633に準拠して測定した場合の十点平均粗さRzJISが0.04μm以下、JIS K 7361‐1に準拠して測定した場合の全光線透過率が90%以上、JIS K 7136に準拠して測定した場合のヘイズ値が1.5%以下であることを特徴とする包装用樹脂フィルム。
【請求項2】
防曇剤のソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数を8以上22以下とした請求項1記載の包装用樹脂フィルム。
【請求項3】
防曇剤のジグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数を8以上22以下とした請求項1記載の包装用樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載した包装用樹脂フィルムの製造方法であって、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部と、脂肪酸炭素数が10のグリセリン脂肪酸エステル0.3質量部以上3質量部以下と、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸炭素数が14以上22以下のグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルの少なくともいずれかからなるポリ塩化ビニル樹脂用の防曇剤0.3質量部以上3質量部以下と、ポリ塩化ビニル樹脂用の可塑剤20質量部以上55質量部以下と、Ca‐Zn系液状安定剤からなるポリ塩化ビニル樹脂用の安定剤1.2質量部以上1.5質量部以下とを成形材料とし、この成形材料を溶融混練し、成形材料をダイスから押し出して包装用樹脂フィルムを成形し、この包装用樹脂フィルムを冷却して巻取機で巻き取ることを特徴とする包装用樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、料理の保存、乾燥や異物の付着防止等に利用される包装用樹脂フィルム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における包装用樹脂フィルムは、図示しないが、所定の樹脂や抗菌剤を含有した成形材料により透明帯形に成形され、筒形の紙管に巻回された状態で食品の包装に使用される(特許文献1、2参照)。所定の樹脂としては、防汚性や防湿性等に優れるポリ塩化ビニル(PVC)樹脂があげられる。また、抗菌剤としては、例えば銀等の抗菌性金属を無機イオン交換体、多孔質体等に担持させた銀系の無機抗菌剤、具体的には銀系ジルコニウム化合物があげられ、包装用樹脂フィルムに付着した雑菌の繁殖を抑制し、食品の衛生管理のニーズに資するよう機能する。
【0003】
このような包装用樹脂フィルムを製造して紙管に巻回する場合には、先ず、ポリ塩化ビニル樹脂や抗菌剤等を含有した成形材料を溶融し、この成形材料から透明の包装用樹脂フィルムを成形し、この包装用樹脂フィルムを冷却した後、冷却した包装用樹脂フィルムを巻取機で巻き取ることにより、包装用樹脂フィルムの原反を製造する。こうして包装用樹脂フィルムの原反を製造したら、この原反を巻替装置の供給機構にセットし、この供給機構に支持させた原反の包装用樹脂フィルムを、ローラを介して巻取ドラムに巻架した後、巻架した包装用樹脂フィルムを紙管に所定の長さ分巻き替えれば、包装用樹脂フィルムを製造して紙管に巻回することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010‐253852号公報
【文献】特開2006‐001592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における包装用樹脂フィルムは、以上のように形成され、抗菌剤として、高価な銀系の無機抗菌剤が主に使用されるので、コストの削減を図ることができず、しかも、表裏面が凹凸化して平滑性が悪化し、表裏面が粗くなるという問題が生じる。この問題を放置すると、包装用樹脂フィルムを紙管に巻き替える場合に、包装用樹脂フィルムの間で滑りやすくなり、その結果、包装用樹脂フィルムに巻きずれが発生するという大きな問題が新たに生じることとなる。さらに、包装用樹脂フィルム中に金属化合物からなる抗菌剤が分散すると、包装用樹脂フィルムの全光線透過率が低下するので、被包装物である食品を包装した場合、視覚を通じて食品を明瞭に把握することが困難になる。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、平滑性の悪化や光線透過率の低下を防ぐことのできる安価な包装用樹脂フィルム及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究した結果、グリセリン脂肪酸エステルの抗菌性能に着目し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明においては上記課題を解決するため、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部と、グリセリン脂肪酸エステル0.3質量部以上3質量部以下と、ポリ塩化ビニル樹脂用の防曇剤0.3質量部以上3質量部以下と、ポリ塩化ビニル樹脂用の可塑剤20質量部以上55質量部以下と、ポリ塩化ビニル樹脂用の安定剤1.2質量部以上1.5質量部以下とを含有し、
グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数を10とし、防曇剤を、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸炭素数が14以上22以下のグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルの少なくともいずれかとし、安定剤をCa‐Zn系液状安定剤とし、
JIS B 0633に準拠して測定した場合の十点平均粗さRzJISが0.04μm以下、JIS K 7361‐1に準拠して測定した場合の全光線透過率が90%以上、JIS K 7136に準拠して測定した場合のヘイズ値が1.5%以下であることを特徴としている。
【0008】
なお、防曇剤のソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数を8以上22以下とすることができる。
また、防曇剤のジグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数を8以上22以下とすることもできる。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1、2、又は3に記載した包装用樹脂フィルムの製造方法であって、
ポリ塩化ビニル樹脂100質量部と、脂肪酸炭素数が10のグリセリン脂肪酸エステル0.3質量部以上3質量部以下と、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸炭素数が14以上22以下のグリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルの少なくともいずれかからなるポリ塩化ビニル樹脂用の防曇剤0.3質量部以上3質量部以下と、ポリ塩化ビニル樹脂用の可塑剤20質量部以上55質量部以下と、Ca‐Zn系液状安定剤からなるポリ塩化ビニル樹脂用の安定剤1.2質量部以上1.5質量部以下とを成形材料とし、この成形材料を溶融混練し、成形材料をダイスから押し出して包装用樹脂フィルムを成形し、この包装用樹脂フィルムを冷却して巻取機で巻き取ることを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における防曇剤は、1種単独で使用しても良いし、複数種を併用しても良い。また、包装用樹脂フィルムは、食品包装用が主ではあるが、薬品、アパレル、雑貨、産業資材用でも良い。この包装用樹脂フィルムを製造して巻き替える場合、筒形の巻芯に包装用樹脂フィルムが巻かれた原反を供給機構に支持させ、この供給機構が支持した原反を回転させて包装用樹脂フィルムを下流の紙管に供給すれば、包装用樹脂フィルムを巻き替えることができる。
【0013】
本発明によれば、包装用樹脂フィルムの抗菌剤として、高価な銀系無機抗菌剤ではなく、固形の金属物質を含まない非金属の安価なグリセリン脂肪酸エステルを用いるので、コストを削減することができ、しかも、包装用樹脂フィルムが凹凸化して平滑性が悪化するのを防ぐことができる。また、グリセリン脂肪酸エステルの採用により、包装用樹脂フィルムの光線透過率が低下するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、包装用樹脂フィルムの平滑性悪化や光線透過率の低下を防ぐことができ、しかも、安価な包装用樹脂フィルムを得ることができるという効果がある。また、グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数が10なので、抗菌効果の低下を招くことが少ない。また、防曇剤を、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルの少なくともいずれかとするので、ポリ塩化ビニル樹脂表面を親水性に変更し、包装用樹脂フィルムの表面の曇りを防止することができる。また、防曇剤のグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数を14以上22以下として脂肪酸炭素数を増やすので、ポリ塩化ビニル樹脂表面を親水性に変え、包装用樹脂フィルムの表面の曇りを防止することができる。したがって、抗菌効果と防曇効果の両立した包装用樹脂フィルムを得ることが可能になる。
また、ポリ塩化ビニル樹脂用の可塑剤を20質量部以上55質量部以下含有するので、包装用樹脂フィルムの柔軟性を確保することができる。また、ポリ塩化ビニル樹脂用の安定剤を1.2質量部以上1.5質量部以下含有するので、ポリ塩化ビニル樹脂の分解等を防ぎ、包装用樹脂フィルムの切り易さや弾力等を確保することが可能となる。また、安定剤をCa‐Zn系液状安定剤とするので、食品包装の安全性を高めることが可能となる。また、包装用樹脂フィルムの十点平均粗さRzJISが0.04μm以下なので、包装用樹脂フィルムが凹凸化して平滑性が悪化するのを低減することが可能となる。また、包装用樹脂フィルムの全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1.5%以下なので、包装用樹脂フィルムの光線透過率が低下するのを抑制し、包装した食品等を視覚により明瞭に把握することが容易となる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、ソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数を8以上22以下とするので、ポリ塩化ビニル樹脂表面を親水性に変更し、包装用樹脂フィルムの表面の曇りを防止することができる。したがって、抗菌効果と防曇効果が両立した包装用樹脂フィルムを得ることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、ジグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数を8以上22以下とするので、ポリ塩化ビニル樹脂表面を親水性に変え、包装用樹脂フィルムの表面の曇りを防止することが可能となる。したがって、抗菌効果と防曇効果の両立した包装用樹脂フィルムの獲得が期待できる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、包装用樹脂フィルムを溶融押出成形法により成形するので、包装用樹脂フィルムの厚さ精度、生産性、ハンドリング性を向上させ、製造設備の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る包装用樹脂フィルムの実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
図2】本発明に係る包装用樹脂フィルム及びその製造方法の実施形態における製造装置を模式的に示す全体説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における包装用樹脂フィルム1は、図1図2に示すように、少なくとも所定の樹脂と抗菌剤とを含有した成形材料2により成形された光透過性の薄いラップフィルムであり、円筒形の紙管3に多層に巻回された状態で食品の包装に使用されるが、抗菌剤としてグリセリン脂肪酸エステルを選択し、平滑性の悪化や光線透過率の低下を防ぐことにより、国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する。
【0023】
成形材料2は、少なくとも所定の樹脂であるポリ塩化ビニル樹脂と抗菌剤とを含有して柔らかい透明帯形の包装用樹脂フィルム1を形成するが、視認性、成形性、柔軟性等を考慮すると、好ましくはポリ塩化ビニル樹脂用の防曇剤、可塑剤、及び安定剤も配合される。この成形材料2のポリ塩化ビニル(PVC)樹脂は、塩化ビニル(クロロエチレン)の重合反応で得られる高分子化合物であり、防汚性、防湿性、伸縮性、耐久性、透明性、密着性に優れる。ポリ塩化ビニル樹脂の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えばTK‐1000[製品名:信越化学工業株式会社製]等の製品があげられる。
【0024】
成形材料2の抗菌剤としては、従来とは異なり、優れた抗菌効果と所定の防曇性を併有する非金属系の安価なグリセリン脂肪酸エステル(グリセリンエステル)が選択して用いられ、少なくともカビ、酵母、グラム陽性菌等の発育を抑制する作用を発揮する。このグリセリン脂肪酸エステルは、油脂から得た脂肪酸とグリセリンの反応により製造される乳化剤であり、モノ、ジ、トリエステルの3種類に分類される。グリセリン脂肪酸エステルの添加量は、優れた抗菌効果を確実に得る観点からすると、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上3質量部以下、好ましくは0.2質量部以上3質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上3質量部以下が良い。
【0025】
グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数は、8以上10以下、好ましくは10が最適である。これは、グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数が8未満や10を越える場合には、抗菌効果の低下を招くからである。
【0026】
このようなグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンカプレートやグリセリンカプリレート等があげられる。具体例としては、特に限定されるものではないが、例えばポエム M‐200[製品名:理研ビタミン株式会社製]やポエム M‐100[製品名:理研ビタミン株式会社製]等の製品があげられる。
【0027】
成形材料2の防曇剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルの少なくともいずれかが選択的に用いられる。防曇剤としてソルビタン脂肪酸エステルが用いられる場合、このソルビタン脂肪酸エステルの添加量は、優れた防曇性を得る観点からすると、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上3質量部以下、好ましくは0.3質量部以上3質量部以下が良い。
【0028】
ソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数は、優れた防曇性を得る観点から、8以上22以下、好ましくは12以上18以下が良い。このようなソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えばソルビタンモノラウレート等があげられる。具体例としては、限定されるものではないが、例えばリケマール L‐250A[製品名:理研ビタミン株式会社製]等の製品があげられる。
【0029】
防曇剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルが用いられる場合、このポリオキシエチレンアルキルエーテルの添加量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上3質量部以下、望ましくは0.3質量部以上3質量部以下が良い。これは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの添加量が0.1質量部未満の場合には、包装用樹脂フィルム1の防曇性が悪化し、逆に3質量部を越える場合には、包装用樹脂フィルム1の透明性や成形に支障を来すからである。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、限定されるものではないが、リケマール B‐205[製品名:理研ビタミン株式会社製]等の製品が該当する。
【0030】
防曇剤としてグリセリン脂肪酸エステルが選択される場合、このグリセリン脂肪酸エステルの添加量は、優れた防曇性を得るため、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上3質量部以下、望ましくは0.3質量部以上3質量部以下が良い。また、グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数は、防曇性を向上させる観点から、14以上22以下、望ましくは14以上18以下が良い。これは、脂肪酸炭素数が8や10等の14未満の場合には、充分な防曇効果を得ることができないからである。
【0031】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノオレート等が該当する。具体例としては、特に限定されるものではないが、リケマール 0L‐100(E)[製品名:理研ビタミン株式会社製]等の製品が該当する。
【0032】
防曇剤としてジグリセリン脂肪酸エステルが選択される場合、このジグリセリン脂肪酸エステルの添加量は、防曇性を向上させるため、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上3質量部以下、望ましくは0.3質量部以上3質量部以下が良い。また、ジグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数は、防曇性を向上させる観点から、8以上22以下、望ましくは12以上18以下が良い。ジグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、制約されるものではないが、例えばポエム D0‐100V[製品名:理研ビタミン株式会社製]等の製品が該当する。
【0033】
成形材料2の可塑剤としては、例えばアジピン酸ジ‐i‐ノニル、エポキシ化大豆油(ESBO)、アジピン酸ジ‐n‐アルキル等が使用される。この可塑剤の添加量は、包装用樹脂フィルム1の柔軟性を確保する観点からすると、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、10質量部以上55質量部以下、好ましくは15質量部以上55質量部以下、より好ましくは20質量部以上55質量部以下が良い。
【0034】
エポキシ化大豆油の具体例としては、特に限定されるものではないが、アデカサイザー 0‐130P[製品名:株式会社ADEKA製]等の製品があげられる。また、アジピン酸ジ‐n‐アルキルの具体例としては、特に限定されるものではないが、D‐610A[製品名:田岡化学工業株式会社製]等の製品があげられる。
【0035】
成形材料2の安定剤としては、包装用樹脂フィルム1が食品包装に利用される関係上、安全なCa‐Zn系液状安定剤等が使用される。この安定剤の添加量は、ポリ塩化ビニル樹脂の分解等を防ぎ、包装用樹脂フィルム1の切り易さや弾力等を確保するため、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、1.0質量部以上1.5質量部以下、好ましくは1.2質量部以上1.5質量部以下が良い。Ca‐Zn系液状安定剤の具体例としては、限定されるものではないが、例えばWestlake Akishima株式会社製等の製品があげられる。
【0036】
包装用樹脂フィルム1は、溶融押出成形法、カレンダー成形法、あるいはキャスティング法等の公知の製造法により製造することができるが、ハンドリング性や製造設備の簡略化を考慮すると、溶融押出成形法により押出成形されるのが最適である。溶融押出成形法で包装用樹脂フィルム1を製造する場合には、押出成形機を使用して成形材料2を溶融混練し、押出成形機のTダイス15から包装用樹脂フィルム1を押し出して冷却することにより、包装用樹脂フィルム1を製造することができる。
【0037】
上記において、包装用樹脂フィルム1を製造する場合には図2に示すように、先ず、溶融押出成形機10の原料投入口11に用意した成形材料2を好ましくは不活性ガスを供給しながら投入し、成形材料2を熱分解温度以下に加熱した溶融押出成形機10中で溶融混練する。溶融押出成形機10は、特に限定されるものではないが、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等が使用される。
【0038】
溶融押出成形機10の後部上方には、ホッパからなる原料投入口11が設置されるが、この原料投入口11には、必要に応じ、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス(図2の矢印参照)を外部から導入する不活性ガス供給管12が接続され、この不活性ガス供給管12からの不活性ガスにより、成形材料2のポリ塩化ビニル樹脂の酸化劣化や変色が有効に防止され、かつ成形材料2の乾燥度を向上させることもできる。
【0039】
溶融押出成形機10の前部には連結管13が水平に接続され、この連結管13には、成形材料2中のゲルや異物を除去するフィルタ14が嵌着される。また、連結管13の先端部には、溶融したゲル状の包装用樹脂フィルム1をリップ口から高精度に押し出すTダイス15が装着され、このTダイス15の下方には、包装用樹脂フィルム1用の冷却ロール16が軸支されるとともに、この冷却ロール16に隣接して摺接する圧着ロール17が回転可能に軸支されており、この圧着ロール17の下流には、巻芯18に包装用樹脂フィルム1を巻き取る巻取機19が設置される。
【0040】
冷却ロール16は、例えば圧着ロール17よりも拡径の金属ロールからなり、Tダイス15の下方に回転可能に軸支されて押し出された高温の包装用樹脂フィルム1を圧着ロール17との間に挟持し、圧着ロール17と共に包装用樹脂フィルム1を短時間で冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御するよう機能する。この冷却ロール16の温度調整方法や冷却方法としては、特に限定されるものではないが、例えば空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒータや誘電加熱等の方法があげられる。
【0041】
圧着ロール17は、例えば表面がシリコーンゴムのゴムロールが使用される。この圧着ロール17と巻取機19との間には、包装用樹脂フィルム1にテンションを作用させるテンションロール20が回転可能に軸支されるとともに、包装用樹脂フィルム1の両側部を切断するスリット刃21が上下動可能に配設される。
【0042】
成形材料2を溶融押出成形機10の原料投入口11に投入する場合、成形材料2のポリ塩化ビニル樹脂、抗菌剤、防曇剤、可塑剤、及び安定剤を事前にヒーターミキサーで混合し、ドライアップさせた後に投入することが好ましい。但し、ポリ塩化ビニル樹脂、抗菌剤、防曇剤、可塑剤、及び安定剤を溶融混練して成形材料2を調製し、この成形材料2を粒状タイプに形成した後に溶融押出成形機10の原料投入口11に投入しても良い。
【0043】
溶融押出成形機10の溶融混練時におけるポリ塩化ビニル樹脂の温度は、溶融可能でポリ塩化ビニル樹脂が分解しない温度であれば、特に制限されるものではないが、ポリ塩化ビニル樹脂の熱分解温度以下の範囲(190℃~210℃)が良い。これは、熱分解温度を越える場合には、ポリ塩化ビニル樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。
【0044】
防曇剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、又はジグリセリン脂肪酸エステルの単独使用でも良いが、例えば(1)ソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンアルキルエーテルの組み合わせ、(2)ソルビタン脂肪酸エステルとグリセリン脂肪酸エステルの組み合わせ、(3)ソルビタン脂肪酸エステルとジグリセリン脂肪酸エステルの組み合わせ、(4)ポリオキシエチレンアルキルエーテルとグリセリン脂肪酸エステルの組み合わせ、(5)ポリオキシエチレンアルキルエーテルとジグリセリン脂肪酸エステルの組み合わせ、(6)グリセリン脂肪酸エステルとジグリセリン脂肪酸エステルの組み合わせ、(7)これら全ての組み合わせでも良い。
【0045】
成形材料2を溶融押出成形機10中で溶融混練したら、溶融押出成形機10の先端部のTダイス15から透明帯形の包装用樹脂フィルム1を連続的に押出成形し、この包装用樹脂フィルム1を、冷却ロール16、圧着ロール17、テンションロール20、及び巻取機19の巻芯18に順次巻架するとともに、冷却ロール16に摺接させて冷却し、包装用樹脂フィルム1の両側部をスリット刃21でそれぞれカットして体裁を整えた後、巻取機19の巻芯18に順次巻き取って包装用樹脂フィルム1の原反とすれば、抗菌効果を有する薄膜の包装用樹脂フィルム1を製造することができる。
【0046】
包装用樹脂フィルム1と冷却ロール16との密着時間は、特に限定されるものではないが、包装用樹脂フィルム1を瞬時に冷却する観点からすると、0.1秒以上120秒以下、好ましくは0.5秒以上40秒以下、より好ましくは1秒以上30秒以下が最適である。包装用樹脂フィルム1は、過剰に伸びない45cm×3200m、30cm×3200m、22cm×3200mの幅・長さに製造される。
【0047】
製造された包装用樹脂フィルム1の厚さは、使用感や光学特性を考慮すると、5μm以上12μm以下、好ましくは6μm以上11μm以下の範囲が良い。また、包装用樹脂フィルム1の抗菌性能を評価する場合には、JIS Z 2801:2012「抗菌加工製品‐抗菌性試験方法・抗菌効果」5の試験方法に準拠して評価することができる。包装用樹脂フィルム1の表面粗さである十点平均粗さRzJISは、JIS B 0633に準拠して測定した場合、0.07μm以下、好ましくは0.04μm以下の範囲が良い。これは、十点平均粗さRzJISが0.07μmを越える場合には、包装用樹脂フィルム1の表裏面が凹凸化して平滑性が悪化するという理由に基づく。
【0048】
包装用樹脂フィルム1の全光線透過率(Total Transmittance)は、JIS K 7361‐1に準拠して測定した場合、90%以上、好ましくは91%以上、より好ましくは92%が良い。これは、全光線透過率が90%未満の場合には、視覚を通じて食品を明瞭に把握することが困難となるからである。また、包装用樹脂フィルム1のヘイズ(Haze:曇り度)値は、JIS K 7136に準拠して測定した場合、1.5%以下、好ましくは0.8%以上1.0%以下が良い。これは、ヘイズ値が1.5%を越える場合には、包装用樹脂フィルム1の全光線透過率が低下するからである。
【0049】
次に、製造した包装用樹脂フィルム1を紙管3に巻回する場合には、製造した包装用樹脂フィルム1の原反を巻替装置の供給機構にセットし、この供給機構に支持させた原反の包装用樹脂フィルム1をローラを介して巻取ドラムに巻架した後、巻架した包装用樹脂フィルム1を用意した紙管3に所定の長さ分平巻方式で多層に巻き替えれば、包装用樹脂フィルム1を紙管3に巻回することができる。巻替装置は、図示しないが、供給機構の下流に、包装用樹脂フィルム1を案内する多数のローラ、具体的には、巻出ローラ、ガイドローラ、エキスパンダローラ、ピンチローラが配設され、このピンチローラが巻取ドラムに近接する。
【0050】
上記によれば、包装用樹脂フィルム1の抗菌剤として、高価な銀系の無機抗菌剤ではなく、安価なグリセリン脂肪酸エステルを用いるので、優れた抗菌効果が得られる他、製造コストの削減を図ることができ、しかも、包装用樹脂フィルム1の表裏面が凹凸化して平滑性が悪化するのを有効に防止することができる。また、包装用樹脂フィルム1の平滑性の向上により、包装用樹脂フィルム1を紙管3に巻き替える場合に、包装用樹脂フィルム1の間で滑りやすくなるおそれを排除し、包装用樹脂フィルム1に巻きずれが発生するという問題を有効に解消することができる。
【0051】
また、包装用樹脂フィルム1の巻きずれの発生を防止することができるので、包装用樹脂フィルム1の巻き取り速度を向上させ、生産性を向上させることが可能となる。さらに、抗菌剤として非金属のグリセリン脂肪酸エステルを用いるので、包装用樹脂フィルム1の全光線透過率が低下するのを抑制することが可能となる。したがって、包装用樹脂フィルム1の視認性向上が期待でき、被包装物である食品を包装用樹脂フィルム1により包装する場合、視覚を通じて食品を明瞭に把握することが実に容易となる。
【0052】
なお、上記実施形態における包装用樹脂フィルム1の防曇性については、ビーカーに60℃の温水を1000ml投入し、このビーカーに包装用樹脂フィルム1を被せて曇りが消えた時の時間を計測する方法で評価しても良い。また、成形材料2の可塑剤として、アジピン酸ジ‐i‐ノニル、エポキシ化大豆油(ESBO)、又はアジピン酸ジ‐n‐アルキルを単独で使用しても良いが、これらを適宜併用しても良い。
【0053】
また、上記実施形態ではシリコーンゴムを用いた圧着ロール17を単に示したが、圧着ロール17の周面に、包装用樹脂フィルム1と冷却ロール16との密着性を向上させる観点から、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴム層を必要に応じて被覆形成し、このゴム層に、シリカやアルミナ等の無機化合物を選択的に添加しても良い。さらに、圧着ロール17により、冷却ロール16に包装用樹脂フィルム1を押し付けて密着させても良いが、静電印加法(ピンニング法)やエアーナイフを採用して冷却ロール16に包装用樹脂フィルム1を密着させても良い。
【実施例
【0054】
以下、本発明に係る包装用樹脂フィルム及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、成形材料として、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂100質量部、抗菌剤であるグリセリン脂肪酸エステル、防曇剤、可塑剤、及び安定剤を用意し、この成形材料をヒーターミキサーで事前に混合してドライアップさせ、溶融押出成形機の原料投入口に投入し、成形材料をポリ塩化ビニル樹脂の熱分解温度以下にて加熱した溶融押出成形機中で溶融混練するとともに、溶融混練した成形材料のポリ塩化ビニル樹脂を溶融押出成形機のTダイスから連続的に押し出すことにより、連続した抗菌性の包装用樹脂フィルムを透明帯形に成形した。
【0055】
ポリ塩化ビニル樹脂は、TK‐1000[製品名:信越化学工業株式会社製]とした。また、グリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸炭素数が10のポエム M‐200[製品名:理研ビタミン株式会社製]0.5質量部とした。防曇剤は、脂肪酸炭素数が12以上18以下のソルビタン脂肪酸エステルとした。具体的には、リケマール L‐250A[製品名:理研ビタミン株式会社製]1.5質量部採用した。
【0056】
可塑剤は、アジピン酸ジ‐i‐ノニル、及びエポキシ化大豆油とした。具体的には、モノサイザー W‐242[製品名:DIC株式会社製]20質量部、及びアデカサイザー 0‐130P[製品名:株式会社ADEKA製]6質量部の合計26質量部を採用した。さらに、安定剤は、Ca‐Zn系液状安定剤1.5質量部とした。具体的には、Westlake Akishima株式会社製の製品を採用した。
【0057】
溶融押出成形機は、幅2000mmのTダイスを備えたφ115mmの単軸溶融押出成形機とした。この単軸溶融押出成形機は、L/D=30、スクリュー:フルフライトスクリュータイプとした。単軸溶融押出成形機の温度は150℃、Tダイスの温度は180℃、これら単軸溶融押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は180℃にそれぞれ調整した。
抗菌性の包装用樹脂フィルムを押出成形したら、この連続した包装用樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻芯に順次巻き取り、長さ3200m、幅300mmの包装用樹脂フィルムを製造した。
【0058】
抗菌性の包装用樹脂フィルムが得られたら、この包装用樹脂フィルムのフィルム厚、抗菌性能、表面粗さ、巻きずれの有無、全光線透過率、ヘイズ値を調べ、その結果を表1にまとめた。
【0059】
・包装用樹脂フィルムのフィルム厚
包装用樹脂フィルムのフィルム厚は、接触式の厚さ計により測定した。この接触式の厚さ計は、GT2‐A12KL[製品名:株式会社キーエンス製]を用いた。測定に際しては、包装用樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)が交わる所定位置の厚みを9箇所測定し、その平均値をフィルム厚とした。押出方向の測定箇所は、包装用樹脂フィルムの先端部から50mm間隔で50mm、100mm、150mmの位置とした。これに対し、幅方向の測定箇所は、包装用樹脂フィルムの左端部から25mm、150mm、275mmの位置とした。
【0060】
・包装用樹脂フィルムの抗菌性能
包装用樹脂フィルムの抗菌性能については、JIS Z 2801:2012「抗菌加工製品‐抗菌性試験方法・抗菌効果」5の試験方法に準拠して計測し、計測した菌数から抗菌活性値を算出してその結果に応じ、以下の要領で○×評価した。具体的な試験方法としては、温度35±1℃、相対湿度90%以上の環境下において、調整菌液0.4mlを5cm×5cmに裁断した包装用樹脂フィルムの試験片に垂らし、4cm×4cmの被膜フィルムにより被覆した後、24時間の静置培養で菌数変化を計測した。調整菌液は、黄色ブドウ球菌と大腸菌により調製した。
【0061】
○:抗菌活性値が2以上で抗菌性能が良好
×:抗菌活性値が2未満で抗菌性能が不良
【0062】
・包装用樹脂フィルムの表面粗さ
包装用樹脂フィルムの十点平均粗さRzJISについては、JIS B 0633に準拠し、3D測定レーザー顕微鏡により測定した。3D測定レーザー顕微鏡は、LEXT OLS4100[製品名:オリンパス株式会社製]を用いた。
【0063】
・包装用樹脂フィルムの巻きずれの有無
巻取機に巻き取った包装用樹脂フィルムの原反を巻替装置の供給機構にセットし、この供給機構に支持させた原反の包装用樹脂フィルムをローラを介して巻取ドラムに巻架した後、巻架した包装用樹脂フィルムを用意した紙管に多層に巻き替えることにより、包装用樹脂フィルムを紙管に巻回した。包装用樹脂フィルムを紙管に巻回したら、包装用樹脂フィルムの巻回状態を目視により判断し、包装用樹脂フィルムの巻回状態が良好な場合には、巻きずれ無で評価し、包装用樹脂フィルムの巻回状態が不良な場合(巻き位置のずれ)には、巻きずれ有で評価した。
【0064】
・包装用樹脂フィルムの全光線透過率
包装用樹脂フィルムの全光線透過率については、JIS K 7361‐1に準拠してヘイズ・透過率・反射率計により測定した。ヘイズ・透過率・反射率計は、ヘイズメーター NDH8000[製品名:日本電色工業株式会社製]を使用した。
【0065】
・包装用樹脂フィルムのヘイズ値
包装用樹脂フィルムのヘイズ値については、JIS K 7136に準拠してヘイズ・透過率・反射率計により測定した。ヘイズ・透過率・反射率計は、全光線透過率を測定する場合と同様、ヘイズメーター NDH8000[製品名:日本電色工業株式会社製]とした。
【0066】
〔実施例2〕
基本的には実施例1と同様だが、防曇剤をポリオキシエチレンアルキルエーテルに変更した。具体的には、リケマール B‐205[製品名:理研ビタミン株式会社製]1.5質量部使用した。
その他の部分については実施例1と同様として包装用樹脂フィルムを製造し、包装用樹脂フィルムを製造したら、この包装用樹脂フィルムのフィルム厚、抗菌性能、表面粗さ、巻きずれの有無、全光線透過率、ヘイズ値を調べ、その結果を表1にまとめた。
【0067】
〔実施例3〕
基本的には実施例1と同様だが、防曇剤をグリセリン脂肪酸エステルに変更した。具体的には、脂肪酸炭素数が14以上18以下のリケマール 0L‐100(E)[製品名:理研ビタミン株式会社製]1.5質量部使用した。
その他の部分については実施例1と同様として包装用樹脂フィルムを製造し、包装用樹脂フィルムを製造したら、この包装用樹脂フィルムのフィルム厚、抗菌性能、表面粗さ、巻きずれの有無、全光線透過率、ヘイズ値を調べ、その結果を表1にまとめた。
【0068】
〔実施例4〕
基本的には実施例1と同様だが、防曇剤をジグリセリン脂肪酸エステルに変更した。具体的には、脂肪酸炭素数が12以上18以下のポエム D0‐100V[製品名:理研ビタミン株式会社製]1.5質量部選択した。
その他の部分については実施例1と同様として包装用樹脂フィルムを製造し、製造した包装用樹脂フィルムのフィルム厚、抗菌性能、表面粗さ、巻きずれの有無、全光線透過率、ヘイズ値を調べ、その結果を表1に記載した。
【0069】
〔実施例5〕
基本的には実施例1と同様だが、防曇剤を実施例1、2、3、4の防曇剤の組み合わせとした。すなわち、防曇剤をソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、及びジグリセリン脂肪酸エステルの組み合わせに変更した。
【0070】
具体的には、脂肪酸炭素数が12以上18以下のソルビタン脂肪酸エステルとして、リケマール L‐250A[製品名:理研ビタミン株式会社製]0.6質量部を選択し、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、リケマール B‐205[製品名:理研ビタミン株式会社製]0.3質量部を選択した。また、グリセリン脂肪酸エステルとして、脂肪酸炭素数が14以上18以下のリケマール 0L‐100(E)[製品名:理研ビタミン株式会社製]0.3質量部を用い、ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸炭素数が12以上18以下のポエム D0‐100V[製品名:理研ビタミン株式会社製]0.3質量部を用いた。
【0071】
その他の部分については実施例1と同様として包装用樹脂フィルムを製造し、製造した包装用樹脂フィルムのフィルム厚、抗菌性能、表面粗さ、巻きずれの有無、全光線透過率、ヘイズ値を調べ、その結果を表1に記載した。
【0072】
〔比較例1〕
成形材料として、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部、抗菌剤であるグリセリン脂肪酸エステル、防曇剤、可塑剤、及び安定剤を用意し、この成形材料をヒーターミキサーで事前に混合してドライアップさせ、溶融押出成形機の原料投入口に投入し、成形材料を熱分解温度以下に加熱した溶融押出成形機中で溶融混練するとともに、溶融混練した成形材料のポリ塩化ビニル樹脂を溶融押出成形機のTダイスから連続的に押し出すことにより、連続した抗菌性の包装用樹脂フィルムを帯形に成形した。
【0073】
ポリ塩化ビニル樹脂は、TK‐1000[製品名:信越化学工業株式会社製]とした。また、グリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸炭素数が14以上18以下のリケマール 0L‐100(E)[製品名:理研ビタミン株式会社製]0.5質量部とした。防曇剤は、脂肪酸炭素数が12以上18以下のソルビタン脂肪酸エステルとし、リケマール L‐250A[製品名:理研ビタミン株式会社製]を1.5質量部採用した。
【0074】
可塑剤は、アジピン酸ジ‐i‐ノニル、及びエポキシ化大豆油とした。具体的には、モノサイザーW‐242[製品名:DIC株式会社製]20質量部、及びアデカサイザー0‐130P[製品名:株式会社ADEKA製]6質量部の合計26質量部を採用した。さらに、安定剤は、Ca‐Zn系液状安定剤1.5質量部とした。具体的には、Westlake Akishima株式会社製の製品を採用した。
【0075】
その他の部分については実施例1と同様として抗菌性の包装用樹脂フィルムを製造し、包装用樹脂フィルムを製造したら、この包装用樹脂フィルムのフィルム厚、抗菌性能、表面粗さ、巻きずれの有無、全光線透過率、ヘイズ値を調べ、その結果を表1にまとめた。
【0076】
〔比較例2〕
基本的には比較例1と同様だが、成形材料の抗菌剤を従来の銀系無機抗菌剤に変更した。具体的には、銀系無機抗菌剤を、ノバロン AG‐300[製品名:東亜合成株式会社製]0.5質量部とした。
その他の部分については比較例1と同様として包装用樹脂フィルムを製造し、製造した包装用樹脂フィルムのフィルム厚、抗菌性能、表面粗さ、巻きずれの有無、全光線透過率、ヘイズ値を調べ、その結果を表1にまとめた。
【0077】
【表1】
【0078】
〔評 価〕
各実施例の包装用樹脂フィルムは、抗菌剤として脂肪酸炭素数が8以上10以下のグリセリン脂肪酸エステルを用いたので、抗菌性能、表面粗さ、全光線透過率、ヘイズ値で優れた結果を得ることができた。また、包装用樹脂フィルムを紙管に巻き替えた場合に、包装用樹脂フィルムに巻きずれが発生しなかった。さらに、包装用樹脂フィルムの全光線透過率が向上したので、この結果から、食品を包装用樹脂フィルムにより包装する場合、視覚を通じて食品を明瞭に把握することが容易となると推測される。
【0079】
これに対し、比較例1の包装用樹脂フィルムは、脂肪酸炭素数が本発明の範囲外のグリセリン脂肪酸エステルを用いたので、抗菌性能に関して良好な結果を得ることができなかった。また、比較例2の包装用樹脂フィルムは、抗菌剤に従来の銀系無機抗菌剤を用いたので、良好な抗菌性能を得ることはできたものの、表面粗さ、巻きずれの有無、全光線透過率、ヘイズ値が悪化し、実用性が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る包装用樹脂フィルム及びその製造方法は、樹脂フィルムの製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0081】
1 包装用樹脂フィルム
2 成形材料
3 紙管
10 溶融押出成形機
15 Tダイス(ダイス)
16 冷却ロール
17 圧着ロール
18 巻芯
19 巻取機
図1
図2