(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】コンクリート打設方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/04 20060101AFI20240626BHJP
E21D 5/12 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
E04G21/04 102
E21D5/12
(21)【出願番号】P 2020195162
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019229684
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】並川 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】上枝 豊
(72)【発明者】
【氏名】藤本 司
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅路
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-077525(JP,U)
【文献】特開平7-139171(JP,A)
【文献】特開昭59-065165(JP,A)
【文献】特開平07-207941(JP,A)
【文献】特開昭61-146913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/04
E21D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位のシュートの下部が下位のシュートの上部に入り込む配置で吊り下げ支持された複数のシュートを利用して、生コンクリートを上方の投入位置から下方の打設位置に流し込むコンクリート打設方法であって、
前記シュートのそれぞれは、上方の吊り下げ位置から最下位のシュートにわたって垂下する垂下索状体に連結部材を介して個別に連結されるとともに、それぞれの前記連結部材により、下位のシュートに対する真上のシュートの抜き差しが許容され、
いずれかの前記下位のシュートに対して前記真上のシュートが抜き外された場合に、前記下位のシュートの高さ位置が前記投入位置として設定されるコンクリート打設方法。
【請求項2】
生コンクリートの打設量に応じて複数の前記シュートを引き上げ操作し、所定量の引き上げ操作が行われるごとに、現在の前記投入位置から前記所定量だけ下方に位置するシュートに対して真上のシュートを抜き外して、前記投入位置を前記所定量だけ下方の位置に変更する請求項1に記載のコンクリート打設方法。
【請求項3】
前記連結部材は、前記下位のシュートに対する前記真上のシュートの抜き差しを許容する長さを有して前記垂下索状体から前記シュートにわたる索状体である請求項1又は2に記載のコンクリート打設方法。
【請求項4】
前記シュートは、前記連結部材を介して前記垂下索状体に着脱可能に連結されている請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート打設方法。
【請求項5】
前記最下位のシュートは、他のシュートよりも案内長さが長い水中コンクリート打設用のトレミー管である請求項1~4のいずれか一項に記載のコンクリート打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上位のシュートの下部が下位のシュートの上部に入り込む配置で吊り下げ支持された複数のシュートを利用して、生コンクリートを上方の投入位置から下方の打設位置に流し込むコンクリート打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなコンクリート打設方法に関する背景技術としては、例えば、複数のシュート(中空筒)に固定された接続金具のフックを一対の垂下用チェーンに係合することにより、複数のシュートを、上位のシュートの下部が下位のシュートの上部に入り込む配置で上下方向に連なるように、クレーンに一対の垂下用チェーンを介して吊り下げ支持させるようにしたものがある。又、各シュート(中空筒)の上部に一対のチェーンの一端部を接続するとともに、各チェーンの中程にフック(連結部材)を備え、かつ、各フックを、真上のシュートに接続された各チェーンの他端側(下端側)に引っ掛けることにより、複数のシュートを、上位のシュートの下部が真下のシュートの上部に入り込む配置で上下方向に連なるように、クレーンに各シュートのチェーン及びフックを介して吊り下げ支持させるようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者の背景技術は、上記の特許文献1において従来技術として例示されたものであり、特許文献1においては、一対の垂下用チェーンに対して各シュートの位置が固定された状態になるために、下位のシュートに対する真上のシュートの分離が困難になり、建築現場での必要な作業フロアのレベルに応じた高さ位置のシュートを開口させ難いことが記載されている。
【0005】
後者の背景技術は、上記従来技術の不具合を解決するために特許文献1に記載された技術であり、特許文献1に記載の技術においては、前述したように複数のシュートが連なることにより、最上位のシュートの各フックをクレーン側に引っ掛けて、複数のシュートをクレーンに吊り下げ支持させた状態であっても、各チェーンには、各シュートの上部に接続された各チェーンの一端部からフックにわたる一端部側のチェーン部分が確保されていることにより、下位のシュートに対する真上のシュートの分離が容易になり、建築現場での必要なフロアのレベルに応じた高さ位置のシュートを開口させ易くなっている。
【0006】
その反面、特許文献1に記載の技術においては、全シュートの重量や生コンクリートを流し込むときの衝撃荷重の全てが最上位のシュートに備えられたフックに集中して掛かることから、フックの耐力に基づいて吊り下げ可能なシュートの総数が制限されることになる。そのため、例えば、特許文献1に記載の技術に基づく複数のシュートを利用して場所打ち杭を施工する場合などにおいては、フックの耐力によって打設位置の深度(打設位置までの距離)が制限されることになり、この制限を超える深度の深い打設位置に対しては、コンクリート材料の分離が防止された良好な状態で生コンクリートを流し込むことが困難になる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、連結部材の耐力で使用可能なシュート総数が制限されるのを防止することができる上に、作業状況に応じたコンクリート投入位置の設定を容易かつ適切に行うことができて、コンクリートの打設を良好に行えるコンクリート打設方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、上位のシュートの下部が下位のシュートの上部に入り込む配置で吊り下げ支持された複数のシュートを利用して、生コンクリートを上方の投入位置から下方の打設位置に流し込むコンクリート打設方法であって、
前記シュートのそれぞれは、上方の吊り下げ位置から最下位のシュートにわたって垂下する垂下索状体に連結部材を介して個別に連結されるとともに、それぞれの前記連結部材により、下位のシュートに対する真上のシュートの抜き差しが許容され、
いずれかの前記下位のシュートに対して前記真上のシュートが抜き外された場合に、前記下位のシュートの高さ位置が前記投入位置として設定される点にある。
【0009】
本構成によれば、各連結部材に掛かる荷重は、シュート一つ分の重量と、生コンクリートを流し込むときに掛かるシュート一つ当たりの衝撃荷重とを、各シュートに対する連結部材の連結数量で除算した値に軽減される。これにより、連結部材の耐力によって吊り下げ可能なシュートの総数が制限されることがなくなり、吊り下げ可能なシュート数の自由度が高くなる。その結果、生コンクリートの投入位置から打設位置までの距離が長い場所での打設作業にも対応させることができ、コンクリート材料の分離が防止された良好な状態で生コンクリートを打設位置に流し込むことができる。
【0010】
又、下位のシュートに対する真上のシュートの抜き差しが許容されることにより、シュート総数の吊り下げ長さよりも生コンクリートの流し込み距離が短くなる状況での打設作業、例えば、深度が浅い杭穴に対する打設作業などを行う場合には、全てのシュートがクレーンなどで吊り下げ支持された状態であっても、生コンクリートの投入に適した高さに位置するシュートに対して、その真上に位置するシュートを容易に抜き外すことができる。これにより、生コンクリートの投入に適したシュートの位置を生コンクリートの投入位置に設定することができ、当該シュートの上方空間を、当該シュートに対する生コンクリートの投入作業空間として使用することができる。
【0011】
つまり、シュートの吊り下げ総数を多くして、生コンクリートの投入位置から打設位置までの距離が長い場所での打設作業に対応させるようにしても、その距離がシュート総数の吊り下げ長さよりも短くなる状況での打設作業においては、シュートの吊り下げ総数を変更する手間を要することなく、生コンクリートの投入位置を、そのときの状況(生コンクリートの流し込み距離)に応じた位置に容易に設定することができ、生コンクリートの流し込み距離を適切に調節することができる。
【0012】
従って、生コンクリートの流し込み距離にかかわらず、生コンクリートを打設位置まで効率良く良好に流し込むことができ、結果、作業精度を低下させることなく工期の短縮などを図ることができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、
生コンクリートの打設量に応じて複数の前記シュートを引き上げ操作し、所定量の引き上げ操作が行われるごとに、現在の前記投入位置から前記所定量だけ下方に位置するシュートに対して真上のシュートを抜き外して、前記投入位置を前記所定量だけ下方の位置に変更する点にある。
【0014】
例えば、場所打ち杭の施工などのようにコンクリートを上方に打ち上げる打設作業を行う場合には、コンクリート材料の分離を防止しながら生コンクリートの押し出し抵抗が大きくなるのを防止するために、最下位のシュートの下部が所定長さで打設後の生コンクリート中に位置する状態が維持されるように、複数のシュートを引き上げながら生コンクリートを打設位置に流し込む必要がある。
【0015】
本構成によれば、このように複数のシュートを引き上げながら生コンクリートを打設位置に流し込む場合には、生コンクリートの投入位置を、作業の進捗状況に応じた適切な高さ位置に容易に変更して対応させることができる。
【0016】
その結果、場所打ち杭の施工などのようにコンクリートを上方に打ち上げる打設作業を、コンクリート材料の分離などが防止された良好な状態で、かつ、余分なシュートによる無駄な生コンクリートの案内が抑制された作業効率の向上が図られた状態で行うことができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、
前記連結部材は、前記下位のシュートに対する前記真上のシュートの抜き差しを許容する長さを有して前記垂下索状体から前記シュートにわたる索状体である点にある。
【0018】
本構成によれば、各シュートを垂下索状体に個別に連結する連結部材として、例えばチェーンやワイヤロープなどの索状体を採用することにより、構成の複雑化を招くことなく、下位のシュートに対する真上のシュートの移動量を大きくすることができ、下位のシュートに対する真上のシュートの抜き差しを行い易くすることができる。
【0019】
その結果、構成の簡素化を図りながら、生コンクリートの投入位置を、そのときの状況(生コンクリートの流し込み距離)に応じた適切な位置に容易に設定して対応させることができる。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、
前記シュートは、前記連結部材を介して前記垂下索状体に着脱可能に連結されている点にある。
【0021】
本構成によれば、生コンクリートの投入位置に設定されたシュートから真上のシュートを抜き外しただけでは、抜き外したシュートが投入位置のシュートからの生コンクリートの投入に邪魔になる場合には、全てのシュートがクレーンなどで吊り下げ支持された状態であっても、投入位置の真上のシュートを垂下索状体から容易に取り外すことができ、シュートが取り外された後の空間を、シュートに対する生コンクリートの投入作業空間として使用することができる。
【0022】
その結果、生コンクリートの投入位置から打設位置までの距離にかかわらず、生コンクリートをより良好な状態で上方の投入位置から下方の打設位置に流し込むことができる。
【0023】
本発明の第5特徴構成は、
前記最下位のシュートは、他のシュートよりも案内長さが長い水中コンクリート打設用のトレミー管である点にある。
【0024】
本構成によれば、最下位のシュートがトレミー管であることにより、打設位置に地下水などが溜まった状態であっても、その水位がトレミー管の長さ範囲内であれば、打設前に揚水ポンプで排水する手間などを要することなく、シュート内への水の浸入を阻止することができ、水の混入によるコンクリートの品質低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態においてクレーンにて吊り下げ支持された複数のシュートが杭穴に挿入される状態を示す図
【
図2】第1実施形態においてクレーンにて吊り下げ支持された複数のシュートの最下位が杭穴底部の打設位置に到達した状態を示す図
【
図3】第1実施形態において複数のシュートをクレーンにて引き上げながら生コンクリートを杭穴に打設する状態を示す図
【
図4】複数のシュートにおいて上位のシュートの下部が下位のシュートの上部に入り込んだ状態(a)と、生コンクリート投入位置のシュートに対して真上のシュートが抜き出された状態(b)とを示す図
【
図5】生コンクリート投入位置のシュートに対して真上のシュートが抜き出されてコンクリートポンプ車の輸送管が挿入された状態を示す図
【
図6】垂下チェーンに対するシュートの連結構造を示す図
【
図7】第2実施形態においてクレーンにて吊り下げ支持された複数のシュートが杭穴に挿入される状態を示す図
【
図8】第2実施形態においてクレーンにて吊り下げ支持された複数のシュートの最下位が杭穴底部の打設位置に到達した状態を示す図
【
図9】第2実施形態において複数のシュートをクレーンにて引き上げながら生コンクリートを杭穴に打設する状態を示す図
【
図10】第2実施形態において最下位のシュートがトレミー管であることでシュート内への水の浸入が阻止された状態を示す図
【
図11】別実施形態における垂下チェーンに対するシュートの連結構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係るコンクリート打設方法を、オールケーシング工法などで場所打ち杭を施工する場合に適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明に係るコンクリート打設方法は、オールケーシング工法などで場所打ち杭を施工する場合の他に、コンクリートを上方に打ち上げる打設作業を行う場合に適用することができる。
【0027】
本第1実施形態で例示するコンクリート打設方法においては、
図1~3に示すように、掘削が完了して鉄筋かご1が建て込まれた杭穴2に対して、クレーン3によって上位のシュート4の下部が下位のシュート4の上部に入り込む配置で吊り下げ支持された複数のシュート4を利用して、ミキサー車5からコンクリートポンプ車6を経由して圧送された生コンクリートを、上方の投入位置から下方の打設位置に流し込むようにしている。
【0028】
図4~6に示すように、各シュート4には、上端の口径よりも下端の口径が小さいテーパー管が採用されている。各シュート4における上部の外周面には、一対の連結金具(連結部材の一例)7が180度の間隔を置いてリベット結合されている。各連結金具7には、シャックル(連結部材の一例)8が係合される係合孔7Aが形成されている。各係合孔7Aには、連結金具7に対するシャックル8の上下方向への移動を許容する長孔部7aと、長孔部7aに対するシャックル8の抜き差しを許容する開口部7bとが含まれている。各連結金具7には、開口部7bからのシャックル8の抜け止めを行う抜け止め具7Bが支点ピン7Cを介して揺動可能に備えられている。各抜け止め具7Bは、線細工ばね(図示せず)によって開口部7bを閉鎖する位置に復帰付勢されている。
【0029】
各シャックル8は、クレーン4にて吊り下げ支持される一対の垂下チェーン(垂下索状体の一例)9に取り付けられている。具体的には、各シャックル8は、各垂下チェーン9の吊り下げ方向に一定間隔を置いて配置された所定位置のリンク9Aに取り付けられている。
【0030】
上記の構成により、各シュート4の各連結金具7と垂下チェーン9側のシャックル8とを係合連結した後、各垂下チェーン9をクレーン4にて吊り下げ支持することにより、
図1~4に示すように、複数のシュート4を、上位のシュート4の下部が下位のシュート4の上部に入り込む配置で上下方向に連なる状態で吊り下げ支持することができる。
【0031】
そして、このように吊り下げ支持された状態では、各シュート4は、クレーン4による上方の吊り下げ位置から最下位のシュート4Bにわたって垂下する一対の垂下チェーン9に、一対の連結金具7と一対のシャックル8とを介して個別に連結された状態になっている。又、各シュート4は、各シュート4と一対の垂下チェーン9との間に介在する連結金具7とシャックル8により、下位のシュート4に対する真上のシュート4の抜き差しが許容された状態になっている。そして、いずれかの下位のシュート4に対して真上のシュート4が抜き外された場合には、その下位のシュート4の高さ位置を生コンクリートの投入位置として設定することができる。
【0032】
つまり、上記の構成によれば、各シュート4が一対の垂下チェーン9に一対の連結金具7と一対のシャックル8とを介して個別に連結された状態になっていることから、各連結金具7及び各シャックル8に掛かる荷重を、シュート一つ分の重量と生コンクリートを流し込むときに掛かるシュート一つ当たりの衝撃荷重とを二分した値に軽減することができる。
【0033】
これにより、例えば、最上位のシュート4から順に上位のシュート4に対して真下のシュート4を連結することで複数のシュート4を上下方向に連接する場合のように、全シュート4の重量と、生コンクリートを流し込むときに各シュート4に掛かる衝撃荷重の全てが、最上位のシュート4に結合された一対の連結金具7に集中するのを防止することができる。
【0034】
その結果、吊り下げ可能なシュート4の総数が、最上位のシュート4に結合された連結金具7の耐力によって制限されることがなくなり、吊り下げ可能なシュート数の自由度が高くなることから、生コンクリートの投入位置から打設位置までの深度が深い杭穴2に対する打設作業に対応させることができる。
【0035】
又、上記の構成によれば、下位のシュート4に対する真上のシュート4の抜き差しが許容されていることから、シュート総数の吊り下げ長さよりも深度が浅い杭穴2に対する打設作業を行う場合には、全てのシュート4がクレーン3などで吊り下げ支持された状態であっても、生コンクリートの投入に適した高さに位置するシュート4に対して、その真上に位置するシュート4を容易に抜き外すことができる(
図4~5参照)。
【0036】
これにより、生コンクリートの投入に適した高さに位置するシュート4を生コンクリートの投入位置に設定することができ、投入位置に設定されたシュート4の上方空間を、当該シュート4に対する生コンクリートの投入作業空間に使用することができる。その結果、投入位置に設定されたシュート4に対してコンクリートポンプ車6に備えられた輸送管6Aの先端部を容易に挿入することができる(
図3及び
図5参照)。
【0037】
つまり、シュート4の吊り下げ総数を多くして、生コンクリートの投入位置から打設位置までの深度が深い杭穴2に対する打設作業に対応させるようにしても、深度がシュート総数の吊り下げ長さよりも浅い杭穴2に対する打設作業を行う場合には、シュート4の吊り下げ総数を変更する手間を要することなく、生コンクリートの投入位置を、そのときの杭穴2の深度に応じた適切な位置に容易に設定することができ、生コンクリートの流し込み距離を、そのときの杭穴2の深度に応じた適切な距離に容易に調節することができる。
【0038】
従って、生コンクリートを打設する杭穴2の深度にかかわらず、コンクリート材料の分離が防止された良好な状態で生コンクリートを効率良く打設位置に流し込むことができ、結果、作業精度を低下させることなく工期の短縮などを図ることができる。
【0039】
ところで、場所打ち杭を施工する場合には、コンクリート材料の分離を防止しながら生コンクリートの押し出し抵抗が大きくなるのを防止するために、最下位のシュート4Bの下部が所定長さで打設後の生コンクリート中に位置する状態が維持されるように、複数のシュート4をクレーン3にて引き上げながら生コンクリートを杭穴2に流し込む必要がある。
【0040】
そこで、本第1実施形態で例示するコンクリート打設方法においては、
図2~5に示すように、生コンクリートの打設量に応じて複数のシュート4を引き上げ操作し、所定量(例えばシュート6個分)の引き上げ操作が行われるごとに、現在の生コンクリートの投入位置(
図2では最上位のシュート4Tの位置)から前記所定量だけ下方に位置するシュート4(
図3では上から7番目のシュート4)に対して真上のシュート4を抜き外して、生コンクリートの投入位置を前記所定量だけ下方の位置に変更するようにしている。
【0041】
これにより、場所打ち杭を施工する場合には、生コンクリートの投入位置を作業の進捗状況に応じた適切な高さ位置に容易に変更して対応させることができる。
【0042】
その結果、場所打ち杭の施工を、コンクリート材料の分離などが防止された良好な状態で、かつ、余分なシュート4による無駄な生コンクリートの案内が抑制された作業効率の向上が図られた状態で、杭穴2の底部から順に生コンクリートを流し込むことができる。
【0043】
図6に示すように、各シュート4に結合された各連結金具7には、前述した係合孔7Aが形成されるとともに抜け止め具7Bなどが備えられることにより、各連結金具7の係合孔7Aに対する各垂下チェーン9側のシャックル8の抜き差しが許容されている。そして、このような抜き差しが許容されていることにより、各シュート4は、連結金具7とシャックル8とを介して一対の垂下チェーン9に着脱可能に連結されている。
【0044】
これにより、生コンクリートの投入位置に設定されたシュート4から真上のシュート4を抜き外しただけでは、抜き外したシュート4が投入位置のシュート4への生コンクリートの投入に邪魔になる場合には、全てのシュート4がクレーン3にて吊り下げ支持された状態であっても、投入位置の真上のシュート4を各垂下チェーン9から容易に取り外すことができ、シュート4が取り外された後の空間を、投入位置のシュート4に対する生コンクリートの投入作業空間として使用することができる。
【0045】
その結果、生コンクリートの投入位置から打設位置までの距離にかかわらず、生コンクリートをより良好な状態で上方の投入位置から下方の打設位置に流し込むことができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
以下、本発明を実施するための第2実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、この第2実施形態で例示するコンクリート打設方法においては、上記の第1実施形態で例示した複数のシュート4のうちの最下位のシュート4Bが異なるだけであることから、以下、最下位のシュート4Bについてのみ説明する。
【0047】
図7~10に示すように、クレーン3にて吊り下げ支持された複数のシュート4のうち、最下位のシュート4Bには、前述したテーパー管に代えて、他のシュート4よりも案内長さが長い水中コンクリート打設用のトレミー管が採用されている。
【0048】
トレミー管4Bは、その上端部に対して真上のシュート4の下部が抜き差し可能に入り込むのを許容するために上端部が拡径されている。そして、拡径されたトレミー管4Bの上端部の外周面に、他のシュート4と同様に、一対の連結金具(連結部材の一例)7が180度の間隔を置いてリベット結合され、これらの連結金具7が、クレーン4にて吊り下げ支持される一対の垂下チェーン(垂下索状体の一例)9にシャックル(連結部材の一例)8を介して取り付けられている。
【0049】
このように、第2実施形態で例示するコンクリート打設方法においては、最下位のシュート4Bがトレミー管であることにより、
図9~10に示すように、打設位置に地下水Wなどが溜まった状態であっても、その水位がトレミー管の長さ範囲内であれば、打設前に揚水ポンプで排水する手間などを要することなく、シュート4内への水の浸入を阻止することができ、水の混入によるコンクリートの品質低下を防止することができる。
【0050】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0051】
(1)連結部材(連結金具)7は、上記実施形態で例示した長孔部7aと開口部7bとを含む係合孔7Aに代えて、上下方向に長い長孔又は丸孔が形成されたものであってもよい。
又、連結部材(連結金具)7は、シャックルなどの連結部材8との係合連結を可能にするフック部が形成されたものであってもよい。
【0052】
(2)連結部材8は、
図11に示すように、下位のシュート4に対する真上のシュート4の抜き差しを許容する長さを有するチェーン(索状体の一例)8Aを含むものであってもよい。
この構成によると、下位のシュート4に対する真上のシュート4の移動量を大きくすることができ、下位のシュート4に対する真上のシュート4の抜き差しを行い易くすることができる。
尚、
図11には、連結部材8として、チェーン8Aに加えて、チェーン8Aの両端部をシュート4に結合された連結金具(連結部材の一例)7又は垂下チェーン(垂下索状体の一例)9に連結する一対のシャックル8Bを含むものを例示しているが、連結部材8は、下位のシュート4に対する真上のシュート4の抜き差しを許容する長さを有して垂下チェーンなどの垂下索状体9からシュート4にわたるチェーンやワイヤロープなどの索状体のみを含むものであってもよい。
この構成によると、構成の簡素化を図りながら、下位のシュート4に対する真上のシュート4の移動量を大きくすることができ、下位のシュート4に対する真上のシュート4の抜き差しを行い易くすることができる。
【0053】
(3)垂下索状体9には、上記実施形態で例示した垂下チェーンに代えてワイヤロープなどを採用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
4 シュート
4B 最下位のシュート
7 連結部材(連結金具)
8 連結部材(シャックル)
8A 索状体(チェーン)
9 垂下索状体(垂下チェーン)