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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】喫煙物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24C 5/52 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
A24C5/52
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020551049
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037336
(87)【国際公開番号】W WO2020070872
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】山本 法生
(72)【発明者】
【氏名】奥山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井上 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岸 誠
【合議体】
【審判長】鈴木 充
【審判官】水野 治彦
【審判官】飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143128(WO,A1)
【文献】特表2010-508864(JP,A)
【文献】特表2015-517822(JP,A)
【文献】特開2002-176965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24C5/00-5/60
A24D3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能セグメント、たばこロッド、冷却セグメント、ならびにフィルターセグメントを備える喫煙物品の製造方法であって、
(A)前記機能セグメントの2倍の長さを有する倍長機能セグメント、およびその両端に前記たばこロッドを備えるセグメントAを準備する工程、
(C)1対の前記冷却セグメントを準備し、前記セグメントAの両端に当接して配置し、セグメントCを調製する工程、
(D)前記セグメントCを、その長手方向における中央部で切断して分離し、1対のセグメントDを調製し、これらを反転して、両者の長手方向軸が同一であり、かつ冷却セグメント同士が対向するように離間して配置する工程、
(E)前記フィルターセグメントの2倍の長さを有する倍長フィルターセグメントを準備し、前記1対のセグメントDの冷却セグメントの間に、その両端が前記セグメントDの冷却セグメント側の端と当接するように配置してセグメントEを調製する工程、
(F)前記セグメントEを1枚のチップペーパーでラップして一体化して、前記喫煙物品の2倍の長さを有する倍長喫煙物品を製造する工程、ならびに
(G)前記倍長喫煙物品を、その長手方向における中央部で切断して、喫煙物品とする工程、を含み、
たばこロッドの直径が、隣接する冷却セグメントの直径よりも大きい、
製造方法。
【請求項2】
前記機能セグメントがフィルター部材または紙管で構成される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記機能セグメントが香料を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(A)が、
(A1)1対の前記たばこロッドを準備し、両者の長手方向軸が同一になるように離間して配置する工程、
(A2)前記機能セグメントの2倍の長さを有する倍長機能セグメントを準備して、前記たばこロッドの間に、その両端が前記たばこロッドに当接するように配置して、倍長機能たばこセグメントを調製する工程である、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A)が、
(A1’)前記たばこロッドの2倍の長さを有する倍長たばこロッドを準備して、当該倍長たばこロッドを、その長手方向の中央部で切断後分離し、両者の長手方向軸が同一になるように離間して配置する工程、
(A2’)前記機能セグメントの2倍の長さを有する倍長機能セグメントを準備して、前記分離されたたばこロッドの間に、その両端が前記たばこロッドに当接するように配置して、倍長機能たばこセグメントを調製する工程である、請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(A)と(C)の間に、
(B)前記セグメントAを1枚の第2チップペーパーでラップして一体化する工程、をさらに備える請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記フィルターセグメントが、アセテートフィルターおよびセンターホールフィルターを備える、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記喫煙物品が、機能セグメント、たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントをこの順に備える、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記たばこロッドの直径が、隣接する部材の直径より0.05~0.15mm大きい、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記たばこロッドの直径が、隣接する部材の直径より0.5~2.5%大きい、請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記たばこロッドと隣接する部材の剛性が、当該たばこロッドの剛性よりも大きい、請求項1~10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記冷却セグメントが円周方向に複数の開孔を有する紙管を備える、請求項1~11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記冷却セグメントが紙管を備え、当該紙管の円周方向にレーザー加工によって複数の開孔を設ける工程をさらに備える、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記工程(F)が、前記チップペーパーの一部を前記セグメントEの円周面に接着した前駆体を準備し、当該前駆体をローリングドラムとその円周面に対向して設けられたローリングハンドの間に配置して、当該前駆体を当該ローリングドラムの円周面上で回転させることによって実施される工程であり、
前記ローリングドラムまたはローリングハンドの前記たばこロッド部と対向する部分が、当該たばこロッド部との間に空隙を形成するための凹部を備える、請求項1~13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記機能セグメントが、フィルター部材で構成される、請求項1~14のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は喫煙物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントを備えるたばこなどの喫煙物品は、喫煙端とは反対の端からたばこ刻などがこぼれ落ちる、いわゆる先落ちの問題がある。これを防止するために先端近傍の巻紙内側に接着剤を配することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3202221号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、先落ち防止のためのフィルターはたばこロッドに比べて短いため、製造工程においてその取扱いは容易ではない。かかる事情を鑑み、本発明はたばこロッドの喫煙端とは反対の端に機能を付与する機能セグメントを備える喫煙物品を効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、機能セグメントを中央に配置して、後にこれを分離し、反転させることで前記課題を解決した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[態様1]機能セグメント、たばこロッド、冷却セグメント、ならびにフィルターセグメントを備える喫煙物品の製造方法であって、
(A)前記機能セグメントの2倍の長さを有する倍長機能セグメント、およびその両端に前記たばこロッドを備えるセグメントAを準備する工程、
(C)1対の前記冷却セグメントを準備し、前記セグメントAの両端に当接して配置し、セグメントCを調製する工程、
(D)前記セグメントCを、その長手方向における中央部で切断して分離し、1対のセグメントDを調製し、これらを反転して、両者の長手方向軸が同一であり、かつ冷却セグメント同士が対向するように離間して配置する工程、
(E)前記フィルターセグメントの2倍の長さを有する倍長フィルターセグメントを準備し、前記離間部に、その両端が前記セグメントDの冷却セグメント側の端と当接するように配置してセグメントEを調製する工程、
(F)前記セグメントEを1枚のチップペーパーでラップして一体化して、前記喫煙物品の2倍の長さを有する倍長喫煙物品を製造する工程、ならびに
(G)前記倍長喫煙物品を、その長手方向における中央部で切断して、喫煙物品とする工程、を含む、製造方法。
[態様2]前記機能セグメントがフィルター部材で構成される、態様1に記載の製造方法。
[態様3]前記機能セグメントが香料を含む、態様1または2に記載の製造方法。
[態様4]前記工程(A)が、
(A1)1対の前記たばこロッドを準備し、両者の長手方向軸が同一になるように離間して配置する工程、
(A2)前記機能セグメントの2倍の長さを有する倍長機能セグメントを準備して、前記離間部に、その両端が前記たばこロッドに当接するように配置して、倍長機能たばこセグメントを調製する工程である、態様1~3のいずれかに記載の製造方法。
[態様5]前記工程(A)が、
(A1’)前記たばこロッドの2倍の長さを有する倍長たばこロッドを準備して、当該倍長たばこロッドを、その長手方向の中央部で切断後分離し、両者の長手方向軸が同一になるように離間して配置する工程、
(A2’)前記機能セグメントの2倍の長さを有する倍長機能セグメントを準備して、前記離間部に、その両端が前記たばこロッドに当接するように配置して、倍長機能たばこセグメントを調製する工程である、態様1~4のいずれかに記載の製造方法。
[態様6]前記工程(A)と(C)の間に、
(B)前記セグメントAを1枚の第2チップペーパーでラップして一体化する工程、をさらに備える態様1~5のいずれかに記載の製造方法。
[態様7]前記フィルターセグメントが、アセテートフィルターおよびセンターホールフィルターを備える、態様1~6のいずれかに記載の製造方法。
[態様8]前記喫煙物品が、下流方向に、機能セグメント、たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントをこの順に備える、態様1~7のいずれかに記載の製造方法。
[態様9]前記たばこロッドの直径が、隣接する部材の直径よりも大きい、態様1~8のいずれかに記載の製造方法。
[態様10]前記たばこロッドの直径が、隣接する部材の直径より0.05~0.15mm大きい、態様9に記載の製造方法。
[態様11]前記たばこロッドの直径が、隣接する部材の直径より0.5~2.5%大きい、態様9に記載の製造方法。
[態様12]前記たばこロッドと隣接する部材の剛性が、当該たばこロッドの剛性よりも大きい、態様1~11のいずれかに記載の製造方法。
[態様13]前記冷却セグメントが円周方向に複数の開孔を有する紙管を備える、態様1~12のいずれかに記載の製造方法。
[態様14]前記冷却セグメントが紙管を備え、当該紙管の円周方向にレーザー加工によって複数の開孔を設ける工程をさらに備える、態様13に記載の製造方法。
[態様15]前記(F)工程が、前記チップペーパーの一部を前記セグメントEの円周面に接着した前駆体を準備し、当該前駆体をローリングドラムとその円周面に対向して設けられたローリングハンドの間に配置して、当該前駆体を当該ローリングドラムの円周面上で回転させることによって実施される工程であり、
前記ローリングドラムまたはローリングハンドの前記たばこロッド部と対向する部分が、当該たばこロッド部との間に空隙を形成するための凹部を備える、態様1~14のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、たばこロッドの吸口端とは反対の端に機能を付与する機能セグメントを備える喫煙物品を効率よく製造する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】喫煙物品の概要を示す図である。
図2】本発明の製造方法の一態様を示す図である。
図3】本発明の製造方法の工程(A)の一態様を示す図である。
図4】剛性の測定方法を説明する図である。
図5】本発明の製造方法を実施する装置の一態様を示す図である。
図6】工程(D)の一態様を示す図である。
図7】工程(F)の一態様を示す図である。
図8】工程(F)の一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントを備える喫煙物品の製造方法に関する。以下、本発明を詳細に説明する。本発明においてX~Yはその端値であるXおよびYを含む。
【0009】
1.喫煙物品
本発明の喫煙物品は、機能セグメント、たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントを備える。図1(i)は本発明の喫煙物品の一態様を示す。図中、100は喫煙物品、1はたばこロッド、3は冷却セグメント、5はフィルターセグメント、7はチップペーパー、9は機能セグメントである。
【0010】
(1)たばこロッド
たばこロッドとは、たばこ原料に含まれる香喫味成分を発生するための略円柱状の部材であり、たばこ充填材とその周囲を巻装する巻紙を備える。たばこ充填材としては限定されず、例えばたばこ刻、たばこシート等を使用できる。具体的には、乾燥したたばこ葉を幅0.8~1.2mmに裁刻したたばこ刻を巻紙内に充填してよい。また乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8~1.2mmに裁刻したものを巻紙内に充填してもよい。当該シートを裁刻せずにギャザー加工、折り畳み、あるいは渦巻き状にして巻紙内に充填してもよい。当該シートを短冊状に裁断してこれらを巻紙内に、同心円状にあるいは短冊の長手方向がたばこロッドの長手方向と平行になるように充填してもよい。
【0011】
たばこロッド1は、加熱に伴ってエアロゾルを発生してもよい。エアロゾルの発生を促進するためにたばこ充填材にグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を添加することが好ましい。エアロゾル源の添加量は、たばこ充填剤の乾燥重量に対して5~50重量%が好ましく、10~30重量%がより好ましい。この他、たばこロッドはメントール等の香料を含んでいてもよい。たばこロッド1の長さは限定されないが15~25mmであることが好ましい。その直径も限定されないが6.5~7.5mmであることが好ましい。ただし、隣接する部材の剛性が、当該たばこロッドの剛性よりも高い場合は、たばこロッドの直径は、隣接する部材の直径より大きいことが好ましい。たばこロッドの変形を低減できるからである。この観点から、たばこロッドの直径は隣接する部材の直径より0.5~2.5%大きいことが好ましく、1.0~2.0%大きいことがより好ましい。実寸法では、たばこロッドの直径は、隣接する部材の直径より0.05~0.15mm程度大きいことが好ましい。隣接する部材としては冷却セグメントおよびフィルターセグメントが挙げられる。
【0012】
本発明における「剛性」は、特表2016-523565号公報明細書段落0010~0014に開示されているとおり、部材が変形するときの抵抗を意味する。たばこロッドの側面に負荷Fをかける前と後での直径の変化から剛性を求めることができる。図4において負荷Fがかけられる前のたばこロッドの直径をDs、負荷をかけた後の直径をDdとするとき、押し下げ量はd=Ds-Ddであり、剛性は以下の式で定義される。他の部材についても同様である。
剛性(%)=Dd/Ds×100
【0013】
(2)冷却セグメント
冷却セグメントは、たばこロッド1で発生した香喫味成分やエアロゾルを冷却するための部材である。冷却セグメント3は中空の紙管であってよい。紙管は巻紙やチップペーパーよりも剛性の高いカードボードで構成されることが好ましい。当該紙管には、開孔(ベンチレーション)を設けてもよい。開孔は紙管の円周に沿って複数設けられることが好ましい。作業効率の観点から、開孔は、完成した喫煙物品にレーザー加工を施して設けることが好ましい。また冷却セグメント3内には、熱交換効率を高めるためにギャザー付けされたシートを充填してもよい。冷却セグメント3の寸法は限定されないが、長さは15~25mmであることが好ましく、直径は5.5~7.5mmであることが好ましい。ただし、冷却セグメント3に隣接する部材の剛性が、冷却セグメント3の剛性よりも低い場合、冷却セグメント3の直径は、隣接する部材の直径に対して0.5~2.5%小さいことが好ましく、1.0~2.0%小さいことが好ましい。一般に、冷却セグメント3がカードボードで構成される紙管を備える場合、当該セグメントの剛性はたばこロッドの剛性よりも高い。
【0014】
(3)フィルターセグメント
フィルターセグメントはフィルターを備える部材である。フィルターとしてはアセテートフィルターやペーパーフィルター等の公知のフィルター部材を使用できる。ペーパーフィルターとは、紙をクレープローラ等で加工して皺を付けこれをプラグ巻取紙で巻上げて調製される、紙が充填されたフィルターである。アセテートフィルターとはセルロースアセテート繊維が充填されたフィルターである。図1(ii)に示すとおり、フィルターセグメント5はフィルター51とセンターホールフィルター53を備えることが好ましい。センターホールフィルターとしては、例えばアセテートフィルターの中央部に空間を設けたものを使用できる。フィルターセグメント5の長さは限定されないが10~20mmであることが好ましい。フィルターセグメントとしてセンターホールフィルターとアセテートフィルターの両方を配置する場合、その順番は限定されない。また個々の部材がフィルター巻紙(フィルターインナーラッパー)によって巻装され、それらがフィルター成型紙(フィルターアウターラッパー)によって接続されていてもよい。フィルターセグメントの直径は限定されないが、たばこロッド以外の他のセグメントとほぼ同じ直径を有することが好ましい。チップペーパーの破れや皺の発生が抑制できるからである。
【0015】
(4)機能セグメント
機能セグメントは、喫煙物品100に機能を与えるためのセグメントである。例えば、機能セグメント9は、たばこロッド1の先端からたばこ刻等が零れ落ちることを防止する機能や、香料などを担持して特異なフレーバーを付与する機能を担う。前者の場合、機能セグメント9はアセテートフィルターなどのフィルターで構成されることが好ましい。後者の、機能セグメント9は香料カプセルを包埋した紙管またはフィルターであることが好ましい。機能セグメント9の長さは限定されないが5~10mmであることが好ましい。
【0016】
(5)チップペーパー
チップペーパーは、たばこロッド、冷却セグメント、フィルターセグメントのうち2つ以上を接続するために用いる紙をいう。一方、巻紙は、たばこロッド、冷却セグメント、またはフィルターセグメントを構成する個々の部材を巻装するための紙をいう。例えば、前述のとおり、フィルターセグメントがセンターホールフィルターとアセテートフィルターを備える場合、センターホールフィルターを巻装する紙、アセテートフィルターを巻装する紙はそれぞれ巻紙である。
【0017】
チップペーパーおよび巻紙に用いられる原紙は、限定されず、セルロース繊維を用いたものを挙げることができる。そのようなセルロース繊維としては、植物由来のもの、化学合成されたもののいずれを用いてもよく、これらの混合物であってもよい。植物由来の繊維としては、亜麻繊維や木材繊維、種子繊維等のパルプが挙げられ、漂白していない有色の未晒パルプとしてもよいが、白く清潔感のある外観とするために、酸化剤、還元剤等の漂白剤を用いて漂白した晒パルプの使用が好ましい。
【0018】
通常のシガレット用の巻紙の場合、巻紙の自然燃焼速度に影響を及ぼし得る通常の燃焼調節剤(助燃剤等)としてクエン酸アルカリ金属塩等が使用される。本発明では燃焼式ではなく加熱式喫煙物品とすることが好ましく、この場合は巻紙を燃焼させる必要がないため、巻紙は燃焼調節剤を含まなくてもよい。
【0019】
巻紙の坪量の下限は、好ましくは30g/m2以上であり、より好ましくは35g/m2以上であり、さらに好ましくは40g/m2以上である。上限は、好ましくは65g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下である。また、チップペーパーの坪量の下限は、好ましくは20g/m2以上であり、より好ましくは25g/m2以上であり、さらに好ましくは30g/m2以上である。上限は、好ましくは50g/m2以下、より好ましくは45g/m2以下、さらに好ましくは40g/m2以下である。坪量は、JIS P8124に規定される方法で測定することができる。
【0020】
2.製造方法
本工程の概要を図2に示す。図中、「w」は倍長であることを示す。例えば5wは倍長フィルターセグメントを示す。
(1)工程A
本工程では、機能セグメント9の2倍の長さを有する倍長機能セグメント9w、およびその両端にたばこロッド1を備えるセグメントAを準備する。倍長機能セグメント9wとたばこロッド1は当接していればよく、接着されている必要はない。
【0021】
工程Aは、図3に示すような以下の工程を含んでいてよい。
(A1)たばこロッド1を1対準備し、両者の長手方向軸が同一になるように離間して配置する工程、
(A2)倍長機能セグメント9wを準備して、前記離間部に、その両端がたばこロッド1に当接するように配置する工程。
【0022】
また、工程Aは以下の工程を含んでいてよい。
(A1’)たばこロッド1の2倍の長さを有する倍長たばこロッド1wを準備して、倍長たばこロッド1wを、その長手方向の中央部で切断後分離し、両者の長手方向軸が同一になるように離間して配置する工程、
(A2’)機能セグメント9の2倍の長さを有する倍長機能セグメント9wを準備して、前記離間部に、その両端がたばこロッド1に当接するように配置して、倍長機能たばこセグメントを調製する工程。
【0023】
この工程により、喫煙物品の上流に容易に機能を付与することができる。例えば、機能セグメント9がフィルターである場合、先落ちを防止することができる。
【0024】
本発明の製造方法は任意の装置を用いて実施できるが、例えば図5のような複数のドラムを備え、各部材を上方から供給する装置を用いて実施することが好ましい。1つのドラムは複数の機能を有するのではなく、1つの機能を有することが好ましい。高速での製造において不良の発生を低減できるからである。例えば、工程(A)は図5の第1ユニット81において実施できる。81fはたばこロッド1の供給装置、81pは取出ドラム、81sは分離ドラムである。供給装置81fから供給された1対のたばこロッド1は、取出ドラム81pの円周面に設けられた保持部に受け渡される。次いで当該1対のたばこロッド1は分離ドラム81sに受け渡され、移送されるとともに保持部において離間される。さらに、当該1対のたばこロッド1は移送ドラム81tによって、離間されたたまま引取ドラム81aに受け渡される。
【0025】
81’fは倍長機能セグメント9wの供給装置、81’pは取出ドラムである。供給装置81’fから供給された倍長機能セグメント9wは、取出ドラム81’pの円周面に設けられた保持部に受け渡される。一方、1対のたばこロッド1は引取ドラム81a上に離間されて配置されており、この離間部に、たばこロッド1と当接するように倍長機能セグメント9wが配置される。供給、受取、移送、または分離機能を有するドラムは、各ユニットにおいて1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0026】
(2)工程B
本発明の製造方法は、工程AとCの間に、セグメントAを1枚の第2チップペーパー71でラップして一体化する工程Bを備えることが好ましい。便宜上、一体化されたセグメントAをセグメントBともいう。第2チップペーパー71としては当該分野で通常使用される紙を用いることができる。第2チップペーパー71は公知の接着剤が塗布されていてよく、これによって分離可能な状態にあった機能セグメントとたばこロッドが一体化されて分離不可能な状態となる。
【0027】
本工程で用いる第2チップペーパーの長さを調整することで喫煙物品に機能を付与することができる。例えば、第2チップペーパーの長さをたばこロッド1の全部を覆うことができる長さとすると、たばこロッド1に染みが生じたとしても当該染みを隠蔽できるので外観を良好に保つことができる。あるいは、第2チップペーパー71の覆う領域を、たばこロッド1の長さをXとするときに、たばこロッド1と機能セグメント9の接合面を始点として、たばこロッド1の長手方向に0.1X~0.3Xの位置を終点とする領域とすることもできる。ラップする領域をこのような範囲とすることで、たばこロッド1を加熱する際に熱伝導性の低下を回避できる。
【0028】
本工程は、図5の第2ユニット82において実施できる。82fは第2チップペーパー71の供給装置、82tは移送ドラム、82rはローリングドラム、82hはローリングハンドである。当該工程は工程Fと同様であるので、詳細は工程Fにて説明する。
【0029】
(3)工程C
本工程では、1対の冷却セグメント3を準備し、セグメントBの両端に当接して配置し、セグメントCを調製する。
【0030】
当該工程は図5の第3ユニット83において実施できる。83fは冷却セグメント3の供給装置、83psは取出分離ドラム、83aは引取ドラムである。供給装置83fから供給された1対の冷却セグメント3は、取出分離ドラム83psの円周面に設けられた保持部に受け渡されるとともに離間される。一方、前工程で調製されたセグメントBは移送ドラム83tを介して引取ドラム83aに受け渡される。前記1対の冷却セグメント3は引取ドラム83aに受け渡され、セグメントBの両端に、たばこロッド1の端面と当接するように配置される。
【0031】
(4)工程D
本工程では、セグメントCを、その長手方向における中央部で切断して分離し、1対のセグメントDを調製する。その後、これらを反転して、両者の長手方向軸が同一であり、かつ冷却セグメント3同士が対向するように離間して配置する。
【0032】
当該工程は図5の第4ユニット84において実施できる。84cはカッタードラム、84c’はカッターである。セグメントBはカッタードラム84cに受け渡され、長手方向中央部においてカッター84c’によって切断される。その後、当該セグメントは2つの反転ドラム84iに受け渡されて反転される。図6を参照して反転の機構を説明する。反転ドラム84i上のガイドGは、2分割されたセグメントCすなわちセグメントDを保持する保持部であり、一つの角を中心としてドラム上で回動可能に設置されている。点線で示したガイドGに保持されたセグメントDは、反転ドラム84iが回転するとともにガイドGが回動して実線で表す位置に移動する。次いで、セグメントDは反転ドラム84i’の点線で示したガイドG’に受け渡される。ガイドG’は、反転ドラム84i’の上をスライドして、1対のセグメントDの離間距離が所望の値となる実線で示した位置まで移動する。このようにして1対の分割セグメントCが反転される。
【0033】
(5)工程E
本工程では、フィルターセグメント5の2倍の長さを有する倍長フィルターセグメント5wを準備し、前記離間部に、その両端が前記セグメントDの冷却セグメント側の端と当接するように配置してセグメントEを調製する。
【0034】
本工程は図5の第5ユニット85において実施できる。85fは倍長フィルターセグメント5wの供給装置、85pは取出ドラム、85aは引取ドラムである。供給装置85fから供給された倍長フィルターセグメント5wは、取出ドラム85pの円周面に設けられた保持部に受け渡される。一方、1対のセグメントDは引取ドラム85aに離間されたまま受け渡されているので、倍長フィルターセグメント5wは取出ドラム85pから引取ドラム85a上の1対のセグメントDの離間部に配置される。
【0035】
(6)工程F
本工程では、セグメントEを1枚のチップペーパー7でラップして一体化して、喫煙物品100の2倍の長さを有する倍長喫煙物品100wを調製する。チップペーパー7としては、第2チップペーパー71と同じものを用いてよい。これによって分離可能な状態にあったセグメントEが一体化されて分離不可能な状態となる。この際、チップペーパー7はたばこロッド1の全範囲を覆う必要はない。チップペーパー7の覆う領域は、たばこロッド1の長さをXとするときに、たばこロッド1と冷却セグメント3の接合面を始点として、たばこロッド1の長手方向に0.2X~0.4Xの位置を終点とする領域であることが好ましい。ラップする領域をこのような範囲とすることで、たばこロッド1を加熱する際に熱伝導性の低下を回避できる。
【0036】
本工程は図5の第6ユニット86において実施できる。86fはチップペーパー7の供給装置、86tは移送ドラム、86rはローリングドラム、86hはローリングハンドである。ローリングドラムとは、円周面上に部材を保持する保持部であって、セグメント等の部材がその長手方向中心軸を中心として自転できるような保持部を備えるドラムである。ローリングハンドとは、ローリングドラムの円周面に対向して配置され、当該面との間に一定の距離を有する隙間を形成するための手段である。セグメントEは移送ドラム86tに受け渡され、次いでローリングドラム86rに受け渡される。一方、ローリングドラム86r上のセグメントEの円周面には供給装置86fから供給されたチップペーパー7の一部が接着され、前駆体92が形成される(図7参照)。前駆体92は、90で表されるセグメントEに、旗のように接着されたチップペーパー7を備える。すなわち、チップペーパー7の一部はセグメントEの円周面に接着されているが、他部は自由である。前駆体92はローリングドラム86rの円周面の保持部にサクション等によって固定され、ローリングドラム86rとローリングハンド86hとの間に形成された隙間に移送される。この隙間を通過する際に前駆体92の円周面全面がチップペーパー7で巻装され、倍長喫煙物品100wが形成される(図7参照)。
【0037】
前述のとおり、本発明においてたばこロッド1の直径はこれに隣接する冷却セグメント3の直径より大きいことが好ましい。この場合、ローリングドラム86rおよびローリングハンド86hの面が平坦であると、当該面とたばこロッド1とが過度に接触することとなるため(図8(1))、たばこロッド1に衝撃が加わって充填物が落下するいわゆる先落ちの問題が生じる。さらに円周差による捻じれが発生し、製品に皺が発生する等の不良が生じる。そこで本発明においては、図8(2)および(3)に示すように、ローリングドラム86rまたはローリングハンド86hのたばこロッド1と対向する面に凹部を設けて、たばこロッド1との間に空隙を形成することが好ましい。図8(2)および(3)には、ローリングハンド86hに凹部を設ける態様を示したが、凹部はローリングドラム86rに設けてもよいし、双方に設けてもよい。凹部の深さ(図8(2)および(3)でのT)は適宜調整されるが、0.05~0.15mmであることが好ましい。この凹部はたばこロッド1と対向する面の全面に設けられる必要はない。図8に示すように凹部はたばこロッド1と対向する面の一部に設けられていればよい。ただし、たばこロッドと他の部材をチップペーパーで確実に接着するためには、2つの部材の境界近傍に凹部は存在しないことが好ましい。
【0038】
本発明では最終段階において1枚のチップペーパーでセグメントEをラップするので、多数のチップペーパーを用いることによって生じる製品上の段差を回避でき、製造上の不良品発生率を低減できる。
【0039】
(7)工程G
本工程では、倍長喫煙物品100wを、その長手方向における中央部で切断して、喫煙物品100とする。本工程は、一方の喫煙物品100を反転させて、2つの喫煙物品100の方向を揃える工程をさらに含んでいてもよい。
【0040】
本工程は図5の第7ユニット87において実施できる。87cはカッタードラム、87c’はカッター、87aは引取ドラムである。切断は工程Dで説明したとおりに実施される。
【0041】
本発明においては、倍長機能セグメント9wを中央に配置し、その後これを中央部で切断分離して反転させる。したがって、喫煙物品の先端部に機能を付与する場合に、作業を効率的に実施することができる。
【0042】
[実施例1]
以下の部材を準備した。
直径7.0mm、長さ20.0mmのたばこロッド(日本たばこ産業株式会社製)
倍長機能セグメントとして直径6.9mm、長さ16mmのアセテートフィルター
冷却セグメントとして直径6.9mm、長さ20.0mmの紙管
直径6.9mmの、センターホールフィルター(8.0mm)/倍長アセテートフィルター(14.0mm)/センターホールフィルター(8.0mm)からなる倍長フィルターセグメント
24mm×26mmの第2チップペーパー
24.0mm×80.0mmの第1チップペーパー
【0043】
倍長たばこロッドを準備し、その長手方向中央部にて切断後分離し、両者の長手方向軸が同一になるように離間して配置した。次いで、当該離間部に倍長機能セグメントを配置して、倍長機能セグメントおよびその両端に前記たばこロッドを備えるセグメントAを調製した(工程A)。
【0044】
セグメントAを1枚の第2チップペーパーでラップして一体化してセグメントBを調製した(工程B)。1対の紙管を準備し、セグメントBの両端に当接して配置し、セグメントCを調製した(工程C)。セグメントCを、その長手方向における中央部で切断して分離し、1対のセグメントDを調製し、これらを反転して、両者の長手方向軸が同一であり、かつ紙管同士が対向するように離間して配置した(工程D)。フィルターセグメントの2倍の長さを有する倍長フィルターセグメントを準備し、前記離間部に、その両端が前記セグメントDの紙管側の端と当接するように配置してセグメントEを調製した(工程E)。セグメントEを1枚のチップペーパーでラップして一体化して、喫煙物品の2倍の長さを有する倍長喫煙物品を製造した(工程F)。倍長喫煙物品を、その長手方向における中央部で切断して、喫煙物品を製造した(工程G)。
【符号の説明】
【0045】
1 たばこロッド
1w 倍長たばこロッド
3 冷却セグメント
5 フィルターセグメント
5w 倍長フィルターセグメント
51 アセテートフィルター
53 センターホールフィルター
7 チップペーパー
71 第2チップペーパー
9 機能セグメント
9w 倍長機能セグメント
10 たばこセグメント

80 製造装置

81 第1ユニット
81f、81’f 供給装置
81p、81’p 取出ドラム
81s 分離ドラム
81t 移送ドラム
81a 引取ドラム

82 第2ユニット
82f チップペーパー供給装置
82t 移送ドラム
82h ローリングハンド
82r ローリングドラム

83 第3ユニット
83f 供給装置
83ps 取出分離ドラム
83t 移送ドラム
83a 引取ドラム

84 第4ユニット
84c カッタードラム
84C’ カッター
84i 反転ドラム
84’i 反転ドラム

85 第5ユニット
85f 供給装置
85p 取出ドラム
85a 引取ドラム

86 第6ユニット
86f チップペーパー供給装置
86t 移送ドラム
86r ローリングドラム
86h ローリングハンド

87 第7ユニット
87c カッタードラム
87c’ カッター
87a 引取ドラム

90 セグメントE
92 前駆体

100 喫煙物品
100w 倍長喫煙物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8