(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】取付装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B23P19/06 E
(21)【出願番号】P 2021000862
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由太
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】高島 正
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-073105(JP,A)
【文献】特開平09-141566(JP,A)
【文献】特開2005-081498(JP,A)
【文献】国際公開第2009/063539(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0334048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッキンを挟んで第一部材に隣り合う位置にある第二部材を、互いに離れた箇所に設けられた2以上の締結構造によって、前記第一部材に固定するために用いられる取付装置であって、
前記各締結構造は、ねじを締付けることにより前記第二部材を前記第一部材に近づけることができるように構成されており、
前記2以上の締結構造のうち第一締結構造の近傍における、前記第一締結構造のねじの締付け前後の前記第一部材に対する前記第二部材の変位量を取得する第一変位量取得部と、
前記2以上の締結構造のうち第二締結構造の近傍における、前記第二締結構造のねじの締付け前後の前記第一部材に対する前記第二部材の変位量を取得する第二変位量取得部と、
前記第一変位量取得部により取得された変位量と所定の変位閾値とを比較すると共に、前記第二変位量取得部により取得された変位量と前記変位閾値とを比較し、各比較結果に基づいて所定の動作を実行する制御部とを備える、取付装置。
【請求項2】
前記第一変位量取得部は、前記第一締結構造の近傍における前記第一部材に対する前記第二部材の位置に対応する情報を取得する第一位置センサにより前記変位量を取得し、
前記第二変位量取得部は、前記第二締結構造の近傍における前記第一部材に対する前記第二部材の位置に対応する情報を取得する第二位置センサにより前記変位量を取得する、請求項1に記載の取付装置。
【請求項3】
前記第一締結構造のねじに係合する工具及び当該工具を回転させる第一モータと、
前記第二締結構造のねじに係合する工具及び当該工具を回転させる第二モータとをさらに備え、
前記制御部は、
前記第一モータにより前記工具を回転させて前記第一締結構造のねじを締め付けている場合において、少なくとも前記第一変位量取得部により取得された変位量が前記変位閾値に達した場合に、前記第一モータによる締付けを完了させ、
前記第二モータにより前記工具を回転させて前記第二締結構造のねじを締め付けている場合において、少なくとも前記第二変位量取得部により取得された変位量が前記変位閾値に達した場合に、前記第二モータによる締付けを完了させる、請求項1又は2に記載の取付装置。
【請求項4】
前記第一モータのトルク又はそれに対応する物理量の計測値を取得する第一トルク計測部と、
前記第二モータのトルク又はそれに対応する物理量の計測値を取得する第二トルク計測部とをさらに備え、
前記制御部は、
前記第一モータにより前記工具を回転させて前記第一締結構造のねじを締め付けている場合において、少なくとも前記第一トルク計測部により取得された計測値が所定の第一トルク閾値に達した場合に、前記第一モータによる締付けを完了させ、
前記第二モータにより前記工具を回転させて前記第二締結構造のねじを締め付けている場合において、少なくとも前記第二トルク計測部により取得された計測値が所定の第二トルク閾値に達した場合に、前記第二モータによる締付けを完了させる、請求項3に記載の取付装置。
【請求項5】
前記第一トルク計測部により取得された計測値が前記第一トルク閾値よりも大きい所定の第三トルク閾値に達した場合、及び前記第二トルク計測部により取得された計測値が前記第二トルク閾値よりも大きい所定の第四トルク閾値に達した場合に、所定の通知動作を実行する通知部をさらに備える、請求項4に記載の取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いの間にパッキンを挟むようにして第一部材に対して第二部材を固定した構造を得るための取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品の製造工程において、一の部材を他の部材に対して、パッキンを間に挟んだ状態で固定する工程が設けられることがある。部材の固定に際しては、例えばボルトやナット等を用いた締結構造が採用される。比較的大きな部材を固定する場合においては、固定する両部材を囲むように複数箇所に締結構造を設け、各締結構造においてねじを締めることにより、両部材を互いに固定することが行われる。
【0003】
このような締結構造を用いて部材を固定する場合には、弾性相互作用によって、締付けた締結構造の両隣の部位においてねじが緩んでしまう事象が問題となりうる。そのため、適正に部材を固定するために、複数の箇所の締結構造を同時に、均一のトルクで締付けることが理想的である。従来、作業者によりかかる固定作業を行う場合には、例えば、トルクレンチによる仮締付け、本締付け、増し締めというような各締結構造についての作業を、いわゆる対角締めと呼ばれるような、対角位置にある締結構造のねじを順に締めていくような方法で行うことが一般的であった。
【0004】
なお、このような締結構造を用いた固定を行うための装置として、例えば、下記特許文献1には、複数箇所のねじ部材を同時に締付け可能なねじ部材自動締付装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように複数の締結構造を用いて第二部材を第一部材に固定する場合において、適正に第二部材を固定するには手間がかかるという問題があった。すなわち、作業者がトルクレンチを用いてねじの締付けを行う場合には、作業に時間がかかる。
【0007】
このような問題に対して、例えば特許文献1においては、同時に複数のねじを締めることが可能である。しかしながら、このような構造では、適正な固定状態となるように各締結構造のねじを締めることができるかどうか、確実ではないと考えられる。すなわち、例えばねじ部分に不良がある場合などに、当該部分において両部材間でパッキンを十分に変形させることができずに密閉性が低下する可能性がある。反対に、パッキンが過度に変形し、パッキンの破損を招く可能性がある。
【0008】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、容易にかつ適正に第二部材を第一部材に固定することができる取付装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、取付装置は、パッキンを挟んで第一部材に隣り合う位置にある第二部材を、互いに離れた箇所に設けられた2以上の締結構造によって、第一部材に固定するために用いられる取付装置であって、各締結構造は、ねじを締付けることにより第二部材を第一部材に近づけることができるように構成されており、2以上の締結構造のうち第一締結構造の近傍における、第一締結構造のねじの締付け前後の第一部材に対する第二部材の変位量を取得する第一変位量取得部と、2以上の締結構造のうち第二締結構造の近傍における、第二締結構造のねじの締付け前後の第一部材に対する第二部材の変位量を取得する第二変位量取得部と、第一変位量取得部により取得された変位量と所定の変位閾値とを比較すると共に、第二変位量取得部により取得された変位量と変位閾値とを比較し、各比較結果に基づいて所定の動作を実行する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従うと、容易にかつ適正に第二部材を第一部材に固定することができる取付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態の1つにおける取付装置の概略構成を示す正面図
【
図5】同取付装置の制御装置の構成を示すブロック図
【
図6】同取付装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図7】同取付装置の締付け動作の一例を示すフローチャート
【
図8】同取付装置の各締結部における締め込み動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、取付装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0013】
なお、以下の説明において、以下において、ある方向を示して各部の形状や位置関係を説明することがあるが、方向の明示はあくまで説明の便宜のためのものに過ぎず、本発明に係る各装置等の使用時における向きや姿勢などを限定するものではない。
【0014】
なお、以下において用いる用語は、一般的には次のように定義される。なお、これらの用語の語義は常にここに示されるように解釈されるべきではなく、例えば以下において個別に説明されている場合にはその説明も踏まえて解釈されるべきである。
【0015】
ある事項について識別子とは、当該事項を一意に示す文字又は符号等である。識別子は、例えば、IDであるが、対応する事項を識別しうる情報であれば種類は問わない。すなわち、識別子は、それが示すものそのものの名前であってもよいし、一意に対応するように符号を組み合わせたものであってもよい。
【0016】
情報を出力するとは、ディスプレイへの表示、プロジェクタを用いた投影、プリンタでの印字、音出力、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積、他の処理装置や他のプログラムなどへの処理結果の引渡しなどを含む概念である。具体的には、例えば、情報のウェブページへの表示を可能とすることや、電子メールやメッセージを送信することや、印刷するための情報を出力することなどを含む。
【0017】
情報の受け付けとは、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力デバイスから入力された情報の受け付け、他の装置等から有線もしくは無線の通信回線を介して送信された情報の受信、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなどの記録媒体から読み出された情報の受け付けなどを含む概念である。
【0018】
(実施の形態)
【0019】
本実施の形態において、取付装置は、パッキンを挟んで第一部材に隣り合う位置にある第二部材を、互いに離れた箇所に設けられた2以上の締結構造によって、第一部材に固定するために用いられるものである。第一部材や第二部材がどのような部材であるかは問わない。取付装置は、2以上の締結構造の近傍における締付け前後の変位量をそれぞれ測定し、締付けが完了したか否かを判定可能に構成されている。なお、本実施の形態において、締結構造のねじの締付けを行うモータのトルクに応じて、締付けの完了に関する判定や、締付けの中止等を行うように構成されている。以下、このように構成された取付装置1について説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける取付装置1の概略構成を示す正面図である。
図2は、同取付装置1の概略構成を示す平面図である。
図3は、同取付装置1の締結モジュール4の構成を示す図である。
図4は、同取付装置1を用いた締結について説明する図である。
図5は、同取付装置1の制御装置7の構成を示すブロック図である。
【0021】
本実施の形態において、取付装置1は、例えば、柱上変圧器の製造時において用いられるものである。柱上変圧器は、例えば、全体として円柱形状を有するケーシング900の中に巻線等が収納されて構成されている。取付装置1は、例えば、変圧器の製品検査ラインの下流に設置されて用いられうる。取付装置1は、各製品の検査工程の終了後において、自動的に、ケーシング900を密閉するために用いられる。
【0022】
ケーシング900は、例えば、上方に開口する(上端部に開口部を有する)ケース本体(第一部材の一例)901と、ケース本体901の開口部を塞ぐようにケース本体901の上部に配置される蓋(第二部材の一例)902とを備えている。
図4に示されるように、ケース本体901と蓋902との間には、例えば円環形状を有するパッキン903が配置され、ケーシング900の内部の機密性が維持されるようになっている。すなわち、柱上変圧器のケーシング900において、蓋902は、パッキン903を挟んで、ケース本体901に隣り合う位置にあるといえる。換言すると、上下方向(
図1の紙面において上下方向)において、ケース本体901の開口部の上端部は、パッキン903の下側の面に対向し、パッキン903の上側の面は、蓋902の下側の面に対向している。下から上に向かう方向において、ケース本体901の開口部の上端部と、パッキン903と、蓋902とが、この順に並んでいる。パッキン903は、例えば、ガスケットと呼ばれるものであってもよい。
【0023】
ケース本体901と蓋902とは、互いに離れた箇所に設けられた2以上の締結構造950によって、互いに固定されている。取付装置1は、かかる締結構造950によって、蓋902をケース本体901に固定するために用いられる。本実施の形態において、柱上変圧器のケーシング900には、4つの締結構造950が取り付けられる。以下の説明において、4つの締結構造950を互いに区別して説明する必要がある場合には、第一締結構造951、第二締結構造952、第三締結構造(図示せず)、第四締結構造(図示せず)と呼ぶことがある。なお、図面においては、いくつかの締結構造の図示は省略している。
【0024】
本実施の形態において、複数の締結構造950は、ケーシング900を囲むように、周方向において略均等な間隔で配置されている。すなわち、4つの締結構造950は、周方向において略90度の間隔で配置されている。
【0025】
図4に示されるように、各締結構造950は、ケース本体901の外周部に形成されたケース金具905に係合するようにして配置された雌ねじ部(図示せず)に対してねじ込まれるねじ956と、ねじ956により蓋902の上面をケース本体901に対して押し付けるように配置された金具958とを有している。ねじ956は、例えばアイボルトである。金具958は、一端がケース金具905に係合する支点となり、ねじ956の座面に上面が対向し、ケーシング900の中央側にある先端部が蓋902の周縁部の上に位置するように配置される部材である。ねじ956がケース金具905に対してねじ込まれることにより、金具905の先端部が蓋902に接触し、蓋902を下方に押し下げるように構成されている。すなわち、締結構造950は、ねじ956を締付けることにより蓋902をケース本体901に近づけることができるように構成されている。
【0026】
なお、締結構造950の構造はこれに限られない。例えば、締結構造は、ケース本体901と蓋902とを互いに固定した構造が得られるように適宜組み合わされた、ボルトやナット等(以下、単にボルト等ということがある)の組み合わせなどであってもよい。例えば、ケース本体901にねじ込まれるボルト等であってそのヘッド部の座面の一部が蓋902の一部に当接するように配置されるボルト等などであってもよい。また、かかるボルト等と、当該ボルト等により付勢されてケース本体901と蓋902とを互いに近づけるように少なくとも一方の部材に係合する金具等の部材との組合せにより構成されていてもよい。ボルト等としては、例えば、アイボルト、六角ボルト、六角穴付きボルト、スタッドボルトや、これらに係合する種々のナット類など、種々のものを用いることができる。すなわち、本実施の形態において、ねじ956を締付けるとは、ボルトを回転させて雌ねじに締め込むものであってもよいし、ナットを回転させて雄ねじに締め込むように構成されているものであってもよい。雄ねじが形成されている部材と雌ねじが形成されている部材とが相対的に回転することによりねじ956が締付けられるように構成されていればよい。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、取付装置1は、例えば、本体フレーム2、位置決め部3、締結モジュール4、上下変位機構6、制御装置7(ブロック図として示している)、コンベヤ9などを備えている。取付装置1は、コンベヤ9上を搬送される柱上変圧器のケーシング900について、自動的に蓋902の締結動作を行うことができるように構成されている。ケーシング900は、予め、ケース901の上にパッキン903を挟んで蓋902が乗せられた状態で搬送されてくる。なお、取付装置1は、搬送されるケーシング900に対して、締結構造950を配置することができるように構成されていてもよい。
【0028】
本体フレーム2は、コンベヤ9を跨ぐような門形の構造を有している。本体フレーム2により、位置決め部3や、締結モジュール4や、上下変位機構6などが支持されている。
【0029】
位置決め部3は、コンベヤ9上を搬送される柱上変圧器のケーシング900を、その中心の位置が水平方向において本体フレーム2に対して所定の位置となるように、位置決めするように構成されている。位置決め部3は、例えばケーシング900の外周面に接触する複数の接触子を有しており、複数の接触子をケーシング900の外周面に当接させることにより、位置決めを行う。また、位置決め部3は、締付け工程が終了した場合に、ケーシング900をコンベヤ9上の搬送に適した位置に移動させる。
【0030】
締結モジュール4は、モジュールフレーム5と、モジュールフレーム5に支持されている第一締結部401、第二締結部402、第三締結部403、及び第四締結部404を有している。第一締結部401、第二締結部402、第三締結部403、及び第四締結部404は、平面視で、4つの締結構造950に対応するように、所定の位置を中心に周方向において略90度の間隔の間隔を空けるようにして、周方向に並ぶようにして設けられている。締結モジュール4は、各締結構造950について後述のように締結動作を行うことができるように構成されている。締結モジュール4は、締付トルクやパッキン903の圧縮量を管理しながら、工具431により蓋902を締付ける。
【0031】
各締結部401,402,403,404は、所定の位置を中心とする径方向に変位可能となるように、モジュールフレーム5に設けられている。モジュールフレーム5は、所定の位置を中心として、各締結部401,402,403,404の周方向の位置を変更可能に構成されている。すなわち、各締結部401,402,403,404は、周方向における互いの位置関係を維持したまま、本体フレーム2に対して回転可能に構成されている。これにより、どのような姿勢で柱上変圧器のケーシング900がコンベヤ9上で搬送されてきても、対応することができるようになっている。
【0032】
上下変位機構6は、例えば、モータやボールねじ等で構成されている。上下変位機構6は、本体フレーム2に対する締結モジュール4の上下方向の位置を変更させることができる。これにより、上下方向のサイズが異なるような複数種類の柱上変圧器のケーシング900について、一の取付装置1を共通して用いることができるようになっている。
【0033】
コンベヤ9は、例えば、複数のローラで柱上変圧器のケーシング900を支持する。コンベヤ9は、複数のローラを回転させることにより、所定の方向に、ケーシング900を搬送させることができるように構成されている。なお、コンベヤ9は、ベルト上に配置されたケーシング900を搬送可能に構成されているものなど、他の方式のものであってもよい。
【0034】
制御装置7の詳細については後述する。制御装置7は、取付装置1の締結モジュール4、位置決め部3、上下変位機構6、及びコンベヤ9などの種々の部位の動作を制御し、所定の締付け動作を実行させる。制御装置7は、例えば、作業者による操作が行われる操作部(図示せず)を有し、作業者による操作を受け付けて、その操作に応じた動作を実行させる。
【0035】
なお、取付装置1の構成は、このようなものに限られない。少なくとも複数の締結部401,402,…を有する締結モジュール4と、その動作を制御する制御装置7とを有していればよく、コンベヤ9や位置決め部3などは設けられていなくてもよい。
【0036】
次に、締結モジュール4の各締結部401,402,403,404の構成について説明する。
図3に示されるように、第一締結部401は、第一モータ411、工具431、及び第一位置センサ451を備える。なお、他の締結部402,403,404のそれぞれの構成は、第一締結部401と同様である。例えば第二締結部402は、第二モータ412、工具432、及び第二位置センサ452を備えている。第三締結部403や第四締結部404も同様に、モータ、工具、及び位置センサを備えている。以下の第一モータ411、工具431、及び第一位置センサ451の説明は、他の締結部402,403,404についての説明を兼ねる。
【0037】
第一モータ411は、工具431を回転させる。第一モータ411は、本実施の形態において、サーボモータや、その他のトルクフィードバック制御が可能なモータである。
【0038】
工具431は、第一締結構造950のねじ956に係合する。工具431は、例えばねじ956のヘッド部に係合するソケット等を有するナットランナーであるが、これに限られない。すなわち、工具431は、締結構造950のねじ956に係合してねじ956を回転させることが可能な構造を有しているものであればよい。
【0039】
第一位置センサ451は、例えば、レーザ光Lを用いて対象物との距離を測定することにより変位量を出力可能な変位センサである。第一位置センサ451は、工具431の傍に配置されている。第一位置センサ451は、本実施の形態において、第一締結構造950の近傍における蓋902の上面の第一計測箇所の位置を計測し、その上下方向における変位量を出力可能である。
【0040】
第一位置センサ451は、モジュールフレーム5に対する上下方向の位置がねじ956の締付け時において変動しないように保持されている。換言すると、第一位置センサ451は、ねじ956の締付け時において、ケース本体901に対して相対的に変位しないように保持されている。これにより、第一位置センサ451は、ねじ956の締付け時において、上下方向におけるケース本体901に対する第一計測箇所の変位量を正確に出力可能である。この変位量は、
図4において示される寸法Dの変動量と同一であるといえる。すなわち、変位量は、ねじ956の締付け前後でのパッキン903の厚み(上下方向の寸法)の変化量である。なお、第一位置センサ451は、蓋902に対して相対的に変位しないように保持されていてもよい。この場合、ケース本体901の計測箇所の位置を計測することにより、上下方向におけるケース本体901に対する第一計測箇所の変位量を出力可能であればよい。また、第一位置センサ451は、レーザ変位センサに限られない。例えば、その他の形式の非接触の位置センサであってもよいし、接触式の変位センサであってもよい。接触式の変位センサとしては、例えば、蓋902に接触する接触子を有するスピンドル等の変位量を出力可能なダイヤルゲージ等を用いることができる。
【0041】
なお、一の締結構造950の近傍とは、例えば、当該締結構造950により締結される部位を意味してもよい。これに限られず、他の締結構造950よりも当該締結構造950に近い位置を、当該締結構造950の近傍であると理解するようにしてもよい。
【0042】
図5に示されるように、制御装置7は、格納部71、受付部72、通知部73、及び制御部8を備える。制御部8は、モータ制御部81、トルク計測部82、及び変位量取得部83を備える。
【0043】
格納部71は、例えば、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。格納部71には、制御装置7の制御に用いられる設定値などが格納されている。例えば、対象となる柱状変圧器のモデル毎に、締結構造950に対して適切な位置に締結モジュール4を位置決めするための情報などが格納されている。本実施の形態においては、例えば、変位量取得部83により取得される変位量と比較するための変位閾値や、トルク計測部82により取得される計測値と比較するためのトルク閾値等が格納されている。これらの閾値は、例えば、変圧器のモデル毎に設定されていてもよい。例えば、モデルを識別する識別子に対応付けて各閾値が格納されていてもよい。
【0044】
受付部72は、作業者等の操作を受け付け、受け付けた操作に応じた信号や情報等を制御部8に送信可能に構成されている。なお、受付部72は、制御装置7に対して接続された(ネットワーク等を介して接続されたものも含む)他の機器から送信された情報等を受信し、受付可能に構成されていてもよい。受付部72は、例えば、操作盤や、テンキーやキーボード等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェア等で実現されうる。
【0045】
通知部73は、所定の通知動作を実行する。通知部73は、警告灯などのライト類であってもよいし、画像や文字情報等を出力可能なディスプレイであってもよいし、音声を出力可能なスピーカなどであってもよい。所定の通知動作とは、情報の送信、音の出力、光や映像の出力等、種々の形態の出力動作が含まれうる。通知動作は、例えば、警告灯を所定の態様で点灯させたり、スピーカーから所定の態様の音を出力させたりするものである。このような通知動作により、作業者は、通知動作が行われたことに気がつくことができる。
【0046】
本実施の形態において、通知部73は、トルク計測部82により取得された計測値が所定の閾値に達した場合に、通知動作を実行するように構成されている。なお、計測値が所定の閾値に達したか否かの判断は、例えば制御部8において行われるが、通知部73において行われてもよい。
【0047】
制御部8は、例えば、プログラマブルロジックコントローラなどのハードウェア(専用回路)で構成されうる。制御部8は、MPUやメモリ等から実現され、その処理手順は、ソフトウェアで実現されていてもよい。この場合、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されていればよい。
【0048】
制御部8は、モータ制御部81、トルク計測部82、及び変位量取得部83等の各部の用いて、所定の処理を実行可能に構成されている。
【0049】
モータ制御部81は、各締結部401,402,403,404のモータの動作を制御する。モータ制御部81は、例えば、各モータの駆動回路に信号を送信したり、各モータの駆動回路に供給される電力を制御することなどにより、各モータの動作を制御するように構成されている。モータ制御部81は、モータを回転させたり、モータを停止させたりすることができる。モータ制御部81は、モータのトルクを制御可能であってもよい。
【0050】
本実施の形態において、モータ制御部81は、各モータ毎に制御を行う。すなわち、モータ制御部81は、第一締結部401の第一モータ411の動作を制御する第一モータ制御部811と、第二締結部402の第二モータ412の動作を制御する第二モータ制御部812とを備えている。また、モータ制御部81は、図示は省略されているが、第三締結部403や第四締結部404のモータの動作を制御する部位も同様に有している。
【0051】
トルク計測部82は、各締結部401,402,403,404のモータのトルク又はそれに対応する物理量の計測値(トルク等の計測値という)を取得する。トルク等の計測値は、モータのトルクの大きさに対応する値であるといえる。すなわち、トルク等の計測値は、例えば、モータの駆動回路等で計測できるモータに流れる電流や電圧などの物理量の値を計測値として取得することができるが、これに限られない。トルクは、負荷と言い替えてもよい。モータの回転軸に取り付けられたトルクゲージなどによりモータのトルクを表す計測値を取得するようにしてもよい。また、モータの駆動回路等で計測できる物理量の値に基づいてトルク等の計測値を算出して算出した計測値を取得するように構成されていてもよい。
【0052】
本実施の形態において、トルク計測部82は、各モータ毎に、トルク等の計測値を取得可能である。すなわち、トルク計測部82は、第一モータ411のトルク等の計測値を取得する第一トルク計測部821と、第二モータ412のトルク等の計測値を取得する第二トルク計測部822とを備えている。また、トルク計測部82は、図示は省略されているが、第三締結部403や第四締結部404のモータのトルク等の計測値を取得する部位も同様に有している。
【0053】
変位量取得部83は、各締結部401,402,403,404の位置センサ451,452,…により計測された変位量を取得する。なお、変位量は、上述のように変位量を直接出力可能な位置センサ451等から取得されるが、これに限られない。例えば、ねじ956の締付け前後における計測箇所の位置に対応する情報を取得し、取得した情報を用いて演算等を行うことにより変位量を取得するようにしてもよい。また、ねじ956の回転数に応じて、変位量を取得するようにしてもよい。例えばねじ956の回転数にピッチを乗算することにより、変位量を得るようにしてもよい。
【0054】
本実施の形態において、変位量取得部83は、各締結部401,402,403,404により締結される締結構造950の近傍にある計測箇所の変位量を取得するように構成されている。すなわち、各締結部401,402,403,404について、対応する変位量を取得可能である。換言すると、変位量取得部83は、第一締結部401に対応する変位量を取得する第一変位量取得部831と、第二締結部402に対応する変位量を取得する第二変位量取得部832とを有している。また、変位量取得部83は、図示は省略されているが、第三締結部403や第四締結部404に対応する変位量を取得する部位も同様に有している。
【0055】
第一変位量取得部831は、第一締結構造951の近傍の計測箇所(第一計測箇所)における、第一締結構造951のねじ956の締付け前後のケース本体901に対する蓋902の変位量を、第一位置センサ451から取得する。第一計測箇所は、例えば、第一位置センサ451の測定対象箇所であり、具体的には、例えば、第一締結構造951の金具958により蓋902が押さえ込まれる部位の近傍等とすることができる。
【0056】
第二変位量取得部832は、第二締結構造952の近傍の計測箇所(第二計測箇所)における、第二締結構造952のねじ956の締付け前後のケース本体901に対する蓋902の変位量を、第二位置センサ452から取得する。第二計測箇所は、例えば、第二位置センサ452の測定対象箇所であり、具体的には、例えば、第二締結構造952の金具958により蓋902が押さえ込まれる部位の近傍等とすることができる。
【0057】
制御部8は、このようにして取得される、各締結部401,402,403,404に対応するトルク等の計測値及び変位量を用いて、各締結構造950のねじ956の締付けに関する制御を行う。複数箇所の締結を、変位量に基づいて行うことにより、均一かつ適正にケース本体901に蓋902を取付ることができる。また、本実施の形態においては、トルク等の計測値を用いて複数箇所の締結を行うことにより、より効果的に、均一かつ適正にケース本体901に蓋902を取付ることができるという効果を得ることができる。
【0058】
なお、制御部8は、トルク等の計測値を所定のトルク閾値と比較した結果に基づいて、上記制御を行う。また、制御部8は、変位量を所定の変位閾値と比較した結果に基づいて、上記制御を行う。具体的には、例えば、それぞれの計測値や変位量が、閾値に達した場合に、対応する所定の制御動作を行うように構成されている。それぞれの計測値や変位量が、閾値に達しない場合に、対応する所定の制御動作を行うように構成されていてもよい。
【0059】
本実施の形態において、トルク閾値として、適正な締付けトルクに対応する適正トルク閾値と、異常な締付けトルクに対応する異常トルク閾値とが用いられる。適正トルク閾値は、例えば、締結構造950に用いられているねじ956において許容可能な最大トルクよりも小さい値とすることが望ましく、例えば、適正な締付け状態であるといえる適正締付けトルク値の範囲の最小値とすることができるが、これより大きい値であってもよい。異常トルク閾値は、適正トルク閾値よりも大きい値に設定されていることが好ましく、例えば、適正な締付けトルク値の範囲の最大値よりも大きいことが望ましい。各トルク閾値は、モータや、用いられる締結構造によって異なっていてもよく、この場合、各締結部401,402,403,404について設定されていればよい。例えば、第一締結部401についての適正トルク閾値として第一トルク閾値が用いられ、第二締結部402についての適正トルク閾値として第二トルク閾値が用いられていてもよい。また、第一締結部401についての異常トルク閾値として第一トルク閾値よりも大きい第三トルク閾値が用いられ、第二締結部402についての異常トルク閾値として第二トルク閾値よりも大きい第四トルク閾値が用いられていてもよい。トルク閾値は、範囲を特定する値であってもよい。
【0060】
本実施の形態において、変位閾値は、各締結構造950により十分に締結されている場合のパッキン903の上下方向のたわみ量すなわち圧縮量に対応する値であるといえる。ここでパッキン903のたわみ量とは、例えば、パッキン903にほとんど力が加えられていない自然状態の上下方向の寸法から、ねじ956が締付けられた状態での上下方向の寸法を減算して得られる量である。締結部401,402,403,404毎に異なった変位閾値が用いられるようにしてもよい。
【0061】
本実施の形態において、制御部8は、変位量取得部83により取得された変位量と所定の変位閾値との比較結果に基づいて、所定の動作を実行するように構成されている。換言すると、制御部8は、変位量に関する条件が満たされるか否かの判断結果に基づいて、所定の動作を実行するように構成されている。すなわち、制御部8は、少なくとも、第一変位量取得部831により取得された変位量と所定の変位閾値とを比較すると共に、第二変位量取得部832により取得された変位量と変位閾値とを比較し、各比較結果に基づいて所定の動作を実行するといえる。ここで比較結果に基づいて所定の動作を実行するとは、変位量が変位閾値に達していることにより締付けが完了したと判断して、締付けを終了させる制御すなわちモータを停止させる制御を行うと言い替えてもよい。ただし、所定の動作は、このような制御に限定されない。例えば、比較結果の作業者への通知等が行われるようにしてもよい。なお、ここで締付けが完了するとは、一のモータによる締付けが完了したことすなわち対応する締結構造950がひとたび所定の締付け状態に至ったことを意味し、蓋902をケース本体901に固定することが完了したことを必ずしも意味しない。変位閾値は、範囲を特定する値であってもよく、変位量が変位閾値の上限を超えた場合に変位量が変位閾値に達していないと判断するようにしてもよい。
【0062】
本実施の形態において、制御部8は、例えば、第一モータ411により工具431を回転させて第一締結構造951のねじ956を締め付けている場合において、少なくとも第一変位量取得部831により取得された変位量が変位閾値に達した場合に、第一モータ411による締付けを完了させる。また、制御部8は、例えば、第二モータ412により工具432を回転させて第二締結構造952のねじ956を締め付けている場合において、少なくとも第二変位量取得部832により取得された変位量が変位閾値に達した場合に、第二モータ412による締付けを完了させる。他の締結構造950の締付け時についても同様である。なお、各締結構造950の締付けの完了については、このような変位閾値を用いた変位量に関する条件だけではなく、以下のような適正トルク閾値を用いたトルク等の計測値に関する条件を用いて実行されるが、変位量に関する条件のみに基づいて実行されるようにしてもよい。なお、変位量に関する条件を満たすことを変位基準を満たすと表現してもよく、適正トルク閾値を用いたトルク等の計測値に関する条件を満たすことをトルク基準を満たすと表現してもよい。
【0063】
本実施の形態において、制御部8は、トルク計測部82により取得されたトルク等の計測値と所定のトルク閾値との比較結果に基づいて、所定の動作を実行するように構成されている。換言すると、制御部8は、トルク等の計測値に関する条件が満たされるか否かの判断結果に基づいて、所定の動作を実行するように構成されている。ここで比較結果に基づいて所定の動作を実行するとは、計測値が適正トルク閾値に達していることにより締付けが完了したと判断して、締付けを終了させる制御すなわちモータを停止させる制御を行うことが含まれる。また、計測値が異常トルク閾値に達した場合に、通知部73に所定の通知動作を実行させることが含まれる。ただし、所定の動作は、このような制御に限定されない。
【0064】
本実施の形態において、制御部8は、第一モータ411により工具431を回転させて第一締結構造951のねじ956を締め付けている場合において、少なくとも第一トルク計測部821により取得された計測値が所定の第一トルク閾値に達した場合に、第一モータ411による締付けを完了させる。すなわち、制御部8は、第一締結構造951のねじ956を締め付けている場合において、上述のような変位量に関する条件と、計測値に関する条件とがともに満たされた場合に、第一締結構造951のねじ956の締付けを完了させる。また、制御部8は、第二モータ412により工具432を回転させて第二締結構造952のねじ956を締め付けている場合において、少なくとも第二トルク計測部822により取得された計測値が所定の第二トルク閾値に達した場合に、第二モータ412による締付けを完了させる。すなわち、制御部8は、第二締結構造952のねじ956を締め付けている場合において、上述のような変位量に関する条件と、計測値に関する条件とがともに満たされた場合に、第二締結構造952のねじ956の締付けを完了させる。他の締結構造950の締付け時についても同様である。
【0065】
なお、変位閾値やトルク閾値は、モータの種類や構造、減速機の有無や減速比、締結構造950のスペック、パッキン903の材質や寸法等、製造する装置の用途や目的等により異なりうる。適正な締め付け状態を得ることや、異常発生時二それを検知することができるように、適宜設定すればよい。なお、一例として、各閾値は、以下のように設定しうる。例えば、変位閾値は、1.2ミリメートルから2.2ミリメートルの範囲に設定することができ、この範囲における一の値に設定するようにしてもよい。適正トルク閾値は、例えば、締付けトルクが40N・mとなるような値に設定することができる。異常トルク閾値は、例えば、締付けトルクが80N・mとなるような値に設定することができる。なお、例えば、適正トルク範囲を示すトルク閾値を40N・mから80N・mまでの範囲として設定しておき、計測値がかかるトルク閾値で示される範囲の上限を超えた場合に、異常トルク閾値に達したと判断するようにしてもよい。
【0066】
なお、本実施の形態において、制御部8は、変位量に関する条件が満たされた場合又は変位量に関する条件と計測値に関する条件とが共に満たされた場合において、締付けの一旦完了後の次の所定の処理を行うようにしてもよい。例えば、ねじ956の引っかかりを防止して適正な締付けトルクを得るために、一旦ねじを緩める動作を行い、再度の締付け動作を行うようにしてもよい。このようなねじを緩める動作は、計測値に関する条件のみが満たされた場合にも行われるようにしてもよい。
【0067】
以下、このような制御部8の制御動作や、取付装置1による動作の流れの一例について説明する。
【0068】
図6は、同取付装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0069】
(ステップS1)制御部8は、コンベヤ9により、ケーシング900を所定の位置まで搬入させる。また、位置決め部3により、ケーシング900の位置を、締結を行うための所定の位置に位置決めする。
【0070】
(ステップS2)制御部8は、上下変位機構6などにより、締結モジュール4を、ケーシング900に対応する所定の位置に位置決めする。この場合、締結モジュール4に設けられた各種センサ等による検出動作を伴いながら、各締結部401,402,403,404の位置がケーシング900の締結構造950が取り付けられる位置に一致するように位置決めが行われるようにしてもよい。また、ケース本体901の位置の計測結果に基づいて、締結モジュール4の締結部401,402,403,404等を用いて蓋902の位置決め動作が行われるようにしてもよい。
【0071】
(ステップS3)制御部8は、ケーシング900に配置されている締結構造950について、ねじ956を締め付けることができるように、締結部401,402,403,404の工具431等をセットする。そして、ねじ956が雌ねじ等に係合するように、若干工具431を回転させる。
【0072】
(ステップS4)制御部8は、締結部401,402,403,404を用いて、各締結構造950について締付けを行う。この締付け動作については後述する。締付けが終了すると、ステップS5に進む。
【0073】
(ステップS5)制御部8は、上下変位機構6などにより、締結モジュール4を、締付けを行うための所定の位置から上に変位させ、ケーシング900に干渉しないようにする。なお、例えば各締結部401,402,403,404等に設けられたマーキングユニット(図示せず)等により、ねじ956の一部に、締付けが完了したことを示すマークを付すようにしてもよい。また、かかるマークは、緩みが発生していないかを確認可能に、ねじ956と蓋956又は金具905等とに連続的に付されるようにしてもよい。
【0074】
(ステップS6)制御部8は、位置決め部3により、ケーシング900をコンベヤ9上の搬送位置に位置決めする。そして、制御部8は、コンベヤ9により、ケーシング900を下流に搬出する。ケーシング900の搬出が完了すると、一のケーシング900についての処理が終了する。なお、一のケーシング900の搬出と、次に処理が行われるケーシング900についてのステップS1の搬入動作とが同時に行われるようにしてもよい。
【0075】
図7は、同取付装置1の締付け動作の一例を示すフローチャートである。
【0076】
(ステップS11)制御部8は、各締結部401,402,403,404について、変位センサの変位量をリセットする。換言すると、現時点の計測箇所の位置を基準にした変位量が得られるように設定する。
【0077】
(ステップS12)制御部8は、各締結部401,402,403,404における締め込み動作を行う。締め込み動作は、各締結部401,402,403,404で並行して行われることとなる。締め込み動作の詳細については後述する。全締結部401,402,403,404において締付けが完了すると、ステップS13に進む。
【0078】
(ステップS13)制御部8は、全締結部401,402,403,404において、それぞれ、戻し動作を行う。戻し動作は、例えば、所定量だけねじ956を緩める方向に工具431等を回転させる動作である。この戻し動作は、ねじ956の頭部と工具431等との噛み込みを解消するために行われる動作であり、実際にねじ956を緩める動作ではない。
【0079】
(ステップS14)制御部8は、再度、各締結部401,402,403,404における締め込み動作を行う。全締結部401,402,403,404において締付けが完了すると、ステップS15に進む。
【0080】
(ステップS15)制御部8は、締付け完了時動作を行う。すなわち、各締結部401,402,403,404による締付け動作の結果として、得られたトルク等の計測値(トルク値)と変位量とを記録する。記録される情報は、例えば、格納部71などに蓄積される。これにより、後の機会において、締付け状況に関する確認を行うことが可能となる。
【0081】
図8は、同取付装置1の各締結部における締め込み動作の一例を示すフローチャートである。
【0082】
(ステップS31)制御部8は、締結部401,402,403,404のうち、締付けが完了していない未完了締結部の締付けを実行する。すなわち、未完了締結部について、ねじ956の締付けを行う。なお、締め込み動作が開始される度に、各締結部401,402,403,404は未完了締結部である状態からスタートする。
【0083】
(ステップS32)制御部8は、各締結部401,402,403,404についてトルク計測部82により計測されたトルク等の計測値が、異常トルク閾値に達したか否かを判断する。計測値が以上トルク閾値に達したと判断された場合にはステップS38に進み、そうでない場合にはステップS33に進む。
【0084】
(ステップS33)制御部8は、未完了締結部について、変位基準を満たすものがあるか否かを判断する。換言すると、制御部8は、ねじ956の締付けを行っているいずれかの締結部において変位量が変位閾値に達したか否かを判断する。変位基準を満たす未完了締結部があると判断された場合にはステップS34に進み、そうでない場合にはステップS31に戻る。
【0085】
(ステップS34)制御部8は、変位基準を満たしたと判断された未完了締結部について、トルク基準を満たすものがあるか否かを判断する。換言すると、制御部8は、ねじ956の締付けを行っているいずれかの締結部のうち、変位量が変位閾値に達したものについて、トルク基準を満たすか否かを判断する。トルク基準を満たすと判断された場合にはステップS35に進み、そうでない場合にはステップS31に戻る。
【0086】
(ステップS35)制御部8は、ステップS34においてトルク基準を満たすと判断された締結部について、モータの動作を停止させ、締付け完了とする。これにより、ステップS31以降の今回の締め込み動作において、当該締結部は、未完了締結部ではなくなる。
【0087】
(ステップS36)制御部8は、すべての締結部401,402,403,404について、締付けが完了したか否かを判断する。換言すると、制御部8は、未完了締結部が存在しないか否かを判断する。すべての締結部401,402,403,404について締付けが完了したと判断された場合には上位の処理に戻り、そうでない場合にはステップS31に戻る。
【0088】
(ステップS38)計測値が異常トルク閾値に達した締結部がある場合、制御部8は、全締結部401,402,403,404について、動作を停止させる。
【0089】
(ステップS39)制御部8は、通知部73により、通知動作を行う。その後、自動的に行われる一連の動作を終了する。これにより、通知部73による通知動作が行われたことを認識した作業者が、適宜状況を確認したり、再度の締付けを行えるように復帰作業を行ったりすることができるようになる。
【0090】
なお、上述の各フローチャートにおいて、容易にかつ適正に蓋902をケース本体901に固定することができるようになる範囲で、各処理の順番を入れ替えたり、処理の追加や省略が行われてもよい。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態によれば、複数の締結部401,402,403,404を用いて同一タイミングで複数の締結構造950のねじ956の締付けを行うことができるので、弾性相互作用の影響を排除し、容易に蓋902の固定を行うことができる。締結構造950の近傍の変位量に基づいてねじ956の締付けに関する制御が行われるので、確実に適正なパッキン903の変形量を得ることができ、締付不足や締付過多の状態が発生することを防止することができる。例えば、1.2ミリメートルから2.2ミリメートル(変位閾値の一例)の間に変位量が達したときに、締付けが完了したと判断するようにすることができる。本実施の形態においては、位置センサを用いて、確実に、各締結構造950の近傍における蓋902の変位量を計測することができる。制御部8は、各締結構造950の近傍の変位量に基づいて対応するモータの動作を制御するので、自動的に、適正に蓋902をケース本体901に固定することができる。
【0092】
本実施の形態においては、蓋902の変位量に関する条件のみならず、トルク等の計測値に関する条件を用いて、モータの動作が制御される。したがって、締結構造950や各部材に異常がある場合などには締付けを完了させないようにすることができ、より確実に、適正な締付け状態を得ることができる。さらに、締結構造950や各部材に異常がある場合などに、モータのトルク等の計測値と異常トルク閾値との比較結果に基づいて通知部73により作業者に通知を行うことができる。したがって、作業者は、早期に異常等の状態が発生したことに気づくことができ、異常が発生した原因の確認や、部品の交換等の復旧作業を速やかに行えるようにすることができる。
【0093】
(その他)
【0094】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【0095】
上述の実施の形態の構成そのものに限られず、上述の実施の形態のそれぞれの構成要素について、適宜、他の実施の形態の構成要素と置換したり組み合わせたりしてもよい。また、上述の実施の形態のうち、一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。
【0096】
一のケーシングに用いられる締結構造の数すなわちねじの締付けを行う箇所の数は、4つに限られない。5以上であってもよいし、2つ又は3つであってもよい。これらの締結構造のうち、少なくとも2つの締結構造(第一締結構造及び第二締結構造)について、上述のようにしてそれぞれねじの締付けが行われるように構成されていれば、容易にかつ適正に蓋をケース本体に固定することができるという効果をえることができる。
【0097】
また、取付装置が適用可能な対象物は、柱上変圧器に限られない。すなわち、パッキンを挟んで第一部材と第二部材とが隣り合う位置にあり、第一部材と第二部材とが、互いに離れた箇所に設けられた2以上の締結構造によって固定されている構造を有する種々の対象物について、取付装置1を用いることが可能である。すなわち、上述のような取付装置の構成は、パッキンを挟んで第一部材に隣り合う位置にある第二部材を、互いに離れた箇所に設けられた2以上の締結構造によって、第一部材に固定するというような場面において広く用いることができる。この場合において、少なくとも2つの締結構造(第一締結構造及び第二締結構造)について、上述のようにしてそれぞれねじの締付けが行われるように構成されていれば、容易にかつ適正に第二部材を第一部材に固定することができるという効果を得ることができる。
【0098】
また、例えば、取付装置1は、締結構造のねじの締め付けを行わず、締結構造の近傍の計測箇所の変位量を取得し、変位量と変位基準とに基づいて、所定の動作を行うように構成されていてもよい。例えば、複数個所の締結構造の締付けを作業者が手作業で行う場合においても、それぞれの計測箇所について変位基準が満たされたかどうかなどを作業者が知ることができるようにすることで、従来よりも容易にかつ適正に第二部材を第一部材に固定する作業を行うことができるようになるといえる。
【0099】
なお、上記実施の形態において、制御装置を構成する構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、又は、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現されうる。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上のように、本発明にかかる取付装置は、容易にかつ適正に第二部材を第一部材に固定することができるという効果を有し、取付装置等として有用である。
【符号の説明】
【0101】
1 取付装置、8 制御部、73 通知部、401 第一締結部、402 第二締結部、411 第一モータ、412 第二モータ、431,432 工具、451 第一位置センサ、452 第二位置センサ、821 第一トルク計測部、822 第二トルク計測部、831 第一変位量取得部、832 第二変位量取得部、900 ケーシング、901 ケース本体(第一部材の一例)、902 蓋(第二部材の一例)、903 パッキン、950 締結機構、951 第一締結機構、952 第二締結機構、956 ねじ