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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】車両用シート及びシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/00 20060101AFI20240626BHJP
   B60R 22/26 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B60R22/00 207
B60R22/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021001379
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106411
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】大木 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】米持 光恭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 絢香
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第2851029(CN,Y)
【文献】実開昭54-072929(JP,U)
【文献】特開2014-177258(JP,A)
【文献】実開昭51-085417(JP,U)
【文献】国際公開第2016/208778(WO,A1)
【文献】特開2009-220672(JP,A)
【文献】特開平06-255445(JP,A)
【文献】米国特許第05649744(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00
B60R 22/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、
前記シートクッションに着座した着座乗員の腰部に沿ってシート幅方向に掛け渡されるラップベルトと、
前記シートクッションに着座した着座乗員の左肩に沿って前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡され、前記ラップベルト側の端部が筒状に形成された筒状部とされ、該筒状部に前記ラップベルトが挿通された状態で該筒状部が前記ラップベルトに係合された左ショルダベルトと、
前記シートクッションに着座した着座乗員の右肩に沿って前記左ショルダベルトと交差することなく前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡され、前記ラップベルト側の端部が筒状に形成された筒状部とされ、該筒状部に前記ラップベルトが挿通された状態で該筒状部が前記ラップベルトに係合された右ショルダベルトと、
を備え
前記ラップベルトには、前記左ショルダベルトの前記筒状部の左側への移動を制限する左側制限部及び前記右ショルダベルトの前記筒状部の右側への移動を制限する右側制限部が設けられている車両用シート。
【請求項2】
前記筒状部には、該筒状部の形状を保持する形状保持部材が設けられている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ラップベルトの少なくとも一部が伸縮する請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記ラップベルトの一方側の端部は、前記シートクッションのシート幅方向一方側に固定され、
前記シートクッションのシート幅方向他方側には、前記ラップベルトの他方側の端部が着脱可能に係止される被係止部が設けられている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
車両用シートのシートクッションに着座した着座乗員の腰部に沿ってシート幅方向に掛け渡されるラップベルトと、
前記シートクッションに着座した着座乗員の左肩に沿って前記車両用シートのシートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡され、前記ラップベルト側の端部が筒状に形成された筒状部とされ、該筒状部に前記ラップベルトが挿通された状態で該筒状部が前記ラップベルトに係合された左ショルダベルトと、
前記シートクッションに着座した着座乗員の右肩に沿って前記左ショルダベルトと交差することなく前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡され、前記ラップベルト側の端部が筒状に形成された筒状部とされ、該筒状部に前記ラップベルトが挿通された状態で該筒状部が前記ラップベルトに係合された右ショルダベルトと、
を備え
前記ラップベルトには、前記左ショルダベルトの前記筒状部の左側への移動を制限する左側制限部及び前記右ショルダベルトの前記筒状部の右側への移動を制限する右側制限部が設けられているシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及びシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、4点式のシートベルト装置を備えた車両用シートが開示されている。この文献に記載された車両用シートのシートベルト装置は、車両用シートに着座した乗員の左肩に掛け渡される左ショルダベルトと、当該乗員の右肩に掛け渡される右ショルダベルトと、当該乗員の腰部に掛け渡されると共にシート幅方向の中央部で連結される左ラップベルト及び右ラップベルトと、を備えている。また、左ショルダベルトの下端部は左ラップベルトに固定されており、右ショルダベルトの下端部は右ラップベルトに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-93571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用シートに着座した乗員の肩に掛け渡される左右のショルダベルトの下端部が左右のラップベルトにそれぞれ固定された構成では、左右のラップベルトを乗員の体格に応じて調節することが難しい。そのため、乗員の身体をより適切に拘束するという点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の身体をより適切に拘束することができる車両用シート及びシートベルト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用シートは、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、前記シートクッションに着座した着座乗員の腰部に沿ってシート幅方向に掛け渡されるラップベルトと、前記シートクッションに着座した着座乗員の左肩に沿って前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡され、前記ラップベルト側の端部が筒状に形成された筒状部とされ、該筒状部に前記ラップベルトが挿通された状態で該筒状部が前記ラップベルトに係合された左ショルダベルトと、前記シートクッションに着座した着座乗員の右肩に沿って前記左ショルダベルトと交差することなく前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡され、前記ラップベルト側の端部が筒状に形成された筒状部とされ、該筒状部に前記ラップベルトが挿通された状態で該筒状部が前記ラップベルトに係合された右ショルダベルトと、を備え、前記ラップベルトには、前記左ショルダベルトの前記筒状部の左側への移動を制限する左側制限部及び前記右ショルダベルトの前記筒状部の右側への移動を制限する右側制限部が設けられている
【0007】
請求項1記載の車両用シートによれば、着座乗員の臀部及び背部が、シートクッション及びシートバックによって支持される。また、着座乗員の腰部は、ラップベルトによって拘束される。さらに、着座乗員の左肩及び右肩は、左ショルダベルト及び右ショルダベルトによって拘束される。ここで、左ショルダベルト及び右ショルダベルトのそれぞれの筒状部には、ラップベルトが挿通された状態となっている。これにより、左ショルダベルト及び右ショルダベルトのそれぞれの筒状部の左右方向の位置を調節することにより、左ショルダベルト及び右ショルダベルトの左右の位置を着座乗員の体格に応じて調節することができる。その結果、乗員の身体をより適切に拘束することができる。
また、請求項1記載の車両用シートによれば、左ショルダベルトの筒状部の左側への移動が左側制限部によって制限され、右ショルダベルトの筒状部の右側への移動が右側制限部によって制限される。これにより、左ショルダベルトの筒状部が左側制限部よりも左側へズレ動くことを防止することができると共に、右ショルダベルトの筒状部が右側制限部よりも右側へズレ動くことを防止することができる。
【0008】
請求項2記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記筒状部には、該筒状部の形状を保持する形状保持部材が設けられている。
【0009】
請求項2記載の車両用シートによれば、筒状部の形状が形状保持部材によって保持されることにより、筒状部の左右方向の位置を調節する際に筒状部の形状が崩れることを抑制することができる。これにより、筒状部を左右方向へスムーズに移動させることができる。
【0010】
請求項3記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記ラップベルトの少なくとも一部が伸縮する。
【0011】
請求項3記載の車両用シートによれば、ラップベルトの少なくとも一部が伸縮することにより、当該ラップベルトの長さを着座乗員の体格に対応させることができる。
【0012】
請求項4記載の車両用シートは、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、前記ラップベルトの一方側の端部は、前記シートクッションのシート幅方向一方側に固定され、前記シートクッションのシート幅方向他方側には、前記ラップベルトの他方側の端部が着脱可能に係止される被係止部が設けられている。
【0013】
請求項4記載の車両用シートによれば、着座乗員が左ショルダベルトと右ショルダベルトとの間に頭部を通した後に、ラップベルトの他方側の端部を被係止部に係止することにより、ラップベルト、左ショルダベルト及び右ショルダベルトを着座乗員の身体に装着することができる。すなわち、ラップベルトの他方側の端部の1箇所を被係止部に係止することにより、ラップベルト、左ショルダベルト及び右ショルダベルトを着座乗員の身体に装着することができる。
【0016】
請求項記載のシートベルト装置は、車両用シートのシートクッションに着座した着座乗員の腰部に沿ってシート幅方向に掛け渡されるラップベルトと、前記シートクッションに着座した着座乗員の左肩に沿って前記車両用シートのシートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡され、前記ラップベルト側の端部が筒状に形成された筒状部とされ、該筒状部に前記ラップベルトが挿通された状態で該筒状部が前記ラップベルトに係合された左ショルダベルトと、前記シートクッションに着座した着座乗員の右肩に沿って前記左ショルダベルトと交差することなく前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡され、前記ラップベルト側の端部が筒状に形成された筒状部とされ、該筒状部に前記ラップベルトが挿通された状態で該筒状部が前記ラップベルトに係合された右ショルダベルトと、を備え、前記ラップベルトには、前記左ショルダベルトの前記筒状部の左側への移動を制限する左側制限部及び前記右ショルダベルトの前記筒状部の右側への移動を制限する右側制限部が設けられている
【0017】
請求項記載のシートベルト装置は、車両用シートに着座した着座乗員に装着される。また、着座乗員の腰部は、ラップベルトによって拘束される。さらに、着座乗員の左肩及び右肩は、左ショルダベルト及び右ショルダベルトによって拘束される。ここで、左ショルダベルト及び右ショルダベルトのそれぞれの筒状部には、ラップベルトが挿通された状態となっている。これにより、左ショルダベルト及び右ショルダベルトのそれぞれの筒状部の左右方向の位置を調節することにより、左ショルダベルト及び右ショルダベルトの左右の位置を着座乗員の体格に応じて調節することができる。その結果、乗員の身体をより適切に拘束することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両用シート及びシートベルト装置は、乗員の身体をより適切に拘束することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の車両用シートを左斜め前方側から見た斜視図である。
図2】本実施形態の車両用シートを前方側から見た正面図である。
図3】本実施形態の車両用シートを左側から見た側面図である。
図4】シートベルト装置においてラップベルトと左ショルダベルト及び右ショルダベルトとの係合部を拡大して示す拡大斜視図である。
図5】左ショルダベルトの筒状部とカラーを示す斜視図である。
図6】乗員が着座する前の状態の車両用シートを示す正面図である。
図7】乗員が車両用シートに着座すると共にシートベルトを装着する際の様子を示す正面図である。
図8】参考例に係る車両用シートを示す図1に対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図5を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印LH、矢印RHは、車両用シートに着座した乗員から見たシート前方側、上方側、左側、右側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。
【0021】
図1図3に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、着座乗員Pの臀部P1を下方側から支持するシートクッション12と、シートクッション12の後端部に支持されていると共に着座乗員Pの背部P2を後方側から支持するシートバック14と、を備えている。また、車両用シート10は、シートバック14の上端部に支持されていると共に着座乗員Pの頭部P3を後方側から支持するヘッドレスト16を備えている。さらに、車両用シート10は、着座乗員Pに装着されることで車両の衝突時等に当該着座乗員Pの身体を拘束するシートベルト装置18を備えている。
【0022】
本実施形態のシートベルト装置18は、4点式のシートベルト装置である。このシートベルト装置18は、シートクッション12に着座した着座乗員Pの腰部P4に沿ってシート幅方向(左右方向)に掛け渡されるラップベルト20と、シートクッション12に着座した着座乗員Pの左肩P5L及び右肩P5Rに沿ってそれぞれ掛け渡される左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rと、を備えている。また、シートベルト装置18は、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rを巻き取る図示しないリトラクタと、シートクッション12に固定された被係止部としてのバックル24と、バックル24に係止されるタングプレート26と、を備えている。
【0023】
ラップベルト20は、帯状に形成されている。このラップベルト20の一方側の端部20Aは図示しない固定プレートを介してシートクッション12の右側の端部12Rに固定されている。また、ラップベルト20の他方側の端部20Bには、バックル24に着脱可能に係止されるタングプレート26が固定されている。バックル24は、シートクッション12の左側の端部12Lに固定されている。
【0024】
本実施形態のラップベルト20は、当該ラップベルト20に張力が作用していない状態の自然長から張力が作用した状態の所定の長さまで伸縮可能に構成されている。なお、ラップベルト20の一部が伸縮することにより、当該ラップベルト20の長さが自然長から所定の長さまで伸縮可能となっていてもよい。また、ラップベルト20の全体が伸縮することにより、当該ラップベルト20の長さが自然長から所定の長さまで伸縮可能となっていてもよい。
【0025】
図4に示されるように、ラップベルト20の幅方向の中央には、当該ラップベルト20の長さ方向に間隔をあけて配置された左側制限部28L及び右側制限部28Rが固定されている。左側制限部28L及び右側制限部28Rがラップベルト20に固定された状態では、左側制限部28L及び右側制限部28Rがラップベルト20に対して当該ラップベルト20の厚み方向に突出している。特に、本実施形態では、左側制限部28L及び右側制限部28Rのラップベルト20に対する着座乗員P側への突出量が、左側制限部28L及び右側制限部28Rのラップベルト20に対する着座乗員Pとは反対側への突出量と比べて小さくなっている。また、ラップベルト20が着座乗員Pの腰部P4に掛け渡された状態において、左側制限部28Lは、車両用シート10の左右方向の中心に対して左側にオフセットした位置に配置され、右側制限部28Rは、車両用シート10の左右方向の中心に対して右側にオフセットした位置に配置される。さらに、ラップベルト20が着座乗員Pの腰部P4に掛け渡された状態において、左側制限部28Lの車両用シート10の左右方向の中心に対する左側へのオフセット距離と、右側制限部28Rの車両用シート10の左右方向の中心に対する右側へのオフセット距離と、はほぼ同じ距離となっている。なお、図1図3においては、左側制限部28L及び右側制限部28Rの図示を省略している。
【0026】
図1図3に示されるように、左ショルダベルト22Lは、ラップベルト20と同様に帯状に形成されている。この左ショルダベルト22Lの一方側の端部は、シートバック14に固定された図示しないリトラクタに係止されている。また、左ショルダベルト22Lは、シートバック14の左上端部に設けられた左スルーアンカ部30Lから引き出されることで、図示しないリトラクタから引き出されるようになっている。
【0027】
図1及び図4に示されるように、左ショルダベルト22Lの他方側の端部は、着座乗員P側へ折り返された状態で縫製等がなされることにより筒状に形成された筒状部32とされている。この筒状部32にラップベルト20が挿通されることで、筒状部32がラップベルト20に係合される。これにより、左ショルダベルト22Lが、シートクッション12に着座した着座乗員Pの左肩P5Lに沿ってシートバック14とラップベルト20との間に掛け渡されるようになっている。
【0028】
図1図3に示されるように、右ショルダベルト22Rは、左ショルダベルト22Lと同様に構成されている。すなわち、右ショルダベルト22Rの一方側の端部は、シートバック14に固定された図示しないリトラクタに係止されている。また、右ショルダベルト22Rは、シートバック14の右上端部に設けられた右スルーアンカ部30Rから引き出されることで、図示しないリトラクタから引き出されるようになっている。なお、右ショルダベルト22R及び左ショルダベルト22Lが2つのリトラクタにそれぞれ係止されて巻き取られる構成となっていてもよい。また、右ショルダベルト22R及び左ショルダベルト22Lの一方側の端部側が接続されて、単一のリトラクタに係止及び巻き取られる構成となっていてもよい。
【0029】
図1及び図4に示されるように、右ショルダベルト22Rの他方側の端部は、着座乗員P側へ折り返された状態で縫製等がなされることにより筒状に形成された筒状部32とされている。この筒状部32にラップベルト20が挿通されることで、筒状部32がラップベルト20に係合される。これにより、右ショルダベルト22Rが、シートクッション12に着座した着座乗員Pの右肩P5Rに沿ってシートバック14とラップベルト20との間に掛け渡されるようになっている。また、右ショルダベルト22Rの筒状部32と左ショルダベルト22Lの筒状部とは、ラップベルト20に固定された右側制限部28Rと左側制限部28Lとの間において左右方向に並んで配置される。
【0030】
図5に示されるように、左ショルダベルト22Lの筒状部32には、当該筒状部32の形状を保持する形状保持部材としての筒状のカラー34が固定されている、このカラー34は、一例として左ショルダベルト22Lよりも硬質な樹脂材料を用いて形成されている。このカラー34は、ラップベルト20が挿通される方向から見て当該ラップベルト20の幅方向を長手方向とする長孔形状に形成されている。また、本実施形態では、カラー34が左ショルダベルト22Lの筒状部32の内側に配置された状態で当該筒状部32の内周面に固定されている。図4に示されるように、右ショルダベルト22Rの筒状部32にも、左ショルダベルト22Lの筒状部32に固定されたカラー34と同様の構成のカラー34が固定されている。なお、カラー34は筒状部32内に埋設された構成となっていてもよい。
【0031】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0032】
図1図4に示されるように、以上説明した本実施形態の車両用シート10によれば、着座乗員Pの臀部P1及び背部P2が、シートクッション12及びシートバック14によって支持される。また、着座乗員Pの腰部P4は、ラップベルト20によって拘束される。さらに、着座乗員Pの左肩P5L及び右肩P5Rは、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rによって拘束される。ここで、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rのそれぞれの筒状部には、ラップベルト20が挿通された状態となっている。これにより、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rのそれぞれの筒状部32の左右方向の位置を調節することにより、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rの左右の位置を着座乗員Pの体格に応じて調節することができる。その結果、乗員Pの身体をより適切に拘束することができる。
【0033】
また、本実施形態では、左ショルダベルト22Lの筒状部32及び右ショルダベルト22Rの筒状部32には、筒状部32の形状を保持するカラー34が固定されている。これにより、左ショルダベルト22Lの筒状部32及び右ショルダベルト22Rの筒状部32の左右方向の位置を調節する際に筒状部32の形状が崩れることを抑制することができる。これにより、筒状部32を左右方向へスムーズに移動させることができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、ラップベルト20が伸縮可能になっていることにより、当該ラップベルト20の長さを着座乗員Pの体格に対応させることができる。これにより、ラップベルト20の長さを調節するためのリトラクタを設けることが不要となり、車両用シート10の構成部品の増加及び重量の増加を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、右ショルダベルト22Rの筒状部32と左ショルダベルト22Lの筒状部とが、ラップベルト20に固定された右側制限部28Rと左側制限部28Lとの間において左右方向に並んで配置される。そのため、左ショルダベルト22Lの筒状部32の左側への移動が左側制限部28Lによって制限され、右ショルダベルト22Rの筒状部32の右側への移動が右側制限部28Rによって制限される。これにより、左ショルダベルト22Lの筒状部32が左側制限部28Lよりも左側へズレ動くことを防止することができると共に、右ショルダベルト22Rの筒状部32が右側制限部28Rよりも右側へズレ動くことを防止することができる。
【0036】
また、本実施形態では、ラップベルト20の一方側の端部が、シートクッション12の右側の端部12Rに固定されていると共に、ラップベルト20の他方側の端部には、タングプレート26が固定されている。また、シートクッション12の左側の端部12Lには、バックル24が固定されている。当該構成では、図6及び図7に示されるように、シートクッション12上の着座乗員Pが左ショルダベルト22Lと右ショルダベルト22Rとの間に頭部P3を通した後に、ラップベルト20に固定されたタングプレート26をバックル24に係止することにより、ラップベルト20、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rを着座乗員Pの身体に装着することができる。すなわち、ラップベルト20に固定されたタングプレート26の1箇所をバックル24に係止することにより、ラップベルト20、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rを着座乗員Pの身体に装着することができる。また、当該構成では、バックル24及びタングプレート26が着座乗員Pの腹部P6の前側に配置されない。これにより、バックル24及びタングプレート26が着座乗員Pの腹部P6に当たることによる異物感を防止又は抑制することができる。
【0037】
ここで、以上説明したラップベルト20、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rの装着手順は、図8に示された参考例に係る車両用シート100においても実現することができる。この車両用シート100は、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rが単一のショルダベルト用帯状部材220によって構成されている。このショルダベルト用帯状部材220がラップベルト20に引っ掛けられた状態でV字状に折り返されることで、ショルダベルト用帯状部材220の一部分が左ショルダベルト22Lとなり、ショルダベルト用帯状部材220の他の一部分が右ショルダベルト22Rとなっている。なお、この車両用シート100において前述の車両用シート10と対応する部材及び部分には、前述の車両用シート10と対応する部材及び部分と同じ符号を付している。
【0038】
なお、以上説明した本実施形態の車両用シート10では、右側制限部28Rと左側制限部28Lをラップベルト20に設けた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。右側制限部28Rと左側制限部28Lをラップベルト20に設けるか否かについては、要求される着座乗員Pの拘束性能等を考慮して適宜設定すればよい。
【0039】
また、本実施形態では、ラップベルト20を伸縮可能に構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ラップベルト20を巻き取るリトラクタを設けた構成においては、ラップベルト20を伸縮不能に構成してもよい。
【0040】
さらに、本実施形態では、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rの他方側の端部を折り返した状態で縫製等を行うことにより筒状部32を形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、筒状に形成された部材を左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rの他方側の端部に接合することにより、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rの他方側の端部に筒状部32を設けた構成としてもよい。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
18 シートベルト装置
20 ラップベルト
22L 左ショルダベルト
22R 右ショルダベルト
24 バックル(被係止部)
28L 左側制限部
28R 右側制限部
32 筒状部
34 カラー(形状保持部材)
P 着座乗員
P1 臀部
P2 背部
P5L 左肩
P5R 右肩
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8