(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】車両用シート及びシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/00 20060101AFI20240626BHJP
B60R 22/26 20060101ALI20240626BHJP
B60R 22/34 20060101ALI20240626BHJP
B60R 22/12 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B60R22/00 207
B60R22/26
B60R22/34
B60R22/12
(21)【出願番号】P 2021001380
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】大木 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】米持 光恭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 絢香
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-029434(JP,A)
【文献】特開2008-265457(JP,A)
【文献】特開2014-177258(JP,A)
【文献】特開2009-220672(JP,A)
【文献】特開平06-255445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00
B60R 22/26
B60R 22/34
B60R 22/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、
前記シートクッションに着座した着座乗員の腰部に沿ってシート幅方向に掛け渡されるラップベルトと、
前記シートクッションに着座した着座乗員の左肩に沿って前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡される左ショルダベルトと、前記シートクッションに着座した着座乗員の右肩に沿って前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡される右ショルダベルトと、を構成し、前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの境目で折り返されていると共にこの折り返し部分における前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの間に前記ラップベルトが配置された単一のショルダベルト用帯状部材と、
を備え
、
前記ラップベルトには、前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの折り返し部分の左側への移動を制限する左側制限部及び右側への移動を制限する右側制限部が設けられており、
前記ラップベルトのシート幅方向の中央には、当該ラップベルトの長さ方向に間隔をあけて配置された前記左側制限部及び前記右側制限部が固定されている車両用シート。
【請求項2】
前記ショルダベルト用帯状部材の一方側の端部が前記シートバックに固定され、
前記ショルダベルト用帯状部材の他方側の端部が該ショルダベルト用帯状部材を巻き取るリトラクタに係止されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ラップベルトの少なくとも一部が伸縮する請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記ラップベルトの一方側の端部は、前記シートクッションのシート幅方向一方側に固定され、
前記シートクッションのシート幅方向他方側には、前記ラップベルトの他方側の端部が着脱可能に係止される被係止部が設けられている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
車両用シートのシートクッションに着座した着座乗員の腰部に沿ってシート幅方向に掛け渡されるラップベルトと、
前記シートクッションに着座した着座乗員の左肩に沿って前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡される左ショルダベルトと、前記シートクッションに着座した着座乗員の右肩に沿って前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡される右ショルダベルトと、を構成し、前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの境目で折り返されていると共にこの折り返し部分における前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの間に前記ラップベルトが配置された単一のショルダベルト用帯状部材と、
を備え
、
前記ラップベルトには、前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの折り返し部分の左側への移動を制限する左側制限部及び右側への移動を制限する右側制限部が設けられており、
前記ラップベルトのシート幅方向の中央には、当該ラップベルトの長さ方向に間隔をあけて配置された前記左側制限部及び前記右側制限部が固定されているシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及びシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、4点式のシートベルト装置を備えた車両用シートが開示されている。この文献に記載された車両用シートのシートベルト装置は、車両用シートに着座した乗員の左肩に掛け渡される左ショルダベルトと、当該乗員の右肩に掛け渡される右ショルダベルトと、当該乗員の腰部に掛け渡されると共にシート幅方向の中央部で連結される左ラップベルト及び右ラップベルトと、を備えている。また、左ショルダベルトの下端部は左ラップベルトに固定されており、右ショルダベルトの下端部は右ラップベルトに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用シートに着座した乗員の肩に掛け渡される左右のショルダベルトの下端部が左右のラップベルトにそれぞれ固定された構成では、左右のラップベルトを乗員の体格に応じて調節することが難しい。そのため、乗員の身体をより適切に拘束するという点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の身体をより適切に拘束することができる車両用シート及びシートベルト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用シートは、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、前記シートクッションに着座した着座乗員の腰部に沿ってシート幅方向に掛け渡されるラップベルトと、前記シートクッションに着座した着座乗員の左肩に沿って前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡される左ショルダベルトと、前記シートクッションに着座した着座乗員の右肩に沿って前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡される右ショルダベルトと、を構成し、前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの境目で折り返されていると共にこの折り返し部分における前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの間に前記ラップベルトが配置された単一のショルダベルト用帯状部材と、を備え、前記ラップベルトには、前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの折り返し部分の左側への移動を制限する左側制限部及び右側への移動を制限する右側制限部が設けられており、前記ラップベルトのシート幅方向の中央には、当該ラップベルトの長さ方向に間隔をあけて配置された前記左側制限部及び前記右側制限部が固定されている。
【0007】
請求項1記載の車両用シートによれば、着座乗員の臀部及び背部が、シートクッション及びシートバックによって支持される。また、着座乗員の腰部は、ラップベルトによって拘束される。さらに、着座乗員の左肩は、ショルダベルト用帯状部材の一部である左ショルダベルトによって拘束され、着座乗員の右肩は、ショルダベルト用帯状部材の他の一部である右ショルダベルトによって拘束される。ここで、折り返し部分における左ショルダベルトと右ショルダベルトとの間には、ラップベルトが配置されている。当該構成では、左ショルダベルトと右ショルダベルトとの境目の折り返し角度を調節することにより、着座乗員の左肩及び右肩と対応する部分における左ショルダベルト及び右ショルダベルトの位置を調節することができる。その結果、乗員の身体をより適切に拘束することができる。
また、請求項1記載の車両用シートによれば、左ショルダベルトと右ショルダベルトとの折り返し部分の左側への移動が左側制限部によって制限され、左ショルダベルトと右ショルダベルトとの折り返し部分の右側への移動が右側制限部によって制限される。これにより、左ショルダベルトと右ショルダベルトとの折り返し部分が左側制限部よりも左側へズレ動くことを防止することができると共に、左ショルダベルトと右ショルダベルトとの折り返し部分が右側制限部よりも右側へズレ動くことを防止することができる。
【0008】
請求項2記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記ショルダベルト用帯状部材の一方側の端部が前記シートバックに固定され、前記ショルダベルト用帯状部材の他方側の端部が該ショルダベルト用帯状部材を巻き取るリトラクタに係止されている。
【0009】
請求項2記載の車両用シートによれば、単一のリトラクタによって左ショルダベルト及び右ショルダベルトの長さを調節することができる。
【0010】
請求項3記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記ラップベルトの少なくとも一部が伸縮する。
【0011】
請求項3記載の車両用シートによれば、ラップベルトの少なくとも一部が伸縮することにより、当該ラップベルトの長さを着座乗員の体格に対応させることができる。
【0012】
請求項4記載の車両用シートは、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、前記ラップベルトの一方側の端部は、前記シートクッションのシート幅方向一方側に固定され、前記シートクッションのシート幅方向他方側には、前記ラップベルトの他方側の端部が着脱可能に係止される被係止部が設けられている。
【0013】
請求項4記載の車両用シートによれば、着座乗員が左ショルダベルトと右ショルダベルトとの間に頭部を通した後に、ラップベルトの他方側の端部を被係止部に係止することにより、ラップベルト、左ショルダベルト及び右ショルダベルトを着座乗員の身体に装着することができる。すなわち、ラップベルトの他方側の端部の1箇所を被係止部に係止することにより、ラップベルト、左ショルダベルト及び右ショルダベルトを着座乗員の身体に装着することができる。
【0016】
請求項5記載のシートベルト装置は、車両用シートのシートクッションに着座した着座乗員の腰部に沿ってシート幅方向に掛け渡されるラップベルトと、前記シートクッションに着座した着座乗員の左肩に沿って前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡される左ショルダベルトと、前記シートクッションに着座した着座乗員の右肩に沿って前記シートバックと前記ラップベルトとの間に掛け渡される右ショルダベルトと、を構成し、前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの境目で折り返されていると共にこの折り返し部分における前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの間に前記ラップベルトが配置された単一のショルダベルト用帯状部材と、を備え、前記ラップベルトには、前記左ショルダベルトと前記右ショルダベルトとの折り返し部分の左側への移動を制限する左側制限部及び右側への移動を制限する右側制限部が設けられており、前記ラップベルトのシート幅方向の中央には、当該ラップベルトの長さ方向に間隔をあけて配置された前記左側制限部及び前記右側制限部が固定されている。
【0017】
請求項5記載のシートベルト装置は、車両用シートに着座した着座乗員に装着される。また、着座乗員の腰部は、ラップベルトによって拘束される。さらに、着座乗員の左肩は、ショルダベルト用帯状部材の一部である左ショルダベルトによって拘束され、着座乗員の右肩は、ショルダベルト用帯状部材の他の一部である右ショルダベルトによって拘束される。ここで、折り返し部分における左ショルダベルトと右ショルダベルトとの間には、ラップベルトが配置されている。当該構成では、左ショルダベルトと右ショルダベルトとの境目の折り返し角度を調節することにより、着座乗員の左肩及び右肩と対応する部分における左ショルダベルト及び右ショルダベルトの位置を調節することができる。その結果、乗員の身体をより適切に拘束することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両用シート及びシートベルト装置は、乗員の身体をより適切に拘束することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態の車両用シートを左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図2】本実施形態の車両用シートを前方側から見た正面図である。
【
図3A】本実施形態の車両用シートを左側から見た側面図である。
【
図3B】本実施形態の車両用シートを右側から見た側面図である。
【
図4】シートベルト装置においてラップベルトと左ショルダベルト及び右ショルダベルトとの係合部を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図5】乗員が着座する前の状態の車両用シートを示す正面図である。
【
図6】乗員が車両用シートに着座すると共にシートベルトを装着する際の様子を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1~
図4を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印LH、矢印RHは、車両用シートに着座した乗員から見たシート前方側、上方側、左側、右側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。
【0021】
図1~
図3Bに示されるように、本実施形態の車両用シート100は、着座乗員Pの臀部P1を下方側から支持するシートクッション12と、シートクッション12の後端部に支持されていると共に着座乗員Pの背部P2を後方側から支持するシートバック14と、を備えている。また、車両用シート100は、シートバック14の上端部に支持されていると共に着座乗員Pの頭部P3を後方側から支持するヘッドレスト16を備えている。さらに、車両用シート100は、着座乗員Pに装着されることで車両の衝突時等に当該着座乗員Pの身体を拘束するシートベルト装置180を備えている。
【0022】
本実施形態のシートベルト装置180は、4点式のシートベルト装置である。このシートベルト装置180は、シートクッション12に着座した着座乗員Pの腰部P4に沿ってシート幅方向(左右方向)に掛け渡されるラップベルト20と、シートクッション12に着座した着座乗員Pの左肩P5L及び右肩P5Rに沿ってそれぞれ掛け渡される左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rと、を備えている。また、シートベルト装置180は、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rを巻き取る単一のリトラクタ40と、シートクッション12に固定された被係止部としてのバックル24と、バックル24に係止されるタングプレート26と、を備えている。
【0023】
ラップベルト20は、帯状に形成されている。このラップベルト20の一方側の端部20Aは図示しない固定プレートを介してシートクッション12の右側の端部12Rに固定されている。また、ラップベルト20の他方側の端部20Bには、バックル24に着脱可能に係止されるタングプレート26が固定されている。バックル24は、シートクッション12の左側の端部12Lに固定されている。
【0024】
本実施形態のラップベルト20は、当該ラップベルト20に張力が作用していない状態の自然長から張力が作用した状態の所定の長さまで伸縮可能に構成されている。なお、ラップベルト20の一部が伸縮することにより、当該ラップベルト20の長さが自然長から所定の長さまで伸縮可能となっていてもよい。また、ラップベルト20の全体が伸縮することにより、当該ラップベルト20の長さが自然長から所定の長さまで伸縮可能となっていてもよい。
【0025】
図4に示されるように、ラップベルト20の幅方向の中央には、当該ラップベルト20の長さ方向に間隔をあけて配置された左側制限部28L及び右側制限部28Rが固定されている。左側制限部28L及び右側制限部28Rがラップベルト20に固定された状態では、左側制限部28L及び右側制限部28Rがラップベルト20に対して当該ラップベルト20の厚み方向に突出している。特に、本実施形態では、左側制限部28L及び右側制限部28Rのラップベルト20に対する着座乗員P側への突出量が、左側制限部28L及び右側制限部28Rのラップベルト20に対する着座乗員Pとは反対側への突出量と比べて小さくなっている。また、ラップベルト20が着座乗員Pの腰部P4に掛け渡された状態において、左側制限部28Lは、車両用シート100の左右方向の中心に対して左側にオフセットした位置に配置され、右側制限部28Rは、車両用シート100の左右方向の中心に対して右側にオフセットした位置に配置される。さらに、ラップベルト20が着座乗員Pの腰部P4に掛け渡された状態において、左側制限部28Lの車両用シート100の左右方向の中心に対する左側へのオフセット距離と、右側制限部28Rの車両用シート100の左右方向の中心に対する右側へのオフセット距離と、はほぼ同じ距離となっている。また、左側制限部28Lと右側制限部28Rとの間には、後述する左ショルダベルト22Lと右ショルダベルト22Rとの折り返し係止部22Cが配置されるようになっている。なお、
図1~
図3Bにおいては、左側制限部28L及び右側制限部28Rの図示を省略している。
【0026】
図1~
図3Bに示されるように、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rは、ラップベルト20と同様の単一の帯状の部材によって構成されている。ここで、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rを構成する帯状の部材をショルダベルト用帯状部材220と呼ぶ。
【0027】
ショルダベルト用帯状部材220の一方側の端部220Aは、図示しない固定部材を介してシートバック14の骨格を構成するシートバックフレームに固定されている。また、ショルダベルト用帯状部材220においてシートバックフレームに固定された側は、シートバック14の左上端部に設けられた左スルーアンカ部30Lから前方側へ延出している。
【0028】
ショルダベルト用帯状部材220の他方側の端部220Bは、ショルダベルト用帯状部材220を巻き取るリトラクタ40に係止されている。このリトラクタ40は、シートバック14の骨格を構成するシートバックフレームに固定されている。ショルダベルト用帯状部材220においてリトラクタ40に係止された側は、シートバック14の右上端部に設けられた右スルーアンカ部30Rから前方側へ延出している。そして、ショルダベルト用帯状部材220においてリトラクタ40に係止された側を前方側へ引くことで、ショルダベルト用帯状部材220がリトラクタ40から引き出されると共に右スルーアンカ部30Rから引き出されるようになっている。
【0029】
ショルダベルト用帯状部材220の長手方向の中間部は、ラップベルト20の左右方向の中央部に係止されている。そして、ショルダベルト用帯状部材220において左スルーアンカ部30Lからラップベルト20までの範囲が左ショルダベルト22Lとなっており、ショルダベルト用帯状部材220において右スルーアンカ部30Rからラップベルト20までの範囲が右ショルダベルト22Rとなっている。
【0030】
次に、ショルダベルト用帯状部材220とラップベルト20との係止部の構成について説明する。
【0031】
図4に示されるように、ショルダベルト用帯状部材220の長手方向の中間部は、左ショルダベルト22Lと右ショルダベルト22Rとの境目で略V字状に折り返されている。また、左ショルダベルト22Lと右ショルダベルト22Rとの折り返し部分における左ショルダベルト22Lと右ショルダベルトとの間には、ラップベルト20が配置されている。ここで、左ショルダベルト22Lと右ショルダベルト22Rとの折り返し部分においてラップベルト20と重なる部分を折り返し係止部22Cと呼ぶ。
図2に示されるように、ラップベルト20、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rが着座乗員に装着された状態で、折り返し係止部22Cを前方側から見た形状は、略逆台形状となっている。なお、本実施形態では、右ショルダベルト22Rの折り返し係止部22Cがラップベルト20に対して着座乗員Pとは反対側に配置され、左ショルダベルト22Lの折り返し係止部22Cがラップベルト20に対して着座乗員P側に配置されている。
【0032】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0033】
図1~
図4に示されるように、以上説明した本実施形態の車両用シート100によれば、着座乗員Pの臀部P1及び背部P2が、シートクッション12及びシートバック14によって支持される。また、着座乗員Pの腰部P4は、ラップベルト20によって拘束される。さらに、着座乗員Pの左肩P5L及び右肩P5Rは、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rによって拘束される。ここで、折り返し係止部22Cにおける左ショルダベルト22Lと右ショルダベルト22Rとの間には、ラップベルトが配置されている。当該構成では、左ショルダベルト22Lと右ショルダベルト22Rとの境目の折り返し角度を調節することにより、着座乗員Pの左肩P5L及び右肩P5Rと対応する部分における左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rの位置を調節することができる。その結果、乗員Pの身体をより適切に拘束することができる。
【0034】
また、本実施形態では、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rを構成するショルダベルト用帯状部材220が、当該ショルダベルト用帯状部材220の他方側の端部220B側から単一のリトラクタ40によって巻き取られる構成となっている。これにより、単一のリトラクタ40によって左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rの長さを調節することができる。
【0035】
さらに、本実施形態では、ラップベルト20が伸縮可能になっていることにより、当該ラップベルト20の長さを着座乗員Pの体格に対応させることができる。これにより、ラップベルト20の長さを調節するためのリトラクタを設けることが不要となり、車両用シート100の構成部品の増加及び重量の増加を抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態では、左側制限部28Lと右側制限部28Rとの間には、左ショルダベルト22Lと右ショルダベルト22Rとの折り返し係止部22Cが配置される。そのため、折り返し係止部22Cの左側への移動が左側制限部28Lによって制限され、折り返し係止部22Cの右側への移動が右側制限部28Rによって制限される。これにより、折り返し係止部22Cが左側制限部28Lよりも左側へズレ動くことを防止することができると共に、折り返し係止部22Cが右側制限部28Rよりも右側へズレ動くことを防止することができる。
【0037】
また、本実施形態では、ラップベルト20の一方側の端部が、シートクッション12の右側の端部12Rに固定されていると共に、ラップベルト20の他方側の端部には、タングプレート26が固定されている。また、シートクッション12の左側の端部12Lには、バックル24が固定されている。当該構成では、
図5及び
図6に示されるように、シートクッション12上の着座乗員Pが左ショルダベルト22Lと右ショルダベルト22Rとの間に頭部P3を通した後に、ラップベルト20に固定されたタングプレート26をバックル24に係止することにより、ラップベルト20、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rを着座乗員Pの身体に装着することができる。すなわち、ラップベルト20に固定されたタングプレート26の1箇所をバックル24に係止することにより、ラップベルト20、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rを着座乗員Pの身体に装着することができる。また、当該構成では、バックル24及びタングプレート26が着座乗員Pの腹部P6の前側に配置されない。これにより、バックル24及びタングプレート26が着座乗員Pの腹部P6に当たることによる異物感を防止又は抑制することができる。
【0038】
なお、以上説明した本実施形態の車両用シート100では、右側制限部28Rと左側制限部28Lをラップベルト20に設けた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。右側制限部28Rと左側制限部28Lをラップベルト20に設けるか否かについては、要求される着座乗員Pの拘束性能等を考慮して適宜設定すればよい。
【0039】
また、本実施形態では、ラップベルト20を伸縮可能に構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ラップベルト20を巻き取るリトラクタを設けた構成においては、ラップベルト20を伸縮不能に構成してもよい。
【0040】
さらに、本実施形態では、左ショルダベルト22L及び右ショルダベルト22Rを構成するショルダベルト用帯状部材220が、当該ショルダベルト用帯状部材220の他方側の端部220B側から単一のリトラクタ40によって巻き取られる構成となっている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ショルダベルト用帯状部材220が、その長手方向の両側から2つのリトラクタによってそれぞれ巻き取られる構成としてもよい。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
100 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
180 シートベルト装置
20 ラップベルト
220 ショルダベルト用帯状部材
220A ショルダベルト用帯状部材の一方側の端部
220B ショルダベルト用帯状部材の他方側の端部
22L 左ショルダベルト
22R 右ショルダベルト
24 バックル(被係止部)
28L 左側制限部
28R 右側制限部
40 リトラクタ
P 着座乗員
P1 臀部
P2 背部
P5L 左肩
P5R 右肩