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特許7510365光ファイバ担持樹脂管の加工方法及び施工方法、加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】光ファイバ担持樹脂管の加工方法及び施工方法、加工装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
H02G1/12 075
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021004175
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022108932
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】東 総介
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】井上 将男
(72)【発明者】
【氏名】石原 岳
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-23202(JP,A)
【文献】実開昭56-66125(JP,U)
【文献】特開2004-101414(JP,A)
【文献】特開2010-185729(JP,A)
【文献】国際公開第2014/083989(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0257139(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
H02G 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂管に光ファイバが埋め込まれている光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを露出させる方法であって、
前記光ファイバ担持樹脂管の端部の全周を加熱して前記樹脂管を構成する樹脂を溶融させた状態で、前記端部から光ファイバを引き出して露出させる、光ファイバ担持樹脂管の加工方法。
【請求項2】
前記端部の全周を加熱する前に前記端部の表層部分を切削する、請求項1に記載の光ファイバ担持樹脂管の加工方法。
【請求項3】
前記光ファイバ担持樹脂管は、光ファイバ裸線に被覆樹脂層が被覆された被覆ファイバが前記樹脂管に埋め込まれており、
前記樹脂管と前記被覆樹脂層との色差△Eが3.2以上である、請求項1又は2に記載の光ファイバ担持樹脂管の加工方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光ファイバ担持樹脂管の加工方法によって前記光ファイバ担持樹脂管の端部から前記光ファイバを露出させ、前記光ファイバを計測機器と接続する、光ファイバ担持樹脂管の施工方法。
【請求項5】
樹脂管に光ファイバが埋め込まれている光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを露出させるための加工装置であって、
前記光ファイバ担持樹脂管の端部を受け入れる円筒部と、
前記円筒部内を加熱する加熱手段と、
前記円筒部内で前記端部を位置決めするガイド部と、
備える、加工装置。
【請求項6】
前記加熱手段が熱風送風機であり、
前記円筒部の前記端部を受け入れる側とは反対側に前記円筒部の開口端を塞ぐ閉塞板が設けられ、
前記円筒部に、前記熱風送風機から送られてくる熱風を導入する熱風口が形成され、
前記円筒部内における前記円筒部に受け入れた前記光ファイバ担持樹脂管の端部の外側で、かつ前記熱風口の内側に、前記熱風口から離間して配置された邪魔板が設けられている、請求項5に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ担持樹脂管の加工方法及び施工方法、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂管に光ファイバが軸方向に延びるように直線状又は螺旋状に埋め込まれた光ファイバ担持樹脂管は、光ファイバのレイリー散乱の周波数変化又は位相変化から、樹脂管に生じた曲げ、伸び、ねじりの各ひずみ変化、圧力変化、温度変化を常時監視できる。そこで、光ファイバ担持樹脂管を地中や構造物の内部に施工し、計測機器と接続して光ファイバ全体を検出部として、地中や構造物において歪みや振動が発生した箇所を発見することが提案されている(特許文献1)。
【0003】
光ファイバ担持樹脂管の光ファイバを計測機器と接続するには、樹脂管の端部から光ファイバを露出させる必要がある。既存技術においては樹脂管の端部のみで光ファイバを露出させる工業的な方法がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5851630号公報
【文献】特開2004-274941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバの露出方法としては、例えば、光ファイバを走行させながらその周囲に樹脂管を形成する樹脂を押し出す押出成形によって光ファイバ担持樹脂管を製造する際に、端部で樹脂の押し出しを一時的に停止して光ファイバを露出させる方法が考えられる。しかし、前記方法では、押出成形時に樹脂の押し出しを一時的に停止させる必要があるため、樹脂管の外径の制御が難しく、生産効率の面でも不利である。
【0006】
また、光ファイバ担持樹脂管の製造後、端部に後加工を行って光ファイバを露出させる方法も考えられる。後加工としては、特許文献2に開示されているカッター等を用いた表面の切削が考えられる。しかし、前記方法では作業者毎の切削作業にバラつきが生じやすく、光ファイバを損傷させるおそれがある。
【0007】
本発明は、光ファイバの損傷を抑制しつつ、光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを効率良く露出できる光ファイバ担持樹脂管の加工方法及び施工方法、及び、加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]樹脂管に光ファイバが埋め込まれている光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを露出させる方法であって、
前記光ファイバ担持樹脂管の端部の全周を加熱して前記樹脂管を構成する樹脂を溶融させた状態で、前記端部から光ファイバを引き出して露出させる、光ファイバ担持樹脂管の加工方法。
[2]前記端部の全周を加熱する前に前記端部の表層部分を切削する、[1]に記載の光ファイバ担持樹脂管の加工方法。
[3]前記光ファイバ担持樹脂管は、光ファイバ裸線に被覆樹脂層が被覆された被覆ファイバが前記樹脂管に埋め込まれており、前記樹脂管と前記被覆樹脂層との色差△Eが3.2以上である、[1]又は[2]に記載の光ファイバ担持樹脂管の加工方法。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂管の加工方法によって前記光ファイバ担持樹脂管の端部から前記光ファイバを露出させ、前記光ファイバを計測機器と接続する、光ファイバ担持樹脂管の施工方法。
[5]樹脂管に光ファイバが埋め込まれている光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを露出させるための加工装置であって、前記光ファイバ担持樹脂管の端部を受け入れる円筒部と、前記円筒部内を加熱する加熱手段と、前記円筒部内で前記端部を位置決めするガイド部と、備える、加工装置。
[6]前記加熱手段が熱風送風機であり、前記円筒部の前記端部を受け入れる側とは反対側に前記円筒部の開口端を塞ぐ閉塞板が設けられ、前記円筒部に、前記熱風送風機から送られてくる熱風を導入する熱風口が形成され、前記円筒部内における前記円筒部に受け入れた前記光ファイバ担持樹脂管の端部の外側で、かつ前記熱風口の内側に、前記熱風口から離間して配置された邪魔板が設けられている、[5]に記載の加工装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ファイバの損傷を抑制しつつ、光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを効率良く露出できる光ファイバ担持樹脂管の加工方法及び施工方法、及び、加工装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の加工装置の一例を示した斜視図である。
図2図1の加工装置のA-A断面図である。
図3図1の加工装置のB-B断面図である。
図4】光ファイバ担持樹脂管の一例を示した斜視図である。
図5】光ファイバ担持樹脂管の端部を加工する様子を示した断面図である。
図6】光ファイバ担持樹脂管の端部を加工する様子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[光ファイバ担持樹脂管の加工方法]
本発明の光ファイバ担持樹脂管の加工方法は、樹脂管に光ファイバが埋め込まれている光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを露出させる方法である。本発明の光ファイバ担持樹脂管の加工方法では、光ファイバ担持樹脂管における樹脂管の端部の全周を加熱して樹脂を溶融させた状態で、前記端部から光ファイバを引き出して露出させる。
なお、光ファイバ担持樹脂管の端部とは、露出させる光ファイバの長さ相当であり、例えば、光ファイバ担持樹脂管の端部の末端からの長さは、方向に30cmまでの部分を端部とする。
【0012】
樹脂管の端部を加熱して樹脂を溶融させることで、埋め込まれている光ファイバを樹脂管の端部から容易に引き出すことができる。また、カッター等を用いる必要がないため、露出させる際に光ファイバが損傷することも抑制できる。
【0013】
(加工装置)
樹脂管の端部を加熱する方法としては、例えば、図1及び図2に示す加工装置1を用いる方法を例示できる。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
加工装置1は、樹脂管に光ファイバが埋め込まれている光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを露出させるための装置である。加工装置1は、円筒部10と、ガイド部20と、加熱手段30と、を備えている。
【0015】
円筒部10は、軸方向の一方の第1開口端10aから樹脂管の端部を受け入れられるようになっている。すなわち、円筒部10は、第1開口端10aの内径が樹脂管の端部の外径よりも大きく、円筒部10内に第1開口端10aから樹脂管の端部を挿入できるようになっている。
【0016】
円筒部10の内径は、加工対象の樹脂管の端部の外径に応じて適宜設定すればよい。
この例の円筒部10の周壁には給気部12が設けられ、その部分に熱風口11が形成されている。これにより、後述の加熱手段30から送られてくる熱風が給気部12を通じて熱風口11から円筒部10内に導入されるようになっている。
【0017】
円筒部10における熱風口11の位置は、特に限定されず、円筒部10内に受け入れた加工対象の樹脂管の端部を効率良く加熱できる範囲で適宜設定すればよい。熱風口11の開口面積は、適宜設定すればよい。
なお、この例では円筒部10に形成される熱風口11の数は1個であるが、円筒部10に2個以上の熱風口11を形成してもよい。
【0018】
円筒部10の軸方向の他方の第2開口端10b側には閉塞板14が設けられている。すなわち、円筒部10の第2開口端10bは閉塞板14によって塞がれている。これにより、加熱手段30から円筒部10内に供給された熱風が円筒部10の第2開口端10bから逃げにくくなるため、円筒部10内の温度が上昇しやすく、樹脂管の端部を効率良く加熱できる。
また、この例の加工装置1では、作業性に優れる点から円筒部10に把持部16が設けられている。なお、円筒部10に把持部16が設けられていない加工装置であってもよい。
【0019】
円筒部10及び閉塞板14の材質としては、特に限定されず、例えば、鋼やステンレス、アルミニウムを例示できる。なかでも、剛性やコストの点から、円筒部10及び閉塞板14の材質としては、鋼が好ましい。円筒部10及び閉塞板14の材質としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ガイド部20は、円筒部10内で樹脂管の端部を位置決めする円筒部材であり、円筒部10内に設けられている。ガイド部20の外面と円筒部10の内面とは離間している。ガイド部20の内径は、加工対象の樹脂管の端部の外径よりも僅かに大きくなるように設定されている。これにより、ガイド部20内に樹脂管の端部を挿入することで、円筒部10内で樹脂管の端部が位置決めされるようになっている。
【0021】
ガイド部20の材質としては、特に限定されず、例えば、鋼やステンレス、アルミニウムを例示できる。なかでも、剛性やコストの点から、ガイド部20の材質としては、鋼が好ましい。ガイド部20の材質としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ガイド部20の周壁部には複数の孔22が形成されている。これにより、後述の加熱手段30から円筒部10内に送り込まれた熱風が複数の孔22を通じてガイド部20内の樹脂管まで到達し、樹脂管の端部が効率良く加熱されるようになっている。
ガイド部20の周壁部に形成する孔22の開口形状は、特に限定されず、例えば、正円、楕円等の円形状、矩形状を例示できる。
【0023】
孔22の直径は、適宜設定でき、例えば、1mm以上10mm以下とすることができる。なお、孔22の開口形状が正円でない場合の直径は、孔22の外接円の直径とする。
【0024】
ガイド部20の周壁部に形成する孔22の数は、孔22の直径等に応じて適宜設定でき、例えば、単位面積100cm当たりの数として、120個/100cm以上13000個/100cm以下とすることができる。
【0025】
この例の加工装置1では、ガイド部20の外面における熱風口11と向き合う位置に邪魔板40が配置されている。熱風口11と邪魔板40とは離間している。このように、円筒部10内における円筒部10に受け入れた樹脂管の端部の外側となる領域で、かつ熱風口11の内側に、熱風口11から離間して配置された邪魔板40が設けられている。これにより、熱風口11から円筒部10内に供給された熱風が邪魔板40に当たり、円筒部10内の熱風口11側と反対側まで熱風が回り込みやすくなる。そのため、円筒部10内の温度が均等に効率良く上昇し、樹脂管の端部の加熱がさらに効率良く行える。
【0026】
邪魔板40の熱風口11に向く面の面積は、熱風口11の開口面積に合わせて適宜設定すればよく、例えば、熱風口11の開口面積よりも僅かに大きい程度とすることができる。
邪魔板40の材質としては、特に限定されず、例えば、鋼やステンレス、アルミニウムを例示できる。なかでも、剛性やコストの点から、邪魔板40の材質としては、鋼が好ましい。邪魔板40の材質としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
加熱手段30は、円筒部10内を加熱する手段である。この例の加熱手段30は熱風送風機である。熱風送風機としては、所望の温度の熱風を円筒部10に供給できるものであればよく、公知の熱風送風機を制限なく使用できる。
【0028】
以下、加工装置1を用いた光ファイバ担持樹脂管の加工方法の一例について説明する。
図4に示すように、加工対象の光ファイバ担持樹脂管100は、樹脂管110に4本の光ファイバ120が埋め込まれている。4本の光ファイバ120は、樹脂管110の軸方向に延びるように直線状又は螺旋状に樹脂管110に埋め込まれている。歪み、振動等の計測精度が向上する点から、光ファイバ120が螺旋状に樹脂管110に埋め込まれていることが好ましい。
【0029】
樹脂管110の内径及び外径は、適宜設定すればよい。
樹脂管110を構成する樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、フッ素樹脂を例示できる。樹脂管110を構成する樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0030】
光ファイバ担持樹脂管100では、4本の光ファイバ120は、樹脂管110の周方向において等角度間隔(90°間隔)となるように配置されている。
光ファイバ担持樹脂管100に埋め込まれる光ファイバ120の数は、4本には限定されず、3本以下であってもよく、5本以上であってもよい。
【0031】
光ファイバ120としては、特に限定されず、被覆樹脂層が被覆されていない光ファイバ裸線であってもよく、光ファイバ裸線に被覆樹脂層が被覆された被覆ファイバであってもよい。光ファイバ120として被覆ファイバを用いる場合、被覆樹脂層は1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0032】
光ファイバ120として被覆ファイバを用いる場合、樹脂管110と光ファイバ120の被覆樹脂層との色差△Eは、3.2以上が好ましく、13以上がより好ましい。前記色差△Eが前記下限値以上であれば、樹脂管110と光ファイバ120の色違いによって光ファイバ120の位置がわかりやすく、光ファイバ120を露出させる際の作業性が向上する。前記色差△Eの上限は特に限定されないが、実用上は例えば25以下とすることができる。
【0033】
なお、色差△Eは、JIS Z8781-4:2013に規定されたL*a*b*表色系における色差であり、下記式(1)から算出される値である。
△E=((L-L+(a-a+(b-b1/2 ・・・(1)
ただし、前記式(1)中、L、a、bはそれぞれ光ファイバ120の被覆樹脂層の明度L、赤色方向の色度a、黄色方向の色度bを表し、L、a、bはそれぞれ樹脂管110の明度L、赤色方向の色度a、黄色方向の色度bを表す。なお、光ファイバ120が2層以上の被覆樹脂層を備える場合、L、a、bはそれぞれ光ファイバ120の最外層の被覆樹脂層の明度L、赤色方向の色度a、黄色方向の色度bを表す。
【0034】
図5は、図2の加工装置1の円筒部10に光ファイバ担持樹脂管100の端部を挿入する様子を示した断面図である。図6は、図3の加工装置1の円筒部10に光ファイバ担持樹脂管100の端部を挿入する様子を示した断面図である。
【0035】
図5及び図6に示すように、加工装置1を用いた光ファイバ担持樹脂管100の加工方法においては、まず円筒部10の第1開口端10a側から、ガイド部20内に光ファイバ担持樹脂管100の端部を挿入し、円筒部10内で光ファイバ担持樹脂管100の端部を位置決めする。
【0036】
次いで、加熱手段30から送った熱風を熱風口11から円筒部10内に導入し、円筒部10内の温度を高めて樹脂管110の端部の全周を加熱して溶融させる。
加熱時の円筒部10内の温度は、樹脂管110を構成する樹脂の融点に合わせて適宜設定すればよい。例えば、樹脂管110を構成する樹脂がポリエチレンの場合、加熱時の円筒部10内の温度は130℃以上700℃以下とすることができる。この例の加熱時の円筒部10内の温度は、熱風の温度によって調節できる。
【0037】
樹脂管110の端部の加熱時間は、樹脂管110の端部が充分に溶融するように適宜設定すればよく、例えば、10秒以上10分以下とすることができる。
【0038】
次いで、光ファイバ担持樹脂管100の端部を円筒部10から引き出し、溶融状態の樹脂管110の端部から光ファイバ120を引き出して露出させる。光ファイバ120の引き出しは、工具等を用いて容易に行うことができる。
【0039】
本発明では、樹脂管の端部の全周を加熱する前に樹脂管の端部の表層部分を切削してもよい。具体的には、例えば、樹脂管110の端部を加熱して溶融させる前に、スクレーパを用いて樹脂管110の端部の表層部分を切削して除去してもよい。これにより、樹脂管110の端部の樹脂量が低下するため、加熱時間を短縮することができる。
【0040】
樹脂管110の端部の表層部分を切削する場合、切削する表層部分の肉厚は、光ファイバ120が露出しない範囲で適宜設定すればよい。切削時に樹脂管110の端部から光ファイバ120が露出しないようにすることで、光ファイバ120に損傷が生じることを抑制しやすい。
樹脂管110の端部において切削する表層部分の肉厚は、例えば、0.1mm以上3mm以下とすることができる。
【0041】
[光ファイバ担持樹脂管の施工方法]
本発明の光ファイバ担持樹脂管の施工方法は、本発明の光ファイバ担持樹脂管の加工方法によって光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを露出させ、前記光ファイバを計測機器と接続する方法である。
【0042】
例えば、光ファイバ担持樹脂管100を地中や構造物に敷設し、前記した加工装置1を用いて光ファイバ担持樹脂管100の端部から光ファイバ120を露出させ、露出させた光ファイバ120を計測機器と接続する。これにより、光ファイバ120のレイリー散乱の周波数変化又は位相変化から、光ファイバ担持樹脂管100に生じる歪み、圧力、温度を監視し、地中や構造物における歪みや振動の発生箇所を発見することができる。
【0043】
計測機器としては、計測する対象に応じて適宜選択すればよく、例えば、歪計測器を例示できる。
【0044】
以上説明したように、本発明では、光ファイバ担持樹脂管の端部の全周を加熱して樹脂管を構成する樹脂を溶融させた状態で、光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを引き出して露出させる。そのため、光ファイバ担持樹脂管の端部から光ファイバを効率良く露出させることができ、またカッター等を用いて光ファイバを露出させる場合に比べて光ファイバの損傷を抑制できる。
【0045】
なお、本発明の加工装置は、前記した加工装置1には限定されない。
加工装置1は円筒部10内を熱風によって加熱するものであったが、例えば、加熱手段として備えられた電熱線によって円筒部内を加熱する加工装置であってもよい。具体的には、例えば、円筒部の内周面側の部分に電熱線が埋設されている加工装置、円筒部の外周面に巻回されている加工装置を例示できる。
【0046】
電熱線としては、通電によって発熱するものであればよく、例えば、ニクロム線を例示できる。電熱線への通電は、電熱線に直接電流を流してもよく、外部から電波を照射して誘導電流を発生させてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…加工装置、10…円筒部、11…熱風口、12…給気部、14…閉塞板、16…把持部、20…ガイド部、30…加熱手段、40…邪魔板、100…光ファイバ担持樹脂管、110…樹脂管、120…光ファイバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6