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  • 特許-屋外キュービクル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】屋外キュービクル
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/56 20060101AFI20240626BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H02B1/56 A
H05K7/20 G
H05K7/20 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021121065
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016606
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-281706(JP,A)
【文献】特開2003-153404(JP,A)
【文献】特開2013-247759(JP,A)
【文献】実開昭53-051939(JP,U)
【文献】特開2005-086081(JP,A)
【文献】特開2012-016194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンネルベースと、機器を収納する筐体と、当該筐体の上方の屋根とで構成される屋外キュービクルであって、
筐体の天板と屋根との間に空間を設け、その空間を排気通路とし、
前記筐体の天板に設けた孔から前記排気通路を通って、屋根の庇下から排気する構造を備え
筐体内の熱源機器と非熱源機器の間であって、筐体内の下方に、上方に向けて空気を吹き出すバリアファンを設置した屋外キュービクル。
【請求項2】
請求項1に記載の屋外キュービクルにおいて、
前記筐体の天板に設けた排気取入口の上方であって、前記排気通路に遠心ファンを備えた屋外キュービクル。
【請求項3】
請求項1に記載の屋外キュービクルにおいて、
前記筐体の天板に軸流ファンを設け、筐体の天板に設けた前記孔から前記排気通路に空気を吹き出すように構成した屋外キュービクル。
【請求項4】
請求項3に記載の屋外キュービクルにおいて、
前記軸流ファンの上方であって、前記屋根に、天板に設けた前記孔からの空気を屋根の庇下に向ける風向変更部材を設けた屋外キュービクル。
【請求項5】
請求項4に記載の屋外キュービクルにおいて、
前記風向変更部材は、傾斜面を有する部材である屋外キュービクル。
【請求項6】
請求項に記載の屋外キュービクルにおいて、
熱源機器である変圧器と非熱源機器の間に取付板を配置し、当該取付板の下部に前記バリアファンを設置した屋外キュービクル。
【請求項7】
請求項に記載の屋外キュービクルにおいて、
筐体内に温度センサーと湿度センサーの少なくとも1つを配置し、温度センサーと湿度センサーで検出した温度や湿度に基づいて、前記バリアファンの回転を制御する屋外キュービクル。
【請求項8】
チャンネルベースと、機器を収納する筐体と、当該筐体の上方の屋根とで構成される屋外キュービクルであって、
筐体の天板と屋根との間に空間を設け、その空間を排気通路とし、
前記筐体の天板に設けた排気取入口の上方であって、前記排気通路に遠心ファンを配置し、
前記遠心ファンにより、前記排気取入口から筐体内の空気を吸い込み、前記排気通路を通って屋根の庇下から排気し、
筐体内の熱源機器と非熱源機器の間であって、筐体内の下方に、上方に向けて空気を吹き出すバリアファンを設置し、
筐体内に温度センサーと湿度センサーを配置し、温度センサーと湿度センサーで検出した温度と湿度に基づいて、前記バリアファンおよび前記遠心ファンの回転を制御する屋外キュービクル。
【請求項9】
チャンネルベースと、機器を収納する筐体と、当該筐体の上方の屋根とで構成される屋外キュービクルであって、
筐体の天板と屋根との間に空間を設け、その空間を排気通路とし、
前記筐体の天板に軸流ファンを設け、
前記軸流ファンにより、前記筐体の天板に設けた孔から前記排気通路に空気を吹き出し、前記排気通路を通って屋根の庇下から排気し、
筐体内の熱源機器と非熱源機器の間であって、筐体内の下方に、上方に向けて空気を吹き出すバリアファンを設置し、
筐体内に温度センサーと湿度センサーを配置し、温度センサーと湿度センサーで検出した温度と湿度に基づいて、前記バリアファンおよび前記軸流ファンの回転を制御する屋外キュービクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外キュービクルに関し、特に屋外キュービクルの放熱技術に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外キュービクルは、電力会社から高圧受電するための必要な機器類一式を金属製筐体に収納したもので、受電遮断設備と、変電設備と、配電設備、および各電力を計測するための計測機器を収納した屋外設置用の設備である。屋外キュービクルでは、太陽の輻射による外面からの熱侵入と収容している設備の発熱から、筐体内の温度上昇対策が必要となる。
【0003】
図1は、従来の筐体内の温度上昇対策の1つである、筐体内外の温度差による筐体外面の自然対流を利用した自然空冷式であり、筐体下部に吸気口を設け、上部に排気口を設け、これによる自然対流を利用した自然換気式の屋外キュービクルを示す。筐体1と屋根2とチャンネルベース3の鋼板製材料で構成され、筐体内部の床面4に変圧器5が設置され、筐体内部の正面取付板6に電力を遮断する遮断装置7が設置される。チャンネルベース3にはチャンネルベース吸気口8が、床面4には床面吸気口9があり、屋根2の前後には庇排気口10がある構成である。チャンネルベース吸気口8から吸い込まれた外気が、床面吸気口9から筐体内に入り、変圧器5の周囲を通って上昇し、屋根の前後の庇排気口10から外部へ排出されることにより、放熱が行われる。
【0004】
図2は、従来の他の温度上昇対策である、天井換気扇11と天井ファンカバー12を設けた強制換気式の屋外キュービクルを示す。(例えば、特許文献1の図6参照。)屋根2に天井換気扇11を取り付け、屋根2の上側であって天井換気扇11の上方に天井ファンカバー12を設ける。天井換気扇11により、屋根に設けた排気口を通して強制的に排気することにより、放熱が行われる。天井ファンカバー12により、雨や塵などの筐体内への侵入を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-46952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
屋外環境は地球温暖化や猛暑により厳しい温度環境になっており、また、電源需要増加および太陽光発電等の変電需要により収容している設備の発熱量は増加傾向にある。そのため、現状の温度上昇対策だけでは、筐体熱容量を大きくするために筐体を大きくしたり、自然換気量、強制換気量を増やすために換気口を増やしたり、換気扇能力を増強しなくてはならない。しかし、これらの場合には大型化により筐体据付面積の増加、防水性能の低減の問題があった。
【0007】
図2に記載の屋外キュービクルでは、屋根の上に天井ファンカバー12が取り付けられているので、高さが高くなる。また、屋根に設けた排気口から雨水が入る恐れや、雪で埋まる恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、太陽の輻射による外面からの熱侵入を低減しつつ、より効率的に温度上昇対策を行うことができる屋外キュービクルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、太陽の輻射を受ける屋外キュービクルの屋根と筐体の天板との間に空間を設け、その空間を排気気流通路とした構造を備える。
【0010】
本発明の「屋外キュービクル」の一例を挙げるならば、
チャンネルベースと、機器を収納する筐体と、当該筐体の上方の屋根とで構成される屋外キュービクルであって、
筐体の天板と屋根との間に空間を設け、その空間を排気通路とし、前記筐体の天板に設けた孔から前記排気通路を通って、屋根の庇下から排気する構造を備え、筐体内の熱源機器と非熱源機器の間であって、筐体内の下方に、上方に向けて空気を吹き出すバリアファンを設置したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、屋根に受けた輻射の熱が筐体内に侵入することを低減し、かつ筐体内の温まった空気を容易に外に排気することができる。
【0012】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明より明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来例の自然空冷式および自然換気式の屋外キュービクルを示す図である。
図2】従来例の強制換気式の屋外キュービクルを示す図である。
図3】本発明の実施例1に係る屋外キュービクルを示す図である。
図4】盤内湿度と盤内温度の高低に対応する、遠心ファンとバリアファンのON、OFFを示す表である。
図5】本発明の実施例2に係る屋外キュービクルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし主旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
また、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例1を、図3に沿って説明する。
【0016】
図3は、実施例1の構造を備えた屋外キュービクルの概略側断面図である。図3の屋外キュービクルは、鋼板製材料から成る箱状の筐体1と、筐体の上部の屋根2と、筐体の下部のチャンネルベース3とで構成されている。筐体内部の床面4には変圧器5が設置され、筐体内部に設けた正面取付板6に電力を遮断する遮断装置7が設置されている。そして、チャンネルベース3にはチャンネルベース吸気口8が、筐体の床板には床板吸気口9があり、屋根2の前後には庇排気口10がある。
【0017】
筐体1の上部には天板19を設け、屋根2と筐体1の天板19との間には温まった空気が通る排気通路13を設けている。図の矢印点線で示すように、チャンネルベース吸気口8から吸い込まれた空気は、床板吸気口9から筐体内に入る。変圧器5等で温まった空気が変圧器5の上方に設けた排気取入口14から排気通路13に流れ、排気通路13により、屋根の前後庇下を通って庇排気口10に流れ、屋根前後の庇から外に排気される。なお、排気取入口14は、天板19の略中央に設けるのが好ましい。
【0018】
排気通路13の排気取入口14には筐体内の空気を吸い込むように下向きに遠心ファン15を配置する。遠心ファンは、吸い込んだ空気を略90度方向を変えて、羽根が回転する遠心力により放射状に吹き出す。遠心ファン15が、変圧器5の周りの空気を強制的に吸い込み、向きを変えて吹き出すことにより、排気通路13に空気を流し、キュービクルの外に排気する。なお、屋根に配置するファンとしては、遠心ファンに限らず、排気取入口14から空気を吸い込み、排気通路13に吹き出すものであれば、何れのものでもよい。
【0019】
さらに、筐体1の内側の正面取付板6の下部には、バリアファン16を設け、床板吸気口9からの空気を吸気し、正面取付板6に沿って上方に空気を送るよう配置している。バリアファン16を設けることで、変圧器等の熱源機器と例えば遮断器等の非熱源機器を空気のバリアにより空間分離できる。また、取付板6に沿って空気を流すことにより、取付板などの結露を防ぐことができる。正面取付板6には温度センサー17と湿度センサー18を設置し、筐体内の温度および湿度を測定する。そして、筐体内温度および湿度に応じて遠心ファン15とバリアファン16を、運転および停止と自動制御運転するようにしている。
【0020】
図4に、盤内湿度の高、中、低と盤内温度の高、中、低の組み合わせに応じて、遠心ファン15とバリアファン16のON、OFFを行う組み合わせの表の一例を示す。図に示すように、盤内温度と盤内温度が低い場合には遠心ファンおよびバリアファンをOFFにし、盤内温度と盤内温度が中の場合には遠心ファンおよびバリアファンの一方をONにし、盤内温度と盤内温度が高い場合には遠心ファンおよびバリアファンの両方をONにする。なお、図では、遠心ファンとバリアファンのONとOFFを制御しているが、さらに、高速運転と低速運転とを組み合わせるようにしてもよい。
【0021】
以上の構成により、本実施例によれば、排気通路13は空気層となり、太陽の輻射により屋根が熱された際の断熱材の役割を持ち、太陽の輻射からの筐体内への熱侵入を軽減することができる。図2に示される従来の有圧換気扇では、排気を屋根上から排気するため屋根上面にファンカバーを設置していたが、遠心ファンの搭載により排気通路を通って庇から排気できるため、屋根上面にファンカバーを付けずに換気扇を設置でき、屋外キュービクル全体の高さを低くすることが可能となる。屋外キュービクル全体の高さを低くすることにより、運搬時に解体して輸送する必要がなくなる。また、雨水や塵が筐体の内部へ侵入したり、積雪等で屋根ファンカバーが埋もれることも無くなる。
【0022】
また、バリアファンを設けることで、変圧器等の熱源機器と例えば配線用遮断器等の非熱源機器を空気のバリアにより空間分離ができ、効率的な換気ができる。筐体内に設置した温度センサーと湿度センサーで、遠心ファンとバリアファンを運転および停止と自動制御運転を行うことで、筐体内の空気循環が可能となり、結露を防止できる。
【実施例2】
【0023】
図5に、本発明の実施例2の屋外キュービクルの概略側断面図を示す。
実施例1では、屋根2の下側に遠心ファン15を設けるものであるが、実施例2では、筐体の天板に天井換気扇等の軸流ファン20を設けるものである。
【0024】
図に示すように、筐体1の天板19に天井換気扇等の軸流ファン20を設ける。軸流ファンは、羽根の正面から吸い込んだ空気を、そのまま後方へ吹き出すものである。天井換気扇等の軸流ファン20により筐体内の温まった空気を吸い込み、天板19に設けた孔を通して排気通路13に吹き出す。排気通路13に吹き出された空気は、排気通路13を通って庇排気口10に流れ、屋根前後の庇から外に排気される。
【0025】
軸流ファン20の上方であって、屋根2の下側には、風向変更部材21を設けるのが好ましい。風向変更部材21は、図に示すような、傾斜面を有する三角状の部材でもよいし、傾斜した板状部材でもよい。風向変更部材21の傾斜面に、天井換気扇等の軸流ファン20から吹き出す空気が当たり、風向き変更され、空気が前後の庇排気口10に流れることにより、屋根前後庇から良好に排気される。
実施例2において、その他の構成は、実施例1と同様である。
【0026】
本実施例においても、実施例1と同様に、屋根に受けた輻射の熱が筐体内に侵入することを低減し、かつ筐体内の温まった空気を容易にキュービクルの外に排気することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…筐体
2…屋根
3…チャンネルベース
4…床面
5…変圧器
6…正面取付板
7…遮断装置
8…チャンネルベース吸気口
9…床面吸気口
10…庇排気口
11…天井換気扇
12…天井ファンカバー
13…排気通路
14…排気取入口
15…遠心ファン
16…バリアファン
17…温度センサー
18…湿度センサー
19…天板
20…軸流ファン
21…風向変更部材
図1
図2
図3
図4
図5