(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】センサー故障検出のためのシステム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/145 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
A61B5/145
(21)【出願番号】P 2021516747
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(86)【国際出願番号】 US2019055338
(87)【国際公開番号】W WO2020076910
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-05
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】バタチャリヤ,アパラジタ
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-520898(JP,A)
【文献】特開2011-125633(JP,A)
【文献】特開平10-127589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体監視システムであって、
検体センサー、第1処理回路、及び第1持続性メモリを含むセンサー制御装置であって、前記検体センサーの少なくとも一部が使用者の体内に挿入され、前記検体センサーから検体レベルを示すセンサーデータを収集するように構成されたセンサー制御装置と、
第2処理回路及び第2持続性メモリを備える読取装置と
を備え、
前記第1又は第2持続性メモリの少なくとも一方は命令群を含み、前記命令群は実行されると前記第1又は第2処理回路の少なくとも一方に
第1時点において、前記収集されたセンサーデータに基づいて変化率メトリックを計算するステップと、
第2時点において、前記収集されたセンサーデータに基づいて検体レベルの和のメトリックを計算するステップと、
前記変化率メトリックを第1閾値と比較し前記検体レベルの和のメトリックを第2閾値と比較するステップと、
前記変化率メトリックが前記第1閾値を超え、前記検体レベルの和のメトリックが前記第2閾値を超え、前記第1時点と第2時点の差が所定の時間差閾値未満であるとの判断に応答してセンサー故障の標示を生成するステップと
を実行させ、
前記変化率メトリックは所定の時間窓内の前記収集されたセンサーデータに基づくものであり、
前記検体レベルの和のメトリックは、第2の所定の時間窓内の検体レベル測定値の合計 から成る、
検体監視システム。
【請求項2】
前記変化率メトリックは複数の変化率値の関数である、請求項1記載の検体監視システム。
【請求項3】
前記変化率メトリックは前記複数の変化率値の中心傾向である、請求項2記載の検体監視システム。
【請求項4】
前記変化率メトリックは前記所定の時間窓内の前記収集されたセンサーデータのうち2つの連続する検体データ点に基づく、請求項
1記載の検体監視システム。
【請求項5】
前記変化率メトリックは前記所定の時間窓内の前記収集されたセンサーデータのうち2つの不連続の検体データ点に基づく、請求項
1記載の検体監視システム。
【請求項6】
前記変化率メトリックを前記第1閾値と比較する命令群は、前記変化率メトリックの絶対値を前記第1閾値と比較する命令群から成る、請求項1記載の検体監視システム。
【請求項7】
前記命令群は実行されると、更に前記第1又は第2処理回路の少なくとも一方に前記読取装置の表示器へ通知を出力させる、請求項1記載の検体監視システム。
【請求項8】
前記通知はセンサー故障が検出されたことを表す視覚的又は聴覚的標示を含む、請求項
7記載の検体監視システム。
【請求項9】
前記命令群には、更に、実行されると、センサー故障の標示が生成された場合に、前記第1又は第2処理回路の少なくとも一方に前記検体センサーを無効にさせる命令が含まれる、請求項1記載の検体監視システム。
【請求項10】
センサー故障を検出するためのコンピュータ実行方法であって、
少なくとも一部が使用者の体内に挿入された検体センサーを備えるセンサー制御装置により、検体レベルを示すセンサーデータを収集するステップと、
第1時点において、前記収集されたセンサーデータに基づいて変化率メトリックを計算するステップと、
第2時点において、前記収集されたセンサーデータに基づいて検体レベルの和のメトリックを計算するステップと、
前記変化率メトリックを第1閾値と比較し前記検体レベルの和のメトリックを第2閾値と比較するステップと、
前記変化率メトリックが前記第1閾値を超え、前記検体レベルの和のメトリックが前記第2閾値を超え、前記第1時点と第2時点の差が所定の時間差閾値未満であるとの判断に応答してセンサー故障の標示を生成するステップと
を含
み、
前記変化率メトリックは所定の時間窓内の前記収集されたセンサーデータに基づくものであり、
前記検体レベルの和のメトリックは、第2の所定の時間窓内の検体レベル測定値の合計 から成る、
方法。
【請求項11】
前記変化率メトリックは複数の変化率値の中心傾向である、請求項
10記載の方法。
【請求項12】
前記センサー制御装置の無線通信回路により前記収集されたセンサーデータを読取装置に送信するステップを更に含む請求項
10記載の方法。
【請求項13】
前記読取装置の表示器へ通知を出力するステップを更に含む請求項
12記載の方法。
【請求項14】
前記検体センサーを無効にするステップを更に含む請求項
10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書に記載された主題は、センサー故障検出のためのシステム、装置、及び方法に概ね関する。
【背景技術】
【0002】
人及び他の生きた動物の健康及び状態を監視するために巨大で成長する市場が存在する。人の物理的又は生理学的状態を記述する情報は、生活の質を補助し改善し、望ましくない状態を診断し処置するために無数のやり方で使用されうる。
【0003】
そのような情報を集めるのに使用される通常の装置は、生化学検体センサーなどの生理学的センサー、又は生物学的実体の化学的検体を検出できる装置である。生化学センサーには多くの形態があり、人間などの生物学的実体の一部を成すか又はそれにより生成される流体、組織、又は気体内の検体を検出するのに使用されうる。これらの検体センサーは体に着けて又は体内で使用されうるか、又は体から取った生物学的物質に付けて使用されうる。
【0004】
検体センサーはしばしば複雑でよく研究された構成を有するが、予想される寿命が終わる前に予期しない機能喪失が依然起こりやすいことがある。例えば、幾つかの例では、検体監視システムの体に付けたセンサーユニットの封止された部分に入る湿気が、センサーの電気信号路の途絶を引き起こしうる。これは、間欠スパイク、既存のデータ品質検査によりデータが不良とされること、観測される高い瞬間検体変化率、又は非常に高い検体レベル読取値のうち1つ以上を引き起こしうる。
【0005】
ある既知の方法がこれらの誤動作の幾つかを検出し取り除き、それらが検体監視システムにより提示される最終の検体レベル読取値に影響するのを防ぐことができる。しかし、これらの既存の方法は、全ての場合は防がないことがある。これら既知の方法がそのような誤動作を検出しないと、結果は患者にとって有害でありうる。例えば、高い検体レベル読取値を不正確に示す誤動作は、患者に誤って薬を服用させるか又は薬の用量を増やさせうるかも知れない。
【発明の概要】
【発明を解決するための手段】
【0006】
これら及び他の理由のために、検体センサーにおけるセンサー故障の検出向上の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検体センサーの故障検出のためのシステム、装置、及び方法の実施形態が本書に説明される。これらの実施形態は、1つ以上の計算されたメトリックとそれら計算されたメトリックに基づく1つ以上の閾値とに基づくセンサー故障検出を可能にする。幾つかの実施形態によれば、例えば所定の検体レベル変化率閾値及び所定の検体レベル和閾値を超えた時、疑われるセンサー故障の標示が生成されうる。これらの検出機構の1つ又は両方の組み合わせ及び/又はバリエーションを実行するためのアルゴリズム及び方法の多数の例とそれを実行するためのシステム及び装置の実施形態とが提供される。
【0008】
本書に記載された主題の他のシステム、装置、方法、特徴、及び利点が、下記の図及び詳細な説明を考察することで当業者に明らかとなろう。全てのそのような追加のシステム、方法、特徴、及び利点が説明に含まれ、本書に記載された主題の範囲内であり、添付の請求項により保護されるよう意図されている。請求項における特徴の明白な記述がない限り、実施形態のこれらの特徴は添付の請求項を限定すると決して解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本書に明記された主題の構造と動作の両方に関する詳細は、添付図を考察することで明白であるかも知れない。図中、類似の符号は類似の部品を指す。図中の部品は必ずしも一定の縮尺でなく、主題の原理を例示することに重点が置かれている。また、全ての図は概念を伝えるよう意図され、相対的大きさ、形状、及び他の詳細な属性が、厳密でも正確でもなく概略的に例示されている場合がある。
【
図1】生体内検体監視システムの実施形態を描く例示図である。
【
図3】センサー制御装置の実施形態のブロック図である。
【
図4】検体測定値の時間経過の一例を描くグラフである。
【
図5】検体センサーの故障検出のための方法の実施形態を描くフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本主題を詳細に説明する前に、本開示は記載された特定の実施形態に限定されず、従って、勿論変わりうることは理解されるべきである。本書で使用される用語は特定の実施形態だけを説明する目的のためであり、限定するように意図されていないことは理解されるべきである。本開示の範囲は添付の請求項によってのみ限定される。
【0011】
本書に記載された公報は本願の出願日前のそれらの開示のためだけに提供される。本書において、事前開示により本開示がそのような公報より日付が前である権利がないと認めていると解釈されるべきでない。また、提示された公開の日付は実際の公開の日付と異なる場合があり、公正に確認する必要があるかも知れない。
【0012】
概ね、本開示の実施形態は、体液内(例えば、皮下で間質液(ISF)又は血液内、真皮層の真皮液内など)の少なくとも1つの検体、例えばグルコースを検出するためのシステム、装置、及び方法と共に使用される。従って、多くの実施形態は生体内検体センサーを含み、そのセンサーは体の少なくとも1つの検体に関する情報を取得するためにその少なくとも一部が使用者の体内に位置するか位置しうるように構成される。しかし、本書に開示された実施形態は、全く非侵襲性のシステムを含む純粋に試験管内又は生体外検体監視システムに加え、試験管内能力を有する生体内検体監視システムと共に使用されうる。
【0013】
また、本書に開示した方法の各実施形態について、それらの実施形態のそれぞれを実行できるシステム及び装置が本開示の範囲内に含まれる。例えば、センサー制御装置の実施形態が開示され、これらの装置は1つ以上のセンサー、検体監視回路(例えば、アナログ回路)、持続性メモリ(例えば、命令群を記憶するための)、電源、通信回路、送信機、受信機、処理回路、及び/又はいずれの及び全ての方法ステップを実行できるか又は実行を可能にできるコントローラ(例えば、命令群を実行するための)を有しうる。これらのセンサー制御装置実施形態は、本書に記載したいずれの及び全ての方法のセンサー制御装置により実行されるステップを実行するのに使用されうる。
【0014】
同様に、1つ以上の送信機、受信機、持続性メモリ(例えば、命令群を記憶するための)、電源、処理回路、及び/又はいずれの及び全ての方法ステップを実行できるか又は実行を可能にできるコントローラ(例えば、命令群を実行するための)を有する読取装置の実施形態が開示される。読取装置のこれらの実施形態は、本書に記載したいずれの及び全ての方法の読取装置により実行されるステップを実行するのに使用されうる。
【0015】
信頼できるコンピュータシステムの実施形態も開示される。これらの信頼できるコンピュータシステムは1つ以上の処理回路、コントローラ、送信機、受信機、持続性メモリ、データベース、サーバー、及び/又はネットワークを含み、別々に位置するか、又は複数の地理的場所に亘って分散されうる。信頼できるコンピュータシステムのこれらの実施形態は、本書に記載したいずれの及び全ての方法の信頼できるコンピュータシステムにより実行されるステップを実行するのに使用されうる。
【0016】
本開示の複数の実施形態は、疑われるセンサー故障の検出に関して検体監視システムのコンピュータ実行能力を向上させるように構成される。幾つかの実施形態では、例えばセンサー制御装置は体に装着され、そのセンサー制御装置は生体内検体センサーを備える。実施形態の一態様によれば、検体センサーから受信されるセンサーデータは周期的に受信され、センサー制御装置の処理回路により検体メトリックが計算されうる。検体メトリックは、例えば検体レベル変化率及び/又は所定の時間窓内の検体レベルの合計を含みうる。検体メトリックに基づいて、処理回路は検体センサーの疑われるセンサー故障を検出できる。
【0017】
従って、本書に開示した実施形態は、センサー故障検出の従来の方法に比べて向上を示す。例えば、実施形態は、複数の閾値条件を使用して誤検出の数を低減することでより強固なセンサー故障検出方法を可能にしうる。結果として、本書に記載した実施形態は、特定の従来にないやり方で検体センサーデータを利用し、疑われるセンサー故障が検出された時、及び/又は検体センサーが交換されるべき時に使用者に適時通知することで検体監視システムの精度を向上できるシステム、装置、及び方法に向けられる。開示された実施形態の他の特徴及び利点を下記に更に説明する。
【0018】
しかし、実施形態を詳細に説明する前に、例えば生体内検体監視システム内に存在しうる装置の例、及びそれらの動作の例(それらの全てが本書に記載した実施形態と共に使用されうる)を説明することが第一に望ましい。
【0019】
検体監視システムの実施形態
様々な種類の検体監視システムがある。例えば、「継続的検体監視」システム(又は「継続的グルコース監視」システム)は、センサー制御装置から読取装置へ、使用者に促すことなく、例えばスケジュールに従って自動的に繰り返し又は継続的にデータを送信できる生体内システムである。別の例として「フラッシュ検体監視」システム(又は「フラッシュ・グルコース監視」システム又は単に「フラッシュ」システム)は、読取装置による走査又はデータ要求に応答して、例えば近距離無線通信(NFC)又は無線自動識別(RFID)プロトコルでセンサー制御装置からデータを転送できる生体内システムである。生体内検体監視システムも指穿刺較正の必要なく動作できる。
【0020】
生体内監視システムは、生体内に位置しながら使用者の体液に接触しその中に含まれる1つ以上の検体のレベルを検出するセンサーを含みうる。センサーは使用者の体に付けられ検体検出を可能にし制御する電子回路及び電源を含むセンサー制御装置の一部でありうる。センサー制御装置及びそのバリエーションは「センサー制御ユニット」、「体に付けた電子回路」装置又はユニット、「体に付けた」装置又はユニット、又は「センサーデータ通信」装置又はユニットなどとも呼ばれることがある。本書で使用するように、これらの用語は検体センサーを有する装置に限定されず、生体測定か非生体測定かに拘らず他の種類のセンサーを有する装置を含む。用語「体に付けた」は体に直接又は体に極めて接近して付けたどんな装置、例えば装着型装置(例えばメガネ、腕時計、リストバンド又はブレスレット、ネックバンド又はネックレスなど)も指す。
【0021】
生体内監視システムは、センサー制御装置から検出された検体データを受信する1つ以上の読取装置も含みうる。これらの読取装置は検出された検体データ又はセンサーデータを処理し及び/又は使用者に複数の形態で表示できる。これらの装置及びそのバリエーションは「携帯読取装置」、「読取装置」(又は単に「読取機」)、「携帯電子回路」(又はハンドヘルド)、「携帯データ処理」装置又はユニット、「データ受信機」、「受信機」装置又はユニット(又は単に「受信機」)、「中継」装置又はユニット、又は「遠隔」装置又はユニットなどと呼ばれることがある。パーソナルコンピュータなどの他の装置も生体内監視システム及び試験管内監視システムと共に使用されるか又はそれらに組み込まれてきた。
【0022】
生体内検体監視システムは、体の外(又はむしろ生体外)の生物試料に接触し使用者の体液を運ぶ検体試験片を受け取るための入口を有する計量装置を通常含む体外システムと区別されうる。その体液は使用者の検体レベルを求めるために分析されうる。上記のように、本書に記載した実施形態は、生体内システム、体外システム、及びそれらの組合せと共に使用されうる。
【0023】
本書に記載した実施形態は、1つ以上の任意の数の異なる検体に関する情報を監視し及び/又は処理するのに使用されうる。監視されうる検体は、これらに限定されないが塩化アセチル、アミラーゼ、ビリルビン、コレステロール、絨毛性性腺刺激ホルモン、グリコシル化ヘモグロビン(HbAlc)、クレアチンキナーゼ(例えば、CK-MB)、クレアチン、クレアチニン、DNA、フルクトサミン、グルコース、グルコース誘導体、グルタミン、成長ホルモン、ホルモン、ケトン、ケトン体、乳酸塩、過酸化物、前立腺特異抗原、プロトロンビン、RNA、甲状腺刺激ホルモン、及びトロポニンを含む。薬、例えば抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、バンコマイシンなど)、ジギトキシン、ジゴキシン、乱用薬物、テオフィリン、ワルファリンの濃度も監視してよい。2つ以上の検体を監視する実施形態では、検体は同時又は異なる時に監視されてよい。
【0024】
図1は、有線又は無線であり一方向又は双方向でありうるローカル通信路(又はリンク)140を通じて互いに通信するセンサー制御装置102及び読取装置120を有する生体内検体監視システム100の実施形態を描く例示図である。通信路140が無線である実施形態では、近距離無線通信(NFC)プロトコル、RFIDプロトコル、Bluetooth(登録商標)又はBluetooth Low Energyプロトコル、Wi‐Fiプロトコル、所有者がいるプロトコルなど(本願出願日に存在した通信プロトコル又はその後それらを基に開発されたプロトコルを含む)を使用できる。
【0025】
読取装置120もコンピュータシステム170(例えば、局所又は遠隔コンピュータシステム)と通信路(又はリンク)141を通じて、またインターネット又はクラウドなどのネットワーク190と通信路(又はリンク)142を通じて有線、無線、又は組み合わせた通信ができる。ネットワーク190との通信は、ネットワーク190内の信頼できるコンピュータシステム180との通信、又はネットワーク190を通りコンピュータシステム170への通信路(又はリンク)143を介した通信を含みうる。通信路141、142、143は無線、有線、又は両方で、一方向又は双方向であってもよく、Wi‐Fiネットワーク、ローカルエリア・ネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、インターネット、又は他のデータネットワークなどの電気通信網の一部であってもよい。幾つかの場合、通信路141及び142は同じ通信路でありうる。
【0026】
通信路141、142、143を通じた全ての通信は暗号化され、センサー制御装置102、読取装置120、コンピュータシステム170、及び信頼できるコンピュータシステム180はそれぞれ送信される通信を暗号化し受信された通信を復元できる。
【0027】
本書に記載したシステム、装置、及び方法の実施形態と共に使用するのに適した装置102及び120に類似の装置及び生体内検体監視システムの他の構成要素は、米国特許出願公開第2011/0213225号明細書(225公報)に記載されており、その全体を本明細書に引用する。
【0028】
センサー制御装置102は生体内検体監視回路及び電源を収容するハウジング103を含みうる。この実施形態では、生体内検体監視回路は粘着性パッチ105を通って延びハウジング103から突出する検体センサー104と電気的に結合される。粘着性パッチ105は使用者の体の皮膚表面に取り付けるための粘着層(不図示)を含む。体への取り付けの他の形態が粘着性に加えて又は代えて使用されてもよい。
【0029】
センサー104は使用者の体内に少なくとも部分的に挿入されるのに適合し、体内でその使用者の体液(例えば、皮下液、真皮液、又は血液)と流体接触し、生体内検体監視回路と共に使用されて使用者の検体関連データを測定する。センサー104及びどんな付随するセンサー制御電子回路も任意の所望のやり方で体に適用できる。例えば、挿入器(不図示)が検体センサー104の全体又は一部を使用者の皮膚の外面を通して入れ使用者の体液と接触するように配置するのに使用されうる。そうする時、挿入器は粘着性パッチ105が付いたセンサー制御装置102を皮膚上に配置できる。他の実施形態では、挿入器はセンサー104を先ず配置し、次に付随するセンサー制御電子回路をセンサー104と後で手動か機械装置を用いて結合できる。挿入器の例は米国特許出願公開第2008/0009692号、第2011/0319729号、第2015/0018639号、第2015/0025345号、及び第2015/0173661号各明細書に記載されており、それら全ての全体を本明細書に引用する。
【0030】
生データを使用者の体から集めた後、センサー制御装置102はアナログ信号調整をデータに適用しそのデータを調整された生データのデジタル形式に変換する。幾つかの実施形態では、センサー制御装置102はデジタル生データを使用者の測定された生体メトリック(例えば、検体レベル)及び/又はそれに基づく1つ以上の検体メトリックを表す形式にアルゴリズムにより加工できる。例えば、センサー制御装置102は、本書に記載した方法ステップのいずれもアルゴリズムにより実行して検体センサーのセンサー故障を検出するのに利用される検体メトリックを計算する処理回路を含みうる。センサー制御装置102は次に計算された検体メトリック、センサー故障の標示及び/又は加工されたセンサーデータを符号化し無線で読取装置120へ通信でき、読取装置120は使用者へのデジタル表示のために、受信したデータを形式変更するか又は図表処理できる。他の実施形態では、センサーデータを別の装置(例えば、読取装置120)に無線で通信するのに加えて又は代わりに、センサー制御装置102は表示の準備ができるように最終形式のデータを図表処理し、そのデータをセンサー制御装置102の表示器に表示できる。幾つかの実施形態では、最終形式の生体メトリックデータ(図表処理の前)は本システム(例えば、糖尿病監視システムに組み込まれる)により、使用者への表示のための処理なしで使用される。
【0031】
更に他の実施形態では、調整された生デジタルデータは他の装置、例えば読取装置120への送信のために符号化されうる。読取装置120はそのデジタル生データを使用者の測定された生体メトリック及び/又はそれに基づく1つ以上の検体メトリックを表す形式(例えば、使用者への表示に適する形式)にアルゴリズムにより加工する。読取装置120は本書に記載した方法ステップのいずれもアルゴリズムにより実行して検体センサーの故障を検出するのに利用される検体メトリックを計算する処理回路を含みうる。このアルゴリズムにより加工されたデータを使用者へのデジタル表示のために形式変更するか又は図表処理できる。
【0032】
他の実施形態では、センサー制御装置102及び読取装置120はデジタル生データをアルゴリズム処理及び表示のために別のコンピュータシステムに送信する。
【0033】
読取装置120は、情報を使用者へ出力し及び/又は使用者から入力を受け付けるために表示器122と、データ、コマンドを入力するか他のやり方で読取装置120の動作を制御するために任意選択の入力部121、例えばボタン、作動装置、タッチ感知スイッチ、容量性スイッチ、圧力感知スイッチ、ジョグホイールなどとを含みうる。ある実施形態では、表示器122と入力部121は単一の構成要素に一体化されてもよい。この場合、例えば、タッチスクリーンユーザーインターフェースのように表示器は表示器上の物理的接触タッチの存在及び位置を検出できる。ある実施形態では、読取装置120の入力部121はマイクロフォンを含み、読取装置120はマイクロフォンから受け取った音声入力を分析し読取装置120の機能及び動作を音声コマンドにより制御するように構成されたソフトウェアを含んでもよい。ある実施形態では、読取装置120の出力部は情報を可聴信号として出力するためのスピーカー(不図示)を含む。類似の音声応答部品、例えばスピーカー、マイクロフォン、及び音声駆動信号を生成し処理し記憶するソフトウェアルーチンは、センサー制御装置102に含まれてもよい。
【0034】
読取装置120はまた、コンピュータシステム170、センサー制御装置102などの外部装置との有線データ通信のための1つ以上のデータ通信ポート123を含みうる。データ通信ポートの例はUSBポート、ミニUSBポート、USBタイプCポート、USBマイクロA及び/又はマイクロBポート、RS232ポート、イーサネットポート、ファイヤーワイヤーポート、又は対応したデータケーブルに接続するように構成された他の同様のデータ通信ポートを含む。読取装置120はまた、一体化された又は取り付け可能な体外グルコース計器を含んでよい。この計器は体外血液グルコース測定を行うための体外グルコース試験片を受け取る体外試験片ポート(不図示)を含む。
【0035】
読取装置120は、センサー制御装置102から無線で受信した測定された生体メトリックデータを表示でき、警報、警告通知、グルコース値などを出力するように構成されうる。その出力は視覚的、可聴の、触覚の、又はそれらの任意の組み合わせであってよい。更なる詳細及び他の表示実施形態は、例えば米国特許出願公開第2011/0193704号明細書に記載されており、その全体を本明細書に引用する。
【0036】
読取装置120は測定されたデータ及び/又は検体メトリックをセンサー制御装置102からコンピュータシステム170又は信頼できるコンピュータシステム180へ転送するデータ管として機能しうる。ある実施形態では、センサー制御装置102から受信したデータは、システム170、180、又はネットワーク190にアップロードする前に読取装置120の1つ以上のメモリに(永久に又は一時的に)記憶されてよい。
【0037】
コンピュータシステム170はパーソナルコンピュータ、サーバー端末、ラップトップコンピュータ、タブレット、又は他の適切なデータ処理装置であってもよい。コンピュータシステム170はデータ管理、分析、及び検体監視システム100内の構成要素との通信のためのソフトウェアであっても又は含んでもよい。コンピュータシステム170は、センサー制御装置102により測定された生体メトリックデータを表示及び/又は分析するために使用者又は医療従事者により使用されうる。幾つかの実施形態では、センサー制御装置102は生体メトリックデータを、読取装置120などの仲介なしにコンピュータシステム170に直接、又はインターネット接続を使って間接的に(任意選択で読取装置120に先ず送信することなく)通信できる。コンピュータシステム170の動作及び使用は本書に引用された225公報に更に記載されている。検体監視システム100はまた、データ処理モジュール(不図示)と共に動作するように構成されうる。これも引用された225公報に記載されている。
【0038】
信頼できるコンピュータシステム180は、物理的に又は実質的に安全な接続を介してセンサー制御装置102の製造者又は販売者に所有され、使用者の生体メトリックデータの安全な保管のため及び/又は使用者の測定データを分析するためのデータ分析プログラム(例えば、ウェブブラウザを介してアクセス可能な)を実行するサーバーとしてセンサー制御装置102の認証を実行するのに使用されうる。
【0039】
読取装置の実施形態
読取装置120は携帯通信装置、例えば専用の読取装置(センサー制御装置102及び任意選択でコンピュータシステム170との通信用に構成され携帯電話通信機能のない)、又はこれらに限定されないがWi‐Fi又はインターネット可能スマートフォン、タブレット、又は携帯端末(PDA)を含む携帯電話であってもよい。スマートフォンの例は、Windows(登録商標)オペレーティングシステム(OS)、Android(商標)OS、iPhone(登録商標)OS、Palm(登録商標)WebOS(商標)、Blackberry(登録商標)OS、又はSymbian(登録商標)OSに基づく携帯電話であって、インターネット接続及び/又はローカルエリア・ネットワーク(LAN)を通じたデータ通信のためのデータネットワーク接続機能を有する携帯電話を含みうる。
【0040】
読取装置120はまた、携帯スマート装着可能電子機器組立体、例えば使用者の眼を覆う又は隣接して装着される光学組立体(例えば、携帯通信装置であるGoogleメガネなどのスマートメガネ)として構成されうる。この光学組立体は使用者の検体レベルに関する情報(本書で説明する)を使用者に表示し、同時に使用者の全体視野を遮るのを最小限にするよう使用者が表示器を通して見るのを許す透明な表示器を有しうる。光学組立体はスマートフォンと類似の無線通信ができてもよい。装着可能電子機器の他の例は、使用者の手首、首、頭、胸などの周り又は近傍に装着される装置(例えば、腕時計、ネックレス、ヘッドバンド、帽子など)を含む。
【0041】
図2はスマートフォンとして構成された読取装置120の実施形態のブロック図である。ここで、読取装置120は入力部121、表示器122、及び1つ以上のプロセッサ、マイクロプロセッサ、コントローラ、及び/又はマイクロコントローラ(それぞれ個別チップか又は複数のチップに分散されてもよい)を含みうる処理回路206を含む。ここで、処理回路206は内蔵メモリ203を有する通信プロセッサ202及び内蔵メモリ205を有するアプリケーションプロセッサ202を含む。読取装置120はRFアンテナ209と結合されたRF通信回路208、メモリ210、1つ以上の関連するアンテナ214を有する多機能回路212、電源216、電力管理回路218、及び時計219を更に含む。
図2はスマートフォン内に存在する通常のハードウェア及び機能の簡略化した図であり、他のハードウェア及び機能(例えば、コーデック、ドライバ、グルーロジック)も含まれうることを当業者は容易に認識するであろう。
【0042】
通信プロセッサ202はRF通信回路208と接続しアナログ・デジタル変換、符号化及び復号、デジタル信号処理、及び音声、映像、及びデータ信号をRF通信回路208への提供に適切なフォーマット(例えば、同相及び直角位相)に変換するのを可能にする他の機能を実行できる。RF通信回路は次にそれらの信号を無線で送信できる。通信プロセッサ202はまた、RF通信回路208と接続し 無線送信を受信しデジタルデータ、音声、及び映像に変換するのに必要な逆機能を実行できる。RF通信回路208は送信機及び受信機(例えば、送受信機として一体化される)及び関連する符号化ロジックを含みうる。
【0043】
アプリケーションプロセッサ204はオペレーティングシステム及び読取装置120に存在するどんなソフトウェアアプリケーションも実行し、映像及びグラフィックを処理し、RFアンテナ209を通じて送受信される通信の処理に関連しない他の機能を実行するのに適合しうる。スマートフォンオペレーティングシステムは読取装置120上の複数のアプリケーションと連携して動作する。複数のアプリケーション(「ユーザーインターフェースアプリケーション」としても知られた)は読取装置120上で同時に実行されることができ、糖尿病監視システムに関連する1つ以上のアプリケーションと、このようなシステムに関連しない他の頻繁に使用されるアプリケーション、例えば電子メール、カレンダー、天気、スポーツ、ゲームなどとを含んでもよい。例えば、検出された検体レベルを示すデータ及び読取装置により受信された体外血液検体測定値は読取装置120のメモリ210に存在するユーザーインターフェースアプリケーションに安全に通信されうる。このような通信は、例えば携帯アプリケーションのコンテナ化又はラッピング技術を使って安全に実行されうる。
【0044】
メモリ210は読取装置120内に存在する様々な機能ユニットの1つ以上により共用されるか、又は機能ユニットの2つ以上に分散されうる(例えば、異なるチップ内に存在する別々のメモリ)。メモリ210はまた、それ自体が別チップであってもよい。メモリ203、205、210は持続性であり、揮発性(例えば、RAMなど)及び/又は不揮発性メモリ(例えば、ROM、フラッシュメモリ、F‐RAMなど)でありうる。
【0045】
多機能回路212は1つ以上のチップ及び/又は部品(例えば、送信機、受信機、送受信機、及び/又は他の通信回路)として実現され、例えばセンサー制御装置102との適切なプロトコル(例えば、Wi‐Fi、Bluetooth、Bluetooth Low Energy、近距離無線通信(NFC)、無線自動識別(RFID)、所有者がいるプロトコルなど)による局所無線通信、読取装置120の地理的位置の特定(例えば、全地球測位システム(GPS)ハードウェア)などの他の機能を実行しうる。1つ以上の他のアンテナ214が必要に応じて多機能回路212と関連して様々なプロトコル及び回路と共に動作する。
【0046】
電源216は、再充電可能又は使い捨て電池であってよい1つ以上のバッテリーを含みうる。電力管理回路218はバッテリー充電及び電源監視を制御し、電力を増加させ、直流変換などを実行しうる。
【0047】
読取装置120はまた、薬(例えば、インスリンなど)送達装置を含むか、又は一体化され、共通のハウジングを共有しうる。このような薬送達装置の例は 体内に留まり多時間又は複数日に亘る注入を可能にする管を有する薬剤ポンプ(例えば、基礎及びボーラスインスリンの送達のための装着可能なポンプ)を含みうる。読取装置120は、薬剤ポンプと結合された時、薬を収納する貯留容器、送管に接続されうるポンプ、及び注入管を含みうる。ポンプは薬を貯留容器から送管を通って糖尿病患者の体内へ挿入された管を通って送り込むことができる。読取装置120に含まれ(又は一体化され)うる薬送達装置の他の例は、送達毎に皮膚を突き通しその後取り外される携帯注入器(例えば、インスリンペン)を含む。読取装置120は、携帯注入器と結合された時、注射針、薬を運ぶカートリッジ、送達される薬の量を制御するためのインターフェース、及び注入を起こさせる作動装置を含みうる。この装置は薬を使い果たすまで繰り返し使用され、使い果たした時、結合された装置は捨てられうるか、又はカートリッジを新しいものと交換でき、結合された装置は繰り返し再使用できる。針は各注入後交換できる。
【0048】
結合された装置は閉ループシステムの一部として機能するか(例えば、動作のために使用者の介入を必要としない人工すい臓システム)、又は半閉ループシステムの一部として機能しうる(例えば、用量の変更を確認するなどまれに動作のために使用者の介入を必要とするインスリン・ループシステム)。例えば、糖尿病患者の検体レベルはセンサー制御装置102により繰り返し自動的に監視され、その検体レベルは読取装置120へ通信されうる。糖尿病患者の検体レベルを制御する適切な薬剤用量が自動的に決定され、その後糖尿病患者の体に送達されうる。ポンプ及び送達されるインスリン量を制御するためのソフトウェア命令群は読取装置120のメモリに記憶され、読取装置の処理回路により実行されうる。これらの命令は、センサー制御装置102から直接又は間接的に得た検体レベル測定値に基づいて薬剤送達量及び継続時間(例えば、ボーラス注入及び/又は基礎注入プロファイル)の計算もさせうる。幾つかの実施形態では、センサー制御装置102が薬剤用量を決定し、読取装置120に通信してもよい。
【0049】
センサー制御装置の実施形態
図3は検体センサー104と、最終結果データを使用者への表示に適するようにするための処理機能の大部分を有しうるセンサー電子回路250(検体監視回路を含む)とを有するセンサー制御装置102の実施形態を描くブロック図である。
図3において、カスタム特定用途集積回路(ASIC)でありうる単一の半導体チップ251が描かれている。アナログフロントエンド(AFE)252、電力管理(又は制御)回路254、プロセッサ256、及び通信回路258(通信プロトコルに応じて送信機、受信機、送受信機、受動回路などとして実現されうる)を含む高レベル機能ユニットがASIC251内に示されている。この実施形態では、AFE252とプロセッサ256両方が検体監視回路として使用されるが、他の実施形態では、どちらかの回路が検体監視機能を実行しうる。プロセッサ256は1つ以上のプロセッサ、マイクロプロセッサ、コントローラ、及び/又はマイクロコントローラ(それぞれ個別チップか又は複数のチップに分散されてもよい)を含みうる。
【0050】
メモリ253もASIC251内に含まれ、ASIC251内に存在する様々な機能ユニットにより共用されるか、又はそれらの2つ以上に分散されうる。メモリ253はまた、別のチップであってもよい。メモリ253は持続性であり、揮発性及び/又は不揮発性メモリであってよい。この実施形態では、ASIC251は、コイン電池などであってよい電源260と結合される。AFE252は生体内検体センサー104と接続し、それから測定データを受信し、プロセッサ256へデジタル形式で出力する。幾つかの実施形態では、次にプロセッサ256は本書に記載したどのやり方でも処理できる。このデータは、例えば常駐ソフトウェアアプリケーションがデータを表示するために最小の更なる処理を必要とする場合、次にアンテナ261を介して読取装置120(不図示)に送信するために通信回路258に提供されうる。アンテナ261はアプリケーション及び通信プロトコルの必要に応じて構成されうる。アンテナ261は、例えばプリント基板(PCB)配線アンテナ、セラミックアンテナ、又は個別金属アンテナであってもよい。アンテナ261は単極アンテナ、双極アンテナ、Fタイプアンテナ、ループアンテナなどとして構成されうる。
【0051】
情報は、センサー制御装置102又は読取装置120の主導でセンサー制御装置102から第2装置(例えば、読取装置120)へ通信されてよい。例えば、検体情報が利用できる時、又はスケジュールに従って(例えば、約1分毎、約5分毎、約10分毎など)(この場合、情報は後で通信するためにセンサー制御装置102のメモリに記憶又は記録されうる)、情報はセンサー制御装置102により自動的及び/又は繰り返し(例えば、連続して)通信されうる。情報は第2装置からの要求の受信に応答してセンサー制御装置102から送信されうる。この要求は自動要求、例えばスケジュールに従って第2装置より送信された要求であっても、又は使用者の主導で生成された要求(例えば、臨時の又は手動要求)であってもよい。幾つかの実施形態では、データの手動要求はセンサー制御装置102の「スキャン」又は装置102からの「オンデマンド」データ転送と呼ばれる。幾つかの実施形態では、第2装置はポーリング信号又はデータパケットをセンサー制御装置102に送信でき、装置102は各ポール(又はある時間間隔で発生するポール)をデータ要求として扱い、データが利用可能であれば、そのデータを第2装置に送信しうる。多くの実施形態では、センサー制御装置102と第2装置の間の通信は安全であるが(例えば、暗号化され及び/又は認証された装置間)、幾つかの実施形態では、データはセンサー制御装置102から安全対策のない方法で、例えば範囲内の全ての装置への一斉送信として送信されうる。
【0052】
異なるタイプ及び/又は形式及び/又は量の情報が各通信の一部として送信されてもよい。情報はこれらに限定されないが、1つ以上の現在センサー測定値(例えば、読取りの開始時に時間的に対応するごく最近得られた検体レベル情報)、所定の時間に亘る測定されたメトリックの変化率、メトリックの変化率の増減率(変化率の加速)、又は特定の読取りの前に取得されセンサー制御装置102のメモリに記憶されたメトリック情報に対応する履歴メトリック情報を含む。
【0053】
リアルタイム情報、履歴情報、変化率情報、変化率の増減率(例えば、加速又は減速)情報の一部又は全ては読取装置120へ特定の通信又は送信時に送られてよい。ある実施形態では、読取装置120へ送られる情報のタイプ及び/又は形式及び/又は量は予めプログラムされ及び/又は不変であっても(例えば、製造時に予め設定される)、又は予めプログラムされず及び/又は不変でもなく稼働時一回以上選択可能及び/又は変更可能(例えば、システムのスイッチなどを作動させることで)であってもよい。従って、ある実施形態では、読取装置120は現在の(リアルタイム)センサー検出検体値(例えば、数値形式の)、現在の検体変化率(例えば、現在の率を示すためにある方向に向いた矢印などの検体率指標形式の)、及びセンサー制御装置102により取得されそのメモリに記憶されたセンサー読取値に基づく検体傾向履歴データ(例えば、図表線の形式の)を出力しうる。更に、皮膚又はセンサー温度読取値又は測定値が任意選択の温度センサー257により収集されてもよい。これらの読取値又は測定値は(個々に又は時間に亘る合計された測定値として)センサー制御装置102から別の装置(例えば、読取装置120)に通信されうる。しかし、温度読取値又は測定値は、これらを使用者に実際に表示する代わりに又は加えて、読取装置120により実行されるソフトウェアルーチンで使用し使用者への検体測定値出力を補正又は補償してもよい。
【0054】
センサー故障検出のためのシステム、装置、及び方法の実施形態
検体センサーのセンサー故障の特徴付けの例
生体内検体センサーは生体内の1つ以上の特性を検出するように構成されうる。1つの特性は、例えば検体レベル(例えば、グルコースレベル)であり、これは体液又は体気体内の検体濃度の程度である。電気化学センサーの場合、体液内の検体の存在はセンサーに電流(電流測定)又は電気量(電量)の形態の応答を生成させうる。他の種類のセンサーの場合、応答は異なる形態、例えば光子強度(例えば、光学光)でありうる。検体センサーの応答性は、これらに限定されないがセンサー挿入箇所における血管プロセス、生物付着、繊維カプセル化、好中球による障害、又は他の免疫学的反応を含む様々な要因によって徐々に悪影響を受けうる。
【0055】
図4を参照すると、グラフ400は生体内検体センサーからの検体測定値の時間経過の一例を描く。特に、上側プロット405は検体レベル読取値の時間経過を示し、下側プロット410は同じ期間に亘る変化率を示す。グラフ400によれば、黒長方形415は漏れ関連センサー故障が発生した期間における検体測定値を示す。
図4から分かるように、長方形415により示された期間では、検体レベル読取値及び変化率の両方が比較的高い。
【0056】
センサー故障検出のために検体レベルメトリック及び閾値を使用する実施形態
検体レベルメトリック及び閾値に基づくセンサー故障検出のための方法の実施形態を説明する。その前に、本書に記載された方法例の複数のステップのどの1つ以上もソフトウェア命令群として
図1に関して説明したセンサー制御装置、読取装置、遠隔装置、又は信頼できるコンピュータシステムの持続性メモリに記憶されうることは当業者により理解されるであろう。記憶された命令群は、実行されると、関連する装置又は計算システムの処理回路に本書に記載された方法例のどの1つ以上のステップも実行させうる。多くの実施形態では、検体メトリックの計算及び/又はセンサー故障の判断を含む本書に記載された方法ステップのどの1つ以上もリアルタイム・センサーデータ、ほぼリアルタイム・センサーデータ、又は履歴センサーデータを使用して実行されうることも当業者により理解されるであろう。
【0057】
命令群は単一の装置(例えば、センサー制御装置又は読取装置)の持続性メモリに記憶されるか、或いは地理的に分散された位置にありうる複数の個別装置に亘って分散されうる(例えば、クラウドプラットフォーム)ことも当業者により理解されるであろう。同様に、当業者は本書に開示された実施形態において
図1に示すような計算装置の表示は物理的装置と仮想装置(又は「仮想マシン」)の両方を含むように意図されていることを認識するであろう。
【0058】
図5は検体センサーのセンサー故障検出のための方法500の実施形態を描くフロー図である。ステップ505では、グルコースレベルなどの検体レベルを示すセンサーデータを検体センサーから受信する。
図1に関して説明したように、検体センサーは使用者の体内に挿入された少なくとも部分を含みうる。ステップ510では、最近のセンサーデータから変化率が計算される。幾つかの実施形態では、特定の時間kにおける第1変化率V1は式:V1(k)=[g(k)-g(k-T1)]/T1に従って計算されうる。gは検体レベル、T1は単位時間である。
【0059】
実施形態によれば、ステップ510では、検体センサーから受信したセンサーデータについて複数の変化率を計算しうる。一例として、4つの変化率がステップ510で計算される場合、第2変化率V2は式:V2(k)=[g(k)-g(k-T2)]/T2に従って計算されうる。同様に、V3(k) 及びV4(k)の変化率は、それぞれ式V3(k)=[g(k)-g(k-T3)]/T3及びV4(k)=[g(k)-g(k-T4)]/T4を使って計算されうる。当業者は他の数の変化率(例えば、5、6、7など)を計算でき完全に本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0060】
図5のステップ515では、ステップ510で計算された変化率が所定の変化率閾値と比較される。実施形態によれば、所定の変化率閾値は計算された変化率の絶対値と比較されうる。所定の変化率閾値を超えていなければ、方法500はステップ505に戻る。
【0061】
図5の方法500を依然参照すると、計算された変化率のいずれかが所定の変化率閾値を超えると、ステップ520で所定の時間窓内の検体レベル値の合計S(k)が式:S(k)=g(k)+g(k-T1)に従って計算される。gは検体レベル、T1は単位時間である。
【0062】
図5のステップ525では、検体レベル値の計算された合計が所定の合計ベース閾値と比較される。検体レベルの計算された合計が所定の合計ベース閾値を超えていなければ、方法500はステップ505に戻る。検体レベルの計算された合計が所定の合計ベース閾値を超えていれば、ステップ530でセンサー故障の標示が生成される。実施形態によれば、センサー故障の標示が生成されると、通知が使用者に出力されうる。幾つかの実施形態では、例えば、通知はセンサー故障が検出されたという使用者への視覚的及び/又は聴覚的標示であってもよい。他の実施形態では、通知はグラフィカル・ユーザーインターフェースを介して使用者に表示され、例えば検体センサーを取り除く及び/又は交換する要求でありうる。幾つかの実施形態では、ステップ535でセンサーは無効にされる。
【0063】
当業者は、幾つかの実施形態では、方法500は先ず検体レベルの合計を計算し、計算された合計を所定の合計ベース閾値と比較し(ステップ520、525)、その後変化率を計算しその変化率を所定の変化率閾値と比較する(ステップ510、515)ことで実行されうることを理解するであろう。
【0064】
他の実施形態では、検体レベルの合計及び変化率が同時に又はほぼ同時に計算されそれぞれの閾値と比較されうる。両方の閾値を超えると、ステップ530でセンサー故障の標示が生成されることを当業者は理解するであろう。
【0065】
別の実施形態によれば、ステップ515での率ベース検査が時間k1で実行され、ステップ525での合計ベース検査が時間k2で実行されうる。2つの条件が満たされると、k1とk2の間の時間差が計算される。計算された時間差が所定の時間差閾値内であれば、センサー故障の標示がステップ530で生成される。
【0066】
方法500の別の実施形態によれば、ステップ515での率ベース検査は、評価時k1の周りの時間窓内の全ての可能な変化率の任意の組み合わせから評価されうる。例えば、時点k1、k1-T1、及びk1-T3を考えると、絶対変化率は対(k1,k1-T1)、(k1-T1,k1-T2)、(k1-T2,k1-T3)に基づいて計算されうる。幾つかの実施形態では、絶対変化率はまた、任意の非隣接組み合わせ、例えば(k1,k1-T2)に基づいて計算されうる。他の時間インスタンスの変化率が所定の変化率閾値との比較のために利用されうること及び完全に本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0067】
図5を依然参照すると、方法500の別の実施形態によれば、ステップ515で最も高い絶対変化率を所定の変化率閾値と比較する代わりに、複数の変化率の中心傾向(例えば、平均、中央値、又は最頻値)を所定の変化率閾値と比較できる。幾つかの実施形態では、中心傾向値は検体センサーから受信したセンサーデータの場合、絶対変化率に基づきうる。
【0068】
本書に開示した方法の各実施形態について、これらの実施形態のそれぞれを実行できるシステム及び装置は本開示の範囲内に含まれる。例えば、センサー制御装置の実施形態が開示され、これらの装置は1つ以上の検体センサー、検体監視回路(例えば、アナログ回路)、メモリ(例えば、命令群を記憶するための)、電源、通信回路、送信機、受信機、時計、カウンタ、タイム、温度センサー、いずれの及び全ての方法ステップを実行できるか又は実行を可能にできるプロセッサ(例えば、命令群を実行するための)を有しうる。これらのセンサー制御装置実施形態は使用され、本書に記載したいずれの及び全ての方法のセンサー制御装置により実行されるステップを実行するのに使用されうる。同様に、読取装置の実施形態が開示され、これらの装置は1つ以上のメモリ(例えば、命令群を記憶するための)、電源、通信回路、送信機、受信機、時計、カウンタ、タイム、及びいずれの及び全ての方法ステップを実行できるか又は実行を可能にできるプロセッサ(例えば、命令群を実行するための)を有しうる。これらの読取装置の実施形態は使用され、本書に記載したいずれの及び全ての方法の読取装置により実行されるステップを実行するのに使用されうる。コンピュータ装置及びサーバーの実施形態が開示され、これらの装置は1つ以上のメモリ(例えば、命令群を記憶するための)、電源、通信回路、送信機、受信機、時計、カウンタ、タイム、及びいずれの及び全ての方法ステップを実行できるか又は実行を可能にできるプロセッサ(例えば、命令群を実行するための)を有しうる。これらの読取装置の実施形態は使用され、本書に記載したいずれの及び全ての方法の読取装置により実行されるステップを実行するのに使用されうる。
【0069】
記載された主題に係る動作を実行するためのコンピュータプログラム命令群は、Java、JavaScript、Smalltalk、C++、C#、Transact‐SQL、XML、PHPなどのオブジェクト指向プログラミング言語と、Cプログラミング言語又は類似のプログラミング言語などの従来の手続き形プログラミング言語とを含む1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されてもよい。プログラム命令群は使用者の計算装置上で全て、又は使用者の計算装置上で部分的に、独立したソフトウェアパッケージとして、又は使用者の計算装置上で部分的にかつ遠隔の計算装置上で部分的に、又は遠隔の計算装置又はサーバー上で全て実行されてよい。後者の場合、遠隔の計算装置は使用者の計算装置に、ローカルエリア・ネットワーク(LAN)又は広域ネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを介して接続されてもよい、又は接続は外部コンピュータにされてもよい(例えば、インターネット・サービスプロバイダーを使ってインターネットを介して)。
【0070】
なお、本明細書で提供されたいずれの実施形態もそれに関して説明した全ての特徴、要素、構成要素、機能、及びステップは、他のいずれの実施形態のそれらと自由に組み合わせ及び置き換えが可能であるように意図されている。ある特徴、要素、構成要素、機能、又はステップが1つの実施形態のみに関して説明された場合、そうでないと明記しない限り、その特徴、要素、構成要素、機能、又はステップは本書に記載された他の全ての実施形態と共に使用できうることは理解されるべきである。従って、この段落は、複数の異なる実施形態の特徴、要素、構成要素、機能、及びステップを組み合わせるか、又は1つの実施形態の特徴、要素、構成要素、機能、及びステップを別の実施形態のそれらと置き換える請求項の導入のための前出及び裏付けとして、そのような組み合わせ又は置き換えが可能であると本説明の特定の例に明記されていなくても、働く。全てのそのような組み合わせ及び置き換えは許容されると当業者が容易に認識するであろうことを考えると、全ての可能な組み合わせ及び置き換えを明記することは過度な負担になることは明らかに認められる。
【0071】
本書に開示した実施形態がメモリ、記憶装置、及び/又はコンピュータ読取可能媒体を含む又はと共に動作する限り、そのメモリ、記憶装置、及び/又はコンピュータ読取可能媒体は持続性である。従って、メモリ、記憶装置、及び/又はコンピュータ読取可能媒体が1つ以上の請求項に含まれる場合、そのメモリ、記憶装置、及び/又はコンピュータ読取可能媒体は単に持続性である。
【0072】
本明細書及び添付の請求項において使用されるように、文脈からそうでないと明らかに指示されない限り、英語の単数形「a」、「an」、及び「the」は複数の指示対象を含む。
【0073】
実施形態は様々な変形および代替の形態が可能であるが、それらの特定の例を図示し本明細書に詳細に説明した。しかし、これらの実施形態は開示された特定の形態に限定されず、それどころか、これらの実施形態は、本開示の要旨に含まれる全ての変形、等価物、及び代替物を含むと理解されるべきである。また、実施形態のいずれの特徴、機能、ステップ、又は要素も請求項に記載又は追加されることがあり、その範囲内にない特徴、機能、ステップ、又は要素によって特許請求の範囲を定義する負の限定も記載されることがある。
【符号の説明】
【0074】
102 センサー制御装置
103 ハウジング
104 検体センサー
105 粘着性パッチ
120 読取装置
121 入力部
122 表示器
123 データ通信ポート
140、141、142 通信路
170 コンピュータシステム
180 信頼できるコンピュータシステム
202 通信プロセッサ
203、205、210 メモリ
204 アプリケーションプロセッサ
208 RF通信回路
212 多機能回路
216 電源
218 電力管理回路
219 時計
250 センサー電子回路
252 アナログフロントエンド
260 電源