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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20240626BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240626BHJP
   B01J 29/072 20060101ALI20240626BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20240626BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F01N3/28 Q
B01D53/94 222
B01J29/072 A
F01N3/022 B
F01N3/08 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021550627
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035509
(87)【国際公開番号】W WO2021065577
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2019183019
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】松波 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】萱田 佑斗
(72)【発明者】
【氏名】安藤 竜児
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/132678(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/002052(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/132095(WO,A1)
【文献】特表2017-518874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/94
B01J 29/072
F01N 3/022
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス流路中に配置され、希薄燃焼エンジンから排出される排ガス中のCO、HC、NO及びNHよりなる群から選択される少なくとも1種以上を酸化する1以上の酸化触媒と、尿素成分及びアンモニア成分よりなる群から選択される1以上の還元剤を前記排ガス流路内に供給する還元剤供給手段と、アンモニアを吸着しNOxと接触させて還元する1以上の第1選択型還元触媒と、を少なくとも備え、
前記第1選択型還元触媒は、第一基材と前記第一材上に設けられた積層触媒とを有し、
前記積層触媒は、ゼオライト及び該ゼオライト上に担持された遷移金属元素を少なくとも含有する第一触媒層であって、白金族元素を実質的に含まない前記第一触媒層と、酸素吸蔵放出材料及び遷移金属元素を少なくとも含有する第二触媒層とを少なくとも有し、前記第一基材上に、前記第一触媒層及び第二触媒層が少なくともこの順に設けられていることを特徴とする、
希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記第一基材が、ウォールフロー型触媒担体、及びフロースルー型触媒担体よりなる群から選択される1種以上である
請求項1に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記第1選択型還元触媒の前記排ガス流路の下流側に、アンモニアを酸化除去する1以上のアンモニア酸化触媒をさらに備える
請求項1又は2に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第1選択型還元触媒の前記排ガス流路の上流側及び/又は下流側に、前記排ガス中の微粒子成分を捕集し、燃焼ないしは酸化除去するパティキュレートフィルターをさらに備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記パティキュレートフィルターは、一体構造型担体と該一体構造型担体上に設けられた貴金属含有触媒層とを少なくとも有する触媒塗工パティキュレートフィルターである
請求項4に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記酸化触媒を複数備え、
少なくとも1以上の前記酸化触媒が、前記第1選択型還元触媒よりも前記排ガス流路の上流側及び/又は下流側に配置されている
請求項1~5のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記第1選択型還元触媒の前記排ガス流路の上流側及び/又は下流側に、アンモニアを吸着しNOxと接触させて還元する第2選択型還元触媒をさらに有する
請求項1~6のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記第一触媒層は、前記ゼオライト並びに前記ゼオライト上に担持されたCu、Fe、Ce、Mn、Ni、Co、Ca、Ag、Rh、Ru、Pd、Pt、Ir及びReよりなる群から選択される1以上を少なくとも含有し、
前記第二触媒層は、前記酸素吸蔵放出材料並びにW、Nb及びTiよりなる群から選択される1以上の遷移金属元素を少なくとも含有する
請求項1~7のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項9】
前記酸素吸蔵放出材料は、セリア系複合酸化物、及びセリア-ジルコニア系複合酸化物よりなる群から選択される1以上を含有する
請求項1~8のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項10】
前記ゼオライトは、酸素6員環構造、酸素二重6員環構造、酸素8員環構造、及び/又は酸素12員環構造を有するゼオライトである
請求項1~9のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項11】
前記ゼオライトは、CHA、AEI、AFX、KFI、SFW、MFI、及びBEAよりなる群から選択される1種以上である
請求項1~10のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項12】
前記第二触媒層の単位容積あたりのNH最大吸着量が、飽和吸着量の33%のNH吸着条件下において、前記第一触媒層の単位容積あたりのNH最大吸着量よりも小さい
請求項1~11のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項13】
前記第一触媒層及び/又は前記第二触媒層が前記第一基材上にゾーンコートされている
請求項1~12のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項14】
前記排ガス流路内を通過する前記排ガスを加熱する加熱装置をさらに備える
請求項1~13のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【請求項15】
前記排ガス流路内を通過する前記排ガスをプラズマ処理する、プラズマ発生装置をさらに備える
請求項1~14のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希薄燃焼エンジンから排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
希薄燃焼エンジン等の内燃機関から生じる排ガスの浄化技術については、従来から数多くの提案がなされている。例えば、排ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分を浄化するためのディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)や、排ガス中に含まれる煤等の粒子状物質(PM:Particulate matter)を捕集するためのディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF:Diesel Particulate Filler)等を、ディーゼルエンジンの排ガス流路に配置した排ガス浄化装置が広く知られている。さらに近年では、搭載スペースの省スペース化等の観点から、粒子状物質の排出抑制と、CO/HC/NOx等の除去を同時に行うために、DPFに触媒スラリーを塗工し、これを焼成することでDPF上に触媒層を設けた、触媒塗工DPF等も提案されている。
【0003】
また、希薄燃焼エンジンから生じる排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を選択的に還元して浄化する触媒として、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが開発されている。この尿素SCRシステムでは、尿素の加水分解により生成するアンモニアを吸着するSCR触媒が採用されており、SCR触媒上でNOxをアンモニアと化学反応させることにより、窒素及び水に浄化している。尿素SCR触媒では、主として次に示す反応式〔1〕~〔3〕によって、NOxを最終的にN2に還元している。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O ・・・(1)
6NO2+8NH3→7N2+12H2O ・・・(2)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O ・・・(3)
【0004】
このようなSCR触媒としては、ゼオライトに銅(Cu)や鉄(Fe)等の遷移金属を担持させた遷移金属イオン交換ゼオライト(遷移金属元素担持ゼオライト)が広く用いられている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/021315号
【文献】特開2015-196115号公報
【文献】特開2016-195992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
欧州連合(EU)で施行されている排ガス規制ステージVやIVに代表されるように、近年の自動車排ガス規制はますます厳しくなり、これにともない、排ガス浄化触媒の浄化性能のさらなる向上が求められている。
【0007】
上記従来の遷移金属イオン交換ゼオライトを用いたSCR触媒は、SCR触媒に吸着されたアンモニアの量に依存してNOx浄化性能が大きくなる傾向にある。そして、他のSCR触媒材料の中でも、遷移金属イオン交換ゼオライトは、比較的にNH3最大吸着量が大きいものが得られやすく、使い勝手が良くより高いNOx浄化性能が期待されるとの理由で、尿素SCRシステムにおいて幅広く採用されている。
【0008】
しかしながら、本発明者らの知見によれば、上記従来の遷移金属イオン交換ゼオライト(ゼオライト系触媒材料)を用いたSCR触媒は、アンモニア吸着量が低い条件下ではNOx浄化性能が不十分であり、SCR触媒のNH3最大吸着量に対して十分な量(例えば40wt%程度以上)のアンモニアを吸着させないと、所望する高いNOx浄化性能が実用上得られない傾向にあることが判明した。
【0009】
かかる問題を解決するためには、アンモニア(ないしはアンモニアの前駆体となる尿素)を過剰に供給(噴射)すればよいと考えられる。ところが、このようにアンモニア等の供給量を過剰にすると、排ガス流路の下流側へ流出するアンモニア(NH3スリップ)の量も増加し、これを浄化するためのアンモニア酸化触媒等が多量に必要となるという問題が生じる。また、NH3スリップ量を増加させると、OBD2(On-board diagnostics 2)やJ-OBD(Japan on-board diagnosis)等の自己診断機能の許容要件に適合しなくなる場合も生じ得るため、システムの再設計及び評価が必要になるという問題が生じる。一方、遷移金属イオン交換ゼオライトの使用量を増やすことで所望する高いNOx浄化性能を得ることも可能であるが、このようにするとアンモニア等の供給量がより過剰に必要となりアンモニア酸化触媒等もより多量に必要となる。しかも、遷移金属イオン交換ゼオライトはSCR触媒として用いられている触媒材料の中でも比較的に高価であるため、遷移金属イオン交換ゼオライトの使用量を増やすと、SCR触媒の触媒塗工量あたりの単価が増大する。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち本発明の目的は、触媒塗工量あたりの単価が比較的に安く、アンモニア吸着量が比較的に低い条件下~比較的に高い条件下にわたってNOx浄化性能が改善された、NOx浄化性能及び経済性に優れる選択型還元触媒及び排ガス浄化装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、SCR触媒として所定の触媒材料からなる積層触媒を採用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
(1)排ガス流路中に配置され、希薄燃焼エンジンから排出される排ガス中のCO、HC、NO及びNH3よりなる群から選択される少なくとも1種以上を酸化する1以上の酸化触媒と、尿素成分及びアンモニア成分よりなる群から選択される1以上の還元剤を前記排ガス流路内に供給する還元剤供給手段と、アンモニアを吸着しNOxと接触させて還元する1以上の第1選択型還元触媒と、を少なくとも備え、前記第1選択型還元触媒は、第一基材と前記第一材上に設けられた積層触媒とを有し、前記積層触媒は、ゼオライト及び該ゼオライト上に担持された遷移金属元素を少なくとも含有する第一触媒層と、酸素吸蔵放出材料及び遷移金属元素を少なくとも含有する第二触媒層とを少なくとも有し、前記第一基材上に、前記第一触媒層及び第二触媒層が少なくともこの順に設けられていることを特徴とする、希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【0013】
(2)前記第一基材が、ウォールフロー型触媒担体、及びフロースルー型触媒担体よりなる群から選択される1種以上である(1)に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
(3)前記第1選択型還元触媒の前記排ガス流路の下流側に、アンモニアを酸化除去する1以上のアンモニア酸化触媒をさらに備える(1)又は(2)に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
(4)前記第1選択型還元触媒の前記排ガス流路の上流側及び/又は下流側に、前記排ガス中の微粒子成分を捕集し、燃焼ないしは酸化除去するパティキュレートフィルターをさらに備える(1)~(3)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
(5)前記パティキュレートフィルターは、一体構造型担体と該一体構造型担体上に設けられた貴金属含有触媒層とを少なくとも有する触媒塗工パティキュレートフィルターである(4)に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【0014】
(6)前記酸化触媒を複数備え、少なくとも1以上の前記酸化触媒が、前記第1選択型還元触媒よりも前記排ガス流路の上流側及び/又は下流側に配置されている(1)~(5)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
(7)前記第1選択型還元触媒の前記排ガス流路の上流側及び/又は下流側に、アンモニアを吸着しNOxと接触させて還元する第2選択型還元触媒をさらに有する(1)~(6)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【0015】
(8)前記第一触媒層は、前記ゼオライト並びに前記ゼオライト上に担持されたCu、Fe、Ce、Mn、Ni、Co、Ca、Ag、Rh、Ru、Pd、Pt、Ir及びReよりなる群から選択される1以上を少なくとも含有し、前記第二触媒層は、前記酸素吸蔵放出材料並びにW、Nb及びTiよりなる群から選択される1以上の遷移金属元素を少なくとも含有する(1)~(7)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
(9)前記酸素吸蔵放出材料は、セリア系複合酸化物、及びセリア-ジルコニア系複合酸化物よりなる群から選択される1以上を含有する(1)~(8)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
(10)前記ゼオライトは、酸素6員環構造、酸素二重6員環構造、酸素8員環構造、及び/又は酸素12員環構造を有するゼオライトである(1)~(9)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
(11)前記ゼオライトは、CHA、AEI、AFX、KFI、SFW、MFI、及びBEAよりなる群から選択される1種以上である(1)~(10)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
(12)前記第二触媒層の単位容積あたりのNH3最大吸着量が、飽和吸着量の33%のNH3吸着条件下において、前記第一触媒層の単位容積あたりのNH3最大吸着量よりも小さい(1)~(11)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【0016】
(13)前記第一触媒層及び/又は前記第二触媒層が前記第一基材上にゾーンコートされている(1)~(12)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
(14)前記排ガス流路内を通過する前記排ガスを加熱する加熱装置をさらに備える(1)~(13)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
(15)前記排ガス流路内を通過する前記排ガスをプラズマ処理する、プラズマ発生装置をさらに備える(1)~(14)のいずれか一項に記載の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置。
【0017】
なお、本発明は、上述した希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置や他の排ガス浄化装置において使用可能な、例えば以下に示す新規な選択型還元触媒をも提供する。
(16)アンモニアを吸着しNOxと接触させて還元する選択型還元触媒であって、第一基材と前記第一材上に設けられた積層触媒とを有し、前記積層触媒は、ゼオライト及び該ゼオライト上に担持された遷移金属元素を少なくとも含有する第一触媒層と、酸素吸蔵放出材料及び遷移金属元素を少なくとも含有する第二触媒層とを少なくとも有し、前記第一基材上に、前記第一触媒層及び第二触媒層が少なくともこの順に設けられていることを特徴とする、選択型還元触媒。
【0018】
(17)前記第一基材が、ウォールフロー型触媒担体、及びフロースルー型触媒担体よりなる群から選択される1種以上である(16)に記載の選択型還元触媒。
(18)前記第一触媒層は、前記ゼオライト並びに前記ゼオライト上に担持されたCu、Fe、Ce、Mn、Ni、Co、Ca、Ag、Rh、Ru、Pd、Pt、Ir及びReよりなる群から選択される1以上を少なくとも含有し、前記第二触媒層は、前記酸素吸蔵放出材料並びにW、Nb及びTiよりなる群から選択される1以上の遷移金属元素を少なくとも含有する(16)又は(17)に記載の選択型還元触媒。
(19)前記酸素吸蔵放出材料は、セリア系複合酸化物、及びセリア-ジルコニア系複合酸化物よりなる群から選択される1以上を含有する(16)~(18)のいずれか一項に記載の選択型還元触媒。
(20)前記ゼオライトは、酸素6員環構造、酸素二重6員環構造、酸素8員環構造、及び/又は酸素12員環構造を有するゼオライトである(16)~(19)のいずれか一項に記載の選択型還元触媒。
(21)前記ゼオライトは、CHA、AEI、AFX、KFI、SFW、MFI、及びBEAよりなる群から選択される1種以上である(16)~(20)のいずれか一項に記載の選択型還元触媒。
(22)前記第二触媒層の単位容積あたりのNH3最大吸着量が、飽和吸着量の33%のNH3吸着条件下において、前記第一触媒層の単位容積あたりのNH3最大吸着量よりも小さい(16)~(21)のいずれか一項に記載の選択型還元触媒。
(23)前記第一触媒層及び/又は前記第二触媒層が前記第一基材上にゾーンコートされている(16)~(22)いずれか一項に記載の選択型還元触媒。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、触媒塗工量あたりの単価が比較的に安く、アンモニア吸着量が比較的に低い条件下~比較的に高い条件下にわたってNOx浄化性能が改善された、NOx浄化性能及び経済性に優れる選択型還元触媒及び排ガス浄化装置等を提供することができる。また、本発明によれば、積層触媒を用いることで、還元剤の噴射に対するNOx浄化性能の立ち上がりが早く、還元剤の吸着量に対するレスポンスが向上した選択型還元触媒及び排ガス浄化装置等を実現することができ、より高いNOx浄化性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態の選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)の構成を示す模式断面図である。
図2】選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)を用いた一実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100の概略構成を示す模式図である。
図3】選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)と従来技術の選択型還元触媒SCR1(L1単層)及び選択型還元触媒SCR2(L2単層)との対比説明図であり、これらの触媒性能(すなわちNOx浄化率-NH3吸着量の関係、及びNH3スリップの発生状況)を示す概念図である。
図4】希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100の変形例の概略構成を示す模式図である。
図5】希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100の変形例の概略構成を示す模式図である。
図6】希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100の変形例の概略構成を示す模式図である。
図7】希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100の変形例の概略構成を示す模式図である。
図8】選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)の変形例の構成を示す模式断面図である。
図9】選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)の変形例の構成を示す模式断面図である。
図10】選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)の変形例の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その上限値「100」及び下限値「1」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。さらに、本明細書において、「D50粒子径」とは、体積基準の粒子径の累積分布において小粒径からの積算値が全体の50%に達したときの粒子径をいい、所謂メディアン径を意味し、レーザー回折式粒子径分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-3100等)で測定した値を意味する。また、BET比表面積は、比表面積/細孔分布測定装置(商品名:BELSORP-mini II、マイクロトラック・ベル株式会社製)及び解析用ソフトウェア(商品名:BEL_Master、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用い、BET一点法により求めた値とする。
【0022】
(実施形態)
図1は、本実施形態の選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)の構成を示す模式断面図である。選択型還元触媒SCRLは、アンモニアを吸着しNOxと接触させて還元する触媒である。この選択型還元触媒SCRLは、基材11と、この基材11上に設けられた積層触媒21とを有する。積層触媒21は、ゼオライト及び該ゼオライト上に担持された遷移金属元素を少なくとも含有する第一触媒層L1と、酸素吸蔵放出材料及び遷移金属元素を少なくとも含有する第二触媒層L2とを少なくとも有し、基材11上に、第一触媒層L1及び第二触媒層L2が少なくともこの順に設けられている。
【0023】
ここで本明細書において、「基材11上に、第一触媒層L1及び第二触媒層L2が少なくともこの順に設けられている」とは、基材11、第一触媒層L1及び第二触媒層L2が、この順に配置していることを意味し、これら3層がこの順に配列されている限り、これらの層間に任意の他の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在していてもよい。すなわち、選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)の積層構造は、基材11、第一触媒層L1、及び第二触媒層L2が直接載置された態様(基材11/第一触媒層L1/第二触媒層L2)、基材11、第一触媒層L1、及び第二触媒層L2が任意の他の層を介して離間して配置された態様(例えば、基材11/他の層/第一触媒層L1/第二触媒層L2、基材11/他の層/第一触媒層L1/他の層/第二触媒層L2、基材11/第一触媒層L1/他の層/第二触媒層L2)のいずれであってもよい。
【0024】
図2は、本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100の概略構成を示す模式図である。この希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100は、排ガス流路中に配置され、ディーゼルエンジン等の希薄燃焼エンジンから排出される排ガス中のCO、HC、NO及びNH3よりなる群から選択される少なくとも1種以上を酸化する1以上の酸化触媒Oxと、尿素成分及びアンモニア成分よりなる群から選択される1以上の還元剤を前記排ガス流路内に供給する還元剤供給手段Red.と、アンモニアを吸着しNOxと接触させて還元する1以上の第1選択型還元触媒SCRと、を少なくとも備えている。本実施形態においては、排ガス流路の上流側から下流側に向けて、排ガス中のCO、HC、NO、NH3等を酸化させる上記酸化触媒Ox、排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する微粒子捕集フィルター(パティキュレートフィルター)PF、排ガスをプラズマ処理するプラズマ発生装置Pl.、尿素成分、アンモニア成分等を供給する上記還元剤供給手段Red.、アンモニアを還元剤として排ガス中のNOxを還元する上記第1選択型還元触媒SCRL、余剰のアンモニアを酸化除去するアンモニア酸化触媒(AMOX、Ammonia oxidation catalyst)がこの順に設けられている。
【0025】
ここで用いる第1選択型還元触媒SCRLは、上述したとおり、第一触媒層L1と第二触媒層L2の積層構造を有する積層触媒21を備えている。第一触媒層L1は、触媒材料として、ゼオライト及びこのゼオライト上に担持された遷移金属元素を少なくとも含有する(以下、「ゼオライト系触媒材料」と称する場合がある。)。また、第二触媒層L2は、触媒材料として、酸素吸蔵放出材料及び遷移金属元素を少なくとも含有する(以下、「非ゼオライト系触媒材料」と称する場合がある。)。このように第一触媒層L1と第二触媒層L2の積層構造を有する積層触媒21を用いることにより、従来に比して、アンモニア吸着量が比較的に低い条件下から比較的に高い条件下にわたって高いNOx浄化性能を発現することができる。その理由は定かではないが、以下のとおり推察される。
【0026】
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100においては、ゼオライト系触媒材料を含む第一触媒層L1の上側に、非ゼオライト系触媒材料を含む第二触媒層L2が積層された積層触媒21を用いた選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)を採用している。この非ゼオライト系触媒材料は、従来から用いられているゼオライト系触媒材料に比して、NH3吸着点とW、Ce、Zr等の遷移金属吸着点とが近接しているため、NH3吸着量が比較的に低い条件下であってもNOx浄化反応が進行され易い。したがって、ゼオライト系触媒材料の単層触媒を用いた場合に比して、このような積層触媒21を用いることで、アンモニア吸着量が比較的に低い条件下でも優れたNOx浄化性能が発現される。また、言い換えれば、このような積層触媒を用いることで、還元剤の噴射に対するNOx浄化性能の立ち上がりが早くなる。
【0027】
また、単位容積あたりのNH3最大吸着量が比較的に小さく、そしてNH3容量が比較的に小さな第二触媒層L2を設ければ、第二触媒層L2では比較的に早期に飽和吸着に達し易く、そのため、第二触媒層L2ではNH3スリップ量が比較的に早期に増加する。そして、第二触媒層L2でスリップしたNH3は、第一触媒層L1に吸着され、第一触媒層L1のNH3吸着割合を増加させる。これにより、第一触媒層L1が有するNOx浄化特性、とりわけNH3供給量が比較的に多い場合における第一触媒層L1の高いNOx浄化性能を十分に発現させることができる。このように第二触媒層L2で比較的に多量のNH3スリップの発生を許容する構成を採用するとともに、第二触媒層L2の下段に第一触媒層L1を設けた構成を採用することで、第二触媒層L2のNOx浄化特性と第一触媒層L1のNOx浄化特性を相互に補完させることができ、これにより、NH3供給量が低い条件下(例えば、飽和吸着量に対して0~40%のNH3吸着条件下)からNH3供給量が高い条件下(例えば、飽和吸着量に対して40~100%のNH3吸着条件下)の広範囲にわたって高いNOx浄化性能が維持される。なお、本明細書において、第二触媒層L2や第一触媒層L1の単位容積あたりのNH3最大吸着量(飽和吸着量)は、後述するとおり、排ガス流路となる系内に第二触媒層L2や第一触媒層L1をそれぞれ設置し、その系内に上流側から下流側へ向けて所定濃度のNH3ガスを含むモデルガスを供給し、触媒出口のNH3濃度が5ppmに達したときのNH3吸着量とする。
【0028】
なお、測定条件は、以下のとおりである。
・評価装置 :(MHIソリューションテクノロジーズ製)
・定量分析装置 :FTIR FAST-1400(岩田電業製)
・触媒サイズ :φ25.4mm×20mm 400セル/4.5ミル
・空間速度 :40000 h-1
・全ガス流量 :6.8 L/min
・反応温度 :200 ℃
・モデルガス組成:NO;75 ppm、NO2 ;25 ppm、NH3 ;80 ppm、
O2 ;6 %、H2 O:12 %、N2 ;Balance
(操作手順)
触媒入口出口のNH3、NO、NO2、N2Oのガス濃度を計測し、各触媒の性能(NOx浄化率及びNH3吸着量)を評価する。操作手順は、以下のとおりとする。あらかじめNH3以外のガスを所定濃度流通させておき、NH3ガスを所定濃度流通させた。触媒出口のNH3濃度が5ppmに達したときのNH3吸着量を飽和吸着量(NH3最大吸着量)とし、飽和吸着量が33%のときのNOx浄化率を算出する。なお、NOx浄化率及びNH3吸着量は、次の算出式に基づき計算する。
NOx浄化率(%)={(入口NOx(=NO+NO2 )濃度)-(出口NOx濃度)}/
(入口NOx濃度)×100
NH3 吸着量(g/L)={(導入NH3 量(g))-(排出NH3 量(g))-(NOx浄化
に使用したNH3 量(g))}/(触媒体積)
【0029】
図3は、選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)の触媒性能の概念図である。ここでは、第一触媒層L1と第二触媒層L2の積層触媒21を設けた本実施形態の選択型還元触媒SCRL(L1/L2積層)と、積層触媒21と同塗工量で第一触媒層L1のみの単層触媒層を設けた選択型還元触媒SCR1(L1単層)、及び積層触媒21と同塗工量で第二触媒層L2のみの単層触媒層を設けた選択型還元触媒SCR2(L2単層)とを対比している。
【0030】
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100は、NH3供給量が比較的に少ない場合(例えば、飽和吸着量に対して0~40%のNH3吸着条件下)でも、第二触媒層L2はNH3飽和吸着に達し易いため、比較的に少ないNH3吸着量の条件下において、比較的に早期から高いNOx浄化性能を発現する。また、本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100は、NH3供給量が比較的に多い場合(例えば、飽和吸着量に対して40~100%のNH3吸着条件下)でも、第二触媒層L2が比較的に早期にNH3スリップの発生を許容して第一触媒層L1にNH3が供給されるので、第二触媒層L2及び第一触媒層L1の触媒性能が共に機能して、より高いNOx浄化性能を発現する。すなわち、第二触媒層L2は、謂わばNH3高スリップ性の触媒層としても機能し、下段の第一触媒層L1におけるNH3吸着量の増加を過度に阻害することなく、第一触媒層L1のより高いNOx浄化性能を引き出す。これらが相まった結果、本実施形態の選択型還元触媒SCRL及び希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100では、NH3吸着量が比較的に低い条件下でも、また、NH3吸着量が比較的に高い条件下となっても、従来技術の選択型還元触媒SCR1を用いた場合に比して5~50%程度のNOx浄化率の向上が達成可能になっていると推察される。但し、作用は、これらに限定されない。
【0031】
しかも、SCR触媒として用いられている触媒材料の中でも、酸素吸蔵放出材料及び遷移金属元素を少なくとも含有する非ゼオライト系触媒材料は市場で安価に入手できる(例えばゼオライト系触媒材料に比して1kgあたり1/2~1/3程度)。そのため、従来技術に比して、比較的に高価な遷移金属イオン交換ゼオライトの使用量を低減することが可能であり、これにより、比較的に安価でありながらも、高性能な選択型還元触媒SCRL及び希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100を実現することができる。
【0032】
以下、各構成要素について詳述する。
【0033】
[酸化触媒Ox]
酸化触媒Oxは、排ガス中のCO、HC、NO、NH3等を酸化する触媒である。なお、本明細書において、酸化触媒Oxとは、上述したDOCの他、リーン条件下でNOxを吸蔵しリッチ条件下でNOxを放出してCOやHCをCO2やH2Oに酸化するとともにNOxをN2に還元するリーンNOx吸蔵触媒(LNT、Lean NOx Trap)や、これらをPF上に塗布した触媒塗工PF(cPF)を包含する概念である。希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100の酸化触媒Oxとしては、アルミナ、ジルコニア、セリア等の金属酸化物やゼオライト等の母材粒子と、この担体上に担持された触媒活性成分として白金族元素(PGM:Platinum Group Metal)とを有する複合粒子が一般的に用いられている。これらは当業界で各種のものが公知であり、酸化触媒Oxとしては、それら各種の酸化触媒を単独で用いることができ、また、任意の組み合わせで適宜組み合わせて用いることができる。
【0034】
酸化触媒Oxとしては、ハニカム構造体等の一体構造型の触媒担体上に、無機微粒子の母材粒子及びこの母材粒子上に白金族元素が担持された白金族元素担持触媒材料を含む触媒層が設けられたものが、好ましく用いられる。このような白金族元素担持触媒材料を用いて酸化触媒Oxを構成することにより、圧力損失の上昇を抑止しつつ、高い排ガス浄化性能を実現することができる。
【0035】
ここで、白金族元素を担持する母材粒子としての無機微粒子としては、従来この種の排ガス浄化用触媒で使用される無機化合物を考慮することができる。例えば、ゼオライト、酸化セリウム(セリア:CeO2)、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)等の酸素吸蔵放出材料(OSC)、γ-アルミナ、β-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等の酸化アルミニウム(アルミナ:Al23)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。また、これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。これら無機微粒子は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。なお、酸素吸蔵放出材料とは、外部環境に応じて酸素を吸蔵し或いは放出する材料を意味する。
【0036】
酸化触媒Oxの母材粒子の平均粒子径D50は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、母材粒子の平均粒子径D50は、0.5~100μmが好ましく、1~100μmがより好ましく、1~50μmがさらに好ましい。また、母材粒子のBET比表面積は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、大きな比表面積を保持させるとともに触媒活性を高める等の観点から、BET一点法によるBET比表面積が10~500m2/gが好ましく、より好ましくは20~300m2/g、さらに好ましくは30~200m2/gである。酸化触媒Oxの母材粒子となる各種材料は、各種グレードのものが国内外のメーカから数多く市販されており、要求性能に応じて各種グレードの市販品を母材粒子として用いることができる。また、当業界で公知の方法で製造することもできる。
【0037】
白金族元素としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)が挙げられる。白金族元素は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。排ガス浄化性能の向上、母材粒子上での白金族元素の粒成長(シンタリング)の進行の抑制等の観点から、酸化触媒Oxの白金族元素の含有割合(一体構造型の触媒担体1Lあたりの白金族元素質量)は、通常は0.1~20g/Lが好ましく、より好ましくは0.2~15g/Lであり、さらに好ましくは0.3~10g/Lである。
【0038】
なお、酸化触媒Oxは、当業界で各種公知の他の触媒材料や助触媒、各種添加剤を含有していてもよい。また、例えば、ベーマイト、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾル;硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩等のバインダーを含んでいてもよい。また、酸化触媒Oxは、上述した成分以外に、Ba含有化合物をさらに含有していてもよい。Ba含有化合物を配合することで、耐熱性の向上、及び触媒性能の活性化を期待できる。Ba含有化合物としては、硫酸塩、炭酸塩、複合酸化物、酸化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。より具体的には、BaO、Ba(CH3COO)2、BaO2、BaSO4、BaCO3、BaZrO3、BaAl24等が挙げられる。さらに、酸化触媒Oxは、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤;pH調整剤;粘度調整剤等を含有していてもよい。
【0039】
酸化触媒Oxを支持する一体構造型の触媒担体としては、例えば自動車排ガス用途において汎用されているハニカム構造体が好ましく用いられる。このようなハニカム構造体としては、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックモノリス担体、ステンレス製等のメタルハニカム担体、ステンレス製等のワイヤメッシュ担体、スチールウール状のニットワイヤ担体等が挙げられる。また、その形状も、特に限定されず、例えば角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状等の任意の形状のものが選択可能である。これらは、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、自動車排ガス用途のハニカム構造体としては、気体流路が連通しているフロースルー型構造体と、気体流路の一部端面が目封じされ且つ気体流路の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型構造体とが広く知られており、これらはいずれも適用可能である。なお、ウォールフロー型構造体を用いた場合には、触媒塗工PF(触媒化PF:cPF)や触媒化燃焼フィルター(触媒化フィルター:CSF)と一致するため、以降において便宜上、酸化触媒OxoF(DOCの場合はDOCoF)と称する場合がある。一方、フロースルー型構造体を用いた場合には、単純に酸化触媒DOCと称する場合がある。
【0040】
なお、上述した酸化触媒Oxにおいて、上述した触媒層の総被覆量は、特に限定されないが、触媒性能や圧損のバランス等の観点から、一体構造型の触媒担体1Lあたり1~500g/Lが好ましく、2~450g/Lがより好ましく、ウォールフロー型触媒担体の場合は2~80g/L、フロースルー型触媒担体の場合は50~300g/Lがさらに好ましい。
【0041】
また、酸化触媒Oxの触媒層は、単層で用いることができるが、要求性能に応じて、2層以上の積層体として用いることもできる。さらに、酸化触媒Oxの触媒層一体構造型の触媒担体上に直接載置されていてもよいが、またバインダー層や下地層等を介して一体構造型の触媒担体上に設けられていてもよい。バインダー層や下地層等としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、ゼオライト、酸化セリウム(セリア:CeO2)、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)等の酸素吸蔵放出材料(OSC)、γ-アルミナ、β-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等の酸化アルミニウム(アルミナ:Al23)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等を用いることができる。なお、バインダー層や下地層等の塗工量は、特に限定されないが、一体構造型の触媒担体1Lあたり1~150g/Lが好ましく、10~100g/Lがより好ましい。
【0042】
上記の酸化触媒Oxは、本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100の排ガス流路の系内に少なくとも1以上設けられていればよいが、要求性能等に応じて複数個(例えば2~5個)設けられていてもよい。また、1つの触媒担体上に2種の酸化触媒材料をゾーンコートして得られるゾーンコート酸化触媒zOxも使用可能である。ゾーンコートとしては、一つの触媒担体表面に複数の触媒層を区分けして被覆されているものである限り、特に限定されないが、例えば触媒担体(ハニカム構造体)の通孔方向(軸線)に対して、中心部位と外周部分を同心円状に塗り分ける、ハニカム型造体の通孔深さ方向に塗り分ける等が知られている。ここで、ゾーンコートの塗り分けは、浄化すべき有害成分の組成、流量、温度等によって異なり、適宜最適の組み合わせが設定される。例えば、自動車の排気ガスの浄化において、前段と後段で塗り分けるには、一方に触媒成分の種類を多く、他方に触媒成分の種類を少なく塗る場合、また一方に貴金属成分を多く、他方に貴金属成分を薄く塗る場合等がある。また、ハニカム構造体に触媒成分が多層に被覆される場合のゾーンコートでは、一方の下層を厚くそして上層を薄く塗り、他方には下層を薄くそして上層を厚く塗ることがある。なお、塗り分けられる触媒の種類は、酸化触媒と還元触媒の組み合わせを変える他、同種の触媒であっても、組成、活性種の濃度、ハニカム型構造体への被覆量などを変える場合がある。以降において、例えばzDOCのようにzの頭文字を付している場合には、ゾーンコートDOCを意味するものとする。酸化触媒Oxを複数設ける場合、各々の酸化触媒Oxは、同種のOxであってもよいし、別種のOxであってもよい。このときの配列としては、DOC、DOCoF、LNT、DOC+DOC、zDOC+zDOC、DOC+LNT、zDOC+zLNT、DOC+DOCoF、zDOC+zDOC+DOC、DOC+zDOC+zDOC、DOC+LNT+DOCoF、zDOC+zLNT+DOCoF、DOC+DOCoF+DOC、DOC+DOCoF+LNT、LNT+LNT、LNT+LNT+DOCoF、LNT+DOCoF等が例示されるが、これらに特に限定されない。
【0043】
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100の排ガス流路の系内に酸化触媒Oxを複数設ける場合、各々の酸化触媒Oxは、隣接して配置されていてもよく、また、第1選択型還元触媒SCRLや還元剤供給手段や加熱装置やプラズマ発生装置等を介して、排ガス流路内で離間して配置されていてもよい。所望性能に応じて、例えば酸化触媒Oxを第1選択型還元触媒SCRLよりも排ガス流路の上流側に配置したり、酸化触媒Oxを第1選択型還元触媒SCRLよりも排ガス流路の下流側に配置したりすることができ、酸化触媒Oxを複数設ける場合には、これらの配置例を組み合わせて適用することができる。
【0044】
[微粒子捕集フィルターPF]
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100において、上述した酸化触媒Oxの下流側には、上述したウォールフロー型構造体からなる微粒子捕集フィルターPFが設けられている。この微粒子捕集フィルターPFは、希薄燃料エンジンから排出される排ガス中の煤等の微粒子成分(PM)をトラップし、必要に応じて未燃の軽油を定期的に噴霧して燃焼ないしは酸化除去するためのものである。このような微粒子捕集フィルターPFとしては、ディーゼル微粒子捕集フィルターDPFが広く知られている。また、この微粒子捕集フィルターPFとしては、触媒塗工したウォールフロー型構造体を用いることもできる。この場合は、上述した触媒塗工PF(触媒化PF:cPF)や触媒化燃焼フィルター(CSF:Catalyzed Soot Filter)として機能し、その詳細説明は上述したとおりであるため、ここでの重複した説明は省略する。
【0045】
[第1選択型還元触媒SCRL
第1選択型還元触媒SCRLは、還元剤供給手段Red.から供給される還元剤に起因するアンモニア(還元剤が尿素成分である場合には尿素成分が熱分解等して生成したアンモニア)を吸着しNOxと接触させて還元浄化するものである。上述したとおり、本実施形態の第1選択型還元触媒SCRLとしては、基材11上に、第一触媒層L1及び第二触媒層L2が少なくともこの順に設けられた積層触媒21を備える積層構造体が用いられている。
【0046】
(第一触媒層L1)
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100及び積層触媒21において、第一触媒層L1は、ゼオライト及びこのゼオライト上に担持された遷移金属元素を少なくとも含有するゼオライト系触媒材料を少なくとも含有する。
【0047】
第一触媒層L1に含まれるゼオライトとしては、従来この種の排ガス浄化用触媒で使用される各種ゼオライトを考慮することができる。なお、ここでいうゼオライトには、結晶性アルミノケイ酸塩の他、結晶性リン酸アルミニウム(ALPO:Alumino phosphate)や結晶性ケイ酸リン酸アルミニウム(SAPO:Silica-alumino phosphate)等の、ミクロ細孔を有しゼオライトと同様の層状構造を有する結晶性金属アルミノリン酸塩(Crystal metal aluminophosphate)が包含される。その具体例としては、SAPO-34やSAPO-18等の、所謂アルミノリン酸塩(Alumino-phosphate)と呼ばれるものが挙げられるが、これらに特に限定されない。ここで用いるゼオライトの具体例としては、例えば、Y型、A型、L型、ベータ型、モルデナイト型、ZSM-5型、フェリエライト型、モルデナイト型、CHA型、AEI型、AFX型、KFI型、及びSFW型のゼオライトの他、SAPOやALPO等の結晶性金属アルミノリン酸塩が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらのゼオライトは、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。なお、ゼオライトの骨格構造は、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association,以降では「IZA」と略称することがある。)においてデータベース化されており、そのIUPAC構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)に規定されている構造を有するものを、特に制限なく用いることができる。また、これらの構造は、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites, Fifth revised edition (2007)に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターン、又は、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-struture.org/databases/のZeolite Framework Typesに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、同定することができる。これらの中でも、耐熱性、各種公知の骨格構造を有するもの用いることができる。
【0048】
これらの中でも、ゼオライトとしては、酸素6員環構造、酸素二重6員環構造、酸素8員環構造、及び/又は酸素12員環構造を有するゼオライトが好ましく、より好ましくは酸素6員環構造、酸素二重6員環構造、酸素8員環構造であり、さらに好ましくは酸素6員環構造、酸素二重6員環構造である。具体的には、CHA、AEI、AFX、KFI、SFW、MFI、及びBEAよりなる群から選択される1種以上の骨格構造を有するゼオライトがより好ましく、CHA、AEI、AFX、KFI、及びSFWよりなる群から選択される1種以上の骨格構造を有するゼオライトがさらに好ましい。また、ゼオライトは、Si/Al比に応じてその酸点の数が異なり、一般的にSi/Al比が低いゼオライトは酸点の数が多いが水蒸気共存下での耐久において劣化度合いが大きく、逆にSi/Al比が高いゼオライトは耐熱性に優れているが酸点は少ない傾向にある。これらの観点から、使用するゼオライトのSi/Al比は1~500が好ましく、1~100がより好ましく、1~50がさらに好ましい。
【0049】
第一触媒層L1中のゼオライトの平均粒子径D50は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、ゼオライトの平均粒子径D50は、0.5~100μmが好ましく、0.5~50μmがより好ましく、0.5~30μmがさらに好ましい。また、ゼオライトのBET比表面積は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、大きな比表面積を保持させるとともに触媒活性を高める等の観点から、BET一点法によるBET比表面積が10~1000m2/gが好ましく、より好ましくは50~1000m2/g、さらに好ましくは100~1000m2/gである。ゼオライトは、各種グレードのものが国内外のメーカから数多く市販されており、要求性能に応じて各種グレードの市販品を酸素吸蔵放出材料として用いることができる。また、当業界で公知の方法で製造することもできる。
【0050】
第一触媒層L1に含まれる遷移金属元素としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、ニッケル、コバルト、銅、鉄、マンガンが好ましく、より好ましくは銅、鉄である。遷移金属元素は、第一触媒層L1中で分散保持されていてもよいが、上述したゼオライトの表面に担持されていることが好ましい。なお、これら遷移金属元素は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。一般にゼオライトには固体酸点として、カチオンがカウンターイオンとして存在し、そのカチオンとしては、アンモニウムイオンやプロトンが一般的である。本実施形態においては、このゼオライトのカチオンサイトをこれらの遷移金属元素とイオン交換した、遷移金属元素イオン交換ゼオライトとして使用することが好ましい。特に限定されないが、ゼオライトのイオン交換率は、1~100%であることが好ましく、より好ましくは10~95%、さらに好ましくは30~90%である。なお、イオン交換率が100%である場合には、ゼオライト中のカチオン種すべてが遷移金属元素イオンでイオン交換されていることを意味する。また、ゼオライトに対するCuやFeの添加量は、酸化物(CuOやFe23)換算で0.1~10重量%が好ましく、1~10重量%がより好ましく、2~8重量%がさらに好ましい。なお、イオン交換種として添加される遷移金属元素は、そのすべてがイオン交換されていてもよいが、その一部が酸化銅や酸化鉄等の酸化物の状態で存在していてもよい。
【0051】
第一触媒層L1としては、基材11(例えば、ハニカム構造体等の一体構造型の触媒担体)上に、ニッケル、コバルト、銅、鉄及びマンガンよりなる群から選択される少なくとも1種以上の遷移金属元素によりイオン交換されたイオン交換ゼオライトを含む触媒材料を塗工したものが好ましく用いられる。その中でも、Cuイオン交換ゼオライト、Feイオン交換ゼオライトが特に好ましく用いられる。このようなゼオライト系触媒材料を含むSCR層を触媒担体上に設けた構成とすることにより、圧力損失の上昇を抑止しつつ、高い排ガス浄化性能を実現することができる。
【0052】
ここで、第一触媒層L1は、本発明の効果を過度に阻害しない限り、セリア系酸化物やセリア-ジルコニア系複合酸化物等の上述した酸素吸蔵放出材料や、他の母材粒子を含んでいてもよい。他の母材粒子としては、当業界で公知の無機化合物、例えば、γ-アルミナ、β-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等の酸化アルミニウム(アルミナ:Al23)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。なお、これらの酸素吸蔵放出材料や他の母材粒子は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0053】
また、第一触媒層L1は、当業界で各種公知の他の触媒材料や助触媒、各種添加剤を含有していてもよい。また、例えば、ベーマイト、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾル;硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩等のバインダーを含んでいてもよい。また、第一触媒層L1は、上述した成分以外に、Ba含有化合物をさらに含有していてもよい。さらに、第一触媒層L1は、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤;pH調整剤;粘度調整剤等を含有していてもよい。
【0054】
さらに、第一触媒層L1は、本発明の効果を過度に阻害しない限り、遷移金属元素担持セリア系酸化物及び/又はセリア-ジルコニア系複合酸化物等の非ゼオライト系触媒材料を含んでいてもよい。第一触媒層L1が非ゼオライト系触媒材料を含む場合、その含有量は0.1~300g/Lが好ましく、1~200g/Lがより好ましく、5~100g/Lがさらに好ましい。また、第一触媒層L1は、CaやMg等のアルカリ土類金属元素や、触媒活性成分として、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の白金族元素や、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属元素を含んでいてもよい。白金族元素や貴金属元素は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。但し、白金族元素や貴金属元素は、アンモニア成分を酸化しNOxを生成するので実質的に含まないことが好ましい。かかる観点から、第一触媒層L1中の白金族元素の含有量は、3g/L未満が好ましく、1g/L未満がより好ましく、0.5g/L未満がさらに好ましい。
【0055】
(第二触媒層L2)
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100及び積層触媒21において、第二触媒層L2は、酸素吸蔵放出材料及び遷移金属元素を少なくとも含有する非ゼオライト系触媒材料を少なくとも含有する。
【0056】
第二触媒層L2に含まれる酸素吸蔵放出材料としては、従来この種の排ガス浄化用触媒で使用される無機化合物を考慮することができる。具体的には、優れた酸素吸放出能(Oxygen Storage Capacity)を有するのみならず比較的に耐熱性にも優れる、セリア系酸化物やセリア-ジルコニア系複合酸化物が酸素吸蔵放出材料として好ましく用いられる。
【0057】
セリア系酸化物としては、酸化セリウム(IV)、セリウム-セリウムを除く他の希土類元素複合酸化物(但し、ここではジルコニウムを除く。ジルコニウムを含むものは、セリア-ジルコニア系複合酸化物に該当するものとする。)、セリウム-遷移元素複合酸化物、セリウム-セリウムを除く他の希土類元素(但し、ここではジルコニウムを除く。本明細書において、ジルコニウムを含むものは、セリア-ジルコニア系複合酸化物に該当するものとする。)-遷移元素複合酸化物、セリウム-ケイ素複合酸化物、セリウム-遷移元素-ケイ素複合酸化物、セリウム-セリウムを除く他の希土類元素-遷移元素-ケイ素複合酸化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、セリア-ジルコニア系複合酸化物としては、セリウム-ジルコニウム、セリウム-ジルコニウム-遷移元素複合酸化物、セリウム-ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く他の希土類元素複合酸化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。他の希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム等が挙げられる。また、遷移元素としては、クロム、コバルト、鉄、ニッケル、チタン、マンガン及び銅等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、例えば、セリウムやジルコニウムの一部が、アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素等で置換されていてもよい。なお、これらの酸素吸蔵放出材料は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0058】
第二触媒層L2中の酸素吸蔵放出材料の平均粒子径D50は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、酸素吸蔵放出材料の平均粒子径D50は、0.5~100μmが好ましく、1~100μmがより好ましく、1~50μmがさらに好ましい。また、酸素吸蔵放出材料のBET比表面積は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、大きな比表面積を保持させるとともに触媒活性を高める等の観点から、BET一点法によるBET比表面積が10~250m2/gが好ましく、より好ましくは20~200m2/g、さらに好ましくは30~200m2/gである。第二触媒層L2中の酸素吸蔵放出材料のとなる各種材料は、各種グレードのものが国内外のメーカから数多く市販されており、要求性能に応じて各種グレードの市販品を酸素吸蔵放出材料として用いることができる。また、当業界で公知の方法で製造することもできる。
【0059】
第二触媒層L2に含まれる遷移金属元素としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、Ti(チタン)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。遷移金属元素は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。これらの中でも、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、Ti(チタン)が特に好ましく用いられる。なお、これらの遷移金属元素は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。ここで、遷移金属元素は、第二触媒層L2中で分散保持されていてもよいが、上述した酸素吸蔵放出材料の表面に担持されていることが好ましい。また、排ガス浄化性能の向上等の観点から、遷移金属元素の含有割合(一体構造型の触媒担体1Lあたりの遷移金属元素質量)は、通常、遷移金属元素の酸化物換算で0.1~400g/Lが好ましく、より好ましくは1~300g/Lであり、さらに好ましくは5~200g/Lである。
【0060】
第二触媒層L2としては、基材11(例えば、ハニカム構造体等の一体構造型の触媒担体)上に、セリア系酸化物及び/又はセリア-ジルコニア系複合酸化物、並びにその表面に担持されたWやNbやTi等の遷移金属元素を少なくとも含有する遷移金属元素担持セリア系酸化物及び/又はセリア-ジルコニア系複合酸化物を含む触媒材料を塗工したものが、好ましく用いられる。その中でも、W担持セリア系酸化物、Nb担持セリア系酸化物、Ti担持セリア系酸化物、W担持セリア-ジルコニア系複合酸化物、Nb担持セリア-ジルコニア系複合酸化物、Ti担持セリア-ジルコニア系複合酸化物等が特に好ましく用いられる。このような非ゼオライト系触媒材料を含むSCR層を触媒担体上に設けた構成とすることにより、圧力損失の上昇を抑止しつつ、高い排ガス浄化性能を実現することができる。
【0061】
ここで、第二触媒層L2は、上述した酸素吸蔵放出材料以外に、他の母材粒子を含んでいてもよい。このような母材粒子としては、当業界で公知の無機化合物、例えば、γ-アルミナ、β-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等の酸化アルミニウム(アルミナ:Al23)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。なお、これら無機化合物の母材粒子は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0062】
また、第二触媒層L2は、当業界で各種公知の他の触媒材料や助触媒、各種添加剤を含有していてもよい。また、例えば、ベーマイト、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾル;硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩等のバインダーを含んでいてもよい。また、第二触媒層L2は、上述した成分以外に、Ba含有化合物をさらに含有していてもよい。さらに、第二触媒層L2は、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤;pH調整剤;粘度調整剤等を含有していてもよい。
【0063】
さらに、第二触媒層L2は、本発明の効果を過度に阻害しない限り、ゼオライトや遷移金属元素担持ゼオライト(Cu担持ゼオライト、Fe担持ゼオライト、Cu/Fe担持ゼオライト等)のゼオライト系触媒材料を含んでいてもよい。第二触媒層L2がゼオライト系触媒材料を含む場合、その含有量は0.1~300g/Lが好ましく、1~200g/Lがより好ましく、5~100g/Lがさらに好ましい。また、第二触媒層L2は、触媒活性成分として、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の白金族元素や、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属元素を含んでいてもよい。白金族元素や貴金属元素は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。但し、白金族元素や貴金属元素は、アンモニア成分を酸化しNOxを生成するので実質的に含まないことが好ましい。かかる観点から、第二触媒層L2中の白金族元素の含有量は、3g/L未満が好ましく、1g/L未満がより好ましく、0.5g/L未満がさらに好ましい。
【0064】
第一触媒層L1や第二触媒層L2を支持する基材11としては、例えば自動車排ガス用途において汎用されている一体構造型の触媒担体(具体的にはハニカム構造体等)が好ましく用いられる。この基材11の具体例としては、酸化触媒Oxの項で説明したとおりであり、ここでの重複した説明は省略する。なお、基材11としては、フロースルー型構造体とウォールフロー型構造体のいずれもが適用可能である。ここで、ウォールフロー型構造体を用いた場合には、触媒塗工SCR(触媒化PF:cPF)と一致するため、以降において便宜上、SCRLoFやSCRoF等と称する場合がある。一方、フロースルー型構造体を用いた場合には、単純にSCRLやSCR等と称する場合がある。
【0065】
ここで、第一触媒層L1中の触媒材料の総被覆量は、特に限定されないが、触媒性能や圧損のバランス等の観点から、一体構造型の触媒担体1Lあたり10~500g/Lが好ましく、20~400g/Lがより好ましく、30~300g/Lがさらに好ましい。
【0066】
また、第二触媒層L2中の触媒材料の総被覆量は、特に限定されないが、触媒性能や圧損のバランス等の観点から、一体構造型の触媒担体1Lあたり10~500g/Lが好ましく、20~400g/Lがより好ましく、30~300g/Lがさらに好ましい。
【0067】
なお、第一触媒層L1は、一体構造型の触媒担体上に直接載置されていてもよいが、バインダー層や下地層等を介して一体構造型の触媒担体上に設けられていてもよい。また、第二触媒層L2は、第一触媒層L1上に直接載置されていてもよいが、バインダー層や下地層等を介して第一触媒層L1上に設けられていてもよい。これらのバインダー層や下地層等としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、例えば、ゼオライト、酸化セリウム(セリア:CeO2)、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)等の酸素吸蔵放出材料(OSC)、γ-アルミナ、β-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等の酸化アルミニウム(アルミナ:Al23)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等を用いることができる。なお、バインダー層や下地層等の塗工量は、特に限定されないが、一体構造型の触媒担体1Lあたり1~150g/Lが好ましく、10~100g/Lがより好ましい。
【0068】
上記の第1選択型還元触媒SCRLは、本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100の排ガス流路の系内に1個以上設けられていればよいが、要求性能等に応じて複数個(例えば2~5個)設けられていてもよい。第1選択型還元触媒SCRLを複数設ける場合、各々は、同種の触媒材料であってもよいし、別種の触媒材料であってもよい。また、例えば図4図7に示すように、第1選択型還元触媒SCRL以外の、当業界で公知のSCRを排ガス流路中に別途に設けることもできる。さらに、例えば図8図10に示すように、1つの触媒担体上に触媒材料をゾーンコートし第一触媒層L1と第二触媒層L2を順次形成して、ゾーンコートSCRL(zSCRL)として使用することもできる。このとき、第一触媒層L1と第二触媒層L2とは、完全に重複していても一部のみが重複していてもよい。また、第二触媒層L2は、還元剤の吸着量に対する高いレスポンス性及びNH3高スリップ性の触媒層として機能させる観点から、排ガス流路の上流側(図中の左側)の基材11上に設けられているか、排ガス流路の上流側(図中の左側)の基材11上及び第一触媒層L1上に設けられていることが好ましい。
【0069】
なお、第一触媒層L1や第二触媒層L2の容量(サイズ)やそれぞれの触媒材料の塗工量等は、本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100を適用するエンジンの種類や排気量等を考慮し、また、必要とされる触媒量や浄化性能等に応じて、適宜調整することができ、特に限定されない。ディーゼルエンジンの場合、排気量1L程度の小型自動車から、排気量50Lを超えるような重機用(ヘビーデューティー)ディーゼルエンジンまであり、また、それらディーゼルエンジンから排出される排気ガス中のNOxは、その稼動状態、また燃焼制御の方法等により大きく異なる。そして、これらディーゼルエンジンから排出される排気ガス中のNOxを浄化するために使用されるSCR触媒も、1L程度から50Lを超えるディーゼルエンジン排気量の多様性にあわせて選定できる。例えば、使用するハニカム構造体等の直径や長さ、使用する触媒材料の種類や配合割合、第一触媒層L1や第二触媒層L2の塗工長さや触媒材料の塗工量等を増減することにより、適宜調整することができる。
【0070】
[還元剤供給手段Red.]
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100において、還元剤供給手段Red.は、尿素成分及びアンモニア成分よりなる群から選択される1以上の還元剤を排ガス流路内に供給するものである。還元剤供給手段Red.は、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。通常、還元剤の貯蔵タンク、これに接続された配管、配管の先端に取り付けられた噴霧ノズルから構成されたものが用いられる(図示省略)。
【0071】
還元剤供給手段Red.の噴霧ノズルの位置は、上述した第1選択型還元触媒SCRLの上流側に設置される。とりわけ、本実施形態の第1選択型還元触媒SCRLでは、上述した積層触媒21が採用されているため、他の要因を廃してその機能を十分に発揮させるために、第1選択型還元触媒SCRLの上流側の直前に還元剤供給手段Red.の噴霧ノズルが配置されていることが好ましい。なお、第1選択型還元触媒SCRLを複数設ける場合や、他のSCRを併用する場合、これらが離間して配置されている場合には、還元剤供給手段Red.の噴霧ノズルを複数箇所に設けてもよい。
【0072】
還元成分としては、尿素成分又はアンモニア成分から選ばれる。尿素成分としては、濃度31.8~33.3重量%の規格化された尿素水溶液、例えば商品名アドブルー(Adblue)等を使用でき、またアンモニア成分であれば、アンモニア水の他、アンモニアガス等を使用することもできる。なお、還元成分であるNH3は、それ自体に刺激臭等の有害性があるため、還元成分としてはNH3をそのまま使用するよりも、第1選択型還元触媒SCRLの上流側から尿素水を添加して、熱分解や加水分解によりNH3を発生させ、これを還元剤として作用させる方式が好ましい。
【0073】
[加熱装置Heater]
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100において、還元剤供給手段Red.の噴霧ノズルの下流側であって第1選択型還元触媒SCRLの上流側の排ガス流路には、電気加熱式の加熱装置Heater(触媒加熱ヒーター)が設けられている。この加熱装置は、図示しないECU及び車載電源に電気的に接続されており、これらの出力制御により加熱装置Heaterの温度、ひいては排ガス流路中の排ガス温度が制御可能となっている。そして、還元剤供給手段Red.から供給された尿素成分及びアンモニア成分よりなる群から選択される1以上の還元剤は、排ガス流路中で加熱装置Heaterにより加温されて、熱分解や加水分解によりNH3となり、その下流側の第1選択型還元触媒SCRLに吸着される。尿素の加水分解反応は、その反応性は尿素水の濃度、配合組成、pH等によって変動し得るが、排ガス流路中の排ガス温度を制御することで効率的に制御可能である。また、排ガス流路には、ECUに電気的に接続された温度センサやNOxセンサ等が各所に設けられており、排ガスのNOx濃度や排ガス温度が随時モニタリングされている。
【0074】
本実施形態では、加熱装置Heaterとして、メタルハニカムと、その外周に装着されるジャケット型の電気ヒータと、メタルハニカム本体内に一部埋設するように装着されたコイル型の電気ヒータから構成されている(図示省略)。このメタルハニカムは、制御部ECUの制御により電気的に加熱可能になっており、メタルハニカムの発熱により、排ガス流路中を通過する排ガスの温度を制御可能になっている。また、本実施形態においては、排気路51の外周には断熱保温材が全長に亘って設けられている(図示省略)。断熱保温材としては、当業界で公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、例えばセルロースファイバーやロックウール等を用いたものが好適に用いられる。ここで用いている加熱装置Heaterは、例えばジャケット型の電気加熱式ヒータのみであってもよいし、また、メタルハニカム本体にSCR触媒が担持されたEHC(Electrically Heated Catalyst)であってもよい。また、メタルハニカムの加熱は、メタルハニカム本体に通電することで、メタルハニカムそのものを直接発熱させることで行うこともできる。この場合、メタルハニカムを車載電源に接続し、制御部ECUにより、その出力制御を行うことで、メタルハニカムの温度、ひいては排ガス流路中の排ガス温度が制御可能である。
【0075】
[アンモニア酸化触媒AMOX]
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100において、第1選択型還元触媒SCRLの下流側には、余剰のアンモニアを酸化除去するアンモニア酸化触媒AMOXが設けられている。アンモニア酸化触媒AMOXとしては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。
【0076】
通常、尿素SCRシステムではNOxやNH3が規制値以下まで浄化し切れない場合にアンモニア酸化触媒AMOXが追加使用される。そのため、アンモニア酸化触媒AMOXにはNH3の酸化機能を有する触媒の他、NOxの浄化機能を有する触媒成分も含まれている。NH3の酸化機能を有する触媒としては、貴金属成分として、白金、パラジウム、ロジウムなどから選ばれる一種以上の元素をアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの一種以上からなる無機材料の上に担持したものが好ましい。また、希土類、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の助触媒を加えて耐熱性を向上させた無機材料を使用することも好ましい。貴金属としての白金及びパラジウムは、優れた酸化活性を発揮する。これを、比表面積が高く、耐熱性も高い上記無機材料に担持することにより、貴金属成分が焼結し難くなり、貴金属の比表面積を高く維持することで活性サイトが増え、高い活性を発揮することができる。一方、NOxの浄化機能を有する触媒としては、第1選択型還元触媒SCRLの項で述べた非ゼオライト系触媒材料やゼオライト系触媒材料のすべてが使用できる。これら二種類の触媒は、均一に混合して一体型を有するハニカム構造体に塗布すればよいが、NH3の酸化機能を有する触媒を下層に、NOxの浄化機能を有する触媒を上層に塗布してもよい。なお、アンモニア酸化触媒AMOXの容量(サイズ)や触媒材料の塗工量等は、本実施形態の希薄燃焼用エンジン排ガス浄化装置100を適用するエンジンの種類や排気量等を考慮し、また、必要とされる触媒量や浄化性能等に応じて、適宜調整することができ、特に限定されない。
【0077】
上記のアンモニア酸化触媒AMOXは、要求性能等に応じて複数個(例えば2~5個)設けられていてもよい。また、1つの触媒担体上に2種の触媒材料をゾーンコートして、ゾーンコートAMOX(zAMOX)として使用することもできる。複数個のアンモニア酸化触媒AMOXを設ける場合、アンモニア酸化触媒AMOXの配列状態は特に限定されない。すなわち、複数個のアンモニア酸化触媒AMOXは、隣接して配置されていてもよく、離間して配置されていてもよい。余剰のアンモニアを酸化除去する観点から、少なくとも1つの複数個のアンモニア酸化触媒AMOXが、第1選択型還元触媒SCRLの下流側に設けられていることが好ましく、好ましくは酸化触媒Ox及び第1選択型還元触媒SCRLを含む排ガス流路において最下流に設けられていることがより好ましい。
【0078】
[プラズマ発生装置Pl.]
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100において、酸化触媒Oxの下流側であって第1選択型還元触媒SCRLの上流側には、排ガスをプラズマ処理するプラズマ発生装置Pl.が設けられている。このプラズマ発生装置Pl.は、大気中放電などで得られる電子エネルギーの低い低温プラズマを発生させる、所謂大気圧プラズマ発生装置(プラズマリアクター)である。プラズマ発生装置Pl.としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。このプラズマ発生装置Pl.が発生するプラズマにより排ガス流路を通過する排ガスが処理され、NOx濃度がより低減する(所謂プラズマアシストSCR)。
【0079】
本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100は、尿素SCRシステムを搭載したディーゼルエンジン等の内燃機関から生じる排ガスを浄化するための装置として用いることができ、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス浄化用触媒、とりわけディーゼル自動車の排ガス浄化装置として有用である。
【0080】
(変形例)
なお、本実施形態の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置100は、各種希薄燃焼エンジンの排気系に配置することができる。上述したとおり、酸化触媒Ox、還元剤供給手段Red.、第1選択型還元触媒SCRL、微粒子捕集フィルターPF、他の選択型還元触媒SCR、プラズマ発生装置Pl.還元剤供給手段Red.アンモニア酸化触媒AMOX等の設置個数、設置個所、これらの配列は、本実施形態のものに特に限定されず、排ガスの規制、適用する希薄燃焼エンジンの種類や排気量、必要とされる触媒量や浄化性能等に応じて、適宜調整することができ、特に限定されない。例えば、設置箇所は、排気系の直下位置、その後方の床下位置の複数箇所等から適宜選択することができる。
【0081】
例えば図4~7に示すように、SCRLを複数個設置する、DOCを複数設置する、第一触媒層L1や第二触媒層L2をゾーンコートしたzSCRLoFを設置する、SCRやSCRLとzSCRLoFとを併用する、酸化触媒OxをゾーンコートしたzDOCを設置する、zDOCとDOCを併用する、zSCRoFとzSCRを併用する、cPFを設置する、zSCRを設置する、AMOXを複数設置する、DOC-LNTを設置する、cPFを設置する等、任意のレイアウトで実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置及び第1選択型還元触媒は、触媒塗工量あたりの単価が比較的に安く、アンモニア吸着量が比較的に低い条件下~比較的に高い条件下にわたって優れたNOx浄化性能を発現可能であるため、希薄燃焼の内燃機関の排ガス浄化装置として広く且つ有効に利用することができ、とりわけリーンバーンガソリン自動車やディーゼル自動車の排ガス浄化装置として有用である。
【符号の説明】
【0083】
100 ・・・希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置
11 ・・・基材
21 ・・・積層触媒
L1 ・・・第一触媒層
L2 ・・・第二触媒層
Ox ・・・酸化触媒
DOC ・・・酸化触媒(ディーゼル酸化触媒)
LNT ・・・酸化触媒(NOx吸蔵触媒)
PF ・・・パティキュレートフィルター(ディーゼルパティキュレートフィルターDOC)
Red.・・・還元剤供給手段
SCR ・・・選択型還元触媒
SCRL・・・選択型還元触媒(L1/L2積層)
SCR1 ・・・選択型還元触媒(L1単層)
SCR2 ・・・選択型還元触媒(L2単層)
AMOX・・・アンモニア酸化触媒
Heater ・・・加熱装置
Pl. ・・・プラズマ発生装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10