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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】伝達機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240626BHJP
   F16H 57/039 20120101ALI20240626BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20240626BHJP
   F16N 39/06 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F16H57/04 F
F16H57/039
F16H57/04 Z
F16N31/00 D
F16N39/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021562582
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2020043604
(87)【国際公開番号】W WO2021111923
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2019221102
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390006585
【氏名又は名称】株式会社三共製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴司
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-064962(JP,U)
【文献】実開昭59-141294(JP,U)
【文献】特開2013-002572(JP,A)
【文献】特開2017-089663(JP,A)
【文献】実開昭62-153460(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16H 57/039
F16N 31/00
F16N 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに収容され、第1の回転部材軸線を中心として回転可能な第1の回転部材であって、その回転方向に沿って複数の軸受又は歯部を備える第1の回転部材と、前記ハウジングに収容され、前記第1の回転部材を潤滑させるための潤滑剤とを備える伝達機構であって、
前記伝達機構は、前記ハウジングに収容され、前記潤滑剤に含まれる粉塵を濾過するための第1の濾過部材を更に備え、
前記第1の回転部材の前記第1の回転部材軸線を中心とする回転及び前記第1の回転部材において発生された熱に起因して生じる前記潤滑剤の攪拌及び対流によって、前記軸受又は歯部から離れるように流される前記潤滑剤が、前記第1の濾過部材を前記第1の回転部材軸線の方向に通過することができるように、前記第1の濾過部材は、前記複数の軸受又は歯部に対して前記第1の回転部材軸線の方向の近傍に前記第1の回転部材の回転方向に沿って設けられ
前記第1の濾過部材は、前記複数の軸受又は歯部から離れるに従って粒径の小さい粉塵を吸着するように、前記第1の回転部材軸線の方向に前記複数の軸受又は歯部から離れるに従って小さいサイズの孔を有する多孔質材から構成されている、伝達機構。
【請求項2】
前記第1の濾過部材は、前記潤滑剤より高い熱伝導性を有する、請求項1に記載の伝達機構。
【請求項3】
前記第1の濾過部材と前記第1の回転部材との間に間隙が設けられる、請求項1又は2に記載の伝達機構。
【請求項4】
前記第1の濾過部材は、前記ハウジングから取外可能である、請求項1~の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項5】
前記伝達機構は、前記潤滑剤によって潤滑され、第2の回転部材軸線を中心として回転可能な第2の回転部材を更に備え、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との間の接触によって、前記第1の回転部材及び前記第2の回転部材のうちの一方の回転が、前記第1の回転部材及び前記第2の回転部材のうちの他方の回転を可能にし、
前記第1の回転部材及び前記第2の回転部材が回転している間に、前記第1の回転部材の前記第2の回転部材と接触していない部分によって前記潤滑剤は攪拌され、前記第1の濾過部材は、前記潤滑剤が前記第1の回転部材の接触していない部分からの攪拌によって流される方向に設けられる、請求項1~の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項6】
前記伝達機構は、前記ハウジングに収容され、前記潤滑剤に含まれる粉塵を濾過するための第2の濾過部材を更に備え、前記第1の回転部材及び前記第2の回転部材が回転している間に、前記第2の回転部材の前記第1の回転部材と接触していない部分によって前記潤滑剤は攪拌され、前記第2の濾過部材は、前記潤滑剤が前記第2の回転部材の接触していない部分からの攪拌によって流される方向に設けられる、請求項に記載の伝達機構。
【請求項7】
前記第2の回転部材において発生された熱によって前記潤滑剤は対流し、前記第2の濾過部材は、前記潤滑剤が前記第2の回転部材からの対流によって流される方向に設けられる、請求項に記載の伝達機構。
【請求項8】
前記第2の回転部材に、前記第1の回転部材の前記複数の軸受又は歯部に接触するためのスクリュー状の溝が設けられ、前記第2の濾過部材は、前記スクリュー状の溝の端部に設けられる、請求項又はに記載の伝達機構。
【請求項9】
各軸受は、前記第1の回転部材が前記第1の回転部材軸線を中心として回転することによって前記第2の回転部材に接触、前記第2の回転部材と接触していない軸受によって前記潤滑剤は攪拌され、前記第1の濾過部材は、前記潤滑剤が前記接触していない軸受から流される方向に設けられる、請求項の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項10】
各歯部は、前記第1の回転部材が前記第1の回転部材軸線を中心として回転することによって前記第2の回転部材に接触、前記第2の回転部材と接触していない歯部によって前記潤滑剤は攪拌され、前記第1の濾過部材は、前記潤滑剤が前記接触していない歯部から流される方向に設けられる、請求項の何れか一項に記載の伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤の劣化を抑制することによって、精度劣化の抑制及び長寿命化を可能にする伝達機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝達機構の一例としてのカム機構は、一方の軸としてのカムリブを有するカムと、他方の軸としての回転部材に固定された軸受との係合によって、カムと回転部材のうちの一方の軸を入力軸、他方の軸を出力軸として動力を伝達する機構であって、入力軸と出力軸の軸間距離を操作することで軸受とカムとの間の接触面に予圧を発生させて、入出力間でのバックラッシを無くすことができる。伝達機構の製造の際には、部品誤差及び組立誤差が生じ、伝達機構の製造過程において、洗浄不足、組立工程、等による微小なコンタミナント(汚染物)が介在する場合がある。また、軸受がカムに接触することによって、軸受とカムとの間に摩擦が生じ、軸受及びカムは摩耗して粉塵を発生させる。
【0003】
特許文献1には、モータと、モータによって駆動されるギヤと、ギヤを冷却するための潤滑剤と、潤滑剤を貯留し、ギヤを潤滑剤に浸漬するための潤滑剤貯留手段とを備える回転伝達機構が開示されている。ギヤは、第1平歯車と、第2平歯車と、従動軸と、ウォームギヤ(又はローラギヤカム)と、ウォームホイール(又はローラギヤカムに係合する複数の軸受が放射状且つ等間隔に周囲に配置されたターレット)と、回転軸とから構成される。潤滑剤貯留手段には、第1平歯車、第2平歯車、ウォームギヤが完全に浸漬するように潤滑剤が貯留されている。モータから発生した熱はギヤへと伝熱され、伝熱された熱は、ギヤが浸漬する潤滑剤へと伝熱されることによってギヤは冷却される。伝達機構における潤滑剤の機能として、主に潤滑作用、冷却作用、防錆作用、磨耗粉洗浄作用がある。防錆作用は潤滑剤に含まれる添加剤等に依存するが、潤滑作用、冷却作用、磨耗粉洗浄作用は、使用条件及び環境による影響が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-101989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の回転伝達機構において、ギヤの潤滑は、潤滑剤貯留手段内に貯留されている潤滑剤によって行われている。しかし、潤滑剤を潤滑剤貯留手段の中に多量に貯留すると、潤滑剤による撹拌抵抗が増加して熱が発生するという問題点がある。また、潤滑剤貯留手段の中に潤滑剤を充填しておくことは、潤滑剤貯留手段の外に潤滑剤が漏れ出す虞があるという問題点がある。そして、特に高速及び/又は高負荷条件下において、特許文献1の回転伝達機構が使用される場合には、潤滑剤への汚染物及び/又は粉塵の混入が、三元アブレシブ磨耗の原因となって精度劣化及び寿命低下を招き、更には故障する虞があって、商品力を低下させるという問題点がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決するために、潤滑剤の劣化を抑制することによって、精度劣化の抑制及び長寿命化を可能にする伝達機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点によれば、ハウジングと、ハウジングに収容され、第1の回転部材軸線を中心として回転可能な第1の回転部材と、ハウジングに収容され、第1の回転部材を潤滑させるための潤滑剤とを備える伝達機構が、ハウジングに収容され、潤滑剤に含まれる粉塵を濾過するための第1の濾過部材を更に備え、第1の回転部材の第1の回転部材軸線を中心とする回転によって潤滑剤が攪拌され、第1の濾過部材が、潤滑剤が第1の回転部材からの攪拌によって流される方向に設けられる。
【0008】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第1の回転部材において発生された熱によって潤滑剤が対流し、第1の濾過部材が、潤滑剤が第1の回転部材からの対流によって流される方向に設けられる。
【0009】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第1の濾過部材が、潤滑剤が第1の回転部材から流される方向に従って粒径の小さい粉塵を吸着する。
【0010】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第1の濾過部材が、多孔質材から構成されている。
【0011】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、多孔質材が、潤滑剤が第1の回転部材から流される方向に従って、小さいサイズの孔を有する。
【0012】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第1の濾過部材が、第1の回転部材の回転方向に沿って設けられる。
【0013】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第1の濾過部材と第1の回転部材との間に間隙が設けられる。
【0014】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第1の濾過部材が、ハウジングから取外可能である。
【0015】
本発明の一具体例によれば、伝達機構が、潤滑剤によって潤滑され、第2の回転部材軸線を中心として回転可能な第2の回転部材を更に備え、第1の回転部材と第2の回転部材との間の接触によって、第1の回転部材及び第2の回転部材のうちの一方の回転が、第1の回転部材及び第2の回転部材のうちの他方の回転を可能にし、第1の回転部材及び第2の回転部材が回転している間に、第1の回転部材の第2の回転部材と接触していない部分によって潤滑剤が攪拌され、第1の濾過部材が、潤滑剤が第1の回転部材の接触していない部分からの攪拌によって流される方向に設けられる。
【0016】
本発明の一具体例によれば、伝達機構が、ハウジングに収容され、潤滑剤に含まれる粉塵を濾過するための第2の濾過部材を更に備え、第1の回転部材及び第2の回転部材が回転している間に、第2の回転部材の第1の回転部材と接触していない部分によって潤滑剤が攪拌され、第2の濾過部材が、潤滑剤が第2の回転部材の接触していない部分からの攪拌によって流される方向に設けられる。
【0017】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第2の回転部材において発生された熱によって潤滑剤が対流し、第2の濾過部材が、潤滑剤が第2の回転部材からの対流によって流される方向に設けられる。
【0018】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第2の回転部材に、第1の回転部材に接触するためのスクリュー状の溝が設けられ、第2の濾過部材が、スクリュー状の溝の端部に設けられる。
【0019】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第1の回転部材が、その回転方向に沿って、第2の回転部材に接触するための複数の軸受を備え、第2の回転部材と接触していない軸受によって潤滑剤が攪拌され、第1の濾過部材が、潤滑剤が接触していない軸受から流される方向に設けられる。
【0020】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第1の回転部材が、その回転方向に沿って、第2の回転部材に接触するための複数の歯部を有する歯車を備え、第2の回転部材と接触していない歯部によって潤滑剤が攪拌され、第1の濾過部材が、潤滑剤が接触していない歯部から流される方向に設けられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、潤滑剤が流される方向に濾過部材を設けることによって、潤滑剤のための洗浄効果を高めて潤滑剤の劣化を抑制することができる。
【0022】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態としての伝達機構の一部透過的に示す斜視図である。
図2図1の伝達機構の一部透過的に一部断面を示す斜視図である。
図3図1の伝達機構の上面から視た断面を示す斜視図である。
図4図1の伝達機構の側面から視た断面図である。
図5】本発明の伝達機構における第1の濾過部材の様々な形状の斜視図である。
図6】本発明の別の実施形態としての伝達機構の上面から視た断面図である。
図7図6の伝達機構の側面から視た断面図である。
図8】本発明の別の実施形態としての伝達機構の上面から視た断面図である。
図9図8の伝達機構の側面から視た断面図である。
図10図8の伝達機構の側面から視た断面図である。
図11】本発明の別の実施形態としての伝達機構の上面から視た断面図である。
図12図11の伝達機構の側面から視た断面図である。
図13】本発明の別の実施形態としての伝達機構の一部透過的に示す斜視図である。
図14図13の伝達機構の一部透過的に一部断面を示す斜視図である。
図15図13の伝達機構の一部透過的に一部断面を示す斜視図である。
図16図13の伝達機構の一部透過的に一部断面を示す斜視図である。
図17図13の伝達機構の上面から視た断面を示す斜視図である。
図18図13の伝達機構の側面から視た断面図である。
図19】本発明の別の実施形態としての伝達機構の側面から視た断面図である。
図20】本発明の別の実施形態としての伝達機構の側面から視た断面図である。
図21】本発明の別の実施形態としての伝達機構の上面から視た断面図である。
図22図21の伝達機構の側面から視た断面図である。
図23図21の伝達機構の側面から視た断面図である。
図24】本発明の別の実施形態としての伝達機構の上面から視た断面図である。
図25図24の伝達機構の側面から視た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
図1図4を参照して、伝達機構101の一実施形態を説明する。伝達機構101は、ハウジング102と、ハウジング102に収容され、第1の回転部材軸線107を中心として回転可能な第1の回転部材103と、ハウジング102に収容され、第1の回転部材103を潤滑させるための潤滑剤とを備える。伝達機構101は、ハウジング102に収容され、潤滑剤に含まれる粉塵を濾過するための第1の濾過部材104を更に備える。第1の濾過部材104は、ハウジング102に固定される。第1の回転部材103の第1の回転部材軸線107を中心とする回転によって潤滑剤は攪拌され、第1の濾過部材104は、潤滑剤が第1の回転部材103からの攪拌によって流される方向に設けられる。例えば、第1の回転部材103が第1の回転部材軸線107を中心として回転すると、潤滑剤は、第1の回転部材103からの遠心力によって径方向外側に流されるように攪拌される。潤滑剤が攪拌によって流される方向である第1の回転部材103の径方向外側には第1の濾過部材104が設けられ、第1の濾過部材104を通過する潤滑剤に含まれる粉塵は第1の濾過部材104に吸着される。この場合には、第1の濾過部材104は、第1の回転部材103の回転方向に沿って設けられてもよい。攪拌された潤滑剤は、第1の濾過部材104によって洗浄されて潤滑剤の清浄度を保持し、潤滑剤の劣化を抑制することができる。また、潤滑剤の劣化を抑制することによって、伝達機構101の精度劣化を抑制し、高速及び/又は高負荷条件下におけるフレッティング及び/又はスミアリングを抑制し、伝達機構101のメンテナンスサイクルを長期化し、伝達機構101を長寿命化することができる。なお、第1の濾過部材104は、伝達機構101の従来からのデッドスペース内に設置されることが可能である。
【0026】
第1の回転部材103において発生された熱によって潤滑剤は対流する。熱移動形態には熱伝導、対流熱伝達、輻射、等がある。対流とは、流体中の温度差によって密度差が形成されるために浮力が生じて流動が発生することをいう。対流熱伝達とは、温度上昇した流体塊の対流によって熱が運ばれることをいう。第1の回転部材103による回転によって第1の回転部材103において熱が発生し、その熱によって潤滑剤の対流が発生する。第1の濾過部材104は、潤滑剤が第1の回転部材103からの対流によって流される方向に設けられてもよい。例えば、高温の第1の回転部材103から低温のハウジング102の方向に対流が発生する。従って、第1の回転部材103とハウジング102との間に第1の濾過部材104が設けられてもよい。潤滑剤は、この対流によって第1の濾過部材104に流されてそれを通過し、潤滑剤に含まれる粉塵は、第1の濾過部材104に吸着される。この場合には、第1の濾過部材104は、第1の回転部材103の回転方向に沿って設けられてもよい。対流された潤滑剤は、第1の濾過部材104によって洗浄されて潤滑剤の清浄度を保持し、潤滑剤の劣化を抑制することができる。また、潤滑剤の劣化を抑制することによって、伝達機構101の精度劣化を抑制し、高速及び/又は高負荷条件下におけるフレッティング及び/又はスミアリングを抑制し、伝達機構101のメンテナンスサイクルを長期化し、伝達機構101を長寿命化することができる。また、高温の第1の回転部材103において発生した熱は、潤滑剤を介して対流熱伝達によって低温のハウジング102の方向に運ばれ、潤滑剤は、ハウジング102の近傍において冷却される。第1の濾過部材104と第1の回転部材103との間に間隙が設けられ、冷却された潤滑剤は、ハウジング102から第1の回転部材103の方向に流されて間隙の中に入り、第1の回転部材103を冷却し、第1の回転部材103の温度を低下させることができ、更には、伝達機構101の精度劣化を抑制することができる。なお、ハウジング102に収容される潤滑剤は、液状潤滑剤、半固体潤滑剤、固体潤滑剤、液晶潤滑剤、及びゲル状潤滑剤のうちの少なくとも1つを含んでもよい。例えば、潤滑剤は、グリス、油、等であってもよい。ハウジング101に収容される潤滑剤は、必要に応じて選択されることができるが、ハウジング102内において攪拌及び/又は対流を生じさせることができる潤滑剤が好ましい。
【0027】
伝達機構101内において発生された熱によって、ハウジング102内において潤滑剤を媒体として熱伝導及び対流が発生し、発生された熱は、潤滑剤を介してハウジング102から大気に放散される。ハウジング102内において、潤滑剤の対流として、自然対流熱伝達に加えて、第1の回転部材103の第1の回転部材軸線107を中心とする回転に起因する攪拌による強制対流熱伝達が発生する。強制対流においては、媒体は、低粘度になるほど熱伝達率が高いので、低粘度である潤滑剤(例えば、流動性のある潤滑剤、液状潤滑剤)ほど、強制対流による冷却作用を有する潤滑剤として期待されることができ、媒体として好ましい。しかし、このような潤滑剤であっても、鉄鋼、非鉄、樹脂、等と比較すると、熱伝導率が低いために伝達機構101から熱を放散にしにくい場合がある。また、熱伝達率は、媒体の熱伝導率及び表面積の影響を受けるので、熱伝達率を高めるには、媒体を薄くし、媒体の表面積を広くし、熱伝導のよい媒体を選択することである。そして、少量の潤滑剤で、第1の回転部材103を効率よく潤滑させる一方で、第1の回転部材103を冷却させることが好ましいが、潤滑剤が少量で、上記のような粉塵等の汚染物が介在した場合には、潤滑剤の汚染度が高くなる傾向となって、汚染物への対策が必要であり、且つ攪拌による強制対流の冷却効果を損なわない配慮も重要である。そこで、攪拌による強制対流の冷却効果を損なわない配慮として、ハウジング102内に第1の回転部材103を冷却させるための最低限の空間の確保し、冷却作用が期待されるような高熱伝導率(材質(鉄鋼、非鉄、樹脂、等)、形状、等)を有する第1の濾過部材104を採用し、及び/又は汚染物に対する洗浄作用を有する第1の濾過部材104を採用してもよい。このように、ハウジング101に収容される潤滑剤を選択し、第1の濾過部材104の材質、形状、等を選択して、最適な潤滑剤及び第1の濾過部材104を採用することができる。また、潤滑剤を少量とすることによって、給油、廃油処理、等のメンテナンスが経済的であり、環境負荷の軽減が期待される。
【0028】
図1図4に示されるように、第1の回転部材103は、動力を伝達する構成要素として軸受109を備えてもよい。軸受109の第1の回転部材軸線107を中心とする回転によって潤滑剤は攪拌され、第1の濾過部材104は、潤滑剤が軸受109からの攪拌によって流される方向に設けられる。例えば、軸受109が第1の回転部材軸線107を中心として回転すると、潤滑剤は遠心力によって径方向外側に流されるように攪拌される。潤滑剤が攪拌によって流される方向である軸受109の径方向外側には第1の濾過部材104が設けられ、第1の濾過部材104を通過する潤滑剤に含まれる粉塵は第1の濾過部材104に吸着される。また、軸受109による回転によって軸受109において熱が発生し、その熱によって潤滑剤の対流が発生する。例えば、高温の軸受109から離れる方向に対流が発生する。従って、潤滑剤が軸受109からの対流によって流される方向に、例えば、軸受109の上側、下側、及び軸受109とハウジング102との間の何れかに第1の濾過部材104は設けられてもよい。潤滑剤は、この対流によって第1の濾過部材104に流されてそれを通過し、潤滑剤に含まれる粉塵は、第1の濾過部材104に吸着される。この場合には、第1の濾過部材104は、軸受109を取り囲むように第1の回転部材103の回転方向に沿って設けられてもよい。
【0029】
なお、第1の回転部材103は、動力を伝達することができるものであればよく、例えば歯車を備えてもよい。軸受109と同様に、歯部の第1の回転部材軸線107を中心とする回転によって潤滑剤は攪拌され、第1の濾過部材104は、潤滑剤が歯部からの攪拌によって流される方向に設けられる。また、歯部による回転によって歯部において発生された熱によって潤滑剤が対流し、第1の濾過部材104は、潤滑剤が第1の回転部材103からの対流によって流される方向に設けられる。
【0030】
第1の濾過部材104は、潤滑剤が第1の回転部材103からの攪拌及び/又は対流によって流される方向に従って粒径の小さい粉塵を吸着してもよい。潤滑剤は、第1の回転部材103の形状に応じて攪拌及び/又は対流を生じる。第1の濾過部材104は、潤滑剤の攪拌及び/又は対流を生じさせる第1の回転部材103の部分から近い部分において粒径の大きい粉塵を吸着し、攪拌及び/又は対流を生じさせる第1の回転部材103の部分からの遠くなるに従って、徐々に粒径の小さい粉塵を吸着するように構成されてもよい。例えば、第1の回転部材103が軸受109又は歯部を備える場合には、軸受109又は歯部によって攪拌及び/又は対流は生じることから、軸受109又は歯部の上側、下側、及び軸受109又は歯部とハウジング102との間の何れかに第1の濾過部材104を設けて、第1の濾過部材104は、軸受109又は歯部から近い部分において粒径の大きい粉塵を吸着し、軸受109又は歯部からの遠くなるに従って、徐々に粒径の小さい粉塵を吸着するように構成されてもよい
【0031】
第1の濾過部材104は、多孔質材から構成されてもよい。多孔質材の孔のサイズが、潤滑剤の攪拌及び/又は対流を生じさせる第1の回転部材103の部分から近い部分においては粗くなるようにし、潤滑剤の攪拌及び/又は対流を生じさせる第1の回転部材103の部分から離れるに従って、徐々に細かくなるように、第1の濾過部材104は、プレフェルトレーション機能を有してもよい。
【0032】
第1の濾過部材104は、ハウジング102から取外可能であってもよい。第1の濾過部材104は、第1の回転部材103からの攪拌及び/又は対流によって流される潤滑剤に含まれる粉塵を吸着することによって目詰まりを生じるが、第1の濾過部材104をハウジング102から取り外して、第1の濾過部材104を洗浄して再度第1の濾過部材104をハウジング102に収容したり、新たな第1の濾過部材104に交換してハウジング102に収容したりすることができる。
【0033】
第1の濾過部材104は、図5に示されるように、第1の回転部材103からの攪拌及び/又は対流によって流される潤滑剤の方向及び/又は量、第1の濾過部材104が配置される空間の大きさ、第1の濾過部材104に使用される材料の性質、潤滑剤に含まれる粉塵の大きさ及び/又は量、等に応じて様々な形状を有してもよい。例えば、第1の濾過部材104は、(a)のように断面が略コの字の形状であってもよく、吸着される粉塵の大きさ及び/又は量に従って、(b)のように断面が略コの字の形状に補強部分を加えた形状であってもよく、(c)のように断面が略長方形の一体型タイプであってもよい。また、第1の濾過部材104は、第1の回転部材103からの攪拌及び/又は対流によって流される潤滑剤の方向が第1の回転部材軸線107に対して軸線方向である場合には、(d)のようにアキシャルフロータイプであってもよいし、第1の回転部材103からの攪拌及び/又は対流によって流される潤滑剤の方向が第1の回転部材軸線107に対して径方向である場合には、(e)のようにデプス・プリーツタイプ(ラジアルフロータイプ)であってもよい。また、第1の濾過部材104は、潤滑剤の攪拌及び/又は対流を生じさせる第1の回転部材103の部分から近い部分において大きい粒径の粉塵を吸着させ、潤滑剤の攪拌及び/又は対流を生じさせる第1の回転部材103の部分から遠い部分において小さい粒径の粉塵を吸着させる場合には、(f)のように多層型タイプであってもよい。なお、第1の濾過部材104は、スポンジ、フェルト、等の部材であってもよいし、磁性を有する部材であってもよく、潤滑剤に含まれる粉塵に対して吸着性の高い部材であればよい。
【0034】
伝達機構101は、図1図4に示されるように、潤滑剤によって潤滑され、第2の回転部材軸線108を中心として回転可能な第2の回転部材105を更に備える。第1の回転部材103と第2の回転部材105との間の接触によって、第1の回転部材103及び第2の回転部材105のうちの一方の回転が、第1の回転部材103及び第2の回転部材105のうちの他方の回転を可能にする。例えば、第2の回転部材105を入力軸として回転すると、第1の回転部材103と第2の回転部材105との間の接触によって、出力軸としての第1の回転部材103が回転し、また、第1の回転部材103を入力軸として回転すると、第1の回転部材103と第2の回転部材105との間の接触によって、出力軸としての第2の回転部材105が回転する。第1の回転部材103及び第2の回転部材105が回転している間に、第1の回転部材103の第2の回転部材105と接触していない部分によって潤滑剤は攪拌され、第1の濾過部材104は、潤滑剤が第1の回転部材103の第2の回転部材105と接触していない部分からの攪拌によって流される方向に設けられる。例えば、第1の回転部材103が第2の回転部材105と接触しながら第1の回転部材軸線107を中心として回転すると、潤滑剤は、第1の回転部材103の第2の回転部材105と接触していない部分からの遠心力によって径方向外側に流されるように攪拌される。潤滑剤が攪拌によって流される方向である第1の回転部材103の第2の回転部材105と接触していない部分の径方向外側に、第1の濾過部材104は設けられ、第1の濾過部材104を通過する潤滑剤に含まれる粉塵は第1の濾過部材104に吸着される。この場合には、第1の濾過部材104は、第1の回転部材103の第2の回転部材105と接触していない部分に沿って設けられてもよい。攪拌された潤滑剤は、第1の濾過部材104によって洗浄されて潤滑剤の清浄度を保持し、潤滑剤の劣化を抑制することができる。また、潤滑剤の劣化を抑制することによって、伝達機構101の精度劣化を抑制し、高速及び/又は高負荷条件下におけるフレッティング及び/又はスミアリングを抑制し、伝達機構101のメンテナンスサイクルを長期化し、伝達機構101を長寿命化することができる。
【0035】
伝達機構101は、ハウジング102に収容され、潤滑剤に含まれる粉塵を濾過するための第2の濾過部材106を更に備えてもよい。第2の濾過部材106は、ハウジング102に固定される。第1の回転部材103及び第2の回転部材105が回転している間に、第2の回転部材105の第1の回転部材103と接触していない部分によって潤滑剤は攪拌され、第2の濾過部材106は、潤滑剤が第2の回転部材105の第1の回転部材103と接触していない部分からの攪拌によって流される方向に設けられる。例えば、第2の回転部材105に第1の回転部材103に接触するためのスクリュー状の溝が設けられる場合、第2の回転部材105が第1の回転部材103と接触しながら第2の回転部材軸線108を中心として回転すると、潤滑剤は、第2の回転部材105の第1の回転部材103と接触していないスクリュー状の溝のスクリュー効果によって第2の回転部材軸線108に沿って流されるように攪拌される。潤滑剤が攪拌によって流される方向である第2の回転部材軸線108の軸線方向外側に、第2の濾過部材106は設けられ、第2の濾過部材106を通過する潤滑剤に含まれる粉塵は第2の濾過部材106に吸着される。この場合には、第2の濾過部材106は、スクリュー状の溝の端部に設けられてもよい。攪拌された潤滑剤は、第2の濾過部材106によって洗浄されて潤滑剤の清浄度を保持し、潤滑剤の劣化を抑制することができる。また、潤滑剤の劣化を抑制することによって、伝達機構101の精度劣化を抑制し、高速及び/又は高負荷条件下におけるフレッティング及び/又はスミアリングを抑制し、伝達機構101のメンテナンスサイクルを長期化し、伝達機構101を長寿命化することができる。
【0036】
第2の回転部材105によって発生された熱によって潤滑剤は対流する。第2の回転部材105による回転によって第2の回転部材105において熱が発生し、その熱によって潤滑剤の対流が発生する。第2の濾過部材106は、潤滑剤が第2の回転部材からの対流によって流される方向に設けられてもよい。例えば、高温の第2の回転部材105から低温のハウジング102の方向に対流が発生する。従って、第2の回転部材105とハウジング102との間に第2の濾過部材106が設けられてもよい。潤滑剤は、この対流によって第2の濾過部材106に流されてそれを通過し、潤滑剤に含まれる粉塵は、第2の濾過部材106に吸着される。この場合には、第2の濾過部材106は、第2の回転部材105の回転方向に沿って設けられてもよい。対流された潤滑剤は、第2の濾過部材106によって洗浄されて潤滑剤の清浄度を保持し、潤滑剤の劣化を抑制することができる。また、潤滑剤の劣化を抑制することによって、伝達機構101の精度劣化を抑制し、高速及び/又は高負荷条件下におけるフレッティング及び/又はスミアリングを抑制し、伝達機構101のメンテナンスサイクルを長期化し、伝達機構101を長寿命化することができる。また、高温の第2の回転部材105において発生した熱は、潤滑剤を介して対流熱伝達によって低温のハウジング102の方向に運ばれ、潤滑剤は、ハウジング102の近傍において冷却される。第2の濾過部材106と第2の回転部材105との間に間隙が設けられ、冷却された潤滑剤は、ハウジング102から第2の回転部材105の方向に流されて間隙の中に入り、第2の回転部材105を冷却し、第2の回転部材105の温度を低下させることができ、更には、伝達機構101の精度劣化を抑制することができる。
【0037】
第1の回転部材103は、その回転方向に沿って第2の回転部材105に接触するための複数の軸受109を備え、第2の回転部材105は、複数の軸受109に係合する形状を有してもよい。このような伝達機構101として、例えば鼓型カム機構がある。第1の回転部材103及び第2の回転部材105が回転している間に、第2の回転部材105と接触していない軸受109によって潤滑剤は攪拌され、第1の濾過部材104は、潤滑剤が第2の回転部材105と接触していない軸受109から流される方向に設けられる。また、軸受109による回転によって軸受109において熱が発生し、その熱によって潤滑剤の対流が発生する。従って、潤滑剤が軸受109からの対流によって流される方向に、第1の濾過部材104は設けられてもよい。この場合には、第1の濾過部材104は、第2の回転部材105と接触していない軸受109を取り囲むように第1の回転部材103の回転方向に沿って設けられてもよい。なお、第1の濾過部材104は、軸受109の第1の回転部材103への取り付け前にハウジング102に収容されてもよい。
【0038】
各軸受109は、内輪部と、内輪部の側面に沿って内輪部の周りに回転可能な略円筒形の外輪部とを備えてもよく、内輪部と外輪部との間にころ、ニードル等の転動体を備える転がり接触の軸受であってもよいし、転動体を含まない滑り接触の軸受であってもよい。また、各軸受109は、内輪部の内側に各軸受109を第1の回転部材103に固定するための固定部材を備えるカムフォロアであってもよく、固定部材が第1の回転部材103の本体部分、すなわち複数の軸受109を除く第1の回転部材103の部分に嵌合されることによって、各軸受109は第1の回転部材103に外輪部が回転可能であるように固定される。また、各軸受109は、固定部材を備えないローラフォロアであってもよく、軸受109とは別部材としての固定部材が内輪部の内側を貫通して第1の回転部材103の本体部分に嵌合されることによって、各軸受109は第1の回転部材103に外輪部が回転可能であるように固定される。第2の回転部材105は、カムフォロア、ローラフォロアに係合する形状を有する。また、各軸受109は、ボールであってもよく、ボールは、第1の回転部材103の本体部分に係合され、第2の回転部材105は、ボールに係合する形状を有する。
【0039】
第2の回転部材105は、カムリブを有し、軸受109と係合するカムであってもよい。第1の回転部材103及び第2の回転部材105のうちの何れが入力軸であっても出力軸であってもよい。カムの形状は、スクリュー状のカムリブを有する形状であってもよい。例えば、第2の回転部材105が入力軸として第2の回転部材軸線108を中心として回転すると、第2の回転部材軸線108に直交する第1の回転部材軸線107を中心として第1の回転部材103が出力軸として回転することができるように複数の軸受109が次々に連続してカムリブに接触する。第1の回転部材103及び第2の回転部材105が回転している間に、カムリブと接触していない軸受109によって潤滑剤は攪拌され、第1の濾過部材104は、潤滑剤が第2の回転部材105と接触していない軸受109から流される方向に設けられる。また、軸受109による回転によって軸受109において熱が発生し、その熱によって潤滑剤の対流が発生する。従って、潤滑剤が軸受109からの対流によって流される方向に、第1の濾過部材104は設けられてもよい。また、軸受109がカムリブとの転がり接触する場合には、入力軸としての第1の回転部材103又は第2の回転部材105から入力されるトルクの、出力軸としての第2の回転部材105又は第1の回転部材103への伝達効率を向上することができるとともに、伝達機構101を長寿命化することができる。また、軸受109とカムリブとの間は線接触であるために、第1の回転部材103の回転方向の外力に対して高い剛性を有する。なお、複数の軸受109は、カムの形状によって、略円筒形の第1の回転部材103の本体部分の外周面に放射状に取り付けられてもよし、略円筒形の第1の回転部材103の本体部分の端面に円形状に取り付けられてもよい。
【0040】
図6図25を参照して、伝達機構101の別の実施形態を説明する。図6及び図7に示されるように、伝達機構101において、第1の濾過部材104は、軸受109に対して第1の回転部材軸線107の軸線方向下側及び上側に設けられてもよい。下側及び上側の第1の濾過部材104は、第1の回転部材103からの攪拌及び/又は対流によって流される潤滑剤に含まれる粉塵のサイズに応じて、同じタイプであってもよく、又は異なるタイプであってもよい。
【0041】
図8図10に示されるように、伝達機構101において、第1の濾過部材104に加えて、第2の濾過部材106が、第2の回転部材軸線108の軸線方向外側に設けられてもよい。第2の回転部材105にスクリュー状の溝が設けられる場合、第2の回転部材105が第2の回転部材軸線108を中心として回転すると、潤滑剤は、第2の回転部材105の第1の回転部材103と接触していないスクリュー状の溝のスクリュー効果によって第2の回転部材軸線108に沿って流されるように攪拌される。スクリュー状の溝の端部に、第2の濾過部材106は設けられ、潤滑剤に含まれる粉塵は第2の濾過部材106に吸着される。なお、第2の回転部材105が第2の回転部材軸線108を中心として何れの方向に回転して、潤滑剤が第2の回転部材軸線108に沿って何れの方向に沿って流れてもよいように、第2の濾過部材106は、スクリュー状の溝の両方の端部に設けられてもよい。図11及び図12に示されるように、伝達機構101において、第2の濾過部材106は、第2の回転部材軸線108の回転方向に沿って設けられてもよい。第2の回転部材105が第2の回転部材軸線108を中心として回転すると、潤滑剤は、第2の回転部材105からの遠心力によって径方向外側に流されるように攪拌される。潤滑剤が攪拌によって流される方向である第2の回転部材105の径方向外側には第2の濾過部材106が設けられ、第2の濾過部材106を通過する潤滑剤に含まれる粉塵は第2の濾過部材106に吸着される。図13図18に示されるように、第1の濾過部材104は、潤滑剤が軸受109からの攪拌及び/又は対流によって流される方向に、軸受109の上側、下側、及び軸受109とハウジング102との間に軸受109を取り囲むように第1の回転部材103の回転方向に沿って設けられてもよい。
【0042】
図19に示されるように、伝達機構101において、第1の濾過部材104は、軸受109に対して第1の回転部材軸線107の軸線方向下側及び上側に設けられ、下側及び上側の第1の濾過部材104は共に、軸受109から近い部分において粒径の大きい粉塵を吸着させる第1の層104a、軸受109から中間の部分において粒径の中間の粉塵を吸着させる第2の層104b、及び軸受109から遠い部分において粒径の小さい粉塵を吸着させる第3の層104cを有する多層型タイプであってもよい。また、図20に示されるように、伝達機構101において、一方(例えば下側)の第1の濾過部材104のみ、多層型タイプであってもよい。なお、第1の層104a、第2の層104b、及び第3の層104cの全てが粉塵を吸着させる層でなくてもよく、例えば、第1の層104aが粒径の大きい粉塵を吸着させる層であり、第2の層104bが粒径の小さい粉塵を吸着させる層であり、第3の層104cが熱伝達する層である、等、第1の層104a、第2の層104b、及び第3の層104cがそれぞれ性質の異なる層であってもよく、必要に応じて層の性質が選択されてもよい。
【0043】
図21図23に示されるように、伝達機構101において、第1の回転部材103は、その回転方向に沿って第2の回転部材105に接触するための複数の歯部110を有する歯車を備え、第2の回転部材105は、歯部110に係合する形状を有してもよい。このような伝達機構101として、例えばウォームギヤ機構がある。第1の回転部材103及び第2の回転部材105が回転している間に、第2の回転部材105と接触していない歯部110によって潤滑剤は攪拌され、第1の濾過部材104は、潤滑剤が第2の回転部材105と接触していない歯部110から流される方向に設けられる。また、歯部110による回転によって歯部110において熱が発生し、その熱によって潤滑剤の対流が発生する。従って、潤滑剤が歯部110からの対流によって流される方向に、第1の濾過部材104は設けられてもよい。図24に示されるように、伝達機構101において、第2の濾過部材106が、第2の回転部材軸線108の軸線方向外側に設けられてもよく、第2の回転部材軸線108の回転方向に沿って設けられてもよい。第1の回転部材103及び第2の回転部材105が回転している間に、第2の回転部材105の回転部材103と接触していない部分によって潤滑剤は攪拌され、第2の濾過部材106は、潤滑剤が第2の回転部材105の第1の回転部材105と接触していない部分から流される方向に設けられる。また、第2の回転部材105による回転によって第2の回転部材105において熱が発生し、その熱によって潤滑剤の対流が発生する。従って、潤滑剤が第2の回転部材105からの対流によって流される方向に、第2の濾過部材106は設けられてもよい。図25に示されるように、第1の濾過部材104は、潤滑剤が歯部110からの攪拌及び/又は対流によって流される方向に、歯部110の上側、下側、及び歯部110とハウジング102との間に第2の回転部材105と接触していない歯部110を取り囲むように第1の回転部材103の回転方向に沿って設けられてもよい。
【0044】
第1の濾過部材104及び/又は第2の濾過部材106は、攪拌及び/又は対流によって流される潤滑剤に含まれる粉塵を吸着することできるものであればよく、ハウジング102に収容された第1の濾過部材104及び/又は第2の濾過部材106を備える伝達機構101は、第2の回転部材105として、鼓型カム(roller gear cam、concave globoidal cam)、円筒カム(cylindrical cam、barrel cam)、太鼓形カム(convex globoidal cam)、等の様々なスクリュー形状のカムリブを有するカムを備えるカム機構であってもよい。また、伝達機構101は、ボール減速機、ウォーム減速機、遊星歯車減速機、波動歯車減速機、トラクションドライブ減速機、等であってもよい。
【0045】
また、伝達機構101は、第1の回転部材軸線107と第2の回転部材軸線108とを結ぶ線の幅の中において、第1の回転部材103と第2の回転部材105との接触が行われる位置関係にある外接型タイプであってもよく、第1の回転部材軸線107と第2の回転部材軸線108とを結ぶ線の幅の外において、第1の回転部材103と第2の回転部材105との接触が行われる位置関係にある内接型タイプであってもよい。内接型タイプとしては、内接パラレルカム機構、内接トロコイド歯車機構、等がある。
【0046】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0047】
101 伝達機構
102 ハウジング
103 第1の回転部材
104 第1の濾過部材
104a 第1の層
104b 第2の層
104c 第3の層
105 第2の回転部材
106 第2の濾過部材
107 第1の回転部材軸線
108 第2の回転部材軸線
109 軸受
110 歯部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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