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特許7510441媒体上においてフォトルミネッセンス分析を実行するシステムおよび方法、並びに患者の眼球の眼底においてフォトルミネッセンス分析を実行するシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】媒体上においてフォトルミネッセンス分析を実行するシステムおよび方法、並びに患者の眼球の眼底においてフォトルミネッセンス分析を実行するシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/12 20060101AFI20240626BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240626BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61B3/12
G01N21/64 Z
A61B3/14
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2021572019
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 CA2020050778
(87)【国際公開番号】W WO2020243842
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】62/857,345
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520199495
【氏名又は名称】ジリア,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ラポインテ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥパオリ,ダモン
(72)【発明者】
【氏名】サバゴー,ドミニク
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/041062(WO,A1)
【文献】特許第6417807(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0143685(US,A1)
【文献】米国特許第6822741(US,B2)
【文献】特開2001-258850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体上においてフォトルミネッセンス分析を実行するシステムであって、
-分析スポットを含む前記媒体の画像を取得するように構成された撮像デバイスと、
-スペクトル・アナライザと、
-前記媒体と前記撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、更に前記媒体上の分析スポットと前記スペクトル・アナライザとの間にスペクトル分析光路を定める光学アセンブリと、
-励起波長とは異なる発光波長のフォトルミネッセンス光の生成のために、前記媒体内に存在する成分を励起するように選択された前記励起波長を含む励起光ビームを生成するように動作可能な励起光源であって、前記分析スポット上に前記励起光ビームを投影するために、前記スペクトル分析光路に光学的に結合された、励起光源と、
-前記スペクトル・アナライザに結合された光学フィルタであって、前記励起波長において低い光透過率を有し、前記発光波長において高い光透過率を有する、光学フィルタと、
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムであって、前記媒体から前記撮像光路に沿って進行する戻り光の撮像部分を前記撮像デバイスに誘導し、前記戻り光のスペクトル分析部分を前記スペクトル分析光路に誘導するように位置付けられ構成されたビームスプリッタを備える、システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、前記ビームスプリッタがダイクロイック・ビームスプリッタである、システム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、前記ビームスプリッタが、強度率および偏光方向の内1つにしたがって、前記撮像光路に沿って進行する光を前記撮像部分および前記スペクトル分析部分に分割するように構成される、システム。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載のシステムであって、
a)前記スペクトル分析光路と前記スペクトル・アナライザとの間に延びる第1光ファイバ・リンクと、
b)前記スペクトル分析光路と前記励起光源との間に延びる第2光ファイバ・リンクと、
c)前記スペクトル分析光路、前記第1光ファイバ・リンク、および前記第2光ファイバ・リンクを光学的に結合する三叉カプラと、
を備える、システム。
【請求項6】
請求項5記載のシステムにおいて、前記三叉カプラが、マルチモード光サーキュレータ、二重クラッド光ファイバ、および自由空間ビーム分割構成の内1つを含む、システム。
【請求項7】
請求項5または6記載のシステムにおいて、前記光学フィルタが、前記第1ファイバ・リンクと前記スペクトル・アナライザとの間に配置された自由空間光学部品を含む、システム。
【請求項8】
請求項5または6記載のシステムにおいて、前記光学フィルタが、前記第1光ファイバ・リンクと前記スペクトル・アナライザとの間に配置されたファイバ・ベース部品上に堆積された薄膜を含む、システム。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載のシステムにおいて、前記光学フィルタがロングパス光学フィルタである、システム。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項記載のシステムにおいて、前記光学フィルタがバンドパス光学フィルタである、システム。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載のシステムであって、照明光を前記媒体に向けて投影するように構成された照明サブアセンブリを備える、システム。
【請求項12】
請求項11記載のシステムであって、更に、前記照明光を生成するように動作可能であり、前記照明サブアセンブリに光学的に結合された照明光源を備える、システム。
【請求項13】
請求項12記載のシステムであって、更に、前記照明光源、前記撮像デバイス、前記スペクトル・アナライザ、および前記励起光源を制御するための制御信号を生成するコントローラを備える、システム。
【請求項14】
請求項13記載のシステムにおいて、前記コントローラが、
-前記コントローラが少なくとも前記照明光源および前記撮像デバイスをオンに切り替える照明モードと、
-前記コントローラが少なくとも前記励起光源および前記スペクトル・アナライザをオンに切り替える励起モードと、
で動作するように構成される、システム。
【請求項15】
請求項12記載のシステムであって、更に、コントローラを備え、前記コントローラが、
-照明モードであって、前記コントローラが、前記照明光を前記媒体に向けて投影するように前記照明光源を動作させ、前記媒体の画像を得るように前記撮像デバイスを動作させ、媒体上で分析スポットのスペクトル分析を得るように前記スペクトル・アナライザを動作させる、照明モードと、
-励起モードであって、前記コントローラが、前記励起光ビームを前記分析スポット上に投影するように前記励起光源を動作させ、前記媒体上における前記分析スポットのフォトルミネッセンス分析を得るように前記スペクトル・アナライザを動作させる、励起モードと、
で動作するように構成される、システム。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載のシステムであって、更に、前記スペクトル分析光路内に位置付けられ、前記媒体にわたって前記分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット・シフト・メカニズムを備える、システム。
【請求項17】
患者の眼球の眼底においてフォトルミネッセンス分析を実行すシステムであって、
-前記眼底の画像を取得するように構成された撮像デバイスと、
-スペクトル・アナライザと、
-前記患者の眼球と前記撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、前記患者の眼球上の分析スポットと前記スペクトル・アナライザとの間にスペクトル分析光路を定める光学アセンブリと、
-フォトルミネッセンス波長における蛍光光の生成のために、前記患者の眼球内に存在する成分を励起するように選択された励起波長を含む励起光ビームを生成するように動作可能な励起光源であって、前記分析スポット上に前記励起光ビームを投影するために、前記スペクトル分析光路に光学的に結合されている、励起光源と、
-前記スペクトル・アナライザに結合された光学フィルタであって、前記励起波長において低い光透過率を有し、前記フォトルミネッセンス波長において高い光透過率を有する、光学フィルタと、
を備える、システム。
【請求項18】
請求項17記載のシステムであって、前記患者の眼球から前記撮像光路に沿って進行する戻り光の撮像部分を前記撮像デバイスに誘導し、前記戻り光のスペクトル分析部分を前記スペクトル分析光路に誘導するように位置付けられ構成されたビームスプリッタを備える、システム。
【請求項19】
請求項18記載のシステムにおいて、前記ビームスプリッタがダイクロイック・ビームスプリッタである、システム。
【請求項20】
請求項19記載のシステムにおいて、前記ビームスプリッタが、強度率および偏光方向の内1つにしたがって、前記撮像光路に沿って進行する光を前記撮像部分および前記スペクトル分析部分に分割するように構成される、システム。
【請求項21】
請求項17から20までのいずれか1項記載のシステムであって、
a)前記スペクトル分析光路と前記スペクトル・アナライザとの間に延びる第1光ファイバ・リンクと、
b)前記スペクトル分析光路と前記励起光源との間に延びる第2光ファイバ・リンクと、
c)前記スペクトル分析光路、前記第1光ファイバ・リンク、および前記第2光ファイバ・リンクを光学的に結合する三叉カプラと、
を備える、システム。
【請求項22】
請求項21記載のシステムにおいて、前記三叉カプラが、マルチモード光サーキュレータ、二重クラッド光ファイバ、および自由空間ビーム分割構成の内1つを含む、システム。
【請求項23】
請求項21または22記載のシステムにおいて、前記光学フィルタが、前記第1ファイバ・リンクと前記スペクトル・アナライザとの間に配置された自由空間光学部品を含む、システム。
【請求項24】
請求項21または22記載のシステムにおいて、前記光学フィルタが、前記第1光ファイバ・リンクと前記スペクトル・アナライザとの間に配置されたファイバ・ベース部品上に堆積された薄膜を含む、システム。
【請求項25】
請求項17から24までのいずれか1項記載のシステムにおいて、前記光学フィルタがロングパス光学フィルタである、システム。
【請求項26】
請求項17から24までのいずれか1項記載のシステムにおいて、前記光学フィルタがバンドパス光学フィルタである、システム。
【請求項27】
請求項17から26までのいずれか1項記載のシステムであって、照明光を前記患者の眼球に向けて投影するように構成された照明サブアセンブリを備える、システム。
【請求項28】
請求項27記載のシステムであって、更に、前記照明光を生成するように動作可能であり、前記照明サブアセンブリに光学的に結合された照明光源を備える、システム。
【請求項29】
請求項28記載のシステムであって、更に、前記照明光源、前記撮像デバイス、前記スペクトル・アナライザ、および前記励起光源を制御するための制御信号を生成するコントローラを備える、システム。
【請求項30】
請求項29記載のシステムにおいて、前記コントローラが、
-前記コントローラが少なくとも前記照明光源および前記撮像デバイスをオンに切り替える照明モードと、
-前記コントローラが少なくとも前記励起光源および前記スペクトル・アナライザをオンに切り替える励起モードと、
で動作するように構成される、システム。
【請求項31】
請求項28記載のシステムであって、更に、コントローラを備え、前記コントローラが、
-照明モードであって、前記コントローラが、前記照明光を前記患者の眼球に向けて投影するように前記照明光源を動作させ、前記眼底の画像を得るように前記撮像デバイスを動作させ、前記眼底上で前記分析スポットのスペクトル分析を得るように前記スペクトル・アナライザを動作させる、照明モードと、
-励起モードであって、前記コントローラが、前記励起光ビームを前記分析スポット上に投影するように前記励起光源を動作させ、前記眼底上における前記分析スポットのフォトルミネッセンス測定値を得るように前記スペクトル・アナライザを動作させる、励起モードと、
で動作するように構成される、システム。
【請求項32】
請求項17から31までのいずれか1項記載のシステムであって、更に、前記スペクトル分析光路内に位置付けられ、前記眼底にわたって前記分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット・シフト・メカニズムを備える、システム。
【請求項33】
請求項1から32までのいずれか1項記載のシステムにおいて、前記フォトルミネッセンス分析が、吸収率測定、蛍光測定、自家蛍光測定、自発ラマン分光分析およびコヒーレント・ラマン分光分析の内1つを含む、システム
【請求項34】
媒体上においてフォトルミネッセンス分析を実行する方法であって、前記媒体が患者の眼球の眼底であり、
a)撮像デバイスと、スペクトル・アナライザと、前記媒体と前記撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、前記媒体上の分析スポットと前記スペクトル・アナライザとの間にスペクトル分析光路を定める光学アセンブリと、励起波長とは異なる発光波長におけるフォトルミネッセンス光の生成のために、前記媒体内に存在する成分を励起するように選択された前記励起波長を含む励起光ビームを生成するように動作可能な励起光源であって、スペクトル分析路に光学的に結合された、励起光源と、スペクトル・アナライザに結合された光学フィルタであって、前記励起波長において低い光透過率を有し、前記発光波長において高い光透過率を有する、光学フィルタと、照明光源とを設けるステップと、
b)照明光を前記媒体に向けて投影するように前記照明光源を動作させ、前記媒体の画像を得るように前記撮像デバイスを動作させるステップと、
c)前記分析スポット上に励起光ビームを投影するように前記励起光源を動作させ、前記眼底おいて前記分析スポットのフォトルミネッセンス測定値を得るように前記スペクトル・アナライザを動作させるステップと、
を含む、方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法であって、更に、前記分析スポットの画像を得るように、前記励起光源および前記撮像デバイスを動作させるステップを含む、方法。
【請求項36】
請求項35記載の方法であって、更に、前記分析スポットの画像を前記媒体の画像上に重ね合わせるステップを含む、方法。
方法。
【請求項37】
請求項34から36までのいずれか1項記載の方法において、前記フォトルミネッセンス測定値が、吸収率測定値、蛍光測定値、自家蛍光測定値、自発ラマン分光分析測定値およびコヒーレント・ラマン分光分析測定値の内1つを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の技術分野は、一般的には、分光反射システムおよび方法に関し、更に特定すれば、スペクトル吸収分析、蛍光、自家蛍光、自発ラマン分光法(spectroscopy)、コヒーレント・ラマン分光法、またはその他の眼球関係測定用デバイスに関する。
【従来技術】
【0002】
網膜内に自然に存在する分析物(例えば、タンパク質またはその他の化合物)のフォトルミネッセンスの評価、または網膜に直接もしくは特定の励起波長における光の吸収時に追加されるフォトルミネッセンス・マーカの評価は、有用な非侵襲的ツールであり、医療および健康監視の用途において広く普及している。実際、フォトルミネッセンスの評価は、代謝、異なる病気および状態の病態生理学、または行われた治療の有効性について貴重な情報を提供することができる。
【0003】
加えて、フォトルミネセンス評価を撮像と組み合わせると、生理学的および病態生理学現象について貴重な追加情報が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6822741号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光、自家蛍光、自発およびコヒーレント・ラマン分光分析(spectroscopy)を定量化し、患者の眼球における他のパラメータの分析を実行するために使用することができるようにデバイスを改良し、以上で述べた利点の少なくとも一部を得ることが、依然として必要とされ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様によれば、媒体上でフォトルミネッセンス分析を実行するためのシステムを提供する。
【0007】
本システムは、分析スポットを含む媒体の画像を取得するように構成された撮像デバイスと、スペクトル・アナライザと、光学アセンブリとを含む。光学アセンブリは、媒体と撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、更に媒体上の分析スポットとスペクトル・アナライザとの間にスペクトル分析光路を定める。
【0008】
本システムは、更に、励起光ビームを生成するように動作可能な励起光源を含む。励起光ビームは、励起波長とは異なる発光波長におけるフォトルミネッセンス光の生成のために、媒体内に存在する成分を励起させるように選択された励起波長を含む。励起光源は、励起光ビームを前記分析スポット上に投影するために、スペクトル分析光路に光学的に結合される。
【0009】
本システムは、更に、スペクトル・アナライザに結合された光学フィルタを含む。この光学フィルタは、励起波長において低い光透過率を有し、発光波長において高い光透過率を有する。
【0010】
ある実施態様では、本システムはビームスプリッタを含む。このビームスプリッタは、戻り光の撮像部分を、媒体から撮像デバイスに、撮像光路に沿って進行するように誘導し、前記戻り光のスペクトル分析部分をスペクトル分析光路に誘導するように位置付けられ構成される。ビームスプリッタは、ダイクロイック・ビームスプリッタであってもよい。ある変形では、ビームスプリッタは、撮像光路に沿って進行する光を、撮像部分とスペク
トル分析部分とに、強度率および偏光方向の内の1つにしたがって分割するように構成される。
【0011】
ある実施態様では、本システムは、スペクトル分析光路とスペクトル・アナライザとの間を延びる第1光ファイバ・リンクと、スペクトル分析光路と励起光源との間を延びる第2光ファイバ・リンクと、スペクトル分析光路、第1光ファイバ・リンク、および第2光ファイバ・リンクを光学的に結合する三叉カプラとを含む。三叉カプラは、マルチモード光サーキュレータ、二重クラッド光ファイバ、および自由空間ビーム分割構成の内1つを含んでもよい。ある変形では、光学フィルタは、第1光ファイバ・リンクとスペクトル・アナライザとの間に配置された自由空間光学部品を含む。他の変形では、光学フィルタは、第1光ファイバ・リンクとスペクトル・アナライザとの間に配置されたファイバ・ベース部品上に堆積された薄膜を含んでもよい。
【0012】
ある実施態様では、光ファイバは、ロングパス光学フィルタである。他の実施態様では、光学フィルタはバンドパス光学フィルタである。
【0013】
ある実施態様では、本システムは、照明光を媒体に向けて投影するように構成された照明サブアセンブリを含む。更に、本システムは、照明光を生成するように動作可能であり、照明サブアセンブリに光学的に結合された照明光源を含んでもよい。
【0014】
照明光源、撮像デバイス、スペクトル・アナライザ、および励起光源を制御するための制御信号を生成するコントローラを設けてもよい。コントローラは、好ましくは、以下のモードで動作するように構成される。
【0015】
-コントローラが少なくとも照明デバイスおよび撮像デバイスをオンに切り替える照明モード、および
【0016】
-コントローラが少なくとも励起光源およびスペクトル・アナライザをオンに切り替える励起モード。
【0017】
ある実施態様では、本システムは、以下のモードで動作するように構成されたコントローラを含む。
【0018】
-コントローラが、前記照明光を媒体に向けて投影するように照明デバイスを動作させ、媒体の画像を得るように撮像デバイスを動作させ、媒体上で分析スポットのスペクトル分析を得るようにスペクトル・アナライザを動作させる照明モード、および
【0019】
-コントローラが、励起光ビームを前記分析スポット上に投影するように励起光源を動作させ、前記媒体上で分析スポットのフォトルミネッセンス分析を行うようにスペクトル・アナライザを動作させる励起モード。
【0020】
ある実施態様では、本システムは、更に、スペクトル分析光路内に位置付けられ、前記媒体上にわたって分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット・シフト・メカニズムを含む。
【0021】
他の態様によれば、患者の眼球の眼底においてフォトルミネッセンス分析を実行するためのシステムを提供する。
【0022】
本システムは、
-眼底の画像を取得するように構成された撮像デバイスと、
【0023】
-スペクトル・アナライザと、
【0024】
-患者の眼球と撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、更に患者の眼球上の分析スポットとスペクトル・アナライザとの間にスペクトル分析光路を定める光学アセンブリと、
【0025】
-フォトルミネッセンス波長におけるフォトルミネッセンス光の生成のために、患者の眼球内に存在する成分を励起するように選択された励起波長を含む励起光ビームを生成するように動作可能な励起光源であって、前記分析スポット上に励起光ビームを投影するために、スペクトル分析光路に光学的に結合された、励起光源と、
【0026】
-スペクトル・アナライザに結合された光学フィルタであって、励起波長において低い光透過率を有し、フォトルミネッセンス波長において高い光透過率を有する、光学フィルタと、
を含む。
【0027】
ある実施態様では、本システムは、撮像光路に沿って進行する患者の眼球からの戻り光の撮像部分を撮像デバイスに誘導し、前記戻り光のスペクトル分析部分をスペクトル分析光路に誘導するように位置付けられ構成されたビームスプリッタを含む。このビームスプリッタは、ダイクロイック・ビームスプリッタであってもよい。このビームスプリッタは、撮像光路に沿って進行する光を、撮像部分およびスペクトル分析部分に、強度率および偏光方向の内1つにしたがって分割するように構成されてもよい。
【0028】
ある実施態様では、本システムは、スペクトル分析光路とスペクトル・アナライザとの間に延びる第1光ファイバ・リンクと、スペクトル分析光路と励起光源との間に延びる第2光ファイバ・リンクと、スペクトル分析光路、第1光ファイバ・リンク、および第2光ファイバ・リンクを光学的に結合する三叉カプラとを含む。三叉カプラは、マルチモード光サーキュレータ、二重クラッド光ファイバ、および自由空間ビーム分割構成の内1つを含んでもよい。
【0029】
ある実施態様では、光学フィルタは、第1ファイバ・リンクとスペクトル・アナライザとの間に配置された自由空間光学部品を含む。他の実施態様では、光学フィルタは、第1光ファイバ・リンクとスペクトル・アナライザとの間に配置されたファイバ・ベース部品上に堆積された薄膜を含んでもよい。
【0030】
ある実施態様では、光学フィルタがロングパス光学フィルタまたはバンドパス光学フィルタでもよい。
【0031】
ある実施態様では、本システムは、患者の眼球に向けて照明光を投影するように構成された照明サブアセンブリを含む。更に、本システムは、照明光を生成するように動作可能であり、照明サブアセンブリに光学的に結合された照明光源も含んでもよい。
【0032】
ある実施態様では、本システムは、照明光源、撮像デバイス、スペクトル・アナライザ、および励起光源を制御するための制御信号を生成するコントローラを含んでもよい。好ましくは、コントローラは、以下のモードで動作するように構成される。
【0033】
-コントローラが少なくとも照明デバイスおよび撮像デバイスをオンに切り替える照明モード、
【0034】
-コントローラが少なくとも励起光源およびスペクトル・アナライザをオンに切り替え
る励起モード。
【0035】
ある実施態様では、本システムは、更に、以下のモードで動作するように構成されたコントローラを含んでもよい。
【0036】
-コントローラが、前記照明光を患者の眼球に向けて投影するように照明デバイスを動作させ、眼底の画像を得るように撮像デバイスを動作させ、眼底上で分析スポットのスペクトル分析を得るようにスペクトル・アナライザを動作させる、照明モード、および
【0037】
-コントローラが、励起光ビームを前記分析スポット上に投影するように励起光源を動作させ、前記眼底上における分析スポットのフォトルミネッセンス測定値を得るようにスペクトル・アナライザを動作させる、励起モード。
【0038】
ある実施態様では、本システムは、更に、スペクトル分析光路内に位置付けられ、前記眼底にわたって分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット・シフト・メカニズムを含む。
【0039】
他の態様によれば、患者の眼球の眼底上においてフォトルミネッセンス分析を実行するための、前述のようなシステムの使用を提供する。
【0040】
ある実施態様では、フォトルミネッセンス分析は、吸収率測定、蛍光測定、自家蛍光測定、自発ラマン分光法およびコヒーレント・ラマン分光法の内1つを含む。
【0041】
更に他の態様によれば、媒体上でフォトルミネッセンス分析を実行する方法を提供する。本方法は、以下のステップを含む。
【0042】
a)撮像デバイスと、スペクトル・アナライザと、媒体と撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、更に媒体上の分析スポットとスペクトル・アナライザとの間にスペクトル分析光路を定める光学アセンブリと、励起波長とは異なる発光波長におけるフォトルミネッセンス光の生成のために、媒体内に存在する成分を励起するように選択された励起波長を含む励起光ビームを生成するように動作可能であり、スペクトル分析路に光学的に結合された励起光源と、スペクトル・アナライザに結合され、励起波長において低い光透過率を有し、発光波長において高い光透過率を有する光学フィルタと、照明光源とを設けるステップと、
【0043】
b)照明光を媒体に向けて投影するように照明光源を動作させ、媒体の画像を得るように撮像デバイスを動作させるステップと、
【0044】
c)前記分析スポット上に励起光ビームを投影するように励起光源を動作させ、前記眼底上において分析スポットのフォトルミネッセンス測定値を得るようにスペクトル・アナライザを動作させるステップと、
を含む。
【0045】
ある実施態様では、本方法は、更に、前記分析スポットの画像を得るように、励起光源および撮像デバイスを動作させるステップを含む。
【0046】
ある実施態様では、本方法は、更に、分析スポットの画像を媒体の画像上に重ね合わせるステップを含む。
【0047】
ある実施態様では、媒体は患者の眼球の眼底である。
【0048】
ある実施態様では、フォトルミネッセンス測定値は、吸収率測定値、蛍光測定値、自家蛍光測定値、自発ラマン分光分析測定値(spectroscopy measurement)およびコヒーレント・ラマン分光分析測定値の内1つを含む。
【0049】
添付図面を参照しながら好ましい実施形態を読解することにより、他の特徴および利点は一層深く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】実施形態によるシステムの模式図である。
図2】実施形態によるシステムの詳細模式図である。
図3A図2の光学フィルタの変形の模式図である。
図3B図2の光学フィルタの変形の模式図である。
図4A】ある実施形態によるシステムにおいて使用するための三叉カプラの異なる構成を示す。
図4B】ある実施形態によるシステムにおいて使用するための三叉カプラの異なる構成を示す。
図4C】ある実施形態によるシステムにおいて使用するための三叉カプラの異なる構成を示す。
図5A】撮像デバイスによって取得された患者の眼球の眼底の画像を示す。
図5B】眼底上における分析スポットのスペクトル分析を示す。
図5C】分析スポットにおいて得られた自家蛍光スペクトルを示す。
図5D】撮像デバイスの視野におけるドットとして現れる分析スポットの画像を示す。
図5E】眼底の複合画像、およびその上における分析スポットを示す。
図6図6は、ある実施態様によるシステムの動作のタイミング図である。
図7A】一実施形態によるシステムにおいて使用するためのスポット・シフト・メカニズムの構成例を示す。
図7B】一実施形態によるシステムにおいて使用するためのスポット・シフト・メカニズムの構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書は、一般的には、例えば、患者の眼球の眼底の自家蛍光分析のような、媒体のフォトルミネッセンス分析を実行するためのシステムおよび方法に関する。ある実施態様では、フォトルミネッセンス分析を撮像および追加のスペクトル分析機能と組み合わせる。
【0052】
本明細書において説明する実施形態では、システムは、患者の眼球について研究するために眼科学において使用する分光反射構成を有する。本願のコンテキストにおいて、「分光反射」(spectroreflectometric)という表現は、分光反射率測定に関する技法を引用す
るときに、全体を通じて、「分光」(spectral)および「反射率測定」(reflectometric)という用語の短縮形として使用される。当業者には容易に理解されるであろうが、反射率測定(reflectometry)とは、媒体の属性を分析するための、反射光または他の電磁波の使用
を意味する。光は、通例、媒体に向けて投影され、光波面の媒体との相互作用によって、戻り光は、媒体によって影響を受けた光学属性を有することになる。分光反射率測定では、戻り光の分光分析、即ち、戻り光の属性についてその波長プロファイルの関数として行われる分析が、媒体およびその組成についての情報を得るためにまたは推論するために使用される。
【0053】
分光反射率測定は、例えば、眼科学のコンテキストにおいて、患者の眼球の眼底におけ
る酸素レベルを検知するために使用される。一例として、酸素レベルは、特性的光吸収パターンを有するオキシヘモグロビンの存在を通じて評価される。同様に、ディオキシヘモグロビンおよびカルボキシヘモグロビン(存在する二酸化炭素のレベルに関係付けられる)の濃度は、これらのそれぞれの光吸収パターンに基づいて判定することができる。これらの化合物およびそれらの規制(regulation)は、代謝、ストレスおよび刺激に対する応答、ならびに、潜在的に、病態生理を示す。
【0054】
フォトルミネッセンスという表現は、通常、媒体による光子の吸収に続く光の放出を指す。媒体における所望の遷移を誘発するために選択された1つ以上の波長において光を生成する1つ以上の励起光源(1つまたは複数)によって、光学的刺激を発生させることができる。眼科学のコンテキストでは、例えば、患者の眼球の眼底上に励起波長の光を投影するために、レーザ・ダイオードを使用することができる。励起波長は、媒体との柔軟な相互作用の結果、より少ないエネルギでフォトルミネッセンス光波面を放出することが知られている目の成分とスペクトル的に相互作用するように選択される。このエネルギ交換の結果、そのために生ずる光の波長に、励起光に関してずれが生ずる。このずれは通例では長い方の波長に向かう。尚、フォトルミネッセンスという表現は、吸収、蛍光、自家蛍光、自発およびコヒーレント・ラマン分光法(コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱、誘導ラマン散乱等)等のような、多種多様の技術を包含することは容易に理解されよう。
【0055】
ある実施態様では、本明細書において説明するシステムおよび方法は、患者の眼球の蛍光分析を実行するために使用することができる。「蛍光」(fluorescence)という表現は、シングレット-シングレット電子緩和から生ずるフォトルミネッセンスの特定形式を指すという共通認識がある。ある実施態様では、患者の眼球の眼底からの自家蛍光の分析というコンテキストにおいて、本システムおよび方法を使用することができる。「自家蛍光」(autofluorescence)とは、研究対象媒体に備わっている分子から発光が生ずるという、蛍光の特殊な場合である。他の用途では、分析される蛍光は、媒体にマーカとして人工的に添加される蛍光色素分子から発生するのでよい。蛍光撮像は、種々の視覚病理学の診断ツールとして、眼科臨床医にとって有用な手順である。一例として、リポフスチン顆粒(LG:lipofuscin granules)の自家蛍光撮像を行うことが知られている。LGは、遺伝病
がある患者の目の網膜色素上皮において、そして特に、加齢性黄斑変性症(AMD:age-related macular degeneration)において、蓄積する傾向がある。網膜における特定の位置においてLGを定量化することにより、AMDのような病気の重篤度についての診断および評価を向上させることができる。蛍光分析は、患者の眼球の眼底の異なる領域に対して、または眼底上に存在する他の構造において実行することもできる。他の実施態様では、蛍光分析は、結膜のような、目の他の部分上において実行することもできる。
【0056】
尚、本明細書において説明するシステムおよび方法は、眼球の分光反射率測定および蛍光分析とは異なる用途にも使用できることは容易に理解されよう。更に広義には、以下のシステムは、光励起に応答して媒体の撮像部分から得られるスペクトル情報が望まれる、任意のコンテキストにおいて使用することができる。例えば、メラニン蛍光またはラマン散乱、蛍光色素分子マーカからの蛍光等のような、種々の分子および現象も、戻り光のスペクトル・プロファイルにおいて変化をもたらすのであれば、研究することができる。尚、用途によっては、本システムは、対象媒体を透過または反射する光を分析するためにも使用できることは、当業者には容易に理解されよう。研究対象の媒体は、例えば、皮膚、臓器組織、露出筋肉組織、および他の生物組織または流体のように、目以外でもよい。ある実施形態では、研究対象媒体は、袋、バイアル、シリンジ、またはキュベットのような透明な容器に収容された、あるいは適した基板上に収容された、血液、組織等のような体外試料であってもよい。
【0057】
図1を参照すると、一実施形態にしたがって、患者の眼球21の眼底30上においてフォトルミネッセンス分析を実行するための分光反射率測定システム20の上位模式図が示されている。
【0058】
分光反射率測定システム20は、第一に、撮像デバイス50とスペクトル・アナライザ52とを含む。更に、分光反射率測定システム20は、患者の眼球21(または他の研究対象媒体)と撮像デバイス50との間に撮像光路34を定め、更に患者の眼球21上の分析スポット82とスペクトル・アナライザ52との間にスペクトル分析光路36を定める光学アセンブリも含む。また、照明光24を生成するように制御可能な照明光源22も設けることができる。更に、分光反射率測定システム20は、励起光ビームを生成する励起光源90も含む。励起光ビームのスペクトル成分は、媒体内で1つ以上の発光波長におけるフォトルミネッセンス光の生成を励起するように選択された1つ以上の励起波長を含む。1つまたは複数の励起波長において低い光透過率を有し、1つまたは複数の発光波長において高い光透過率を有する光学フィルタ96が、スペクトル・アナライザ52に結合されている。光学フィルタ96は、発光波長が励起波長よりも長い場合、ロングパス・フィルタ(longpass filter)であることが好ましい。発光波長が励起波長よりも短い実施態様
では、ローパス・フィルタを使用してもよい。他の変形では、発光波長の光を通過させ、励起波長の光を遮断するように構成されたバンドパス・フィルタまたはノッチ阻止フィルタ(notch rejection filter)を使用してもよい。
【0059】
この図示する構成では、分光反射率測定システム20は、2つのモード、即ち、照明モードおよび励起モードで動作可能である。
【0060】
照明モードでは、患者の眼球21の眼底30を照明するための照明光24を眼底30に向けて投影することによって、撮像光路34に沿って伝搬する戻り光32を眼底30から得る。ビームスプリッタ48を使用して、好ましくは、撮像光路32に沿って伝搬する撮像部分54と、スペクトル分析光路36に分岐されるスペクトル分析部分56とに、戻り光32を分離させる。撮像部分54は、患者の眼球21の眼底30の画像を得るために、撮像デバイス50によって検出される。
【0061】
励起モードでは、励起光源90が励起光ビーム94を生成する。励起光ビーム94は、患者の眼球21の眼底上にある分析スポットに投影するために、スペクトル分析光路36に結合される。励起ビーム94は、網膜内に存在する蛍光化合物等によって吸収され、蛍光化合物のシングレット状態を励起させることができる。励起された化合物は、次いで、熱的にエネルギを失い、発光波長において光を放出する。この光は、励起光子よりも低いエネルギを有する。発光は等方性であり、放出された光の一部は戻り光32の一部となり、撮像経路34を進み、ビームスプリッタ48に達し、スペクトル分析路36に入る。ロングパス・フィルタの存在によって、励起波長のあらゆる反射成分を遮断し、発光波長の光を通過させる。
【0062】
また、励起光ビーム94は、レイリー散乱によって反射される場合もあるが、波長に変化はない。したがって、眼底からの戻り光32は、更に、励起波長の反射成分94’も含み、この反射成分94’は撮像光路34に沿って撮像デバイス50まで伝搬する。撮像デバイス50を使用して励起光ビームの反射成分94’を検出することにより、照明モードにおいて得られた眼底の画像内において、分析スポットの視覚表現が、戻り光32のスペクトル分析部分56、および同じ光路を辿る励起光ビーム94の双方として、得られる。
【0063】
尚、ある実施態様では、励起光ビームは、1つよりも多い励起波長を含んでもよく、その場合も保護の範囲から逸脱しないことは容易に理解されよう。一例をあげると、コヒーレント・ラマン分光分析の用途では、媒体内における化合物の励起が、異なる波長におけ
る2つの光子のコヒーレントな吸収によって生ずることもあり、励起光ビーム94は、したがって、これらの波長双方の光子を含む可能性がある。他の実施態様では、励起光ビームが、1つまたは複数の所望の波長を含み1つまたは複数の発光波長を除外するスペクトル帯域もしくは範囲内に、スペクトル・プロファイルを有する場合もある。
【0064】
尚、「分析スポット」(analysis spot)という表現は、患者の眼球の眼底または他の分
析対象媒体上における領域またはエリアを指し、戻り光の内、スペクトル・アナライザに達する部分がこの分析スポットから発することは、容易に理解されよう。分析スポットは、異なるサイズおよび/または形状を有することができ、殆どの場合分光反射率測定システムの光学設計および構成によって決定される。
【0065】
図5Aから図5Eおよび図6を参照して、本明細書において説明した方法およびシステムの実施によって得られた結果の例を示す。図6は、スペクトル・アナライザ52、撮像デバイス50、照明源22、および励起源90に供給される制御信号についての可能なタイミング図である。ある実施態様によれば、分光反射率測定システムは、制御信号を生成し、照明モードおよび励起モードで動作させるように構成されたコントローラ80(図1に示す)を含むことができる。ある実施態様では、照明モードおよび励起モードを交互に動作させることもでき、一方他の実施態様では、これらを同時に動作させることもできる。制御信号は、種々のプロファイルを有することができ、図6に示す信号は例示の目的で提示されたに過ぎないことは理解されよう。例えば、図6では撮像デバイス用の制御信号がAC信号として示されているが、他の実施態様では、DC信号を使用することもできる。
【0066】
照明モードImでは、照明源22および撮像デバイス50をオンに切り替え、一方励起光源90をオフに切り替える。その結果、例えば、図5Aに示すように、眼球の眼底の画像が撮像デバイスによって取得される。随意に、照明モードImにおいてスペクトル・アナライザ52もオンに切り替えてもよい。その場合、分析スポットのスペクトル分析も、図5Bに示すように、得ることができる。戻り光の内、分析路に結合されスペクトル・アナライザに達した部分について、スペクトル分析が実行される。尚、光学フィルタの存在によって、スペクトル・アナライザに達した光からスペクトル成分を除去してもよいこと、しかし光学フィルタがこのような分析の対象スペクトル領域以外の波長を遮断するように設計されている場合には、このような除去がスペクトル分析の結果に影響を及ぼさずに済むことは、注記してしかるべきである。
【0067】
励起モードEmでは、照明源22をオフに切り替え、一方励起光源90およびスペクトル・アナライザ52をオンに切り替える。したがって、スペクトル・アナライザは、患者の眼球の眼底における蛍光化合物の励起に続いて放出された光を受ける。先に述べたように、励起波長の反射光は、スペクトル・アナライザに達する前に、光学フィルタによって遮断されるかまたは実質的に減衰される。図5Cは、このモードにおいて得ることができる光強度対波長情報の例を示す。この曲線を、規範的データから予期される蛍光と比較すると、潜在的な病状の存在を診断することができる。このモードでは、撮像デバイス50もオンに切り替えて、分析スポットの画像を収集することもできる。分析スポットは、図5Dに示すように、撮像デバイスの視野においてドットとして現れる。この画像は、照明モードにおいて得られた眼底の画像と組み合わせる、またそうでなければ関連付けることができるので、図5Eに示すように、眼底上における分析スポットの位置を把握し可視化することができる。このように、励起光ビームは、「レーザ・ポインタ」と同様なポインタ・ビームとしても機能し、図5Bおよび図5Cのグラフ双方についての情報が発生する分析スポットを指し示す。
【0068】
ある実施態様では、照明光源を連続的に動作させることが有利な場合もある。このよう
な動作は、取得中に光のちらつきを被験者に気付かせないようにすることができる。
【0069】
図2を参照すると、一例による分光反射率測定システム20を具現化した構成の模式図が示されている。
【0070】
前述のように、分光反射率測定システム20は撮像デバイス50を含む。ある実施態様では、撮像デバイス50は、CCDまたはCMOSセンサによって具現化されてもよく、あるいは光強度またはエネルギに感応し、それを有用な信号に変換する任意の表面でもよい。撮像デバイス50は、プロセッサ、コンピュータ、回路、または任意の他のハードウェア部品、もしくは撮像デバイス50によって取得された画像を構築、格納、および表示するための命令がプログラミングされたハードウェア部品の集合体を含むことができ、またはこれらと通信することができる。分光反射率測定システム20の操作員またはユーザが、結果的に得られた画像を視認可能にするために、一体化されたまたは別個のディスプレイを設けることもできる。
【0071】
スペクトル・アナライザ52は、任意の適したデバイス、または波長の関数として光の分析を可能にするデバイスの組み合わせによって具現化することができる。スペクトル・アナライザ52は、例えば、光学分光計によって具現化されてもよい。当業者には知られているように、光学分光計は、入射光をその波長にしたがって、通例では光の屈折(例えば、プリズムを使用する)または光の回折(回折格子を使用する)を使用して、分解し、分解した光の分布強度(distributed intensity)を測定する検出器を含む。スペクトル・
アナライザ52は、先に説明したように、所定のパラメータにしたがって、検出された光スペクトルを分析する命令がプログラミングされたコンピュータまたはプロセッサを含むことができる。ある実施形態では、スペクトル・アナライザ52は格子に基づくのでもよい。しかしながら、本明細書の範囲から逸脱することなく、種々の他の構成および構造的部品も使用できることは容易に理解されよう。一例として、スペクトル・アナライザ52は、反射または透過格子もしくはプリズムのような、少なくとも1つの散乱エレメントを含んでもよい。他の実施態様では、スペクトル・アナライザ52は、複数の個別光検出器を含み、各々が、例えば、付随するフィルタを使用して、特定の波長を検出するのでもよい。他の例では、個々の光検出器が、撮像光路およびスペクトル分析光路を分離するために使用されるものと同様に、別のダイクロイック/偏光/ファイバ・サーキュレータ・ビーム分割構成によって、スペクトル的に分離されてもよい。
【0072】
光学フィルタ96は、励起波長において低い光透過率および発光波長において高い光透過率というように、所望の透過特性を有する任意の光学部品によって具現化されればよい。先に述べたように、光学フィルタ96はロングパス・フィルタでもよいが、他の変形では、光学フィルタ96はバンドパス・フィルタ、ショートパス・フィルタ、ダイナミック・フィルタ等でもよい。図3Aを参照すると、一実施形態では、光学フィルタ96は、例えば、1対のレンズを含んでもよい。第1レンズ98aは、スペクトル分析光路36に結合され、入射光を平行化する。第2レンズ98bは、光をスペクトル・アナライザ52内に合焦する。可能な実施形態について既に説明した光学フィルタ99は、2つのレンズの間に位置付けられる。図3Bを参照すると、他の実施形態では、濾波材(filtering medium)は、光をスペクトル・アナライザ52に搬送する光学フィルタ70の出力面に直接堆積される、本当に薄い光学フィルタである。ある実施形態では、フィルタは硬質被覆光学フィルタである。他の実施形態では、光学フィルタは、吸収材料、干渉コーティング、および金属層が一緒に積層された積層体である。尚、図3Aおよび図3Bの構成は、一例として示されたに過ぎないこと、そして所望の濾波効果を奏する他の構成を想定してもよいことは容易に理解されよう。
【0073】
励起光源94は、蛍光の生成または他の所望のフォトルミネッセンス現象の誘起に適し
た光ビーム68を生成する任意の光源によって具体化されればよい。一例では、励起光源66はレーザ・ダイオードでもよい。他の実施形態では、光源は、光学ファイバを介してまたは単に位置22において使用することができる特定のフィルタを有するLEDとすることができる。励起光ビーム94は、撮像デバイスの検出範囲内において患者の目には安全であり(少なくとも眼科の用途において)、網膜内に存在する化合物から蛍光または他のフォトルミネッセンス反応を生成するのに適した任意の波長またはスペクトル成分を有すればよい。励起光源は、例えば、可視または近赤外線(NIR)スペクトル範囲において発光すればよい。例えば、A2E内に存在するリポフスチンは、450および480nm間の青色光を殆ど吸収する。約787nmのNIR光源を使用して、メラニンを励起させる。
【0074】
更に、分光反射率測定システム20は、照明光24を生成するように動作可能な照明光源22を含むことができ、照明光24は、照明モードにおいて、患者の眼球21の眼底30に向けて投影することができる。照明光源22は、1つ以上のLED(発光ダイオード)エミッタを含んでもよい。所与の照明光源22のLEDエミッタは、一旦組み合わせられると、照明光24に対して所望の光学属性が得られるように選択された同様の光学属性または異なる相補的光学属性を有することができる。尚、レーザ、OLED、蛍光、白熱、タングステン、およびその他の電球のような、光源の多数の他の変形も、代替実施形態において使用してもよいことは容易に理解されよう。「照明光」(illumination light)という表現は、本明細書では、患者の眼球21への投影に適し、更に適した分析時に患者の眼球21の眼底30上において重要な情報を生成することができる戻り光32を誘導、生成(produce)、またそうでなければ発生(generate)するのに適した電磁放射光線を指すた
めに使用される。尚、「光」(light)という用語は、電磁スペクトルの可視部分に限定さ
れるとは考えないことは容易に理解されよう。照明光24は、好ましくは、システムが実行するように構成されたスペクトル分析の対象となる波長全てを包含する広帯域スペクトル・プロファイルを有する。ある変形では、照明光は白色光でもよい。他の変形では、照明光24は分光反射率測定システム20の使用分野を考慮して設計されたスペクトル・プロファイルを有することもできる。更に他の1組の変形では、照明光は、患者の目の光学属性、光源の入手可能性、フォトルミネッセンスの性質および特性、および/または実行されるスペクトル分析等のような1つ以上の要因によって決定される任意の他の適したスペクトル・プロファイルを有することもできる。一例を挙げると、ある実施形態では、照明光が、自家蛍光撮像および/または媒体のマッピングを実行するために選択されたスペクトル・プロファイルを有することもできる。これは、例えば、媒体の画像内において蛍光領域を突き止め、それに応じてスペクトル・アナライザの分析スポットを選択するために使用できる。ある変形では、自家蛍光撮像は、所望の励起波長において発光するLEDまたはレーザのような狭帯域電磁源を照明源として使用し、この波長を遮断するフィルタを撮像光路内(ビームスプリッタ48と撮像デバイス50との間における任意の位置)に設けることによって、行うことができる。他の変形では、照明光源は、広帯域光と励起光とを同じビーム内に組み合わせ、自家蛍光マップを、媒体の画像上に重ね合わせて、供給することもできる。これは、例えば、ダイクロイック・フィルタを使用して複数の光源からの光ビームを組み合わせることによって行うことができる。
【0075】
先に述べたように、分光反射率測定システム20は、更に、光学アセンブリ26を含むことができる。光学アセンブリ26は、一方では、患者の眼球21と撮像デバイス50との間に撮像光路34を定め、他方では、撮像光路34、患者の眼球21、およびスペクトル・アナライザ52の間にスペクトル分析光路36を定める。
【0076】
尚、光学アセンブリ26は、患者の眼球を照明し、その結果得られる戻り光を収集する目的に適した種々の構成によって具現化できることは容易に理解されよう。光学アセンブリ26は、眼底30の画像を撮像面46上に転写するように構成された1つ以上の光学部
品を含んでもよい。光学部品には、レンズ、ミラー、偏光板、フィルタ等を含むことができる。光学部品は、当業者には通常知られているような、任意の適した方法で配列すればよい。光学アセンブリ26は、更に、固定または変位可能なマウント、スクリーン、ピンホール、ステップ・ミラー等のような、光学部品に対して構造的および/または機能的支援を付与する機械または電子部品のような、他の光学系以外の部品も含むことができる。
【0077】
光学アセンブリ26は、照明光源22に光学的に結合され、照明光源22からの照明光24を患者の眼球21の眼底30に向けて投影するように構成された照明サブアセンブリ28を含んでもよい。
【0078】
図示する構成では、照明サブアセンブリ28は、撮像光路34に沿ってある角度で位置付けられた有孔ミラー(holed mirror)38を含む。有孔ミラー38は、撮像光路34と整列された中央孔39を有する。好ましくは、照明光源22は、患者21の眼球に対して直交して位置付けられ、有孔ミラーは、照明光24の光軸に対して45°の角度を形成する。代替実施形態では、照明サブアセンブリ28は、可変透過および反射属性を有する1つ以上の光学部品、例えば、中央において低い反射率を有し、この中央の周囲において高い反射率を有するように設計されたミラーを含んでもよい。
【0079】
照明サブアセンブリ28は、更に、患者の眼球の眼底に向けた反射のために、照明光源22からの照明光24を有孔ミラー38上に投影するビーム整形光学系(optics)を含んでもよい。ビーム整形光学系は、照明光24と相互作用する1つ以上の光学部品を含んでもよい。
【0080】
尚、照明サブアセンブリ28は、照明光源からの照明光を、所望の光学特性で、患者の眼球に送給するように協働する光学部品と、付随する構造的機能、機械的機能、電気的機能、または他の機能との任意の適した集合体によって具現化してもよいことは、容易に理解されよう。照明サブアセンブリの部品は、種々の方法で、光を方向転換する(redirect)、合焦する、平行化する、濾波する、またはこれら以外の作用を光に起こさせることができる。尚、複数の設計によってこのような結果が得られることは、当業者には容易に理解されよう。例えば、ある変形では、照明光24を少なくとも部分的に照明光源22から眼底30に向けて搬送するために、1つ以上の光ファイバを使用してもよい。更に、照明光源22は、光学サブアセンブリ26とは別々に設けられても、または一体化して設けられてもよいことも理解されよう。一例では、光学アセンブリ26は、照明光源から照明光を直接または間接的に受けるように構成された光ポートを含んでもよい。尚、多数の光学構成が照明サブアセンブリを具現化できることは、当業者には容易に理解されよう。一例をあげると、1つのこのような構成が国際特許出願第PCT/CA2018/051559号に示されている。その内容は、この特許出願をここで引用したことにより、全体が本願にも含まれるものとする。
【0081】
引き続き図2を参照すると、光学アセンブリ26は、更に、前述したビームスプリッタ48を含んでもよい。ビームスプリッタ48は、撮像光路34に沿って位置付けられ、戻り光32の直接撮像部分54を撮像光路34に進行させ、更に戻り光32のスペクトル分析部分56をスペクトル分析光路36に分岐させるように構成される。尚、図示する変形では、ビームスプリッタ48は、戻り光32の撮像部分54を透過させ、戻り光32のスペクトル分析部分56を反射するように構成および配列されているが、他の変形では、撮像部分54を撮像デバイス50に向けて反射し、フォトルミネッセンス分析部分56をスペクトル・アナライザ52に向けて透過させるように構成および配列されてもよいことは、容易に理解されよう。
【0082】
ある実施態様では、並進可能な合焦レンズ37をビームスプリッタ48と撮像デバイス
50との間に位置付けてもよい。ある実施形態では、並進可能な合焦レンズ37を適した並進アクチュエータ上に取り付けてもよく、撮像光路34に沿ったその変位を可能にする。このような移動によって、撮像面46を変位させて、異なる患者の目における屈折率のばらつきを補償する。他の変形では、合焦レンズ37が可変焦点を有することもでき、異なる手段によって調節可能にしてもよい。
【0083】
戻り光32の撮像部分54は、検出のために撮像デバイス50に達するまで、撮像光路34に沿って進行する。勿論、撮像デバイス50に達する前に撮像部分54を平行化する、合焦する、濾波する、方向転換する、またはこれら以外の作用を起こさせるために、撮像光路に沿って多数の光学部品を設けることができる。ビーム整形光学系51は、図2に示した構成では、このような部品のブラックボックス表現として示されている。
【0084】
戻り光32のスペクトル分析部分56は、スペクトル分析光路36に分岐され、最終的にスペクトル・アナライザ54によって検出される。スペクトル分析光路36は、光学的に励起光源90にも結合されているので、励起光ビーム94はスペクトル分析光路36に沿ってビームスプリッタ48に向かって逆伝搬することができる。励起光源66、およびスペクトル分析光路36に沿って設けることができる他の機構の動作については、以下で更に詳しく説明する。
【0085】
尚、図示する変形では、ビームスプリッタ48が戻り光32の撮像部分54を透過させ、戻り光32のスペクトル分析部分56を反射するように構成および配列されているが、他の変形では、偏光方向にしたがって、撮像部分54を撮像デバイス50に向けて反射し、スペクトル分析部分56をスペクトル・アナライザ52に向けて透過させるように構成および配列されてもよいことは容易に理解されよう。
【0086】
ビームスプリッタ48は、種々の原理の内いずれか1つにしたがって動作して、ビームスプリッタ48に入射する光を、異なる部分に応じて分離することもできる。一実施形態では、ビームスプリッタ48はダイクロイック・ビームスプリッタである。当業者には周知であろうが、ダイクロイック光学部品は、それらのスペクトル特性にしたがって光に作用する。ダイクロイック・ビームスプリッタ48は、分光反射率測定システム20の動作に合わせて個別に設計された、スペクトル透過プロファイルを有することができる。
【0087】
他の実施形態では、ビームスプリッタ48はスペクトル成分以外の特性にしたがって、光を分離することもできる。ビームスプリッタ48は、例えば、撮像光路34に沿って進行する戻り光32を、光の波長や偏光状態とは独立して、強度比にしたがって撮像部分およびスペクトル分析部分に分割するように構成することもできる。他の変形では、ビームスプリッタ48は、撮像光路34に沿って進行する戻り光32を、撮像部分およびスペクトル分析部分に分割するように構成することもできる。
【0088】
引き続き図2を参照すると、ある実施態様では、光学アセンブリ26は、第1および第2光ファイバ・リンク70および72を含む。第1光ファイバ・リンク70は、スペクトル分析光路34とスペクトル・アナライザ52との間に延びる。第2光ファイバ・リンク72は、スペクトル分析光路34と励起光源90との間に延びる。光学アセンブリ26は、更に、スペクトル分析光路34、第1光ファイバ・リンク70、および第2光ファイバ・リンク72を光学的に結合する三叉カプラ74を含む。
【0089】
三叉カプラ74は、種々のデバイスおよび/または構成によって具現化することができ、スペクトル分析光路36から第1光ファイバ・リンク70までの光循環を形成させて、戻り光32のスペクトル分析部分56をスペクトル・アナライザ52に到達させ、更に第2光ファイバ・リンク72からスペクトル分析経路36までの光循環を形成させて、シス
テムにおいて励起光ビーム94を患者21の目に向けて発射させることができる。図4Aから図4Cを参照すると、三叉カプラ74の異なる変形が示されている。図4Aの例では、三叉カプラ74はマルチモード光サーキュレータを含む。図4Bは他の変形を示す。ここでは、三叉カプラ74は二重クラッド光ファイバを含み、コア内においてポインタ光ビームの伝搬を支援し、更にスペクトル分析領域のために、クラッディングを通ってスペクトル・アナライザに送られる光の収集を支援することができる。この場合、コア・モードは第1光ファイバ・リンクに光学的に結合され、クラッディング・モードは第2光ファイバ・リンクに光学的に結合される(またはその逆)。更に他の変形では、三叉カプラ74は、例えば、自由空間ビーム分割構成76に基づく自由空間構成でもよい。
【0090】
勿論、三叉カプラ74に達する前に、スペクトル分析部分56を平行化する、合焦する、濾波する、方向転換する、またはこれら以外の作用を起こさせるために、スペクトル分析光路に沿って多数の光学部品を設けることができる。ビーム整形光学系78は、図2Aに示す構成では、このような部品のブラックボックス表現として示されている。一例をあげると、光を三叉カプラ74上に合焦するレンズ79も示されている。
【0091】
分光反射率測定システム20は、追加の部品および機能を含んでもよい。
【0092】
ある実施態様では、分光反射率測定システム20はスポット・シフト・メカニズム86を含んでもよい。スポット・シフト・メカニズム86は、スペクトル分析路36内に位置付けられ、撮像部分21には影響を与えずに、患者の眼球の眼底30にわたって分析スポットの位置をずらすように構成される。スポット・シフト・メカニズム86は、1つ以上の調整可能なミラー(steerable mirror)のような、シフト光学系を含んでもよい。調整可能なミラーの旋回を使用すると、スペクトル撮像光路36に沿って進行する励起光ビーム94とビームスプリッタ48との間の入射角を変化させることができる。図7Aおよび図7Bを参照して、スポット・シフト・メカニズムの2つの構成例を示す。図7Aでは、パイおよびシータ方向双方に変位する第1および第2ミラー88a、88bを使用して、励起光ビーム94のビームスプリッタ48上における入射角を変化させる。励起光ビーム94のビームスプリッタ48上における位置を維持し、入射角だけを変化させるために、第1ミラー88aの変位方向は、第2ミラー88bのそれとは逆となる。図7Bでは、第2ミラー88bの代わりにジンバル・ミラー89を使用する。4f構成において使用される2つのレンズ90aおよび90bと併せてこの方式を使用することによって、励起光ビーム94がビームスプリッタに当たる位置を変化させることなく、ビームスプリッタ48上における励起光ビーム94の入射角の変更を可能にする。
【0093】
ある変形では、先に説明したものと同様の分光反射率測定システム20は、目の眼底以外の媒体上においてスペクトル分析を実行するときにも使用することができる。一例をあげると、ある実施態様では、研究対象の媒体は、例えば、血液または血漿を収容する液体の袋(pouch)でもよい。このような変形では、分光反射率測定システムは、例えば、光学
アセンブリ26および照明サブアセンブリ28を含む、図2に示したシステムと全て同じ部品を含んでもよい。この変形では、照明サブアセンブリ28は更に追加の出力レンズを含んでもよい。追加の出力レンズは、合焦を行い調査される媒体の画像を撮像デバイス50上に形成するために、図2の構成に追加することができる。当業者には容易に理解できるであろうが、この手法は、眼球21の眼底を調査するために当初着想されたシステムの容易な改変に対応することができる。何故なら、このような概念は、眼球のレンズによって行われる自然光合焦を考慮しており、それが本質的に追加の出力レンズによって置き換えられるからである。他の変形では、出力レンズおよび追加の出力レンズを、1つのレンズまたは異なる光学的配列によって置き換えてもよい。
【0094】
他の態様によれば、媒体上でフォトルミネッセンス分析を実行する方法を提供する。
【0095】
本方法のある実施態様では、媒体は、先に説明したように、患者の眼球の眼底でよい。他の実施態様では、媒体は、例えば、皮膚、臓器組織、露出筋肉組織、および他の生体組織または流体というような、眼球以外でもよい。ある実施形態では、研究対象の媒体は、袋、バイアル、シリンジ、またはキュベットのような透明な容器に収容された、あるいは適した基板上に収容された、血液、組織等のような体外試料であってもよい。
【0096】
本方法は、第1に、撮像デバイスと、スペクトル・アナライザと、媒体と撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、更に媒体上の分析スポットとスペクトル・アナライザとの間にスペクトル分析光路を定める光学アセンブリと、励起波長とは異なる発光波長におけるフォトルミネッセンス光の生成のために、媒体内に存在する成分を励起するように選択された励起波長を含む励起光ビームを生成するように動作可能な励起光源であって、スペクトル分析路に光学的に結合された、励起光源と、スペクトル・アナライザに結合された光学フィルタであって、励起波長において低い光透過率を有し、発光波長において高い光透過率を有する、光学フィルタと、照明光源とを設けるステップを含む。勿論、先に説明したようなシステムを使用してもよいことは容易に理解されよう。
【0097】
本方法は、更に、照明光を媒体に向けて投影するように照明光源を動作させ、媒体の画像を得るように撮像デバイスを動作させるステップを含む。随意に、更に分析スポットの画像を得るために、励起光源を撮像デバイスと共に動作させてもよい。図5Eに示すように、分析スポットの画像を媒体の画像上に重ね合わせてもよい。このように、操作員は、例えば、眼底のどの領域からフォトルミネッセンス分析が得られるか可視化することができる。
【0098】
本方法は、更に、励起光ビームを前記分析スポット上に投影するように励起光源を動作させ、前記眼底上の分析スポットのフォトルミネッセンス測定値を得るようにスペクトル・アナライザを動作させるステップを含む。フォトルミネッセンス測定値は、吸収率測定値、蛍光測定値、自家蛍光測定値、自発ラマン分光分析測定値、およびコヒーレント・ラマン分光分析測定値の内の1つにしてもよい。
【0099】
次いで、媒体から1つ以上のパラメータの分析を行うために、フォトルミネッセンス測定値を使用することができる。先に説明したように、このようなデータは、例えば、患者の眼球の眼底においてリポフスチン顆粒を定量化するために使用することができる。
【0100】
勿論、添付した請求項に記載される通りの発明の範囲から逸脱することなく、以上で説明した実施形態に対して多数の変更を行うこともできる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B