(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】経路生成装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240626BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20240626BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240626BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240626BHJP
【FI】
G08G1/16 E
G01C21/34
B60W30/10
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2022008735
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 一貴
(72)【発明者】
【氏名】友國 靖彦
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0354513(US,A1)
【文献】特開2017-165156(JP,A)
【文献】特開2007-091025(JP,A)
【文献】特開2018-181209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60W 30/10
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方領域の物体を検出する検出部と、
前記検出部により検出された物体のうち、自車両が走行する走行車線を認識する前方認識部と、
自車両の走行時における
前記走行車線上の目標通過地点を設定する通過地点設定部と、
前記前方認識部により認識された前記走行車線に基づいて前記走行車線に対する自車両の進行方向を特定し、自車両の現地点を原点、前記進行方向をX軸とする座標平面上の、前記現地点と前記目標通過地点とを通る関数を、前記現地点から前
記目標通過地点までの目標走行経路
として生成する経路生成部と、
自車両の速度情報を取得する速度情報取得部と、を備え、
前
記通過地点設定部は、前記速度情報取得部により取得された
前記速度情報に基づいて、自車両の走行速度が所定値以上のとき、
前記進行方向における前記現地点から前記目標通過地点までの距離であるX軸座標が前記走行速度と所定時間
との
積となるように前記目標通過地点を設定する一方、
前記走行速度が
前記所定値未満のとき、
前記X軸座標が所定距離
となるように
前記目標通過地点を設定することを特徴とする経路生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の経路生成装置において、
自車両から、自車両が走行する
前記走行車線において自車両の前方を走行する先行車両までの車間距離を検出する距離検出部をさらに備え、
前
記通過地点設定部は、前記距離検出部により検出された
前記車間距離を前記所定距離に設定することを特徴とする経路生成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の経路生成装置において、
自車両が走行する
前記走行車線の曲率半径を算出する曲率半径算出部をさらに備え、
前
記通過地点設定部は、さらに前記曲率半径算出部により算出された
前記曲率半径に基づいて前記目標通過地点を設定することを特徴とする経路生成装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の経路生成装置において、
自車両の運転者に対する運転支援を行うないし自車両を自動運転するように走行用アクチュエータを制御する走行制御部をさらに備え、
前記走行制御部は、前記経路生成部により生成された
前記目標走行経路に基づいて、前記走行用アクチュエータを制御することを特徴とする経路生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転機能や運転支援機能を有する自車両の目標走行経路を生成する経路生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動運転車両の目標走行経路を生成するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、所定時間先に自車両が通過すべき目標通過地点を設定するとともに、現地点から目標通過地点までの間に単位時間毎の通過地点を設定し、各通過地点を順次接続することにより目標走行経路を生成する。
【0003】
自動運転機能や運転支援機能を有する車両が普及することで、交通社会全体の安全性や利便性が向上し、持続可能な輸送システムを実現することができる。また、輸送の効率性や円滑性が向上することで、CO2排出量が削減され、環境への負荷を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置のように、現地点から所定時間先の目標通過地点までの目標走行経路を生成すると、渋滞等で車速が低下した場合には、目標通過地点が現地点に近付き過ぎ、適切な目標走行経路を生成することが難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である経路生成装置は、自車両の前方領域の物体を検出する検出部と、検出部により検出された物体のうち、自車両が走行する走行車線を認識する前方認識部と、自車両の走行時における走行車線上の目標通過地点を設定する通過地点設定部と、前方認識部により認識された走行車線に基づいて走行車線に対する自車両の進行方向を特定し、自車両の現地点を原点、進行方向をX軸とする座標平面上の、現地点と目標通過地点とを通る関数を、現地点から目標通過地点までの目標走行経路として生成する経路生成部と、自車両の速度情報を取得する速度情報取得部と、を備える。通過地点設定部は、速度情報取得部により取得された速度情報に基づいて、自車両の走行速度が所定値以上のとき、進行方向における現地点から目標通過地点までの距離であるX軸座標が走行速度と所定時間との積となるように目標通過地点を設定する一方、走行速度が所定値未満のとき、X軸座標が所定距離となるように目標通過地点を設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低車速でも適切な目標走行経路を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2A】高速走行中に生成される目標走行経路の変化について説明するための図。
【
図2B】低速走行中に生成される目標走行経路の変化について説明するための図。
【
図3A】高速走行中に生成される目標走行経路について説明するための図。
【
図3B】低速走行中に生成される目標走行経路について説明するための図。
【
図4】本発明の実施形態に係る経路生成装置の要部構成および処理の流れの一例を概略的に示すブロック図。
【
図5】
図4の前方認識部による認識結果に基づいて導出される、走行車線の中央線を表す3次関数について説明するための図。
【
図6】
図4の通過地点設定部による目標通過地点の設定について説明するための図。
【
図7】低速走行中に
図4の経路生成部により生成される目標走行経路の変化について説明するための図。
【
図8】低速走行中に
図4の経路生成部により生成される目標走行経路について説明するための図。
【
図9A】緩やかなカーブ路を走行中に生成される目標走行経路について説明するための図。
【
図9B】急なカーブ路を走行中に生成される目標走行経路について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図9Bを参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る経路生成装置は、自車両の運転者に対する運転支援を行うないし自車両を自動運転するように走行用アクチュエータを制御する運転支援機能を有する車両に適用され、自車両の目標走行経路(目標走行軌道)を生成する。本実施形態における「運転支援」は、運転者の運転操作を支援する運転支援と、運転者の運転操作によらず車両を自動運転する自動運転とを含み、SAEにより定義されるレベル1~レベル4の自動運転に相当し、「自動運転」は、レベル5の自動運転に相当する。
【0010】
図1は、目標走行経路について説明するための図であり、自車両1が走行車線2の中央線2Cに沿って走行する走行シーンの一例を示す。目標走行経路3は、カメラ等による車両前方の走行車線2や周辺車両4等の認識結果に基づいて生成され、自車両1は、生成された目標走行経路3に沿って走行するように制御される。
図1の例では、目標走行経路3は、走行車線2を規定する左右の区画線2L,2Rの認識結果に基づいて、走行車線2の中央線2Cに沿って生成される。
【0011】
目標走行経路3は、自車両1の現地点Oから、現時点から所定の予見時間tp(例えば3.1秒程度)先に通過すべき目標通過地点Ptまでの、単位時間Δt(例えば0.1秒)毎の通過地点Pmを時刻順に接続することにより生成される。目標走行経路3は、所定周期で更新される。
【0012】
図2Aは、高速走行中に生成される目標走行経路3の変化について説明するための図であり、
図2Bは、低速走行中に生成される目標走行経路3の変化について説明するための図である。また、
図3Aは、高速走行中に生成される目標走行経路3について説明するための図であり、
図3Bは、低速走行中に生成される目標走行経路3について説明するための図である。
【0013】
図2A~
図3Bに示すように、予見時間tpを一定とすると、自車両1の走行速度(車速)Vに応じて、予見時間tp後の走行位置までの予見距離Xpが変化する。この場合、高速ほど目標通過地点Ptを遠方に設定することで車速Vに応じた適切な目標走行経路3を生成できるが、渋滞等で車速Vが著しく低下した場合には、目標通過地点Ptが現地点Oに近付き過ぎ、適切な目標走行経路3を生成することが難しくなる。
【0014】
図2Aおよび
図2Bの例では、走行車線2において自車両1の前方を走行する先行車両4aの認識結果に基づいて、先行車両4aに追従するように目標走行経路3が生成される。この場合、自車両1が追従すべき先行車両4aが車幅方向に移動し、目標通過地点Ptが車幅方向に移動すると(Pt1→Pt2)、目標走行経路3が変化して更新され、更新後の目標走行経路3に沿って自車両1が旋回するように制御される。
【0015】
特に、
図2Bに示すように、自車両1が極低速(例えば10km/h未満)の場合は、予見距離Xpが極短くなり、目標通過地点Ptの移動量に対して必要となる進行方向の変動(旋回角θ)が極めて大きくなる。このような不都合は、
図1に示すように自車両1が走行車線2の中央線2Cに沿って走行する走行シーンにおいて、左右の区画線2L,2Rが円滑でない場合等にも生じ得る。
【0016】
図3Aおよび
図3Bの例では、渋滞中の自車両1と先行車両4aとの間で追い越しや割り込み、すり抜け等を行うために自車両1の進路に近付いた並走車両4bが認識されている。この場合、
図3Aに示すように、予見距離Xp以内の範囲で並走車両4bが認識されると、乗員の不安感を軽減するため、認識結果に基づいて並走車両4bから離れる方向にオフセットした目標走行経路3が生成される。一方、
図3Bに示すように、予見距離Xpを超えた範囲で並走車両4bが認識された場合は、自車両1の進路に近付いた並走車両4bを考慮した目標走行経路3を生成することができない。
【0017】
そこで、本実施形態では、車速Vに応じて適切な予見距離Xpを設定することで、低車速でも適切な目標走行経路3を生成することができるよう、以下のように経路生成装置を構成する。
【0018】
図4は、本発明の実施形態に係る経路生成装置(以下、装置)100の要部構成および処理の流れの一例を概略的に示すブロック図である。
図4に示すように、装置100は、主に電子制御ユニット(ECU)10により構成される。ECU10は、CPU等の演算部、RAM,ROM等の記憶部、I/Oインタフェース、その他の周辺回路を有するコンピュータを含んで構成される。ECU10は、例えば自車両1に搭載されて自車両1の動作を制御する複数のECU群の一部として構成される。
図4の処理は、例えば自車両1が始動してECU10が起動されると開始され、所定周期で繰り返される。
【0019】
ECU10には、自車両1に搭載された走行用アクチュエータ5と、車速センサ6と、外部センサ7とが接続される。走行用アクチュエータ5には、自車両1を転舵させるステアリングギアなどの転舵機構が含まれる。車速センサ6は、例えば車輪の回転速度を検出する車輪速センサにより構成され、車速Vを検出する。
【0020】
外部センサ7は、自車両1の進行方向を中心とする車両前方の外部状況を検出する。外部センサ7は、CCDやCMOS等の撮像素子を有し、自車両1の前方を撮像するカメラ8と、自車両1から先行車両4aまでの車間距離を検出する距離検出部9とを含む。距離検出部9は、例えば、ミリ波(電波)を照射し、照射波が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離や方向を測定するミリ波レーダにより構成される。距離検出部9は、レーザ光を照射し、照射光が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離や方向を測定するライダ(LiDAR)により構成されてもよい。
【0021】
ECU10は、演算部の機能的構成として、前方認識部11と、曲率半径算出部12と、通過地点設定部13と、経路生成部14と、走行制御部15とを有する。すなわち、ECU10の演算部は、前方認識部11と、曲率半径算出部12と、通過地点設定部13と、経路生成部14と、走行制御部15として機能する。
【0022】
前方認識部11は、外部センサ7からの信号に基づいて、自車両1の進行方向を中心とする車両前方の道路上の区画線、縁石、ガードレール等の位置を認識することで、自車両1が走行する走行車線2を認識する。また、自車両1の進行方向を中心とする車両前方の道路上の周辺車両4の位置も認識する。一般的な道路形状は、曲率が一定の割合で変化するクロソイド曲線を用いて設計されており、道路形状に対応するクロソイド曲線の一部の区間は、3次関数等の高次関数を用いて近似することができる。
【0023】
図5は、前方認識部11による認識結果に基づいて導出される、走行車線2の中央線2Cを表す3次関数F(X)について説明するための図である。
図5に示すように、前方認識部11による認識結果に基づいて走行車線2に対する自車両1の進行方向を特定し、自車両1の現地点Oを原点、特定された進行方向をX軸として、走行車線2の中央線2Cを表す3次関数F(X)を導出することができる。すなわち、最小二乗法等のカーブフィッティング手法を用いて、前方認識部11により認識された左右の区画線(あるいは縁石、ガードレール等)2L,2Rを近似する下式(i),(ii)の3次関数F
L(X),F
R(X)を導出する。
F
L(X)=C
3LX
3+C
2LX
2+C
1LX+C
0L ・・・(i)
F
R(X)=C
3RX
3+C
2RX
2+C
1RX+C
0R ・・・(ii)
【0024】
次いで、左右の区画線2L,2Rに対応する3次関数FL(X),FR(X)に基づいて、走行車線2の中央線2Cに対応する下式(iii)の3次関数F(X)を導出する。
F(X)=C3X3+C2X2+C1X+C0 ・・・(iii)
C3=(C3L+C3R)/2,C2=(C2L+C2R)/2,
C1=(C1L+C1R)/2,C0=(C0L+C0R)/2
【0025】
曲率半径算出部12は、自車両1が走行する走行車線2の曲率半径Rを算出する。例えば、下式(iv)により予見距離Xp先の走行位置における走行車線2の中央線2Cの曲率半径Rを算出する。
R={1+(3C3Xp2+2C2Xp+C1)2}1.5/(6C3Xp+2C2)・・・(iv)
【0026】
通過地点設定部13は、車速センサ6により検出された車速Vに基づいて予見距離Xpを設定するとともに、現地点Oから予見距離Xp先に目標通過地点Ptを設定する。
図6は、通過地点設定部13による目標通過地点Ptの設定について説明するための図であり、目標通過地点Ptを設定するときの予見距離Xpの設定について説明するための図である。
【0027】
図6に示すように、通過地点設定部13は、車速センサ6により検出された車速Vが所定値V0(例えば11.6km/h程度)以上のとき、予め定められた予見時間tp後の走行位置までの距離を予見距離Xpとして設定する(下式(v))。一方、通過地点設定部13は、車速センサ6により検出された車速Vが所定値V0未満のとき、所定距離X0(例えば10m程度)を予見距離Xpとして設定する(下式(vi))。
Xp=Vtp (V≧V0) ・・・(v)
Xp=X0 (V<V0) ・・・(vi)
【0028】
所定距離X0は、渋滞中の平均的な車間距離に設定され、例えば、平均的な車両の全長(例えば5m程度)の2倍程度に設定される。通過地点設定部13は、距離検出部9により検出された自車両1から先行車両4aまでの実際の車間距離を所定距離X0として設定してもよい。
【0029】
経路生成部14は、現地点Oから通過地点設定部13により設定された目標通過地点Ptまでの目標走行経路3を生成する。例えば、前方認識部11による認識結果に基づいて導出された3次関数F(X)で表される走行車線2の中央線2Cに沿って、現地点Oから目標通過地点Ptまでの目標走行経路3を生成する。また、予見距離Xp以内の範囲で自車両1の進路に近付いた並走車両4bが認識されると、認識結果に基づいて並走車両4bから離れる方向にオフセットした目標走行経路3を生成する。
【0030】
図7は、低速走行中に経路生成部14により生成される目標走行経路3の変化について説明するための図である。
図2Bの場合と異なり、低車速でも所定距離X0の予見距離Xpが確保されるため、目標通過地点Pt1,Pt2に至る目標走行経路3の変化に伴う進行方向の変動(旋回角θ)を抑制して、適切な目標走行経路3を生成することができる。
【0031】
図8は、低速走行中に経路生成部14により生成される目標走行経路3について説明するための図である。
図3Bの場合と異なり、低車速でも所定距離X0の予見距離Xpが確保されるため、自車両1から所定距離X0以内の範囲において自車両1を追い越す並走車両4b等の認識結果を考慮して、適切な目標走行経路3を生成することができる。
【0032】
図9Aは、緩やかなカーブ路を走行中に生成される目標走行経路3について説明するための図であり、
図9Bは、急なカーブ路を走行中に生成される目標走行経路3について説明するための図である。
図9Aに示すように、曲率半径Rが大きい緩やかなカーブ路や直線路では、先が見通しやすく、車速Vに応じて設定された予見距離Xp先の走行位置における走行車線2を精度よく認識し、適切な目標通過地点Ptを設定することができる。一方、
図9Bに示すように、曲率半径Rが小さい急なカーブ路では、先が見通しにくく、車速Vに応じて設定された予見距離Xp先の走行位置における走行車線2を精度よく認識できない可能性があり、適切な目標通過地点Ptを設定できない可能性がある。
【0033】
そこで、通過地点設定部13は、車速センサ6により検出された車速Vに加えて、さらに曲率半径算出部12により算出された曲率半径Rに基づいて、予見距離Xpを設定するとともに、目標通過地点Ptを設定する。より具体的には、ECU10の記憶部に予め記憶された特性を参照し、車速センサ6により検出された車速Vと、曲率半径算出部12により算出された曲率半径Rとに基づいて、目標通過地点Ptを設定するときの予見距離Xpを設定する。
【0034】
この場合、同一車速における予見距離Xpは、曲率半径Rに応じて走行車線2を精度よく認識できる範囲に設定され、例えば、曲率半径R=100mでは予見距離Xp=50m、曲率半径R=2000mでは予見距離Xp=150mに設定される。目標通過地点Ptまでの予見距離Xpを、曲率半径Rに応じて走行車線2を精度よく認識できる範囲に設定することで、適切な目標走行経路3を生成することができる。
【0035】
走行制御部15は、経路生成部14により生成された目標走行経路3に基づいて、自車両1の運転者に対する運転支援を行うないし自車両1を自動運転するように走行用アクチュエータ5を制御する。これにより、低車速でも適切な目標走行経路3に沿って自車両1を走行させることができる。
【0036】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)装置100は、自車両1の走行時における走行車線2上の目標通過地点Ptを設定する通過地点設定部13と、現地点Oから通過地点設定部13により設定された目標通過地点Ptまでの目標走行経路3を生成する経路生成部14と、自車両1の速度情報を取得する車速センサ6とを備える(
図4)。通過地点設定部13は、車速センサ6により取得された速度情報に基づいて、車速Vが所定値V0以上のとき、予見時間tp後の目標通過地点Ptを設定する一方、車速Vが所定値V0未満のとき、現地点Oから所定距離X0先に目標通過地点Ptを設定する(
図6)。
【0037】
これにより、低車速でも所定距離X0の予見距離Xpが確保されるため、目標通過地点Ptに至る目標走行経路3の変化に伴う進行方向の変動を抑制することができ、適切な目標走行経路3を生成することができる(
図2B、
図7)。また、自車両1から所定距離X0以内の範囲において自車両1を追い越す並走車両4b等の認識結果を考慮して、適切な目標走行経路3を生成することができる(
図3B、
図8)。
【0038】
(2)装置100は、自車両1から、自車両1が走行する走行車線2において自車両1の前方を走行する先行車両4aまでの車間距離を検出する距離検出部9をさらに備える(
図4)。通過地点設定部13は、距離検出部9により検出された車間距離を所定距離X0に設定する。これにより、渋滞中の自車両1と先行車両4aとの間で追い越しや割り込み、すり抜け等を行う並走車両4bの認識結果を確実に考慮して、適切な目標走行経路3を生成することができる(
図3B、
図8)。
【0039】
(3)装置100は、自車両1が走行する走行車線2の曲率半径Rを算出する曲率半径算出部12をさらに備える(
図4)。通過地点設定部13は、さらに曲率半径算出部12により算出された曲率半径Rに基づいて目標通過地点Ptを設定する。すなわち、目標通過地点Ptまでの予見距離Xpを、曲率半径Rに応じて走行車線2を精度よく認識できる範囲に設定することで、適切な目標走行経路3を生成することができる。
【0040】
(4)装置100は、自車両1の運転者に対する運転支援を行うないし自車両1を自動運転するように走行用アクチュエータ5を制御する走行制御部15をさらに備える(
図4)。走行制御部15は、経路生成部14により生成された目標走行経路3に基づいて、走行用アクチュエータ5を制御する。これにより、低車速でも適切な目標走行経路3に沿って自車両1を走行させることができる。
【0041】
上記実施形態では、車輪速センサ等の車速センサ6により車速Vを検出する例を説明したが、自車両の速度情報を取得する速度情報取得部は、このようなものに限らない。例えば、測位衛星からの測位信号に基づいて車両位置を測定し、車両位置の経時変化に基づいて車速を算出するものであってもよい。
【0042】
上記実施形態では、装置100が走行制御部15を備える例を説明したが、経路生成装置は、このようなものに限らない。例えば、経路生成部14により生成された目標走行経路3を車両前方の道路に重畳して表示するようにヘッドアップディスプレイ等の表示部を制御する表示制御部を備えるものでもよい。
【0043】
上記実施形態では、ミリ波レーダやライダ等の距離検出部9を用いて自車両1から先行車両4aまでの車間距離を検出する例を説明したが、カメラ8により撮像された車両前方の画像データに基づいて自車両1から先行車両4aまでの車間距離を検出してもよい。この場合、カメラ8のみで外部センサ7を構成してもよい。
【0044】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 自車両、2 走行車線、3 目標走行経路、4 周辺車両、4a 先行車両、4b 並走車両、5 走行用アクチュエータ、6 車速センサ、7 外部センサ、8 カメラ、9 距離検出部、10 電子制御ユニット(ECU)、11 前方認識部、12 曲率半径算出部、13 通過地点設定部、14 経路生成部、15 走行制御部、100 経路生成装置(装置)