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特許7510450情報処理装置および移動経路の作成方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】情報処理装置および移動経路の作成方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240626BHJP
   H04N 23/69 20230101ALI20240626BHJP
   H04N 23/695 20230101ALI20240626BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240626BHJP
【FI】
H04N23/60 100
H04N23/69
H04N23/695
G03B15/00 Q
G03B15/00 P
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022024917
(22)【出願日】2022-02-21
(65)【公開番号】P2023121531
(43)【公開日】2023-08-31
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 吉人
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-079216(JP,A)
【文献】特開2011-188258(JP,A)
【文献】特開2010-010930(JP,A)
【文献】特開2001-268563(JP,A)
【文献】特開2021-121081(JP,A)
【文献】特開2016-100696(JP,A)
【文献】特開2014-183425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04N 5/262
H04N 23/69
H04N 23/695
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置により撮影空間を撮影した映像を取得する取得手段と、
前記撮影空間に、第1の撮影領域と、前記第1の撮影領域とは異なる第2の撮影領域とを設定する設定手段と、
前記映像から被写体を検出する検出手段と、
記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を撮影領域が移動するための移動経路を、前記映像から検出された被写体の位置に基づいて作成する作成手段と、を有し、
前記移動経路は、前記撮影領域が前記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を往復する巡回経路であり、前記巡回経路は往路と復路で異なる被写体を撮影するように、前記往路と前記復路で異なる移動経路を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
撮影装置により撮影空間を撮影した映像を取得する取得手段と、
前記撮影空間に、第1の撮影領域と、前記第1の撮影領域とは異なる第2の撮影領域とを設定する設定手段と、
前記映像から被写体を検出する検出手段と、
記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を撮影領域が移動するための移動経路を、前記映像から検出された被写体の位置に基づいて作成する作成手段と、を有し、
前記移動経路は、前記撮影領域が前記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を往復する巡回経路であり、
前記作成手段は、ユーザ操作により指定された巡回数の、異なる巡回経路を作成することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
撮影装置により撮影空間を撮影した映像を取得する取得手段と、
前記撮影空間に、第1の撮影領域と、前記第1の撮影領域とは異なる第2の撮影領域とを設定する設定手段と、
前記映像から被写体を検出する検出手段と、
記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を撮影領域が移動するための移動経路を、前記映像から検出された被写体の位置に基づいて作成する作成手段と、を有し、
前記作成手段は、前記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を複数の撮影領域が並列して移動するための複数の移動経路を作成することを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
前記作成手段は、前記検出手段によって検出された全ての被写体が順次に前記撮影領域に入るように前記移動経路を作成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記検出手段によって検出された被写体のうち、ユーザ操作により1つまたは複数の被写体を選択する選択手段を有し、
前記作成手段は、前記選択手段により選択された全ての被写体が順次に前記撮影領域に入るように前記移動経路を作成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記作成手段は、ユーザ操作により設定された順番で被写体が前記撮影領域に入るように前記移動経路を作成することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記撮影空間に、前記第1の撮影領域および前記第2の撮影領域と異なる第3の撮影領域を設定し、
前記作成手段は、前記撮影領域が前記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を移動する間に前記第3の撮影領域を含むように前記移動経路を作成することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記作成手段は、前記検出手段により検出された被写体のうち前記第3の撮影領域に含まれない被写体が順次に撮影されるように前記移動経路を作成することを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記巡回経路は、前記映像に含まれる被写体が往路と復路で分担して撮影されるように前記巡回経路を作成することを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記作成手段は、前記第1の撮影領域よりも大きいサイズへ前記撮影領域を拡大し、拡大された撮影領域により前記検出手段によって検出された被写体が順次に入るように、前記拡大された撮影領域の移動経路を生成することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記撮影装置により得られる映像から、前記移動経路に基づいて移動する前記撮影領域をクロップする映像処理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記撮影装置とは別の撮影装置の画角が前記移動経路に基づいて移動する前記撮影領域に対応するように、前記別の撮影装置のパン角、チルト角、ズーム倍率を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記作成手段は、前記撮影領域と被写体の位置関係に基づいて前記撮影領域が移動する速度を設定することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記作成手段は、それぞれの移動経路で、前記検出手段により検出された被写体のうちの異なる被写体が撮影されるように前記複数の移動経路を作成することを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
情報処理装置により実行される撮影領域の移動経路の作成方法であって、
撮影装置により撮影空間を撮影した映像を取得する取得工程と、
前記撮影空間に、第1の撮影領域と、前記第1の撮影領域とは異なる第2の撮影領域とを設定する設定工程と、
前記映像から被写体を検出する検出工程と、
記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を撮影領域が移動するための移動経路を、前記映像から検出された被写体の位置に基づいて作成する作成工程と、を有し、
前記移動経路は、前記撮影領域が前記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を往復する巡回経路であり、前記巡回経路は往路と復路で異なる被写体を撮影するように、前記往路と前記復路で異なる移動経路を有することを特徴とする移動経路の作成方法。
【請求項16】
撮影装置により撮影空間を撮影した映像を取得する取得工程と、
前記撮影空間に、第1の撮影領域と、前記第1の撮影領域とは異なる第2の撮影領域とを設定する設定工程と、
前記映像から被写体を検出する検出工程と、
前記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を撮影領域が移動するための移動経路を、前記映像から検出された被写体の位置に基づいて作成する作成工程と、を有し、
前記移動経路は、前記撮影領域が前記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を往復する巡回経路であり、
前記作成工程では、ユーザ操作により指定された巡回数の、異なる巡回経路を作成することを特徴とする移動経路の作成方法。
【請求項17】
撮影装置により撮影空間を撮影した映像を取得する取得工程と、
前記撮影空間に、第1の撮影領域と、前記第1の撮影領域とは異なる第2の撮影領域とを設定する設定工程と、
前記映像から被写体を検出する検出工程と、
前記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を撮影領域が移動するための移動経路を、前記映像から検出された被写体の位置に基づいて作成する作成工程と、を有し、
前記作成工程では、前記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を複数の撮影領域が並列して移動するための複数の移動経路を作成することを特徴とする移動経路の作成方法。
【請求項18】
コンピュータを、請求項1乃至14のいずれか1項に記載された情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置および移動経路の作成方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンラインイベント等の増加に伴い、ライブ配信や映像制作の需要が高まっている。例えば、音楽イベントや演劇などのエンターテイメントの映像撮影、講義などのeラーニングのための映像撮影、オンラインプレゼンテーションやオンライン会議などのビジネス用途の映像撮影が挙げられる。そのような映像撮影に用いられるカメラとして、複数種類の画角による撮影を一台のカメラで実現することが可能なPTZ(パン・チルト・ズーム)カメラが知られている。パン・チルトは、レンズもしくはカメラ全体を設置面に対して水平方向、垂直方向に回転させることで画角を変更する機能である。また、ズームは光学的もしくは電子的に出力する映像の拡大もしくは縮小を行うことで画角を変更する機能である。また、PTZカメラにおいて、カメラを操作するオペレータが事前に所望の撮影領域(画角)を設定しておくことができるプリセット機能が知られている。撮影領域(画角)はPTZ座標を指定することにより設定される。オペレータにより事前に設定された撮影領域をプリセットと称する。プリセット機能には、複数のプリセットを自動で巡回するプリセット巡回、オペレータが特定のプリセットを指定することによりPTZカメラの撮影領域(画角)を変更するプリセット移動、などがある。
【0003】
特許文献1では、PTZカメラの撮影可能範囲の中から使用頻度が高い領域を認識し、プリセット動作時に目標位置へ到達する複数の軌跡の中から、使用頻度に関する情報をもとにプリセット動作時の移動経路を選択する技術が開示されている。また、特許文献2では、複数のプリセットを巡回するプリセット巡回中に、カメラにより生成された画像から検出された人物の顔の位置情報を用いてプリセットを設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019―003062号公報
【文献】特開2011―188258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された技術では、プリセットが指定されることにより撮影領域が切り替わる際の撮影領域(画角)の移動経路は、被写体の存在等とは無関係に設定される。したがって、特許文献1や特許文献2では、撮影領域の切り替えが指示された場合に、例えば、撮影領域間を結ぶ最短経路や、ユーザが事前に動作させた経路を画角が移動する映像を撮影することしかできなかった。したがって、指定された撮影領域間を画角(撮影領域)が移動する間に撮影される映像は、鑑賞に適しているとは言い難い映像になってしまう。
【0006】
本開示は、撮影領域間における撮影領域の移動中に撮影される映像がより鑑賞に適した映像となるような移動経路を自動的に作成する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による情報処理装置は以下の構成を有する。すなわち、
撮影装置により撮影空間を撮影した映像を取得する取得手段と、
前記撮影空間に、第1の撮影領域と、前記第1の撮影領域とは異なる第2の撮影領域とを設定する設定手段と、
前記映像から被写体を検出する検出手段と、
記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を撮影領域が移動するための移動経路を、前記映像から検出された被写体の位置に基づいて作成する作成手段と、を有し、
前記移動経路は、前記撮影領域が前記第1の撮影領域と前記第2の撮影領域の間を往復する巡回経路であり、前記巡回経路は往路と復路で異なる被写体を撮影するように、前記往路と前記復路で異なる移動経路を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、撮影領域間における撮影領域の移動中に撮影される映像がより鑑賞に適した映像となるような移動経路が自動的に作成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の映像制作システム構成例を示す図。
図2】第1実施形態による情報処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図。
図3】第1実施形態による、撮影領域の切り替えの動作を説明する概念図。
図4】(a)は、プリセット情報の例を示す図、(b)および(c)は被写体の位置とサイズの情報を説明する図。
図5】第1実施形態による情報処理装置の機能構成例を示すブロック図。
図6】第1実施形態の情報処理装置による移動経路作成処理を示すフローチャート。
図7A】移動経路の作成例を示す図。
図7B】移動経路の作成例を示す図。
図7C】移動経路の作成例を示す図。
図8A】情報処理装置のGUI例を示す図。
図8B】情報処理装置のGUI例を示す図。
図8C】情報処理装置のGUI例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本開示を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが本開示に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る映像制作システムの構成例を示す図である。映像制作システム10において、撮影装置の一例であるPTZカメラ101とカメラ103が、ネットワーク102を介して情報処理装置104と接続されている。PTZカメラ101はパン・チルト・ズーム(以下、PTZ)の機構を有する。情報処理装置104には、PTZカメラ101に関して複数の予め設定された撮影領域または画角(以下、プリセット)を登録することができる。オペレータにより登録されている複数のプリセットから所望のプリセットが指定されると、情報処理装置104は、PTZカメラ101に、撮影領域を指定されたプリセットへ移動するように指示する。撮影領域とはPTZ値で表すことができる、PTZカメラ101の画角である。撮影領域とプリセットは一対一の関係になっている。PTZカメラ101は、PTZを移動することにより被写体を様々な構図で撮影することができる。カメラ103は、広範囲な映像(以下、俯瞰映像)を撮影する広角カメラである。カメラ103は、登録されている複数のプリセットされた領域、および、PTZカメラ101の画角の移動範囲の全体を含む、広い範囲を撮影する。情報処理装置104は、カメラ103によって撮影された俯瞰映像から、被写体の位置やサイズを表す被写体情報を取得する。なお、PTZカメラ101およびカメラ103で撮影された映像は、ネットワーク102に接続された記憶装置(不図示)に記録されても良い。また、ネットワーク102を介してカメラ103と接続された情報処理装置104が、カメラ103により撮影された映像の一部をクロップし、電子的にPTZ値による画角の撮影を再現する映像処理が行われる構成でも良い。この場合、PTZカメラ101は省略され得る。また、クロップの対象となる映像が、カメラ103とは別に用意されたカメラにより撮影された映像であってもよい。
【0012】
情報処理装置104は、たとえば、カメラコントローラ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末装置などである。また、プリセットの切り替えは、ユーザ操作により実施されても良いし、情報処理装置104もしくはPTZカメラ101にプリセット巡回をプログラムすることで自動的に実施されても良い。なお、図1は、本実施形態の映像制作システム10に関して、以下の説明で参照される主要な構成を示したものである。よって、映像制作システム10が図示した構成に加えてさらなる装置を含んでも構わない。
【0013】
図2は、情報処理装置104のハードウェア構成例を示すブロック図である。情報処理装置104は、CPU201、RAM202、ROM203、操作部204、出力制御部205、および通信I/F206を有する。図2では、情報処理装置104、PTZカメラ101、カメラ103は何れもネットワーク102(例えば、ローカルエリアネットワーク:LAN)に接続されているものとするが、これに限られるものではない。それぞれの装置間をつなぐネットワークの形態には様々な形態があり、特定の形態に限らない。
【0014】
CPU201は、RAM202にロードされたプログラム、或いは、ROM203に格納されたプログラムに基づいて動作し、情報処理装置104全体の制御を行う。RAM202(Random Access Memory)は、随時にデータの読み出し、書き込みが可能な揮発性のメモリである。ROM203(Read Only Memory)は、読み出し専用のメモリである。ROM203は、情報処理装置の起動時にCPU201により実行されるブートプログラムや、情報処理装置を実行するための命令プログラム、および、係るプログラムによって使用されるデータ等を格納する。なお、CPU201は、ROM203からRAM202に読み込まれたプログラムを実行するが、これに限られるものではない。例えば、他の装置から通信I/F206を介してプログラムを取得し、CPU201がこれを実行するようにしてもよい。
【0015】
CPU201は、操作部204を介して、キーボードやマウス、カメラコントローラ、カメラスイッチャー等の入力装置からデータ(ユーザ操作によるデータ)を取得する。また、CPU201は、生成したデータを、出力制御部205を介して、ディスプレイなどの出力装置へ出力する。通信I/F206は、ネットワーク102を介して他の装置(PTZカメラ101、カメラ103など)からデータを受信してCPU201へ送る。また、通信I/F206は、CPU201が生成したデータを、ネットワーク102を介して他の装置へ送信する。また、RAM202には、ネットワーク102から通信I/F206を介して取得される、PTZカメラ101により撮影される映像や、カメラ103により俯瞰撮影される映像などが格納される。
【0016】
図3を用いて、第1実施形態に係る、被写体トレースを行う撮影領域の移動の概要について説明する。図3は、時間経過によって変化する処理状況を、時刻t1、時刻t2、時刻t3における俯瞰映像3a、3b、3cを用いて表している。俯瞰映像3a~3cは、それぞれカメラ103により撮影される。本実施形態では、PTZカメラ101に特定の人物を撮影する撮影領域301が設定されたプリセットAと、プリセットAとは異なる人物を撮影する撮影領域302が設定されたプリセットBが登録されている。プリセットと撮影領域の対応付けについては後述する。
【0017】
時刻t1において、PTZカメラ101は撮影領域301の撮影を行っている。すなわち、この時点では、登録されているプリセットAとプリセットBのうち、プリセットAが指定されており、PTZカメラ101の画角(PTZ)は、プリセットAの撮影領域301を撮影するように設定されている。図3では、時刻t1の俯瞰映像3aに、プリセットAとプリセットBに対応する撮影領域301,302が示されている。この状態で、オペレータが情報処理装置104を用いて、被写体の種別として人物の顔を指定したとする。
【0018】
被写体の種別が人物の顔に指定されたことに応じて、時刻t2の俯瞰映像3bに示されるように、情報処理装置104は、カメラ103が取得した俯瞰映像3b中から、人物の顔である被写体303から被写体306を検出する。図3では、俯瞰映像3bにおいて、検出された被写体のそれぞれを囲う破線の矩形枠(検出枠)を示した。情報処理装置104は、検出された被写体(矩形枠)の大きさや位置を俯瞰映像から取得し、被写体情報としてメモリ(例えば、RAM202)に保存する。俯瞰映像3bから取得される被写体情報(被写体の大きさおよび位置)については後述する。なお、被写体の検出はカメラ103において行われてもよい。また、被写体の大きさおよび位置の取得がカメラ103において行われてもよい。
【0019】
時刻t3において、オペレータがプリセットBを指定することにより、PTZカメラ101の画角(撮影領域)を、撮影領域301から撮影領域302へ切り替える指示がなされる。この切り替えの指示に応じて、情報処理装置104は、俯瞰映像から検出された被写体303から被写体306の撮影を含むように、撮影領域301から撮影領域302へ移動する撮影領域の移動経路を作成する。作成された移動経路307を俯瞰映像3cに示す。被写体の撮影を含む撮影領域の移動とは、例えば、撮影領域が被写体を通るように移動することである。ここで、撮影領域が被写体を通るとは、例えば、撮影領域の中央が被写体を通ることである。但し、これに限られるものではなく、例えば、撮影領域のどこかに被写体が順次に入るように撮影領域が移動するようにしてもよいし、撮影領域内に設定された所定範囲に被写体が入るように撮影領域が移動するものであってもよい。PTZカメラ101は作成された移動経路307に基づいて、画角が撮影領域301から撮影領域302まで移動するようにPTZ移動を実施する。なお、情報処理装置104は、俯瞰映像において被写体303~306のそれぞれを追跡しており、撮影領域が移動する間に、被写体303~306の移動に応じて撮影領域の移動経路が随時更新されるようにしてもよい。
【0020】
図4(a)は、プリセットを登録するプリセット情報のデータ構成例を示す図である。プリセット情報は、プリセットIDと撮影領域(PTZ座標)とを対応付ける情報である。プリセットIDは、それぞれのプリセットを一意に識別することが可能な識別情報である。また、PTZ座標は撮影領域を表す情報であり、PTZカメラ101のパン角p、チルト角t、ズーム倍率zから構成される。パン角pとチルト角tにより撮影領域(画角)の位置が決定され、ズーム倍率zにより撮影領域(画角)の大きさが決定される。図1に示すように複数のカメラ(例えば、PTZカメラ101とカメラ103)が存在する場合には、撮影領域の座標を複数のカメラ間で共通のワールド座標に変換することによって、複数のカメラで共通の座標を用いて撮影領域を扱うことができる。
【0021】
次に、図4(b)と図4(c)を用いて、映像から検出される被写体の被写体情報について説明する。図4(b)は、映像から被写体を検出した際に、経路作成のために保存される被写体情報の例である。被写体情報は、被写体ID、検出された被写体の位置を示す3次元座標、検出された被写体の大きさを示すサイズ情報を含む。被写体IDは、それぞれ被写体を一意に識別するための識別情報である。ここでは、例えば、被写体303の被写体IDを1としている。3次元座標は、被写体の位置をワールド座標系の3次元座標で表す位置情報である。サイズ情報は、被写体の大きさを、被写体を内包する直方体の高さ、横、奥行きの長さで表す。
【0022】
図4(c)は、被写体の3次元座標とサイズ情報の例を説明する図である。図4(c)には、被写体303を検出した場合の3次元座標とサイズ情報の例が示されている。被写体303が存在する位置を示す3次元座標は、被写体303全体を囲う直方体401の中心位置の座標P1でも良いし、直方体401の8つの頂点のいずれか(例えば、頂点Q1)の座標でも良い。被写体303のサイズには、例えば、被写体303を囲う直方体401を構成する隣り合う3辺の長さが用いられ得る。なお、被写体303のサイズとして、俯瞰映像に映っている被写体303の像を囲む矩形402の2辺の長さ(二次元的なサイズ(s1h,s1w))が用いられてもよい。この場合、3次元座標により示される被写体の位置は、例えば、矩形402の中心でもよいし、矩形402の4つの頂点のいずれか(例えば、頂点Q2)でもよい。また、カメラ103の俯瞰映像から被写体の3次元座標を取得する方法には周知の方法を用いることができる。例えば、事前に設置したマーカーを基準にして被写体の3次元座標を演算する方法、映像のボケ形状から被写体の3次元座標を演算する方法などが知られている。被写体の3次元座標とサイズをワールド座標に変換することで、カメラ103とPTZカメラ101は被写体の座標を共有する。なお、2台のカメラ103によるステレオ撮影により、被写体の3次元の座標とサイズを得るようにしてもよい。
【0023】
図5は、情報処理装置104の機能構成例を示すブロック図である。なお、図5に示される各機能部は、ROM203に格納されたコンピュータプログラム或いはRAM202にロードされたコンピュータプログラムをCPU201が実行することにより実現され得る。但し、図5に示される各機能部は、専用のハードウェアにより実現されてもよいし、専用のハードウェアとプログラム(CPU201)の協働により実現されてもよい。
【0024】
操作入力部501は、操作部204からユーザ操作に応じた情報を入力する。操作入力部501は、例えば、図8A図8Cにより後述されるようなユーザインターフェースを操作部204に提供し、そのユーザインターフェースを介して指定された情報を入力する。種別指定部502は、操作入力部501で入力された被写体の指定に従って、被写体検出部503が検出する対象の被写体の種類を設定する。被写体検出部503は、指定された種別の被写体を、カメラ103から得られる俯瞰映像から検出する。検出された被写体の被写体情報は、図4(b)で説明したような形態でメモリに保存される。領域指示部504は、操作入力部501で受け付けた操作情報に従って、図4(a)で説明したようなプリセット情報を生成し、プリセットを登録する。また、領域指示部504は、操作入力部501からの操作情報に従って、移動元のプリセットの指示、移動先のプリセットの指示(撮影領域の切り替え指示)等を行う。条件設定部505は、操作入力部501からの操作情報に応じて、撮影領域の移動経路を作成する際に適用される各種条件を設定する。本実施形態では、条件設定部505は、被写体指定511、トレース順序指定512、必須領域指定、巡回数指定514、経路制限指定515による条件設定が可能である。各条件設定の詳細は後述する。
【0025】
経路作成部506は、条件設定部505により設定された条件を用いて、領域指示部504により指示された移動元のプリセットから移動先のプリセットへ向かう撮影領域の移動経路を含む移動情報を作成する。画角制御部507は、経路作成部506で作成された移動経路に従って撮影領域を移動するように、PTZカメラ101の画角(PTZ)を制御する。
【0026】
図6は、図5に示した機能構成を有する情報処理装置104によって行われる処理(撮影領域の移動経路を決定する処理、以下、移動経路作成処理)を示すフローチャートである。ステップS601において、操作入力部501は、操作部204からオペレータ操作の情報が入力されるまで待機する。ステップS602で操作入力部501は、オペレータの操作に応じた操作情報を各機能部に提供する。以下、操作情報に応じた処理(ステップS603からステップS612)について説明する。
【0027】
操作情報が、登録されているプリセットのうちから移動元のプリセット(初期プリセット)を指定する場合、領域指示部504は画角制御部507に対して、指定されたプリセットへPTZカメラ101の撮影領域(画角)を移動するよう指示する。画角制御部507は、PTZカメラ101の画角(PTZ)を、経路作成部506により作成された移動経路に沿って、指示された撮影領域へ移動させる(ステップS603)。
【0028】
操作情報が被写体の種別指定を示す場合、種別指定部502は、操作部204へのユーザ操作により指定された被写体の種別を、被写体検出部503における検出処理の対象に設定する。被写体検出部503は、カメラ103から取得される俯瞰映像から、種別指定部502により設定された種別の被写体を検出する(ステップS604)。被写体検出部503は、検出した被写体の大きさと位置座標を取得して被写体情報を生成し、図4(b)で説明したように保存する。以下では、被写体の種別として人物の顔が設定されるものとして説明するが、もちろん設定される被写体の種別が必ずしも顔である必要はなく、被写体の種別は何等限定されるものではない。映像を用いた物体検出手法には、一般物体認識など、周知の技術を用いることができる。本実施形態においても検出する被写体は人物や、人体の一部に限られるものではなく、映像から認識できる被写体であれば、いかなる種別が用いられても良い。
【0029】
操作情報が、トレース対象の被写体の選択を示す場合、条件設定部505は被写体指定511を行う(ステップS605)。トレース対象の被写体とは、被写体検出部503によって検出された被写体のうち、撮影領域が移動経路を移動する間に撮影されることになる被写体である。被写体指定511は、検出された被写体のうち、撮影領域の移動においてトレースされる被写体を選択する。これにより、経路作成部506に作成される移動経路は、被写体指定511により選択された被写体がトレースされるように制限される。なお、俯瞰映像に含まれている全ての被写体がトレース対象となってもよい。なお、ユーザ操作によりトレース対象の被写体が選択されない場合は、例えば、俯瞰映像に含まれている全ての被写体がトレース対象となる。また、トレース対象の被写体の選択は、例えば、俯瞰映像の表示から被写体を選択するユーザ操作によりなされる(詳細は後述する)。
【0030】
操作情報が、撮影領域の移動経路における被写体のトレース順序の指定であった場合、条件設定部505はトレース順序指定512を行う(ステップS606)。トレース順序指定512は、ステップS604で被写体検出部503によって検出された被写体のトレース順序(撮影領域の移動により撮影される被写体の順番)を指定する。なお、被写体のトレース順序がユーザ指定されない場合、例えば、トレース順序指定512が、PTZ移動する距離が最短となる順番で、トレース対象の全ての被写体をトレースするようにトレース順序を決定するようにしてもよい。トレース対象の被写体に関してトレースする順序を指定することで、撮影領域の移動経路の作成に対して制限を設けることができる。
【0031】
操作情報が、移動経路を作成する際に必ず通過する撮影領域の設定を示す場合、条件設定部505は必須領域指定を実行する(ステップS607)。必須領域指定は、例えば、登録されたプリセットのうち、撮影領域の移動経路に必ず含めるプリセットの撮影領域を必須撮影領域として経路作成部506に指定する。必須撮影領域は、例えばPTZ座標によって表される。必須撮影領域を指定することで、移動経路の作成に対して制限を設けることができる。
【0032】
操作情報が、プリセットの巡回数の指定を示す場合、条件設定部505は、巡回数指定514を実行する(ステップS608)。プリセット巡回とは、指定された2つのプリセットの間を撮影領域が往復する移動経路(以下、巡回経路)である。巡回数指定514は、操作情報により指定された巡回数を経路作成部506に指定する。なお、巡回数は0以上の整数によって指定される。巡回数として0が指定された場合、プリセット巡回は実行されない。また、巡回数指定514は、オペレータが定める撮影時間と、移動元と移動先のプリセット間のPTZ移動に要する時間とに基づいて、プリセット巡回数を定めても良い。
【0033】
操作情報が、複数回の巡回時における経路制限の指定を示す場合、条件設定部505は経路制限指定515を実行する(ステップS609)。経路制限指定515は、巡回数指定514によって複数回の巡回数が指定されている場合に、各巡回時における移動経路が同一の経路とならないように経路作成部506に指示する。これにより、作成される移動経路に対して制限を設けることができる。例えば、巡回数指定514により巡回数に2回が指定されている状態で、操作情報により経路制限が指示されると、経路制限指定515はこれを経路作成部506に通知する。経路作成部506は、2つの異なる巡回経路を作成し、1周目と2周目で異なる巡回経路を用いて撮影領域を移動するように移動経路を作成する。
【0034】
操作情報がプリセットの切り替えを指示する場合、領域指示部504は、経路作成部506に対して移動先のプリセット(撮影領域)へ撮影領域を変更するよう指示する(ステップS610)。図4(a)で説明したように、移動先のプリセットは、例えば、PTZで表される。移動先のプリセットへ撮影領域を変更する指示を受けた経路作成部506は、上述のステップS605からステップS609の各処理によって設定された条件を用いて、移動先のプリセットまでの撮影領域の移動経路を作成する(ステップS611)。移動経路の作成方法については後述する。画角制御部507は、ステップS811で作成された撮影領域の移動経路にしたがってPTZカメラ101のPTZ移動を制御する(ステップS612)。
【0035】
経路作成部506による、移動経路の作成方法について図7A図7Cを用いて説明する。図7A図7Cは、上述のステップS605~S609により設定される条件と、設定された条件に応じて経路作成部506が作成する移動経路の一例を示した図である。なお、以下、図7A図7Cをまとめて図7と記載する。図7では、(a)~(g)に移動経路が例示されている。
【0036】
図7(a)~(g)に示す例では、被写体701から被写体712までの12人の顔が存在する。また、プリセットとして撮影領域715と撮影領域716が登録されている。移動元のプリセットとして撮影領域715が指定されており、PTZカメラ101は撮影領域715を撮影するようにPTZが制御されている。なお、被写体IDは、被写体を示す符号(701~712)と同一のものが設定されているとする。
【0037】
図7(a)は、トレース順序指定512によって、被写体のトレース順序が指定されている場合に作成される移動経路の一例である。図7(a)の例では、被写体707→被写体703→被写体708→被写体704→被写体709→被写体705→被写体710→被写体706→被写体711→被写体712の順に順次に撮影されるようにトレース順序が指定されている。なお、被写体701と被写体702は、移動経路の始点のプリセット(撮影領域715)と終点のプリセット(撮影領域716)に含まれるため、操作情報によりトレース対象に指定されても、移動経路作成時にはトレース対象の被写体として扱われない。経路作成部506は、オペレータが指定したトレース順序に従って被写体を順次に撮影する(トレースする)ように撮影領域の移動経路713を作成する。なお、トレース順序は、トレース対象の被写体のうちの一部に対して指定されても良い。一部の被写体についてトレース順序が指定された場合は、トレース順序が指定された被写体のグループについて指定された順序でトレースする第1の移動経路が作成される。他の被写体については、例えば移動元の撮影領域715に近い順にトレースするような第2の移動経路が作成され、第1の移動経路と第2の移動経路を接続することにより、撮影領域715から撮影領域716への移動経路が生成される。なお、移動経路に沿った画角の移動は、PTZカメラ101のパン、チルトの制御により実現され得る。また、トレース対象の被写体の検出されたサイズに基づいて、画角のズームが制御されてもよい。例えば、トレース対象の被写体を撮影する際に、当該被写体の映像中のサイズの、撮影領域の全体に占める割合が所定値となるようにズームが制御されるようにしてもよい。
【0038】
図7(b)は、被写体指定511によって、撮影領域の移動経路に含める被写体(トレース対象の被写体)が指定されている場合に作成される移動経路の一例である。図7(b)の例では、被写体703、被写体704、被写体705、被写体706が、被写体指定511により移動経路に含める被写体として指定されているものとする。経路作成部506は、ユーザが選択した被写体が経路に含まれるように移動経路714を作成する。なお、ユーザがトレースしたくない被写体を選択できるようしても良い。その場合は、経路作成部506は、撮影領域がユーザにより選択された被写体が存在する領域を含まないように移動経路を作成する。なお、選択された被写体に対してトレース順が指定された場合は、指定されたトレース順で被写体を撮影するように移動経路が作成される。
【0039】
図7(c)と図7(d)は、必須領域指定によって、必須撮影領域(プリセット)が指定された場合に、経路作成部506が作成する移動経路の一例である。図7(c)、図7(d)では、被写体指定511によって、被写体703、被写体704、被写体705、被写体706がトレース対象として指定されているとする。図7(c)では、事前に登録されているプリセットのうち、撮影領域727が必須撮影領域としてユーザにより指定されたとする。その場合、経路作成部506は、撮影領域が指定された必須撮影領域である撮影領域727を経路内に含むように、すなわち、撮影領域727を通過するように、移動経路726を作成する。なお、被写体709は、必須撮影領域である撮影領域727に含まれるため、撮影領域が撮影領域727を通る際にトレースされ得る。したがって、操作情報によりトレース対象に指定されたとしても、移動経路作成時にはトレース対象として扱わないようにしてもよい。
【0040】
また、例えば、複数のトレース対象の被写体704と被写体705を含む撮影領域729が必須撮影領域として設定されている場合を図7(d)に示す。上述したように、必須撮影領域内に含まれるトレース対象の被写体は、移動経路を生成する際にトレース対象から除外され得る。図7(d)の場合、被写体704と被写体705は、操作情報によりトレース対象に指定されたとしても、移動経路の作成時にはトレース対象から除外される。したがって、結果、経路作成部506は、例えば、移動経路728aと728bを生成する。なお、図7(d)のように、必須撮影領域(撮影領域729)の大きさが撮影領域715と異なる場合は、PTZカメラ101のズーム値(z)により撮影領域の大きさが制御される。撮影領域の大きさを変化させるタイミングは特に限定されない。例えば、移動する撮影領域の大きさを、撮影領域715の大きさから撮影領域729の大きさへ移動経路728aの移動中に徐々に変化させ、撮影領域729の大きさから撮影領域716の大きさへ移動経路728bの移動中に徐々に変化させるようにしてもよい。或いは、例えば、移動中の撮影領域が撮影領域729の中心に来るとその移動を停止し、移動中の撮影領域の大きさを撮影領域729の大きさへ変化させ、移動中の撮影領域の大きさを撮影領域716の大きさに変化させた後、移動を再開するようにしてもよい。また、図7(d)で説明したように、必須撮影領域である撮影領域729に含まれる複数の被写体は、撮影領域が撮影領域729を通ることでトレースされたものとみなし得る。したがって、撮影領域729内の複数の被写体が操作情報によりトレース対象に指定されていても、移動経路作成時にはこれら被写体をトレース対象として扱わないようにしてもよい。
【0041】
図7(e)は、巡回数指定514によって、巡回数に1が指定されている場合に作成される巡回経路の一例を示す。巡回数に1以上が指定された場合、指定された回数の巡回撮影が行われる。被写体指定511により指定された全ての被写体が指定された巡回数でトレースされればよい。例えば、図7(e)では、全ての被写体がトレースの対象に指定されており、移動経路719は往路で撮影領域が移動する経路であり、移動経路720は復路で撮影領域が移動する経路である。このように巡回経路のうちの往路と復路によって全ての被写体が網羅されるように、往路と復路で異なる移動経路が作成されても良い。
【0042】
図7(f)は、経路制限指定515により、各巡回における移動経路が異なるという制約が設けられた場合に作成される巡回経路の一例である。図7(f)では、巡回数指定514によって巡回数が2回に設定されている場合に、1回目の巡回で図7(e)に示す往路(移動経路719)と復路(移動経路720)で撮影領域が移動したとすると、2回目の巡回では異なるルートを通過する必要がある。そのため、経路作成部506は、2回目の巡回について、1回目の巡回(図7(e))でトレースの対象となった全ての被写体を含み、かつ1回目の巡回とは異なる巡回経路(移動経路721/移動経路722)を作成する。なお、図7(e)、図7(f)では、各巡回でトレース対象の被写体が全てトレースされるようにしたがこれに限られるものではない。指定された回数の巡回によって全てのトレース対象の被写体のトレースが完了するようにしてもよい。
【0043】
図7(g)は、被写体を網羅するためにズーム倍率を制御する例である。例えば、検出された全ての被写体を網羅する経路を作成する場合、PTZ移動量が多くなり、鑑賞に適した映像を取得することが難しくなる。そのため、ズーム倍率を下げる(撮影領域を広げる)ことで、複数の被写体が1つの画角に含まれるようにして、撮影領域を移動する間のPTZ移動中のパン角とチルト角の変更量を低減するようにしてもよい。拡大された撮影領域724を移動する移動経路723を作成することにより、トレース対象の被写体を網羅しながらもPTZ移動量を低減させることができる。なお、撮影領域は、撮影領域724に拡大した後、全てのトレース対象の被写体が移動する撮影領域に入るまで移動経路723に従って移動する。結果、撮影領域は撮影領域725まで移動し、その後、撮影領域の大きさが元のサイズ(拡大前のサイズ)に戻る。
【0044】
なお、移動経路を作成する際に、情報処理装置104はPTZカメラ101に対してPTZ速度の指定を含めるようにしても良い。すなわち、経路作成部506が作成する移動情報は、移動経路を撮影領域が移動する際の速度(PTZ速度)を含み得る。経路作成部506は、例えば、移動経路を移動する撮影領域と被写体の位置関係に基づいて、撮影領域の速度を設定する。例えば、PTZカメラ101の画角がトレース対象の領域(被写体や必須撮影領域)を含む場合、或いは、画角がトレース対象の領域に接近した場合、情報処理装置104はパン・チルト速度を減速させるようにPTZ速度を指定する。他方、トレース対象の領域がPTZカメラ101の画角に含まれない状態では、情報処理装置104は、パン・チルト速度を加速させるようにPTZ速度を指定する。また、パン・チルト・ズームの速度や、加速・減速する領域、ズーム値に対する制限をユーザが任意に定められるようにしても良い。
【0045】
またトレース対象の被写体を網羅する方法として、以下のように移動経路が作成されても良い。例えば、図7(a)に示すように、始点となる撮影領域から終点となる撮影領域に対してパン方向に移動した際に、被写体が出現する順番に網羅する。或いは、例えば、図7(b)に示すように、始点となる撮影領域と終点となる撮影領域を端点とした矩形(撮影領域715と撮影領域716を含む最小の矩形)に含まれる被写体を、始点から終点へのパン方向に網羅する。この場合、矩形内に含まれる被写体がトレース対象となる。また、例えば、図7(e)に示すように、複数の経路に分けて被写体を網羅する場合、各経路は一筆書きで、かつ各経路が交わらないようにトレース対象の被写体を網羅する。或いは、図7(f)に示されるように、各径路が交わることを許容してトレース対象の被写体を網羅する。
【0046】
図8A図8Cを用いて、本実施形態に係る撮影領域の移動経路作成のためのユーザインターフェースについて説明する。以下、図8A図8Cを総称して図8と称する。図8では、撮影領域の移動経路の作成と、移動の実施を行うための、情報処理装置104の操作画面の例を(a)から(f)に表している。図8の例では、操作画面はタッチパネルになっておりGUI(グラフィカルユーザインターフェース)に従ってオペレータが操作する。ただし、操作画面の表示や操作方法を限定するものではない。
【0047】
図8(a)において、俯瞰映像表示領域801にはカメラ103により撮影される俯瞰映像がリアルタイムに表示され、撮影映像表示領域802にはPTZカメラ101により撮影された映像がリアルタイムに表示される。図8(a)では、プリセットAがPTZカメラ101によって撮影されていることが、撮影位置表示815により示されている。PTZカメラ101に対して、撮影領域803が設定されたプリセットA、撮影領域804が設定されたプリセットB、撮影領域816が設定されたプリセットCが登録されている。登録プリセット一覧805には、事前に登録されているプリセットA、プリセットB、プリセットCが表示されている。被写体トレースボタン806は、被写体トレースによる移動経路の作成を実施するか否かを操作するためのボタンである。図8(a)では被写体トレースが無効状態(被写体トレースOFF)になっている。この場合、例えば、図8(a)の状態でオペレータがプリセットAからプリセットBへの撮影領域の切り替えを指示すると、被写体トレースを伴わないPTZ移動が実施される。指807は、情報処理装置104を操作するユーザの指を模したものである。指807により被写体トレースボタン806が押下されることで、被写体トレースが有効(被写体トレースON)に切り替わる。
【0048】
図8(b)に示すように、被写体トレースが有効になると、被写体種別選択808、プリセット巡回数817、必須プリセット818、巡回時別経路作成ボタン819が表示される。被写体種別選択808は種別指定部502の一例、プリセット巡回数817は巡回数指定514の一例、必須プリセット818は必須領域指定の一例、巡回時別経路作成ボタン819は経路制限指定515の一例である。ユーザは、俯瞰映像表示領域801および上述の各表示項目を操作することで、撮影領域の移動経路を作成する際の条件(制約)を設定することができる。
【0049】
例えば、図8(c)に示されるように、各項目がオペレータにより設定されたとする。図8(c)では、被写体種別選択808においてトレースする被写体の種別が顔に、プリセット巡回数817においてプリセット巡回数が0回に指定されている。また、必須プリセット818において必須撮影領域としてプリセットCが選択されている。巡回時別経路作成ボタン819は、巡回数が2以上の場合にステップ609で説明した経路制限の指定を行うためのボタンである。図8(c)では、巡回数が0であるため、別経路を作成する経路制限は設けないことが指定されている。
【0050】
図8(c)では、被写体の種別として顔が選択されたことで、俯瞰映像表示領域801内に、俯瞰映像から検出された顔の位置を示す検出枠809から812が表示されている。また、オペレータは俯瞰映像表示領域801に表示されている被写体の検出枠を指807でタッチもしくはスライドさせることで、撮影領域の移動経路に含める被写体(トレース対象の被写体)を選択することができる。図8(c)に示す例では、ユーザ操作により被写体1~3が選択され、トレース対象リスト820に選択された被写体が列挙されている。なお、トレース順序指定512は、例えば、指807のスライドにより被写体が選択された順序、或いは、指807のタッチ操作により被写体が選択された順序を、トレース順序として用いてもよい。また、被写体指定511は、例えば、指807により閉図形を描くようにトレースした際に、その閉図形の内部に含まれる被写体を、トレース対象の被写体として選択するようにしてもよい。
【0051】
また、トレース対象の被写体を選択する方法として、指で各被写体を選択する以外に、被写体を網羅するためのパターンや範囲をユーザに提示し、これをユーザが指定するようにしてもよい。この場合、複数種類のパターンや範囲の候補をユーザに提示し、ユーザが提示された複数の候補から任意に選択できるようにしても良い。また、経路作成部506は、撮影領域の移動経路を複数作成できる場合は、撮影経路の複数の軌跡を俯瞰映像表示領域801にオーバーレイ表示し、オペレータが複数の軌跡の中から任意に選択できるようにしても良い。
【0052】
図8(d)において、登録プリセット一覧805の任意のプリセットを選択することにより、プリセット切替が指示される。例えば、ユーザは、登録プリセット一覧805内において切り替え先のプリセット(本例ではプリセットB)に対応するボタン813が押下されると、撮影領域をプリセットAからプリセットBへ移動させるための移動経路が生成される。PTZカメラ101の画角は、生成された移動経路に沿って撮影領域が移動するように制御される。こうして、プリセットAからプリセットBへ撮影領域が切り替わる。
【0053】
図8(e)では、図8(b)から図8(c)においてユーザによって指定された条件に従って経路作成部506が作成した移動経路814が俯瞰映像にオーバーレイ表示された様子を示す。移動経路のオーバーレイ表示により、ユーザは撮影領域の移動経路を容易に把握することができる。また、俯瞰映像表示領域801内に表示される撮影位置表示815は、PTZカメラ101における撮影領域の変化(PTZの移動)を表している。図8(f)では、撮影位置表示815がプリセットBに対応する撮影領域を指し示し、移動経路814のオーバーレイ表示を終えることで、撮影領域の移動が完了したことをオペレータに示している。
【0054】
以上の第一実施形態の構成によれば、プリセット切り替え時に、PTZカメラの撮影範囲内に存在する被写体をPTZ経路に含めることで、PZT移動中に被写体をトレースする映像を撮影することが可能になる。すなわち、被写体認識手段から被写体の位置に関する情報を取得し、取得した当該データに対応した動作を行うことにより、プリセット撮影時のPTZ移動中に鑑賞に適した映像を撮影することが可能になる。
【0055】
<第2実施形態>
第1実施形態では、1台のPTZカメラ101を有する映像制作システムを説明したが、PTZカメラ101は複数存在してもよい。第2実施形態では、複数のPTZカメラ101を備える映像制作システムについて説明する。なお、映像制作システム10の構成はPTZカメラ101が複数台存在すること以外は第1実施形態(図1)と同じである。
【0056】
情報処理装置104のハードウェア構成、機能構成も、第1実施形態(図2図5)と同様である。但し、第2実施形態の情報処理装置104は、複数のPTZカメラ101の各々に対して個別の移動経路を設定することができる。すなわち、経路作成部506は、複数の撮影領域が並列して移動するための複数の移動経路を作成する。例えば、トレース対象となる被写体が複数存在する場合に、複数のカメラで分担してトレースするように移動経路が設定されてもよい。この際、経路作成部506は、それぞれのPTZカメラに適用する撮影領域の移動経路を、他のPTZカメラに適用される移動経路に含まれる被写体とは異なる被写体をトレースするように作成するようにしてもよい。各カメラのトレース対象の被写体は、自動的に割り当てられてもよいし、ユーザが指定するようにしてもよい。また、例えば、2台のPTZカメラを用いた場合、一方のPTZカメラについてトレース対象の被写体がユーザ操作により選択されると、残りの被写体が他方のPTZカメラのトレース対象に自動的に設定されるようにしてもよい。なお、第一実施形態と同様に、カメラ103の映像から複数の部分映像をクロップすることにより、複数のPTZカメラによる複数のPTZ値による画角での撮影を電子的に再現してもよい。
【0057】
以上の第2実施形態の構成によれば、第1実施形態の手法が複数台のPTZカメラを備えるシステムに対して適用される。これにより、複数台のPTZカメラを備える場合においても、第1実施形態と同様の効果を得ることに加え、複数の被写体を同時にトレースすることが可能になる。
【0058】
以上のように、各実施形態によれば、プリセットされた撮影領域の間を画角が移動する場合に、被写体をトレースするようなカメラワークが実行され、PTZ移動中にも鑑賞に適した映像を取得することができる。
【0059】
(その他の実施形態)
本開示は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0060】
101:PTZカメラ、102:ネットワーク、103:カメラ、104:情報処理装置、501:操作入力部、502:種別指定部、503:被写体検出部、504:領域指示部、505:条件設定部、506:経路作成部、507:画角制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C