(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】車両用内装構造
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20240626BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240626BHJP
B60N 2/75 20180101ALI20240626BHJP
B60N 3/10 20060101ALI20240626BHJP
B68G 7/06 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B60R7/04 C
B60R13/02 B
B60N2/75
B60N3/10 A
B68G7/06 B
(21)【出願番号】P 2022046880
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】508309887
【氏名又は名称】森六テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】堀山 順吾
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-159122(JP,A)
【文献】実開昭63-057963(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0104423(US,A1)
【文献】米国特許第02324976(US,A)
【文献】特開2014-043204(JP,A)
【文献】特開2019-184798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023768(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105263803(CN,A)
【文献】特開2020-138667(JP,A)
【文献】特開2014-125122(JP,A)
【文献】特開平07-223476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
B60R 13/02
B60N 2/75
B60N 3/10
B68G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1重ね合わせ面を有
し、所定の剛性を備えた第1部材と、
前記第1部材に支持されており、前記第1重ね合わせ面に対して重ね合わせられている
単一の第2重ね合わせ面を有し、かつ、弾性変形可能な第2部材と、を備え、
前記第2部材は、弾性変形しやすい低弾性部と、前記低弾性部よりも弾性変形しにくい高弾性部と、を有し、
前記第1重ね合わせ面、又は、前記第2重ね合わせ面のいずれか一方は、他方の前記重ね合わせ面へ向かって開いていると共に互いに連通せずに独立している複数の凹部を有しており、
前記第2部材は、前記凹部を設けている領域において、前記第2重ね合わせ面と反対側の面から前記第2重ね合わせ面までの厚みが一定であり、
複数の前記凹部は、容積の大きい複数の大凹部と、複数の前記大凹部よりも容積の小さい複数の小凹部と、を含んでおり、
複数の前記大凹部が位置する部位は、前記第2部材の前記低弾性部を構成し、
複数の前記小凹部が位置する部位は、前記第2部材の前記高弾性部を構成している、車両用内装構造。
【請求項2】
第1重ね合わせ面を有
し、所定の剛性を備えた第1部材と、
前記第1部材に支持されており、前記第1重ね合わせ面に対して重ね合わせられている
単一の第2重ね合わせ面を有し、かつ、弾性変形可能な第2部材と、を備え、
前記第2部材は、弾性変形しやすい低弾性部と、前記低弾性部よりも弾性変形しにくい高弾性部と、を有し、
前記第1重ね合わせ面、又は、前記第2重ね合わせ面のいずれか一方は、他方の前記重ね合わせ面へ向かって開いていると共に互いに連通せずに独立している複数の凹部を有しており、
前記第2部材は、前記凹部を設けている領域において、前記第2重ね合わせ面と反対側の面から前記第2重ね合わせ面までの厚みが一定であり、
各々の前記凹部の形状及び容積は、互いに同一であり、
複数の前記凹部は、前記凹部同士の間隔が狭く設定されている密部と、前記凹部同士の間隔が前記密部よりも広く設定されている疎部と、を含んでおり、
前記密部は、前記第2部材の前記低弾性部を構成し、
前記疎部は、前記第2部材の前記高弾性部を構成している、車両用内装構造。
【請求項3】
前記第2部材の前記第2重ね合わせ面が複数の前記凹部を有している、請求項1又は請求項2に記載の車両用内装構造。
【請求項4】
複数の前記凹部は、全体として千鳥状に位置している、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用内装構造。
【請求項5】
複数の前記凹部は、円錐台状である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の車両用内装構造。
【請求項6】
前記車両用内装構造は、車両用アームレストである、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の車両用内装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション材を備えた車両用内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車の車室の内装には、一定のクッション性を出すために、その内部にクッション材が設けられている。クッション材を内部に備えた車両用内装構造に関する先行技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された車両用の内装構造は、車両のドアトリムに設けられるアームレストである。このアームレストは、基材(第1部材)と、基材に重ね合わされたクッション材(第2部材)と、クッション材を覆う表皮と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内装部品のなかでもアームレストには、そのクッション性や触感について様々なニーズがある。例えば、アームレストのなかで部位に応じてクッション性を変化させる場合、クッション性の異なる複数のクッション材を準備し、柔らかく設定する部位には柔らかい(低弾性)クッション材を配置し、硬く設定する部位には硬い(高弾性)クッション材を配置することが考えられる。さらに、複数のクッション材を重ね合わすことにより、アームレストのクッション性を調整することも考えられる。しかし、複数のクッション材を備えたアームレストではコストが嵩む。
【0006】
本発明は、コストを抑えつつ、部位に応じて異なるクッション性を備えた車両用内装構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、第1重ね合わせ面を有する第1部材と、
前記第1重ね合わせ面に対して重ね合わせられている第2重ね合わせ面を有し、かつ、弾性変形可能な第2部材と、を備え、
前記第2部材は、弾性変形しやすい低弾性部と、前記低弾性部よりも弾性変形しにくい高弾性部と、を有し、
前記第1重ね合わせ面、又は、前記第2重ね合わせ面のいずれか一方は、他方の前記重ね合わせ面へ向かって開いていると共に互いに連通せずに独立している複数の凹部を有しており、
前記複数の凹部は、容積の大きい複数の大凹部と、前記複数の大凹部よりも容積の小さい複数の小凹部と、を含んでおり、
前記複数の大凹部が位置する部位は、前記第2部材の前記低弾性部を構成し、
前記複数の小凹部が位置する部位は、前記第2部材の前記高弾性部を構成している、車両用内装構造が提供される。
【0008】
本発明によれば、第1重ね合わせ面を有する第1部材と、
前記第1重ね合わせ面に対して重ね合わせられている第2重ね合わせ面を有し、かつ、弾性変形可能な第2部材と、を備え、
前記第2部材は、弾性変形しやすい低弾性部と、前記低弾性部よりも弾性変形しにくい高弾性部と、を有し、
前記第1重ね合わせ面、又は、前記第2重ね合わせ面のいずれか一方は、他方の前記重ね合わせ面へ向かって開いていると共に互いに連通せずに独立している複数の凹部を有しており、
各々の前記凹部の形状及び容積は、互いに同一であり、
複数の前記凹部は、前記凹部同士の間隔が狭く設定されている密部と、前記凹部同士の間隔が前記密部よりも広く設定されている疎部と、を含んでおり、
前記密部は、前記第2部材の前記低弾性部を構成し、
前記疎部は、前記第2部材の前記高弾性部を構成している、車両用内装構造が提供される。
【0009】
好ましくは、前記第2部材の前記第2重ね合わせ面が前記複数の凹部を有している。
【0010】
好ましくは、前記複数の凹部は、全体として千鳥状に位置している。
【0011】
好ましくは、前記複数の凹部は、円錐台状である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用内装構造は、第1重ね合わせ面を有する第1部材と、第1重ね合わせ面に対して重ね合わせられている第2重ね合わせ面を有し、かつ、弾性変形可能な第2部材と、を備えている。第2部材は、弾性変形しやすい低弾性部と、低弾性部よりも弾性変形しにくい高弾性部と、を有している。
【0013】
第1重ね合わせ面、又は、第2重ね合わせ面のいずれか一方は、他方の重ね合わせ面へ向かって開いていると共に互いに連通せずに独立している複数の凹部を有している。複数の凹部は、容積の大きい複数の大凹部と、大凹部よりも容積の小さい複数の小凹部と、を含んでいる。
【0014】
複数の大凹部が位置する部位は、第2部材が変形しやすいため、第2部材の低弾性部を構成する。複数の小凹部が位置する部位は、第2部材が変形しにくいため第2部材の高弾性部を構成する。容積の異なる凹部を組み合わせることにより、複数の第2部材の組み合わせでなく、単体の第2部材のみで車両用内装構造のクッション性を変化させることができる。車両用内装構造は、コストを抑えつつ、部位に応じて異なるクッション性を備えことができる。
【0015】
各々の凹部の形状及び容積は、互いに同一としてもよい。この場合、複数の凹部は、凹部同士の間隔が狭く設定されている密部と、凹部同士の間隔が密部よりも広く設定されている疎部と、を含んでいる。
【0016】
密部は、凹部が密集しているため第2部材の低弾性部を構成し、疎部は、凹部が散らばっているため第2部材の高弾性部を構成している。凹部同士の間隔に変化をつけることにより、複数の第2部材の組み合わせでなく、単体の第2部材のみで車両用内装構造のクッション性を変化させることができる。車両用内装構造は、コストを抑えつつ、部位に応じて異なるクッション性を備えことができる。
【0017】
また、第2部材の第2重ね合わせ面が複数の凹部を有していてもよい。所定の剛性を備えた第1部材に凹部を形成するよりも、弾性変形可能な第2部材に凹部を形成するほうが、製造しやすい。
【0018】
また、複数の凹部は、全体として千鳥状に位置していてもよい。即ち、第1の重ね合わせ面又は第2の重ね合わせ面のなかで、複数の凹部は偏りなく均一に位置している。車両用内装構造は、その中の部位に関わらず、一定のクッション性を備えている。
【0019】
また、複数の凹部は、円錐台状であってもよい。金型を利用した成形により第2部材を製造する場合、金型から第2部材を離す離型が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1の車両用内装構造を備えた乗用車の車室を説明する図である。
【
図4】
図2に示した第1部材に重ね合わされる前の、板状の第2部材の斜視図である。
【
図5】
図4の5が示す線で囲われた第2部材を説明する図である。
【
図6】実施例1の車両用内装構造の作用を説明する図である。
【
図7】実施例2の車両用内装構造の構成及び作用を説明する図である。
【
図8】実施例3の車両用内装構造の構成及び作用を説明する図である。
【
図9】
図8に示された第2部材の凹部の位置について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
なお、説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右(車幅方向)、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Lは乗員から見て左、Rは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【0022】
<実施例1>
図1(乗用車の車室を説明する図)に示された車両10は、ステアリングハンドル11の車両後方に配された運転席12と、運転席12の車幅方向の隣りに配された助手席13と、これらの助手席13と運転席12との間に配されたセンターコンソール14と、を備えている。センターコンソール14の前部には、変速用のシフトレバー15が設けられている。
【0023】
[アームレスト]
図1及び
図2(
図1の2-2線断面図)を参照する。センターコンソール14は、さらに、物を収納可能な収納空間16を内部に有する箱状の収納部17と、収納部17の開口を覆っており肘掛けとしてのアームレスト18(車両用内装構造)と、を備えている。アームレスト18は、収納部17の開口を開閉可能な開閉機構(図示なし)を介して、収納部17と接続されている。開閉機構の詳細な説明は省略する。
【0024】
[基材、クッション材、表皮]
アームレスト18は、基材20(第1部材)と、基材20に重ね合わされたクッション材30(第2部材)と、クッション材30を覆っている表皮19と、を備えている。
【0025】
基材20は、上下方向を厚み方向とし乗員の腕を支持可能な本体部20aと、本体部20aの両端から収納部17へ向かって延びている壁部20b,20bと、を有している。本体部20aは、上方へ向かって膨らむように僅かに湾曲している。基材20は、例えば樹脂材からなる。基材20は、クッション材30及び表皮19を支持し、アームレスト18の形状を維持可能な所定の剛性を有していればその素材は問わない。
【0026】
クッション材30は、例えば、ウレタン等の発泡材からなる。クッション材30は所定の厚みを持ち、弾性変形可能ならばその素材は問わない。
【0027】
表皮19は、例えば合皮や布である。クッション材30を覆うものならばその素材は問わない。
【0028】
[基材の面、クッション材の面]
図3(
図2の"3"で囲む部位の拡大した図)及びを参照する。基材20のうち、収納空間16に対して露出している面を露出面21とし、露出面21と反対側の面であってクッション材30が重ね合わされる面を第1重ね合わせ面22とする。
【0029】
クッション材30のうち、基材20の第1重ね合わせ面22に対して重ね合わせられている面を第2重ね合わせ面31とし、第2重ね合わせ面31の反対側の面であると共に表皮19に覆われている面を被覆面32とする。
【0030】
[複数の凹部]
図3及び
図4(クッション材30の斜視図)を参照する。なお、
図4は、基材20に重ね合わせる前の板状のクッション材30のうち、基材20の本体部20aに重ね合わせることが可能な部位の一部30aが示されている。
【0031】
クッション材30の第2重ね合わせ面31は、基材20の第1重ね合わせ面22へ向かって開いている複数の凹部40を有している。複数の凹部40の内部同士は連通していない。即ち、各々の凹部は互いに独立している。
【0032】
複数の凹部40は、互いに容積の異なる複数の第1凹部41(大凹部)~複数の第4凹部44(小凹部)を含んでいる。実施例1では、上記の4種類の凹部40を含んでいるが、凹部40は2種類以上ならばその数は問わない。第1凹部41~第4凹部44の順に、その容積は小さくなる。即ち、第1凹部41の容積が最も大きく、第4凹部44の容積が最も小さい。なお、実施例1では、”大凹部”を最も大きい凹部と、”小凹部”を最も小さい凹部としているが、相対的な大小関係を満たしていれば、第1凹部41~第4凹部44のなかから、適宜、大凹部、小凹部を選択できる。
【0033】
[凹部の形状]
第1凹部41は、円錐台形状を呈している。即ち、第1凹部41は、縁が円状の底面41aと、底面41aの周縁から基材20側へ向かうにつれて内径が大きくなる側面41bと、を有している。同様に、第2凹部42~第4凹部44は、円錐台形状を呈している。
【0034】
各々の凹部40の縁の径は、第1凹部41が最も大きく、第4凹部44が最も小さい。各々の凹部40の深さは、第1凹部41が最も深く、第4凹部44が最も浅い。
【0035】
なお、凹部40の形状は、円錐台形状に限らず、半球状や円柱状など適宜変更することができる。
【0036】
[複数の凹部(群)]
図4及び
図5(
図4の5が示す線で囲われたクッション材30を説明する図)を参照する。クッション材30のなかで、複数の第1凹部41は、前後方向を長手方向として並んでいる。複数の第1凹部41全体を第1群41Gとする。第1群41Gは、クッション材30のなかで車幅方向の中央に位置している。
【0037】
同様に、クッション材30のなかで、複数の第2凹部42~複数の第4凹部44は、それぞれ前後方向を長手方向として並んでいる。複数の第2凹部42~第4凹部44を第2群42G~第4群44Gとする。第4群44Gは、クッション材30のなかで車幅方向の両端に位置している。即ち、車幅方向中央から離れる方向へ第1群41G~第4群44Gの順番に並んでいる。なお、第2群42G~第4群44Gは、第1群41Gを中心として左右対称である。
【0038】
[千鳥状の配置]
図5参照する。第1群41G41Gのなかで、第1凹部41は千鳥状に配されている。互いに隣り合い最も近傍同士の3つの第1凹部41の中心を結ぶと、三角形T1となる。三角形T1を構成する隣り合う二辺がなす角の角度θ1は、略55度~65度である。
【0039】
上記の説明は、第2群42G~第4群44Gも適合する即ち、第2群42G~第4群44Gのなかで、第2凹部42~第4凹部44は千鳥状に配されている。
【0040】
さらに、互いに隣り合う群のなかでも、互いに隣り合い最も近傍同士の3つの凹部の中心を結ぶと、三角形となる。例えば、第3群43Gの1つの第3凹部43と、第4群の2つの第4凹部44について、各々の凹部の中心を結んでも三角形T2となる。三角形T2を構成する隣り合う二辺がなす角の角度θ2は、略55度~65度である。
【0041】
上記の構成により、第1凹部41~第4凹部44は、各々の群のなかのみならず、複数の凹部40全体としても千鳥状に位置しているといえる。
【0042】
車幅方向(左右方向)を基準とすると、第1凹部41の中心~第4凹部44の中心は直線状に位置している(直線L1を参照)。換言すると、車幅方向に隣り合う凹部40同士の間隔(ピッチ)は等しい。
【0043】
クッション材30のなかの、前後方向に延びる任意の直線上には、第1凹部41~第4凹部44のなかのいずれかの凹部40が位置している。例えば、直線L2上に、第2凹部42,42が位置している。
【0044】
[実施例の効果]
[凹部を利用したクッション性の調整]
図5及び
図6(実施例1の作用を説明する図)を参照する。アームレスト18は、基材20と、基材20に重ね合わされたクッション材30と、クッション材30を覆っている表皮19と、を備えている。クッション材30の第1重ね合わせ面22は、複数の凹部40を有している。複数の凹部40は、容積が互いに異なる第1凹部41~第4凹部44を含む。
【0045】
第1凹部41の容積は最も大きい。即ち、クッション材30のなかの第1群41Gが位置している部位は、肉抜き量が多い。第1群41Gは弾性変形しやすい低弾性部30Aを構成する。低弾性部30Aは圧縮されやすくなり、アームレスト18の中央を最も柔らかく設定できる。
【0046】
第4凹部44は最も容積が小さい。即ち、クッション材30のなかの第4群44Gが位置している部位は、肉抜き量が小さい。第4群44Gは低弾性部30Aよりも弾性変形しにくい高弾性部30B,30Bを構成する。高弾性部30B,30Bは圧縮されにくくなり、アームレスト18の両端を最も硬く設定できる。
【0047】
したがって、クッション材30は、単体ではあるが低弾性部30Aと高弾性部30B,30Bとを有する。容積(孔の径、深さ等)が異なる複数の種類の凹部40(41~44)を組み合わせることにより、複数のクッション材の組み合わせでなく、単体のクッション材30のみでアームレスト18のクッション性を変化させることができる。アームレスト18は、コストを抑えつつ、部位に応じて異なるクッション性を備えている。
【0048】
[多数の突起部を備えたアームレストとの比較]
なお、既存のアームレスト(図示なし)には、基材と、基材に重ね合わされていると共に弾性変形可能な樹脂製の樹脂部材と、を備えるものもある。この樹脂部材は、その裏面から基材へ向けて延びている多数の突起部を有している。突起部の先端は基材に接触している。アームレストに荷重が加わった際に各々の突起部が弾性変形し、アームレストにクッション性が生まれる。
【0049】
このような多数の突起部を備えたアームレストでは、突起部の突出方向の長さを変更することにより、アームレストのクッション性を調整可能となる。ただし、突起部の長さを変更するため、突起部の長さが均一のアームレストを基準とした場合、アームレストの外形やデザインに影響を与えるおそれがある。
【0050】
一方、実施例1のアームレスト18は、クッション性の調整ために、クッション材30の厚みを変化させていない。既存のクッション材30に複数の凹部40を形成すれば足り、アームレスト18の外形やデザインに影響を与えることもなく汎用性が高い。
【0051】
[段階的なクッション性の設定]
アームレスト18の中央から車幅方向外側(左右方向)へ向かって、容積の大きい第1凹部41~容積の小さい第4凹部44の順に並んでいる。即ち、容積の異なる凹部を4種類形成し、さらに、容積の大きさ順に凹部40を並べている。クッション材20の弾性特性を徐々に変化させることができる。アームレスト18には、滑らかで自然なクッション性が生じる。
【0052】
[偏りのない均一なクッション性]
図4を参照する。第1凹部41~第4凹部44は、全体として千鳥状に位置している。即ち、第2の重ね合わせ面のなかで、凹部は偏りなく均一に位置している。アームレスト18は、その中の部位に関わらず、一定のクッション性を備えている。
【0053】
[凹部の形状]
第1凹部41~第4凹部44は、円錐台形状である。そのため、金型を利用した成形によりクッション材30を製造する場合、金型からクッション材30を離す離型が容易となる。なお、円錐台の成形方法は、金型を利用した成形に限らず、周知の方法を採用できる。
【0054】
上記の実施例1の効果は、後述する実施例2においても発揮される。実施例1特有の効果を以下に説明する。
【0055】
[凹部の成形性]
第1凹部41~第4凹部44は、クッション材30に形成されている。後述する実施例2では、所定の剛性を備えた基材20に凹部を形成している。実施例2と比較すると、容易に凹部を形成できる。
【0056】
[基材への重ね合わせ易さ]
クッション材には、予め基材の形状に合わせて立体的に成形されているものがある。一方で、実施例1のように汎用性の高い板状のクッション材30(30a)を利用する場合もある。実施例1の板状のクッション材30には凹部が形成されている。凹部が形成されていない通常のクッション材と比較すると、クッション材30は変形させやすい。そのため、アームレスト18の製造工程のなかの、クッション材30を基部20に重ね合わせるクッション材重ね合わせ工程において、重ね合わせ作業が容易となる。
【0057】
図3を参照する。基材20の本体部20aは、上方へ向かって膨らむように湾曲している。このような湾曲した基材20に対しでもクッション材30は重ね合わせやすい。
【0058】
<実施例2>
図7(実施例2のアームレスト180の構成を説明する図)を参照する。実施例1と共通する構成については、実施例1と同一の符号を付すると共に説明は省略する。実施例2のアームレスト180は、基材120(第1部材)と、基材120に重ね合わされたクッション材130(第2部材)と、クッション材130を覆っている表皮19と、を備えている。
【0059】
基材120の第1重ね合わせ面122は、クッション材130の第2重ね合わせ面131へ向かって開いている複数の凹部140を有している。複数の凹部140の内部同士は連通していない。即ち、各々の凹部140は互いに独立している。
【0060】
複数の凹部140は、容積が互いに異なる第1凹部141~第4凹部144を含む。第1凹部141から第4凹部144の順に、その容積は小さくなる。即ち、第1凹部141(大凹部)の容積が最も大きく、第4凹部144(小凹部)の容積が最も小さい。さらに、凹部140の縁の径は、第1凹部141が最も大きく、第4凹部144が最も小さい。
【0061】
第1凹部141は、クッション材130のなかで車幅方向の中央に位置している。第4凹部144は、クッション材130のなかで車幅方向の両端に位置している。即ち、クッション材130の中央から端部へ向かうにつれて、凹部140の容積及び縁の径は小さくなる。凹部140の形状、第1重ね合わせ面122内での凹部140の位置は、実施例1と同様であり、その説明を省略する。
【0062】
[実施例2の効果]
凹部140の縁の径は、第1凹部141が最も大きい。即ち、基材120の第1重ね合わせ面122のなかで、第1凹部141が位置する部位は、クッション材130を支持する支持面の面積が小さい。クッション材130のなかで、第1凹部141に対向する部位は、弾性変形しやすい(凹みやすい)低弾性部130Aを構成する。
【0063】
凹部140の縁の径は、第4凹部144が最も小さい。即ち、基材120の第1重ね合わせ面122のなかで、第4凹部144が位置する部位は、クッション材130を支持する支持面の面積が第1凹部141よりも大きい。クッション材130のなかで、第4凹部144に対向する部位は、低弾性部130Aよりも弾性変形しにくい(凹みにくい)高弾性部130Bを構成する。
【0064】
即ち、クッション材130は、単体であるが低弾性部130Aと高弾性部130Bとを有する。複数のクッション材でなく、単体のクッション材130のみでアームレスト180のクッション性を変化させることができる。
【0065】
<実施例3>
図8を参照する。実施例1と共通する構成については、実施例1と同一の符号を付すると共に説明は省略する。実施例3のアームレスト280は、基材20(第1部材)と、基材20に重ね合わされたクッション材60(第2部材)と、クッション材60を覆っている表皮19と、を備えている。
【0066】
[凹部]
図8及び
図9を参照する。クッション材60の第2重ね合わせ面61は、基材20の第1重ね合わせ面22へ向かって開いている複数の凹部50を有している。複数の凹部50の内部同士は連通していない。即ち、各々の凹部50は互いに独立している。各々の凹部50の形状(例えば、円錐台状)及び容積は同一である。
【0067】
複数の凹部50のうち、車幅方向中央に位置するものを第1凹部51とし、第1凹部51から車幅方向外側(左右方向)へ向かって第2凹部52~第4凹部54とする。前後方向に並んでいる第1凹部51全体を第1群51Gとする。同様に、前後方向に並んでいる第2凹部52~第4凹部54を第2群52G~第4群54Gとする。第2群52G~第4群54Gは、第1群51Gを中心として左右対称である。
【0068】
[隣り合う凹部同士の間隔]
各々の群51~54のなかで、互いに隣り合う凹部50同士の間隔は等しい。例えば、第1群51Gのなかで、前後方向に隣り合う凹部51,51同士の間隔はいずれも間隔D1である。第4群54Gのなかで、前後方向に隣り合う凹部54,54同士の間隔はいずれも間隔D2である。前後方向に互いに隣り合う凹部50同士の間隔を比較すると、第1群51G(密部)から第4群54G(疎部)の順に広く設定されている。即ち、間隔D1が最も狭く、第4群54Gの間隔D2が最も広い(D1<D2)。なお、相対的な大小関係を満たしていれば、第1群51G~第4群54Gのなかから、適宜、密部、疎部を選択できる。
【0069】
[隣り合う群同士の間隔]
第2凹部52の中心を通過する線L3と、第3凹部53の中心を通過する線L4との間隔を、第2群52Gと第3群との間隔Wとする。このように規定される隣り合う群同士の間隔Wは、車幅方向外側へ向かうにつれて、広く設定されている。
【0070】
[実施例3の効果]
[凹部を利用したクッション性の調整]
第1群51Gを構成する凹部50同士の間隔D1は、第2群52G~第4群54Gを構成する凹部50同士の間隔よりも狭く設定されている。即ち、クッション材60のなかの第1群51Gが位置している部位は、凹部50が密集しており肉抜き量が多い。第1群51Gは弾性変形しやすい低弾性部230Aを構成する。低弾性部230Aは圧縮されやすくなり、アームレスト280の中央を最も柔らかく設定できる。
【0071】
第4群54Gを構成する凹部50同士の間隔D2は、第1群51G~第3群53Gを構成する凹部50同士の間隔よりも広く設定されている。即ち、クッション材60のなかの第4群54Gが位置している部位は、凹部50が散らばっており肉抜き量が小さい。第4群54Gは低弾性部230Aよりも弾性変形しにくい高弾性部230B,230Bを構成する。高弾性部230B,230Bは圧縮されにくくなり、アームレスト280の両端を最も硬く設定できる。
【0072】
したがって、クッション材60は、単体ではあるが低弾性部230Aと高弾性部230B,230Bとを有する。凹部50同士の間隔が異なる複数の凹部50を組み合わせることにより、複数のクッション材60の組み合わせでなく、単体のクッション材60のみでアームレスト280のクッション性を変化させることができる。アームレスト280は、コストを抑えつつ、部位に応じて異なるクッション性を備えている。
【0073】
[幅広い弾性特性の設定]
上記の通り、第1群51G~第4群54Gへ向かうにつれて、同じ群のなかで隣り合う凹部50同士の間隔(間隔D1,D2を参照)は広がっている。さらに、アームレスト280の中央から車幅方向外側(左右方向)へ向かって、隣り合う群同士の間隔Wは広がっている。したがって、クッション材60の弾性特性を幅広く変化させることができる。
【0074】
なお、実施例3では、前後及び左右方向に隣り合う凹部の間隔を変化させているが、前後及び左右方向に限らず、周囲の凹部50との間隔を変化することにより、クッション材60の弾性特性を部位ごとに変化させることができれば、凹部50の位置は適宜変更することができる。
【0075】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。凹部の深さ、凹部の縁の径、凹部の位置や数などは、乗員がアームレスト18,180に接触したときに乗員が凹部を認識できない程度において、適宜変更することができる。さらに、車両用内装構造は、センターコンソールに限らず、ドアトリムに設けるアームレストに採用しても良く、車室ならばその部位は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の車両用内装構造は、乗用車に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0077】
18,180,280…アームレスト(車両用内装構造)
20,120…基材(第1部材)
22,122…基材の第1重ね合わせ面
30,60,130 …クッション材(第2部材)
30A,130A,230A…クッション材の低弾性部
30B,130B,230B…クッション材の高弾性部
31,61,131 …クッション材の第2重ね合わせ面
40,50,140 …複数の凹部
41,141 …複数の第1凹部(大凹部)
42,142 …複数の第2凹部
43,143 …複数の第3凹部
44,144 …複数の第4凹部(小凹部)
51G…第1群(密部)
54G…第4群(疎部)
D1,D2…凹部同士の間隔