(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】スポーツボールのスピン軸を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/62 20060101AFI20240626BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20240626BHJP
G01S 13/38 20060101ALI20240626BHJP
A63B 69/36 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G01S13/62
G01S13/88
G01S13/38
A63B69/36 541P
(21)【出願番号】P 2022106737
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2020544532の分割
【原出願日】2018-12-11
【審査請求日】2022-08-01
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507002457
【氏名又は名称】トラックマン・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】TRACKMAN A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】フレドリク トゥクセン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ウンシュトルップ
(72)【発明者】
【氏名】カスパー マッケラン
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0306035(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0293331(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0191896(US,A1)
【文献】米国特許第06244971(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0254892(US,A1)
【文献】特開2012-068139(JP,A)
【文献】特開2014-182032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
A63B 69/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツボールのスピン軸を決定する方法であって、
少なくとも3つの受信機が同一直線上にないように配置された3つの受信機を有する第1レーダを介して、前記スポーツボールが放たれる対象領域に、前記スポーツボールにより前記受信機へ反射される信号を送信することと、
前記第1レーダにより、前記受信機を介して、反射された前記信号を受信することと、
前記スポーツボールがスピンしているときの前記スポーツボールにおける異なる部分の前記第1レーダに対する異なる速度に対応する、前記第1レーダにより受信された周波数の範囲を決定するために、前記第1レーダにより第1時点で受信された前記反射された信号の周波数分析を実行することと、
受信した前記信号を複数の周波数成分に分けることと、
少なくとも2つの前記受信機を含む平面における、前記スポーツボール上での角度位置を、前記周波数成分のそれぞれについて決定し、決定された角度位置に基づいて、前記スポーツボールの前記スピン軸の成分を識別することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記スピン軸の前記成分は、前記第1レーダから前記スポーツボールへの視線に垂直な平面への前記スポーツボールの前記スピン軸の投影として識別されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記スポーツボールの前記スピン軸の前記投影は、決定された角度位置で表される線に垂直な線として識別されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
信号からスポーツボールの平均的な動きを減算するために、受信した信号の動き補償を行うこと
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記動き補償は、受信した信号を0Hzの周辺に集中させることを特徴とする方法。
【請求項6】
スポーツボールの速度等高線を決定する方法であって、
少なくとも3つの受信機が同一直線上にないように配置された3つの受信機を有する第1レーダを介して、前記スポーツボールが放たれる対象領域に、前記スポーツボールにより前記受信機へ反射される信号を送信することと、
前記第1レーダにより、前記受信機を介して、反射された前記信号を受信することと、
前記スポーツボールがスピンしているときの前記スポーツボールにおける異なる部分の前記第1レーダに対する異なる速度に対応する、前記第1レーダにより受信された周波数の範囲を決定するために、前記第1レーダにより第1時点で受信された前記反射された信号の周波数分析を実行することと、
受信した前記信号を複数の周波数成分に分けることと、
前記周波数成分ごとに前記ボールの表面上の速度等高線を特定することであって、それぞれの速度等高線は、前記第1レーダの前記受信機の第1の組によって受信された信号と前記第1レーダの前記受信機の第2の組によって受信された信号との間で検出された位相シフトに基づいて、前記ボールの表面上の、相対速度が同一である複数の反射点に対応するものであることと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
スポーツボールのスピン軸を決定する方法であって、
請求項6の方法により速度等高線を決定することと、
少なくとも2つの前記受信機を含む平面における、前記スポーツボール上での角度位置を、前記周波数成分のそれぞれについて決定し、角度位置により決定されて表される線を、前記第1レーダから前記スポーツボールへの視線に垂直な平面への前記スポーツボールの前記スピン軸の投影として識別することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
スポーツボールのスピン軸を決定する方法であって、
請求項6の方法により速度等高線を決定することと、
対応する平面内の点を定義するためにそれぞれの等高線上に配置された位置を平均することであって、それぞれの速度等高線からの点の集合は、前記スピン軸に垂直な線に対応するものであることと、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2018年3月13日に出願された米国仮特許出願第62/642,369号の優先権を主張する。前記出願の明細書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
スポーツボールのスピン量やスピン軸の向きのようなスピンパラメータは、スポーツボールの追跡、スポーツボールの飛行のシミュレーション、及び、ゴルフボール、クラブ、アイアン、ラケット、バット等のような、スポーツボールを放つために使用されるスポーツ用品の開発に非常に役立つ。ゴルフボールの場合、このような測定は、通常、視覚マーカ又はレーダ反射材料のストリップ又はパターンをゴルフボールに加えることによって行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、そのような解決法は、一般に、試験目的でのみ有用であり、ゴルファーが、変更なしに自分の選んだボールを自由に使用する用途では有用ではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、スポーツボールのスピン軸を決定するためのシステムに関する。このシステムは、スポーツボールが放たれる対象領域に信号を送信する第1レーダを備える。第1レーダは、2つのペアの受信機が同一直線上にないように配置された少なくとも3つの受信機を有する。前記システムは、前記第1レーダからデータを受信し、前記ボールがスピンしているときの前記ボールにおける異なる部分の第1レーダに対する異なる速度に対応する、第1時点で受信された第1レーダ周波数範囲を決定する処理ユニットを更に備える。前記処理ユニットは、前記第1レーダ周波数範囲を複数の周波数成分に分け、前記周波数成分のそれぞれについて、前記周波数成分のそれぞれに関連付けられた角度位置を計算する。前記処理ユニットは、決定された前記角度位置により表される線に垂直な線を、前記第1レーダから前記スポーツボールへの視線に垂直な平面における前記スピン軸の第1投影として識別する。
【0005】
また、本発明は、スポーツボールのスピン軸を決定するための方法に関する。この方法は、第1レーダを介して、前記スポーツボールが放たれる対象領域に信号を送信することを含む。前記第1レーダは、少なくとも3つの受信機が同一直線上にないように配置された3つの受信機を有する。前記信号は、前記スポーツボールにより前記受信機へ反射される。この方法は、前記第1レーダにより、前記受信機を介して、反射された前記信号を受信することを含む。この方法は、前記スポーツボールがスピンしているときの前記スポーツボールにおける異なる部分の前記第1レーダに対する異なる速度に対応する、前記第1レーダにより受信される周波数の範囲を決定するために、第1時点で前記第1レーダより受信された前記反射された信号の周波数分析を実行することを含む。この方法は、受信した前記信号を複数の周波数成分に分けることを含む。この方法は、前記周波数成分のそれぞれに対応する角度位置を決定し、角度位置により決定されて表される線を、前記第1レーダから前記スポーツボールへの視線に垂直な線に垂直な平面への前記スポーツボールの前記スピン軸の投影として識別することを含む。
【0006】
更に、本発明は、スポーツボールのスピン軸を決定するための方法に関する。この方法は、第1レーダを介して、スポーツボールが放たれる対象領域に信号を送信することを含む。前記第1レーダは、少なくとも3つの受信機が同一直線上にないように配置された3つの受信機を有する。前記信号は、前記スポーツボールにより前記受信機へ反射される。この方法は、前記第1レーダにより、前記受信機を介して反射された前記信号を受信することを含む。この方法は、前記第1レーダに対する前記スポーツボールの角度位置を決定することを含む。この方法は、前記第1レーダにより受信された前記反射された信号の周波数分析を実行し、前記周波数分析に基づいて、前記受信機で観察された位相差の周波数についての導関数を計算し、この導関数及び前記スポーツボールの前記角度位置に基づいて、スポーツボールの回転の主軸を識別することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、スポーツボールのスピン軸を決定するためのシステムを示す図。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による、
図1のシステムのレーダ及びスピンするスポーツボールの側面図。
【
図3】
図1のシステムのレーダから見た、スピンするスポーツボールを示す図。
【
図4】
図2及び3の並進運動補償型の、スピンするスポーツボールから受信されたドップラー信号のスペクトログラム。
【
図5】
図1のシステムの使用方法のフローチャート。
【
図6】本発明の別の例示的な実施形態による、
図1のシステムのレーダ及びスピンするスポーツボールの側面図。
【
図7】複数の周波数成分に分けられた
図6のスポーツボールの周波数スペクトル。
【
図8】
図6のスポーツボールにマッピングされた
図7の各周波数成分の平均相対位置を示す図。
【
図9】純粋なバックスピンを伴うボールの様々な周波数成分の平均相対位置を示す図。
【
図10】
図9の並進運動補償型の、スピンするボールから受信されたドップラー信号のスペクトログラム。
【
図11】位相-位相モノパルス比較から角度を測定する原理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例示的な実施形態は、以下の説明及び関連する添付の図面を参照して更に理解することができ、同様の要素には同じ参照番号が与えられる。例示的な実施形態は、スポーツボールのスピン軸を決定するためのシステム及び方法に関する。スポーツボールはスピンしている間は静止している可能性があるが、殆どの場合、並進運動もする。ここで詳述する例示的な実施形態はゴルフボールの追跡について説明するが、当業者は、スポーツボール又は非スポーツ関連物体でさえ、このシステムで同様に追跡され得ることを理解するであろう。
【0009】
図1は、例示的な実施形態による、スポーツボールのスピン軸を決定するための第1のシステム100を示す。第1のシステム100は、スポーツボールがその飛行の少なくとも一部で通過することになる対象領域を向くレーダ装置102を備える。この実施形態におけるレーダ102は、送信機104及び少なくとも3つの受信機106を有する。この実施形態における受信機106は、受信機106Aと106Bとが互いに垂直に整列し、受信機106Aと106Cとが互いに水平に整列するように配される。しかしながら、レーダ装置102が、少なくとも3つの受信機アンテナが互いに同一直線上にない3つ以上の受信機アンテナを含む限り、受信機106は垂直又は水平に位置合わせされる必要がないことが当業者には理解されるであろう。本実施形態では、垂直に整列された受信機106A、106Bは、受信機106A、106Cが水平に整列される軸に直交する軸に沿って整列されている。しかしながら、受信機のペアは互いに直交している必要はないことが当業者には理解されよう。本実施形態では、受信機106は、互いに固定される。当業者には理解されるように、そして以下でより詳細に論じられるように、離された受信機106A、106B、106Cの幾何学的配列は、1つ以上の時点でのボールのスピン軸(ボールが中心としてスピンする軸)の向きを導き出すために、スポーツボールから受信機106A、106B、106Cへ反射されたレーダ信号の分析を可能にする。
【0010】
レーダ102は、例えば、最大500ミリワットのEIRP(等価等方性放射電力)の電力であってXバンド周波数(10GHz)でマイクロ波を放出する連続波ドップラーレーダであり得、従って、短距離国際ラジエーター用のFCC及びCE規制に準拠する。ただし、他の法域では、他の電力レベルと周波数とが地域の規制に従って使用される場合がある。例示的な実施形態では、マイクロ波は、例えば5~125GHzの間のより高い周波数で放出される。低い物体速度でより正確な測定を行うには、20GHz以上の周波数が使用され得る。位相若しくは周波数が変調されたCWレーダ、多重周波数のCWレーダ、又は、単一周波数のCWレーダを含む、任意のタイプの連続波(CW)ドップラーレーダが使用され得る。LIDARのような他の追跡装置が、可視又は非可視の周波数領域の何れかの放射で使用され得ることが理解されるであろう。電流パルスレーダシステムは、レーダ装置の近くにある物体を追跡する能力が制限される。ただし、物体をこれらのパルスレーダシステムから離さなければならない距離は、時間の経過とともに減少しており、今後も減少し続けることが予想される。従って、これらのタイプのレーダはこれらの動作のために間もなく効果的となり、以下に説明する本発明のシステムにおけるそれらの使用が考えられる。用途全体を通して、物体の追跡はドップラー周波数スペクトルの使用に基づいて説明される。理解されるように、これらのドップラー周波数スペクトルは、使用される任意のタイプのレーダ又はLIDARからのドップラースペクトルを指す。
【0011】
システム100は、当業者によって理解されるように、例えば、有線又は無線接続を介して、レーダ装置102(又は複数のレーダ装置)と通信する1つ以上のプロセッサを有し得る処理ユニット202を更に備える。一実施形態では、処理ユニット202は、レーダ装置102に関連付けられたコンピュータを有する。
【0012】
図1の実施形態では、システム100は、所定の発射位置から対象領域内又は対象領域へ打たれたゴルフボール110のスピン軸を決定するためのシステムであり、対象領域はレーダ102の視界内にある。当業者には理解されるように、対象領域は、特別に作成された領域である必要はなく、発射位置は、レーダ102の視界の内側又は外側の任意の場所であり得る。
図1に示すように、ゴルフボール110は、レーダに対してボール速度方向119で対象領域に放たれると、z軸に沿うスピン軸を中心としてスピン方向112にスピンしながら、飛行経路に沿って移動する。ゴルフボール110のスピンはゴルフクラブでのゴルフボール110の打撃によって生成されるが、同じ分析が、打撃用具(例えば、野球のバット)等により、打たれたか、投げられたか、蹴られたか、ヘッディングされたか、当てられたかに関係なく、全てのスポーツボールに適用され得ることを当業者は理解するであろう。本実施形態では、レーダに対する並進運動に加えて、ゴルフボール110はバックスピンを有し、その結果、この時点で、ボールの上部114はレーダに向かって移動するが、ボールの底部116はレーダから遠ざかる。しかしながら、ゴルフボール110は、任意の方向に向けられたスピン軸上でスピンし得ることが理解されよう。発射位置から放たれるとき(発射位置がレーダ102の視界内にあるとき)、又は、ゴルフボール110がレーダ102の視界に入り、飛行経路に沿って移動するとき、レーダ102はゴルフボール110を追跡する。ゴルフボール110が移動すると、レーダ102により生成されたレーダ信号はゴルフボール110により反射され、レーダ受信機106によって受信される。
【0013】
反射信号の周波数と送信周波数との差は、ドップラーシフトF
dと呼ばれる。ドップラーシフトF
dは、ボールの反射点の半径方向の速さ(速度)V
r、即ちレーダに対する並進運動に比例する。従って、F
d=2/λ×V
rとなる。ここで、λは送信周波数の波長である。スピンしないボールでは、ボールの全ての部分がレーダ102に対して同じ速度で移動し、同じドップラーシフトを生成する。しかしながら、スピンするゴルフボール110では、レーダ102に対するボールの並進運動と組み合わされたボールの回転運動のため、ボールの様々な部分がレーダ102に対して異なる速度で動く。
図2-3で示されるように、レーダ102に対して同じ速さを有する、ボールの部分は、ボールの表面の周りに延びる等高線118上に見られる。前述のように、本実施形態のボール110はレーダ102の視線に対して純粋なバックスピンをもつので、各等高線に関連する相対速度は(1.0×ω×rの相対速度を有する)ボールの底部から(-1.0×ω×rの相対速度を有する)ボールの上部に向かって減少する。ここで、ωはボールのスピン周波数f
spinの2π倍に等しい角周波数であり、rはボールの半径である。従って、レーダ信号がゴルフボール110から受信機106へ反射されると、ドップラーレーダは、スピンするボール110から、単一の速度ではなく、ボールのスピンによって決まるボールの異なる位置の相対速度の範囲で速度スペクトルを検出する。結果として、スピンするゴルフボール110から反射された信号は、一般にボールの並進速度(即ち、レーダに対するボールの重心の速度)に対応するドップラーシフト周りのドップラー信号の広がりを示す;レーダから最も速く離れて回転する等高線の最高速度(ボールの底部)から、レーダに向かって最も速く回転する等高線の最低速度(ボールの上部)まで。反射信号から受信された対応するドップラースペクトルは、所望の数の周波数成分120(少なくとも2つ)に分けられ、各周波数成分は、
図4の各成分120に対応する相対速度を示すボール上の反射点のグループにマッピングされる。各周波数成分120について、受信機のペアにおける受信信号の位相差を決定することができる。受信機のペアの受信信号の位相差ΔΦは、次の式によって反射点の角度位置に関連付けられる。
【数1】
ここで、αは、受信機のペアを通過する線に垂直な平面と、受信機から反射点までの線と、の間の角度であり、Dは受信機のペア(
図11参照)間の間隔であり、λは送信信号の波長である。角度位置を決定するこの方法は、位相-位相モノパルス比較原理又は干渉法とも呼ばれる。
図11では、2つの受信機106A及び106Bのみが示されているが、もちろん、同じ原理を受信機106A及び106C、又は任意の他の受信機に使用することができる。このように、角度位置のセットは、受信機の複数のペアの前記位相差から得ることができる。これらの角度位置は、ボールの異なる反射点に対応し、3Dスピン軸を含む平面に垂直な、スピンするボールの主軸を定義する。この平面は、レーダからボールへの視線によって2つの半平面に分割される。(以下で説明するように識別された)3Dスピン軸を含む半平面は、スピン軸半平面と呼ばれる。主軸及びスピン軸半平面は、ボールの3Dスピン軸とレーダからボールへの方向とにのみ依存する。これらについては、以下で更に詳しく説明する。
【0014】
αの角度決定dαの精度は、互いにボール110上の角度位置の分析を可能にするのに十分である必要がある。レーダまでの距離Rで半径rのボール110の角度拡張α
ballは、α
ball=asin(2r/R)によって与えられる。信号間の位相差ΔΦは、信号対雑音比に依存する限られた精度dΦだけで決定され得るので、αの角度決定の十分に高い解像度を提供するため、受信機106A-C間の距離Dは、波長と比較して十分に大きい必要がある。従って、dα<α
ballである。式[1]に代入すると、Dは一般に式[2]を満たす必要があることを意味する。
【数2】
本発明の典型的な実施形態は、受信機106A-Cから約4.2mの距離で、約21mmの半径を有するゴルフボールのスピン軸を測定する。本実施形態では、位相差決定の2π/50の位相差精度は、式[2]による受信機106A-C間の距離Dが、非常に実現可能なレーダ設計である波長λの2倍よりも大きいことを必要とする。式[2]は絶対的な要件ではない。時間の平均等、他の手段を使用して角度の精度を上げることができるからである。
【0015】
例えば、
図2と3に示される設定を考える。システムは、レーダ102と、レーダ102の視線に直交するスピン軸130を中心としてスピンするボール110と、を示す(スピン軸のベクトルの向きは後で一般化される)。本実施形態では、スピンによるボールの表面の相対運動のみが考慮され、従って、レーダ102に対するボールの中心の動きは含まれないことに留意されたい。デカルト座標系は、この例では、視線に平行なx軸、スピン軸130に平行でボール110の中心を原点とするz軸、右手のデカルト座標系を完成させるy軸を定義する。
図3に示すように、ボール110がスピン軸130を中心として回転するとき、任意の時刻tでのボール110の表面上の反射点122の位置は、座標ベクトルによって与えられる。
【数3】
ここで、Xcは座標ベクトルであり、rはボールの半径であり、ωはスピンによる角周波数である。ゴルフボール110の表面上の点122の相対速度124、Vcを得るため、座標ベクトルXcをtで微分する必要がある。
【数4】
レーダ102から観測される速度成分は、レーダ102の視線に平行な成分であり、この場合、それはVcのx成分である。この成分は-ω×y(t)に等しいので、等速度線118の全てが、
図2に示すようにxz平面に平行な平面、即ち視線ベクトル(x軸)と(この例ではz軸に平行な)スピン軸ベクトル130に跨る平面にある。
【0016】
しかしながら、いくつかの状況では、スピン軸130は、z軸に平行ではない。スピン軸ベクトルuがz軸に平行である必要がない場合、正規化されたスピン軸ベクトルは、次の式で与えられるu^で表すことができる。(訳注;uの上にサーカムフレックスを付した文字を、u^で表記する)
【数5】
この一般的な場合では、ボールの表面上の点の座標ベクトルXcは、時間tでu^を中心として回転するので、次のように与えられる。
【数6】
【0017】
前述のように、視線に沿う速度成分(即ち、速度ベクトルのx成分)のみがドップラーシフトを生じさせ、この例では興味深い。
【数7】
【0018】
角括弧の間の式は、u
y×z(t)-u
z×y(t)に等しいため、次のようになる。
【数8】
【0019】
その結果、等速度線に属する点の各位置Xc、即ち定数Vx(t)は、次の式で与えられる法線ベクトルnをもつ平面にある。このベクトルは、スピンするボールの主軸ベクトルと呼ばれる。
【数9】
nは、3Dスピン軸と、レーダからボールへの方向に依存する。各等速度線について、対応する位置を平均することで平均位置が定義され、この平均位置は、他の等速度線の平均位置と組み合わされたときに、スピンするボールの主軸ベクトルnを定義する。主軸ベクトルnの方向は、等速度線の相対周波数の高い順に、等速度線の平均位置が配置されていることで定義される。
【0020】
検出された各等速度線は、受信したドップラー信号の周波数成分に関連付けられる。具体的には、以下で更に説明するように、受信したドップラー信号は、
図4の例に示すように、任意の数の周波数成分120(少なくとも2つ)に分割され得る。このドップラー信号の分割は、例えば短時間フーリエ変換(STFT)の利用のような公知の方法で行うことができる。それぞれの周波数成分120は、等速度線の平均位置に効果的に対応すると考えられる。それぞれの周波数成分に関連付けられた角度位置は、信号の一部に対応する全ての反射点の加重平均位置である。これらの角度位置は、前述のように受信機のペアの間の位相差から取得され、スピンするボールの主軸nに近似した線を形成する。スピンするボールの主軸nは、3Dスピン軸を含む平面に垂直である。スピンするボールの主軸nの方向は既知であるので、例えば、トップスピン又はバックスピンに対応するように、nに垂直な平面の半分だけが3Dスピン軸を含み得る。この半分の平面はスピン軸半平面と呼ばれる。
【0021】
nが決定されると、レーダからの視線に垂直な平面へのスピン軸の投影も提供される。この時点でまだわかっていないのは、スピン軸のu
x成分である。3Dスピン軸を決定するには、以下に示すいくつかの例を使用して、様々なアプローチが実行され得る。
1.uが飛行中のボールの速度ベクトルVに垂直になるように、u
xを決定する。この場合、決定されたスピン軸は、ライフルスピン又はジャイロスピンを持たないだろう。これは、多くの場合、例えばゴルフショットで、かなり有効な仮定であり、この仮定が有効でなくても、この仮定による3Dスピンの効果は、正しい3Dスピン軸で得られる空気力学と実質的に同等の挙動の空気力学をもたらすだろう。従って、ボールの飛行に対する3Dスピン軸の向きの影響を特定するための実用的な用途として、これは非常に役立つ。
2.他の方法によってライフルスピンの量又は割合を推定する。ライフルスピンは、ボールの空気力学的挙動をボールの所定のスピン量に関連付けることによって、又は、フレームからフレームへのボールのボール認識パターンの光学追跡を使用することによって推定され得る。あるいは、ライフルスピンのライフル割合は、総周波数帯域幅BW(=
図7のf
d,F-f
d,A)をボールの所定のスピン量と半径とに基づくゼロライフルスピン(BE
noRifle=2×ω×r)での予想帯域幅と比較することで推定され得る。BW=cos(θ)×BW
noRifle。ここで、θはライフルスピン角度である。更に他の代替案は、ライフルのスピン量又は割合を事前に決定又は想定することである。
3.3Dスピン軸ベクトルが所定の時間間隔で一定であるという仮定の下で、前記主軸nは、これらの主軸nのうちの少なくとも2つが非平行な半スピン平面を定義する、飛行中の少なくとも2つの異なる時点で決定される。3Dスピン軸は、決定された主軸nにそれぞれ垂直なスピン軸半平面の交差である。このアプローチでは、時間の経過に伴ってスピン軸が略一定であると想定される。これは、殆どの用途で有効な想定である。
4.同じ時点で少なくとも2つの異なる位置から主軸nを決定する。これらの主軸の少なくとも2つは非平行であり、3Dスピン軸ベクトルに平行な線に沿って、対応する半平面が交差する。2つの異なる位置は、2つのレーダシステム102を処理ユニット202に接続することによって、又は、受信機106の数を増やし、それらを非平行スピン軸半平面の決定をなすために十分に離すことによって得ることができる。
【0022】
スピンするゴルフボールのスピン軸を決定するための第1の例示的な方法のフローチャートが
図5に示される。本実施形態では、平面に据えられた3つの受信アンテナ106A、106B、106Cを含む複数の受信機レーダ装置が利用される。必要に応じて、決定された位置の精度を向上させ、3次元(3D)スピン軸を導出するために、追加の受信アンテナが使用され得る。最初に、ステップ200において、対象領域に送信される信号であって、スピンするゴルフボール110からの反射後に受信機106A、106B、106Cによって受信される信号を、レーダ102が生成する。受信機106A、106B、106は、ドップラー周波数スペクトルを示す、対応する信号を生成する。本実施形態では、ボールはレーダから離れる方向に動く。ただし、ボールは静止しているか、レーダ102に対して任意の方向に移動している可能性があることが理解されよう。ボールのスピン運動により、受信されたドップラー信号は、レーダ102に対するボールの並進運動に関連するドップラーシフトの値を中心に広げられる。即ち、反射信号は、ボールがレーダ102に対してスピン及び移動するときに、ボールの異なる部分の相対速度の範囲を反映する周波数の範囲にわたって拡散される。
【0023】
ステップ205において、信号が受信機106A、106B、106Cにより受信された後、周波数分析が、受信信号に対して実行される。例示的な実施形態では、高速フーリエ変換(FFT)を使用することができる。上述のように、ボールのスピンにより、受信信号の周波数は、ある範囲に拡散され、所望の数の周波数成分に拡散され得る。
図10は、純粋なバックスピンを表す、レーダから遠ざかるゴルフボールからの受信周波数のスペクトログラムを示す。
図10のスペクトログラムの受信周波数は、ボールの速度(並進運動)に対応する周波数と比較して示される。この例では、
図6に示すように、ボールの底部(点F)はレーダから離れるようにスピンしている。これは、ボールの底部からの反射は、ボールの速度に比べて最大の正のドップラーシフトをもつが、レーダに向かってスピンしているボールの上部(点A)からの反射は、ボールの速度に対して最大の負のドップラーシフトをもつことを意味する。
【0024】
オプションのステップ210では、受信したドップラー信号の動き補償が実行されて、信号からボール110の平均運動(レーダに対する、即ちボールの速度に対応するボールの並進)が差し引かれる。この動き補償は、ボール110のドップラー信号を0Hzあたりに集中させるものであって、当業者に知られている標準的な技術を介して様々な方法の何れかで行うことができる。
図10は、動き補償が実行された後のスペクトログラムを示す。従って、ボールからの信号の中心周波数は0Hzになっている。重要なのは、スピン及び移動するボールからの広げられたドップラースペクトル内の相対的なドップラーシフトのみであるので、この動き補償ステップは任意である。ただし、動き補償を実行すると、いくつかの実用的な実装上の利点が得られる場合がある。
【0025】
ステップ215において、受信信号は、所望の数の周波数成分120に分けられる。前述のように、受信信号の周波数の広がりは、ボールがスピンしている間にレーダによって観察されるボールの表面上の異なる点の異なる速度に起因する。同じ等速度線上の反射点は、ドップラー信号の同じ周波数成分に関連付けられる。即ち、各等速度線は、周波数スペクトルの異なる部分に関連付けられる。例えば、
図6を見ると、複数の反射点A、B、C、D、E、Fが、ボールの外面上の異なる位置に配置されているのが示されている。ボールのスピンに応じて、これらの反射点のそれぞれは、レーダに対して異なる速度を有する。
図6に示すように、ボールのバックスピンにより、ボールの並進が補正された後、ボールはレーダから離れるようにスピンする点Fで最大の正の速度を有し、レーダに向かってスピンする点Aで最大の負の速度を有する。ボールの中心線のすぐ上にある点Cは最小の負の速度を示し、ボールの中心線のすぐ下にある点Dは最小の正の速度を示す。更に、ボールのスピンにより、各反射点A、B、C、D、E、Fは個別の等速度線142に対応する。例えば、点Bは等高線142Bに対応し、点Bは、等高線142Bに沿ったボールの表面上の他のすべての点と同じ相対速度を有する。同様に、点Cは等高線142Cに対応し、点Cは等高線142Cに沿った他の全ての点と同じレーダ102に対する速度を有する。点D及びEは、それぞれ、等高線142D及び142Eに対応し、等高線142Dに沿って配置された全ての点は、点Dと同じレーダ102に対する速度を示し、等高線142E上に配置された全ての点は、点Eと同じレーダ102に対する速度を示す。それぞれの周波数成分144について、等速の各成分に関連付けられた等速度線のレーダに対する3D角度位置は、それぞれの受信機106のペアにより受信された信号の比較に基づいて、対応する速度を示す信号に関連付けられた位相シフトを分析することによって決定され、
図8に示すように、これらの角度位置をボール110にマッピングすることができる。具体的には、これらの位相シフトは、様々な周波数成分144のそれぞれをボール110上の異なる角度位置126に割り当てるために使用される。位相シフトを使用して、周波数成分144に対応するボール110上の位置を決定することができる。各周波数成分144は、対応する等速度線142の範囲にわたるので、各周波数に対して決定される角度位置は、事実上、この範囲内の各等速度線に属する点の平均である。レーダの視線に垂直な平面では、各等高線142上の点の平均により、スピン軸130に垂直な、スピンするボールの主軸である線125に属する位置126が定義される。本実施形態では、信号は5つの周波数成分144に分割されるが、当業者は、部分がボールのスピンにより広げられたドップラースペクトル内に分布する限り、信号が任意の数(少なくとも2つ)の周波数成分144に分割され得ることを理解するであろう。
【0026】
ステップ220では、ステップ215からの相対角度位置が、一般に、yz平面の線に沿ってグループ化される。この線は、スピンするボールの主軸nと呼ばれ、3Dスピン軸ベクトルを含む平面に垂直である。角度位置は、yz平面の線に適合する。角度位置からy、z座標へのスケーリングは、重要ではなく、省略することができる。これは、主軸nを決定するために必要なものがyz平面の主軸の線の向きのみであるためである。(バンドパスフィルタやローパスフィルタの適用等による公知のノイズ低減技術を使用して低減可能な)測定におけるノイズのため、これらの位置は一般に理想的なラインから外れる。しかしながら、
図8及び9に示すように、線は、例えば、位置の線形フィットを使用して決定され得る。選択された時間間隔中にいくつかの時間ステップからの角度位置を利用して、この時間間隔中の視線の変化がわずかであるようにすると役立つ場合がある。主軸ベクトルnの方向は、相対周波数の昇順で、対応する周波数成分の角度位置により決定される。
【0027】
主軸ベクトルnから、スピン軸半平面はnに垂直な平面として識別される。これは、レーダからの視線(x軸)によって半分に切断されている。スピン軸半平面は、nとx軸の単位ベクトルのベクトル積を含む側である。その結果、スピン軸半平面は、主軸ベクトルnとx軸の単位ベクトル、即ち視線により完全に説明される。
【0028】
レーダ102からボール110への視線は、x軸に平行なものとして定義される。ただし、ボールが移動する殆どの場合、レーダからの視線は、ボールが移動するにつれて、世界座標に対する向きを変える。ステップ225において、スピン軸半平面は、現実世界の座標に座標変換される。これは、主軸nと、レーダからボールへの視線方向(x軸)が、所望の座標系に変換されることを意味する。現実世界の座標は、必ずしもそうである必要はないが、ボールの動きによって定義され得る。スピン軸の向きは主にボールの動きに関係して重要なので、このような座標がよく使用される。即ち、ボールがスピンしている軸を決定することによって、システムは、検出されたスピン速度とともにこの軸を使用して、このスピンがボールの移動経路に及ぼす影響を計算できる。実際、ボールの速度ベクトル119に垂直な平面へのスピン軸の投影を知るだけで、システムは、ボールの初期の飛行経路の左右や上下のボール偏差に対するスピンの空気力学的な影響を概算することができ、例えば、スピン軸の決定が行われた後に、ボールの継続した飛行のシミュレーションされた投影の精度を高めるために使用され得る。当業者は、これが、ボールの飛行の短い部分のみが検出され、その後、シミュレーションされた環境に投影されるボールの飛行の継続で検出されるゴルフシミュレーションゲームにおいて有用であり得ることを認識するであろう。このシステムは、例えば自動カメラにより、又は、カメラオペレータにボールの予測経路を示すことによって、ゴルフボールの追跡を強化するのにも有用である。このシステムは、手動操作のカメラがボールをより正確に追跡することを可能にし、自動カメラ追跡システムによるボールの追跡を支援することも可能である。ボールを3次元的に追跡しながらスピン軸とスピン量を測定することで、風、温度、ボールの空気力学的特性等のような、ボールの軌道に影響を与える様々な成分を詳細に把握することができる。
【0029】
ステップ230では、識別されたスピン軸半平面を使用して、3Dスピン軸を決定する。このステップは、少なくとも4つの代替方法で実行され得る。第1の代替方法では、3Dスピン軸はボールの速度ベクトルに垂直である必要がある。これにより、ライフルスピン又はジャイロスピンはゼロとみなされる。この最初の方法では、更に、ボールの速度ベクトルの方向を決定する必要がある。
【0030】
ステップ230の第2の代替方法では、ライフルスピン又はジャイロスピンの量が他の手段により決定される。ライフルスピンは、ボールの空気力学的挙動をボールの所定のスピン量に関連付けることによって、又は、フレームからフレームへのボール上のボール認識パターンの光学追跡を使用することによって、推定することができる。あるいは、ライフルスピン量又は割合は、事前に決定され得る、又は、ある程度合理的に予想される値であると仮定することができる。
【0031】
ステップ230の第3の代替方法では、異なるスピン軸半平面が複数の時間ステップにわたって得られて、3Dスピン軸の向きを決定することができる。第3の代替方法による3Dスピン軸の向きの導出は、ジャイロスコープ効果により、現実世界の座標におけるスピン軸ベクトルの向きが時間に対して実質的に一定であるという仮定に依存する。更に、スピン軸半平面が少なくとも2つの時間ステップで非平行である必要がある。3Dスピン軸は、決定されたスピン軸半平面の交差として識別される。
【0032】
第4の代替方法では、複数のレーダ又は単一のレーダユニットにおける3以上の受信機が使用されている場合、同時に、複数のスピン軸半平面を決定することができる。3Dスピン軸は、決定されたスピン軸半平面の交差として決定することができる。これは、スピン軸半平面が互いに平行でない限り、明確に行うことができる。
【0033】
スピンするボールの主軸は、角度位置の、ボールから受信されたドップラー信号の周波数についての微分ベクトル(derivative vector)の方向の単位ベクトルであることが観察される。本発明の別の態様では、主軸は、受信アンテナで観測された位相差の、周波数についての導関数を、受信信号の周波数分析に基づいて計算し、そして、これから、ボールの角度位置の情報に基づいてボールの主軸を計算することによって決定される。
【0034】
後者の計算に使用される角度位置は、前述のように受信信号から、好ましくは受信ドップラー帯域の中心周波数で観測される位相差を使用して、又は、ドップラー帯域全体で受信位相差を平均することによって決定され得る。前述の方法とは対照的に、この方法では単一の角度位置のみを決定する必要がある。
【0035】
本発明の更に別の態様では、ボールの角度位置は、レーダ信号から決定されず、他の手段により与えられ得る。一実施形態では、角度位置は、レーダユニットに埋め込まれたカメラから、又は、レーダの外部にカメラを置くことによって決定され得る。外部のカメラは、角度位置の測定値をレーダへの入力として供給し、又は、角度位置を決定するためのビデオ信号を供給する。3Dスピン軸を決定するために前述の複数のレーダ装置が採用されている別の実施形態では、ボールの位置は第1レーダにより決定され、入力として第2レーダに供給されてもよい。第2レーダは、ボール位置に基づいてボールの角度位置を計算する。
【0036】
更に別の実施形態では、角度位置は、レーダ配置及び対象領域の情報から推定することができ、主軸を決定するために計算又は入力される必要はない。これは、ボールの軌道がレーダからの既知の半径方向に概ねなるようにレーダが配置されている場合、又は、ボールがある時点で特定の位置にあるとわかっている又は判断することができる場合に当てはまり得る。
【0037】
本発明の実施形態によるシステムでは、スピン軸は、レーダの視線に平行な第1の正規化されたベクトルと、第1の正規化されたベクトルが法線ベクトルである平面に広がる第2及び第3のベクトルと、により定義される座標系で識別される。受信信号は、短時間フーリエ変換を使用して周波数成分に分けられる。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、方法は、信号からスポーツボールの平均運動を差し引くように受信信号の動き補償を実行することを更に含む。動き補償は、受信信号を0Hzあたりに集中させる。それぞれの周波数成分は、ボールの表面上の等速度線に関連付けられており、等速度線は、スピンするボールの表面上における同じ相対速度の複数の反射点に対応する。それぞれの周波数成分は、第1レーダの第1のペアの受信機により受信された信号と第1レーダの第2のペアの受信機により受信された信号との間で検出された位相シフトに基づいて決定される。この方法は、また、対応する平面内の点を定義するように、各等高線上に配置された位置を平均にすることを含み、各等速度線からの点の組は、スピン軸に垂直な線に対応する。
【0039】
この方法はまた、スポーツボールの3次元スピン軸を計算することなく、スピン軸の第1投影に基づいてスポーツボールの軌道の特性を推定することを含み得る。この方法は、識別されたスピン軸を現実世界の座標に変換することを更に含み得る。加えて、方法は、第1時点でのスピン軸の第1投影を決定すること、次に、第2時点でのスピン軸の追加の第1投影を計算すること、そして、スポーツボールの3次元スピン軸を決定するように第1及び第2の投影を組み合わせることで、3次元スピン軸を計算することを更に含み得る。更に、方法は、同じ時点での複数のレーダから主軸を決定することによって、3次元スピン軸の向きを識別することを含み得る。受信信号は、短時間フーリエ変換を使用して周波数成分に分けられる。
【0040】
当業者であれば、本発明の概念から逸脱することなく、上述の実施形態に変更を加えることができることを理解するであろう。更に、実施形態の1つに関連する構造的特徴及び方法は、他の実施形態に組み込むことができることを理解されたい。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正もまた添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれることが理解される。