(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】高出力アプリケーション用のナノスケールポア構造のカソードおよび材料合成方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20240626BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240626BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240626BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M10/0566
H01M10/052
C01B25/45 M
(21)【出願番号】P 2022110374
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2017559846の分割
【原出願日】2016-06-08
【審査請求日】2022-07-20
(32)【優先日】2015-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515167067
【氏名又は名称】エー123 システムズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】A123 Systems LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】シェイ, チュアンジン
(72)【発明者】
【氏名】ハマウンド, マハ
(72)【発明者】
【氏名】ラフォレスト, ジュディス エム.
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヒョジン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, デレク
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-247109(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101859887(CN,A)
【文献】特表2009-508302(JP,A)
【文献】特表2014-524133(JP,A)
【文献】特表2009-518262(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040747(WO,A1)
【文献】特開2016-127024(JP,A)
【文献】特表2013-505193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0180022(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0273716(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0052988(US,A1)
【文献】国際公開第2014/135923(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/080302(WO,A1)
【文献】L.L.ZHANG et al.,"Effect of Vanadium Incorporation on Electrochemical Performance of LiFePO4 for Lithium-Ion batterie,The Journal of Physical Chemistry C,米国,American Chemical Society,2011年07月14日,Vol.115, No.27,Page.13520-13527,https//doi.org/10.1021/jp2034906,ISSN:0022-3654
【文献】M.R.YANG et al.,"The Doping Effect on the Electrochemical Properties of LiFe0.95M0.05PO4(M=Mg2+,Ni2+,Al3+,or V3+) as,Journal of The Electrochemical Society,米国,The Electrochemical Society,2008年08月05日,Vol.155, No.10,Page.A729-A732,https://doi.org/10.1149/1.2960933,ISSN:0013-4651
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的エネルギー貯蔵デバイスの電極に使用するためのリン酸鉄リチウム電気化学的活性材料を形成するための方法であって、
(a)スラリーを形成するために、3価のバナジウムドーパント源と、リチウム源と、炭素源と、少なくとも28重量%の鉄含量および1.000~1.040:1のリン酸アニオン対鉄カチオンのモル比を有する、少なくとも前記鉄カチオンと前記リン酸アニオンとで構成されたリン酸鉄源と、任意のコバルトコドーパント源と、を溶媒中で混合する工程と、
(b)前記スラリーを粉砕する工程と、
(c)リン酸鉄リチウム前駆体粉末を形成するために、前記粉砕されたスラリーを乾燥する工程と、
(d)前記リン酸鉄リチウム電気化学的活性材料を得るために、前記乾燥され、粉砕されたスラリーを燃焼する工程と、を含み、
前記リン酸鉄リチウム電気化学的活性材料は、バナジウムドーパントおよび/または結晶格子構造中のFeを部分的に置換するコドーパントを含み、1.000~1.050:1のリン酸塩のリン対鉄のモル比と、1.000~1.040:1のトータル非リチウム金属対リン酸塩のリンのモル比と、を満たし、
前記3価のバナジウムドーパント源は、前記リン酸鉄源と共通のアニオンを共有し、
前記3価のバナジウムドーパント源は、リン酸バナジウム(VPO
4)、メタバナジン酸アンモニウム(NH
4VO
3)またはこれらの組合せであり、前記リチウム源は、Li
2CO
3またはLiH
2PO
4であり、前記炭素源は、グリコールまたはPVBの有機炭素源であり、前記リン酸鉄源は、FePO
4・qH
2Oであり、前記コバルトコドーパント源は、シュウ酸コバルト(CoC
2O
4)、リン酸コバルトアンモニウム(NH
4CoPO
4)またはこれらの組み合わせであることを特徴とするリン酸鉄リチウム電気化学的活性材料を形成するための方法。
【請求項2】
前記リン酸鉄リチウム電気化学的活性材料は、25m
2/gより大きい比表面積と、1.0~1.4g/mLの範囲内のタップ密度と、150mAh/gより大きいFCCと、140mAh/gより大きい10C放電容量と、を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アンモニア放出は、前記バナジウムドーパント、前記コドーパント、またはそれらの組み合わせに制限される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アンモニア放出は、実質的に0である請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記リン酸鉄源は、六方晶系構造を示す請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リン酸鉄リチウム前駆体粉末は、75~125℃、75~250℃、および275~425℃の3つの温度範囲内に観察可能なピークを有する示差熱重量分析損失プロファイルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記275~425℃の温度範囲は、2つの態様のピークを含み、
前記範囲内の低温度側で記録された前記ピークは、ピーク高さを含み、
前記ピーク高さは、同じ範囲内の高温度側で記録された前記ピークのピーク高さよりも高く、
500℃を超えて実質的なピークは存在しない請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記リン酸鉄リチウム前駆体粉末からのトータル熱質量損失は、25℃~600℃に加熱されたとき、40%未満である請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記バナジウムドーパントは、前記リン酸鉄リチウム電気化学的活性材料に対して2~4モル%で存在し、
コバルトの前記コドーパントは、前記リン酸鉄リチウム電気化学的活性材料に対して0.0~0.5モル%で存在する請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、-20℃で20mAhの二層パウチ電池について前記リン酸鉄リチウム電気化学的活性材料のために使用されたとき、9オーム未満の20mAhの二層パウチ電池をもたらす請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2015年6月26日に出願された米国仮出願第62/185,457号および2016年2月12日に出願された米国仮出願第62/294,888号の優先権を主張する。その出願の全ての内容はここに挿入される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、バッテリ電極用の材料および方法に関する。特に、その中で使用される材料、そのような電極を使用する電気化学電池(例えば、チウムイオンバッテリ)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン(Li-イオン)バッテリは、電気化学反応からエネルギーを生成する充電式バッテリの一種である。典型的なリチウムイオンバッテリでは、電池は、正極と、負極と、2つの電極間でイオンの往復移動を支持するイオン性電解質溶液と、多孔質のセパレータとを含む。そのセパレータは、電極間のイオン移動を可能にし、2つの電極が電気的に絶縁されることを保証する。
【0004】
Liイオンバッテリは、消費者のエレクトロニクス市場での成功により、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、および電気自動車(EV)の輸送業界での使用につながった。充電式リチウムイオンバッテリは、携帯用電子機器に複数の用途を見出しているが、高い充放電率は設計上の二次的な考慮事項である。しかし、輸送業界での充電式リチウムイオンバッテリの使用を考慮すると、高い充放電率を維持する能力が重要になる。輸送業界のアプリケーションだけでなく、より強力な携帯用電子デバイスに対してますます増加する需要は、大きな充放電電流密度を一貫して維持できるバッテリを必要とした。このように、多孔質構造またはナノスケールの一次粒子サイズのいずれかを介して、高い界面表面積および特徴的な短い拡散距離をもたらす不規則な表面を有する電極材料は、高出力密度を有するリチウムイオンバッテリを提供するために期待されている。安全性は、新しいLi-イオンバッテリの設計、特に輸送用アプリケーションにとって重要な要素になっている。
【0005】
酸化物系カソード材料に伴う安全性の問題に対処するために、リン酸鉄リチウム(LFP)は、熱力学的に安定であり、分解時に酸素を放出しないので、良い代替候補と考えられている。これは特に、低電圧スタータ、スタートストップ、マイルドハイブリッドバッテリアプリケーションに当てはまる。LFPをカソード材料として考える場合、形態(morphology)、化学組成、および粒径に関する特性を注意深く制御する。異なるLFP前駆体材料および異なる合成経路が材料供給業者によって採用されているので、最初に、特別な注意が不純物に対してなされ、そして正しい組成を確保する。誤った組成および不純物は、LFP性能、ひいてはリチウムイオンバッテリ全体に悪影響を及ぼす。第2に、材料供給者に利用される様々な合成方法は、一次および二次粒子の理想的でない粒径と、低すぎる平均表面積と、カソードの速度性能を制限する粒子形態とをもたらす。従って、リチウムイオンバッテリに組み込まれた場合、一貫した結果を提供するために、慎重に制御された電気化学的および物理的特性を有するLFPが必要とされている。
【0006】
高出力電極材料として使用されるLFP材料の一例は、ベック(Beck)らの米国特許出願第14/641,172号に開示されている。例えば、米国特許出願第14/641,172号明細書において、活性電極材料は、スフェニシダイト(spheniscidite)FePO4(NH4Fe2(PO4)2OH・2H2O)前駆体から合成されたLFPを含む。これは、本明細書で、スフェニシダイトFePO4-LFPとも呼ばれる。リン酸鉄(FePO4)前駆体材料としてのスフェニシダイトFePO4の利用は、高い表面積および向上した表面特徴を有する特別の粒子形態をもたらした。これらの性質は、低温での他のLFP活性電極材料と比較して、特に0℃以下の温度で、非常に高い出力を有する活性電極材料をもたらした。このスフェニシダイトFePO4-LFPは、低電圧スタータ、スタートストップ、およびマイルドハイブリッドバッテリアプリケーションのコールドクランク(cold crank)性能のを改善を実証した。上記を含む、スフェニシダイトFePO4前駆体から合成されたLFPは、2015年3月6日に出願された「高出力電極材料」と題する米国特許出願第14/641,172号に開示されているような性質を示した。その出願の全ての内容はここに挿入される。
【0007】
発明者らは、「高出力電極材料」と題する米国特許出願第14/641,172号に記載された技術のさらなる発展のために、以下の3つの重要な理由があることを見出した。(1)第1の充電容量(FCC)を向上させること、(2)プラス5価(+5)の酸化状態のバナジウムの使用を排除すること、および(3)前駆体の調製および焼成プロセス中のアンモニア(NH3)放出を軽減すること。
【0008】
低FCCは、活性材料の理論容量と比較して、リチウムイオンバッテリのエネルギー密度を低下させる。したがって、現在のLFP材料(例えばスフェニシダイトFePO4から合成されたLFP)と比較した場合、FCCの増加は、電力性能に悪影響を及ぼすことなく、電池の全体的なエネルギー密度を改善する。
【0009】
三価バナジウムは、五価バナジウムよりもかなり安全(benign)である。米国特許出願第14/641,172号に記載されているような5価のバナジウムを非自明の3価のバナジウム前駆体で置き換えることは、LFPの速度および低温電力性能を維持しながら、FCCの増加およびNH3の放出の減少を促進する。測定可能なNH3を放出する製品を製造する際、汚染制御システムを使用することがさらに必要である。これらの汚染制御システムは、製造コストの増加をもたらす。増加したコストは、環境に優しい製造プロセスを提供する責任と関連する。その製造プロセスは、米国特許出願第14/641,172号に記載されているように、LFP生産に関連するNH3排出を排除するかまたは大幅に減少させる重要な要因(drivers)を提供する。本明細書に記載されているように、本発明者らは、NH3放出に寄与する主要な前駆体である可能性が最も高いスフェニシダイトFePO4を、FCCの増加をもたらす非自明なリン酸鉄前駆体で置換することを見出した。一方、LFPの速度および低温電力性能を維持することは、経済的および安全性の観点から望ましい。
【0010】
本明細書に含まれる教示の焦点である開発の追加の部分は、粉末形態で、および、電気化学的エネルギー貯蔵デバイスの電極に組み込まれたときの両方で、最終LFPの水分吸収(moisture uptake)を軽減することである。粒子細孔構造を設計することは、リチウムイオン電池内の水分レベルの上昇に起因する、性能および製造上の課題を緩和することができる。この粒子細孔構造は、大部分の細孔をナノメートルスケールの径に同時にシフトさせるとともに、高表面積を維持することができ、従来技術と比較したとき累積細孔容積に関して同等性(parity)を維持することができる。活性材料中の水分吸収の上昇レベルは、リチウムイオンバッテリ電池製造に影響を及ぼす。なぜなら、高レベルの水分を有する活性材料を含む電極は、液体電解質が添加される前に一度電気化学的エネルギー貯蔵デバイスに組み込まれると、水分を除去するために熱処理され、乾燥した環境に保たれ、次いで再び熱処理されるからである。複数の熱処理を必要とする開示されたプロセスは、製造プロセスに時間とコストを追加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
活性材料からの水分がエネルギー貯蔵デバイスから効果的に除去されない場合、水分は負極と接触するまで液体電解質を拡散する。水分は、一旦負極と接触すると、電気化学的に還元され、それによってガスを形成する。電池内のガス形成は、エネルギー貯蔵デバイスの寿命を損なう圧力上昇を引き起こすので理想的ではない。水分は、一旦デバイスに導入されると、リチウムイオンバッテリ電解質に利用される特定のリチウムイオン塩と反応することが実証されている。この反応は、腐食種の形成をもたらす。この腐食種は、デバイス部品の性能を低下させ、デバイス機能の低下および寿命の低下をもたらす。さらに、上記実証によって形成される腐食種は、電気化学的に不活性なLi種の形成に寄与する。この不活性種の形成は、デバイスのエネルギー蓄積容量の減少を加速させ、ひいてはデバイス寿命に悪影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本発明者らは、本明細書において、ある合成方法を利用する、ゼロNH3放出または低NH3放出のLFP製剤(formulation)を特定する工程を一般的に含む方法と材料を開示する。その合成方法は、改善されたFCCを提供し、高速能力(high rate capability)(23℃で140mAh/gを超える10C放電容量として定義される)を維持し、低温性能(-20℃で20mAhの二重層ポーチ(DLP)電池用に測定された場合、10オームよりも小さい直流抵抗(DCR)として定義される)を保証する。別の非限定的な例として、DCR値は9オーム未満であってもよい。別の非限定的な例では、低温性能は8.5オーム未満であってもよい。
【0013】
本発明者らはまた、材料および方法を見出した。その材料及び方法は、ゼロNH3放出または低NH3放出を維持しながら、FCCおよび速度能力をさらに改善し、水分吸収を減少させる(したがって、リチウムイオンバッテリの寿命中にガス形成を減少させる)。一例では、電極に使用するためのLFP電気化学的活性材料は、1.000~1.050:1のリン酸塩対鉄のモル比と、3価の状態のバナジウムおよび場合によりコバルトを含むコドーパントを含むドーパントと、1.000~1.040:1のトータル非リチウム金属対リン酸塩のモル比とを含む。別の例として、LFP電気化学的活性材料は、1.020~1.040:1のリン酸塩対鉄のモル比と、3価状態のバナジウムを含むドーパント(任意に、コバルトコドーパントも含む)と、1.001~1.020:1のトータル非リチウム金属対リン酸塩のモル比とを含む。さらに、LFP電気化学的活性材料のさらなる例は、リン酸塩対鉄のモル比を含む。また、LFP電気化学的活性材料のさらなる例は、1.0300~1.0375:1のリン酸塩対鉄のモル比と、3価状態のバナジウムを含むドーパント(任意にコバルトコドーパントも含む)と、1.0025~1.0050:1のトータル非リチウム金属対リン酸塩のモル比とを含む。
【0014】
特定の例として、LFP電気化学的活性材料は、28~37重量%の鉄重量パーセントを有するリン酸鉄前駆体と、0~5のドーパントとから合成される。1つのドーパントは、0.0~5.0モル%の範囲内のLFP製剤(formulation)に存在するバナジウムである。1つのドーパントは、0.0~1.0モル%の範囲内のLFP製剤に存在するコバルトである。別の非限定的な例として、LFP材料は、35~37重量%の範囲の鉄重量パーセントを有するリン酸鉄前駆体と、1~2のドーパントとから合成される。1つのドーパントは、2.0~4.0モル%の範囲のLFP製剤に存在するバナジウムである。1つのドーパントは、0.0~0.5モル%の範囲のLFP製剤に存在するコバルトである。また、LFP電気化学的活性材料のさらに別の例は、36.0~37.0重量%の範囲の鉄重量パーセントを有するリン酸鉄前駆体から合成される。
【0015】
電極に使用するためのLFP電気化学的活性材料を形成する方法は、3価の状態のバナジウムドーパントと、リチウム源と、炭素源と、1.000~1.040:1のリン酸塩対鉄のモル比および少なくとも28重量%の鉄含有量を有するリン酸鉄源と、任意にコドーパントとを混合する工程と、スラリーを形成するために溶媒を添加する工程と、スラリーを粉砕する工程と、LFP前駆体粉末を形成するために粉砕したスラリーを乾燥する工程と、LFP電気化学的活性材料を得るために乾燥した粉末を燃焼する工程とを含む。LFPは、Feを部分的に置換するコドーパントおよび/またはバナジウムドーパントと、1.000~1.050:1のリン酸塩対鉄のモル比と、1.000~1.040:1のトータル非リチウム金属対リン酸塩のモル比と、を含む。
【0016】
また、最終LFP粉末は、例えば、25~35m2/gの範囲内で、約25m2/gより大きい表面積を有する。さらに、非限定的な例として、最終LFP粉末は、1.0~1.5g/mLの範囲内のタップ密度と、145mAh/gより大きいFCCと、135mAh/gより大きい10C放電容量とを有する。
【0017】
別の例として、最終LFP粉末は、28~32m2/gの範囲の表面積と、1.10~1.40g/mLの範囲内のタップ密度と、150mAh/gより大きいFCCと、138mAh/gより大きい10C放電容量とを含む。最終LFP粉末のさらなる例は、29~31m2/gの範囲の表面積と、1.20~1.30g/mLの範囲のタップ密度と、152mAh/gより大きいFCCと、140mAh/gより大きい10C放電容量とを含む。
【0018】
本明細書に記載される本教示の一般的な目的は、材料の物理的構造と、それらの材料を合成する方法と、前記材料の成功したプロセスを特定する方法と、これらの材料の電気化学的エネルギー貯蔵デバイスの使用とに関する。本明細書に示された教示は、リチウムイオン系電気化学的エネルギー貯蔵デバイスに最も直接的に適用可能であるが、当業者によって実施される場合には、そのようなデバイスに限定されない。リチウムイオン系電気化学的エネルギー貯蔵デバイスは、2つの電極と、電解質溶液と、前記電極間に配置された前記電解質を含む多孔質の電気絶縁性セパレータとを使用する。上記のように構成された場合、これらのエネルギー貯蔵デバイスは、電極に組み込まれた活性材料中に起こる酸化還元反応を通して、エネルギーを可逆的に貯蔵することができる。活性成分化学組成と、電解質と、エネルギーが貯蔵または放出されるときの全体反応と、荷電種がデバイス内で輸送されるメカニズムとに関するこれまでの議論は、これらの教示にも適用可能である。
【発明の効果】
【0019】
本明細書で提供されるように、電池容量を最小にしながら、大きな充放電電流を維持するためのシステムおよび方法が開示される。特に、低電圧輸送用途のためのリチウムイオンバッテリ技術の使用とともに開示される。この要求は、高レベルの安全性を維持しながら、一貫して大きな充放電電流密度を維持できるバッテリを必要とした。
【0020】
開示された実施形態は、一次および二次粒子の細孔構造を操作する工程を含む。その結果、トータル細孔容積は、米国特許出願第14/641,172号に開示された教示と同等(parity)である。また、実施形態は、細孔の大部分がサブ10nmの範囲内にあるように、細孔サイズ分布をさらにシフトさせる工程を含む。細孔径をより小さな径にシフトさせながら、トータル細孔容積を一定に保つことの結果は、全体的な水分吸収を減少させる。本発明の別の実施形態は、予期しない最適なドーパントレベルだけでなく、ドーパントの化学種(speciation)を開示する。そのドーパントは、広い温度範囲に沿った速度性能の上昇によって測定されるようなLFP結晶構造に効果的に組み込まれる。本開示のさらなる実施形態は、リチウムイオンバッテリ用の高速度(high rate)のカソードとして機能するために必要な物理的および電気化学的属性を有する最終LFP製品を確保するLFP前駆体粉末の熱応答と製造とを含む。
【0021】
詳細な説明にさらに記載されている概念の選択を簡略化した形で導入するために要約が提供されることが理解される。クレームされた主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意味するものではなく、その範囲は、詳細な説明に続くクレームによって独自に定義される。さらに、クレームされた主題は、上記の欠点または本開示の任意の部分を解決する実施に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、リン酸鉄前駆体と、ドーパント前駆体と、LFP合成中のNH
3放出に対するそれらの貢献とを示す図である。
【0023】
【
図2】
図2は、リン酸バナジウムの合成工程の説明図である。
【0024】
【
図3】
図3は、スフェニシダイトFePO
4の高倍率SEM画像である。
【0025】
【
図4】
図4は、FePO
4・qH
2Oサンプルの高倍率SEM画像である。
【0026】
【
図5】
図5は、第2のFePO
4・qH
2Oサンプルの高倍率SEM画像である。
【0027】
【
図6A】
図6Aは、本明細書に記載の方法および前駆体を用いて合成された純相(PP)FePO
4-LFPの低倍率画像である。
【
図6B】
図6Bは、本明細書に記載の方法および前駆体を用いて合成された純相(PP)FePO
4-LFPの高倍率画像である。
【0028】
【
図7】
図7は、本明細書に記載の方法および前駆体を用いて合成されたPP FePO
4-LFPの拡大画像である。
【0029】
【
図8】
図8は、スフェニシダイトFePO
4-LFPと比較して、本明細書に記載の方法および前駆体を用いて合成された改質PP FePO
4-LFPの細孔径分布曲線である。
【0030】
【
図9】
図9は、粉末形態および電極形態のスフェニシダイトFePO
4-LFPと、PP FePO
4-LFPとの水分吸収量を比較した図である。
【0031】
【
図10】
図10は、異なる暴露時間における、スフェニシダイトFePO
4-LFPと、PP FePO
4-LFPとの水分吸収量を比較するグラフである。
【0032】
【
図11】
図11は、開示されたドーパント前駆体を用いて、低NH
3放出またはゼロNH
3放出を伴うLFPの合成のための例示的な方法である。
【0033】
【
図12A】
図12Aは、本明細書に記載される種々のLFPサンプルの間隔プロットである。そのプロットは、室温でDCRを比較する。
【
図12B】
図12Bは、本明細書に記載される種々のLFPサンプルの間隔プロットである。そのプロットは、-20℃でDCRを比較する。
【0034】
【
図13】
図13は、電圧対時間プロットであり、-30°で本明細書に記載される種々のLFPサンプルのコールドクランク能力の指標を提供する。
【0035】
【
図14A】
図14Aは、本明細書に記載される種々のLFPサンプルの間隔プロットである。そのプロットは、室温でDCRを比較する。
【
図14B】
図14Bは、本明細書に記載される種々のLFPサンプルの間隔プロットである。そのプロットは、-20℃でDCRを較する。
【0036】
【
図15A】
図15Aは、二次不純物相を有するFePO
4-LFP製剤のFCCを測定するプロットである。
【
図15B】
図15Bは、二次不純物相を有するFePO
4-LFP製剤の10C放電容量を測定するプロットである。
【
図15C】
図15Cは、二次不純物相を有するFePO
4-LFP製剤の表面積を測定するプロットである。
【0037】
【
図16A】
図16Aは、PP FePO
4-LFP製剤のFCCを測定するプロットである。
【
図16B】
図16Bは、PP FePO
4-LFP製剤の10C放電容量を測定するプロットである。
【
図16C】
図16Cは、PP FePO
4-LFP製剤の表面積を測定するプロットである。
【0038】
【0039】
【0040】
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の例示的な実施形態が示される添付の図面を参照して、本開示をより詳細に説明する。特定の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲、その用途、または使用を決して限定するものではなく、変更することはない。本発明は、本明細書に含まれる非限定的な定義および用語に関して記載される。これらの定義および用語は、本発明の範囲または実施に限定されることを意図するものではなく、例示的かつ説明的な目的でのみ提示される。プロセスは個々のステップの順番として説明され、または、組成物は特定の材料を用いて説明されているが、ステップまたは材料は、本発明の説明が多くの方法でアレンジされた複数の部品またはステップを含むことができるように、交換可能である。
【0042】
1つ以上の実施形態において実質的に同じである部品、処理ステップ、および他の要素は、協調的に特定され、最小限の繰り返しで記載される。しかし、協調的に特定された要素もある程度異なっている可能性があることに留意されたい。
【0043】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、その内容が明らかにそうでないことを示さない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形を含むことが意図される。「または」は、「および/または」を意味する。本明細書で使用されるように、「および/または」という用語は、列挙された項目のうちの1つ以上の任意のおよびすべての組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」、または、「含む(includes)」および/または「含む(including)」とう用語は、記載された特徴、領域、整数、工程、操作、要素および/または部品の存在を特定するが、他の特徴、領域、整数、工程、動作、要素、部品および/またはそれらのグループの1または2以上の存在または追加を排除するものではないことを理解されたい。「またはその組み合わせ」または「の混合物」という用語は、上記の要素の少なくとも1つを含む組合せを意味する。
【0044】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般に使用される辞書に定義されている用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきである。そして、それらの用語は、本明細書に定義されていない限り、理想化または過度に正式な意味に解釈されることはない。
【0045】
本開示は、低アンモニアまたはゼロアンモニアを利用し、前駆体種を含有し、ドーパント前駆体をより有効で安全(benign)の材料で置き換えた、環境に優しいLFP製剤を提供する。開示されたLFP材料は、
図1に示されるように、NH
3放出を低減し、NH
3放出を完全に排除することができる。これは、米国特許出願第14/641,172号に開示されている、以前のLFP合成方法および前駆体とは対照的である。本明細書に記載されたLFPは、3価のバナジウムイオンなどの安全な金属イオンを含むドーパントから合成される。3価のバナジウムイオンは、リン酸バナジウムとして提供される。その合成方法の例は、
図2に示される。LFPはまた、
図1に示された異なるFePO
4前駆体を含む。これらのFePO
4前駆体は、異なる結晶構造を有し、
図3、
図4、
図5に示されるように異なる形態を示した。異なるFePO
4前駆体を使用すると、従来技術と比較して、
図6A、
図6B、
図7に示されるように、一次粒子サイズまたは全体のLFP粒子形態に悪影響を及ぼさなかった。しかしながら、異なる前駆体および合成方法は、
図8に示されるように、粒子内の細孔径分布の有益な変化に貢献した。細孔径、細孔径分布および細孔容積の制御は、
図9および
図10に示されるように、水分吸収を減少させるのに役立つ。本明細書に記載のFePO
4前駆体を使用してLFPを合成すると(
図11に示されるように)、FCC、DCR、表面積、10C容量などについて、
図12~
図16に示すように改善された性質が得られる。前駆体材料の高純度は重要である。
図17は、前述の改善された性質をもたらす前記LFP前駆体粉末の熱プロファイルをさらに示す。一例として、LFP前駆体は、40%未満、より具体的には30%未満、より具体的には25%未満の熱重量損失を経験する。したがって、合成中にNH
3放出がないリン酸鉄は、水分吸収を減少させながら、3価バナジウムドーパントを含むLFPを合成するために使用される。それにより、高性能LFPを生成する。また、そのリン酸鉄は、
図18および19に示されるように、電気化学電池に組み込まれる。
【0046】
合成プロセスからのNH
3放出を最小限にするために、または、完全に排除するために、先行技術に記載されたプロセスを改善することで、放出の源および実行可能な置換候補を特定することができる。この分析は、
図1に示されている例で強調される。
【0047】
図1に戻って、本明細書に記載のLFPは、NH
3放出の2つの供給源を有する。他の例では、NH
3放出の追加の供給源が存在してもよく、追加の置換候補が特定されてもよい。式100に示されるように、第1の最も重要な供給源はFePO
4前駆体であり、第2の供給源はドーパント前駆体である。図によって実証されているように、スフェニシダイトFePO
4、(NH
4Fe
2(PO
4)
2OH・2H
2O)がFePO
4供給源として使用されると、かなりのNH
3が放出される。スフェニシダイトFePO
4がFePO
4・qH
2O(qは約0~2で変動する)と置換されると、FePO
4供給源からのNH
3放出は排除される。一例では、FePO
4・qH
2Oは、純相(pure-phase)FePO
4(PP FePO
4)または第2不純物相(secondary impurity phase)(SP FePO
4)を含むFePO
4である。NH
3放出の第2の供給源は、バナジウム酸アンモニウム(NH
4VO
3)ドーパントと関連している。NH
3は、市販されていない、LFPとの化学的に適合性のある種(新規な合成は本開示の実施形態として記載される)であるVPO
4を使用することによって排除される。本明細書で述べるように、目標とするLFP性能を達成するために、コバルト系コドーパントが低濃度で検討されている。この前駆体は、LFP合成プロセスの間にNH
3を放出する可能性を有するが、その放出は、現行のLFP材料について前述されたLFP合成と比較して、無視できるものであり、劇的に少ない。あるいは、NH
3を放出しないコバルト前駆体も特定され、
図1に示されている。すべての異なるLFPサンプルは、FePO
4・qH
2O(PP FePO
4またはSP FePO
4を含む)を使用するこの研究のために調査され、NH
4VO
3またはVPO
4ドーパントと組み合わされ、コバルト系コドーパントの存在下または非存在下にあった。
【0048】
本明細書に記載の低NH
3 LFP法は、化学式中にアンモニウムを含まないリン酸鉄前駆体を含む。そのアンモニウムは、合成プロセス中にNH
3にさらに還元される。リン酸鉄前駆体材料から合成されたLFPは、最終LFP粉末中に1.000~1.050:1のP/Fe比をさらに含む。さらに、低NH
3 LFP法は、
図1に列挙されたように複数のドーパント製剤を含む。ドーパントは、LFP結晶格子構造中のFeと置換することができる。各種バナジウムドーパント前駆体濃度と、バナジウムドーパント前駆体種と、FePO
4・qH
2O(qは約0から2まで変化する)とコバルト系コドーパントの添加とで合成されたLFPの電気化学的性能および物理的特性は、以下の表Iおよび表IIに示される。
表I 低NH
3放出LFP法のドーパント製剤の例
【0049】
合成前駆体の変化から、多数の重要で予想外の発見がある。したがって、スフェニシダイトFePO4およびバナジウム酸アンモニウムをFePO4・qH2O(qは最適化されていない)およびリン酸バナジウムで単に置換することは、ここに概説したように、改良された速度性能を一貫してもたらさない。合成から、NH3放出の除去と目標のFCCが達成されるが、速度性能は、表Iで示された実施例2で実証されたように高くない。さらに、ドーパント前駆体としてのバナジウム酸アンモニウムを利用しながら、スフェニシダイトFePO4をFePO4・qH2O(qは最適化されていない)で置換することは、表Iの実施例1で示されているように、不満足な物理的性質および電気化学的性能を有するLFP粉末を生じる。FePO4・qH2O(qは最適化されていない)と、リン酸バナジウムと、化学式中に含まれるコバルト系コドーパントとの組み合わせは、表Iの実施例1で示されているように、改善されたLFP材料になることが予想外に見出された。例えば、表Iに示された低モルパーセントで、LFP表面積と速度能力の実質的な上昇は、特定のリン酸鉄およびバナジウム源との組み合わせで、0.25%NH4CoPO4を使用して観察された。この結果は、コドーパントアプローチ(少数ドーパントが前駆体分子の構成成分としてコバルト系アンモニウムである)がLFP粒子の表面積を約50%増加させるだけでなく、140mAh/gより大きい10C放電容量につながることを実証している。しかしながら、150mAh/gよりも大きい目標のFCCは達成されない。他の実施例では、他のコバルト系アンモニウム前駆体分子は、全てのターゲット測定基準(metrics)が達成されるようにLFP材料の性質を増加させる。
【0050】
図1に示されているように別の潜在的なリン酸鉄前駆体は、最終LFP粉末中に1.000~1.050:1のP/Fe比を有するFePO
4・qH
2O(最適化されている)である。その前駆体は、合成プロセス中のリン酸鉄前駆体からのNH
3放出を除去する。以下の表IIに記載されるように、この前駆体はまた、本明細書に記載の所望のLFPの物理的および電気化学的特性を達成するために、複数のドーパント種および製剤とともに利用された。FePO
4・qH
2O(qは最適化されていない)を用いた前述の合成の場合と同様に、ドーパントはLFP結晶中のFeを置換する。様々なバナジウムドーパント前駆体濃度およびFePO
4・qH
2O(qは約0~2で変化する)を有するバナジウムドーパント前駆体種を用いて合成されたLFPの電気化学的性能および物理的特性は、表IIに示される。
表II 各種バナジウムドーパント前駆体濃度を有するLFPの電気化学的性能および物理的特性
【0051】
スフェニシダイトFePO4-LFP合成に使用されるドーパント濃度と同等のドーパント濃度で、VPO4とFePO4・qH2O(qが最適化された)とを用いると、FCCに関しての室温性能は、スフェニシダイトFePO4-LFPと比較して優れている。そして、10C放電は、表IIの実施例2によって実証されるように目標値を上回っている。炭素含有量とタップ密度の値は同等であるが、表面積は目標値を下回り、目標抵抗値より高い-20℃でDCRになる。したがって、LFP製造のための前駆体として、上述されたバナジウムドーパントと、FePO4・qH2Oとの組み合わせは、本明細書において明記された目標要件をほぼ満たしながら、NH3放出を大幅に低減および/または排除する。一例として、qが0~2の範囲であり、水が0.0~20重量%の範囲で存在するFePO4・qH2Oが提供される。別の例では、qが0であり、水は5重量%未満で存在する。別の例では、バナジウム酸アンモニウムをリン酸バナジウムで置換することにより、LFP合成からのNH3放出を完全に排除し、五価バナジウムをより安全な三価バナジウムに置換している。表IIに示されるように、すべての電気化学的性質は上記の目標値を満たし、すべての物理的性質は表面積を除いて目標仕様を満たす。合成プロセスの向上された環境親和性と、還元されたNH3放出とで合わせられた電気化学的性能は、この合成方法および前駆体の選択の新規性を実証している。バナジウムドーパント源をVPO4で置換する間、150mAh/gより大きい優れたFCCおよび140mAh/gより大きい優れた10C放電容量を維持しながら、表面積は、目標よりも小さいものの、改善されることが判明した。これは、LFP結晶構造全体にわたるバナジウムのより均質な分布によるドーパント効率の増加によるものである。
【0052】
一例では、バナジウムドーパント前駆体は、VPO4である。なぜなら、それは、アンモニウムを含有せず、五価バナジウムドーパントのような他の一般的に使用されるバナジウム金属イオンドーパントよりも良性(benign)であるからである。しかし、VPO4は、現在市販されていない。なぜなら、以前の合成は、複雑でコストがかかり、スケールアップが困難であるからである。
【0053】
図2に示されるように、VPO
4を合成する例示的な方法200が示される。VPO
4合成の開示された方法は、以下の化学反応を含む。
V
2O
5+2NH
4H
2PO
4+C→2VPO
4+2NH
3+3H
2O+CO
2
【0054】
反応中、V5+は、V3+に還元されてVPO4を形成する。この反応のための材料処理は、202で、溶媒中前駆体を予備混合する工程と、204で、炭素源または還元剤(例えば、砂糖、クエン酸(CA)、グルコースまたはその他)を添加しながら、高温でスラリーを攪拌する工程とを含む。例えば、炭素源は、グリコールまたはPVBなどの反応溶媒に少なくとも適度に可溶な任意の有機炭素源を含む。さらに、溶媒は、水またはアルコールなどの有機溶媒を含んでいてもよい。206で、スラリーを適度な時間粉砕し、208で、粉砕したスラリーを乾燥して粉末形態にする。210で、粉末が不活性雰囲気下で燃焼されるので、温度プログラム化反応(TPR)を利用する上述の化学的還元が行われる。不活性雰囲気下で燃焼されると、高純度のVPO4化合物が工程212で得られる。VPO4を調製する工程の例として、V-オキシド化合物およびリン酸塩源化合物の前駆体は、溶媒中でわずかに加熱しながら混合された。スラリーは、10~16時間撹拌された。一例として、バナジウム前駆体は、バナジウム酸化物および/またはバナジウム酸前駆体種を含む。粉砕されたスラリーを噴霧乾燥し、管状炉内の不活性ガス下でTPRにより粉末をVO4に変換した。いくつかの例では、燃焼ガスは、任意の希ガスまたはその混合物(例えば、N2、Ar及びN2/Ar)を含む。リン酸源は、反応溶媒に少なくとも適度に可溶性のリン酸アニオンを有する任意の種を含む。例えば、リン酸源は、リン酸、NH4H2PO4、および(NH4)2HPO4、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの例では、炭素は、2.0重量%未満、1.0重量%未満、さらに0.5重量%未満でVPO4中に存在する。TPRプロファイルは、室温からのランピング工程(ramping)と、次に、変換反応を完了するために使用される特定の温度に加熱する工程とを含む。これにより、VPO4を形成する。TPRは、特定の温度でプログラムされた保持をさらに含む。さらに、現在の開示では、追加の改変は、粉末および電極形態における水分吸収と、合成プロセス中のNH3放出とを軽減しながら、LFP性能を増加させることが教示されている。
【0055】
上述の異なるFePO
4-LFP材料の一例は、
図6A、6Bおよび7に示されている。具体的に、
図6Aは、本明細書に開示されるようなPP FePO
4-LFPの二次粒子を示すSEM画像である。
図6Bは、PP FePO
4-LFPの一次粒子の形態を示す高解像度画像である。一例では、二次粒子は、測定基準としてd
50を使用し、ある例では1~20μmの範囲、別の例では5~13μmの範囲である。一次粒子は、ある例では25~250mmの範囲、別の例では25~150mmの範囲である。1つの特定の例では、一次粒子は、100nm未満のサイズを含む。また、さらなる例は、80nm未満のサイズを含む一次粒子を含む。
【0056】
上述のFePO
4前駆体材料は、例えば、
図11に記載されているような方法を介して、電極で使用するための電気化学的活性LFPを形成するために使用される。以下の表IIIに示すように、LFPは、上述したFePO
4、ドーパント、コドーパント、炭素源、およびリチウム源によって形成される。合成されたLFPは、Li
zFe
(1-x-y)V
xCo
yPO
4に相当する化学式を有する。化学式中、zは1以上であり、xは0以上であり、yは0以上である。FePO
4は、PP FePO
4であってもよいし、SP FePO
4を含んでいてもよい。そして、それは、他の例では、少なくとも25重量%または少なくとも30重量%のFe含有量を有する。さらなる例では、Fe含有量は28~37重量%である。さらに、FePO
4前駆体は、できるだけ1に近いリン酸塩対鉄のモル比を有する。例えば、FePO
4前駆体が提供される。そのリン酸塩対鉄のモル比は、1.00~1.04:1、1.00~1.02:1または1.00~1.01:1の範囲内にある。さらに、FePO
4の相不純物(phase impurity)は、10%未満、いくつかの例では5%未満、または他の例では3%未満である。できるだけ1に近いリン酸塩対鉄のモル比を提供することは、相純度の指標である。その指標は、例えば、化学式組成の改善につながり、最適な組成を達成するために必要とされる前駆体材料の量を少なくする。
【0057】
さらに、表IIIに記載されているように、リン酸鉄リチウムの製造に使用される上記FePO
4前駆体は、10~40m
2/gの表面積を有し、その後のリン酸鉄リチウム前駆体粉末は、
図17に示されるような熱プロファイルを有する。一例として、他のFePO
4前駆体が考慮される。表面積は、10~30m
2/gまたは10~20m
2/gの範囲内にある。
【0058】
電気化学的活性材料にドーパントをさらに含む。一例では、VPO4が含まれる。さらに、コバルトコドーパントを添加してもよい。一例では、コバルトコドーパントはNH4CoPO4であってもよい。別の例では、コバルトコドーパントはCoC2O4であってもよい。非NH3放出の合成アプローチは、例えば、表III(PP FePO4)に示されるような上記のFePO4、VPO4およびCoC2O4を含む。低NH3放出の合成アプローチは、例えば、表III(PP FePO4)に示されるようなFePO4、VPO4およびNH4CoPO4を含む。さらに、リチウム源および炭素源は、電気化学的活性材料を合成するために添加される。そして、最終LFP粉末は、25~35m2/gの表面積を有する。いくつかの例では、リチウム源は、Li2CO3、LiH2PO4、または任意の他の適切なリチウム源を含む。リチウム源は、例示的な種として提供され、任意の適切なリチウム源が使用されてもよいことは理解される。トータル非リチウム金属対リン酸塩の比は、一例では1.000~1.040:1、別の例では1.001~1.020:1の範囲である。さらなる非限定的な例として、トータル非リチウム金属対リン酸塩の比は、1.0025~1.0050:1の範囲である。上記の範囲は、以下でさらに議論するように、高い電池性能を示した。開示された比を達成するために、追加の相溶性物質を添加することができ、その技術は当業者に公知である。
【0059】
電気化学的エネルギー貯蔵性能に対するV-Coコドーパント効果を理解するために、一連のLFP実験室サンプルが、PP FePO
4前駆体と、0.0~5.0モル%のVPO
4と、V-Coコドーパント前駆体としての0.0~1.0モル%のNH
4CoPO
4またはCoC
2O
4とを用いて合成された。一例では、本開示におけるLFP電気化学的活性材料は、
図2において合成されたバナジウムドーパントなどのバナジウムドーパントを含む。少なくとも1つの例では、バナジウムドーパントは、酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、または、バナジウムがカチオンとみなされる他の適切な供給源のようなオキシアニオン種によって貢献される。一例では、バナジウムドーパント源は、VPO
4およびNH
4VO
3の1つまたは複数を含む。さらに、電気化学的活性材料は、コバルトコドーパント(例えば、CoC
2O
4またはNH
4CoPO
4)を、0.0~0.5モル%で含む。
表III FePO
4・qH
2Oの特性;ドーパント;コドーパント(任意);リチウム源の例、LFP前駆体粉末;およびLFP最終粉末
【0060】
上記のように、米国特許出願第14/641,172号でカバーされているLFPカソード材料の成果の1つは、高い水分吸収量の成果である。スフェニシダイトFePO4-LFPは、表面積が大きく、100~500nmの平均径を有する高濃度の細孔を有し、水に敏感である。この吸収は、低レベルの暴露でさえも起こる。これは、この物質の取り扱いおよび処理中に環境のより厳しい制御を使用する。処理は、特に限定されないが、電極コーティング、電極スタンピング(または他のそのようなハンドリングプロセス)、および電池アセンブリを含む。かなりの濃度で最終電池中に存在する水に関連する懸念は、アノードまたは負極での水の電気化学還元による水素ガスの生成である。さらに、電池内の水分の存在は、電解質の様々な成分と反応して、HFを含む他の副生成物を形成する。これは、カソード中の金属および/または電流コレクタ中の金属の溶解を引き起こし、電池性能を低下させる。
【0061】
リチウムイオンバッテリ用途用の表面積の大きいカソード材料を有することは、好ましく、実際には重要な特徴付け測定基準である。高い水分吸収が懸念される。その水分吸収において、絶対量は、水分吸収のより活性な部位が原因で、表面積の増加とともに増加する。この懸念に対処するために、LFP用の最適化された粒子内部構造は、水分吸収を軽減することができる。この場合の関心のある粒子構造は、細孔径、全細孔容積(total pore volume)、および細孔径分布である。いくつかの例では、大部分の細孔は、150nm未満、50nm未満、または15nm未満のサイズを含む。一例では、所与のLFPセット用の粉末の質量によって正規化された全細孔容積が同等であり、細孔径が約10nm以下の径に制限された多くの細孔とともに減少されると、水分吸収量のかなりの減少が生じる。例えば、スフェニシダイトFePO
4-LFPの細孔径分布は、2つの細孔径範囲の存在を示した。第1は、約2.5nmの径で中心化され(centered)、他方は10~100nmの広範囲にわたって生じた。量に対して正規化された全細孔容積は、
図8示されるような細孔径分布曲線下、面積を積分することによって計算される。そして、0.19cm
3/gで測定された。いくつかの例では、累積細孔容積は、0.08cm
3/gより大きい値を含む。他の例では、累積容積は0.15m
3/gより大きくてもよい。別の非限定的な例では、累積細孔容積は0.18m
3/gより大きくてもよい。
【0062】
具体的には、
図8に示すように、チャート800は、細孔の幅の関数として(cm
3/gxnm)の単位で、重量測定法で正規化された細孔容積を示す。これは、細孔の径として示される。細孔サイズ分布は、スフェニシダイトFePO
4-LFP802、PP FePO
4-LFP804で示されている。約2.5nmの細孔幅で、PP FePO
4-LFPは、スフェニシダイトFePO
4-LFPと比較して、より大きな細孔容積を示す。逆に、約20nmの細孔幅で、スフェニシダイトFePO
4-LFPは、PP FePO
4-LFPと比較してより大きな細孔容積を示す。したがって、一例において、PP FePO
4-LFPは、スフェニシダイトFePO
4-LFPの全体構造より異なる全体構造を示す。PP FePO
4-LFPは、一般に小さい細孔を含む。このように、PP FePO
4-LFPは、以下で説明するように、異なる水分吸収性質を発揮する。細孔径分布には有意差があるが、同等の累積細孔体積が両方の種に対して保持されることに留意されたい。
【0063】
以下の表IVに示すように、同等の累積細孔容積は、PP FePO
4-LFPがスフェニシダイトFePO
4-LFPの表面積と一致する表面積を有することを可能にする。さらに、炭素含有量(%)およびタップ密度も一致する。したがって、PP FePO
4-LFPは、水分吸収を軽減する細孔径分布を示しながら、出力性能に関して高い表面積およびトータル細孔容積に関連する利点を維持する。さらに、タップ密度と表面積の類似性、ならびにサンプル間の炭素含有量は、観察された水分吸収差の原因としてこれらの要因を排除する。
表IV スフェニシダイトFePO
4-LFPとPP FePO
4-LFPとの比較例
【0064】
水分分析は、
図9、10に示されるように、スフェニシダイトFePO
4-LFPと比較したとき、PP FePO
4-LFPの制御された異なる曝露時間で、粉末形態と電極形態の両方で減少したトータル水分吸収を示した。サンプルを85℃の真空オーブン中で約18~24時間乾燥させた。サンプルは、乾燥室に保管され、カールフィッシャー装置を用いて2時間後、1週間後および10日後に分析され、220℃で処理された。絶対水分吸収量の減少は、材料の安定性、性能および安全性を高めるので、有利な材料構造の改善である。一例として、より高い水分含量(表Vの電池例1および電池例2)で構築され、テストされたリチウムイオン電池は、充電状態で総ガス発生量の増加を経験した。このガスの分析は、高い水素ガス濃度を示した。しかし、電極中の水分濃度が低下したリチウムイオン電池は(表Vの電池例3)、測定可能な量のガスを生成しなかった。そして測定された水素ガス濃度は、約1桁低い大きさだった。
表V 高水分及び低水分で構築されたリチウムイオン電池のガス分析
【0065】
図9に示されるように、水分吸収に関するデータがチャート900に提供される。これは、電極形態および粉末形態でスフェニシダイトFePO
4-LFPとPP FePO
4-LFPとの間の水分吸収を比較する。具体的に、PP FePO
4-LFPを含む電極は902であり、PP FePO
4-LFP粉末は904である。スフェニシダイトFePO
4-LFPを含む電極は906であり、スフェニシダイトFePO
4-LFP粉末は908である。示されているように、スフェニシダイトFePO
4-LFPの水分吸収量は、PP FePO
4-LFPの水分吸収量よりも約30~40%高い。水分吸収は、電池の安定性に関連すると考えられており、例えば、水分吸収量の低下は、性能安定性および低ガス発生にとって重要である。PP FePO
4-LFPは、低い水分吸収量を示し、したがって、ガス発生が少なく、水素生成量が大幅に少なくなる。ある程度の低い水分吸収のために、PP FePO
4-LFPは、製造スタンドポイントから処理することが容易であり、安定性が改善される。一例では、PP FePO
4-LFPのより小さい細孔径分布は、LFPの構造を変化させ、水分吸収を緩和させる。これは、材料の取扱いを容易にし、電池性能を向上させる。一例では、PP FePO
4-LFPを含む電気化学電池は、気相体積の5%未満を構成するかまたは別の実施例では10%未満となるように、水素生成を緩和する。これと比較して、既知のLFP製剤を含む電気化学電池は、ガス相中に30%より高い水素濃度を有している。このようにして、開示されたPP FePO
4-LFPは、顕著なガス発生を有さず、ガス相中に低い水素濃度または無視できる程度の水素濃度を含んでいる。
【0066】
図10は、チャート1000において水分吸収の比較を示す。示されているように、スフェニシダイトFePO
4-LFP 1002は、暴露時間の関数として、PP FePO
4-LFP1004よりも、乾燥室内で有意に高い水分吸収を示した。さらに、このデータは、両方の種が最初の暴露時間において、トータル水分のかなりの部分を取り込むことを実証している。しかし、その濃度は、スフェニシダイトFePO
4-LFPについて有意に高い。
【0067】
本開示におけるLFP組成最適化のさらなる発展は、PP FePO4で合成されたLFPカソード材料の性能-組成関係に焦点を当てている。前述したように、低温性能は、リチウムイオンスタータバッテリ、スタート/ストップバッテリアプリケーションおよびその他の低電圧リチウムイオンバッテリ車載アプリケーションにとって重要なため、組成最適化の重要なパラメータである。
【0068】
図11に戻って、例示的な方法1100が、本明細書に記載のリン酸鉄源からLFPの合成について概説されている。最終LFP材料は、N
2のような不活性雰囲気下、TPRを用いて混合、粉砕、乾燥および化学還元を促進することにより、リチウム源、ドーパント源、炭素源およびリン酸鉄源を溶媒中で組み合わせることによって形成される。次いで、得られたLFP活性材料は、電気化学電池内のカソードとして使用することができる。
【0069】
1102において、方法は、リン酸鉄源、リチウム源、ドーパント源および炭素源を溶媒中で混合してスラリーを形成する工程を含む。一例では、リチウム源は、Li2CO3またはLiH2PO4である。一例では、リン酸鉄源は、FePO4・qH2Oである。さらに別の例では、リン酸鉄源は、表IIIに示されるようなリン酸鉄源であってもよい。例えば、1.000~1.040:1のP/Feモル比および28~37重量%のFe含有量を有するPP FePO4またはSP FePO4である。さらに、リン酸鉄源は、10~40m2/gの表面積を有する。一例では、溶媒は、アルコールを含む。別の例では、溶媒は水を含む。したがって、この方法は、有機溶媒または水系(水性)スラリーを含む。一例では、ドーパント源は、方法200で合成されたものなどのVPO4である。別の例では、ドーパント源は、NH4VO3であってもよい。さらに、ドーパント源は、コドーパント源を含んでもよい。このように、コドーパントは、スラリーに混合される。コドーパントは、NH4CoO4である。別の例では、コドーパントは、CoC2O4であってもよい。さらに、スラリーは、約0.0~5.0モル%のバナジウム源(ドーパント)および約0.0~1.0モル%のコドーパントを含有してもよい。炭素源または1つ以上の炭素源は、1103に含まれる。リン酸鉄源、リチウム源、ドーパント源および炭素源が1204で溶媒に混合されると、この方法は、1102/1103の混合物を粉砕する工程を含む。
【0070】
1106において、方法は、1104の粉砕混合物を乾燥させて、LFP前駆体粉末を得る工程を含む。混合物は、業界で知られている様々な方法を用いて乾燥される。一例では、LFP前駆体粉末は、
図17に関して説明したような3つの主要な熱ゾーンを有する熱プロファイルを含む。
【0071】
1108において、方法は、1106の乾燥材料を燃焼する工程を含む。材料は、TPRによって、材料を所望のLFPに変換するために燃焼される。TPRは、不活性雰囲気(例えば、N2)中で行うことができる。乾燥した粉末は、例えば、炉管、ローラー炉床窯または回転か焼炉中で、N2フロー中のTPRによって所望のLFPに変換される。TPRプロファイルは、室温からの昇温工程(ramping)と、次いで加熱工程とを含む。TPRは、特定の温度でプログラムされた保持をさらに含む。1110において、方法は、所望のLFPを得る。
【0072】
図12Aと
図12Bは、コバルトドーパント前駆体として、NH
4CoPO
4およびCoC
2O
4を使用してPP FePO
4-LFPサンプルを含むDLP電池から測定された、室温および-20℃でのDCRを示す。スフェニシダイトFePO
4-LFPおよび従来のLFP粉末を有するDLP電池から測定された室温および-20℃でのDCRは、対照として挙げられている。室温で、コバルトドーパント前駆体としてNH
4CoPO
4を使用するPP FePO
4-LFPサンプルは、スフェニシダイトFePO
4-LFPと同等のDCR結果を示した。-20℃で、コバルトドーパント前駆体としてNH
4CoPO
4を用いたPP FePO
4-LFPサンプルは、-20℃で高い出力能力のより強固なサンプルを示すコバルトドーパント前駆体としてのCoC
2O
4を使用するPP FePO
4-LFPサンプルのDCRよりも低いDCRを示した。PP FePO
4-LFPサンプルの両方のDCRは、-20℃で20mAhのDLP電池に対して9オーム未満の低温DCR性能目標を満たした。この特定の例では、NH
4CoPO
4のドーパント効率は、CoC
2O
4のドーパント効率よりも高い。なぜなら、NH
4CoPO
4は、FePO
4バルク材料と同様の分子構造を有するからである。他の例では、Feのリン酸塩に依存して、CoC
2O
4は、全システムにしたがって任意に好ましいことが理解される。
【0073】
この現在の開示に関連する追加の結果は、コドーパントの組み込みと、ドーパントの化学構造がドーピング効率にどのように影響するかである。本明細書に具体的に記載されるのは、アモルファスNH4CoPO4である。そのアモルファスNH4CoPO4は、最終LFP生成物と化学的に相溶性があり、高い表面積を有し、合成溶媒中に容易に分散される。これらの3つの特性は、ドーピング効率を高くする。そのドーピング効率は、低濃度でもドーパントの効果的かつ均質な取り込みを保証する。結晶性物質であるリン酸バナジウムは、合成溶媒中での溶解度が低い。しかしながら、VPO4の分子構造はFePO4の分子構造に匹敵するので、増加したドーパント効率は、バナジン酸アンモニウムのドーパント効率と比較したとき達成される。したがって、特にアニオンに関連する化学的適合性は、効果的なドーパント組み込みの推進力(driving force)となる。
【0074】
遷移金属イオンでドープされたLFPは、LFP結晶構造を介した荷電種の大量輸送を促進する効果的なルートとして、文献で報告されている。ドーパントのドーピング効率が高い場合、この増強された輸送は、典型的には、ドープされていないLFPと比較したとき、より高い出力の高いレベルをもたらす。効果的なドーピングは、LFP結晶構造全体にわたるドーパントの均質な分布をもたらす。この均質な分布は、鉄とドーパントとの間の遷移金属のイオン半径のミスマッチと関連して、焼結/焼成プロセス中のLFP結晶成長を妨げる。それによって、大きい表面積、小さい粒界、および所望の表面特徴を有するより小さいLFP結晶につながる。上記の教示によって先に記載したように、ドーパントの選択、前駆体材料、および処理/合成技術は、効果的なドーピングをもたらすと考えられる。これは、より環境に無害なバナジウム前駆体とNH3放出とを伴わないスフェニシダイトFePO4-LFPと同様のLFP粉末をもたらす。
【0075】
バナジウムでドープされたLFPは、以前、Liイオン伝導性を高めるために使用された(例えば、「強化イオン輸送特性を有する電極材料」という名称の米国特許第7,842,420号参照)。CoC2O4、V2O5、およびNH4VO3も、ドープされたLFPの合成用にドーパント前駆体として使用されている。この現在の開示では、NH4CoPO4およびVPO4は、FePO4と同様の化学構造を有するため、明白でないドーパント前駆体分子として選択された。この類似の構造は、全ての種がより高いドーパント効率をもたらす共通アニオンを共有するので、より高い程度の化学的適合性(compatibility)をもたらしている。選択したドーパント前駆体としてVPO4を使用するもう一つの理由は、前述したように、V(III)がV(V)よりも良性であることである。
【0076】
より高いドーピング効率をもたらす、強化された化学的適合性に加えて、FePO
4前駆体の形態および結晶構造は、上述した合成されたLFPの必要とされる物理的および電気化学的性質を達成する上で重要な役割を果たす。走査型電子顕微鏡(SEM)を利用して3つの異なるFePO
4前駆体材料を調べると、最適化された水含有量を有するFePO
4・qH
2O前駆体およびスフェニシダイトFePO
4前駆体は、
図3~5に示されるように、異なるナノスケールの形態を有することは明らかである。上記FePO
4の異なる結晶構造と共にこの区別は、結果として生じるLFPの電気化学的性能に寄与する。したがって、FePO
4前駆体形態(モルホロジー)(例えば、最適化された水含有量を有するFePO
4・qH
2Oで観察される前駆体)は、ドーパント前駆体種として化学的に適合性のあるの3価のリン酸バナジウムの使用を同時に考慮しながら、前駆体選択用の基準として使用される。回折パターンの密接な研究により、最適化されたFePO
4・qH
2Oの結晶系は六方晶であるが、スフェニシダイトFePO
4および非最適化FePO
4結晶系は単斜晶系であることが明らかに実証された。具体的に、FePO
4の異なる結晶構造は、異なる特性および/または向上した特性につながる。上記のように、効率的なドーパントの組み込みは、意外にも、金属イオン半径のミスマッチのために、より小さいLFP結晶サイズおよび粒界をもたらす。均一なドーパントの取り込みと組み合わせられたこのより小さいサイズは、得られたLFP粉末の電気化学的性能を向上させる。これは、表IIに示すデータにより実証される。
【0077】
メタバナジウム酸アンモニウムドーパントをVPO4で置換しつつ、主要な前駆体材料として非最適化FePO4・qH2Oを考慮すると、目標のFCCが達成されるが、高い表面積が維持されず、出力性能が低下することが実証されている。しかし、表面積の著しい増加および出力性能の向上は、例えば、モルベースで0.5%の少量で少量のコドーパントとしてNH4CoPO4を添加することによって実現される。この結果は、最終システムにドーパントの取り込みが増加したことに起因する。なぜなら、NH4CoPO4およびVPO4分子構造は、FePO4の分子構造と化学的に同等であるからである。さらに考慮すべき点は、コバルトドーパント前駆体の分解によるNH3の無視できる放出は、放出されるNH3の量が十分に少ないとしても、FePO4前駆体としてスフェニシダイトを使用したときに作用していると考えられる同様のメカニズムを通して、より小さい一次粒子サイズの合成を促進することである。少なくとも1つの例では、コバルトドーパントは、酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、または他の適切な供給源(コバルトがイオン種の複数のカチオンまたはその1つであると考えられる)などのオキシアニオン種によって寄与される。一例では、コバルトドーパントは、CoC2O4およびNH4CoPO4の1つまたは複数を含む。
【0078】
図13に戻って、出力応答は、上述したように、1300で示される、-30℃でコールドクランクテストを使用してDLPから測定される。1302はVPO
4-NH
4CoPO
4コドーパントを有するPP FePO
4-LFPを示し、1304はスフェニシダイトFePO
4-LFPを示し、1306はVPO
4-CoC
2O
4コドーパントを有するPP FePO
4-LFPを示し、1308は従来技術のFePO
4-LFP配合を示す。示されているように、PP FePO
4-LFP配合物の両方は、スフェニシダイトFePO
4-LFPと同様の性能を有する。一例において、1302および1306の製剤は、表IIIに示される範囲を含み、方法1100に記載されるように合成される。
【0079】
図14Aは、VPO
4-NH
4CoPO
4を有するPP FePO4-LFPと、VPO
4-NH
4CoPO
4を有するSP FePO
4-LFP(SP FePO
4-LFP)と、従来技術のFePO
4-LFP製剤と、スフェニシダイトFePO
4-LFPとの間の、室温での20mAhのDLP電池のDCRを比較する間隔プロットを示す。室温で、PP FePO
4-LFPは、スフェニシダイトFePO
4-LFPおよびFePO4-LFPのDCRに匹敵するDCRを示す。
図14Bに示されるようなDCRは、二次不純物相を含むPP FePO
4-LFPおよびSP FePO
4-LFPが-20℃でスフェニシダイトFePO
4-LFPと類似の結果を有することも示している。全体的に、PP FePO
4-LFPは、製造中のNH
3放出の不存在と、高FCCと、より環境にやさしいドーパントとを有するスフェニシダイトFePO
4-LFPと同等の性能で、寛容性、安定性および堅牢性を示す。
【0080】
図15Aは、SP FePO
4-LFPの異なるサンプルのFCCを示す。FCCを
図15で測定した。10C放電容量を
図15Bで測定した。表面積を
図15Cで測定した。全体として、結果は良好な再現性を示した。しかし、いくつかの例では、材料処理中に、SP FePO
4-LFPは、水分制御を必要とした。
【0081】
図16Aは、PP FePO
4-LFPの異なるサンプルのFCCを示す。FCCを
図16Aで測定した。10C放電容量を
図16Bで測定した。表面積を
図16Cで測定した。全体として、結果は、SP FePO
4-LFPの結果と同等であった。さらに、結果は、合成プロセスを制御することができる高い耐湿性を有するPP FePO
4の少なくとも一部に支払われるべき余分な水分制御の必要性なしに、高い一貫性と再現性を示した。
【0082】
SP FePO4に関して、一例では、SP FePO4は、1つ以上の不純物を含む。例えば、不純物は、針鉄鉱(Fe+3O(OH))およびリン酸鉄(Fe(PO3)3)の相に対応する。これに対し、PP FePO4は、全てのピークが明確に定義される回折パターンを有し、FePO4・qH2O、(qは最適化されている)に帰属される。この回折パターンは、高純度相を示す。一例では、本開示のPP FePO4は、長期間、高レベルの大気の水分に曝されたとして、3%以下の水分吸収を有する。
【0083】
上記の測定基準(metrics)を用いて示された速度能力を有する高表面積LFPカソードを達成するために、リン酸鉄前駆体、ドーパント前駆体、炭素源およびリチウム源は、顕微鏡レベルでの相分離を伴わずに、混合、粉砕、および乾燥プロセス中、完全に混ざっている。したがって、本明細書に含まれる重要な教示は、当業者が上述した前駆体を含む乾燥粉末を製造することを可能にする。この乾燥粉末は、熱重量分析(TGA)技術を用いて測定されるような特定の熱プロファイルを有する。そして、その粉末は、焼成時に、所望の物理的、形態学的および電気化学的性質を有する最終LFP粉末になる。この特徴のある技術は、乾燥粉末の質量をモニターし、サンプル温度の関数として質量の変化を定量化する。この分析の結果得られたプロファイルは、分解パターン、分解メカニズム、および反応速度論などに洞察を提供する。これらの全ては、所望の特性を有するLFP粉末を得るために、最適温度および最適速度で生じる。
【0084】
図17に示されるように、モニターされる3つの重要な熱ゾーンが存在する。第1ゾーンは、別の例では、75℃~125℃の間で発生し、約100℃または95℃~105℃の範囲内で生じる最大ピーク高さを有する。この範囲で発生するピークは、第2の重要な熱ゾーンで収集された信号からのピーク高さを用いて正規化されたとき、第2の最大ピーク高さを有する。第2ゾーンは、175℃~250℃の範囲の温度で発生し、約225℃±25℃で生じる最大ピーク高さを有する。第3の温度ゾーンは、275℃~425℃の間で発生し、2つの態様のピークを含む。その2つの態様のピークにおいて、その範囲内の低い温度で記録されたピークは、いくつかの場合において、同じ範囲内で高い温度で記録されたピークのピーク高さよりも優れたピーク高さを有する。2つの別個のピーク高さが観察されるが、
図17に示されるように、ピークが完全に解析される必要はない。一例では、500℃を超える温度で、有意なシグナルは観察されない。また、サンプル温度が上昇した速度は、10℃/分である一方、他の加熱速度(5~10℃/分)は依然として使用可能であることに留意すべきである。より速い速度は、ピークオーバーラップをもたらし、個々の熱ゾーンを区別することが困難になる。
【0085】
本明細書に記載された熱プロファイルからの逸脱は、熱および物質移動の関数として、異なる速度および温度で分解する非均一粒子の凝集などの現象に起因する。完全に関与されていない成分を有する乾燥粉末は、顕著に異なる分解動力学(decomposition kinetics)をもたらす。その分解動力学は、異なる熱プロファイルをもたらす。上述の条件から生じる異なる熱プロファイルは、必ずしもLFPの形成を妨げるものではなく、所望の物理的および形態学的性質ならびに必要とされる電気化学的性能を満たさないことに留意することが重要である。したがって、この技術を使用すると、リアルタイムの材料スクリーニングは、より均一な混合、粉砕、および噴霧乾燥プロセスを保証することができる。
【0086】
本開示の実施形態は、150mAh/gをより大きいFCCを同時に達成するとともに、広範囲の温度にわたって機敏な速度性能を可能にする、適切な化学的、物理的、構造的および電気化学的性質を有するLFPを実現することに焦点を当てている。ここで説明するLFPの化学組成は、LizFe(1-x-y)VxCoyPO4(ここで、z≧1、0.00≦x≦0.05、0.00≦y≦0.01)に相当する。xおよびyについて所望の結果を得るための範囲および最適値は、上述した通りである。このシステムは、トータル非リチウム金属対リン酸塩比のモル比が1に近づくときに、最大の化学的安定性および電気化学的性能を実証する。ここで、トータル金属は、LFP(例えば、Fe+V+Co)に組み込まれるすべての遷移金属の合計である。さらに、いくつかの例では、ドーパントとして、他の金属または金属の組み合わせを使用する。1はこの測定基準の最適値であるが、1.000~1.040:1の範囲はまた、所望のLFP性質をもたらし、ここでの教示に使用される。本開示で使用される主要なドーピング前駆体は、特に、V2O5およびNH4VO3などの他のVドーピング前駆体と比較したとき、2つの種のアニオンが同一であり、したがって、より高いドーピング効率であることを考えると、FePO4と同様の化学構造を有するVPO4である。この教示は、Vに限定されず、すべての遷移金属ドーパントが考慮されることに留意すべきである。本明細書に記載される他のそのような例は、少数の第2のドーパントとして、CoでLFPをコドープする場合である。このシステムで、リン酸塩系コバルトドーパントは、酸化物形態またはシュウ酸コバルトのような他のコバルト種と比較した場合に、より効果的なドーピング戦略をもたらすことも実証された。これらの範囲の全ては、許容可能であり、所望の物理的性質および電気化学的性能を有するLFPをもたらすことができる。
【0087】
本開示の教示を全体的に利用する場合、一例において、本明細書に開示されるリン酸鉄前駆体は、(1)LFP合成中にNH
3放出がゼロになる、(2)37%(他の実施例では、28~29.5%および36~37%の範囲)に近づくFeの重量パーセントを含む、(3)添加Feおよび/またはP源の必要性を緩和するために、より高い相純度を有するP/Feを1に近づける、(4)FePO
4からLFPへの高い変換効率、(5)
図9に示されるように、周囲環境において十分に減少した水分吸収量になる、および(6)粉砕(低SSAのため)中および高固体含量を可能にする間、スラリー粘度が低くなり、それによって、スループットおよび生産速度を向上させている。
【0088】
図18に戻って、電極アセンブリが示されている。それは、開示されたLFP電気化学的活性材料を含む。積層可能な電池構成において、複数のカソードおよびアノードは、平行な交互の層として配置される。
図18に示される例において、積層可能な電池電極アセンブリ1800が示されている。電極アセンブリ1800は、7つのカソード1802a~1802gと、6つのアノード1804a~1804fとを含むように示されている。一例では、カソードは、上述のように、PP FePO
4またはSP FePO
4から合成されたLFPを含む。別の例では、カソードは、上記のFePO
4から合成されたLFPを含む。隣り合うカソードおよびアノードは、これらの電極間でイオンの移動を提供しながら、隣接する電極を電気的に絶縁するために、セパレータシート1806によって分離されている。各電極は、導電性基板(例えば、金属箔)と、導電性基板によって支持された1つまたは2つの活性材料層とを含む。各負極活性材料層は、1つの正極活性材料層と対になっている。
図18に示される例において、外側カソード1802aおよび1802gは、アセンブリ1800の中心に向かって面する1つの正極活性材料のみを含む。当業者は、任意の数の電極および電極の対を使用することを理解する。タブ1808、1810のような導電性タブは、例えば、電極と導電性要素との間の電子の移動を提供するために使用される。
【0089】
図19Aおよび
図19Bにおいて、巻電池の実施例1900が示されている。その実施例において、2つの電極がゼリーロール状に巻かれ、容器内に収容されている。容器は、負極、正極、非水電解質およびセパレータを収容する。
【0090】
表IIIおよび方法1100に関連して説明したような上記FePO4から合成されたLFPは、バッテリにおける電気化学的活性材料として使用されると、改善された性質を示す。したがって、電気化学的電池は開示されている。その電気化学的電池は、バナジウムおよびコバルトでドープされたLFP電気化学的活性材料を含む活性材料層を有する正極を含む。その電気化学的活性材料は、1.000~1.040:1の、トータル非リチウム金属対リン酸塩のモル比を有する。その電池はまた、負極と、正極と負極との間でイオンの移動を支持するイオン性電解質溶液と、多孔質セパレータとを含む。
【0091】
現在の開示は、所望の物理的性質および電気化学的性能をもたらす前駆体材料に関連する重要な特性を教示することによって、従来のLFP製剤を改善する。これらの特性は、前駆体結晶構造、化学組成(特にアニオン)、前駆体中のFe含有量、回折技術によって同定される相純度、および、リン酸鉄前駆体のP/Feモル比に関連する。さらなる教示は、前駆体の選択および処理を通じた、最終LFPの細孔径および細孔径分布をどのように操作するかに関連する。強化された結晶細孔ネットワークは、粉末と電極レベルとの両方で、より低い水分吸収をもたらす。本明細書に教示されたLFPは、例えば、米国特許出願第14/641,172号に記載されている材料よりも少ない水分吸収を実証した。これは、少なくとも部分的には、より小さい細孔径を有するPP FePO4-LFPのミクロ構造およびナノ構造の操作に起因する。そして、これは、同様にして、水の吸収を妨げる。最終的なLFP粉末は、より堅牢な電気化学的性能を提供し、経時的な安定性を高める。
【0092】
本明細書に示され、記載されたものに加えて、本開示の様々な変更は、上記の説明の当業者には明らかであろう。そのような改変も、添付の特許請求の範囲に含まれる。
【0093】
すべての試薬は、特に明記しない限り、当該分野で周知の供給源によって得ることができることが理解される。
【0094】
本明細書で言及した特許、刊行物および出願は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものである。これらの特許、刊行物および出願は、それぞれの個々の特許、刊行物または出願が、本明細書中で参考として具体的かつ個別に記載されたのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
前述の説明は、本発明の特定の実施形態の例示であるが、その実施を限定することを意味するものではない。
【0096】
上記の説明は、例示的なものとして理解されるべきであり、いかなる意味においても限定として解釈されるべきではない。本発明は、その好ましい実施形態を参照して具体的に示され、説明されたが、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の種々の変更が可能であることは、当業者に理解される。
【0097】
以下の特許請求の範囲における全ての手段またはステップと機能的な要素の対応する構造、材料、動作および均等物は、特許請求の範囲に記載された他の要素と組み合わせて機能を実行するための構造、材料または動作を含むものとする。
【0098】
最後に、上記の物品、システム、および方法は、本開示の実施形態であり、多くの変形および拡張が同様に企図される非限定的な実施例であることが理解される。したがって、本開示は、本明細書に開示された、物品、システム、および方法の、すべての新規で非自明なコンビネーションおよびサブコンビネーション、ならびに、その任意のおよび全ての等価物を含む。