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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B22D17/32 A
B22D17/32 D
B22D17/32 J
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022177479
(22)【出願日】2022-11-04
(65)【公開番号】P2024067421
(43)【公開日】2024-05-17
【審査請求日】2024-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 俊治
(72)【発明者】
【氏名】三田 哲也
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-076973(JP,A)
【文献】特開2017-185519(JP,A)
【文献】特開2011-224626(JP,A)
【文献】特開2013-086143(JP,A)
【文献】特開2008-188627(JP,A)
【文献】特開2021-137838(JP,A)
【文献】特開平11-188763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/32
B29C 45/76-82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を型締めする型締装置と、
スリーブの中にプランジャを摺動させ、前記金型に液状材料を供給し、前記プランジャの射出速度を制御するサーボバルブを含み、前記サーボバルブに対するサーボ指令値と前記射出速度の相関関数は第1の大変化率領域、第2の大変化率領域、及び前記第1の大変化率領域と前記第2の大変化率領域との間に存在し前記第1の大変化率領域の変化率及び前記第2の大変化率領域の変化率よりも変化率の小さい小変化率領域を含む、射出装置と、
低速区間、加速区間、及び高速区間を含む前記射出装置の射出条件を入力する入力装置と、
前記プランジャの前記射出速度を制御する制御装置であって、
前記射出条件と、前記相関関数と、前記第1の大変化率領域から前記小変化率領域へ変化する第1の変化点における第1のサーボ指令値及び第1の射出速度と、前記小変化率領域から前記第2の大変化率領域へ変化する第2の変化点における第2のサーボ指令値及び第2の射出速度と、を記憶する記憶部と、
前記加速区間の中で前記第1の射出速度以上前記第2の射出速度以下の部分区間の、前記射出条件の射出加速度と所定の閾値加速度との大小関係を比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づき前記第1のサーボ指令値の指令時間から前記第2のサーボ指令値の指令時間までの部分区間所要時間を決定し、決定された前記部分区間所要時間に基づき、前記サーボバルブに対するサーボ指令を生成する演算部と、
前記サーボ指令を前記サーボバルブに指令する指令部と、
を含む制御装置と、
を備え、
前記比較部による比較結果が、前記射出条件の前記射出加速度が前記閾値加速度より小さい場合には、前記部分区間所要時間を、前記第2の射出速度と前記第1の射出速度の差分を前記加速区間の終期速度と前記加速区間の初期速度の差分で除した値を比例係数とする比例式から算出される第1の値とし、
前記比較部による比較結果が、前記射出加速度が前記閾値加速度以上の場合には、前記部分区間所要時間を前記射出装置の特性から設定可能な最短時間である第2の値とすることを特徴とするダイカストマシン。
【請求項2】
前記部分区間所要時間をT1、前記加速区間の総加速時間をt、前記加速区間の前記初期速度をVo、前記第1の射出速度をV1、前記第2の射出速度をV2、前記加速区間の前記終期速度をV3とした場合に、前記比例式は下記式1であり、前記部分区間所要時間は下記式1で算出される前記第1の値であることを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
T1=t×(V2-V1)/(V3-V0)・・・(式1)
【請求項3】
前記比較部による比較結果が、前記射出条件の前記射出加速度が前記閾値加速度より小さい場合において、前記第1の値が前記第2の値より小さい場合には、前記部分区間所要時間を、前記第2の値とすることを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記初期速度は前記第1の射出速度よりも小さく、前記終期速度は前記第2の射出速度よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項5】
前記部分区間の開始時の前記射出速度は前記第1の射出速度であり、前記部分区間の開始時のサーボ指令値は前記第1のサーボ指令値であることを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項6】
前記第2の値は1ms以下であることを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項7】
前記閾値加速度は、15m/s以上であることを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項8】
前記初期速度は0.4m/sec以下であることを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項9】
前記終期速度は1m/sec以上であることを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項10】
前記演算部は、前記加速区間の開始時のサーボ指令値の指令時間から前記第1のサーボ指令値の指令時間までの初期所要時間、及び、前記第2のサーボ指令値の指令時間から前記加速区間の終了時のサーボ指令値の指令時間までの終期所要時間を決定し、決定された前記初期所要時間及び前記終期所要時間に基づき、前記サーボ指令を生成し、
前記初期所要時間をT0とした場合に、前記初期所要時間は下記式2で算出される値とし、
前記終期所要時間をT2とした場合に、前記終期所要時間は下記式3で算出される値とすることを特徴とする請求項2記載のダイカストマシン。
T0=t×(V1-V0)/(V3-V0)・・・(式2)
T2=t-(T0+T1)・・・(式3)
【請求項11】
前記射出装置は、ロッド側室とヘッド側室を有する射出シリンダと、
前記射出シリンダの射出ピストンの前進に伴って前記ロッド側室から排出される作動液を前記ヘッド側室へ流入させるランアラウンド回路と、
前記射出ピストンの前進に伴って前記ロッド側室から排出される作動液を受け入れるタンクと、を更に含み、
前記サーボバルブは、
前記ロッド側室から前記ヘッド側室への作動液の流れを許容しつつ、前記ロッド側室から前記タンクへの作動液の流れを遮断する第1状態と、
前記ロッド側室から前記ヘッド側室への作動液の流れを許容しつつ、前記ロッド側室から前記タンクへの作動液の流れを許容する第2状態と、の間で切り替え可能であることを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項12】
前記サーボバルブは、前記第1状態と、前記第2状態と、前記ロッド側室から前記ヘッド側室及び前記タンクへのいずれへの作動液の流れも遮断する第3状態との間で切り替え可能であることを特徴とする請求項11記載のダイカストマシン。
【請求項13】
前記第1状態における前記相関関数は前記小変化率領域を含み、
前記第2状態における前記相関関数は前記第2の大変化率領域を含むことを特徴とする請求項11記載のダイカストマシン。
【請求項14】
前記第2の大変化率領域の平均変化率は、前記小変化率領域の平均変化率の5倍以上であることを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【請求項15】
前記射出装置は前記プランジャの前記射出速度又は前記プランジャの位置を測定するセンサを更に含み、前記低速区間及び前記高速区間では、前記センサの測定値に基づき前記サーボ指令を補正するフィードバック制御を行い、前記加速区間では前記フィードバック制御を行わないことを特徴とする請求項1記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型内の空洞に液状金属を充填しダイカスト品を製造するダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシンは、型締装置を用いて型締めされた金型内の空洞に、射出装置を用いて液状金属(溶湯)を充填することで、ダイカスト品を製造する。射出装置は、例えば、アクチュエータとして、射出シリンダを含む。射出シリンダは、例えば、スリーブの中を摺動するプランジャに連結可能なロッドと、ロッドに固定される射出ピストンと、内部に射出ピストンを摺動可能に収容するシリンダチューブと、を含む。シリンダチューブは、ロッドが配置されるロッド側室と、射出ピストンを間に挟んでロッド側室の反対側に位置するヘッド側室と、を内部に有する。
【0003】
ヘッド側室に作動油が供給されることによって、射出ピストンがロッド側へ移動する。射出ピストンの移動に伴い、プランジャがスリーブの中を金型の方向に前進し、溶湯が金型内の空洞に充填される。
【0004】
プランジャの射出速度の制御は、例えば、ロッド側室から排出される作動油の流量を制御することで行われる。例えば、ロッド側室から排出される作動油の流路にサーボバルブを設け、サーボバルブによってロッド側室から排出される作動油の流量を制御する。
【0005】
ダイカスト品に不良が発生することを抑制する観点から、射出速度の制御の精度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2022-98033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、射出速度の制御の精度を向上できるダイカストマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のダイカストマシンは、金型を型締めする型締装置と、スリーブの中にプランジャを摺動させ、前記金型に液状材料を供給し、前記プランジャの射出速度を制御するサーボバルブを含み、前記サーボバルブに対するサーボ指令値と前記射出速度の相関関数は第1の大変化率領域、第2の大変化率領域、及び前記第1の大変化率領域と前記第2の大変化率領域との間に存在し前記第1の大変化率領域の変化率及び前記第2の大変化率領域の変化率よりも変化率の小さい小変化率領域を含む、射出装置と、低速区間、加速区間、及び高速区間を含む前記射出装置の射出条件を入力する入力装置と、前記プランジャの前記射出速度を制御する制御装置であって、前記射出条件と、前記相関関数と、前記第1の大変化率領域から前記小変化率領域へ変化する第1の変化点における第1のサーボ指令値及び第1の射出速度と、前記小変化率領域から前記第2の大変化率領域へ変化する第2の変化点における第2のサーボ指令値及び第2の射出速度と、を記憶する記憶部と、前記加速区間の中で前記第1の射出速度以上前記第2の射出速度以下の部分区間の、前記射出条件の射出加速度と所定の閾値加速度との大小関係を比較する比較部と、前記比較部による比較結果に基づき、前記第1のサーボ指令値の指令時間から前記第2のサーボ指令値の指令時間までの部分区間所要時間を決定し、決定された前記部分区間所要時間に基づき、前記サーボバルブに対するサーボ指令を生成する演算部と、前記サーボ指令を前記サーボバルブに指令する指令部と、を含む制御装置と、を備え、前記比較部による比較結果が、前記射出条件の前記射出加速度が前記閾値加速度より小さい場合には、前記部分区間所要時間を、前記第2の射出速度と前記第1の射出速度の差分を前記加速区間の終期速度と前記加速区間の初期速度の差分で除した値を比例係数とする比例式から算出される第1の値とし、前記比較部による比較結果が、前記射出加速度が前記閾値加速度以上の場合には、前記部分区間所要時間を前記射出装置の特性から設定可能な最短時間である第2の値とする。
【0009】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記部分区間所要時間をT1、前記加速区間の総加速時間をt、前記加速区間の前記初期速度をVo、前記第1の射出速度をV1、前記第2の射出速度をV2、前記加速区間の前記終期速度をV3とした場合に、前記比例式は下記式1であり、前記部分区間所要時間は下記式1で算出される前記第1の値であることが好ましい。
T1=t×(V2-V1)/(V3-V0)・・・(式1)
【0010】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記比較部による比較結果が、前記射出条件の前記射出加速度が前記閾値加速度より小さい場合において、前記第1の値が前記第2の値より小さい場合には、前記部分区間所要時間を、前記第2の値とすることが好ましい。
【0011】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記初期速度は前記第1の射出速度よりも小さく、前記終期速度は前記第2の射出速度よりも大きいことが好ましい。
【0012】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記部分区間の開始時の前記射出速度は前記第1の射出速度であり、前記部分区間の開始時のサーボ指令値は前記第1のサーボ指令値であることが好ましい。
【0013】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記第2の値は1ms以下であることが好ましい。
【0014】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記閾値加速度は、15m/s以上であることが好ましい。
【0015】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記初期速度は0.4m/sec以下であることが好ましい。
【0016】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記終期速度は1m/sec以上であることが好ましい。
【0017】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記演算部は、前記加速区間の開始時のサーボ指令値の指令時間から前記第1のサーボ指令値の指令時間までの初期所要時間、及び、前記第2のサーボ指令値の指令時間から前記加速区間の終了時のサーボ指令値の指令時間までの終期所要時間を決定し、決定された前記初期所要時間及び前記終期所要時間に基づき、前記サーボ指令を生成し、前記初期所要時間をT0とした場合に、前記初期所要時間は下記式2で算出される値とし、前記終期所要時間をT2とした場合に、前記終期所要時間は下記式3で算出される値とすることが好ましい。
T0=t×(V1-V0)/(V3-V0)・・・(式2)
T2=t-(T0+T1)・・・(式3)
【0018】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記射出装置は、ロッド側室とヘッド側室を有する射出シリンダと、前記射出シリンダの射出ピストンの前進に伴って前記ロッド側室から排出される作動液を前記ヘッド側室へ流入させるランアラウンド回路と、前記射出ピストンの前進に伴って前記ロッド側室から排出される作動液を受け入れるタンクと、を更に含み、前記サーボバルブは、前記ロッド側室から前記ヘッド側室への作動液の流れを許容しつつ、前記ロッド側室から前記タンクへの作動液の流れを遮断する第1状態と、前記ロッド側室から前記ヘッド側室への作動液の流れを許容しつつ、前記ロッド側室から前記タンクへの作動液の流れを許容する第2状態と、の間で切り替え可能であることが好ましい。
【0019】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記サーボバルブは、前記第1状態と、前記第2状態と、前記ロッド側室から前記ヘッド側室及び前記タンクへのいずれへの作動液の流れも遮断する第3状態との間で切り替え可能であることが好ましい。
【0020】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記第1状態における前記相関関数は前記小変化率領域を含み、前記第2状態における前記相関関数は前記第2の大変化率領域を含むことが好ましい。
【0021】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記第2の大変化率領域の平均変化率は、前記小変化率領域の平均変化率の5倍以上であることが好ましい。
【0022】
上記態様のダイカストマシンにおいて、前記射出装置は前記プランジャの前記射出速度又は前記プランジャの位置を測定するセンサを更に含み、前記低速区間及び前記高速区間では、前記センサの測定値に基づき前記サーボ指令を補正するフィードバック制御を行い、前記加速区間では前記フィードバック制御を行わないことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、射出速度の制御の精度を向上できるダイカストマシンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態のダイカストマシンの全体構成を示す模式図。
図2】第1の実施形態の射出装置の構成の一例を示す模式図。
図3】第1の実施形態の速度制御用バルブの一例を示す模式図。
図4】第1の実施形態の速度制御用バルブの一例を示す模式図。
図5】第1の実施形態の速度制御用バルブの一例を示す模式図。
図6】第1の実施形態の射出装置のサーボ指令値と射出速度の関係の一例を示す図。
図7】第1の実施形態の入力装置に入力される射出条件の一例を示す図。
図8】第1の実施形態のダイカストマシンの一部のブロック図。
図9】第1の実施形態のサーボ指令値と射出速度の相関関数の一例を示す図。
図10】第1の実施形態の演算部で生成されるサーボ指令の一例を示す図。
図11】第1の実施形態の演算部で生成されるサーボ指令の一例を示す図。
図12】第1の比較例の演算部で生成されるサーボ指令の一例を示す図。
図13】第1の比較例の射出装置の射出速度の実測値を示す図。
図14】第2の比較例の演算部で生成されるサーボ指令の一例を示す図。
図15】第2の比較例の射出装置の射出速度の実測値を示す図。
図16】第1の実施形態の射出装置の射出速度の実測値を示す図。
図17】第2の実施形態のダイカストマシンの一部のブロック図。
図18】第2の実施形態の演算部で生成されるサーボ指令の一例を示す図。
図19】第2の実施形態の演算部で生成されるサーボ指令の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
なお、本明細書では、液圧の一例として、油圧を用いて説明する。例えば、液圧ポンプの一例として油圧ポンプを用いて説明する。油圧にかえて、例えば、水圧を用いることも可能である。また、本明細書では、作動液の一例として、作動油を用いて説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
第1の実施形態のダイカストマシンは、金型を型締めする型締装置と、スリーブの中にプランジャを摺動させ、金型に液状材料を供給し、プランジャの射出速度を制御するサーボバルブを含み、サーボバルブに対するサーボ指令値と射出速度の相関関数は第1の大変化率領域、第2の大変化率領域、及び第1の大変化率領域と第2の大変化率領域との間に存在し第1の大変化率領域の変化率及び第2の大変化率領域の変化率よりも変化率の小さい小変化率領域を含む、射出装置と、低速区間、加速区間、及び高速区間を含む射出装置の射出条件を入力する入力装置と、プランジャの射出速度を制御する制御装置であって、射出条件と、相関関数と、第1の大変化率領域から小変化率領域へ変化する第1の変化点における第1のサーボ指令値及び第1の射出速度と、小変化率領域から第2の大変化率領域へ変化する第2の変化点における第2のサーボ指令値及び第2の射出速度と、を記憶する記憶部と、加速区間の中で第1の射出速度以上第2の射出速度以下の部分区間の、射出条件の射出加速度と所定の閾値加速度との大小関係を比較する比較部と、比較部による比較結果に基づき第1のサーボ指令値の指令時間から第2のサーボ指令値の指令時間までの部分区間所要時間を決定し、決定された部分区間所要時間に基づき、サーボバルブに対するサーボ指令を生成する演算部と、サーボ指令をサーボバルブに指令する指令部と、を含む制御装置と、を備える。そして、比較部による比較結果が、射出条件の射出加速度が閾値加速度より小さい場合には、部分区間所要時間を、第2の射出速度と第1の射出速度の差分を加速区間の終期速度と加速区間の初期速度の差分で除した値を比例係数とする比例式から算出される第1の値とし、比較部による比較結果が、射出加速度が閾値加速度以上の場合には、部分区間所要時間を所定の固定値である第2の値とする。
【0028】
図1は、第1の実施形態のダイカストマシンの全体構成を示す模式図である。図1は、一部に断面図を含む側面図である。第1の実施形態のダイカストマシンは、ダイカストマシン100である。ダイカストマシン100は、例えば、コールドチャンバ式のダイカストマシンである。
【0029】
ダイカストマシン100は、型締装置10、押出装置12、射出装置14、金型18、及び制御ユニット20を備える。制御ユニット20は、制御装置32を含む。
【0030】
ダイカストマシン100は、ベース22、固定ダイプレート24、可動ダイプレート26、リンクハウジング28、タイバー30、スリーブ31、及びプランジャ33を備える。プランジャ33は、プランジャチップ33aとプランジャロッド33bを有する。
【0031】
ダイカストマシン100は、金型18の内部(図1中の空洞Ca)に液状金属(溶湯)を射出して充填し、その液状金属を金型18内で凝固させることにより、ダイカスト品を製造する機械である。金属は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛合金、又は、マグネシウム合金である。液状金属(溶湯)は、液状材料の一例である。
【0032】
金型18は、固定金型18aと可動金型18bを含む。金型18は、型締装置10と射出装置14との間に設けられる。
【0033】
固定ダイプレート24はベース22の上に固定される。固定ダイプレート24は、固定金型18aを保持することが可能である。
【0034】
可動ダイプレート26は、ベース22の上に型開閉方向に移動可能に設けられる。型開閉方向とは、図1に示す型開方向及び型閉方向の両方向を意味する。可動ダイプレート26は、可動金型18bを固定金型18aに対向して保持することが可能である。
【0035】
リンクハウジング28は、ベース22の上に設けられる。リンクハウジング28には、型締装置10を構成するリンク機構の一端が固定される。
【0036】
固定ダイプレート24とリンクハウジング28は、タイバー30により固定される。タイバー30は、固定金型18aと可動金型18bに型締力が加えられている間は、型締力を支える。
【0037】
型締装置10は、金型18の開閉及び型締めを行う機能を有する。
【0038】
射出装置14は、金型18の空洞Caに溶湯を供給し、溶湯を加圧する機能を有する。射出装置14は、スリーブ31の中を摺動するプランジャ33に連結可能なロッド80を備える。射出装置14は、スリーブ31の中にプランジャ33を摺動させ、金型18に溶湯を供給する。
【0039】
図2は、第1の実施形態の射出装置の構成の一例を示す模式図である。
【0040】
射出装置14は、射出シリンダ44、油圧ポンプ46、油タンク48(タンク)、アキュムレータ50、変位センサ52(センサ)、圧力センサ53、射出用バルブ54、速度制御用バルブ56(サーボバルブ)、方向切替バルブ58、第1の開閉バルブ60、第2の開閉バルブ62、充填補充用バルブ64、第1の流路70a、第2の流路70b、第3の流路70c、第4の流路70d、第5の流路70e、第6の流路70f、及び第7の流路70gを備える。
【0041】
射出シリンダ44は、ロッド80、射出ピストン82、シリンダチューブ84、ロッド側室86、ヘッド側室88を含む。
【0042】
ロッド80は、スリーブ31の中を摺動するプランジャ33に連結可能である。ロッド80の移動により、スリーブ31の中をプランジャ33が移動する。
【0043】
射出ピストン82は、ロッド80に固定される。射出ピストン82は、シリンダチューブ84に摺動可能に収容される。射出ピストン82は、例えば円柱状である。
【0044】
シリンダチューブ84は、射出ピストン82を摺動可能に収容する。シリンダチューブ84は、例えば、円筒状である。
【0045】
シリンダチューブ84の内部のロッド80側に、ロッド側室86が設けられる。ロッド側室86には、ロッド80が配置される。
【0046】
シリンダチューブ84の内部のロッド80側と反対側にヘッド側室88が設けられる。射出ピストン82を間に挟んで、ヘッド側室88はロッド側室86の反対側に位置する。
【0047】
油圧ポンプ46は、例えば、図示しないポンプ用電動機によって駆動される。油圧ポンプ46は、油タンク48から作動油を吸い上げ、吐出する機能を有する。油圧ポンプ46は、例えば、アキュムレータ50への作動油の供給、及び、射出シリンダ44への作動油の供給に寄与する。
【0048】
油圧ポンプ46によって吐出される作動油の吐出量又は吐出圧力は可変である。油圧ポンプ46は、例えば、可変容量形ポンプである。可変容量形ポンプは、作動油の吐出量及び吐出圧力を変化させることが可能である。
【0049】
油タンク48は、例えば、アキュムレータ50や射出シリンダ44へ供給する作動油を貯留する。また、油タンク48は、例えば、アキュムレータ50や射出シリンダ44で使用された作動油を回収する。
【0050】
アキュムレータ50は、ヘッド側室88に供給される作動油の流量を大きくする機能を有する。アキュムレータ50は、高圧の封入ガスを用いてエネルギーを蓄積し、瞬間的にそのエネルギーを放出することで、作動油の流量を大きくする。アキュムレータ50を設けることで、射出シリンダ44を高速に動作させることが可能となる。
【0051】
第1の流路70aは、油圧ポンプ46とアキュムレータ50を接続する。第1の流路70aを用いて、油圧ポンプ46からアキュムレータ50に作動油を供給して、アキュムレータ50に作動油を充填し蓄圧することが可能である。
【0052】
また、第1の流路70aは、第2の流路70bを経由して、ヘッド側室88に接続される。例えば、射出シリンダ44の射出動作の際に、第1の流路70aを用いて第2の流路70bに作動油を補充することが可能となる。
【0053】
第6の流路70fは、第4の流路70dを経由して、油圧ポンプ46とヘッド側室88を接続する。第6の流路70fは、いわゆるポンプラインである。第6の流路70fと第4の流路70dを用いて、油圧ポンプ46からヘッド側室88に作動油を供給することが可能となる。第4の流路70dは、第1の流路70aと異なる。
【0054】
また、第6の流路70fは、第5の流路70eを経由して、油圧ポンプ46とロッド側室86を接続する。第6の流路70fと第5の流路70eを用いて、油圧ポンプ46からロッド側室86に作動油を供給することが可能である。
【0055】
第3の流路70cは、ロッド側室86と油タンク48を接続する。第3の流路70cを用いて、ロッド側室86から排出される作動油を油タンク48に回収することが可能である。油タンク48は、射出シリンダ44の射出ピストン82の前進に伴って、ロッド側室86から排出される作動油を受け入れる。
【0056】
第7の流路70gは、速度制御用バルブ56とヘッド側室88を接続する。第7の流路70gを用いて、ロッド側室86から排出された作動油をヘッド側室88に戻すことが可能である。第7の流路70gによって、いわゆるランアラウンド回路が形成されている。ランアラウンド回路は、射出シリンダ44の射出ピストン82の前進に伴って、ロッド側室86から排出される作動油を、ヘッド側室88に流入される。
【0057】
第1の流路70aないし第7の流路70gは、例えば、鋼管又はホースにより構成される。
【0058】
射出用バルブ54は、第2の流路70bに設けられる。射出用バルブ54は、ヘッド側室88とアキュムレータ50との間に設けられる。射出用バルブ54は、アキュムレータ50からヘッド側室88への作動油の供給を許容又は遮断する。
【0059】
射出用バルブ54は、例えば、パイロット式の逆止弁によって構成されており、パイロット圧が導入されていない時は、アキュムレータ50からヘッド側室88への作動油の流れを許容すると共に、その反対方向の流れを遮断する。射出用バルブ54にパイロット圧が導入されている時は、双方の流れを遮断する。射出用バルブ54は、ヘッド側室88からアキュムレータ50への作動油の逆流を防止する機能を有する。
【0060】
射出用バルブ54が開状態の時に、アキュムレータ50からヘッド側室88への作動油の流れが許容される。射出用バルブ54が閉状態の時に、アキュムレータ50からヘッド側室88への作動油の流れが遮断される。
【0061】
速度制御用バルブ56は、第3の流路70cに設けられる。速度制御用バルブ56は、ロッド側室86と油タンク48との間に設けられる。
【0062】
速度制御用バルブ56は、ロッド80に連結されたプランジャ33の射出速度を制御する。速度制御用バルブ56は、ロッド側室86から油タンク48に排出される作動油の流量を制御することにより、プランジャ33の射出速度を制御する。
【0063】
速度制御用バルブ56は、第3の流路70cと第7の流路70gとの間に設けられる。速度制御用バルブ56は、ロッド側室86とヘッド側室88との間に設けられる。速度制御用バルブ56は、ロッド側室86からヘッド側室88に戻される作動油の流量を制御する。
【0064】
速度制御用バルブ56による作動油の流量の制御により、射出ピストン82の前進速度が制御される。速度制御用バルブ56による作動油の流量の制御により、プランジャ33の前進速度が制御される。速度制御用バルブ56により、いわゆる、メータアウト制御が行われる。速度制御用バルブ56は、ロッド側室86、ヘッド側室88、及び油タンク48の間の作動油の流れを制御する。
【0065】
図3図4、及び図5は、第1の実施形態の速度制御用バルブの一例を示す模式図である。図3図4、及び図5は、速度制御用バルブ56による、ロッド側室86、ヘッド側室88、及び油タンク48の間の作動油の流れの制御を模式的示す。図3図4、及び図5において、速度制御用バルブ56については、作動油の流れの制御に関わる要部のみを図示している。
【0066】
速度制御用バルブ56は、第1のバルブスリーブ56a、第2のバルブスリーブ56b、及びスプール56cを含む。スプール56cは、第1のバルブスリーブ56a及び第2のバルブスリーブ56bの中に、例えば、左右方向に移動可能に設けられる。スプール56cは、例えば、電磁石を用いて移動される。
【0067】
第2のバルブスリーブ56bの内径は、例えば、第1のバルブスリーブ56aの内径よりも大きい。第2のバルブスリーブ56bの内径は、例えば、第1のバルブスリーブ56aの内径の1.5倍以上である。
【0068】
速度制御用バルブ56は、第1状態と、第2状態と、第3状態との間で切り替え可能である。第1状態は、ロッド側室86からヘッド側室88への作動油の流れを許容しつつ、ロッド側室86から油タンク48への作動油の流れを遮断する。第2状態は、ロッド側室86からヘッド側室88への作動油の流れを許容しつつ、ロッド側室86から油タンク48への作動油の流れを許容する。第3状態は、ロッド側室86からヘッド側室88及び油タンク48へのいずれへの作動油の流れも遮断する。
【0069】
図3は、速度制御用バルブ56が第3状態にある場合を示す。第3状態では、スプール56cが第1のバルブスリーブ56aの内部と第7の流路70gとの間に設けられたポートを塞ぐことにより、ロッド側室86からヘッド側室88への作動油の流れが遮断される。また、第3状態では、スプール56cが第2のバルブスリーブ56bの内部と油タンク48へ繋がる第3の流路70cとの間に設けられたポートを塞ぐことにより、ロッド側室86から油タンク48への作動油の流れが遮断される。
【0070】
第3状態では、射出ピストン82は停止している。
【0071】
図4は、速度制御用バルブ56が第1状態にある場合を示す。第1状態では、スプール56cが第3状態の位置から右方向に移動する。
【0072】
スプール56cが右方向に移動することで、第1のバルブスリーブ56aの内部と第7の流路70gとの間に設けられたポートが開き、ロッド側室86からヘッド側室88への作動油の流れが許容される。一方、第1状態では、スプール56cが第2のバルブスリーブ56bの内部と油タンク48へ繋がる第3の流路70cとの間に設けられたポートは塞がれたままであり、ロッド側室86から油タンク48への作動油の流れは遮断される。なお、図4中の黒矢印は作動用の流れを示す。
【0073】
第1状態では、ロッド側室86からヘッド側室88への作動油の流れが許容され、ロッド側室86から作動油が排出される。したがって、射出ピストン82が前進する。
【0074】
図5は、速度制御用バルブ56が第2状態にある場合を示す。第2状態では、スプール56cが第1状態の位置から更に右方向に移動する。
【0075】
第1のバルブスリーブ56aの内部と第7の流路70gとの間に設けられたポートが開いた状態が保たれ、ロッド側室86からヘッド側室88への作動油の流れが許容される。また、第2状態では、スプール56cが第2のバルブスリーブ56bの内部と油タンク48へ繋がる第3の流路70cとの間に設けられたポートが開き、ロッド側室86から油タンク48への作動油の流れが許容される。なお、図5中の黒矢印は作動用の流れを示す。
【0076】
第1状態では、ロッド側室86からヘッド側室88への作動油の流れが許容され、かつ、ロッド側室86から油タンク48への作動油の流れが許容されることで、ロッド側室86から作動油が排出される。したがって、射出ピストン82が更に前進する。
【0077】
速度制御用バルブ56は、サーボバルブの一例である。速度制御用バルブ56は、例えば、速度制御用バルブ56に内蔵されるサーボアンプによって制御される。
【0078】
速度制御用バルブ56は、制御装置32から伝達されるサーボ指令値に基づき制御される。サーボ指令値は、例えば、サーボアンプに入力される電圧値である。サーボ指令値に基づき速度制御用バルブ56の開度が制御される。サーボ指令値に基づき速度制御用バルブ56を流れる作動油の流量が制御される。
【0079】
速度制御用バルブ56が第1状態にある場合に速度制御用バルブ56を通過する作動油の流量のサーボ指令値に対する変化率は、例えば、速度制御用バルブ56が第2状態にある場合に速度制御用バルブ56を通過する作動油の流量のサーボ指令値に対する変化率よりも小さい。
【0080】
方向切替バルブ58は、第6の流路70fと第4の流路70dとの間、及び、第6の流路70fと第5の流路70eとの間に設けられる。方向切替バルブ58は、ヘッド側室88と油圧ポンプ46との間、及び、ロッド側室86と油圧ポンプ46との間に設けられる。
【0081】
方向切替バルブ58は、油圧ポンプ46から第6の流路70fを通って供給される作動油の流路を、第4の流路70dと第5の流路70eとの間で切り替える機能を有する。方向切替バルブ58は、油圧ポンプ46から供給される作動油の供給先を、ヘッド側室88とロッド側室86との間で切り替える機能を有する。
【0082】
例えば、作動油をヘッド側室88に供給することで、射出ピストン82が前進する。また、例えば、作動油をロッド側室86に供給することで、射出ピストン82が後退する。
【0083】
方向切替バルブ58の種類は、油圧ポンプ46から供給される作動油の流れる方向を切り替えることが可能であれば、特に限定されるものではない。方向切替バルブ58は、例えば、電磁石を用いてスプールを動かす電磁切替弁である。
【0084】
第1の開閉バルブ60は、第4の流路70dに設けられる。第1の開閉バルブ60は、ヘッド側室88と方向切替バルブ58との間に設けられる。第1の開閉バルブ60は、方向切替バルブ58とヘッド側室88との間の作動油の流れを許容又は遮断する。
【0085】
第1の開閉バルブ60が開状態の時に、方向切替バルブ58とヘッド側室88との間の作動油の流れが許容される。第1の開閉バルブ60が閉状態の時に、方向切替バルブ58とヘッド側室88との間の作動油の流れが遮断される。
【0086】
第1の開閉バルブ60の種類は、作動油の流れを許容及び遮断することが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0087】
第2の開閉バルブ62は、第5の流路70eに設けられる。第2の開閉バルブ62は、ロッド側室86と方向切替バルブ58との間に設けられる。第2の開閉バルブ62は、方向切替バルブ58とロッド側室86との間の作動油の流れを許容又は遮断する。
【0088】
第2の開閉バルブ62が開状態の時に、方向切替バルブ58とロッド側室86との間の作動油の流れが許容される。第2の開閉バルブ62が閉状態の時に、方向切替バルブ58とロッド側室86との間の作動油の流れが遮断される。
【0089】
第2の開閉バルブ62の種類は、作動油の流れを許容及び遮断することが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0090】
充填補充用バルブ64は、第1の流路70aに設けられる。充填補充用バルブ64は、アキュムレータ50と油圧ポンプ46との間に設けられる。充填補充用バルブ64は、ヘッド側室88と油圧ポンプ46との間に設けられる。
【0091】
充填補充用バルブ64は、例えば、アキュムレータ50と油圧ポンプ46との間の作動油の流れを許容又は遮断する。充填補充用バルブ64は、例えば、ヘッド側室88と油圧ポンプ46との間の作動油の流れを許容又は遮断する。
【0092】
充填補充用バルブ64の種類は、作動油の流れを許容及び遮断することが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0093】
変位センサ52は、ロッド80の変位を測定する機能を有する。変位センサ52は、ロッド80に固定されるプランジャ33の変位を間接的に測定する機能を有する。変位センサ52は、センサの一例である。
【0094】
変位センサ52は、例えば、光学式又は磁気式のリニアエンコーダである。変位センサ52で測定されるロッド80の変位から、ロッド80の速度を算出することが可能である。変位センサ52で測定されるロッド80の変位から、ロッド80に固定されるプランジャ33の射出速度を算出することが可能である。
【0095】
また、変位センサ52で測定されるロッド80の変位から、スリーブ31の中のプランジャ33の位置を算出することが可能である。変位センサ52で測定されるロッド80の変位から、スリーブ31の中のプランジャチップ33aの位置を算出することが可能である。
【0096】
圧力センサ53は、ヘッド側室88の中の作動油の圧力を測定する機能を有する。
【0097】
図6は、第1の実施形態の射出装置のサーボ指令値と射出速度の関係の一例を示す図である。図6は、速度制御用バルブ56に対するサーボ指令値と射出速度の相関関数のグラフである。
【0098】
図6に示すように、射出装置14におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数は、第1の大変化率領域、第2の大変化率領域、及び小変化率領域を含む。小変化率領域は、第1の大変化率領域と第2の大変化率領域との間に存在する。小変化率領域の射出速度のサーボ指令値に対する変化率は、第1の大変化率領域の射出速度のサーボ指令値に対する変化率及び第2の大変化率領域の射出速度のサーボ指令値に対する変化率よりも小さい。第2の高変化率領域の射出速度のサーボ指令値に対する平均変化率は、例えば、低変化率領域の射出速度のサーボ指令値に対する平均変化率の5倍以上である。
【0099】
図6に示すように、射出装置14におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数は、非線形である。図6に示すように、射出装置14におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数は、例えば、変曲点IPを有する曲線である。
【0100】
射出装置14におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数は、第1の大変化率領域から小変化率領域へ変化する第1の変化点P1と、小変化率領域から第2の大変化率領域へ変化する第2の変化点P2を有する。
【0101】
なお、第1の変化点P1の位置は、例えば、第1の大変化率領域の接線と小変化率領域の接線との交点座標を基準に決定することができる。また、第2の変化点P2の位置は、例えば、小変化率領域の接線と第2の大変化率領域の接線との交点座標を基準に決定することができる。
【0102】
第1の変化点P1におけるサーボ指令値は第1のサーボ指令値E1である。また、第1の変化点P1における射出速度は、第1の射出速度V1である。
【0103】
第2の変化点P2におけるサーボ指令値は第2のサーボ指令値E2である。また、第2の変化点P2における射出速度は、第2の射出速度V2である。
【0104】
なお、図6に示すような、速度制御用バルブ56に対するサーボ指令値と射出速度の相関関数は、例えば、射出装置14で空打ちを行うことで取得することが可能である。
【0105】
押出装置12は、製造されたダイカスト品を金型18から押し出す機能を有する。
【0106】
スリーブ31は、金型18の空洞Caに通じる。スリーブ31は、例えば、固定金型18aに連結された筒状の部材である。スリーブ31は、例えば、円筒形状である。
【0107】
プランジャ33は、スリーブ31の中を摺動する。プランジャ33は、プランジャチップ33aとプランジャロッド33bを含む。プランジャロッド33bの先端に固定されたプランジャチップ33aが、スリーブ31の中を前後方向に摺動する。スリーブ31の中をプランジャチップ33aが前方へ摺動することにより、スリーブ31の中の溶湯が金型18の中に押し出される。
【0108】
制御ユニット20は、制御装置32、ヒューマンマシンインターフェース34(HMI34)を含む。制御ユニット20は、型締装置10、押出装置12、及び、射出装置14を用いたダイカストマシン100の成形動作を制御する機能を有する。
【0109】
HMI34は、例えば、制御装置32の表示装置として機能する。HMI34は、例えば、ダイカストマシン100の成形条件、動作状況等を画面に表示する。HMI34は、例えば、目標として設定された射出速度と時間の関係、又は、実測された射出速度と時間の関係を表示する。
【0110】
HMI34は、例えば、制御装置32の入力装置として機能する。HMI34は、入力装置の一例である。HMI34は、例えば、オペレータの入力操作を受け付ける。オペレータは、HMI34を用いて、ダイカストマシン100の成形条件の設定が可能となる。HMI34は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイを用いたタッチパネルである。
【0111】
図7は、第1の実施形態の入力装置に入力される射出条件の一例を示す図である。オペレータは、例えば、HMI34に低速区間、加速区間、及び高速区間を含む射出装置14の射出条件を入力する。図7に示す射出条件は、第1の実施形態の射出動作の設定目標の一例である。
【0112】
射出条件において、加速区間の初期速度はVo、第1の射出速度はV1、第2の射出速度はV2、加速区間の終期速度はV3である。低速区間の射出速度が一定の場合には、低速区間の射出速度はV0となる。また、高速区間の射出速度が一定の場合には、高速区間の射出速度はV3となる。
【0113】
加速区間の初期速度V0は、例えば、0.05m/sec以上0.4m/sec以下である。加速区間の終期速度は1m/sec以上10m/sec以下である。
【0114】
加速区間の開始時間はt0、加速区間の終了時間はt3、加速区間の総加速時間はt=t3-t0である。加速区間の中で、射出速度が、第1の射出速度V1以上第2の射出速度V2以下の区間を部分区間と称する。
【0115】
制御装置32は、各種の演算を行って、ダイカストマシン100の各部に制御指令を出力する機能を有する。制御装置32は、例えば、成形条件等を記憶する機能を有する。
【0116】
制御装置32は、例えば、射出装置14の動作を制御する。制御装置32は、例えば、射出装置14の速度制御用バルブ56の動作を制御する。
【0117】
制御装置32は、例えば、制御回路である。制御装置32は、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。制御装置32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリ、及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0118】
図8は、第1の実施形態のダイカストマシンの一部のブロック図である。図8は、HMI34、制御装置32、射出シリンダ44、及び変位センサ52を含むブロック図である。
【0119】
制御装置32は、記憶部32a、比較部32b、演算部32c、及び指令部32dを含む。
【0120】
記憶部32aは、例えば、HMI34から入力された、低速区間、加速区間、及び高速区間を含む射出装置14の射出条件を記憶する。また、記憶部32aは、例えば、あらかじめ取得されている、射出装置14におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数を記憶する。また、記憶部32aは、例えば、あらかじめ定められている所定の閾値加速度を記憶する。
【0121】
図9は、第1の実施形態のサーボ指令値と射出速度の相関関数の一例を示す図である。加速区間の初期速度V0、第1の射出速度V1、第2の射出速度V2、及び終期速度V3のそれぞれに対応するサーボ指令値が、例えば、加速区間開始時サーボ指令値E0、第1のサーボ指令値E1、第2のサーボ指令値E2、及び加速区間終了時サーボ指令値E3である。
【0122】
記憶部32aは、例えば、記憶デバイスである。記憶部32aは、例えば、ハードディスク又は半導体メモリである。
【0123】
比較部32bは、記憶部32aに記憶された射出条件の加速区間の中で第1の射出速度V1以上第2の射出速度V2以下の部分区間の射出加速度と所定の閾値加速度との大小関係を比較する。
【0124】
部分区間の射出加速度は、記憶部32aに記憶された射出条件から算出することが可能である。
【0125】
所定の閾値加速度は、例えば、射出装置14の射出特性に基づき定められる値である。所定の閾値加速度は、例えば、速度制御用バルブ56の特性に基づき定められる値である。所定の閾値加速度は、例えば、15m/s以上30m/s以下である。
【0126】
比較部32bは、例えば、比較回路である。比較部32bは、例えば、電子回路である。比較部32bは、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。比較部32bは、例えば、CPU、半導体メモリ、及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0127】
演算部32cは、比較部32bの比較結果に基づき、速度制御用バルブ56に与えられるサーボ指令を演算する。サーボ指令は、例えば、サーボ指令値の時間変化である。
【0128】
演算部32cは、加速区間開始時サーボ指令値E0の指令時間t0から第1のサーボ指令値E1の指令時間t1までの初期所要時間T0、第1のサーボ指令値E1の指令時間t1から第2のサーボ指令値E2の指令時間t2までの部分区間所要時間T1、及び、第2のサーボ指令値E2の指令時間から加速区間終了時サーボ指令値E3の指令時間t3までの終期所要時間T2を決定する。
【0129】
初期所要時間T0、総加速時間をt、初期速度をVo、第1の射出速度をV1、第2の射出速度をV2、終期速度をV3とした場合に、初期所要時間T0は、例えば、下記式2で算出される値とする。
T0=t×(V1-V0)/(V3-V0)・・・(式2)
【0130】
部分区間所要時間T1は、比較部32bによる比較結果に基づき決定方法が変更される。部分区間所要時間T1の決定において、比較部32bによる比較結果に基づき場合分けが行われる。
【0131】
部分区間所要時間T1は、比較部32bによる比較結果が、射出加速度が所定の閾値加速度より小さい場合には、比例式から算出される第1の値と決定する。比例式の比例係数は、第2の射出速度V2と第1の射出速度V1の差分を加速区間の終期速度V3と加速区間の初期速度V0の差分で除した値である。
【0132】
部分区間所要時間をT1、総加速時間をt、初期速度をVo、第1の射出速度をV1、第2の射出速度をV2、終期速度をV3とした場合に、上記比例式は、例えば、下記式1である。部分区間所要時間T1は下記式1で算出される第1の値である。
T1=t×(V2-V1)/(V3-V0)・・・(式1)
【0133】
比較部32bによる比較結果が、射出条件の射出加速度が所定の閾値加速度以上の場合には、部分区間所要時間T1を所定の固定値である第2の値と決定する。第2の値は、例えば、第1の値よりも小さい値である。第2の値が第1の値よりも小さくなる射出条件が必ず存在する。
【0134】
なお、仮に、比較部32bによる比較結果が、射出条件の射出加速度が所定の閾値加速度以下の場合において、第1の値が第2の値より小さい場合には、部分区間所要時間T1を、第2の値と決定する。比較部32bによる比較結果が、射出条件の射出加速度が所定の閾値加速度以下の場合、部分区間所要時間をT1は第1の値と第2の値の大きい方の値となる。
【0135】
第2の値は、例えば、射出装置14の特性から設定可能な最短時間である。第2の値は、例えば、0.1ms(ミリ秒)以上1ms(ミリ秒)以下である。
【0136】
終期所要時間T2は、例えば、下記式3で算出される値と決定する。
T2=t-(T0+T1)・・・(式3)
【0137】
図10及び図11は、第1の実施形態の演算部で生成されるサーボ指令の一例を示す図である。図10及び図11の横軸は時間、縦軸はサーボ指令値である。図10は、比較部32bによる比較結果が、射出加速度が所定の閾値加速度より小さい場合である。図11は、比較部32bによる比較結果が、射出加速度が所定の閾値加速度以上の場合である。図11には比較のために、図10のサーボ指令を点線で表示している。
【0138】
決定された初期所要時間T0、部分区間所要時間T1、及び、終期所要時間T2に基づき、演算部32cはサーボ指令を生成する。図10に示すように、演算部32cで生成されるサーボ指令は、加速区間の中で、部分区間のサーボ指令値の時間変化率が他の区間に比べて大きくなる。
【0139】
演算部32cは、例えば、演算回路である。演算部32cは、例えば、電子回路である。演算部32cは、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。演算部32cは、例えば、CPU、半導体メモリ、及び半導体メモリに記憶された制御プログラムを含む。
【0140】
指令部32dは、例えば、射出装置14にサーボ指令を出力する機能を有する。例えば、指令部32dにより、速度制御用バルブ56を制御するサーボアンプにサーボ指令が出力される。
【0141】
指令部32dは、例えば、指令回路である。指令部32dは、例えば、電子回路である。
【0142】
次に、ダイカストマシン100の成形動作、主に射出装置14の動作について説明する。
【0143】
ダイカストマシン100の成形動作の開始前に、速度制御用バルブ56に対するサーボ指令値と射出速度の相関関数を取得する。速度制御用バルブ56に対するサーボ指令値と射出速度の相関関数は、例えば、射出装置14で空打ちを行うことで取得する。取得された、サーボ指令値と射出速度の相関関数は、制御装置32の記憶部32aに記憶される。
【0144】
射出装置14におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数は、第1の大変化率領域、第2の大変化率領域、及び小変化率領域を含む。射出装置14におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数は、例えば、変曲点IPを有する曲線である。
【0145】
次に、成形動作を行うための、射出装置14の射出条件を、例えば、オペレータがHMI34を用いて入力する。入力される射出条件は、低速区間、加速区間、及び高速区間を含む。入力された射出条件は、制御装置32の記憶部32aに記憶される。
【0146】
また、例えば、オペレータがHMI34を用いて所定の閾値加速度を入力する。入力される閾値加速度は、制御装置32の記憶部32aに記憶される。
【0147】
次に、記憶部32aに記憶されたサーボ指令値と射出速度の相関関数、射出装置14の射出条件、及び所定の閾値加速度に基づき、サーボ指令を生成する。
【0148】
まず、比較部32bにおいて、射出条件の加速区間の中で第1の射出速度V1以上第2の射出速度V2以下の部分区間の射出加速度と所定の閾値加速度との大小関係を比較する。
【0149】
次に、演算部32cにおいて、比較部32bの比較結果に基づき、速度制御用バルブ56に与えられるサーボ指令を演算により生成する。
【0150】
演算部32cは、加速区間開始時サーボ指令値E0の指令時間t0から第1のサーボ指令値E1の指令時間t1までの初期所要時間T0、第1のサーボ指令値E1の指令時間t1から第2のサーボ指令値E2の指令時間t2までの部分区間所要時間T1、及び、第2のサーボ指令値E2の指令時間から加速区間終了時サーボ指令値E3の指令時間t3までの終期所要時間T2を決定する。
【0151】
初期所要時間T0は、例えば、下記式2で算出される値とする。
T0=t×(V1-V0)/(V3-V0)・・・(式2)
【0152】
部分区間所要時間T1は、比較部32bによる比較結果が、射出条件の射出加速度が所定の閾値加速度より小さい場合には、部分区間所要時間をT1、総加速時間をt、初期速度をVo、第1の射出速度をV1、第2の射出速度をV2、終期速度をV3とした場合に、下記式1で算出される第1の値である。
T1=t×(V2-V1)/(V3-V0)・・・(式1)
【0153】
比較部32bによる比較結果が、射出条件の射出加速度が所定の閾値加速度以上の場合には、部分区間所要時間T1を所定の固定値である第2の値と決定する。なお、仮に、比較部32bによる比較結果が、射出条件の射出加速度が所定の閾値加速度以下の場合において、第1の値が第2の値より小さい場合には、部分区間所要時間T1を、第2の値と決定する。
【0154】
終期所要時間T2は、例えば、下記式3で算出される値と決定する。
T2=t-(T0+T1)・・・(式3)
【0155】
決定された初期所要時間T0、部分区間所要時間T1、及び、終期所要時間T2に基づき、演算部32cはサーボ指令を生成する。
【0156】
次に、可動ダイプレート26を型閉方向に移動させ、可動金型18bと固定金型18aを接触させる。次に、型締装置10を用いて、金型18の型締めを行う。
【0157】
次に、射出装置14を用いて、金型18の空洞Caに溶湯を供給し、溶湯を加圧する。射出装置14は、スリーブ31の中にプランジャ33を摺動させ、金型18に溶湯を供給する。
【0158】
射出装置14の射出速度は、制御装置32から速度制御用バルブ56に出力されるサーボ指令によって制御される。サーボ指令は、制御装置32の指令部32dから出力される。制御装置32の指令部32dから出力されるサーボ指令は、演算部32cで生成されたサーボ指令である。
【0159】
射出動作の低速区間において、例えば、速度制御用バルブ56は図4に示す第1状態にある。すなわち、ロッド側室86から排出された作動油は、すべてヘッド側室88へ戻る。
【0160】
射出動作の高速区間において、例えば、速度制御用バルブ56は図5に示す第2状態にある。すなわち、ロッド側室86から排出された作動油の一部はヘッド側室88へ戻り、別の一部は油タンク48へ流れる。
【0161】
射出動作の加速区間において、例えば、速度制御用バルブ56は図4に示す第1状態から、図5に示す第2状態に遷移する。
【0162】
なお、低速区間、加速区間、及び高速区間のいずれの区間においても、変位センサ52の測定値の基づく、サーボ指令の補正は行わない。言い換えれば、低速区間、加速区間、及び高速区間のいずれの区間においても、変位センサ52の測定値の基づく、射出速度の補正は行わない。言い換えれば、低速区間、加速区間、及び高速区間のいずれの区間においても、変位センサ52の測定値の基づくフィードバック制御を行わない。言い換えれば、低速区間、加速区間、及び高速区間のいずれの区間においても、いわゆるオープン制御を行う。
【0163】
次に、可動ダイプレート26を型開方向に移動させ、可動金型18bと固定金型18aを離隔させる。
【0164】
次に、押出装置12を用いて、製造されたダイカスト品を金型18から押し出す。
【0165】
以上のダイカストマシン100の成形動作により、ダイカスト品が製造される。
【0166】
次に、第1の実施形態のダイカストマシンの作用及び効果について説明する。
【0167】
ダイカストマシンの射出速度の制御は、例えば、ロッド側室から排出される作動油の流量を制御することで行われる。例えば、ロッド側室から排出される作動油の流路にサーボバルブを設け、サーボバルブによってロッド側室から排出される作動油の流量を制御する。
【0168】
ダイカスト品に不良が発生することを抑制する観点から、射出速度の制御の精度の向上が望まれる。特に、射出装置におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数が、非線形の場合、射出速度の制御が困難になる。したがって、サーボ指令値と射出速度の相関関数が非線形の場合の射出速度の制御の精度の向上が、特に望まれる。
【0169】
図12は、第1の比較例の演算部で生成されるサーボ指令の一例を示す図である。図12の横軸は時間、縦軸はサーボ指令値である。図12は、第1の実施形態の図10及び図11に対応する図である。
【0170】
第1の比較例のダイカストマシンは、制御装置32が比較部32bを有しない点、及び、演算部32cの機能が異なる以外は第1の実施形態のダイカストマシン100と同様の構成を備える。したがって、第1の比較例において、サーボ指令値と射出速度の相関関数は、第1の実施形態の図9に示すと同様、非線形である。
【0171】
第1の比較例のサーボ指令は、図12に示すように、加速区間の間で、時間に対してサーボ指令値を線形に変化させる。なお、第1の比較例のダイカストマシンに入力される射出条件は、第1の実施形態の図7に示す射出条件と同様である。言い換えれば、第1の比較例の射出動作の設定目標は、第1の実施形態の射出動作の設定目標と同様である。
【0172】
図13は、第1の比較例の射出装置の射出速度の実測値を示す図である。横軸は時間、縦軸は射出速度である。点線が射出動作の設定目標、実線が射出速度の実測値である。
【0173】
図13に示すように、射出速度の実測値では、第1の射出速度V1から第2の射出速度V2の間の区間の近傍で、射出速度に遅れが生じる。射出速度に遅れが生じるのは、サーボ指令値と射出速度の相関関数が図9のように非線形であり、特に、第1の射出速度V1から第2の射出速度V2の間の区間で、サーボ指令値に対する射出速度の変化率が小さくなるからであると考えられる。
【0174】
図14は、第2の比較例の演算部で生成されるサーボ指令の一例を示す図である。図14の横軸は時間、縦軸はサーボ指令値である。図14は、第1の実施形態の図10及び図11に対応する図である。
【0175】
第2の比較例のダイカストマシンは、制御装置が比較部32bを有しない点、及び、演算部32cの機能が異なる以外は第1の実施形態のダイカストマシンと同様の構成を備える。したがって、第2の比較例において、サーボ指令値と射出速度の相関関数は、第1の実施形態の図9に示すと同様、非線形である。
【0176】
第2の比較例の制御装置は、部分区間所要時間T1の決定に際し、比較部32bによる比較結果に基づく場合分けが行われない点で、第1の実施形態の制御装置32と異なる。
【0177】
第2の比較例の演算部では、部分区間所要時間をT1、総加速時間をt、初期速度をVo、第1の射出速度をV1、第2の射出速度をV2、終期速度をV3とした場合に、部分区間所要時間T1は下記式1で算出される値である。
T1=t×(V2-V1)/(V3-V0)・・・(式1)
【0178】
第2の比較例の演算部では、部分区間所要時間T1を算出する際に、(式1)を用いることで、図9に示す第1の変化点P1と第2の変化点P2との間の小変化領域の射出速度に対する影響を相殺することを意図している。
【0179】
図15は、第2の比較例の射出装置の射出速度の実測値を示す図である。横軸は時間、縦軸は射出速度である。射出条件の射出加速度が小さい場合を実線で示し、射出条件の射出加速度が大きい場合を点線で示す。
【0180】
図15に示すように、第2の比較例の射出装置では、射出条件の射出加速度が小さい場合は、意図通りに射出動作が図7に示す設定目標と同等となる。しかし、射出条件の射出加速度が大きい場合は、図15に示すように、第1の射出速度V1から第2の射出速度V2の間の区間の近傍で、射出速度に遅れが生じる。
【0181】
第1の射出速度V1から第2の射出速度V2の間の区間の近傍で、射出速度に遅れが生じるのは、第1の射出速度V1から第2の射出速度V2の間の区間で、サーボ指令値に対する射出速度の応答時間が遅延するためであると考えられる。サーボ指令値に対する射出速度の応答時間の遅延は、特に、射出加速度が大きい場合に顕在化しやすいと考えられる。サーボ指令値に対する射出速度の応答時間の遅延の原因は、例えば、速度制御用バルブの応答時間の遅延であると考えられる。
【0182】
第1の実施形態のダイカストマシン100は、部分区間所要時間T1の決定に際し、比較部32bによる比較結果に基づく場合分けが行われる。
【0183】
第1の実施形態のダイカストマシン100は、図10に示すように、射出条件の射出加速度が所定の閾値加速度より小さい場合は、第2の比較例と同様、部分区間所要時間T1を(式1)から算出される第1の値とする。
【0184】
一方、図11に示すように、射出条件の射出加速度が所定の閾値加速度以上の場合は、部分区間所要時間T1を所定の固定値である第2の値と決定する。図11では、第2の値は1msである。
【0185】
図16は、第1の実施形態の射出装置の射出速度の実測値を示す図である。横軸は時間、縦軸は射出速度である。図16に示すように、第1の実施形態の射出装置では、射出条件の射出加速度が小さい場合であっても大きい場合であっても、射出動作が図7に示す設定目標と同等となる。
【0186】
射出加速度が大きい場合、部分区間所要時間T1を所定の固定値である第2の値とすることで、図11に示すように、部分区間でのサーボ指令値の時間に対する変化率が第1の値の場合よりも大きくなる。サーボ指令値の時間に対する変化率が大きくなることで、サーボ指令値に対する射出速度の応答時間の遅延が補償されると考えられる。
【0187】
第1の実施形態のダイカストマシン100によれば、部分区間所要時間T1を、サーボ指令値の時間変化率が他の区間よりも大きくなるように設定する。そして、射出加速度が所定の閾値加速度以上の場合は、更にサーボ指令値の時間変化率が大きくなるように、部分区間所要時間T1を設定する。これにより、射出動作が設定目標と同等となり、射出速度の制御の精度を向上できる。
【0188】
射出速度の制御の精度を向上する観点から、第2の値は1ms(ミリ秒)以下であることが好ましい。
【0189】
また、射出速度の制御の精度を向上する観点から、所定の閾値加速度は15m/s以上であることが好ましい。
【0190】
また、射出装置14はランアラウンド回路を含むことが好ましい。射出装置14がランアラウンド回路を含む場合に、第1の実施形態の効果がより顕在化する。
【0191】
また、射出装置14がランアラウンド回路を含むことで、成形動作に必要な作動油の量及び消費電力を低減でき、ダイカストマシン100による環境負荷が低減できる。
【0192】
また、速度制御用バルブ56は、ロッド側室86からヘッド側室88への作動油の流れを許容しつつ、ロッド側室86から油タンク48への作動油の流れを遮断する第1状態と、ロッド側室86からヘッド側室88への作動油の流れを許容しつつ、ロッド側室86から油タンク48への作動油の流れを許容する第2状態との間で切り替え可能であることが好ましい。速度制御用バルブ56が上記構成を備えることで、第1の実施形態の効果がより顕在化する。
【0193】
また、速度制御用バルブ56が第1状態にある場合に速度制御用バルブ56を通過する作動油の流量のサーボ指令値に対する変化率は、速度制御用バルブ56が第2状態にある場合に速度制御用バルブ56を通過する作動油の流量のサーボ指令値に対する変化率よりも小さいことが好ましい。速度制御用バルブ56が上記構成を備えることで、第1の実施形態の効果がより顕在化する。
【0194】
また、第1状態における速度制御用バルブ56に対するサーボ指令値と射出速度の相関関数は小変化率領域を含み、第2状態における速度制御用バルブ56に対するサーボ指令値と射出速度の相関関数は第2の大変化率領域を含むことが好ましい。この構成により、第1の実施形態の効果がより顕在化する。
【0195】
また、速度制御用バルブ56に対するサーボ指令値と射出速度の相関関数の第2の大変化率領域の平均変化率は、小変化率領域の平均変化率の5倍以上であることが好ましい。この構成により、第1の実施形態の効果がより顕在化する。
【0196】
以上、第1の実施形態によれば、射出装置におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数が非線形の場合であっても、射出速度の制御の精度を向上できるダイカストマシンが実現できる。
【0197】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のダイカストマシンは、低速区間及び高速区間では、センサの測定値に基づきサーボ指令を補正するフィードバック制御を行う点で、第1の実施形態のダイカストマシンと異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0198】
図17は、第2の実施形態のダイカストマシンの一部のブロック図である。図17は、HMI34、制御装置32、射出シリンダ44、及び変位センサ52を含むブロック図である。
【0199】
制御装置32は、記憶部32a、比較部32b、演算部32c、指令部32d、及び補正部32eを含む。
【0200】
補正部32eは、例えば、変位センサ52の測定値に基づき、演算部32cで生成されるサーボ指令を補正する。補正部32eは、例えば、変位センサ52の測定値に基づき、プランジャ33の射出速度又はプランジャ33の位置の設定目標からのズレ量を補正するように、サーボ指令を補正する。
【0201】
第2の実施形態のダイカストマシンの射出装置14では、低速区間及び高速区間では、変位センサ52の測定値に基づきサーボ指令を補正するフィードバック制御を行う。一方、加速区間では第1の実施形態と同様、フィードバック制御を行なわない。加速区間では第1の実施形態と同様、オープン制御を行う。
【0202】
図18及び図19は、第2の実施形態の演算部で生成されるサーボ指令の一例を示す図である。図18及び図19の横軸は時間、縦軸はサーボ指令値である。
【0203】
例えば、低速区間でフィードバック制御が行われることにより、指令時間t0の加速区間開始時サーボ指令値が、図9の相関関係から求められるE0に対してシフトしたEaとなる場合が想定される。図18は指令時間t0のEaがE0よりも小さい場合、図19は指令時間t0のEaがE0よりも大きい場合である。
【0204】
加速区間開始時サーボ指令値がE0からEaにシフトした場合、第2の実施形態では補正部32eにより、図18及び図19に示すように、指令時間t0の加速区間開始時サーボ指令値がEaになるようにサーボ指令を補正する。
【0205】
第2の実施形態のダイカストマシンによれば、上記補正により、第1の実施形態のダイカストマシンと同様の効果が実現できる。
【0206】
以上、第2の実施形態によれば、射出装置におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数が非線形の場合であっても、射出速度の制御の精度を向上できるダイカストマシンが実現できる。
【0207】
第1及び第2の実施形態では、射出装置14におけるサーボ指令値と射出速度の相関関数が一つの小変化率領域を含む場合を例に説明したが、サーボ指令値と射出速度の相関関数は複数の小変化率領域を含んでも構わない。
【0208】
第1及び第2の実施形態では、サーボ指令値と射出速度の相関関数が変曲点IPを含む曲線の場合を例に説明したが、相関関数は、例えば、複数の直線で形成され、変曲点IPを含まない関数であっても構わない。
【0209】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。実施形態においては、ダイカストマシンなどで、本発明の説明に直接必要としない部分については記載を省略したが、必要とされる、ダイカストマシンなどに関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0210】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのダイカストマシンは、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0211】
10 型締装置
12 押出装置
14 射出装置
18 金型
18a 固定金型
18b 可動金型
20 制御ユニット
22 ベース
24 固定ダイプレート
26 可動ダイプレート
28 リンクハウジング
30 タイバー
31 スリーブ
32 制御装置
32a 記憶部
32b 比較部
32c 演算部
32d 指令部
32e 補正部
33 プランジャ
33a プランジャチップ
33b プランジャロッド
34 ヒューマンマシンインターフェース(入力装置)
44 射出シリンダ
46 油圧ポンプ
48 油タンク(タンク)
50 アキュムレータ
52 変位センサ(センサ)
53 圧力センサ
54 射出用バルブ
56 速度制御用バルブ(サーボバルブ)
56a 第1のバルブスリーブ
56b 第2のバルブスリーブ
56c スプール
58 方向切替バルブ
60 第1の開閉バルブ
62 第2の開閉バルブ
64 充填補充用バルブ
70a 第1の流路
70b 第2の流路
70c 第3の流路
70d 第4の流路
70e 第5の流路
70f 第6の流路
70g 第7の流路
80 ロッド
82 射出ピストン
84 シリンダチューブ
86 ロッド側室
88 ヘッド側室
100 ダイカストマシン
Ca 空洞
E0 加速区間開始時サーボ指令値
E1 第1のサーボ指令値
E2 第2のサーボ指令値
E3 加速区間終了時サーボ指令値
IP 変曲点
P1 第1の変化点
P2 第2の変化点
T0 初期所要時間
T1 部分区間所要時間
T2 終期所要時間
V0 初期速度
V1 第1の射出速度
V2 第2の射出速度
V3 終期速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19