(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20240626BHJP
A61B 17/17 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61B17/16
A61B17/17
(21)【出願番号】P 2022189598
(22)【出願日】2022-11-28
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】511007967
【氏名又は名称】財團法人金屬工業研究發展中心
【氏名又は名称原語表記】METAL INDUSTRIES RESEARCH & DEVELOPMENT CENTRE
【住所又は居所原語表記】1001 KAONAN HIGHWAY, KAOHSIUNG 81160,TAIWAN,R.O.C.
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100221752
【氏名又は名称】古川 雅与
(72)【発明者】
【氏名】蔡 東霖
(72)【発明者】
【氏名】曾 俊傑
(72)【発明者】
【氏名】陳 俊銘
(72)【発明者】
【氏名】王 躍鈞
(72)【発明者】
【氏名】王 珮▲ホワ▼
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-267786(JP,A)
【文献】特開2014-193364(JP,A)
【文献】特開2001-087275(JP,A)
【文献】特開2006-075618(JP,A)
【文献】特開2016-077445(JP,A)
【文献】特開2018-108223(JP,A)
【文献】特開2014-087633(JP,A)
【文献】特開2012-210418(JP,A)
【文献】特開平10-000200(JP,A)
【文献】特表2002-505906(JP,A)
【文献】特表2013-503663(JP,A)
【文献】特表2005-510284(JP,A)
【文献】特表2020-527062(JP,A)
【文献】特表2017-533780(JP,A)
【文献】特表平11-503339(JP,A)
【文献】特表2007-537835(JP,A)
【文献】特開2013-154138(JP,A)
【文献】特開2006-187633(JP,A)
【文献】特開2018-020153(JP,A)
【文献】特開2018-064932(JP,A)
【文献】特表2002-519094(JP,A)
【文献】特表2015-515342(JP,A)
【文献】特表2007-522827(JP,A)
【文献】特開平06-105852(JP,A)
【文献】特開2015-134204(JP,A)
【文献】特開2017-012756(JP,A)
【文献】特開2020-203103(JP,A)
【文献】特表2001-507590(JP,A)
【文献】特表2021-525117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16
A61B 17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
桿体と、押圧部と、二つの導引部材とを含み、
前記桿体は相対する両端に延伸する軸線を有し、前記軸線は前記桿体の一つの回転軸として形成され、
前記押圧部は前記桿体の一端に連接され、前記押圧部のもう一端は刃部を有し、前記押圧部は複数個の収容溝を有し、前記複数個の収容溝は前記押圧部の一方の表面に凹設され、前記複数個の収容溝は間隔を取って設置され、隣接する二つの収容溝の間の押圧部にはリブが形成され、前記押圧部の径方向の断面における前記リブの上端部は前記表面であり、前記押圧部の径方向の断面における各リブには案内面を有し、前記案内面は前記表面とは連接し、前記案内面は回転方向に向かって、径方向の断面において前記案内面が前記表面との連接する箇所の夾角は90°より大きく、
前記押圧部の第一端部は前記桿体の一端に連接され、前記押圧部の第二端部は前記刃部であり、前記押圧部は前記第一端部から前記第二端部に向かって径方向に漸次に縮小するように形成され、
漸次に縮小するように形成される前記押圧部の表面は前記軸線に対して1~16°に傾斜し、
前記導引部材は、作業者の手で握持するための連接柄部を有し、前記連接柄部の両端はそれぞ
れスリーブ管を有し、前記スリーブ管はそれぞれ異なる内径寸法を有し、一方の導引部材のスリーブ管の中に、他方の導引部材のスリーブ管が嵌設可能であるように、一方のスリーブ管の内径寸法と他方のスリーブ管の外形寸法がそれぞれ対応している
ことを特徴とする手術器具。
【請求項2】
先端から基端へ延びる前記各収容溝の延伸方向は前記軸線に対して1~45°の角度を有することを特徴とする請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
他に位置特定部材を含み、前記位置特定部材は軸方向変位自在に前記桿体の外表面に結合され、前記位置特定部材は位置決め部を有し、前記位置決め部は前記位置特定部材を前記桿体の所定位置に位置決めするのに用いられることを特徴とする請求項1に記載の手術器具。
【請求項4】
前記位置特定部材は環状体であり、前記位置決め部はボルトとねじ穴を有し、前記ねじ穴は前記位置特定部材の内外表面を貫通し、前記ボルトは前記桿体に当接するように前記ねじ穴に結合することができることを特徴とする請求項3に記載の手術器具。
【請求項5】
前記スリーブ管は当接端部と挿入端部を有し、前記挿入端部は前記桿体と前記押圧部が挿入するのに用いられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の手術器具。
【請求項6】
前記当接端部の端縁は複数個の突出歯または複数個の窪を有することを特徴とする請求項5に記載の手術器具。
【請求項7】
前記スリーブ管の外壁は、スリーブ管が手術中の組織から脱落することを防ぐための、径方向に突出した複数個の環状体からなる脱落防止部を有することを特徴とする請求項
5に記載の手術器具。
【請求項8】
前記脱落防止部は一方向性の傾斜面を有することを特徴とする請求項7に記載の手術器具。
【請求項9】
前記スリーブ管は当接端部と挿入端部を有し、前記挿入端部は前記桿体が挿入するのに用いられ、前記当接端部の端縁は複数個の突出歯または複数個の窪を有することを特徴とする請求項1に記載の手術器具。
【請求項10】
前記スリーブ管の外壁は、スリーブ管が手術中の組織から脱落することを防ぐための、径方向に突出した複数個の環状体からなる脱落防止部を有することを特徴とする請求項1に記載の手術器具。
【請求項11】
前記脱落防止部は一方向性の傾斜面を有することを特徴とする請求項10に記載の手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器材に関するもので、特に骨ドリル手術に用いられる手術器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨骼が外力、疾病または退化によって損傷が生じて治療する間は、損傷した骨の中に髄内釘を入れる方法を通じて骨骼の強度を高めることができ、または骨骼に対して固定を行うことによって癒合を促進することができる。一般に言えば、骨の中に髄内釘を入れる前、従来ではドリルの刃部を用いて骨の組織に対して切削を行うことにより、髄内釘のインプラント孔を作り出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、骨の組織が切削された後、骨の損傷が生じやすく、さらに骨量の減少を引き起こすことにより、骨補填の手術を余分に行うだけではなく、骨の損傷から骨壊死(Osteonecrosis)がさらに生じやすくなり、術後、骨の組織が生長するのを邪魔してしまうため、手術のリスクが高くなり、手術のコストが増えてしまうという問題点があった。
【0005】
上述した問題点に基づき、上述した従来の手術器具をさらに改善しなければならない。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、手術器具を提供し、骨の組織が損傷するのを防ぐことができる手術器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の明細書全文にわたって述べられる方向性またはその近似の用語は、例えば、「前」、「後」、「左」、「右」、「上(頂)」、「下(底)」、「内」、「外」、「側面」などは、主に添付図面上における方向を示すもので、それぞれの方向性またはその近似の用語は本発明の各実施例に対する説明と理解を補助するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0008】
本発明の明細書全文にわたって記載される部品と部材は「一つ」または「一個」の助数詞を用いるのは、ただ便宜的に用いるだけのもので、そして本発明の範囲における通常の意義を提供するものであって、本発明においては一個または少なくとも一個を含むものであると読み取るべきで、そして単一の概念も複数の情況を含むもので、明らかにその他の意味を表すものは除く。
【0009】
本発明の全文において、「結合」、「組合せ」または「組み立て」等の近似の用語は、主に連接した後でも部材を破壊せずに依然として分離できたり、または連接した後に部材を分離できない等の形態を含み、これは本技術分野で通常の知識を有するものには連接しようとする部材の材質または組み立ての需要に応じて選択できるものである。
【0010】
本発明の手術器具は、桿体と、押圧部とを含み、前記桿体は相対する両端に延伸する軸線を有し、前記軸線は前記桿体の一つの回転軸として形成され、前記押圧部は前記桿体の一端に連接され、前記押圧部のもう一端は刃部を有し、前記押圧部は複数個の収容溝を有し、前記複数個の収容溝は前記押圧部の一方の表面に凹設され、前記複数個の収容溝は間隔を取って設置され、隣接する二つの収容溝の間の押圧部にはリブが形成され、前記押圧部の径方向の断面における前記リブの上端部は前記表面であり、前記押圧部の径方向の断面における各リブには案内面を有し、前記案内面は前記表面とは連接し、前記案内面は回転方向に向かって径方向の断面において前記案内面が前記表面との連接する箇所の夾角は90°より大きい。
【0011】
これにより、本発明の手術器具は、前記押圧部は複数個の収容溝を有することにより、隣接する二つの収容溝の間の前記押圧部にはリブが形成され、そして径方向の断面における前記リブの上端部には前記表面が形成され、前記案内面と前記表面が連接する部位には鈍角が形成されるため、前記リブは骨組織の内壁に対して切削を引き起こすことなく、そして前記押圧部が骨骼の中に貫入した後、前記刃部が骨骼の中に貫入して生じた骨くずは前記収容溝に進入した後、前記リブ上端部の表面まで導引され、さらに骨組織の内壁の方向に向かって押圧されるため、骨くずと骨組織の内壁は押圧によって共に緻密層を形成して強靭な骨組織を形成することができ、さらに骨組織の流失を減らし、骨質の安定性を増やすことができ、そして術後の回復に役立つことができるため、骨粗鬆症患者の手術成功率を高めることができる。
【0012】
また、前記各収容溝の延伸方向は前記軸線に対する角度は1~45°である。このように、骨くずが前記各収容溝に進入した後、前記骨くずは押圧されて骨組織の内壁と奥に向かって移動することができる効果を有する。
【0013】
また、前記押圧部の第一端部は前記桿体の一端に連接され、前記押圧部の第二端部は前記刃部であり、前記押圧部は前記第一端部から前記第二端部に向かって径方向に漸次に縮小するように形成される。このように、前記押圧部が骨骼の中に貫入して穴拡張に役立つことができる効果を有する。
【0014】
また、漸次に縮小するように形成される前記押圧部の表面は前記軸線に対して1~16°に傾斜する。このように、前記押圧部の穴開けの能力を高めることができる効果を有する。
【0015】
本発明の手術器具は、他に位置特定部材を含み、前記位置特定部材は軸方向変位自在に前記桿体の外表面に結合され、前記位置特定部材は位置決め部を有し、前記位置決め部は前記位置特定部材を前記桿体の所定位置に位置決めするのに用いられる。このように、作業者は前記位置特定部材が皮膚または前記骨骼表面に接近したり当接したりすることにより、前記押圧部の貫入の深さを知ることができる効果を有する。
【0016】
また、前記位置特定部材は環状体であり、前記位置決め部はボルトとねじ穴を有し、前記ねじ穴は前記位置特定部材の内外表面を貫通し、前記ボルトは前記桿体に当接するように前記ねじ穴に結合することができる。このように、前記位置特定部材は前記桿体における所定位置に位置決めされることができるため、前記押圧部が骨骼の中に貫入する予定の深さを設定する効果を有する。
【0017】
前記手術器具は他にスリーブ管を含み、前記スリーブ管は当接端部と挿入端部を有し、前記挿入端部は前記桿体と前記押圧部が挿入するのに用いられる。このように、前記スリーブ管を所定の穴開けの位置に位置決めすることができ、そして前記桿体が進入するための通路を形成することができるため、作業者にとって穴開けが簡単になる効果を有する。
【0018】
また、前記当接端部の端縁は複数個の係止部を有し、前記複数個の係止部は複数個の突出歯または複数個の窪である。このように、前記当接端部は回転方向における抵抗力を形成することができるため、前記スリーブ管が手術過程において回転や変位によって穴開けに誤差が生じるのを避ける効果を有する。
【0019】
また、前記スリーブ管の外壁は脱落防止部を有し、前記脱落防止部は径方向に突出した複数個の環状体である。このように、前記脱落防止部は前記スリーブ管において軸方向で生じる抵抗力が微小になることにより、前記スリーブ管が手術過程において組織の中から脱出するのを避けることができるため、前記穴開けの手術をスムースに行うことができる効果を有する。
【0020】
また、前記脱落防止部は一方向性の傾斜面を有する。このように、前記脱落防止部によって前記導引部材を簡単に皮膚または低侵襲性傷口の中に置き入れることができ、さらに術後において作業者は前記導引部材を前記皮膚または低侵襲性傷口の中から簡単に取り出すことができる効果を有する。
【0021】
前記手術器具はさらに少なくとも一つの導引部材を含み、前記少なくとも一つの導引部材は連接柄部を有し、前記連接柄部の少なくとも一端はスリーブ管を有する。このように、前記連接柄部は作業者に簡単に握持されることができるため、使用上の利便性を高めることができる効果を有する。
【0022】
また、前記連接柄部の両端はそれぞれ前記スリーブ管を有し、前記スリーブ管はそれぞれ異なる内径寸法を有する。このように、前記導引部材は二種類の外径寸法の異なる桿体に合わせて使用することにより、手術器具の数を減らすことができるため、手術の流れ過程を簡単かつスムースに行うことができる効果を有する。
【0023】
また、前記導引部材は二つであり、その内の一つの導引部材のスリーブ管の内径寸法はもう一つの導引部材のスリーブ管の外径寸法に対応するか、または少し大きい。このように、その内の一つの導引部材のスリーブ管をもう一つの導引部材のスリーブ管の中に嵌設することができるため、二種類の外径寸法が異なる桿体に合わせて使用することにより、段階的な穴拡張の手術を簡単かつスムースに行うことができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る第一実施例の分解斜視図である。
【
図3】本発明に係る第一実施例を用いて穴開けを行う状態図である。
【
図4】本発明に係る第二実施例の分解斜視図である。
【
図5】本発明に係る第二実施例を用いて穴開けを行う状態図である。
【
図6】本発明に係る第三実施例の分解斜視図である。
【
図7】本発明に係る第三実施例の使用状況の断面図である。
【
図8】本発明に係る第四実施例の分解斜視図である。
【
図9】本発明に係る第四実施例の使用例の斜視図である。
【
図10】本発明に係る第四実施例の使用状況の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の上記およびその他の目的、特徴と利点をさらに明らかに且つ分かり易くするべく、下記のとおり本発明の実施例をもって、さらに図面を参照して詳しく説明する。その他に、異なる図面において同じ符号で示すものは同じものと見なし、その説明を省く。
【0026】
図1に示されるように、本発明の手術器具の第一実施例において、手術器具は桿体1と押圧部2を含み、前記押圧部2は前記桿体1の一端に位置するように形成される。
【0027】
前記桿体1は所定剛性を有する材質によって製造されるため、前記桿体1は充分な強度を有して駆動部材によって回転するように駆動されることができる。前記桿体1はSUS420の医療級のステンレス材質からなるため、人体の組織に拒否反応またはアレルギー反応が生じるのを避けることができ、前記桿体1の外表面は炭化クロムのメッキ層を有するため、前記桿体1は比較的よい耐腐食性と磨耗性の性質を有することができる。前記桿体1は相対する両端部に延伸する軸線を有し、前記桿体1が前記駆動部材によって駆動された時、前記桿体は前記軸線Lを軸心として回転することができる。
【0028】
図1、3に示されるように、前記押圧部2は前記桿体1の一端に連接され、前記押圧部2は前記桿体1とは一体的に成形されたり、または前記押圧部2は係合、ロックまたは螺合などの方法によって前記桿体1の一端に着脱自在に結合したりすることができため、前記押圧部2の磨損後の交換を簡単に行うことができる。前記押圧部2は同様にSUS420の医療級ステンレス材質とすることができ、または、前記押圧部2の外表面は同様に炭化クロムのメッキ層を有することができる。本実施例において、前記押圧部2は第一端部2a、第二端部2bと表面Cを有し、前記第一端部2aは前記桿体1の一端に連接され、前記第二端部2bは刃部であり、骨骼表面の所定位置に接触するのに用いられ、前記桿体1は回転方向Dで回転する時、前記押圧部2は共に回転することができ、そして前記第二端部2bの刃部によって骨骼の中に向かって貫入することができる。その他に、前記押圧部2は前記第一端部2aから前記第二端部2bに向かって径方向に漸次に縮小するように形成されるため、前記押圧部2は先細りを有するように形成される。もう一つの実施例において、漸次に縮小するように形成される前記押圧部2の表面は前記軸線Lに対して1~16°に傾斜する。このように、前記押圧部2が骨骼の中に貫入して穴拡張に役立つことができる。
【0029】
図2、3に示されるように、前記押圧部2は複数個の収容溝21を有し、前記複数個の収容溝21は前記押圧部2の前記表面Cに位置され、前記複数個の収容溝21は前記第一端部2aと前記第二端部2bの間に延伸するように凹設され、前記複数個の収容溝21は前記第二端部2bの刃部によって切削される骨くずが進入するのに用いられることができる。前記各収容溝21は前記押圧部2の前記表面Cに斜めに設けられる。前記各収容溝21の延伸方向は前記軸線Lに対して夾角θ1が形成され、前記夾角θ1は1~45°であることができる。さらに進んで言えば、隣接する二個の収容溝21の間の前記押圧部2にはリブ22が形成され、そして径方向の断面における前記リブ22の上端部は即ち前記表面Cであり、前記押圧部2が骨骼の中に貫入した後、前記表面Cは骨組織の内壁に対して切削を引き起こすことなく、そして骨組織の内壁を押圧するのに用いることができるため、骨組織の内壁に対する損傷を減らすことができる。
【0030】
前記押圧部2の径方向の断面における各リブ22には案内面22aが形成され、前記案内面22aは前記表面Cとは連接し、前記案内面22aは前記回転方向Dに向かって前記押圧部2が回転する時、前記第二端部2bの刃部によって切削される骨くずは前記各収容溝21に進入した後、前記案内面22aの押し出しに従って骨組織の内壁に向かって移動することができる。その他に、径方向の断面において前記案内面22aが前記表面Cとの連接する部位には夾角θ2が形成され、前記夾角θ2は90°より大きい。このように、前記案内面22aと前記表面Cの連接する部位に鈍角を形成することができるため、骨組織の内壁に対して切削を引き起こすことなく、骨組織の内壁に対する損傷を減らすことができる。
【0031】
図1に示されるように、前記桿体1はさらに位置特定部材3を結合することができ、前記位置特定部材3は軸方向変位自在に前記桿体1の外表面に結合される。また、前記位置特定部材3は位置決め部31を有することができるため、前記位置特定部材3を前記桿体1の所定位置に位置決めすることができる。本実施例において、前記位置特定部材3は環状体であり、前記桿体1の外表面に周設され、さらに前記桿体1の外表面において軸方向に滑動することができる。そして前記位置特定部材3の内壁において、前記位置特定部材3は前記桿体1の外表面に緊合されるように、前記位置決め部31は弾性変形自在の材質からなることができる。または、
図1に示されるように、前記位置特定部材3の位置決め部31はボルト31aとねじ穴31bを有し、前記ねじ穴31bは前記位置特定部材3の内外表面を貫通し、前記ボルト31aは前記桿体1に当接することができるように、前記ねじ穴31bに結合することができる。このように、前記位置特定部材3は前記桿体1に位置決めされることができ、そして前記押圧部2とは所定距離を有し、前記所定距離を骨骼の中に向かって貫入する予定の深さに設定することができ、前記位置特定部材3は前記桿体1の貫入に従って漸次に接近しつつ皮膚に向かって接近するため、作業者は前記位置特定部材3によって前記押圧部2の貫入の深さを知ることができる。
【0032】
図3に示されるように、作業者が骨ドリルの手術を行う時、前記表面Cに所定外径寸法を有する前記押圧部2を選択し、前記押圧部2の前記第二端部2bの刃部を骨骼の表面の所定位置に接触させ、さらに前記桿体1が前記回転方向Dに向かって回転するのを駆動し、前記第二端部2bの刃部は骨組織を切削しながら内に向かって深くドリルすることができる。この時、前記第二端部2bの刃部によって切削される骨くずは前記収容溝21に進入し、そして骨くずは前記案内面22aの押し出しに従って骨組織の内壁に向かって移動し、さらに前記表面Cによって骨組織の内壁に向かって押圧され、そして前記表面Cは同時に骨組織の内壁を押圧することができる。このように、前記第二端部2bの刃部によって内に向かって深くドリルしながら、前記押圧部2の前記表面Cによって骨組織の内壁に向かって押圧することにより、前記骨くずと前記骨組織の内壁は共に緻密層を形成して強靭な骨組織を形成することができる。その他に、作業者は複数個の外径寸法の異なる前記押圧部2を利用し、さらに順序よく小外径から大外径まで漸次に穴拡張を行うことにより、段階的な穴拡張によって骨壊死のリスクを低く抑えることができる。
【0033】
図4、5に示されるように、本発明の手術器具の第二実施例において、第一実施例と比較して、本実施例においては他にスリーブ管4を含むことができ、前記スリーブ管4の内径寸法は前記桿体1の外径寸法に対応するか、または少し大きくなるように形成することができ、前記スリーブ管4は前記桿体1と前記押圧部2が挿入するのに用いられることができる。他に、前記押圧部2の最大外径は前記桿体1の外径より大きくならないように形成することができ、このように、前記スリーブ管4の内径寸法は前記桿体1の外径だけに対応することにより、前記桿体1と前記押圧部2が同時に挿入するのに用いられることができるため、製造上においてよりよい利便性を有することができる。
【0034】
前記スリーブ管4は当接端部4aと挿入端部4bを有し、前記当接端部4aは骨骼表面の所定穴開けの位置に当接することができ、または前記当接端部4aは筋肉組織の中に当接することができ、前記桿体1と前記押圧部2は前記挿入端部4bから挿入することができるため、所定穴開けの位置に対して穴開けを行うことができる。例を挙げて言えば、低侵襲性の手術を行う時、患部における骨骼表面の所定穴開けの位置は皮膚または筋肉組織によって被覆され、このように、前記スリーブ管4を利用して皮膚または筋肉組織に予め開かれた低侵襲性の傷口に進入することにより、所定穴開けの位置において位置決めるように形成され、さらに前記桿体1と前記押圧部2が進入する通路として形成されるため、作業者が穴開けを行うのに役立つことができる。
【0035】
前記当接端部4aの端縁は複数個の係止部41を有することができ、前記係止部41は複数個の突出歯または複数個の窪からなることができ、このように、前記当接端部4aの前記係止部41は回転方向における抵抗力を形成することができるため、前記スリーブ管が手術過程において回転や変位によって穴開けに誤差が生じるのを避けることができる。または、前記スリーブ管4の外壁は脱落防止部42を有することができ、前記脱落防止部42は径方向に突出した複数個の環状体であり、また、前記脱落防止部42は一方向性の傾斜面を有することができるため、前記脱落防止部42は皮膚または低侵襲性傷口の中に簡単に置き入れることができ、そして軸方向で生じる抵抗力が微小になることにより、前記スリーブ管4が手術過程において組織の中から脱出するのを避けることができるため、前記穴開けの手術をスムースに行うことができる。当然ながら、前記皮膚または低侵襲性傷口は径方向に拡張することができるため、術後において作業者は前記皮膚または低侵襲性傷口の中から簡単に取り出すことができる。前記係止部41または前記脱落防止部42は選択的に単独または共同で前記スリーブ管4に形成することができるが、本発明では限定しない。
【0036】
図6に示されるように、本発明の手術器具の第三実施例において、第一実施例と比較して、本実施例においてはさらに導引部材5を含むことができ、前記導引部材5は連接柄部51を有し、前記連接柄部51の少なくとも一端はスリーブ管52を有する。好ましくは、前記連接柄部51の両端はそれぞれスリーブ管52を有し、前記各スリーブ管52は第二実施例に示されるようにそれぞれ当接端部52aと挿入端部52bを有し、前記各スリーブ管52は前述した係止部53または/および脱落防止部54を有することができ、前記挿入端部52bは前記桿体1と前記押圧部2が挿入するのに用いられるため、予め定められた穴開けの位置に対して穴開けを行うことができる。また、第三実施例における係止部53と脱落防止部54は、それぞれ第二実施例の係止部41と脱落防止部42と同じまたは相似する構造である。注意しなければならないことは、前記連接柄部51の両端のスリーブ管52はそれぞれ異なる内径寸法を有することができ、このように、前記導引部材5は二種類の外径寸法の異なる桿体1と前記押圧部2に合わせて使用することができるため、手術器具の数を減らすことができ、手術の流れ過程を簡単化にして使用上の利便性を高めることができる。
【0037】
図7に示されるように、本発明に係る第三実施例の使用状況の断面図において、作業者は片手で前記導引部材5の前記連接柄部51を握持して、前記導引部材5のスリーブ管52は前記当接端部52aによって骨骼表面の予め定められた穴開けの位置に当接することができ、または前記当接端部52aは筋肉組織の中に当接することができ、さらに前記表面Cに所定外径寸法を有する前記押圧部2を選択し、前記桿体1と前記押圧部2を前記挿入端部52bから挿入し、そして前記桿体1が前記回転方向Dに向かって回転するのを駆動し、前記第二端部2bの刃部は骨組織を切削しながら内に向かって深くドリルすることができる。前記刃部によって切削される骨くずは前記収容溝21に進入し、そして骨くずは前記案内面22aの押し出しに従って骨組織の内壁に向かって移動することができる。このように、前記第二端部2bの刃部によって内に向かって深くドリルしながら、前記押圧部2の前記表面Cによって骨組織の内壁に向かって押圧することにより、前記骨くずと前記骨組織の内壁は共に緻密層を形成して強靭な骨組織を形成することができる。
【0038】
図8に示されるように、本発明の手術器具の第四実施例において、第三実施例と比較して、本実施例においてはさらに二つの導引部材5a、5bを含むことができ、前記二つの導引部材5a、5bは第三実施例において述べたように、前記二つの導引部材5a、5bの前記連接柄部51の少なくとも一端はスリーブ管52を有することができ、または、前記連接柄部51の両端はそれぞれスリーブ管52を有し、前記各スリーブ管52は第三実施例において述べたようにそれぞれ当接端部52aと挿入端部52bを有し、前記各スリーブ管52は前述した係止部53または/および脱落防止部54を有することができ、前記挿入端部52bは前記桿体1と前記押圧部2が挿入するのに用いられるため、所定穴開け位置に対して穴開けを行うことができる。
【0039】
注意しなければならないことは、前記二つの導引部材5a、5bの前記連接柄部51の両端の各スリーブ管52はそれぞれ異なる内径寸法を有することができ、このように、前記二つの導引部材5a、5bは合計四種類の外径寸法の異なる桿体1と前記押圧部2に合わせて使用することができるため、手術器具の数を減らすことができ、さらに手術の流れ過程を簡単化にして使用上の利便性を高めることができる。その他に、もう一つの実施例において、前記二つのスリーブ管52の内の一つのスリーブ管52の内径寸法はもう一つのスリーブ管52の外径寸法より少し大きくなるように形成することができ、これにより、二つの前記導引部材5を使用する場合、その内の一つの導引部材5a、5bのスリーブ管52をもう一つの導引部材5a、5bのスリーブ管52の中に嵌設することができるため、段階的な穴拡張の手術を行うことができる。
【0040】
図9に示されるように、本発明に係る第四実施例の使用例の斜視図において、作業者が複数個の外径寸法の異なる前記桿体1と前記押圧部2を使用して段階的な穴拡張の手術を行わなければならない場合、順序よく小外径から大外径まで漸次に穴拡張を行うことができる。本実施例においては二つの前記導引部材5a、5bを使用した例をもって説明を行う。先ずその内の一つの導引部材5bの比較的小内径のスリーブ管52を、もう一つの導引部材5aの比較的大内径のスリーブ管52の中に嵌設することができ(
図9、10に示されるように)、この時、先ず比較的小内径のスリーブ管52をもって比較的小外径の桿体1と前記押圧部2を導引して穴開けを行い、それから比較的小内径のスリーブ管52の導引部材5bを除いた後(
図7に示されるように)、もう一つの導引部材5aは位置決めのままで引き続き比較的大内径のスリーブ管52によって比較的大外径の桿体1と前記押圧部2を導引して穴拡張を行うことにより、段階的な穴拡張の手術を完成することができる。
【0041】
総合すると、本発明の手術器具は、前記押圧部は複数個の収容溝を有することにより、隣接する二つの収容溝の間の前記押圧部にはリブが形成され、そして径方向の断面における前記リブの上端部には前記表面が形成され、前記案内面と前記表面が連接する部位には鈍角が形成されるため、前記リブは骨組織の内壁に対して切削を引き起こすことなく、そして前記押圧部が骨骼の中に貫入した後、前記刃部が骨骼の中に貫入して生じた骨くずは前記収容溝に進入した後、前記リブ上端部の表面まで導引され、さらに骨組織の内壁の方向に向かって押圧されるため、骨くずと骨組織の内壁は押圧によって共に緻密層を形成して強靭な骨組織を形成することができ、さらに骨組織の流失を減らし、骨質の安定性を増やすことができ、そして術後の回復に役立つことができるため、骨粗鬆症患者の手術成功率を高めることができる。
【0042】
本発明は、すでに上述した比較的よい実施例を利用して掲示したにもかかわらず、本発明に限定するものではなく、いかなるこの技術を熟知した者が本発明の精神と範囲を離脱しない限り、上述した実施例に対応して各種の変更や修正を行っても依然として本発明によって保護される技術範疇に属するものであるため、本発明の保護範囲は当然として添付の特許の請求範囲に記載される意義と均等範囲内における変更を含むべきものである。また、上述の複数個の実施例の組み合わせが可能であれば、本発明は任意な組み合わせによる実施態様を含む。
【符号の説明】
【0043】
1 桿体
2 押圧部
2a 第一端部
2b 第二端部
21 収容溝
22 リブ
22a 案内面
3 位置特定部材
31 位置決め部
31a ボルト
31b ねじ穴
4 スリーブ管
4a 当接端部
4b 挿入端部
41 係止部
42 脱落防止部
5 導引部材
5a 導引部材
5b 導引部材
51 連接柄部
52 スリーブ管
52a 当接端部
52b 挿入端部
53 係止部
54 脱落防止部
L 軸線
D 回転方向
C 表面
θ1 角度
θ2 角度