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特許7510494クモ膜下腔および硬膜下腔への安全で信頼できるアクセスのためのデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】クモ膜下腔および硬膜下腔への安全で信頼できるアクセスのためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20240626BHJP
   A61N 7/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61B17/34
A61N7/00
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022503917
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020043859
(87)【国際公開番号】W WO2021021800
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】62/879,846
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/019,574
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519392030
【氏名又は名称】バイオナット ラブス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュピゲルマッハー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カルドッシュ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カッツネルソン、ベエリ・ベール
(72)【発明者】
【氏名】オレン、エラン
(72)【発明者】
【氏名】キセリョフ、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】クロス、フローレント
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、スヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ハリントン、ダレル
(72)【発明者】
【氏名】パルマー、オリン
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513564(JP,A)
【文献】特開平11-128233(JP,A)
【文献】特表2013-523408(JP,A)
【文献】特表2005-523082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬膜/クモ膜組織層および軟膜に囲まれたクモ膜下腔への外科的アクセスを提供するための装置であって、
少なくとも1つの管腔を有する作業チューブと、
前記管腔の一端における吸引ポートであって、前記吸引ポートの前に位置決めされた前記クモ膜組織層を吸引するように構成された吸引ポートと、
前記管腔内の磁場の影響を受けて移動する組織穿刺デバイスであって、前記管腔の前記一端において前記クモ膜組織層を穿刺して、前記クモ膜下腔へのアクセスを提供するように構成された組織穿刺デバイスと、
前記磁場を制御することによって、前記組織穿刺デバイスを移動させるように適合された磁場変調器と、を備える、装置。
【請求項2】
前記作業チューブ内にイメージングポートをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記イメージングポートが、超音波イメージングのための超音波トランスデューサを収容する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記管腔内に、ドップラー効果を使用して前記組織穿刺デバイスの速度を評価するように構成された超音波トランスデューサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記管腔内に、前記クモ膜組織および周囲の組織を通る音速の測定値に応答して、前記吸引ポートの前方の組織の柔軟性を評価するように構成された超音波トランスデューサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記組織穿刺デバイス上に位置決めされた少なくとも1つの電極を用いて、前記クモ膜組織の電気的インピーダンスまたは関連パラメータを測定する電気センサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記吸引ポートが、前記クモ膜組織層を前記軟膜から吸引するように適合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記管腔の内部に設けられた機械的マニピュレータをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記管腔の内部に設けられた、光学、電気、磁気、RFまたは超音波刺激装置をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記管腔内の圧力を測定する圧力センサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記クモ膜下腔で動作する治療モダリティをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記治療モダリティが、前記クモ膜下腔に組成物を投与することを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記組織穿刺デバイスが、針を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記針が脊髄針である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記組織穿刺デバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、前記本体が遠位端部および近位端部を含み、前記遠位端部が先端部を含み、前記先端部が、その最遠位端部における尖点で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記組織穿刺デバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、前記本体が、中空のコア、遠位端部、および近位端部を含み、前記遠位端部が、先端部を含み、前記先端部が、その最遠位端部における点内で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含み、前記中空のコアが、前記先端部の前記遠位端部への、または前記先端部の前記遠位端部からの流体の通過を可能にするように構成されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記肩部領域が、前記肩部領域の円周に沿って変化する長さを有する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記組織穿刺デバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、前記本体が、中空のコア、遠位端部、および近位端部を含み、前記遠位端部が、先端部を含み、前記先端部が、その最遠位端部において閉鎖しているオジーブ形遠位領域で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含み、前記オジーブ形遠位領域が、そこを通って流体または物体が出入りすることを可能にするように構成された側方ポートを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記肩部領域が、前記肩部領域の円周に沿って変化する長さを有する、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記組織穿刺デバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、前記本体が、中空のコア、遠位端部、および近位端部を含み、前記遠位端部が、先端部を含み、前記先端部が、任意選択で、その最遠位端部において閉鎖している遠位領域内で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含み、前記最遠位端部が槍構造で終止するように成形されており、前記遠位領域が、そこを通って流体または物体が出入りすることを可能にするように構成された側方ポートを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記組織穿刺デバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、前記本体が、中空のコア、遠位端部、および近位端部を含み、前記遠位端部が、先端部を含み、前記先端部が、任意選択で、その最遠位端部において閉鎖している遠位領域で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含み、前記最遠位端部が、1つの方向で平坦化されている尖端を含み、前記遠位領域が、そこを通って流体または物体が出入りすることを可能にするように構成された側方ポートを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記組織穿刺デバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、前記本体が、中空のコア、遠位端部、および近位端部を含み、前記遠位端部が、先端部を含み、前記先端部が、任意選択で、その最遠位端部において閉鎖している遠位領域で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含み、前記最遠位端部が、両側上に2つの平坦な平面を含み、前記遠位領域が、そこを通って流体または物体が出入りすることを可能にするように構成された側方ポートを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記2つの平坦な平面が合流して縁を創出している、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記組織穿刺デバイスの外装に沿って配設されたくぼみをさらに含み、前記くぼみは、前記組織穿刺デバイスに穿刺される媒体を保持するように構成された、請求項15~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記組織穿刺デバイスと穿刺される媒体との間にグリップまたは摩擦を提供するための手段をさらに含む、請求項15~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記組織穿刺デバイス上に少なくとも1つの環状溝をさらに備え、穿刺中に前記組織穿刺デバイスと穿刺される媒体との間の摩擦を増強するように構成されている、請求項15~23のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者のクモ膜下腔および硬膜下腔などの解剖学的空間への安全で信頼できるアクセスを達成するための装置、デバイス、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脊髄クモ膜下腔(SAS)は、脊髄におけるクモ膜と軟膜との間の空間であり、頭蓋内SASと連続している。脊髄SASは、大後頭孔を介して頭蓋内クモ膜下腔と連通し、S2椎骨の高さで終止している。それは比較的広い空間であり、脳脊髄液の総体積の約半分(CSF、150mL中75mL)を含む。脊髄はL2の高さで終止しているので、これに遠位であるクモ膜下腔は腰部槽を形成し、腰椎穿刺を介してCSFにアクセスするのに適した空間となっている。この手順は、CSFを分析するため、脊髄痛を含む様々な状態を治療するため、または骨髄造影で例示されるような診断を行うために臨床診療で使用される。
【0003】
このアプローチは、数十年にわたる医療慣行を通じて十分に検証されているが、一過性または永久的な脊髄損傷、および/または対麻痺を含むより拡大した外傷、さらには死亡の可能性もある。神経損傷の起こり方としては、(a)針またはカテーテルで引き起こされる直接的な損傷、(b)血腫、(c)感染、(d)血行動態の乱れ、(e)針またはカテーテルの置き間違えが挙げられる。加えて、腰椎穿刺に伴う操作上のリスクの症例が多数報告されている。これらのうち、針/カテーテルの挿入、配置、および/または後退の角度、速度、深さ、安定性を含む処置の実際の動態は、操作者に大きく依存する。
【0004】
さらに、針またはカテーテルが介在する処置(例えば、麻酔、脊髄根ブロック)による脊髄損傷が、臨床の場でかなり一般的であることを示す証拠もある。例示的な例は、脊髄麻酔中の不正確、かつ/または不注意な穿刺による脊髄神経根の損傷である。
【0005】
硬膜穿刺後頭痛(PDPH)の発生率と重症度は、一般に、主要な神経軸閉塞または診断的硬膜穿刺中に生じる硬膜孔の大きさと性質に割り当てられる。硬膜線維の方向に関連する針の向きは、水平なベベル配置が硬膜線維の分割ではなく、切断を引き起こす傾向があるため、重要であると考えられた。小さな27G~29Gの針の有用性は、針先端の特性も針の向きも、硬膜病変の硬膜線維の損傷に実質的に関係しないことを示した。しかし、クモ膜の穴の特徴と大きさが重大であることがわかった。硬膜線維は、脊髄針によって創出された穴を閉じるのに十分な「記憶」を有する傾向がある一方で、クモ膜はそれを行う能力を低下させることが指摘されている。
【0006】
たまに、米国で最も一般的に実施される医療処置の一つである腰部層間硬膜外ステロイド注射(LESI)中に、針が意図せずにクモ膜下腔内空間に入ることがある。通常、これは軽微な合併症、または望ましい配置(一部の診断方法の場合)とみなされるにすぎない。しかしながら、脊髄がL2脊椎高さより下で終止している珍しい状態(繋留脊髄)の患者も一部にはいる。そのような場合、腰椎高さで投与される注射は、介入を行う医師が針の髄内位置を認識していない場合、潜在的に脊髄損傷および不可逆的対麻痺をもたらす可能性がある。
【0007】
小児科集団は、硬膜から脊髄までの距離が椎骨の高さによって異なるため、脊髄外傷を避けるための適切な針の位置決めに特有の問題がもたらされる可能性がある。硬膜から脊髄までの距離は、硬膜穿刺後の針の外傷で引き起こされる神経損傷の可能性を回避するための重要な要因であり得る。小児では、胸部と比較して脊髄が脊椎管内でより背側に位置するため、硬膜外針を誤って進めることによる脊髄損傷のリスクは腰部でより高くなり得る。
【0008】
多くの医師は、脊髄が通常L2脊椎高さ以上で終止するため、腰椎注射を「安全」だと考えているかもしれない。しかし、このような安全性の誤った印象からくる自己満足は、診療ガイドラインの非遵守に寄与し、致命的な神経学的合併症につながり得る。L2脊椎高さより下で実施された骨髄造影検査では、造影剤を脊髄に注入することにより、麻痺が生じたと報告されている。
【0009】
頸部経椎間孔硬膜外ステロイド注射(TFESI)は、コンピュータ断層撮影(CT)の指導の下で行うことにより、優れた解剖学的な分解能と、軸平面での正確な針の配置を提供することができる。しかし、CT指導頸部TFESI後に、血圧サージ、アレルギー反応、血管迷走神経失神、脳梗塞を含むいくつかの合併症が報告されている。
【0010】
脊椎へのアクセスを媒介する特殊な針が利用可能であるにもかかわらず、これらの既知の針は、特定のリスクと欠点を伴う。例えば、最近の研究では、テューイ針とクインケ針の両方が、ショートベベル針やウィタクレ針よりも脊髄区画(例えば、脛骨神経)に外傷を引き起こす可能性が高いことが示唆されている。
【0011】
したがって、従来より既知のデバイスおよびその用途の上述および他の欠点を克服しつつ、解剖学的空間にアクセスするための針などの組織穿刺デバイスの、より安全でより信頼性の高い構成に対するニーズが当技術分野において依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
医療組織穿刺プロトコルの安全性と信頼性の両方を向上させることが望ましい。特に、SASにアクセスし、ヒト因子に関連するリスクを低減するために、腰椎穿刺プロトコルの安全性と信頼性の両方を向上させることが望ましい。本明細書に記載されるデバイスは、SAS空間のリアルタイムで客観的な検出、アクセス成功率の向上、針配置の複雑性の低減、および1回の処置に必要な時間の短縮を含む、これらおよびその他の目的を達成する。当技術分野で知られている様々な針および他の組織穿刺デバイスの使用は、軟膜および/または様々な動脈を損傷する可能性、またはSAS内に正常に通過しない可能性があるのに対し、本発明の実施形態は、SAS領域への安全なアクセスを実現するデバイスを提供する。
【0013】
したがって、一態様では、本発明は、硬膜/クモ膜組織層および軟膜に囲まれたクモ膜下腔への外科的アクセスを提供するための装置であって、装置は、少なくとも1つの管腔を有する作業チューブと、管腔の一端における吸引ポートであって、吸引ポートの前に位置決めされたクモ膜組織層を吸引するように構成された吸引ポートと、管腔内の磁場の影響を受けやすい組織穿刺デバイスであって、管腔の一端においてクモ膜組織層を穿刺して、クモ膜下腔へのアクセスを提供するように構成された組織穿刺デバイスと、磁場を制御することによって、組織穿刺デバイスを移動させるように適合された磁場変調器と、を備える。
【0014】
本発明の実施形態による、患者のクモ膜下腔にアクセスするための方法は、クモ膜組織の近くで患者に少なくとも1つの管腔を有するチューブを挿入することであって、この管腔が、一端において、硬膜/クモ膜組織を軟膜から吸引するように適合された吸引ポートを有する、挿入することと、管腔内の磁場に影響されやすい組織穿刺デバイスを、磁場を変調することによって、移動させることと、組織穿刺デバイスで硬膜/クモ膜組織を穿刺することと、を含む。
【0015】
一実施形態では、本明細書において、患者の解剖学的空間にアクセスするための組織穿刺デバイスであって、このデバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、この本体が遠位端部および近位端部を含み、この遠位端部が先端部を含み、この先端部が、その最遠位端部における尖点で終止する直径の急激な狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含む、組織穿刺デバイスが提供される。
【0016】
一実施形態において、本明細書において、患者の解剖学的空間にアクセスするための組織穿刺デバイスであって、このデバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、この本体が、中空のコア、遠位端部、および近位端部を含み、この遠位端部が、先端部を含み、この先端部が、その最遠位端部における点内で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含み、上述の中空のコアが、先端部の遠位端部への、またはそこからの流体の通過を可能にするように構成されている、組織穿刺デバイスが提供される。
【0017】
一実施形態では、本明細書において、患者の解剖学的空間にアクセスするための組織穿刺デバイスであって、このデバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、この本体が、中空のコア、遠位端部、および近位端部を含み、この遠位端部が、先端部を含み、この先端部が、その最遠位端部において閉鎖しているオジーブ形遠位領域で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含み、このオジーブ形遠位領域が、そこを通って流体または物体が出入りすることを可能にするように構成された側方ポートを含む、組織穿刺デバイスが提供される。
【0018】
一実施形態では、本明細書において、患者の解剖学的空間にアクセスするための組織穿刺デバイスであって、このデバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、この本体が、中空のコア、遠位端部、および近位端部を含み、この遠位端部が、先端部を含み、この先端部が、任意選択で、その最遠位端部において閉鎖している遠位領域内で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含み、上述の最遠位端部が、鋭利な槍構造で終止するように成形されており、上述の遠位領域が、そこを通って流体または物体が出入りすることを可能にするように構成された側方ポートを含む、組織穿刺デバイスが提供される。
【0019】
一実施形態では、本明細書において、患者の解剖学的空間にアクセスするための組織穿刺デバイスであって、このデバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、この本体が、中空のコア、遠位端部、および近位端部を含み、この遠位端部が、先端部を含み、この先端部が、任意選択で、その最遠位端部において閉鎖している遠位領域で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含み、上述の最遠位端部が、1つの方向で平坦化されている尖端を含み、上述の遠位領域が、そこを通って流体または物体が出入りすることを可能にするように構成された側方ポートを含む、組織穿刺デバイスが提供される。
【0020】
一実施形態では、本明細書において、患者の解剖学的空間にアクセスするための組織穿刺デバイスであって、このデバイスが、長手方向軸に沿って延びる本体を含み、この本体が、中空のコア、遠位端部、および近位端部を含み、この遠位端部が、先端部を含み、この先端部が、任意選択で、その最遠位端部において閉鎖している遠位領域で終止する直径の狭窄によって特徴付けられた肩部領域を含み、上述の最遠位端部が、両側上に2つの平坦な平面を含み、上述の遠位領域が、そこを通って流体または物体が出入りすることを可能にするように構成された側方ポートを含む、組織穿刺デバイスが提供される。
【0021】
一実施形態では、組織穿刺デバイスは、針である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され、明確に特許請求される。しかしながら、本発明は、その目的、特徴、および利点と共に、機構および操作方法の両方に関して、添付の図面と共に読まれる場合、以下の詳細な説明を参照することによって最良に理解され得る。
【0023】
図1】本発明の実施形態が採用され得る脊髄環境の、例えばクモ膜下腔を含む解剖学的および生理学的目印を描写している。
図2】本発明の一実施形態による、針の周りのシャフトによってクモ膜下腔の内側に挿入された針を概略的に描写している。
図3】本発明の一実施形態による、管腔が内部にセンサを有するクモ膜下腔に近づく方法における段階を概略的に描写している。
図4】管腔がクモ膜下腔の近くにあり、穿刺の前に吸引が適用され、針が穿刺するための空間を拡大するプロセスの段階を概略的に描写している。
図5】肋間神経を有する脊髄を描写している。
図6】脊髄および周囲の生理学的目印の詳細を描写している。
図7A】本発明の様々な実施形態による組織穿刺デバイスを描写している。
図7B】本発明の様々な実施形態による組織穿刺デバイスを描写している。
図7C】本発明の様々な実施形態による組織穿刺デバイスを描写している。
図7D】本発明の様々な実施形態による組織穿刺デバイスを描写している。
図7E】本発明の様々な実施形態による組織穿刺デバイスを描写している。
図8A】本発明の様々な実施形態による、組織穿刺デバイスを描写している。
図8B】本発明の様々な実施形態による、組織穿刺デバイスを描写している。
図8C】本発明の様々な実施形態による、組織穿刺デバイスを描写している。
図8D】本発明の様々な実施形態による、組織穿刺デバイスを描写している。
図8E】本発明の様々な実施形態による、組織穿刺デバイスを描写している。
図8F】本発明の様々な実施形態による、組織穿刺デバイスを描写している。
図8G】本発明の様々な実施形態による、組織穿刺デバイスを描写している。
図8H】本発明の様々な実施形態による、組織穿刺デバイスを描写している。
図8I】本発明の様々な実施形態による、組織穿刺デバイスを描写している。
図9A】本発明の一実施形態による、組織穿刺デバイスの使用を描写している。
図9B】本発明の一実施形態による、組織穿刺デバイスの使用を描写している。
【0024】
実例を単純かつ明確にするために、図に示される要素は、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことが理解されるであろう。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために他の要素に比較して誇張され得る。さらに、適切であると考えられる場合、対応する要素または類似の要素を示すために、参照番号が図の間で繰り返され得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の主題は、本開示の一部を形成する以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解され得る。本発明は、本明細書に記載および/または示される特定の製品、方法、条件、またはパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は、例としてのみ特定の実施形態を説明するためのものであり、特許請求される発明を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0026】
本発明の具体的な実施形態は、図面を参照しながら含めて説明され、同様の参照番号は、同一のまたは機能的に類似した要素を示す。
【0027】
本明細書で別途定義されない限り、本出願に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0028】
上記および本開示を通じて採用される場合、以下の用語および略語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有するものと理解されなければならない。
【0029】
「遠位」および「近位」という用語は、治療する臨床医に対する位置または方向に関して以下の説明で使用される。「遠位」または「遠位に」は、臨床医から離れた、または臨床医から離れた方向にある位置である。「近位」および「近位に」は、臨床医の近くにある、または臨床医に向かう方向にある位置である。
【0030】
「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用される。本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を指す。ヒトは、任意の年齢の任意のヒトであり得る。一実施形態では、ヒトは、成人である。別の実施形態では、ヒトは、子供である。
【0031】
本発明の説明は、一般に、クモ膜下腔および硬膜下腔へのアクセスとの関連であるが、本発明は、それが有用であるとみなされる任意の他の身体通路または領域においても使用され得る。例えば、本明細書に記載のデバイスおよび装置によってアクセスされ得、および/または制御可能性、安全性、安定性、および信頼できるアクセスが所望される解剖学的空間または部位は、本発明の使用に好適な標的である。前述の技術分野、背景、簡潔な要約、または以下の詳細な説明において提示される明示的または暗示的な理論に拘束される意図はない。
【0032】
本発明の一実施形態によるデバイスは、1つ以上の管腔を含む作業チャネル/チューブを使用する。一実施形態では、管腔の内部に、デバイスは、(1)圧力センサ、(2)超音波トランスデューサ、(3)ポートの前の組織の吸引を可能にする吸引ポート、(4)イメージングポート、(5)チャネル/チューブ内の針の先端上の少なくとも1つの電極で組織インピーダンスを測定することを可能にする電気センサ、(6)光学的、電気的、圧電的、(電気的)磁気的、RF、または超音波刺激装置、および(7)ピンセット/針などの機械的マニピュレータのうちの1つ以上を包含してもよい。
【0033】
一実施形態では、超音波トランスデューサは、イメージング、ドップラーを使用する速度評価、組織層の厚さ評価、および異なる媒体内でのSOS(音速)の変化を使用して先端の前の層の柔軟性/剛性を評価することのうちの1つ以上に適合され得る。
【0034】
一実施形態では、吸引ポートは、ポートの前の組織層が引っ張られ、組織が元のクモ膜組織の位置よりも、神経からより遠い位置で穿刺されるように操作され得る(軟膜から遠い方がより安全な位置であるため)。吸引ポートは、機械的、熱的、または代替的な物理的力場、および/または特定の治療製剤、診断、造影剤および/または他のイメージング剤を含むがこれらに限定されない治療を実施する際にも使用することができる。治療製剤は、溶液、懸濁液、ゲル/ソル、または代替のモダリティを構成し得る。
【0035】
前述の構成要素は、外観、導電性/抵抗性、機械的特性、流量、および他の基準を含む特定の(生物)物理パラメータに基づいて、脊髄硬膜、クモ膜物質、軟膜を含むがこれらに限定されない、関心対象の区画および組織における/間の上記に要約した潜在的治療の識別、分化および適切な位置決めを媒介することが期待される。
【0036】
本明細書に記載の実施形態のうちの1つ以上の提案されたプロトコルにおいて、クモ膜層が識別され接触すると、針が挿入される。デバイスは、針が所望の深さを超えないことを確認するために、挿入コントローラを含み得る。さらに、デバイスは、損傷を防止するために制御された方法で針を挿入する挿入機構を含むように自動化されてもよい。
【0037】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、必要に応じて、組織の領域または組織間の空間、例えばクモ膜下腔に安全かつ信頼性をもってアクセスするための穿刺デバイスである。一実施形態では、クモ膜下腔は、頭蓋内クモ膜下腔である。一実施形態では、クモ膜下腔は、脊髄クモ膜下腔である。一実施形態では、脊椎クモ膜下腔は、腰椎クモ膜下腔である。
【0038】
一実施形態では、穿刺デバイスは、針である。実施形態では、デバイスは、脊髄または他の外傷を最小化または排除するために、より良い制御を目的とした貫通先端部の最適化されたトポロジーに基づいて、設計および構築されている。
【0039】
図7Aおよび図7Bに示される実施形態では、組織穿刺デバイスは、固体先端部を含む。例示される実施形態では、デバイスは針[700]であるが、様々な代替実施形態では、デバイスは針に限定されず、本明細書に記載される機能を実行し、所望の効果を達成するための任意の好適なデバイスであり得る。本明細書に記載のデバイスが針であるか、または針を含む実施形態では、針は、脊髄針または硬膜外針などの任意の好適な針であり得るが、これらに限定されない。図示される実施形態では、デバイス[700]は、遠位端で急速に変化するプロファイルを含む。一実施形態では、先端部の最遠位セクションは、円錐のような形状である。一実施形態では、円錐は、外径が適切な特定の距離に沿って一定またはほぼ一定のままで、その後、外径が一定の距離にわたって増加し、局所的な最大値に達する円筒に固定されている。一実施形態では、最大値は、その後、適切な特定の距離の間、一定であり得る。一実施形態では、先端部は、平均直径[703]を有する固体円筒である。一実施形態では、先端部[701]の最遠位部分は、鋭利であり、すなわち、その尖端で非常に小さい曲率半径を有し、平均直径は、より近位の部分[703]の直径よりも実質的に小さい。代表的な例では、遠位領域[701]の直径は75μm以下である。一実施形態では、最遠位領域の外径は、約10μm~約1000μmであり得る。一実施形態では、最遠位領域の外径は、約10μm~約100μmであり得る。一実施形態では、最遠位領域の外径は、約100μm~約500μmであり得る。一実施形態では、最遠位領域の外径は、約50μm~約100μmであり得る。一実施形態では、最遠位領域の外径は、約50μm~約80μmであり得る。一実施形態では、最遠位領域の外径は、約10μm~約50μmであり得る。
【0040】
一実施形態では、円錐、および外径が一定またはほぼ一定である円筒を含む最遠位領域の全長は、約50μm~約2000μmであり得る。一実施形態では、円錐、および外径が一定またはほぼ一定である円筒を含む最遠位領域の全長は、約50μm~約1000μmであり得る。一実施形態では、円錐、および外径が一定またはほぼ一定である円筒を含む最遠位領域の全長は、約1000μm~約2000μmであり得る。一実施形態では、円錐、および外径が一定またはほぼ一定である円筒を含む最遠位領域の全長は、約50μm~約100μmであり得る。一実施形態では、円錐、および外径が一定またはほぼ一定である円筒を含む最遠位領域の全長は、約100μm~約500μmであり得る。一実施形態では、円錐、および外径が一定またはほぼ一定である円筒を含む最遠位領域の全長は、約500μm~約750μmであり得る。
【0041】
遠位領域の[701]全長は、穿刺される組織または層の厚さと密接に一致するように選択することができる。一実施形態では、遠位領域[701]の長さは、穿刺される媒体と等しいか、またはわずかに長い。別の実施形態では、長さは、穿刺される媒体の長さの数倍である。遠位領域[701]の次に、デバイス[700]の近位端部に向かって移動するのは、比較的短い距離にわたる直径の急速な変化によって特徴付けられた肩部領域[702]である。肩部領域の[702]プロファイルは、当業者によって理解され、決定されるように、特定の応用の必要性にニーズに合わせることができる。先端部を前進させ、脊髄の周りの組織の層である硬膜を横断しようとする場合などの使用では、針先端部が硬膜を越えて所望の距離まで前進すると、針と硬膜組織との間の望ましい接触力の急激な増加を達成するために、肩部領域[702]は短く、直径の推移はできるだけ急激であり得る。
【0042】
図7Cに例示する実施形態では、先端部[705]は中空であり、そこを通して均質または不均質な流体を通過させることが許容される。かかる流体は、限定されないが、溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、ゾル、またはそれらの組み合わせなどの任意の好適な流体であり得る。
【0043】
図7Dおよび図7Eに示される実施形態[706]では、遠位領域[701]の長さは、円周に沿って変化する。この構成は、例えば、先端部を使用して媒体の上面に対して直角でない角度で媒体を貫通させるような場合に適応され得る。
【0044】
図8Aに例示される実施形態では、ここでは針によって例示される先端部[800]は、中空である。針[802]の最遠位部分は閉鎖されており、オジーブまたは弾丸のような形状をしている。側方ポート[801]は、流体を逃がしたり、吸い込んだりすることを許容するように創出されている。
【0045】
図8Bに例示される実施形態[810]では、針は中空である。針の最遠位部分は閉鎖している。針[813]の先端部近くの空洞領域は、物体、その一連の物体、線、テザー[812]、または任意の他の好適な物体が、針をスムーズに出入りし、所定の角度で出てくることを許容するように成形されている。針の内部の空洞チャネルの内部の領域[811]は、物体[812]の通過を容易にし、横断する媒体、物体または線を隣接する組織から偏向させるために、傾斜を伴って成形されている。この組織は、例えば、限定されないが、軟膜/脊髄、またはデバイスが適切に使用される環境に依存する任意の他の組織であり得る。
【0046】
一実施形態では、先端部[813]は、図8Cの[814]に示されるように、より鋭い槍構造で終端するように成形されている。別の実施形態では、先端部[813]は、図8Dに描写されている[815]に似ており、針の尖端が一方向で平坦化されている。このトポロジーは、例えば、限定されないが線維状、灌流された部位、組織、区画および/または器官などの不均一な構造を有する媒体を穿刺する場合に有用であり得る。具体的には、平坦化した部分が線維を切断、スライス、裂くのではなく、それらを分離するように配向されていれば、このトポロジーは貫通行為をより容易にする。
【0047】
図8Eに例示される実施形態[816]では、2つの平坦な平面が、針のオジーブの両側上に研削またはその他の方法で形成される。
【0048】
図8Fに例示される実施形態[817]では、2つの平面が合流して鋭い縁を創出し、媒体の一方向への切断を容易にする。これは、例えば、限定されないが、特定の部位、組織、区画、または器官など、着目する媒体に針を斜めに進めるときに有用となり得る。
【0049】
図8Gに例示される実施形態[820]では、針の外壁に沿ったくぼみ[821]は、穿刺フェーズ中に媒体をラッチして保持するための手段を提供し、したがって、着目する区画内の制御された移動距離を提供し、外傷の可能性を制限する。代替的に、外壁の表面トポロジーは、図8Hに例示される実施形態に見られるように、針と穿刺される媒体との間にグリップまたは摩擦[822]を提供するように設計することができる。この表面トポロジーの修正は、針の前進中に摩擦を大幅に増加させることなく、針の後退中に摩擦の大幅な増加を提供するように、針の軸に沿って非対称であってよい(すなわち、「髭」針)。
【0050】
図8Iに例示される実施形態に示すように、1つ以上の溝[823]は、機械加工されるか、またはそうでなければ針の外壁上に形成されて、針と穿刺媒体との間の摩擦を増強することができる。
【0051】
図8Gを再び参照すると、本明細書に例示される実施形態[820]は、例えば、硬膜を穿刺し、ガイドワイヤを前進させるために使用され得る。
【0052】
一実施形態では、デバイスは、脊髄の硬膜を穿刺するために使用される。尖端が鋭いので硬膜を容易に穿刺することができ、尖端が長方形またはオジーブ形状のため、神経の裂傷が最小限にとどめられる。さらに、針の拡大によって提供される肩部[802]は、針の最も鋭い部分が脊椎に深く貫通することができないため、追加の安全性を提供する。くぼみ[821]は、操作者が針を引き戻し、針の先端部を脊髄の中心から離して後退させることを許容する一方で、側方ポート開口部[801]が依然として硬膜の下に存在することを確実にする。針の空洞部分と傾斜リード部により、神経および軟膜を含む脊髄の他の部分から離れて、硬膜下に安全に導入することができるガイドワイヤを通過するという選択肢をもたらす。
【0053】
一実施形態では、例えば、(i)短い鋭利な先端、続いて(ii)保持ノッチを特徴とする急速に近位に増加する本体サイズ、および(iii)全体的に固体または中空の構造を特徴とする、記載かつ例示された固体先端トポロジーは、脊髄、特定の脳回路、主要な血管床に近接した神経叢、または他の好適な標的または領域に代表されるが、これらに限定されない解剖学的および生理学的に敏感な構造に隣接する部位、組織、区画、臓器への治療または診断ペイロードの制御貫通および送達に広く使用されると想定される。
【0054】
図7~9を含む、本明細書に記載のデバイスの実施形態は、単独で、または図2~4の装置に関連して、例えば、本明細書に記載の針として、または組織を適切に穿刺するための任意の他の好適な装置もしくはシステムに関連して、採用することができる。
【0055】
本明細書に記載されるデバイスの構築に採用され得る好適な材料としては、ステンレス鋼、チタン、金、ポリエーテルエチルケトン(PEEK)、または本明細書に記載される所望の特性および結果を達成するのに適切な任意の他の材料または材料の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書では本発明の特定の特徴が図示され、説明されてきたが、多くの修正、置換、変更、および同等物がここで、当業者に思いつくであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨内に収まるように、全てのそのような修正および変更を網羅することを意図することを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図9A
図9B