(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】部品実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
H05K13/04 A
(21)【出願番号】P 2022534612
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020026977
(87)【国際公開番号】W WO2022009409
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河口 浩二
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/029704(WO,A1)
【文献】特開2019-216129(JP,A)
【文献】特開2006-313838(JP,A)
【文献】特開2007-189041(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080472(WO,A1)
【文献】特開2007-220836(JP,A)
【文献】特開2011-029253(JP,A)
【文献】特開2016-082087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着ヘッドを利用して基板上に部品を実装する部品実装装置であって、
前記装着ヘッドに設けられ上下方向に延びるノズルホルダと、
前記ノズルホルダの下端に該ノズルホルダに対して上下に摺動可能に取り付けられたノズルと、
前記ノズルを上下に移動可能なノズル昇降機構と、
設定荷重に対して許容される誤差の程度である荷重精度に応じて前記ノズルホルダと前記ノズルとの間の摺動抵抗を含む力の許容範囲を設定し、前記力の計測値を取得して該計測値が前記許容範囲に入るか否かを判定し、前記計測値が前記許容範囲に入らなかったならば前記ノズルを不良であると判定する制御装置と、
を備えた部品実装装置。
【請求項2】
前記力の許容範囲の上限値は、前記荷重精度が高い場合に比べて前記荷重精度が低い場合に大きく設定される、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
装着ヘッドを利用して基板上に部品を実装する部品実装装置であって、
前記装着ヘッドに設けられ上下方向に延びるノズルホルダと、
前記ノズルホルダの下端に該ノズルホルダに対して上下に摺動可能に取り付けられたノズルと、
前記ノズルを上下に移動可能なノズル昇降機構と、
部品ごとに定められた装着荷重の目標値である設定荷重に応じて前記ノズルホルダと前記ノズルとの間の摺動抵抗を含む力の許容範囲を設定し、前記力の計測値を取得して該計測値が前記許容範囲に入るか否かを判定し、前記計測値が前記許容範囲に入らなかったならば前記ノズルを不良であると判定する制御装置と、
を備え、
前記力の許容範囲の上限値は、前記設定荷重が小さい場合に比べて前記設定荷重が大きい場合に大きく設定される、
部品実装装置。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1項に記載の部品実装装置であって、
前記ノズルホルダと前記ノズルとの間の摺動抵抗を含む力を計測する計測装置
を備えた部品実装装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の部品実装装置であって、
前記ノズルホルダと前記ノズルとの間に設けられた弾性体
を備え、
前記力は、前記摺動抵抗及び前記弾性体の弾性力の合計である、
部品実装装置。
【請求項6】
前記力は、前記摺動抵抗そのものである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の部品実装装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の部品実装装置であって、
前記力が予め計測された、複数の前記ノズルを収容するノズルストッカ
を備え、
前記制御装置は、前記部品を実装するにあたり、前記ノズルストッカから前記力が前記許容範囲に入るノズルを選択する、
部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、部品実装装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズル内部に摺動部を有する部品実装装置において、ノズル交換時などに摺動抵抗を測定しノズルの良否判断を行うものが知られている。例えば、特許文献1に記載された部品実装装置では、吸着ノズルとノズルホルダとの間の摺動抵抗を測定し、摺動抵抗が予め設定された設定値を超えたならば、摺動状態が不良であると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/029704号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような部品実装装置では、設定値は実装する部品の大きさやその他の装着条件に関わらず実装に支障がないように、一定の値とされていた。そのため、例えば、基板に部品を実装する際に加える荷重の大きいノズルについては、摺動抵抗が設定値を超えても支障なく実装可能であるにもかかわらず、摺動不良と判定されてノズル交換が必要になることがあった。
【0005】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、装着条件に応じてノズルの良否判断を適切に行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の部品実装装置は、
装着ヘッドを利用して基板上に部品を実装する部品実装装置であって、
前記装着ヘッドに設けられ上下方向に延びるノズルホルダと、
前記ノズルホルダの下端に該ノズルホルダに対して上下に摺動可能に取り付けられたノズルと、
前記ノズルを上下に移動可能なノズル昇降機構と、
装着条件に応じて前記ノズルホルダと前記ノズルとの間の摺動抵抗を含む力の許容範囲を設定し、前記力の計測値を取得して該計測値が前記許容範囲に入るか否かを判定し、前記計測値が前記許容範囲に入らなかったならば前記ノズルを不良であると判定する制御装置と、
を備えている。
【0007】
この部品実装装置では、装着条件に応じてノズルホルダとノズルとの間の摺動抵抗を含む力の許容範囲を設定し、その力の計測値を取得して計測値が許容範囲に入らなかったならばノズルを不良と判定する。そのため、装着条件にかかわらず許容範囲を一律に設定する場合と比べて、ノズルの良否判定を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】ノズル42の動作説明図であり、(a)は下降前、(b)は下降後を示す。
【
図6】コントローラ78の電気的接続を示す説明図。
【
図9】部品実装処理ルーチンを示すフローチャート。
【
図10】生産ジョブデータ182aの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は部品実装装置10の斜視図、
図2は装着ヘッド18の説明図、
図3はノズル42の断面図、
図4はノズル42の外観説明図、
図5はノズル42の動作説明図、
図6はコントローラ78の電気的接続を示す説明図であり、
図7は生産ジョブデータ82aの一例を示す図であり、
図8は生産ジョブデータ82aの一例を示す図である。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、
図1に示した通りとする。
【0010】
部品実装装置10は、
図1に示すように、基板搬送ユニット12と、装着ヘッド18と、ノズル42と、マークカメラ64と、パーツカメラ66と、部品供給ユニット70と、ノズルストッカ90と、各種制御を実行するコントローラ78(
図6参照)とを備えている。
【0011】
基板搬送ユニット12は、前後一対の支持板14,14にそれぞれ取り付けられたコンベアベルト16,16(
図1では片方のみ図示)により基板Sを左から右へと搬送する。また、基板搬送ユニット12は、基板Sの下方に配置された支持ピン17により基板Sを下から持ち上げて支持板14,14の屋根部14a,14aに押し当てることで基板Sを固定し、支持ピン17を下降させることで基板Sの固定を解除する。
【0012】
装着ヘッド18は、XY平面を移動可能である。具体的には、装着ヘッド18は、X軸スライダ20がガイドレール22,22に沿って左右方向に移動するのに伴って左右方向に移動し、Y軸スライダ24がガイドレール26,26に沿って前後方向に移動するのに伴って前後方向に移動する。この装着ヘッド18は、
図2に示すように、ノズルホルダ30を軸回転及び上下動可能に支持する支持筒19を有している。ノズルホルダ30は、上下方向に延びる部材であり、上部に回転伝達ギヤ30aとフランジ30bを有し、下部にノズル42を保持している。回転伝達ギヤ30aは、ノズル回転用モータ31の駆動ギヤ32に噛み合っている。そのため、ノズル回転用モータ31が回転すると、それに伴ってノズルホルダ30が軸回転する。フランジ30bは、上下方向に延びる第1アーム33に設けられた第1係合部33aの上片及び下片の間に挟まれている。第1アーム33は、第1リニアモータ34の可動子に連結されている。第1リニアモータ34の固定子は、装着ヘッド18に固定されている。そのため、第1リニアモータ34の可動子が上下動すると、それに伴って第1アーム33は上下方向への移動をガイドするガイド部材35に沿って上下動し、これと共に第1係合部33aに挟まれたフランジ30b、ひいてはノズルホルダ30が上下動する。ノズルホルダ30の下端側面には、互いに対向する位置に一対の逆J字状の誘導溝30c(
図4参照)が設けられている。
図2及び
図3に示すように、ノズルホルダ30の側面には、上側環状突起30dと下側環状突起30eとが間をあけて設けられている。ノズルホルダ30には、ロックスリーブ36が被せられている。このロックスリーブ36の上部開口の直径は、ノズルホルダ30の上側環状突起30dや下側環状突起30eの直径よりも小さいため、ロックスリーブ36はノズルホルダ30から脱落することなく上下動可能となっている。ロックスリーブ36の上端面とノズルホルダ30の上側環状突起30dとの間には、ロックスプリング37が配置されている。
【0013】
ノズル42は、圧力を利用して、ノズル先端に部品Pを吸着したり、ノズル先端に吸着している部品Pを離したりするものである。このノズル42は、
図3及び
図5に示すように、ノズル固定具であるノズルスリーブ44の上端面に、ノズルスプリング46を介して弾性支持されている。ノズル42は、内部に上下方向に延びる通気路42aを有している。通気路42aには、負圧や正圧を供給することが可能である。ノズル42は、部品Pを吸着する吸着口42bのやや上方の位置から水平に張り出したフランジ42cと、上端から水平に張り出したバネ受け部42dと、上端からフランジ42cまでの途中に設けられた段差面42eとを有している。ノズル42のうち段差面42eからバネ受け部42dまでの間は小径の軸部42fとなっている。この軸部42fの側面には、上下方向に延びる一対の長穴42gが互いに対向するように設けられている。ノズルスリーブ44は、ノズル42の軸部42fに対して相対的に上下動可能なようにノズル42に装着されている。ノズルスリーブ44は、直径方向に貫通したピン44aと一体化されている。このピン44aは、ノズル42の一対の長穴42gに挿通されている。そのため、ノズル42は、ピン44aに対して長穴42gの延びる方向つまり上下方向にスライド可能となっている。ノズルスプリング46は、ノズルスリーブ44の上端面とノズル42のバネ受け部42dとの間に配置されている。
【0014】
ノズルスリーブ44は、ノズルホルダ30を構成する部品であり、ノズル42を弾性支持した状態で、ノズルホルダ30の誘導溝30cに着脱可能に固定されている。ノズルスリーブ44に設けられたピン44aは、誘導溝30cの終端とロックスプリング37によって下向きに付勢されたロックスリーブ36の下端との間に挟まれた状態で固定される。ノズル42を弾性支持したノズルスリーブ44をノズルホルダ30に固定するにあたっては、まず、ノズルスリーブ44のピン44aをノズルホルダ30の誘導溝30c(
図4参照)に沿って上方向に移動させていく。すると、ピン44aがロックスリーブ36の下端に当たる。その後、ロックスプリング37の弾性力Fsに抗してロックスリーブ36をピン44aで持ち上げながら、誘導溝30cに沿ってピン44aが進入するようにロックスリーブ36に対してノズルスリーブ44と共にノズル42を回転させる。すると、ピン44aは誘導溝30cの水平部分を経て最後に下方向に移動して誘導溝30cの終端に至る。このとき、ピン44aはロックスプリング37によって下向きに付勢されたロックスリーブ36により誘導溝30cの終端に押しつけられた状態となる。その結果、ノズルスリーブ44はピン44aを介してノズルホルダ30にロックされる。なお、ノズル42を弾性支持したノズルスリーブ44をノズルホルダ30から外すときには、固定した手順と逆の手順を行えばよい。
【0015】
図2に戻り、第1アーム33の下端には、第2リニアモータ50の固定子が固定されている。この第2リニアモータ50の可動子には、第2アーム51が連結されている。第2アーム51は、アーム先端にカムフォロワからなる第2係合部52を備えると共に、アーム中間に負荷を検出するロードセル53を備えている。第2係合部52はノズル42のフランジ42cの上面と対向する位置に配置されている。第2リニアモータ50の可動子が下方に移動すると、それに伴って第2アーム51の第2係合部52がフランジ42cをノズルスプリング46の弾性力Fsに抗して下方へ押圧するため、ノズル42はノズルスリーブ44のピン44aつまりノズルホルダ30に対して下方へ移動する(
図3の2点鎖線参照)。その後、第2リニアモータ50の可動子が上方に移動すると、フランジ42cを下方へ押圧する力が弱まるため、ノズル42はノズルスプリング46の弾性力Fsによりピン44aつまりノズルホルダ30に対して上方へ移動する。
【0016】
図1に戻り、マークカメラ64は、X軸スライダ20の下端に、撮像方向が基板Sに対向する向きとなるように設置され、装着ヘッド18の移動に伴って移動可能である。このマークカメラ64は、基板Sに設けられた図示しない基板位置決め用の基準マークを撮像し、得られた画像をコントローラ78へ出力する。
【0017】
パーツカメラ66は、部品供給ユニット70と基板搬送ユニット12との間であって左右方向の長さの略中央にて、撮像方向が上向きとなるように設置されている。このパーツカメラ66は、その上方を通過するノズル42に吸着された部品Pを撮像し、撮像により得られた画像をコントローラ78へ出力する。
【0018】
部品供給ユニット70は、リール72と、フィーダ74とを備えている。リール72には、部品Pを収容した凹部が長手方向に沿って並ぶように形成されたテープが巻かれている。フィーダ74は、リール72に巻かれたテープの部品Pを所定の部品供給位置へ送り出す。リール72に巻かれたテープは部品Pを覆うフィルムを有しているが、部品供給位置に至るとフィルムが剥がされるようになっている。そのため、部品供給位置に配置された部品Pはノズル42によって吸着可能な状態となる。
【0019】
ノズルストッカ90は、複数のノズル42をストックする部材であり、部品供給ユニット70の隣に配置されている。ノズル42は、部品Pを装着する基板Sの種類や部品Pの種類に適したものに交換される。
【0020】
コントローラ78は、
図6に示すように、CPU78aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM78b、各種データを記憶するHDD78c、作業領域として用いられるRAM78dなどを備えている。また、コントローラ78には、マウスやキーボードなどの入力装置78e、液晶ディスプレイなどの表示装置78fが接続されている。このコントローラ78は、フィーダ74に内蔵されたフィーダコントローラ77や管理コンピュータ80と双方向通信可能なように接続されている。また、コントローラ78は、基板搬送ユニット12やX軸スライダ20、Y軸スライダ24、ノズル回転用モータ31、第1及び第2リニアモータ34,50、ノズル42の圧力調整装置43、マークカメラ64、パーツカメラ66へ制御信号を出力可能なように接続されている。また、コントローラ78は、ロードセル53からの検出信号、マークカメラ64やパーツカメラ66からの画像信号を受信可能に接続されている。例えば、コントローラ78は、マークカメラ64で撮像された基板Sの画像を処理して基準マークの位置を認識することにより基板Sの位置(座標)を認識する。また、コントローラ78は、パーツカメラ66で撮像された画像に基づいてノズル42に部品Pが吸着されているか否かの判断やその部品Pの形状、大きさ、吸着位置などを判定する。
【0021】
HDD78cには、上限値情報79が記憶されている。上限値情報79には、
図7に示すように、装着荷重に関する条件(装着条件の一種)と摺動抵抗Frの許容範囲の上限値とが対応付けて記憶されている。なお、摺動抵抗Frとは、ノズル42がノズルスリーブ44に対して摺動する際の抵抗であり、装着荷重とはノズル42が基板Sに部品Pを押し当てるときの荷重である。また、装着荷重に関する条件とは、部品ごとに定められた装着荷重の目標値である設定荷重や、設定荷重に対して許容される誤差の程度である荷重精度を含む条件である。摺動抵抗Frの許容範囲の上限値は、設定荷重が大きいほど大きく設定されている。また、摺動抵抗Frの許容範囲の上限値は、荷重精度が低い、つまり設定荷重に対して許容される誤差の程度が大きいほど、大きく設定されている。ここでは、設定荷重に対して許容される誤差の程度が小さく、例えば設定荷重に対して±20%程度の誤差が許容される状態のことを荷重精度がHighであると称し、設定荷重に対して許容される誤差の程度が大きく、例えば設定荷重に対して±60%程度の誤差が許容される状態のことを荷重精度がLowであると称する。
【0022】
管理コンピュータ80は、
図6に示すように、パソコン本体82と入力デバイス84とディスプレイ86とを備えており、オペレータによって操作される入力デバイス84からの信号を入力可能であり、ディスプレイ86に種々の画像を出力可能である。パソコン本体82の図示しないメモリには、生産ジョブデータ82aが記憶されている。生産ジョブデータ82aには、
図8に示すように、部品実装装置10において部品Pを実装する順序と装着条件とを対応付けて記憶されている。装着条件には、部品Pの種類及び装着荷重に関する条件が含まれる。装着荷重に関する条件には、設定荷重及び荷重精度が含まれる。
【0023】
次に、部品実装装置10のコントローラ78が、生産ジョブに基づいて基板Sへ部品Pを実装する動作について説明する。
図9は、部品実装処理ルーチンのフローチャートである。部品実装処理ルーチンのプログラムは、コントローラ78のHDD78cに格納されている。
【0024】
コントローラ78のCPU78aは、このルーチンを開始すると、まずCPU78aは、装着条件を取得する(ステップS110)。具体的には、CPU78aは、装着順序が#001ならば部品Pの種類がA、設定荷重が0.5[N]、荷重精度がLow、装着順序が#010ならば部品Pの種類がA、設定荷重が0.5[N]、荷重精度がHigh、…という具合に、部品Pの装着順序に対応する部品Pの種類、設定荷重及び荷重精度を生産ジョブデータ82aから取得する。
【0025】
次に、CPU78aは、許容範囲を設定する(ステップS120)。具体的には、設定荷重が0.5Nであり荷重精度がLowならば摺動抵抗Frの上限値は0.005[N]、設定荷重が0.5Nであり荷重精度がHighならば摺動抵抗Frの上限値は0.01[N]…、という具合に、ステップS110で取得した設定荷重及び荷重精度に対応する摺動抵抗Frの上限値を上限値情報79から取得する。
【0026】
次に、CPU78aは、摺動抵抗Frの計測値を取得する(ステップS130)。具体的には、CPU78aは、図示しない電源を制御して、第2リニアモータ50への供給電流を漸増させ、第2係合部52を下降させて、ノズルスプリング46の弾性力Fsに抗してノズル42をノズルホルダ30のノズルスリーブ44に対して下降させる。そして、CPU78aは、第2リニアモータ50に設けられた図示しないセンサの検出値に基づいて第2係合部52の下降量(ストローク長さL)を取得すると共に、ロードセル53の検出値に基づいて作用力F(ノズル42とノズルスリーブ44との間の摺動抵抗Frとノズルスプリング46の弾性力Fsとの合計)を取得する。そして、ノズルスプリング46のばね定数にストローク長さLを乗じて弾性力Fsを求める。そして、作用力Fから弾性力Fsを引いて摺動抵抗Frの計測値を取得する。
【0027】
次に、CPU78aは、ノズル42の良否判定を行う(S140)。具体的には、CPU78aは、ステップS130で取得した摺動抵抗Frの計測値が、ステップS120で取得した摺動抵抗Frの許容範囲の上限値を超えているか否か判定する。摺動抵抗Frの計測値が摺動抵抗Frの許容範囲の上限値を超えているならば、CPU78aは、ノズルホルダ30のノズルスリーブ44に取り付けられているノズル42が不良であると判定する。一方、摺動抵抗Frの計測値が摺動抵抗Frの許容範囲の上限値を超えていないならば、CPU78aは、ノズルホルダ30のノズルスリーブ44に取り付けられているノズル42が良好であると判定する。
【0028】
ステップS140で、ノズルホルダ30のノズルスリーブ44に取り付けられているノズル42が不良であると判定したならば、CPU78aは、ノズル不良を報知する(ステップS150)。具体的には、CPU78aは、表示装置78fにノズル不良である旨を表示させて、部品実装処理ルーチンを終了する。
【0029】
一方、ステップS140でノズル42が良好であると判定したならば、CPU78aは、ノズル42をフィーダ74へ移動させる(ステップS160)。具体的には、CPU78aは、X軸及びY軸スライダ20,24を制御することにより、部品供給ユニット70のうち所定の部品Pを供給するフィーダ74の部品供給位置へノズル42を移動させる。
【0030】
次に、CPU78aは、ノズル42の先端に部品Pを吸着させる(ステップS170)。具体的には、CPU78aは、第1リニアモータ34の可動子を下降させることによりノズルホルダ30を下方へ移動させる。それと並行して、CPU78aは、ノズル42の先端が部品Pに当接する前に、第2リニアモータ50の可動子を下降させることによりノズルホルダ30に対してノズル42を最下端へ移動させる。その後、CPU78aは、ロードセル53からの検出信号に基づいてノズル42の先端が部品Pに接触したと判断すると、その反力が設定押付力と等しくなるように第2リニアモータ50の可動子を上昇させる。これにより、部品Pがノズル42によって損傷を受けないようにすることができる。また、CPU78aは、ノズル42の先端が部品Pに当接した時点で吸着口42bに負圧が供給されるように圧力調整装置43を制御する。これにより、部品Pはノズル42の先端に吸着される。
【0031】
次に、CPU78aは、パーツカメラ66により部品Pを撮像する(ステップS180)。具体的には、CPU78aは、第2アーム51の第2係合部52がフランジ42cの上方に離間するように第2リニアモータ50を制御すると共に、部品Pが所定の高さになるように第1リニアモータ34を制御する。これと並行して、CPU78aは、ノズル42の中心位置がパーツカメラ66の撮像領域の予め定められた基準点と一致するようにX軸及びY軸スライダ20,24を制御し、ノズル42の中心位置が基準点に一致した時点でパーツカメラ66により部品Pを撮像する。CPU78aは、この撮像画像を解析することにより、基準点に対する部品Pの位置を把握する。
【0032】
次に、CPU78aは、ノズル42を基板S上へ移動させる(ステップS190)。具体的には、CPU78aは、X軸及びY軸スライダ20,24を制御することにより、基板Sのうち部品Pを実装させる所定位置の上方へノズル42を移動させる。
【0033】
次に、CPU78aは、部品Pを基板Sの所定位置に所定の装着条件で実装させる(ステップS200)。具体的には、CPU78aは、撮像画像に基づいて部品Pの姿勢が予め定めた所定の姿勢になるようにノズル回転用モータ31を制御する。また、CPU78aは、第1リニアモータ34の可動子を下降させることによりノズルホルダ30を下方へ移動させる。それと並行して、CPU78aは、ノズル42の先端に吸着されている部品Pが基板Sに当接する前に、第2リニアモータ50の可動子を下降させることによりノズルホルダ30に対してノズル42を最下端へ移動させる。その後、CPU78aは、ロードセル53からの検出信号に基づいて部品Pが基板Sに接触したと判断すると、その反力が設定押付力と等しくなるように第2リニアモータ50の可動子を上昇させる。これにより、部品Pが基板Sとの衝突によって損傷を受けないようにすることができる。そして、CPU78aは、部品Pの装着荷重が設定荷重に対する荷重精度の範囲内に収まるように、第1リニアモータ34及び第2リニアモータ50を制御する。荷重精度がLowならば、設定荷重に対して許容される誤差が大きいため、ノズル42が基板Sに向かう速度が大きかったとしても装着荷重が設定荷重に対する荷重精度の範囲内に収まり易い。そのため、その速度を大きく設定することができる。一方、設定荷重がHighならば、設定荷重に対して許容される誤差が小さいため、ノズル42が基板Sに向かう速度が大きいと装着荷重が設定荷重に対する荷重精度の範囲内に収まり難い。そのため、その速度を低く設定する。そして、CPU78aは、ノズル42の先端に正圧が供給されるように圧力調整装置43を制御する。これにより、部品Pはノズル42から離脱して基板Sの所定位置に実装される。
【0034】
次に、CPU78aは、基板Sへ実装すべき部品Pの実装が完了したか否かを判定し(ステップS200)、完了していなければ次に装着する部品PについてステップS110以降の処理を実行し、完了したならば本ルーチンを終了する。
【0035】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の部品実装装置10が本開示の部品実装装置に相当し、ノズルスリーブ44を備えたノズルホルダ30がノズルホルダに相当し、ノズル42がノズルに相当し、第2リニアモータ50、第2アーム51及び第2係合部52がノズル昇降機構に相当し、コントローラ78が制御装置に相当する。また、ロードセル53が計測装置に相当し、ノズルスプリング46が弾性体に相当し、ノズルストッカ90がノズルストッカに相当する。
【0036】
以上詳述した部品実装装置10では、装着条件に基づいてノズルスリーブ44とノズル42との間の摺動抵抗Frの許容範囲を設定し、摺動抵抗Frの計測値を取得して計測値が許容範囲に入らなかったならばノズル42を不良と判定する。そのため、装着条件にかかわらず許容範囲を一律に設定する場合と比べて、ノズル42の良否判定を適切に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態の部品実装装置10では、装着条件は、部品実装時の装着荷重に関する条件である。
図7では、設定荷重が大きいほど許容範囲の上限値を大きく設定しているため、設定荷重が大きい部品Pの実装に使用されるノズル42は摺動抵抗Frが大きくても不良判定され難くなる。また、例えば荷重精度が低い、つまり設定荷重に対して許容される誤差の程度が大きいほど、許容範囲の上限値を大きく設定しているため、荷重精度が低く設定された部品Pの実装に使用するノズル42は不良判定され難くなる。
【0038】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば上述した実施形態では、装着条件は装着荷重に関する条件であり、装着荷重に関する条件に応じて摺動抵抗Frの許容範囲の上限値を設定したがこれに限られない。例えば、パソコン本体82には、
図10に示すように、部品Pを実装する順序と部品Pの種類とを対応付けて記憶した生産ジョブデータ182aが記憶されていてもよく、HDD78cには、部品Pの種類と摺動抵抗Frの許容範囲の上限値とを対応付けて記憶した上限値情報179が記憶されていてもよい。更に、CPU78aは、
図11に示すように生産ジョブデータ182aの装着順序に対応する部品Pの種類を取得すると共に、生産ジョブデータ182aから取得した部品Pの種類に対応する摺動抵抗Frの許容範囲の上限値を上限値情報179から取得し、許容範囲を設定してもよい。こうすれば、実装する部品Pの種類に応じて許容範囲が設定され、部品Pを実装するのには適さないノズル42が不良判定されやすくなる。また、装着条件は部品実装時のノズルの下降速度または加速度に関する条件であり、条件に応じて摺動抵抗Frの許容範囲の上限値を設定するようにしてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、摺動抵抗Frを用いてノズル42の良否判定を行ったがこれに限られない。例えば、摺動抵抗Frと弾性力Fsとの合計を利用してノズル42の良否判定を行ってもよい。こうすれば、摺動抵抗Fr及びノズルスプリング46の弾性力Fsの合計は、ノズル42をノズルスプリング46の弾性力Fsに抗して押下したときの作用力Fとなるため、比較的容易に計測することができる。
【0041】
上述した実施形態では、ステップS140でノズル42が不良判定されたあと、ノズル42の不良を報知して、実装処理ルーチンを終了したがこれに限られない。例えば、ノズルストッカ90には、摺動抵抗Frが予め計測された複数のノズル42が収容されており、ステップS140でノズル42が不良判定されたあと、ノズルストッカ90から摺動抵抗Frが許容範囲に入るノズル42を選択してもよい。また、上述した実施形態では、ノズル42をノズルスリーブ44に装着したあとに、ノズル42の良否判定を行ったがこれに限られない。例えば、ノズルストッカ90には、摺動抵抗Frが予め計測された複数のノズル42が収容されており、ノズル42をノズルスリーブ44に装着するまえに、CPU78aは、ノズルストッカ90から、摺動抵抗Frが摺動抵抗Frの許容範囲の上限値を超えないノズル42を選択してもよい。こうすれば、良好と判定されたノズル42が使用されるため部品Pの実装に支障をきたし難くなる。
【0042】
上述した実施形態では、ロードセル53の検出値を作用力Fの計測値として取得したがこれに限られない。作用力Fは、第2リニアモータ50に供給する電流に応じたものとなるため、例えば、第2リニアモータ50に供給する電流を計測して、作用力Fの計測値を取得してもよい。
【0043】
上述した実施形態では、摺動抵抗Frの計測には第2アーム51に設けられたロードセル53を利用したがこれに限られない。例えば、部品実装装置10にはロードセル53が設けられておらず、摺動抵抗Frの計測には、部品実装装置10とは別の装置として設けられた荷重測定装置を用いてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、
図3に示すように、ノズルホルダ30の下端に設けられたノズルスリーブ44にノズル42が弾性支持されていたがこれに限られない。例えば、
図12に示す吸着ユニット200のように、ノズルホルダ230に対してノズル242のスライド部242aが摺動可能に取り付けられており、ノズルホルダ230と吸着部242bとの間にノズルスプリング246が設けられていてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、装着ヘッド18としてノズル42を着脱可能に保持するノズルホルダ30を1つだけ備えていたがこれに限られない。例えば、こうしたノズルホルダ30を、上下軸を回転中心とするロータの周囲に等角度間隔で複数設けられていてもよい。構成については、国際公開2014/080472号パンフレット
図6を参照されたい。
【0046】
上述した実施形態では、ノズル42の良否判定は部品Pの装着順序が変わるごとに実施されたがこれに限られない。例えば、ノズル42が交換されるごとにノズル42の良否判定を実施してもよいし、設定時間ごと(例えば、2時間ごと)にノズル42の良否判定を実施してもよいし、部品Pの装着条件が変わるごとにノズル42の良否判定を実施してもよい。
【0047】
ここで、本開示の部品供給装置は、以下のように構成してもよい。例えば、本開示の部品実装装置において、前記ノズルホルダと前記ノズルとの間の摺動抵抗を含む力を計測する計測装置を備えていてもよい。なお、計測装置は、部品実装装置の一部として設けられていてもよいし、部品実装装置とは別の装置として設けられていてもよい。
【0048】
本開示の部品実装装置において、前記装着条件は、部品実装時の装着荷重に関する条件としてもよい。なお、装着荷重とは、ノズルが基板に部品を押し当てるときの荷重のことをいう。また、装着荷重に関する条件とは、部品ごとに定められた装着荷重の目標値である設定荷重や、設定荷重に対して許容される誤差の程度である荷重精度を含む条件をいう。こうすれば、部品実装時の装着荷重に関する条件に応じて許容範囲が設定される。そのため、例えば設定荷重が大きいほど許容範囲の上限値を大きくすれば、設定荷重が大きい部品の実装に使用されるノズルは摺動抵抗が大きくても不良判定されにくくなる。また、例えば荷重精度が低い、つまり設定荷重に対して許容される誤差の程度が大きいほど、許容範囲の上限値を大きく設定すれば、荷重精度が低く設定された部品の実装に使用するノズルは不良判定されにくくなる。
【0049】
本開示の部品実装装置において、前記装着条件は、実装する前記部品の種類としてもよい。こうすれば、実装する部品の種類に応じて許容範囲が設定され、実装する部品の種類に応じたノズルの良否判定が行われる。そのため、その部品を実装するのには適さないノズルは、不良判定されやすくなる。
【0050】
本開示の部品実装装置において、前記ノズルホルダと前記ノズルとの間に設けられた弾性体を備え、前記力は、前記摺動抵抗及び前記弾性体の弾性力の合計としてもよい。こうすれば、摺動抵抗及び弾性体の弾性力の合計は、ノズルを弾性体の弾性力に抗して押下したときの作用力となるため、比較的容易に計測することができる。なお、弾性体の弾性力は弾性体のばね定数及びストローク長さから計算で求めることができるため、作用力から弾性力を引いた値が摺動抵抗になる。
【0051】
本開示の部品実装装置において、前記力は、前記摺動抵抗そのものとしてもよい。
【0052】
本開示の部品実装装置において、前記力が予め計測された、複数の前記ノズルを収容するノズルストッカを備え、前記制御装置は、前記部品を実装するにあたり、前記ノズルストッカから前記力が前記許容範囲に入るノズルを選択してもよい。こうすれば、良好と判定されたノズルが使用されるため部品の実装に支障をきたし難くなる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、部品実装装置や部品実装装置を組み込んだ部品実装システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 部品実装装置、12 基板搬送ユニット、14 支持板、14a 屋根部、16 コンベアベルト、17 支持ピン、18 装着ヘッド、19 支持筒、20 X軸スライダ、22 ガイドレール、24 Y軸スライダ、26 ガイドレール、30 ノズルホルダ、30a 回転伝達ギヤ、30b フランジ、30c 誘導溝、30d 上側環状突起、30e 下側環状突起、31 ノズル回転用モータ、32 駆動ギヤ、33 第1アーム、33a 第1係合部、34 第1リニアモータ、35 ガイド部材、36 ロックスリーブ、37 ロックスプリング、42 ノズル、42a 通気路、42b 吸着口、42c フランジ、42d バネ受け部、42e 段差面、42f 軸部、42g 長穴、43 圧力調整装置、44 ノズルスリーブ、44a ピン、46 ノズルスプリング、50 第2リニアモータ、51 第2アーム、52 第2係合部、53 ロードセル、64 マークカメラ、66 パーツカメラ、70 部品供給ユニット、72 リール、74 フィーダ、77 フィーダコントローラ、78 コントローラ、78a CPU、78b ROM、78c HDD、78d RAM、78e 入力装置、78f 表示装置、79,179 上限値情報、80 管理コンピュータ、82 パソコン本体、82a,182a 生産ジョブデータ、84 入力デバイス、86 ディスプレイ、90 ノズルストッカ、200 吸着ユニット、230 ノズルホルダ、242 ノズル、242a スライド部、242b 吸着部、246 ノズルスプリング、F 作用力、Fr 摺動抵抗、Fs 弾性力、L ストローク長さ、P 部品、S 基板。