(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】高圧ケーブルの半導電層組成物
(51)【国際特許分類】
H01B 1/24 20060101AFI20240626BHJP
H01B 9/02 20060101ALI20240626BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240626BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240626BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240626BHJP
C08K 5/372 20060101ALI20240626BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01B1/24 Z
H01B9/02 B
C08L23/08
C08L33/04
C08K5/13
C08K5/372
C08K5/098
(21)【出願番号】P 2022538896
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2020018331
(87)【国際公開番号】W WO2021132971
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0173029
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】リー イン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リム ジェ ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム キシク
(72)【発明者】
【氏名】パク サン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジェギュ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-072133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B1/00-19/04
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンブチルアクリレート、フェノール系化合物、チオエーテル系化合物、金属ステアレート、かさ密度値が220~380Kg/m
3であるカーボンブラック、および架橋剤を含むケーブル用半導電性樹脂組成物であって、
前記フェノール系化合物は、2,2’-チオジエチレン-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-チオ-ビス-(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、ジエチル((3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート、1,3,4-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゼン)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、
オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、およびN,N’-ビス-(3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジンからなる群から選択され、
前記チオエーテル系化合物は、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジオクタデシルジスルフィド、ビス[2-メチル-4-(3-n-ドデシルチオプロピオニルオキシ)-5-tert-ブチルフェニル]スルフィド、ペンタエリスリトール-テトラキス-(3-ラウリルチオプロピオネート)、3,3’-チオビスプロパン酸ジメチルエステルポリマー、およびジステアリルチオジプロピオネートからなる群から選択されることを特徴とする、ケーブル用半導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレンブチルアクリレートは、重量平均分子量が1,000g/mol~1,000,000g/molであることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル用半導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋剤は、1,1-(ターシャリブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ノルマル-ブチル-4,4-(ビス-ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド(dicumylperoxide;DCP)、パーブチルパーオキサイド、1,1-ビス(ターシャリ-ブチルパーオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-ターシャリ-ブチルパーオキシヘキサン、ターシャリ-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ターシャリ-ブチルパーオキサイド、および2,5-ジメチル-2,5-ジ-ターシャリ-ブチルパーオキシルヘキサンからなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のケーブル用半導電性樹脂組成物。
【請求項4】
前記金属ステアレートは、亜鉛ステアレート、カルシウムステアレート、アルミニウムステアレート、およびマグネシウムステアレートを含むことを特徴とする、請求項1に記載のケーブル用半導電性樹脂組成物。
【請求項5】
135℃での体積抵抗が600Ω・cm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル用半導電性樹脂組成物。
【請求項6】
前記半導電性樹脂組成物に加工助剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のケーブル用半導電性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載のケーブル用半導電性樹脂組成物から製造される、ケーブル用半導電層を有するケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧電力ケーブルに用いられる半導電性樹脂に関する。具体的に、ポリオレフィン系ベース樹脂に、カーボンブラック、添加剤、架橋剤、酸化剤、および潤滑剤を含み、加工性および機械的強度に優れ、特に、高温でも体積抵抗値に優れた半導電性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルに用いる半導電性物質は、ケーブルの絶縁体層と導体との間に配置し、空間電荷などが発生しないようにすることでケーブルの寿命を長期間維持する中問層に主に用いられている。
【0003】
かかる半導電性物質は、温度の上昇に伴って体積抵抗が増加するが、これは、温度によって半導電性物質の伝導性ネットワークが破壊されながら電子の通路を妨害することになるため、体積抵抗値が増加するのである。
【0004】
上記の問題を解決するために、半導電性物質に、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ(carbon nanotube)、およびカーボンブラック(carbon black)などの導電性物質をさらに含ませることができる。しかしながら、導電性物質をさらに含む場合、コストが大きく増加するだけでなく、半導電性物質の機械的強度も低くなり、特に、前記導電性物質の凝集現象(aggregation)によって発生する突起現象などにより均一な電気伝導度を有しにくいため、これを解決することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の出願人は、上記の課題を解決するために、カーボンブラックを用いることにあたり、高温でも優れた体積抵抗を有し、部分炭化などの不良が発生することがなく、また、引張強度および伸びに優れた半導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ベース樹脂に対して、フェノール系化合物、チオエーテル系化合物、金属ステアレート、かさ密度(Bulk density)値が220~380kg/m3であるカーボンブラック、および架橋剤を含んで製造されるケーブル用半導電性樹脂組成物を提供する。
【0007】
本発明の一態様において、前記ベース樹脂は、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアクリレート、およびエチレンエチルアセテートなどから選択される1つまたは2つ以上を含んでもよい。
【0008】
本発明の一態様において、前記ベース樹脂は、重量平均分子量が1,000g/mol~1,000,000g/molであってもよい。
【0009】
本発明の一態様において、前記フェノール系化合物は、2,2’-チオジエチレン-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-チオ-ビス-(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、ジエチル((3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート、1,3,4-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゼン)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイト、およびN,N’-ビス-(3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジンなどからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0010】
本発明の一態様において、前記チオエーテル系化合物は、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジオクタデシルジスルフィド、ビス[2-メチル-4-(3-n-ドデシルチオプロピオニルオキシ)-5-tert-ブチルフェニル]スルフィド、ペンタエリスリトール-テトラキス-(3-ラウリルチオプロピオネート)、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3,3’-チオビスプロパン酸ジメチルエステルポリマー、およびジステアリルチオジプロピオネートなどからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0011】
本発明の一態様において、前記架橋剤は、1,1-(ターシャリブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ノルマル-ブチル-4,4-(ビス-ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド(dicumylperoxide;DCP)、パーブチルパーオキサイド、1,1-ビス(ターシャリ-ブチルパーオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-ターシャリ-ブチルパーオキシヘキサン、ターシャリ-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ターシャリ-ブチルパーオキサイド、および2,5-ジメチル-2,5-ジ-ターシャリ-ブチルパーオキシルヘキサンなどからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0012】
本発明の一態様において、前記金属ステアレートは、亜鉛ステアレート、カルシウムステアレート、アルミニウムステアレート、およびマグネシウムステアレートなどを含んでもよい。
【0013】
本発明の一態様において、前記半導電性樹脂組成物は、135℃での体積抵抗が600Ω・cm以下であってもよい。
【0014】
本発明の一態様において、前記半導電性樹脂組成物に加工助剤をさらに含んでもよい。
【0015】
また、本発明は、前記半導電性樹脂組成物から製造される半導電層を有するケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアセテートなどのポリオレフィン系樹脂をベース樹脂とし、特定の構造の酸化剤の組み合わせと、特定の特性のカーボンブラックを組み合わせることで、加工性が高く、引張強度および伸びなどの機械的物性に優れるとともに、特に、高温でも体積抵抗に優れた半導電性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、具体例または実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。但し、下記具体例または実施例は本発明を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な形態で実現可能である。
【0018】
また、別に定義されない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本発明において説明に用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0019】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈で特に指示されない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0020】
また、ある部分がある構成要素を「含む」とするときに、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0021】
また、本発明の組成物は、特に限定しない限り、重量比を意味する。
【0022】
本発明は、高圧電力ケーブルの内部半導電層の形成に適した半導電性樹脂組成物を提供するものであって、以下で、本発明について具体的に説明する。
【0023】
本発明は、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアセテートなどのポリオレフィン系樹脂をベース樹脂とし、フェノール系酸化防止剤およびチオエーテル系酸化防止剤の混合酸化防止剤、かさ密度値が220~380kg/m3であるカーボンブラック、および架橋剤を含んで製造されるケーブル用半導電性樹脂組成物を提供する。
【0024】
また、本発明は、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアセテートなどのポリオレフィン系樹脂をベース樹脂とし、フェノール系酸化防止剤およびチオエーテル系酸化防止剤の混合酸化防止剤、かさ密度値が220~380kg/m3であるカーボンブラック、および架橋剤、金属エステル系化合物、並びに滑剤から選択される何れか1つ以上の成分をさらに含んで製造されるケーブル用半導電性樹脂組成物を提供する。
【0025】
特に限定されないが、本発明の具体例として、ベース樹脂100重量部に対して、フェノール系化合物0.1~3重量部、チオエーテル系化合物0.1~3重量部、かさ密度値が220~380kg/m3であるカーボンブラック30~100重量部、および架橋剤0.1~5重量部を含んで製造されるケーブル用半導電性樹脂組成物が挙げられる。
【0026】
特に限定されないが、本発明の具体例として、ベース樹脂100重量部に対して、フェノール系化合物0.1~3重量部、チオエーテル系化合物0.1~3重量部、金属ステアレート0.1~5重量部、かさ密度値が220~380kg/m3であるカーボンブラック30~100重量部、および架橋剤0.1~5重量部を含んで製造されるケーブル用半導電性樹脂組成物が挙げられる。
【0027】
前記半導電性樹脂組成物は、電力ケーブルにおいて導電層と絶縁層との間の半導電層に用いられ、電気抵抗性が10-9~103S/cmの値を有することができる。
【0028】
しかし、半導電性樹脂組成物の温度が上昇するに伴って体積抵抗値が増大するという問題が発生する。
【0029】
本発明では、前記組成物が特殊構造のカーボンブラックを含むことで、高温でも体積抵抗値が低いため、高圧電力ケーブルに使用した際に、高温でも部分放電を抑え、電気的ストレスを緩和する効果を有し、さらには、引張強度および伸びも増加する効果を有する。
【0030】
以下、本発明の前記組成物の成分について説明する。
【0031】
前記ベース樹脂は、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアクリレート、およびエチレンエチルアセテートから選択される1つまたは2つ以上が混合されたベース樹脂であり、特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が1,000g/mol~1,000,000g/molである共重合体を用いることが好ましく、より好ましくは5,000g/mol~800,000g/mol、さらに好ましくは10,000g/mol~600,000g/molのものを用いてもよい。
【0032】
また、前記エチレンブチルアセテート中のブチルアセテートの含有量の割合が10~30%であってもよく、好ましくは15~25%であり、より好ましくは16~20%であってもよい。
【0033】
前記ベース樹脂を単独でまたは混合してベース樹脂を製造し、前記混合酸化防止剤およびカーボンブラックなどと組み合わせて半導電性樹脂組成物を製造することで、加工性がよく、柔軟性および耐久性に優れる。また、優れた導電体および絶縁体との密着度を有しなければならない電力ケーブルの半導電性樹脂のような素材に好適に使用できる。
【0034】
次に、本発明のカーボンブラックについて説明する。本発明のカーボンブラックは、かさ密度が220~380kg/m3の値を有してもよく、好ましくは300~375kg/m3の値を有し、より好ましくは300~330kg/m3の値を有してもよい。前記カーボンブラックのかさ密度の範囲を満たす場合、本発明の効果を著しく向上させることができる。本発明において、前記カーボンブラックの粒子はナノサイズであり、好ましくは10~100nmのものが使用できる。上記の同一の組成で、前記カーボンブラックのかさ密度値が上記の値を有する場合、高温での体積抵抗の増加が著しく抑えられる結果を有し、特に、90℃以上の温度で非常に優れた体積抵抗を有する。例えば、本発明の上記の範囲内の場合、実施例と比較例で、90℃以上で体積抵抗値が2倍~20倍の差を示す。この高い抵抗値により、電力ケーブルに部分抵抗が増加し得て、電気的なストレスが累積される恐れがある。前記体積抵抗は、10~600Ω・cmであってもよく、好ましくは10~100Ω・cmであり、より好ましくは10~60Ω・cmを満たしてもよいが、これに制限されるものではない。
【0035】
また、上記のカーボンブラックを用いることで、半導電性組成物の伝導性を増大させるだけでなく、半導電層の表面に均一に分散され、半導電層の表面上の隣接した領域間の収縮率および膨張率の差を狭めることができるため、半導電層の表面平滑度を向上させることができる。本発明において、上記より高いかさ密度値を有する場合には本発明の効果を達成することができないことから、上記範囲の不測の効果が分かる。
【0036】
したがって、本発明の前記組成物を用いる場合、前記半導電性樹脂組成物のカーボンブラックの含量を増加させる必要なく、温度毎の体積抵抗を減らすことができ、引張強度および伸びも増加させることができる。
【0037】
前記引張強度は、150~400kg/m2であってもよく、好ましくは200~300kg/m2であり、より好ましくは220~240kg/m2であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0038】
また、前記伸びは、150~400%であってもよく、好ましくは230~300%であり、より好ましくは245~280%であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0039】
高圧の電力ケーブルの特性上、高い機械的な数値が求められるが、本発明の組成物を用いることで、高い機械的特性および温度毎に低い体積抵抗を有するという大きい利点がある。
【0040】
また、本発明では、本発明のカーボンブラックを含み、他のカーボンブラックまたは導電性物質を追加して製造することもできる。
【0041】
次に、本発明の混合酸化防止剤について説明する。
【0042】
本発明の混合酸化防止剤の使用は、特に実施例として示さないが、単独でまたは他の酸化防止剤を用いる場合に比べて、著しい部分炭化現象を防止することができるため好ましい。
【0043】
本発明の一態様において、前記フェノール系化合物は、2,2’-チオジエチレン-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-チオ-ビス-(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、ジエチル((3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート、1,3,4-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゼン)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイト、およびN,N’-ビス-(3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジンなどからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0044】
本発明の前記チオエーテル系化合物は、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジオクタデシルジスルフィド、ビス[2-メチル-4-(3-n-ドデシルチオプロピオニルオキシ)-5-tert-ブチルフェニル]スルフィド、ペンタエリスリトール-テトラキス-(3-ラウリルチオプロピオネート)、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3,3’-チオビスプロパン酸ジメチルエステルポリマー、およびジステアリルチオジプロピオネートなどからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0045】
前記混合酸化防止剤の組成比は特に制限されないが、例えば、1:1で用いてもよい。また、本発明の全組成物に対して、0.1~6重量部内で用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0046】
前記混合酸化防止剤を用いることで、前記半導電性樹脂組成物を加工する際における高分子の加工性を増大させるだけでなく、高分子酸化を防止することができる。
【0047】
次に、本発明の前記金属ステアレートなどを含んでもよく、具体的には、亜鉛ステアレート、カルシウムステアレート、アルミニウムステアレート、およびマグネシウムステアレートなどを含み、好ましくはカルシウムステアレートおよび亜鉛ステアレートを含み、より好ましくは亜鉛ステアレートを含んでもよいが、これに制限されない。
【0048】
前記金属ステアレートの含量は、前記エチレンビニルアセテート100重量部に対して0.1~5重量部であり、好ましくは1~3重量部であってもよい。
【0049】
前記金属ステアレートをさらに含むことで、高分子のスラウィング現象を最小化することができる。前記金属ステアレートの含量で製造された本発明の半導電層は、表面に突起が生成されることなく、優れた表面特性を付与することができる。また、前記金属ステアレートは、前記半導電性樹脂組成物の流動性を向上させ、それを成形する場合、延伸による電気伝導性のばらつきを最小化することができる。
【0050】
本発明の一態様において、前記架橋剤は、1,1-(ターシャリブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ノルマル-ブチル-4,4-(ビス-ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、パーブチルパーオキサイド、1,1-ビス(ターシャリ-ブチルパーオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-ターシャリ-ブチルパーオキシヘキサン、ターシャリ-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ターシャリ-ブチルパーオキサイド、および2,5-ジメチル-2,5-ジ-ターシャリ-ブチルパーオキシルヘキサンなどからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0051】
前記架橋結合可能なポリマーは、架橋剤を用いて架橋化される。一つの好適な方法は、ポリマー粉末またはポリマーペレットに架橋剤を含浸させることである。次いで、混合物を架橋剤の分解温度より高い温度に加熱する。使用可能な好適な架橋剤としては、例えば、(ジ(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-(ターシャリブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ノルマル-ブチル-4,4-(ビス-ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、パーブチルパーオキサイド、1,1-ビス(ターシャリ-ブチルパーオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-ターシャリ-ブチルパーオキシヘキサン、ターシャリ-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ターシャリ-ブチルパーオキサイド、および2,5-ジメチル-2,5-ジ-ターシャリ-ブチルパーオキシルヘキサンなどを含んでもよく、好ましくは、パーブチルパーオキサイド、1,1-(ターシャリブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、およびジクミルパーオキサイドなどを含み、より好ましくは、ジクミルパーオキサイドおよびパーブチルパーオキサイドを含んでもよいが、これに制限されない。
【0052】
前記エチレンビニルアセテート100重量部に対して、前記架橋剤0.1~5重量部を含んでもよい。前記架橋剤が0.1未満である場合、十分に架橋されず、最終物性が低下する恐れがあり、前記架橋剤が5重量部以上含まれる場合、成形性が低下する恐れがある。
【0053】
架橋剤を上記の範囲内で含むことで、前記ベース樹脂の架橋特性が向上するとともに、添加剤の分散性が高くなり、電力線の半導電層に適用したときに寿命が増大する効果を奏することができる。
【0054】
前記半導電性樹脂組成物に加工助剤をさらに含んでもよい。前記加工助剤は、モンタンワックス、脂肪酸エステル、トリグリセリドまたはこれらの部分エステル、グリセリンエステル、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、金属石けん系潤滑剤、アミド系潤滑剤などを含んでもよく、好ましくは、脂肪酸エステル、トリグリセリドまたはこれらの部分エステル、およびポリエチレンワックスを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0055】
前記加工助剤をさらに含むことで、前記組成物の導体との離型性が向上するとともに、押出負荷が低くなる効果を奏することができる。
【0056】
前記半導電性樹脂組成物はケーブルの半導電層に使用しやすく、特に、前記半導電層が高温でも低い体積抵抗値を有することができるため、高圧ケーブルの半導電層に好適に使用できる。
【0057】
電力ケーブルで高圧の電力が導体に流れる時に、半導電層に部分放電が流れながら半導電層で発生する体積抵抗により、温度が上昇し得る。
【0058】
半導電層の温度が上昇するに伴って体積抵抗値がさらに増加することになるが、上記のような効果により、電力ケーブルの寿命が短くなる現象が発生する。本発明のケーブル用半導電性樹脂組成物は、高い温度でも低い体積抵抗を有するため、温度の上昇による体積抵抗の増加が抑えられ、電力ケーブルに効果的に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例および比較例は本発明をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本発明が下記実施例および比較例によって制限されるのではない。
【0060】
[実施例1]
半導電性樹脂組成物は、バンバリーミキサにて150℃で30分間混練して製造した。ブチルアクリレートの含量が17モル%で、メルトインデックス(ASTM 1238、190℃、2.16kgf)が7.0g/10minであるエチレンエチルアクリレート共重合体100重量部に対して、1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(Naugard SuperQ、ミウォン商社)0.1重量部、ジミリスチルチオジプロピオネート(Mianto-S、ミウォン商社)0.15重量部、かさ密度325Kg/m3のカーボンブラック(420B、HIBLACK)53.83重量部、亜鉛ステアレート1.35重量部を100℃で30分間混練して製造した。これをロールミルとクラッシャ(Crusher)に通過させてチップの形態に製造した後、ブラベンダーミキサ(Brabender Mixer)にて架橋剤(ジ(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(Di[tert-butylperoxyisopropyl]benzene、AkzoNobel)をさらに添加し、75℃で10分間40rpmで含浸した後、70℃のオーブンで8時間熟成することで、半導電コンパウンドを製造した。作製されたコンパウンド組成物を用いて引張強度および伸び(ATSM D 638、250mm/min)を測定して表1に記載し、体積抵抗(ASTM D991)を測定して表2に記載した。
【0061】
[実施例2]
前記実施例1において、前記カーボンブラックとしてかさ密度375Kg/m3のカーボンブラック(XC200、VULCAN)を使用したことを除き、同様に実施した。
【0062】
[実施例3]
前記実施例1において、前記カーボンブラックとしてかさ密度306Kg/m3のカーボンブラック(XC500、VULCAN)を使用したことを除き、同様に実施した。
【0063】
[比較例1]
前記実施例1において、前記カーボンブラックとしてかさ密度395Kg/m3のカーボンブラック(150B、HIBLACK)を使用したことを除き、同様に実施した。
【0064】
【0065】
【0066】
前記表1から、含まれているカーボンブラックの種類によって、伸びおよび引張強度値が変わることが確認できた。
【0067】
実施例は、何れも比較例に比べて引張強度が高いことが確認でき、このことから、前記半導電性樹脂組成物が優れた機械的強度を有することを確認した。
【0068】
また、表2の温度毎の体積抵抗は、実施例が比較例に比べて全温度範囲で低い体積抵抗を有することを確認した。
【0069】
このことから、カーボンブラックのかさ密度の差によって、伸びおよび引張強度のような機械的物性だけでなく、温度毎の体積抵抗に対しても優れた抵抗値を有するという著しい効果を確認した。
【0070】
以上、本発明を特定事項と限定された実施例によって説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例によって限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0071】
したがって、本発明の思想は上述の実施例に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的な変形のある全てのものなどが、本発明の思想の範疇に属するといえる。