(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ECG信号の生成方法、及びそれを用いてなるECG信号生成システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/319 20210101AFI20240626BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240626BHJP
A61N 1/362 20060101ALI20240626BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61B5/319
A61B5/11 100
A61N1/362
A01K29/00 A
A01K29/00 C
(21)【出願番号】P 2022561123
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2021059165
(87)【国際公開番号】W WO2021204939
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】102020204650.6
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020207845.9
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】マリアン ヘッシャー
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064338(JP,A)
【文献】特開2017-113384(JP,A)
【文献】特表2007-500550(JP,A)
【文献】米国特許第06978184(US,B1)
【文献】特開2011-072542(JP,A)
【文献】国際公開第2020/064469(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの心臓運動誘発信号が記録され、記録された前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号を、少なくとも1つのECG信号(1)に変換処理することによって、所定のECG信号(1)とする、ECG信号(1)の生成方法であって、
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、SCG信号(2)であり、前記変換処理によって少なくとも1つの前記SCG信号(2)からマルチチャネルECG信号の複数のチャネル固有信号が、決定され
、
前記変換処理は、機械学習によって生成されたモデルを用いて実行されることを特徴とするECG信号の生成方法。
【請求項2】
前記変換処理によって少なくとも1つの前記SCG信号(2)からマルチチャネルECG信号の全てのチャネル固有信号が、決定されることを特徴とする、
請求項1に記載のECG信号の生成方法。
【請求項3】
前記変換処理は、特にオートエンコーダとして、又は、畳み込みニューラルネットワークとして、又は、LSTMネットワークとして、又は、変換型ニューラルネットワークとして形成されたニューラルネットワーク(NN)を用いて実行されることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のECG信号の生成方法。
【請求項4】
前記モデルを生成するために、変換処理により決定されたECG信号(1)と基準ECG信号との間の偏差を決定するための誤差関数が評価され、前記誤差関数の評価の際、変換処理により決定された前記ECG信号(1)及び/又は前記基準ECG信号及び/又は前記偏差の異なる信号セクションが、異なる態様で重み付けされることを特徴とする、
請求項1に記載のECG信号の生成方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、非接触で記録されることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載のECG信号の生成方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、前記変換処理の前にフィルタリングされ、次いで、フィルタリングされた前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号が、ECG信号(1)に変換処理されることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載のECG信号の生成方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、デバイス(4)の記録装置によって生成され、前記変換処理は、前記デバイス(4)の計算装置(T)によって実行される、又は、前記心臓運動誘発信号は、前記デバイス(4)とは別の更なるデバイスの計算装置(T)に伝送され、前記変換処理は、前記更なるデバイスの前記計算装置(T)によって実行されることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか一項に記載のECG信号の生成方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、デバイス(4)の記録装置によって生成され、変換処理によって決定された前記ECG信号(1)は、前記デバイス(4)の表示装置(A)上に表示される、又は、前記心臓運動誘発信号は、更なるデバイスの表示装置に伝送され、前記更なるデバイスの前記表示装置によって表示されることを特徴とする、
請求項1~7のいずれか一項に記載のECG信号の生成方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号の前記変換処理の前に、記録装置の機能テストが実行され、前記心臓運動誘発信号は、機能性が検出された場合にのみ変換処理される、及び/又は、
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号の前記変換処理の前に、記録された前記
少なくとも1つの心臓運動誘発信号の信号品質が決定され、前記心臓運動誘発信号は、前記信号品質が予め定められたレベル以上である場合にのみ変換処理される、及び/又は、
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号の前記変換処理の前に、心臓に対して相対的な前記記録装置の配置が決定され、前記心臓運動誘発信号は、前記配置が予め定められた配置に対応するか、又は、前記予め定められた配置からの逸脱が予め定められたレベルよりも小さい場合にのみ、変換処理されることを特徴とする、
請求項1~8のいずれか一項に記載のECG信号の生成方法。
【請求項10】
少なくとも1つの心臓運動誘発信号が記録され、記録された前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号を、少なくとも1つのECG信号(1)に変換処理することによって、所定のECG信号(1)とする、ECG信号(1)の生成方法であって、
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、少なくともSCG信号(2)を含み、かつ、PCG信号及びBCG信号、或いはいずれか一方を含み、前記心臓運動誘発信号から、前記変換処理によって、マルチチャネルECG信号の複数のチャネル固有信号が、決定され、
前記変換処理は、予め定められた数学的モデル又は予め定められた変換処理関数(但し、機械学習によって生成されたモデルを除く。)を用いて実行されることを特徴とするECG信号の生成方法。
【請求項11】
前記予め定められた数学的モデルを生成するために、変換処理により決定されたECG信号(1)と基準ECG信号との間の偏差を決定するための誤差関数が評価され、前記誤差関数の評価の際、変換処理により決定された前記ECG信号(1)及び/又は前記基準ECG信号及び/又は前記偏差の異なる信号セクションが、異なる態様で重み付けされることを特徴とする、請求項10に記載のECG信号の生成方法。
【請求項12】
ECG信号(1)を生成するためのシステム(3)は、少なくとも1つの心臓運動誘発信号を記録するための少なくとも1つの記録装置と、少なくとも1つの計算装置(T)とを含み、記録された前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、前記計算装置(T)によって少なくとも1つのECG信号(1)に変換処理され、
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、SCG信号(2)であり、前記変換処理によって少なくとも1つの前記SCG信号(2)からマルチチャネルECG信号の複数のチャネル固有信号が、決定され
、
前記変換処理は、機械学習によって生成されたモデルを用いて実行されることを特徴とするECG信号生成システム。
【請求項13】
ECG信号(1)を生成するためのシステム(3)は、少なくとも1つの心臓運動誘発信号を記録するための少なくとも1つの記録装置と、少なくとも1つの計算装置(T)とを含み、記録された前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、前記計算装置(T)によって少なくとも1つのECG信号(1)に変換処理され、
前記少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、少なくともSCG信号(2)を含み、かつ、PCG信号及びBCG信号、或いはいずれか一方を含み、前記心臓運動誘発信号から、前記変換処理によって、マルチチャネルECG信号の複数のチャネル固有信号が、決定され、
前記変換処理は、予め定められた数学的モデル又は予め定められた変換処理関数(但し、機械学習によって生成されたモデルを除く。)を用いて実行されることを特徴とするECG信号生成システム。
【請求項14】
前記記録装置は、インキュベータ(9)、ベッド(13)若しくは車両シート(17)に、又は、心臓ペースメーカに、又は、動物用品に、一体化されていることを特徴とする、
請求項12又は13に記載のECG信号生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECG信号の生成方法、及びそれを用いてなるECG信号生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ECG信号(以下、心電図信号と称する場合がある。)は、多くの用途において、特に診断用途において、必要とされていた。そして、通常の体表面のECGは、非接触では記録され得ないという性質がある。この場合、胸部表面における電位を記録するために、電極が必要とされていた。
しかしながら、これらの電極を用いた長時間記録は、皮膚の刺激性炎症及び発疹を引き起こしやすいと言う問題がある。特にそのような測定の場合、電極が剥がれ、それによりECG信号の品質が、望ましくない態様で損なわれる危険も存在する。
しかも、かなりの数の患者、例えば、早産児、又は火災による犠牲者は、それに加えて、非常に敏感で薄い皮膚を持っている場合があって、そのため、接触測定の際の感染及び皮膚損傷のリスクの増大を必然的に伴い、又は、電極の使用を完全に禁じさえし、それによりバイタルデータの重要な測定が妨げられると言う問題がある。
【0003】
そのうえ、従来のECG装置では、24時間を越えての切れ目のない連続的な測定が、可能ではなかった。そのため、間欠的な心臓の病状が見落とされ、ひいては、正確に診断されず、最終的に、十分に治療されない可能性もあった。
【0004】
これまで、電極を用いた連続的なECG信号測定に関して、医学的に有効な代替法は、存在しなかった。すなわち、ECG測定は、それでもなお実施され、皮膚損傷及び感染リスクは慎重な検討の後に甘受されるか、或いは、測定が省略され、それによりバイタルデータを監視することができないか又は診断が不可能であるかのいずれかであった。
【0005】
24時間を超える連続的なECG信号を記録する場合、個々のケースで、コストパフォーマンスである費用便益比を慎重に検討した後、高価なイベントレコーダーが使われるが、その費用は、通常、健康保険では賄われなかった。
又、イベントレコーダーは、異常の場合は、高められた精度で信号を記録するが、普段は、省エネモードにあって、精度に劣るという問題もあった。
【0006】
シングルチャネルECGによる解決策も、ポータブルコンピュータ(ウェアラブル)の分野において存在する。これらは、特に重篤な心臓疾患を発見するために、簡易な記録機能性及び迅速な信号分析を提供することができる。
しかしながら、これらの方法は高価でもあり、それらがECG機能をサポートする限り、追加的に購入しなければならなかった。又、ECGの機能は、特に、古い装置におけるソフトウェアアップデートによっては容易に追加装備され得ない状況である。すなわち、従来のシングルチャネルECGによる解決策の医学的な及び特に診断上の妥当性は、未だ認められていない状況であった。
【0007】
更に、前胸部運動信号とも呼ばれ得る振動性心電図信号(SCG信号)を記録する方法が知られている。前胸部は、ここでは、心臓の前の胸壁の一部を示し得る。
従って、前胸部運動信号は、胸壁の当該部分の運動に関する情報を含み得ることになる。又、そのような信号は、特に、心臓運動によって引き起こされる前胸部の運動、特に振動に関する情報を含むことになる。
従って、このような信号から、例えば大動脈弁又は僧帽弁のような心臓弁の運動を検出し、対応する特性を同定することも可能である。
又、ECG検査で可視化される電気刺激は、心周期内の各筋運動の前に生じる電気刺激を表すが、SCG信号によって、前胸部位置で測定され、結果として生じる運動を表すことができる。
従って、このようなアプローチの場合、例えば、加速度計又はジャイロスコープのような広く普及した慣性センサを使用することができる。
しかしながら、簡易構造で、安価な圧力センサ、又はレーダーセンサが、そのまま使用されてしまうという問題が見られた。
【0008】
同様に、心音図信号の記録方法が知られており、当該心音図信号は、音波の受信により生成される音響信号であり、当該音波は、心臓運動により引き起こされる。
同様に、心弾動図信号の記録方法が知られており、当該心弾動図信号は、心臓運動によって引き起こされる全身の振動を記録することができる。
かかる心弾動図信号は、全身で記録することができる。従って、特定の測定点に拘束されないと言う利点がある。従って、モバイル及びポータブルな振動性心電図の分野の研究の大部分は、心拍数、心拍数変動又は呼吸数のようなバイタルパラメータの抽出に集中している。
これらのパラメータは、ユーザの健康状態についての貴重な情報を提供するものの、医師としては、心電図(ECG)のリズム及び形態から、はるかに多くの情報を抽出することができる。
【0009】
更に、機械学習(AI学習機能を含む。以下、同様である。)が、心臓病学においても知られている。
いくつかの既知の機械学習の方法は、EEG信号及びECG信号について示されるような、生体信号における複雑さ又はノイズを低減することによって、健康データを圧縮するために、畳み込みオートエンコーダを適用している。
【0010】
特に、ECG信号における疾患の識別のために、ニューラルネットワークは、例えば心房細動の検出のための、心筋梗塞の自動識別のための及び不整脈の識別のために、有能なツールであることが実証されている。
【0011】
又、ECGデータを分析するために、ニューラルネットワークを適用することに加えて、機械学習を他のタイプのセンサの信号に適用する旨を開示した多くの刊行物がある。
例えば、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)は、PPGセンサ(光電式容積脈波記録法センサ)から心拍数を推定するために、又は、SCGデータから心臓血管疾患を自動的に識別するために、それぞれ使用され得ることが開示されている。
【0012】
先行技術としての特許文献1は、患者の心臓を監視するための所定装置及び方法を開示している。
かかる特許文献1によれば、加速度センサを備えた携帯電話を開示している。更に、対応する装置が、携帯電話に一体化されるか又は携帯電話に配置された、多数の電極も備え得ることが開示されている。
この装置は、心拍によって引き起こされる電気信号及び胸部振動を記録するために、患者の胸部上に配置され得る。そして、測定の際、SCG(振動性心電図)及びECG(心電図)が生成されることになる。
【0013】
更に、SCG及びECGを同時に並行して記録することを可能にする多数の解決策が、例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5のような先行技術文献に開示されている。
又、特許文献6は、同様に、ポータブルECGデバイスを開示しており、当該デバイスは、付加的にSCGセンサを含み得る所定装置である。
更に、特許文献7も、ECG信号及びSCG信号を記録するための、所定装置を開示している。
【0014】
又、乗り物の乗員の状態を生体データに応じて分類する分類方法も知られている。
例えば、特許文献8は、乗り物の乗員のストレスレベル又は興奮レベルを決定するために、車両コンポーネントで使用されるニューラルネットワークを開示している。
更に、特許文献9は、ヘルスケアにおける人工知能及び機械学習の使用を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2014/036436号
【文献】欧州特許出願公開第2704634号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3135194号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0360338号明細書
【文献】国際公開第2018/231444号
【文献】国際公開第2019/138327号
【文献】欧州特許出願公開第3461401号明細書
【文献】独国特許出願公開第102019201695号明細書
【文献】米国特許出願公開第2019/0088373号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、ECG信号の正確であって、かつ可能な限り確実なデータ生成を可能にする、ECG信号を生成するための方法及びシステムを構築しなければならないという技術的課題があり、当該ECG信号の生成方法及びシステムにおいては、特に、先に説明した欠点を有する電極の接触配置を回避することを課題としている。
更に言えば、ECG信号の長時間記録が確実に可能なような、ECG信号の生成方法、及びそれを用いてなるECG信号生成システムの提供が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記技術的課題に対する解決策は、添付の特許請求の範囲における独立請求項である請求項1及び12の特徴を有する主題によって提供される。
又、本発明の更なる有利な実施形態は、添付の特許請求の範囲における従属請求項である請求項2~11及び13の特徴を有する主題によって提供される。
【0018】
すなわち、本発明によれば、ECG信号(心電図信号)を生成するための方法が提案され、当該ECG生成方法においては、少なくとも1つの心臓運動誘発信号が記録されることになる。
かかる心臓運動誘発信号は、心臓運動によって引き起こされる信号を表すことが好ましい。そして、複数の心臓運動誘発信号、特に異なるタイプの信号を記録することも好ましい。これらについては、以下において、更に詳細に説明する。
すなわち、心臓運動誘発信号は、特に、SCG信号(振動性心電図信号)又はPCG信号(心音図信号)又はBCG信号(心弾動図信号)の少なくとも一つであることが好ましい。
そして、このような心臓運動誘発信号は、適切な記録装置によって生成されることが好ましい。例えば、SCG信号は、適切なSCG記録装置によって、PCG信号は、適切なPCG記録装置によって、BCG信号は、適切なBCG記録装置によって、それぞれ生成されて、記録されることが好ましい。
【0019】
又、このようなSCG記録装置は、例えば、少なくとも1つの加速度センサ、例えばMEMS加速度センサ、特にMEMSジャイロスコープ、又は、少なくとも1つのレーダーセンサ、特にドップラーレーダーセンサを少なくとも含むことが好ましい。
先に説明したように、SCG信号は、心臓運動に関する情報を含むか又はコード化されることになる。そのため、そのようなSCG記録装置としての加速度センサは、1軸若しくは3軸の圧電加速度センサ、又は、MEMS加速度センサ、3軸MEMS加速度センサ、又は、ジャイロスコープ、レーザードップラー振動計、マイクロ波ドップラーレーダーセンサ、又は、いわゆる空中超音波表面運動カメラ(AUSMC)であることが好ましい。
又、PCG記録装置は、特に、マイクロフォン、特に、例えば携帯電話のようなモバイル端末のマイク又はレーザマイクを含むことが好ましい。
又、BCG記録装置は、例えば、少なくとも1つの圧力センサ、例えばロードセルとして構成された圧力センサを含むことが好ましい。
【0020】
又、本発明によれば、記録された少なくとも1つの心臓運動誘発信号を、少なくとも1つのECG信号に変換処理(以下、単に、変換処理と称する場合がある。)することによって、所定のECG信号とすることが好ましい。
このような例示的な変換処理(変換処理プロセス)については、以下に示すように、より詳細に説明される。
すなわち、より詳細に説明されるように、少なくとも1つの心臓運動誘発信号を、複数のECG信号に変換処理することが提案される。
更に、以下において、より詳細に説明されるように、記録された複数の心臓運動誘発信号が、1つ又は複数のECG信号に変換処理されることも可能である。
【0021】
ECG信号も、心臓運動に関する情報を含むか、又はコード化されるので、驚くべきことに、心臓運動誘発信号と、ECG信号とは、心臓活動に関して同等の情報内容を有すると認識することができる。逆に言えば、心臓運動誘発信号は、心臓の電気的活動に関する情報も含んでいる。
このような心臓運動誘発信号は、通常、病院及び診療所の日常業務において、特に診断のためには用いられておらず、その解釈は、通常、医師としての専門教育の一部ではないため、適切な処理なしには、ユーザにとっては通常、理解不可能なものである。
そのため、変換処理により、一般に比較的大きな人々のグループに対して説得力のあるECG信号を生成することができれば、それにより、例えば、診断目的のための医学的な適用可能性が増大する。更に、ECG信号の確実な生成を可能にするために、先に説明した患者の皮膚への機械的な接触を行うことが必要である。
但し、このような接触は、心臓運動誘発信号の記録においては、有利な側面ではあるが、絶対的に必要なことではない。
【0022】
従って、好ましくは、心臓運動誘発信号は、非接触で、すなわち患者が対応するセンサに対して、機械的に接触することなく、記録されることが好ましいと言える。
例えば、これは、記録装置を患者から隔てて、例えば患者が横たわるマットレスの内部に又は患者が座る座席の内部に、当該記録装置を配置することにより、行うことができる。
更に、かかる記録装置が、例えば、レーダーセンサを含む場合、患者又は患者の胸部領域がレーダーセンサの記録領域内に位置するように、記録装置を配置することだけが必要とされることになる。
【0023】
しかしながら、記録のために患者と機械的に接触するか、又は患者の体内若しくは体表面に配置されたセンサによって、心臓運動誘発信号を記録することも好ましい。
例えば、かかる記録装置が、ペースメーカ、特に心拍適応型ペースメーカに一体化されることが好ましい。
かかる記録装置によって記録された信号に応じて患者の心拍を調整するために、例えば、当該心拍を現在の運動状態及び脈動需要に適合させるために、ペースメーカは、そのような記録装置、特に加速度センサとして構成された記録装置を含むことが好ましい。
これを可能にするために、活動が、加速度センサの出力信号に応じて認識され、例えば、心拍の負荷が増大する際(例えば、歩行から階段登りへの移行の際)に相応して心拍数が高められる。このために使用される加速度センサは、更に心臓運動誘発信号を記録するために使用されることが好ましい。
【0024】
そのような記録装置によって記録された信号は、次いで、例えば、計算装置に対して、データ伝送のための適切な方法によって無線で伝送されることが好ましい。そして、データ伝送された計算装置は、次いで、変換処理を実行することができる。
かかる(外部)計算装置は、例えば、モバイル端末の計算装置であることが好ましい。代替的に、ペースメーカが計算装置を含み、当該計算装置が、変換処理を実行する態様も考えられる。
そのため、ペースメーカのような計算装置は、埋め込みシステムの形態でペースメーカに一体化されることが好ましい。
更に、例えば、計算装置は、変換処理を実行するために特別に設計された集積回路として構成されることが好ましい。この集積回路は、例えば、ニューラルネットワークの機能を提供することが好ましいと言える。
【0025】
又、心臓ペースメーカに一体化された記録装置の使用は、有利には、心臓に近接して配置された既存のセンサの使用を可能にし、これは、心臓運動誘発信号の良好な信号品質をもたらすことにつながる。
これにより、測定精度、ひいては、本発明により生成されるECG信号の精度が改善される。
更に、既に認定された心臓ペースメーカを拡張的に使用することに起因して、心臓ペースメーカの記録装置を含むECG信号を生成するためのシステムの、医療製品としての簡単な認定も可能になる。
【0026】
又、所定の変換処理により、例えば、前胸部運動、これらの運動によって引き起こされる音波又は全身運動を表す少なくとも1つの心臓運動誘発信号が、電位を表す又は描写する信号に変換処理されることが好ましい。
そのため、ECG信号への変換処理は、直接変換処理であることが好ましい。
かかる変換処理は、複数の部分変換処理を含むことが好ましい。
例えば、第1の部分変換処理により、心臓運動誘発信号は中間信号に、更なる部分変換処理において中間信号はECG信号に、それぞれ変換処理されることが好ましい。もちろん、3つ以上の部分変換処理を同時実行することも可能である。
従って、提案された変換処理方法により、有利なことには、ECG信号の容易かつ確実な生成がもたらされ、これは、特に、必須ではないが、非接触で、すなわち記録装置による皮膚の機械的な接触なしに、行うことができるようになる。
更に、提案された方法によれば、特に24時間を超える長期間にわたる、ECG信号の確実な長時間取得を可能にすることができる。
なぜなら、特に電極の望ましくない剥離の問題が回避されるため、心臓運動誘発信号が、問題なく、そのような期間にわたって記録され、次いで、所定の変換処理がなされるからである。
【0027】
更に、添付の特許請求の範囲に記載のECG信号の生成方法を、有利には、心臓運動誘発信号を記録するのに適した記録装置を備える既存の装置に実装し、それによって機能を向上させることも好ましい。
それにより、これらの装置を、ECG信号を生成することができる状態にすることが可能である。例えば、携帯電話は、通常、加速度センサを含むことが好ましい。
これらは、例えば、携帯電話を患者の胸部上に配置し、加速度センサの出力信号を記録することによって、SCG信号を生成するために使用されることが好ましい。これらの出力信号は、次いで、提案された変換処理によってECG信号に変換処理されることが好ましい。そして、PCG信号を生成するために、携帯電話のマイクも使用されることが好ましい。
【0028】
更なる実施形態において、少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、SCG信号であることが好ましい。すなわち、SCG信号が、確実に生成され得るため、これにより、有利には、ECG信号の確実な供給がもたらされる。
代替的に、心臓運動誘発信号は、PCG信号であることも好ましい。これは、広い周波数スペクトルを含むので、有利なことに、ECG信号の正確な生成がもたらされると言う効果が発揮される。
又、代替的に、心臓運動誘発信号は、BCG信号であることも好ましい。これは全身で測定され得るため、有利なことに、ECG信号のフレキシブルな記録、ひいてはECG信号のフレキシブルかつ安定的な生成がもたらされる。
【0029】
複数の、特に種々の心臓運動誘発信号、例えば、複数のSCG信号、複数のBCG信号、又は複数のPCG信号が記録されることも考えられるが、それぞれ好ましい態様である。
すなわち、SCG信号、PCG信号及びBCG信号を含む信号セットのうち少なくとも2つの異なる信号を記録することも好ましく、少なくとも1つのECG信号は、次いで、これらの異なる信号を少なくとも1つのECG信号に変換処理することによって、生成されることが好ましい。
又、種々の心臓運動誘発信号から融合された心臓運動誘発信号が生成され、次いで、これが、少なくとも1つのECG信号に変換処理されることも好ましい態様である。
【0030】
更なる実施形態において、少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、マルチチャネルECGの少なくとも1つのチャネル固有信号に変換処理されることが好ましい。
マルチチャネルECGのちょうど1つのチャネル固有信号、又は、選択された、ただし全てではないチャネル固有信号、又は、全てのチャネル固有信号が、少なくとも1つの心臓運動誘発信号の変換処理によって、決定されることも考えられるが、それも又、好ましい態様である。
例えば、1つ以上のSCG信号、1つ以上のPCG信号、1つ以上のBCG信号、又は、SCG信号、PCG信号及びBCG信号を含む信号セットのうち、少なくとも2つの異なる信号から、ECGの1つ以上のチャネル固有信号について、決定されることが好ましい。
そして、変換処理により決定されたマルチチャネルECGのチャネル固有信号は、ここでは、所定の身体領域の内部/表面で、相応して配置された電極を通じて誘導されたECG信号を表す/シミュレートすることになる。
マルチチャネルECGは、例えば、6チャネル又は12チャネルのECGであることが好ましい。これにより、有利なことには、このように生成されたECG信号の実用性が高まることになる。なぜなら、特に、マルチチャネルECGの生成は、より簡易な又はより良好な分析、従って実用的な診断を、可能にするからである。
【0031】
更なる実施形態では、変換処理は、機械学習によって生成されたモデルを用いて実行されることが好ましい。
機械学習という概念は、ここでは、訓練データに基づいてモデルを決定するための方法を含むか、又は訓練データに基づくモデルの決定方法そのものも意味する。
従って、教師付き学習のための方法によりモデルを決定することが可能であり、このために、訓練データ、すなわち訓練データセットは、入力データ及び出力データを含むことができる。
入力データとして、ここでは心臓運動誘発信号が提供され、出力データとしては、これらの心臓運動誘発信号に対応するECG信号が提供されることが好ましい。
【0032】
特に、そのような訓練データの入力及び出力データは、心臓運動誘発信号及びECG信号が同時に生成され、これらの同時に生成されたデータが、次いで、訓練のための入力及び出力データを形成することにより、生成されることが好ましい。
そのようなデータを同時に生成するための生成方法及び生成装置(生成システム)は、本明細書の導入部で説明された先行技術に示されるように、一部知られている。
例えば、モデルは、ここでは、振動性心電図、心弾動図、又は心音図と、心電図との間の関係を学習するために適用することができる。教師付き学習のためのそのような方法についても、当業者に知られている。但し、モデルを決定するために、教師なしの機械学習の方法が用いられることも考えられる。
【0033】
モデルが作成された後、すなわち訓練段階の後、このようにパラメータ化されたモデルは、心臓運動誘発信号の形態の入力データから、次いで、決定されるべきECG信号を生成するために、すなわち提案された変換処理を実行するために、いわゆる推論段階で使用されることが好ましい。
これにより、ECG信号の確実で品質の高い生成がもたらされる。
又、モデルが、ユーザ又は患者に固有でない態様で、及び/又は、記録装置に固有でない態様で決定され、このように決定されたモデルが、次いで、特定のユーザ及び/又は特定の記録装置のための変換処理を実行するために使用されることが好ましい。
これは、モデルが、特定のユーザ及び/又は特定の記録装置について個々には決定されないが、推論段階においては、個々のユーザ及び/又は個々の記録装置のために使用され得ることを意味し得る。
【0034】
従って、モデルが、各ユーザ及び/又は各記録装置に対して新たに訓練される必要がない、ということも可能である。特に、それは、好ましくは適度に大きなデータセットを用いて一度訓練され(訓練段階)、その後、モデルとして、ユーザ及び/又は記録装置から独立して、例えば全てのユーザのために使用される(推論段階)ことができる。
それにより、有利には、変換処理方法の適用性が改善されるという結果がもたらされる。
なぜならば、特に、各ユーザ及び/又は、各記録装置に対して特定の訓練を行う必要がないからである。例えば、同じモデルが、異なる記録装置によって生成された信号を変換処理するために使用され得ることになる。
この場合、好適なデータセットは、好ましくは、少なくとも1つの所定の数の異なる病気の又は健康な人々について、及び/又は、少なくとも1つの所定の数の生理について、及び/又は、少なくとも1つの所定の数の異なる疾患について、生成されたデータを含むことが好ましい。
しかしながら、もちろん、同じ特性の入力データを用いて、すなわちSCG信号、PCG信号、又はBCG信号のみを用いて、モデルを訓練することが必要とされることも好ましいが、異なる記録装置又は記録装置の異なる構成が、同じ特性のこれらの信号を記録するために、使用されることも好ましい。
一方で、もちろん、モデルが、ユーザ及び/又は記録装置に固有の態様で決定されることも好ましい。
【0035】
又、機械学習のための適切な数学的アルゴリズムは、以下を含んでいることが好ましい。
例えば、決定定木ベースの方法、アンサンブル法(例えば、ブースティング、ランダムフォレスト)ベースの方法、回帰ベースの方法、ベイズ法(例えば、ベイズ信念ネットワーク)ベースの方法、カーネル法(例えば、サポートベクターマシン)ベースの方法、インスタンス(例えば、k近傍)ベースの方法、相関ルール学習ベースの方法、ボルツマンマシンベースの方法、人工ニューラルネットワーク(例えば、パーセプトロン)ベースの方法、深層学習(例えば、畳み込みニューラルネットワーク、積層オートエンコーダ)ベースの方法、次元縮退ベースの方法、正則化法ベースの方法等である。
【0036】
例えば、ニューラルネットワークを訓練するためには、変換処理の所望の品質を保証するために、通常、大量の訓練データが必要とされる。
かかる訓練データの量は、根底にある問題の複雑さ、必要とされる精度及び訓練されるべきニューラルネットワークの目標とされる適応性のような要因に、依存することが好ましい。
そのため、適用範囲、すなわち、ニューラルネットワークが使用されるべき領域は、しばしば、これらの要因の決定、従って訓練データ量の決定において、最も重要な要素である。
かかる領域についての適切な予備知識によって、最適解へのより速い収束をもたらすおとができ、又は、そのような収束を最初に可能にし、それにより、より少ない訓練データを必要とする、ニューラルネットワークを訓練するためのデータを準備することが可能である。
【0037】
提案されるECG信号の生成方法は、医療環境で使用することが可能である。
従って、高い精度を有することが好ましい。
加えて、ECG信号と心臓運動誘発信号は、それらを記録するための異なるセンサに起因して互いに異なるため、比較的高いレベルの複雑さが生じることになる。
しかしながら、これは、通常、ニューラルネットワークを訓練するために大量のデータを必要とすることになる。そこで、必要とされるデータの量を低減するための可能なステップは、訓練データ、特に入力データ及び/又は出力データのフィルタリングにある。
特に、訓練データセットの入力及び出力データは、心臓運動誘発信号及びECG信号が同時に生成され、訓練前にフィルタリングされることにより、生成されることが好ましい。
それにより、モデルを決定/生成するためのメモリ要件、並びに、必要とされる計算時間及び/又は計算能力が低減する。例えば、訓練データ中の高周波成分及び低周波成分を減衰させるために、フィルタ、特にバンドパスフィルタ、例えばバタワースフィルタを用いて、訓練データをフィルタリングすることが可能である。例えば、バンドパスフィルタの第1の下限周波数は0.5Hz、更なる上限周波数は200Hzであることが好ましい。訓練データから対応する不要な周波数を除去する、ハイパス及び/又はローパスフィルタ或いは他のフィルタ(例えば、多項式フィルタ)の使用も考えられる。代替的に、生成された信号は、フィルタリングされることなく、訓練のために使用されることも好ましい。
【0038】
更なる実施形態においては、モデルを生成するために、変換処理により決定されたECG信号と基準ECG信号との間の偏差を決定するために誤差関数が評価されることも好ましい。
その際、変換処理により決定されたECG信号及び/又は基準ECG信号及び/又は(偏差信号の)偏差の異なる信号セクションが、異なる態様で重み付けされる。それにより、ECG信号に固有の誤差関数が使用されることが好ましい。
かかる基準ECG信号は、実際の記録データであるグラウンドトゥルース(ground truth)を表していることが好ましく、例えば、既知の、例えば電極ベースのECG記録装置で記録された、入力データ(すなわち、心臓運動誘発信号)と並行して記録されたECG信号であることが好ましい。
又、かかる誤差関数は、変換処理の結果、すなわち変換処理によって決定されたECG信号と、グラウンドトゥルースとの間の偏差を決定又は定量化するために、使用されることが好ましい。
この偏差は、次いで、機械学習による変換処理のためのモデルの決定、特に訓練、特にニューラルネットワークの決定に影響を与え、モデルは、例えば、偏差が低減されるように適合されることが好ましい。この場合、偏差として、例えば平均二乗偏差又は平均絶対偏差が決定されることが好ましい。
【0039】
又、偏差を決定するために、変換処理により決定されたECG信号又は基準ECG信号の異なる信号セクションが異なる態様で、残りの信号の全ての信号セクションが等しく、それぞれ重み付けされることも可能である。
好ましくは、所定の偏差を決定するために、変換処理により決定されたECG信号の全ての信号セクションと、基準ECG信号の全ての信号セクションとを、等しく重み付けすることが好ましい。
一方、所定の偏差を表す信号の異なるセクションについては、異なる態様で重み付けされることも好ましい。
すなわち、偏差信号中の重み付けされたセクションは、変換処理により決定されたECG信号中の、及び/又は、基準ECG信号中の、予め定められた(関連する)セクションに時間的に対応するセクションであることが好ましい。
上述した信号のうちの少なくとも1つにおける異なる信号セクションの異なる重み付けは、有利には、モデルの品質、従って変換処理により決定されたECG信号の信号品質についても、改善することができる。
異なる信号セクションの異なる重み付けは、特に、ECG信号の特徴的な、従って関連するセクションを、関連性の低いセクションよりも高度に重み付けすることを可能にする。
そして、関連するECG信号セクションは、専門家によって、例えば入力装置を使用して信号セクションを選択することにより、同定されることが好ましい。
しかしながら、代替的に、例えば、予め定められた信号特性を有するセクションを同定する適切な検出方法によって、関連する信号セクションの自動検出を実行することも考えられる。そのような検出方法では、例えば、フェーザ変換処理(phasor transformation)が実行されることが好ましい。
この場合、予め定められた信号特性を有するセクションには、予め定められた重みが割り当てられることが好ましい。信号中の関連するセクションは、P波信号セクション、QRS群信号セクション及び/又はT波信号セクションであることが好ましい。
【0040】
更なる実施形態では、変換処理としては、ニューラルネットワークを用いて実行されることが好ましい。
例えば、かかるニューラルネットワークは、オートエンコーダとして、又は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)として、又は、RNN(リカレントニューラルネットワーク)として、又は、LSTMネットワーク(長期短期記憶ネットワーク)として、又は、変換型ニューラルネットワークとして、又は、上述のネットワークのうちの少なくとも2つから形成される組み合わせとして、形成されることが好ましい。
そのようなニューラルネットワーク、特にオートエンコーダとして形成されたニューラルネットワークは、先に説明した訓練データを用いて訓練されることができ、次いで訓練後に、記録された心臓運動誘発信号のECG信号への変換処理が、実行されることが好ましい。
この場合、オートエンコーダとしてニューラルネットワークを設計することにより、有利には、変換処理のために必要とされる計算費用が低くなり、それにより、変換処理を、埋め込みシステム及び例えば携帯電話のようなポータブル端末によって、簡単な方法で、確実かつ時間的に迅速に実行することができる。
【0041】
CNNとしての設計は、有利には、ネットワークの複雑さの低減を可能にし、従って、低い計算能力を有する装置に適している。これは、訓練段階及び推論段階の両方に関連する。
すなわち、CNNでは、訓練のために必要とされる時間が短く、特に、比較的高い計算能力を必要とするLSTMネットワークよりも短いという利点がある。
しかしながら、LSTMネットワークとしての設計は、そのアーキテクチャが時間依存性との関係を考慮に入れているため、時系列の解析に特に好適である。それにより、変換処理及びそれを用いて決定されるECG信号の品質が高くなるという利点がある。
【0042】
代替的な実施形態において、別な変換処理としては、予め定められた数学的モデルを用いて、又は、予め定められた変換処理関数を用いて、実行されることも好ましい。これは、例えば、ユーザによって予め決定されることも好ましいことを意味している。
特に、心臓運動誘発信号をECG信号に変換処理するための数学的モデルを、適切にパラメータ化することが可能である。これにより、有利には、ECG信号の代替的な、確実で時間的に迅速な生成がもたらされる。
【0043】
更なる実施形態では、少なくとも1つの心臓運動誘発信号が非接触で記録されることが好ましい。
複数のそのような信号が記録される場合、ちょうど1つの、全てではないが複数の、又は、全ての信号が、非接触で記録されることが好ましい。この利点及び対応する利点は、先に説明されたとおりである。
【0044】
更なる実施形態では、少なくとも1つの心臓運動誘発信号が、変換処理前にフィルタリングされ、次いで、フィルタリングされた心臓運動誘発信号が、ECG信号に変換処理されることが好ましい。
かかるフィルタリングは、特に、ハイパス又はバンドパス、又はバンドストップフィルタリングであることが好ましい。すなわち、フィルタリングを実行するための対応するフィルタは、特に、バタワースフィルタ又は多項式フィルタであることが好ましい。
フィルタリングが、ハイパスフィルタリングである場合、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、心臓運動誘発信号に対するモーションアーチファクトの影響を確実に低減するために、例えば5Hz~8Hzの範囲内の値であることが好ましい。
又、フィルタリングが、バンドパスフィルタリングである場合、同様に、例えば8Hz~30Hzの範囲の外にあるモーションアーチファクトの影響を確実に低減するために、第1のカットオフ周波数は、5Hz(含む又は除く)~8Hz(含む又は除く)の範囲内の値に、更なるカットオフ周波数は、30Hz(含む又は除く)~35Hz(含む又は除く)の範囲内の値に、それぞれあることが好ましい。
又、フィルタリングは、特にバタワースフィルタ又は多項式フィルタによって実行されることが好ましい。これにより、有利には、特に、心臓運動誘発信号の記録の間に患者が動く場合であっても、ECG信号のより正確な決定をもたらすことができる。
【0045】
更なる実施形態では、少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、デバイスの記録装置によって生成されることが好ましい。
例示的な記録装置は、既に先に説明された通りである。かかるデバイスは、この場合、記録装置を含むユニットを表す。従って、例えば、かかるデバイスは、携帯電話又はタブレットPCであることが好ましい。
しかしながら、もちろん、そのようなデバイスの他の実施形態も考えられる。そして更に、変換処理は、デバイスの計算装置によって実行されることが好ましい。すなわち、デバイスは、記録装置及び計算装置の両方を含んでいることが好ましい。
このような計算装置は、この場合、マイクロコントローラ又は集積回路として設計されていることが好ましく、或いは、そのようなものを含んでいることが好ましい。
従って、変換処理又は部分変換処理は、プログラブルの又はハードワイヤードの部品、特にチップ(例えば、ASIC、FPGA等)により実行することが可能である。そのような部品は、単独で又はシステムインパッケージ(SiP)の一部として、変換処理を実行することができる。
又、変換処理を実行するための手段を、例えばシステムオンチップ(SoC)として、心臓運動誘発信号を検出するためのセンサ(例えばMEMS加速度センサ)に直接的に、又は、他の電子部品に、一体化することも可能である。これにより、有利には、例えば端末上、特にモバイル端末上での、ECG信号の集中型の記録及び生成がもたらされることが好ましい。
【0046】
又、デバイスは、説明された信号処理手段に加えて、信号記憶手段、信号伝送手段及び表示手段も含んでいることが好ましい。
しかしながら、デバイスが、説明された手段の一部又は全部を含まないことも好ましい。この場合、記録された心臓運動誘発信号は、1つ又は複数の更なる手段を含む更なるデバイスに伝送されることが好ましい。
このようにして生成されたECG信号は、例えばデバイスの表示装置によって可視化されることもできる。そして、ECG信号は、例えば、デバイスの記憶装置によって記憶されることも好ましい。更に、ECG信号をデバイスから外部のシステムへ、例えばデバイスの適切な通信装置を介して伝送することも可能である。
【0047】
代替的に、心臓運動誘発信号は、記録装置からデバイス外部の計算装置へ伝送され、変換処理は、このデバイス外部の計算装置によって実行されることが好ましい。
かかるデバイス外部の計算装置は、特に、サーバ装置又は更なるデバイスの計算装置であることが好ましい。
この場合も、心臓運動誘発信号は、例えばデバイスの表示装置によって可視化されることができ、そのために、デバイス外部の計算装置によって実行された変換処理により決定されたECG信号は、再びデバイスに返送されることが好ましい。もちろん、このようにして決定されたECG信号を、デバイス外部の表示装置によって可視化することも可能である。
このために、ECG信号は、表示のための対応する更なるデバイスへ伝送されることが好ましい。
更に、このようにして決定されたECG信号は、例えばデバイス外部の記憶装置若しくは計算装置によって、又は、更なる(デバイス外部の)記憶装置若しくは計算装置によって、記憶されるか又は更に処理されることが好ましい。
【0048】
又、デバイス外部の計算装置は、この場合、ネットワーク、特にインターネットのサーバ装置であるか又はサーバ装置を構成することが好ましい。特に、デバイス外部の計算装置は、クラウドベースのサービスを提供するサーバ装置の一部であることが好ましい。かかるデバイス外部の計算装置への伝送は、無線で、例えば適切な伝送方法によって、行われることが好ましい。
しかしながら、もちろん、伝送を有線方式で構成することも好ましい。これにより、有利には、記録装置も含むデバイスの計算装置が、変換処理によって過負荷にならないという結果がもたらされる。
従って、特に、比較的低い計算能力を提供するデバイスによって心臓運動誘発信号の記録を実行することが可能であり、それにより、対応する変換処理及び場合によっては更なる処理を、比較的高い計算能力を有する他の計算装置によって実行することができる。
【0049】
更なる実施形態では、少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、デバイスの記録装置によって生成され、変換処理により決定されたECG信号は、デバイスの表示装置上又は外部の表示装置、例えば更なるデバイスの表示装置上に、表示されることが好ましい。
例えば、心臓運動誘発信号がデバイスからデバイス外部の計算装置へ伝送され、そこで変換処理が実行され、このように決定されたECG信号が更なるデバイス、例えば更なる携帯電話へ伝送され、次いでその表示装置上に表示されることが可能である。
かかるECG信号は、再びデバイスに返送され、その表示装置によって表示されることが好ましい。
又、かかるECG信号は、特に、デバイス外部の計算装置がサーバ装置又はその一部である場合、ブラウザ内の表示によって表示されることが好ましい。これにより、本発明に従って生成されたECG信号に基づいて、遠隔監視を実行することが可能になる。
【0050】
更なる実施形態では、少なくとも1つの心臓運動誘発信号の変換処理の前に、記録装置の機能テストが実行され、心臓運動誘発信号は、機能性が検出された場合にのみ変換処理されることが好ましい。このような機能性は、例えば、記録装置が経時的に変化する出力信号を生成する場合に、検出されることが好ましい。
一方、時間的に一定な出力信号が生成される場合、又は、一定の出力信号からの出力信号の逸脱が予め定められたレベルより大きくない場合、機能性の欠如として検出されることが好ましい。
代替的に又は累積的に、出力信号が、予め定められたノイズ特性、特にホワイトノイズの特性からの逸脱が予め定められたレベルより大きい特性を示す場合、機能性が検出されることが好ましい。これが当てはまる場合には、機能性が検出されることが好ましく、これが当てはまらない場合には、機能性の欠如が検出されることが好ましい。
又、出力信号のサンプリングレートが、目標サンプリングレートから逸脱した場合、及び/又は、出力信号の量子化が許容され得る量子化値から逸脱する場合にも、機能性の欠如が検出されることが好ましい。機能性が欠如している場合、変換処理は実行され得ないことになる。
これにより、有利には、記録装置の機能性が前提とされ得る場合にのみ、変換処理が実行されるという結果がもたらされ、本発明のECG信号の生成方法を実施する際のエネルギー消費を低減することができる。
【0051】
代替的に又は累積的に、少なくとも1つの心臓運動誘発信号の変換処理の前に、記録された信号の信号品質が決定され、心臓運動誘発信号は、信号品質が予め定められたレベル以上である場合にのみ、変換処理されることが好ましい。
信号品質は、例えば、信号対雑音比(SNR)、又は、この比を表す変数であることが好ましい。
そして、この比が予め定められたレベルよりも大きい場合、所定の変換処理が実行されることが好ましい。
又、心臓運動誘発信号の1つのセクションにおける予め定められた基準信号経路と記録された信号経路との間の偏差が、予め定められたレベル以下である場合、信号品質は予め定められたレベル以上であることが好ましい。これは、いわゆるテンプレート比較とも呼ばれ得る。
この場合、心臓運動誘発信号の古典的な信号形態、すなわち基準信号経路が決定され記憶されることが好ましい。次いで、当業者に知られている方法を用いて、記録された心臓運動誘発信号の信号経路と基準信号経路との間の偏差が決定されることが好ましい。
【0052】
又、信号品質は、例えばニューラルネットワークのような適切なモデルによって決定されることが好ましい。
そのようなモデルのための訓練データは、例えばユーザによって又は(一部)自動的に、信号品質を表す品質レベルを心臓運動誘発信号に割り当てることによって、生成され得る。
このような割り当ては、アノテーションとも呼ばれ得る。この場合、心臓運動誘発信号は入力データを、品質レベルは訓練データセットの出力データを、それぞれ形成する。そのような訓練データは、特に、特に心臓に対して相対的な記録装置の異なる空間位置において、異なるSNRによって、異なる環境条件の下で、患者の異なる運動状態において、心臓運動誘発信号が生成されアノテーションを付されることによって、生成され得る。
【0053】
更に、信号品質を決定するためのそのようなモデル、特にニューラルネットワークが、機械学習によって生成された変換処理のためのモデルを決定するための訓練データをフィルタリングするためにも使用されることが好ましい。
この場合、信号品質が予め定められたレベルよりも高い心臓運動誘発信号のみが、変換処理のためのモデルを訓練するための入力データとして使用されることが好ましい。
そして、変換処理を実行するための条件として信号品質を評価することにより、有利には、確実で高い品質の変換処理が行われることが保証され得る。
【0054】
信号品質に加えて、例えばニューラルネットワークのような適切なモデルによって、品質を低下させる原因が決定されることも好ましい。
そのようなモデルのための訓練データは、例えばユーザによって又は(一部)自動的に、品質を低下させる原因を心臓運動誘発信号に割り当てることによって、生成され得る。
このような割り当ては、アノテーションとも呼ばれ得る。この場合、心臓運動誘発信号は入力データを、原因は訓練データセットの出力データを、それぞれ形成する。品質を低下させる原因は、例えば、アーチファクトの存在、特に心臓に対して相対的な記録のために不都合な空間位置への記録装置の配置、及び/又は、不都合な環境条件若しくは運動条件の存在であり得る。このようにして品質を低下させる原因が決定され得る場合、ユーザは、例えば表示装置を介して、原因について知らされ得る。付加的に、原因を除去するための推奨動作がユーザに与えられ得る。
【0055】
更に代替的に又は累積的に、少なくとも1つの心臓運動誘発信号の変換処理の前に、心臓に対して相対的な記録装置の位置、すなわち空間的な位置及び/又は配向が決定され、心臓運動誘発信号は、当該位置が予め定められた位置に対応するか、又は、その位置からの逸脱が予め定められたレベルよりも小さい場合にのみ、変換処理されることが好ましい。
例えば、心臓運動誘発信号は、位置が予め定められた位置に対応するか、又は、その位置からの逸脱が予め定められたレベルよりも小さい場合にのみ、予め定められた信号特性を有することが可能である。それにより、心臓運動誘発信号の信号特性が決定され、予め定められた信号特性と比較され得る。逸脱が予め定められたレベルよりも小さい場合、位置は、予め定められた位置に対応するか、又は、その位置からの逸脱が予め定められたレベルよりも小さいことになる。
【0056】
記録装置の位置につき、例えばニューラルネットワークのような適切なモデルによって決定されることも好ましい。
そのようなモデルのための訓練データは、例えばユーザによって又は(一部)自動的に、位置を心臓運動誘発信号に割り当てることによって、生成されることが好ましい。
この割り当ては、アノテーションとも呼ばれ得る。この場合、心臓運動誘発信号は入力データを、位置は訓練データセットの出力データを、それぞれ形成することが好ましい。
そのような訓練データは、特に、特に心臓に対して相対的な記録装置の異なる空間位置において、生成され相応してアノテーションを付されることによって、生成されることが好ましい。
従って、位置が決定され得る場合、ユーザは、例えば表示装置を介して、位置、特にその正確性について知らされることが好ましい。付加的に、予め定められた位置からの逸脱が予め定められたレベルよりも大きい場合に、位置を変更するための推奨動作が、ユーザに与えられることが好ましい。
【0057】
又、変換処理を実行するための条件として、記録装置の位置を決定することにより、有利には、確実で高い品質の変換処理が行われることが保証されることが好ましい。
例えば、心臓運動誘発信号を記録するための記録装置が正しく配置されておらず、例えば加速度センサが体表面上に載置されておらず、変換処理によって決定されるECG信号の品質が、低下することを回避することができる。
【0058】
又、機能性及び/又は信号品質及び/又は記録装置の位置を決定するために、変換処理のために意図された心臓運動誘発信号が、評価されることが好ましい。
これらは、機能性が検出され、及び/又は、信号品質が予め定められたレベル以上であり、及び/又は、予め定められた位置からの位置の逸脱が予め定められたレベルより大きくない場合に、変換処理のために使用されることが考えられる。
代替的に、機能性及び/又は信号品質及び/又は位置は、変換処理のために意図されていない心臓運動誘発信号に基づいて決定されることが好ましい。
その場合、機能性が検出され、及び/又は、信号品質が予め定められたレベル以上であり、及び/又は、予め定められた位置からの位置の逸脱が予め定められたレベルより大きくない場合に、変換処理のための心臓運動誘発信号の更なる記録が実行されることが好ましい。
【0059】
又、ECG信号は、特に人間のECG信号、すなわち、人間医学上の用途のための/人間医学上の用途における信号であることが好ましい。
しかしながら、本方法は、動物のECG信号を生成するためにも、すなわち、獣医学上の用途のための/獣医学上の用途における信号を生成するためにも、使用されることが好ましい。例えば、動物における特に無電極のECG記録は、有利には、例えば診断の目的のためにECGが記録されるべき動物において、ストレスの大幅な低減を可能にする。
【0060】
例えば、動物、特にウマ又はイヌにおいて、24時間ホルターECGが記録され得るが、これは、必要とされる医師の訪問及びその後の動物の配線の故に、動物にとって大きなストレス要因である。これは、病状が一過性の疾患である場合に特に問題となり得る。なぜなら、ストレスは、例えばイヌにおいて、認識できない臨床症状を引き起こすからである。
しかしながら、本発明によるECG信号の生成方法は、ECG信号を生成するために、特に電極を装着するために、専門家を必要とせず、特にマルチチャネルECG信号の非接触測定についても可能にする。
【0061】
例えば、記録装置は、動物に装着されるハーネス又は胸部ベルトに一体化されることが好ましい。それにより、そのようなセンサは、動物の飼育者自身によって購入され装着され得る。
例えば、ハーネス/胸部ベルト内の加速度センサは、動物の心臓運動誘発信号を記録し、上述した変換処理を可能にすることができる。
同様に、本方法は、獣医師によって日常的な検査において使用されるために、使用され得る。動物は、通常、心臓血管疾患の症状を示すのが非常に遅いので、このようにして、そのような疾患の早い段階での診断を可能にすることができる。
適切な記録装置、又は、例えばスマートフォンのような記録装置を有するデバイスを装着することにより、獣医師は、この目的のために多数の電極を適用する必要なく、動物の安静時ECGを記録することができる。その場合、更に、動物に電極を使用することの欠点(例えば、電極を妨害する毛皮によるECG信号上のアーチファクト)が排除されることが好ましい。この検査の概念は、例えばコイのようなペットフィッシュにも、ウマ及びラクダにも適用することができ、これは、そのような動物の競技スポーツ分野において特に興味深い。
【0062】
家畜分野では、医学的な監視は、通常、例えばコホートを基準として獣医師が診断することによって、コスト又は労力を低減して実施されることが好ましい。
ここでも又、ECG監視は、動物福祉に関する貴重な情報(例えば、パフォーマンス、健康状態、ストレス評価、連鎖球菌のような細菌感染の早期識別)を獣医師に提供することができる。
しかしながら、これまで、通常の方法による個々の動物のECG監視は、非常に労力がかかり高価である。提案された方法によれば、例えばレーダーセンサの使用により、例えば心臓運動誘発信号が非接触で記録される場合、安価で簡易な監視方法を提供することができる。それにより、動物は、非接触で、従って衛生的にも、監視され得る。
このような監視は、ブタ、反芻動物だけでなく、魚類のような家畜に対しても考えられる。動物研究においても、提案された方法は使用され得る。できるだけストレスの少ない態様で動物の健康を保証するために、動物園や動物公園においても使用可能である。
【0063】
更に、ECG信号を生成するためのシステム、すなわち、ECG信号生成システムが提案され、当該ECG信号生成システムは、少なくとも1つの心臓運動誘発信号を記録するための少なくとも1つの記録装置と、少なくとも1つの計算装置とを含むことが好ましい。
先に説明したように、記録装置及び計算装置は、それぞれデバイスの一部であることが好ましい。
しかしながら、記録装置及び少なくとも1つの計算装置が、それぞれ互いに異なるデバイスの一部であることも好ましい。
従って、ECG信号生成システムが、複数の心臓運動誘発信号を記録するための複数の記録装置を含むことも好ましい。
【0064】
本発明によれば、記録された少なくとも1つの心臓運動誘発信号は、計算装置によって、少なくとも1つのECG信号に変換処理可能である。このために、記録装置によって記録された信号を、例えば伝送装置によって計算装置に伝送することが必要であり得る。
すなわち、本発明の生成システムは、有利には、本開示に記載された実施形態のうちの1つによるECG信号を生成するための方法を、それに応じて記載された利点を伴って実行することを可能にする。従って、システムは、そのような方法が当該システムによって実行され得るように構成されていることが好ましい。
【0065】
更なる実施形態では、記録装置は、インキュベータに一体化されていることが好ましい。
例えば、記録装置は、この場合、ドップラーレーダーセンサを含むことが好ましく、特に、インキュベータのマットレス上に横たわる患者の胸部領域がレーダーセンサの記録領域内に配置されるように、インキュベータの天井部に配置されることが好ましい。
代替的に、記録装置は、加速度センサを含むか、又は、インキュベータの底部内/上に若しくはインキュベータのマットレスの内部/上に配置された加速度センサとして、構成されることが好ましい。
【0066】
代替的に、記録装置は、ベッド、特に病院ベッドの内部に配置されることが好ましい。
かかる記録装置が、例えばドップラーレーダーセンサとして構成されている場合、当該記録装置は、マットレスの下に又はベッドの上に、例えばベッド支柱に固定して配置されることが好ましい。
同様に、マットレスの内部/上に、又は、ベッドの床内/上に配置された加速度センサとしての記録装置の先に説明した設計も、考えられる。
又、記録装置を、ベッドのマットレスの内部/上に配置された圧力センサとして設計することも可能である。
更に代替的に、記録装置は、車両シートに一体化されていることも好ましい。
この場合、ドップラーレーダーセンサとして設計された記録装置は、例えば座席の背もたれの内部/上に配置され得る。圧力センサとして設計された記録装置は、座席の背もたれの内部/上に配置され得る。加速度センサとして設計された記録装置についても同様である。
更に代替的に、記録装置は、心臓ペースメーカに一体化されていることも好ましい。
更に代替的に、記録装置は、動物用品、例えば、胸部ベルト、ホルダー、首輪などに一体化されていることも好ましい。
【0067】
従って、インキュベータを含むECG信号生成システムも記載され、記録装置は、インキュベータの内部/上に、又は、インキュベータのマットレスの内部/上に配置されていることも好ましい。
更に、ベッドを含むシステムも記載されており、記録装置はベッドの内部/上に、又は、ベッドのマットレスの内部/上に配置されていることも好ましい。
更に、付加的に車両シートを含むECG信号生成システムも記載され、記録装置は、車両シートの内部/上に配置されていることも好ましい。
更に、付加的に心臓ペースメーカを含むECG信号生成システムも記載され、記録装置は、心臓ペースメーカの内部/上に配置されていることも好ましい。
更に、付加的に動物用品を含むECG信号生成システムも記載され、記録装置は、動物用品の内部/上に配置されていることも好ましい。
もちろん、更なる用途も考えられる。又、少なくともそのようなシステムの記録装置を含む、インキュベータ、ベッド、マットレス、車両シート、心臓ペースメーカ及び動物用品も記載される。
【0068】
本発明の内容につき、実施例に基づいて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は、ECG信号を決定するための本発明によるECG信号の生成方法の概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態につき、本発明による、ECG信号の生成方法を用いたシステムの概略的なブロック図である。
【
図3】
図3は、更なる実施形態につき、本発明による、ECG信号の生成方法を用いたシステムの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明によるECG信号の生成方法の概略的なフローチャートである。
【
図5】
図5は、更なる実施形態につき、本発明による、ECG信号の生成方法を用いたシステムの概略図である。
【
図6】
図6は、更なる実施形態につき、本発明による、ECG信号の生成方法を用いたシステムの概略図である。
【
図7】
図7は、更なる実施形態につき、本発明による、ECG信号の生成方法を用いたシステムの概略図である。
【
図8】
図8は、本発明によるECG信号の生成方法の例示的な使用の概略図である。
【
図9】
図9は、ECG信号の生成方法を用いたシステムをインキュベータと共に示す概略図である。
【
図10】
図10は、ECG信号の生成方法を用いたシステムを病院ベッドと共に示す概略図である。
【
図11】
図11は、ECG信号の生成方法を用いたシステムを車両シートと共に示す概略図である。
【
図12】
図12は、更なる実施形態における本発明によるECG信号の生成方法の概略図である。
【
図14】
図14は、同期されたECG信号及びSCG信号の概略図である。
【
図15】
図15は、変換処理により決定されたECG信号及び電極により記録されたECG信号の概略図である。
【
図16】
図16(a)は、ECG信号の生成方法を用いたシステム(ECG信号を生成するためのシステム)の記録装置を備える犬用ハーネスの概略図であり、
図16(b)は、ECG信号を生成するためのシステムの記録装置を備える馬用保持器の概略図である。
【
図17】
図17は、ECG信号を生成するためのシステムを備えるペースメーカの概略図である。
【
図18】
図18は、異なる信号セクションの重み付けを例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下において、各図面における、同一の参照符号は、基本的に、同一又は類似の技術的特徴を有する要素を示すものとする。
【0071】
図1は、ECG信号1を生成するための方法、すなわち、ECG信号の生成方法の概略図を示す。
この場合、SCG信号2として具現された心臓運動誘発信号が記録されることが好ましい。これは、以下でより詳細に説明されるSCG記録装置Sを用いて行うことができる。
次いで、特に計算装置として構成されるか又は計算装置を含み得る変換処理装置Tにより、記録されたSCG信号2がECG信号1に変換処理されることが好ましい。
代替的に又は累積的に、心臓運動誘発信号としてPCG信号も、例えば、PCG記録装置によって記録され、ECG信号1に変換処理されること好ましい。
更に代替的に又は累積的に、心臓運動誘発信号としてBCG信号も、例えばBCG記録装置によって記録され、ECG信号1に変換処理されることが好ましい。
【0072】
又、
図2は、ECG信号1(
図1参照)を生成するためのシステム3の概略的なブロック図を示す。
すなわち、ECG信号生成システムとしてのシステム3は、SCG記録装置Sと、計算装置として構成された少なくとも1つの変換処理装置Tと、を含むことが好ましい。
これらのSCG記録装置S及び変換処理装置Tは、例えば携帯電話のようなデバイス4の一部であることが示されている。
【0073】
又、
図3は、更なる実施形態による、ECG信号1を生成するためのシステム3の一例を示す図である。
先に説明したように、システム3は、SCG記録装置Sと、計算装置として構成された変換処理装置Tとを含むことが好ましい。
更に示されているのは表示装置Aであり、その上でECG信号1が可視化されることが好ましい。ここでは、SCG記録装置S、変換処理装置T及び表示装置Aが、デバイス4の一部であることが示されている。
【0074】
又、
図2及び
図3に示されたSCG記録装置Sは、例えば、加速度センサとして、圧力センサとして、又はレーダーセンサとして、特にドップラーレーダーセンサとして構成されることが好ましく、或いは、そのようなセンサを含むことが好ましい。
かかるSCG記録装置Sは、ジャイロスコープとして構成されるか又はそのようなジャイロスコープを含むことも好ましい。
【0075】
又、
図4は、本発明によるECG信号の生成方法の概略的なフローチャートを示している。
この場合、記録ステップS1において、特に先に説明したSCG記録装置Sによって、SCG信号2が記録されることが好ましい。
次いで、任意のフィルタリングステップS2において、このようにして記録されたSCG信号2が、フィルタリング、例えばハイパスフィルタリングされることが好ましい。又、SCG信号2において、いわゆるトレンド除去を実行することも好ましい。
次いで、変換処理装置Tにおいて実行され得る変換処理ステップS3において、SCG信号が、ECG信号に変換処理されることが好ましい。それにより、振動性心電図も心電図に変換処理されることが好ましい。又、変換処理ステップS3は、複数の部分変換処理を含むことも好ましい。
次いで、後処理ステップS4において、このようにして生成されたECG信号又はこのようにして生成された心電図は、記憶され、少なくとも1つの更なる装置に伝送され、及び/又は、例えば適切な表示装置Aの上で可視化されることが好ましい。
【0076】
又、
図5は、更なる実施形態による、ECG信号1(
図1参照)を生成するためのシステム3の概略図である。
すなわち、SCG記録装置Sを含むデバイス4が示されており、このSCG記録装置Sにより、SCG信号2(
図1参照)が記録可能である。更に、デバイス4は、デバイス4と更なるデバイスとの間のデータ伝送のための通信装置Kを含むことが好ましい。
この通信装置Kにより、生成されたSCG信号2は、HUB装置5に伝送されることが好ましい。このHUB装置5は、計算装置として構成された変換処理装置Tと、伝送されたSCG信号を受信するための通信装置Kとを備えることが好ましい。
更に、HUB装置5によって、SCG信号2のECG信号1への変換処理が実行されることが好ましい。
そして、このようにして決定されたECG信号1が、次いで、HUB装置5の表示装置(図示せず)上で表示されることが好ましい。それは、HUB装置5の記憶装置(図示せず)によって記憶されるか、又は、通信装置Kによって更に伝送されることが好ましい。
【0077】
又、
図6は、ECG信号1を生成するためのシステム3の更なる状態を図示している。
すなわち、
図5に示された実施形態とは対照的に、SCG記録装置Sによって生成されたSCG信号2は、通信装置Kを介して、いわゆるクラウドベースのサービスを提供するサーバ装置6に伝送されることが好ましい。
このサーバ装置6は、デバイス4によって伝送されたSCG信号2のECG信号への変換処理を実行する変換処理装置T(図示せず)を含むことが好ましい。
図6には、変換処理された信号、すなわちECG信号1が、再びデバイス4に返送され、次いで、デバイス4の通信装置によって受信され得ることが示されている。
次いで、このようにして得られたECG信号は、デバイス4によって記憶され、更に処理され、又は、例えばデバイス4の表示装置A(図示せず)によって可視化されることが好ましい。
ここで、少なくとも1つの後処理ステップは、HUB装置5又はサーバ装置6によって実行されることが好ましい。ここでは、先に説明した後処理ステップのうちの個々の、全てではないが複数の、又は、全てのステップが、HUB装置5又は外部のサーバ装置6によって実行されることが好ましい。。
【0078】
又、
図7は、本発明の更なる実施形態による、ECG信号1を生成するためのシステム3の概略図である。
すなわち、
図7に示すように、
図6に示された実施形態とは対照的に、デバイス4のSCG記録装置Sによって記録されたSCG信号2は、デバイス4の通信装置Kを介してサーバ装置6に伝送され、その変換処理装置は、次いで、ECG信号1への変換処理を実行することが好ましい。
このようにして変換処理されたECG信号1は、次いで、サーバ装置6から更なるデバイス7に伝送され、そこで、更なるデバイス7の通信装置Kによって受信されることが好ましい。
更に、このようにして生成されたECG信号1は、次いで、更なるデバイス7の記憶装置に記憶され、更なるデバイス7の計算装置によって更に処理され、又は、更なるデバイス7の表示装置(図示せず)によって表示されることが好ましい。
【0079】
又、
図8は、ECG信号1を生成するためのシステム3(例えば、
図2参照)の概略的な使用を図示している。
ここでは、SCG記録装置S(図示せず)及び計算装置として構成された変換処理装置Tを含み、携帯電話として構成されたデバイス4が、ユーザ/患者8の胸部の上に配置されている。もちろん、携帯電話として構成されたデバイス4の代わりに、SCG記録装置Sを備える他のデバイスが使用されることも考えられる。
【0080】
次いで、SCG記録装置SによってSCG信号2を生成することができ、それは次いで、デバイス4の変換処理装置(図示せず)によってECG信号1に変換処理され、次いで、デバイス4の表示装置Aによって可視化されることが好ましい。
【0081】
又、
図9は、更なる実施形態による、ECG信号1(
図1参照)を生成するためのシステム3の一例を示す図である。
すなわち、システム3は、インキュベータ9を含み、患者8、例えば早産児が、インキュベータ9のマットレス10の上に横たわっている。
更に、インキュベータ9は、患者8が横たわるための空間を覆うカバー11を含んでいる。このカバー11には、ドップラーレーダーセンサ12として構成されたSCG記録装置Sが配置されている。
この場合、このドップラーレーダーセンサ12は、患者8の胸部領域がこのドップラーレーダーセンサ12の記録領域内に位置するように配置されている。
代替的に、例えば、マットレス10の内部/上に、又は、その上にマットレス10が載置されるインキュベータ9の床内/上に、圧力若しくは加速度センサとして構成されたSCG記録装置Sを配置することが好ましい。
患者8が、早産児又は新生児である場合、特に適切なフィルタリング方法によって、完全に又は高いレベルで環境アーチファクトを除去したECG信号1が生成されることが好ましい。
この理由は、新生児の比較的高い心拍数によって、インキュベータ9の周囲の他の人からの干渉の確実な低減が達成され得るからである。
【0082】
又、
図10は、更なる実施形態による、ECG信号1(
図1参照)を生成するためのシステム3の概略図を示している。
すなわち、システム3は、マットレス14を備えるベッド13を含んでいる。更に、システム3は、マットレス14の内部/上に配置された圧力又は加速度センサ15として構成されたSCG記録装置Sを含むことが好ましい。もちろん、ドップラーレーダーセンサを使用することも考えられ、これは、例えばベッド13の支柱16に配置されることが好ましい。
【0083】
又、
図11は、更なる実施形態による、ECG信号1(
図1参照)を生成するためのシステム3の概略図を示している。
すなわち、システム3は、ここでは車両シート17を含み、車両シート17の背もたれには、圧力又は加速度センサ18として形成されたSCG記録装置Sが配置されている。もちろん、SCG記録装置Sをドップラーレーダーセンサとして構成し、適切な方法で、背もたれ内/上に、又は、それとは異なる車両の位置に配置することも考えられる。
【0084】
又、
図8、9、10、11に示された実施形態は、バイタルデータの通常の監視及び心臓の病状の通常の診断に加えて、有利で切れ目のない無電極の監視、従って例えば間欠的な心房細動のような、場合によってはこれまで診断されなかった心臓の病状の検出を可能にする。
【0085】
又、
図12は、更なる実施形態における本発明による概略図である。ここでは、SCG信号2が、SCG信号のECG信号1への変換処理を実行するニューラルネットワークNNのための入力データを形成することが、示されている。
従って、ニューラルネットワークNNの出力信号は、提案されるように生成されるべきECG信号1である。この場合、変換処理装置Tは、ニューラルネットワークNNとして形成されているか、それを含むか、或いは、ニューラルネットワークNNの機能を実行することができる。
【0086】
又、
図13は、
図12に示されたニューラルネットワークNNの生成/訓練の概略図である。
ここで、同時に記録されたSCG信号2及びECG信号1の形態の訓練データがニューラルネットワークNNに供給され、ニューラルネットワークNNのパラメータは、ニューラルネットワークNNの出力データである、ニューラルネットワークによって生成されたECG信号1と、訓練データセットのECG信号との間の偏差が最小化されるよう、適合される。
かかる訓練データセットは、ECG信号、呼吸及び振動性心電図の組み合わされた測定の結果として生じ得る。そのようなデータセットは、例えば、生理学的シグナルの大規模コレクションであるフィジオバンク(Physiobank)の一部として公的にアクセス可能なデータセットの形態で、利用可能である。
この方法を検証するために、20人(12人の男性及び8人の女性)の健康とされる被験者のデータが使用された。被験者の平均年齢は24.4歳(SD±3.10)であった。
そして、データ記録の目的のために、データ計測ユニットであるBiopac MP36が使用され、その第1及び第2のチャネルを介してECG信号1が、その第4のチャネルを介して、加速度計(ST Microelectronics社製、製品名「LIS344ALH」)によるSCG信号2が、それぞれ記録された。
被験者は、覚醒し静止した状態で、仰向けで横たわるよう求められた。3種類の記録が実行された(基礎的状態で5分、クラシック音楽の傾聴で50分、制御状態で1分)。ECG信号1の記録は、0.05Hz~150Hzの帯域幅で実行され、SCG信号2は、0.5Hz~100Hzの帯域幅で記録された。各チャネルは、5kHzのサンプリングレートでサンプリングされた。
【0087】
使用されたニューラルネットワークのアーキテクチャ、及び、前処理を含む訓練データについて、本方法を検証するために適用した場合を、以下において例示的に説明する。
【0088】
特に、ニューラルネットワークを、埋め込みデバイス、及び、例えば電話のようなスマートポータブルデバイス上で動作させるために、畳み込みオートエンコーダが、SCG-ECG変換処理の学習のために使用された。
かかる畳み込みオートエンコーダは、それぞれが4つの1次元畳み込み層を有するエンコーダ及びデコーダを使用する。このエンコーダでは、畳み込み層の後に、非線形性のマッピングのためのReLU活性化関数と、計算費用の低減のための最大プーリング層とが続き、これは、過剰適合を低減し、及び/又は、剛な空間関係(rigid spatial relation)を解決するために用いられる。
又、このエンコーダでは、第1の畳み込み層は8のカーネルサイズを有する128個のフィルタから始まり、更なる層ごとにフィルタの数は2倍になる。一方、潜在空間は、フィルタの数を半分にする。
又、デコーダでは、デコーダは、第1の畳み込み層における256個のフィルタから始まる。第2及び第3の層において、フィルタの数は、それぞれ半分になる。最後の畳み込み層は、フィルタの数を64から1に減らす。デコーダ内の各層は、アップサンプリング層、畳み込み層及びReLU活性化関数から成る。
【0089】
データセットのSCG及びECG記録は、典型的には100Hz~200Hzで動作する、加速度の記録の際の通常のサンプリングレートに適合させるために、100Hzのサンプリングレートで新たにサンプリングされた。
これにより、埋め込みデバイスの限られた計算能力にもかかわらず、長期間のSCG-ECG変換処理が可能になる。かかるSCG信号は、5~30Hzのバンドパス4次バタワースフィルタでフィルタリングされた。
次いで、信号が正規化された(0と1の間の線形マッピング)。ECG信号の追加のフィルタリングは、それらがすでに事前フィルタリングされているため、実行されなかった。
【0090】
又、
図14は、同期されたECG及びSCG信号の概略図を示し、ECG信号は上の行に、SCG信号は下の行に、それぞれ示されている。
訓練の前に、モデルの畳み込み層の重みは、グロロット(Glorot)の一様初期化によって事前初期化された。損失関数は、平均絶対誤差によって与えられ、標準パラメータあり、正則化項なしのアダムオプティマイザ(Adam-optimaizer)によって最適化されることが好ましい。
ラベル又は参照は、グラウンドトゥルースECG信号(ECGGT)であり、その結果、オートエンコーダは、SCG信号2からECGGT信号へのマッピングを学習し、次いで、SCG信号2を、変換処理によって決定されたECG信号1(ECGT)に変換処理することが好ましい。
次のステップでは、各512値の長さを有するSCGウィンドウが、ネットワークに供給される。モデルの結果は、512値の長さを有するECGTウィンドウであり、これは、損失最適化を介して対応するECGGTウィンドウに適合されることが好ましい。
【0091】
サンプルの数を増加させ、ネットワークがウィンドウ間の遷移を適切に記録することを確実にするために、訓練のためにスライディングウィンドウ技法が用いられた。
そして、512のウィンドウサイズを87.5%のオーバーラップで選択することにより、各参加者に対して4040の使用可能なウィンドウが得られた。従って、20人の参加者全てに対して、入力はテンソル20×512×4040×2に変換処理される。
更に、被験者の数が少ないため、モデルの正則化性能を評価するために、機械学習モデルの予測性能を検証する方法としてのリーブワンアウトケーフォールド交差検証(leave-one-out k-fold cross-validation)が実行された。又、かかる交差検証の検出力は、20の畳み込みの平均化によって計算された。
ECGT及びECGGT信号がどのように見えるかを具体的に説明するために、
図15は、実線によって示されたECGGTのオーバーレイ(overlay)を伴う400サンプルの長さを有するセグメントの変換処理結果(ECGT信号)を、破線によって示している。
結果は、3種類の異なる測定基準を用いて評価された。すなわち、1)信号レベルでの評価、2)特徴レベルでの評価、3)領域専門家による評価である。
【0092】
(信号レベルでの評価)
ECGGTをECGTと比較するために、相互相関が用いられた。2つの信号は、r=0.94の相関係数で高度に相関している。
変換処理結果の質を信号レベルで分析するために、平均二乗誤差、正規化平均二乗誤差、平均二乗偏差、正規化平均二乗偏差及びパーセント平均二乗差を含む一連の適切なECG比較値が、同様に評価された。加えて、全被験者についてリーブワンアウト交差検証(leave-one-out cross-validation)が実行され、各指標について平均値及び標準偏差が計算された。結果を表1に示す。
【0093】
(特徴レベルでの評価)
特徴レベルでの比較のために、ECGGT信号とECGT信号の2つの信号から、2つの重要なECG特徴、すなわちRピークの数及びQRS群の持続時間が抽出された。
【0094】
【0095】
かかる2つの信号中のQRS群及びRピークを同定するために、パン-トンプキンスアルゴリズム(Pan-Tompkins algorithm)が用いられた。Rピークの数及びQRS群の持続時間を比較するために、正確に記録されたRピークの数及びQRS群の持続時間が用いられた。
又、ECGGTとECGTとの間の差異を調べるために、ノンパラメトリックブランドアルトマン分析(nonparametric Bland-Altman test)が実行された。
このノンパラメトリックブランドアルトマン分析は、仮説と一致して、同定されたRピークの数(平均バイアス=-8.0、95%CI=-60~44、r2=0.97、p=0.56)とQRS群の長さ(平均バイアス=-0.34、95%CI=-1.9~1.2、r2=0.02、p=0.12)の両方について、ECGGTとECGTの間に有意な偏差を示さなかった。
【0096】
(専門家による評価)
このために、合同信号及び比較的大きな統計的偏差を有する信号の両方の例を調べた15人の心臓病専門医からのフィードバックが収集された。専門家は、5点リッカート尺度(1-非常に不良、2-不良、3-中立、4-良好、5-非常に良好)で、信号の律動学的及び形態学的な診断値を評価することを求められた。
合同信号の平均的な結果は、律動学的な診断値では5のうち4.87に達し、形態学的な診断値では5のうち4.67に達した。比較的低い統計的な合同性を有する信号についてさえ、平均的な結果は、律動学的な診断値では5のうち4.73に達し、形態学的な診断値では5のうち4.60であった。
これらの結果は、提案されたECG信号生成方法が、高い信頼性及び妥当性で、ECG信号1の決定を保証することを示している。信号レベルでは、ECGTとECGGTとの間の強い相関(相互相関r=0.94)が見出された。
特徴レベルでは、Rピークの数及びQRS群の長さの比較は、本発明に従って適用される変換処理によって決定されたECG信号1とECGGTとの一致を裏付けている。一般に、使用されたデータセットは、SCG及びECGGT信号の高い品質を提供した。それにもかかわらず、いくつかのの記録は、両方の信号に影響を及ぼすモーションアーチファクトを含んでいた。SCGデータにおける質の悪いECGGTデータ及びモーションアーチファクトは、変換処理により決定されたECG信号1(ECGT)の質を低下させ、減衰した信号セクションにおける記録されたRピークの数に影響を与え、相関係数を低下させる。他方、アーチファクトのないSCG信号2が高品質のECG信号1の決定を可能にしたときは、ECGGTにおけるアーチファクトも相関係数を減少させた。
これらの場合、本発明に従って決定されたECG信号1は、記録されたグラウンドトゥルースよりも良好であることが明らかになる。特に、誤った電極配置によるECGGT信号のアーチファクトの場合、変換処理によって決定されたECG信号1は、より正確な結果をもたらすことができる。なぜなら、それは、電極接続又は正しい電極配置とは無関係に生成可能だからである。そして、心臓病専門医からの系統的なフィードバックも、臨床的妥当性及び関連性を証明している。
【0097】
更に、ハートエーアイ法(Heart.AI method)とも呼ばれ得る本発明により提案される方法は、律動学的な病状(例えば心房細動)が確実に同定され得ることを可能にする。更に、この方法の非接触適用性、その容易な適用及び高い利用可能性は、有利である。
同様に、この方法を、SCG記録装置と共に、病院のベッド若しくは介護施設のベッドにおいて、又は、家庭環境においてさえ、使用する可能性も有利である。一般開業医、特に専門家が不足していることが多い田舎の地域での容易な使用性も、有利である。
従って、提案された方法は、そのようなシナリオでは、遠隔医療用途のために、容易かつ安価に使用され得る。
【0098】
更に、SCG信号2の記録に向いている装置、例えば加速度センサ又はジャイロスコープを備える既存のデバイスは、ソフトウェアアップデートにより、提案された方法を実行可能な状態にされることが好ましい。
従って、本方法により提供される機能性は、多くのデバイスに追加装備されることができ、これにより、本方法の広い適用性が保証される。
更なる利点は、前胸部運動(SCG信号)の容易で確実な恒久的記録が可能であることであり、それにより、次いで、特に24時間よりも長い期間にわたって、ECG信号の恒久的で確実な決定も可能になる。必要とされるセンサが安価であり、必要とされるセンサが多くの使用可能なデバイスに既に組み込まれており、従って、先に説明したように、本方法の実施ために使用され得ることも、同様に有利である。提案された方法は又、既に生成されたSCG信号2をECG信号1に事後的に変換処理するために使用可能である。これは、特に科学的な調査にとって興味深いことである。
【0099】
又、
図16(a)は、ECG信号1(
図1参照)を生成するためのシステム3のSCG記録装置Sを備えるドッグハーネス19の概略図を示し、SCG記録装置Sは、加速度センサ18として構成されている。そして、SCG記録装置Sが、ドッグハーネス19において、当該ドッグハーネス19を意図した方法で装着する犬20の胸部領域に接触する領域に配置されていることが示されている。
【0100】
又、
図16(b)は、ECG信号1(
図1参照)を生成するためのシステム3のSCG記録装置Sを備える馬用保持器21の概略図を示し、SCG記録装置Sは、加速度センサ18として構成されている。
かかるSCG記録装置Sが、馬用保持器21において、馬用保持器21を意図した方法で装着する馬22の上部背部領域に接触する領域に配置されていることが示されている。
一方、かかるSCG記録装置Sが、馬用保持器21において、馬用保持器21を意図した方法で装着する馬22の腹部又は胸部領域に接触する領域に配置されることも考えられる。
【0101】
又、
図17は、ECG信号1を生成するためのシステム3を備えるレート適応型心臓ペースメーカ23の概略図である。
かかる
図17によれば、加速度センサ18として設計されたSCG記録装置Sを含むレート適応型心臓ペースメーカ23が示されている。
更に、かかるレート適応型心臓ペースメーカ23は、変換処理装置Tを含んでいる。図示されていないが、レート適応型心臓ペースメーカ23の通信装置Kは、変換処理によって決定されたECG信号1を、例えば表示装置A又はサーバ装置6のような体外の装置に伝送することができる。
しかしながら、レート適応型心臓ペースメーカ23が変換処理装置Tを含むことは、必須ではない。例えば、レート適応型心臓ペースメーカ23が変換処理装置Tを含まず、SCG記録装置Sの出力信号(生信号)が、例えば通信装置Kを介して、ペースメーカ外部の計算装置に伝送されることも好ましい。
【0102】
又、
図18は、誤差関数の評価における異なる信号セクションの重み付けの例示的な図示である。
すなわち、ECG信号は、上の行に示されている。そして、ECG信号中に3つの異なる信号セクション(SA1、SA2、SA3)が示されており、当該異なる信号セクションは長方形で囲まれている。第1の信号セクションSA1はP波信号セクション、第2の信号セクションSA2はQRS群信号セクション、第3の信号セクションSA3はT波信号セクションである。
又、第2の中央の行は、個々の信号セクション(SA1、SA2、SA3)に割り当てられた重み係数(w1、w2、w3)を示している。例えば、第1の信号セクションSA1には第1の重み係数w1が、第2の信号セクションSA2には第2の重み係数w2が、第3の信号セクションSA3には第3の重み係数w3が、それぞれ割り当てられている。
そして、第1の重み係数w1は、第2の重み係数w2及び第3の重み係数w3よりも大きく、第3の重み係数w3は、第2の重み係数w2よりも大きいことが認識できる。重み係数が1よりも大きいことが可能である。
しかしながら、全ての重み係数(w1、w2、w3)が1以上であることも可能であり、それにより、ECGに関連する信号セクション(SA1、SA2、SA3)は、関連しない残りの信号セクションと比較してより高く重み付けされる。
又、第3の下の行は、重み付けされたECG信号の信号経路を示しており、ECG信号の振幅は、第1の信号セクションSA1では第1の重み係数w1で、第2の信号セクションSA2では第2の重み係数w2で、第3の信号セクションSA3では第3の重み係数w3で、それぞれ重み付け、特に乗算された。
重み付けは、窓関数を用いたECG信号の畳み込みによって行うこともできる。この重み付けにより、特に、振幅補正が実行され得る。
これにより、例えば平均二乗誤差法を用いて偏差を決定する場合にそうであるように、大きな信号変化が小さな変化よりも大きく重み付けされることが、回避され得る。
しかしながら、ECG信号の場合、小さな上昇(例えば、第1の信号セクションSA1に囲まれたP波)は、重要な情報を含む。このようにして、変換処理によって決定されたECG信号1の異なる信号セクション及び基準ECG信号の異なる信号セクションが重み付けされ、重み付けの後、変換処理のためのモデル、特にニューラルネットワークを訓練するために、重み付けされた信号間の偏差が決定されることが考えられる。
【符号の説明】
【0103】
1:ECG信号、2:SCG信号、3:システム、4:デバイス、5:HUB装置、6:サーバ装置、7:更なるデバイス、8:患者、9:インキュベータ、10、14:マットレス、11:カバー、12:ドップラーレーダーセンサ、13:ベッド、15、18:加速度センサ、16:支柱、17:車両シート、19:ドッグハーネス、20:犬、21:馬用保持器、22:馬、23:レート適応型心臓ペースメーカ、A:表示装置、K:通信装置、NN:ニューラルネットワーク、S:SCG記録装置、S1:記録ステップ、S2:フィルタリングステップ、S3:変換処理ステップ、S4:後処理ステップ、SA1:第1の信号セクション、SA2:第2の信号セクション、SA3:第3の信号セクション、T:変換処理装置、w1:第1の重み係数、w2:第2の重み係数、w3:第3の重み係数