(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法、及び、合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240626BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240626BHJP
B32B 3/28 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B32B17/10
B32B3/28 C
(21)【出願番号】P 2023035858
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2018530637の分割
【原出願日】2018-03-28
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2017072767
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中山 和彦
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/163512(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/016361(WO,A1)
【文献】特開2001-261385(JP,A)
【文献】国際公開第2015/156365(WO,A1)
【文献】特表2016-521302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面に多数の凹部を有する合わせガラス用中間膜であって、
前記多数の凹部を有する表面は、底部が連続した溝形状を有する多数の凹部を有し、
前記底部が連続した溝形状の凹部についてJIS B 0601(1994)に準拠して測定される十点平均粗さRzが50μm以下であり、
前記凹部を有する表面は、ISO 25178に準拠して測定される表面テクスチャー比Strが0.04以下である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
100℃、15分間加熱後に、凹部を有する表面のISO 25178に準拠して測定される表面テクスチャー比Strが0.08以下である
ことを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記十点平均粗さRzが10~
50μmである
ことを特徴とする請求項
1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
少なくとも一方の表面に多数の凹部を有する合わせガラス用中間膜であって、
前記多数の凹部を有する表面は、底部が連続した溝形状を有する多数の凹部を有し、
前記底部が連続した溝形状の凹部についてJIS B 0601(1994)に準拠して測定される十点平均粗さRzが50μm以下であり、
前記凹部を有する表面は、ISO 25178に準拠して測定される表面テクスチャー比Strと、100℃、15分間加熱後に測定される表面テクスチャー比Strとの差の絶対値ΔStrが0.1以下である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
請求項1、2、3
又は4記載の合わせガラス用中間膜
を、一対のガラス板の間に積層
する工程を含む
ことを特徴とする合わせガラス
の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2、3
又は4記載の合わせガラス用中間膜を製造する方法であって、
樹脂膜の表面に微細な凹凸を付与する第1の工程と、刻線状の凹部を付与する第2の工程とを有し、
前記第1の工程後の樹脂膜のJIS B 0601(1994)に準拠して測定される算術平均粗さRaを4μm以下とし、かつ、前記第2の工程において樹脂膜に刻線状の凹部を付与するときの線速を10m/分以下とする
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜の製造方法。
【請求項7】
第1の工程後の樹脂膜の
うち、凹凸形状を有する表面のJIS B 0601(1994)に準拠して測定される算術平均粗さRa
(μm)と凹部の間隔Sm
(μm)との積(Ra×Sm)が2500以下であ
り、
凹部の間隔Sm(μm)とは、隣接する凹部の最底部間の最短距離の平均値である
ことを特徴とする請求項
6記載の合わせガラス用中間膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空脱気法において予備圧着時の脱気と本圧着時の加熱とを平行して行っても、高い可視光線透過率の合わせガラスを製造可能な合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜の製造方法、及び、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のガラス板の間に、可塑化ポリビニルブチラール等の熱可塑性樹脂を含有する合わせガラス用中間膜を挟み、互いに接着させて得られる合わせガラスは、自動車用フロントガラス等として広く使用されている。
【0003】
このような自動車用フロントガラスの製造方法の1つとして、ゴムバックを用いた真空脱気法が行われている。真空脱気法では、少なくとも2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体をゴムバックに入れて減圧吸引し、ガラス板と中間膜との間に残留する空気を脱気しながら予備圧着し、次いで、例えばオートクレーブ内で加熱加圧して本圧着を行うことにより合わせガラスを得る。
【0004】
このような合わせガラスの製造工程においては、ガラスと合わせガラス用中間膜とを積層する際の脱気性が重要である。このため、合わせガラス用中間膜の少なくとも一方の表面には、合わせガラス製造時の脱気性を確保する目的で、多数の凹部が形成される。とりわけ、該凹部を、底部が連続した溝形状(刻線状)を有し、隣接する該刻線状の凹部が平行して規則的に形成される構造とすることにより、極めて優れた脱気性を発揮することができる(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、このような刻線状の凹部が形成された合わせガラス用中間膜を用いた場合であっても、充分には脱気できずに、得られる合わせガラスに気泡が残存して可視光線透過率が低下してしまうことがあった。とりわけ、真空脱気法において工程時間を短縮するため、予備圧着時の脱気と本圧着時の加熱とを平行して行おうとすると、脱気不良による可視光線透過率の低下が顕著となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、真空脱気法において予備圧着時の脱気と本圧着時の加熱とを平行して行っても、高い可視光線透過率の合わせガラスを製造可能な合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜の製造方法、及び、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも一方の表面に多数の凹部を有する合わせガラス用中間膜であって、前記凹部を有する表面は、ISO 25178に準拠して測定される表面テクスチャー比Strが0.04以下である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、真空脱気法により合わせガラスを製造したときに、脱気不良による可視光線透過率の低下が発生する原因について検討した。真空脱気法では、少なくとも2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体をゴムバックに入れて減圧吸引し、ガラス板と中間膜との間に残留する空気を脱気しながら予備圧着し、次いで、例えばオートクレーブ内で加熱加圧して本圧着を行うことにより合わせガラスを得る。その結果、工程時間を短縮するために予備圧着時の脱気と本圧着時の加熱とを平行して行おうとすると、加熱により凹部形状がつぶれ、脱気が充分に行われないまま積層体が密着してしまう、先行シールという現象が起こるため、脱気が不充分になることを見出した。
特許文献1に記載された刻線状の凹部が形成された合わせガラス用中間膜では、脱気時の吸気が容易であることから、比較的先行シールは起こりにくい。しかしながら、より工程時間を短縮しようとすると、完全には先行シールを防止できない。これは、刻線状の凹部であっても、溝深さ及び形状が不均一であるため、局所的に溝が塞がって先行シールが発生してしまうためと考えられた。
【0010】
本発明者は、更に鋭意検討の結果、合わせガラス用中間膜の凹部を有する表面の表面テクスチャー比Strを一定以下とすることにより、工程時間を短縮するために予備圧着時の脱気と本圧着時の加熱とを平行して行おうとした場合にでも先行シールを防止して、高い可視光線透過率の合わせガラスを製造可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明の合わせガラス用中間膜は、少なくとも一方の表面に多数の凹部を有する。これにより、合わせガラスの製造時における脱気性を確保することができる。上記凹部は、一方の表面にのみ有してもよいが、著しく脱気性が向上することから、合わせガラス用中間膜の両面に有することが好ましい。
【0012】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記凹部を有する表面について、ISO 25178に準拠して測定される表面テクスチャー比Str(以下、単に「Str」ともいう。)が0.04以下である。
Strは、形状規則性を示す指標である。Strは0と1との間で、0に近いほど形状が規則的であり、1に近いほど形状が不規則であることを示す。通常の表面に凹部を有する合わせガラス用中間膜では、該凹部を有する表面のStrは0.1以上である。
本発明の合わせガラス用中間膜においては、凹部を有する表面のStrを0.04以下、即ち、従来に比べて極めて規則的な凹部とすることにより、工程時間を短縮するために予備圧着時の脱気と本圧着時の加熱とを平行して行おうとした場合にでも先行シールを防止して、高い可視光線透過率の合わせガラスを製造することができる。これは、極めて規則的な凹部とすることにより、局所的に凹部がつぶれて溝が塞がってしまうことを防止できるためと考えられる。凹部を有する表面のStrは0.03以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましい。
なお、Strを小数点第三位まで測定する場合には、小数点第三位の数字も含めて本発明に含まれるかを判断する。即ち、本発明の合わせガラス用中間膜は、上記凹部を有する表面についてStrが0.040以下である。例えば、Strが0.040である場合は本発明に含まれる。Strが0.041である場合は本発明には含まれない。Strを小数点第四位まで測定する場合も同様である。即ち、Strが0.0400である場合は本発明に含まれ、Strが0.0401である場合は、本発明には含まれない。
【0013】
Strは、具体的には例えば、以下のような方法により測定することができる。
3次元白色光干渉型顕微鏡(例えば、ブルカーエイエックスエス社製、ContourGT-K等)を用い、対物レンズの倍率を50倍、内部レンズの倍率を0.5倍、解像度設定を「half resolution」とする条件で、合わせガラス用中間膜の表面を2mm四方の視野で測定して画像を得る。この際、光量及びThreshholdは、ノイズが測定に極力入らない、適切な条件で行う。得られた画像について、平坦化処理及びノイズ除去処理を施し、更に、Gaussianフィルターを用いてノイズを除去したうえで、ISO 25178で規定された方法によりStr値を算出する。
【0014】
本発明の合わせガラス用中間膜は、100℃、15分間加熱後に、凹部を有する表面のStrが0.08以下であることが好ましい。真空脱気法による合わせガラスの製造においては、本圧着時に90~100℃まで加熱する。100℃程度まで加熱したときにも凹部の規則性を一定以上とすることにより、更に良好な脱気性を発揮することができる。100℃、15分間加熱後の凹部を有する表面のStrは0.05以下であることがより好ましい。
【0015】
なお、熱可塑性を有する合わせガラス用中間膜では、加熱により凹部を有する表面のStrが上昇することは不可避であるが、脱気性確保の観点から、できる限り上昇の幅が小さいことが好ましい。即ち、一定時間加熱した後であってもStr値の上昇の幅が小さい場合に更に良好な脱気性を発揮することができる。具体的には、100℃、15分間加熱前後に測定されるStrの差の絶対値ΔStrが0.1以下であることが好ましい。
少なくとも一方の表面に多数の凹部を有する合わせガラス用中間膜であって、上記凹部を有する表面は、ISO 25178に準拠して測定される表面テクスチャー比Strと、100℃、15分間加熱後に測定される表面テクスチャー比Strとの差の絶対値ΔStrが0.1以下である合わせガラス用中間膜もまた、本発明の1つである。
【0016】
上記凹部の形状は、少なくとも溝形状を有すればよく、例えば、刻線状、格子状等の、一般的に合わせガラス用中間膜の表面に付与される凹部の形状を用いることができる。なかでも、底部が連続した溝形状(刻線状)を有し(以下、「刻線状の凹部」ともいう。)、隣接する凹部が平行して規則的に並列していることが好ましい。
一般に、2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体を圧着するときの空気の抜け易さは、上記凹部の底部の連通性及び平滑性と密接な関係がある。中間膜の少なくとも一方の面の凹部の形状を刻線状の凹部が平行して規則的に並列した形状とすることにより、上記の底部の連通性が優れ、著しく脱気性が向上する。
なお、「規則的に並列している」とは、隣接する上記刻線状の凹部が平行して等間隔に並列していてもよく、隣接する上記刻線状の凹部が平行して並列しているが、すべての隣接する上記刻線状の凹部の間隔が等間隔でなくともよいことを意味する。
図1及び
図2に、溝形状の凹部が等間隔に平行して並列している合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図を示した。
図3に、溝形状の凹部が等間隔ではないが平行して並列している合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図を示した。
図3において、凹部1と凹部2との間隔Aと、凹部1と凹部3との間隔Bとは異なる。また、上記刻線上の凹部は、底部の全てが連続した溝形状である必要は無く、底部の一部に分断壁を有していても良い。
【0017】
上記凹部に対応して付与される凸部の形状は、エンボスロールが転写された形状であってもよい。また、上記凸部も、
図1に示したように頂上部が平面形状であってもよく、
図2に示したように平面ではない形状であってもよい。なお、上記凸部の頂上部が平面形状である場合には、該頂上部の平面に更に微細な凹凸が施されていてもよい。更に、各凹凸の凸部の高さは、同一の高さであってもよいし、異なる高さであってもよく、これらの凸部に対応する凹部の深さも、該凹部の底辺が連続していれば、同一の深さであってもよいし、異なる深さであってもよい。
【0018】
上記刻線状の凹部の十点平均粗さ(Rz)の好ましい下限は10μm、好ましい上限は80μmである。上記刻線状の凹部の粗さ(Rz)をこの範囲内とすることにより、優れた脱気性を発揮することができる。上記刻線状の凹部の十点平均粗さ(Rz)のより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は50μmである。
なお、本明細書において刻線状の凹部の十点平均粗さ(Rz)は、JIS B 0601(1994)に規定されるRzであり、刻線方向の凹部が連続する方向に対して横断するように垂直方向に測定することで得られる。ここで、測定機としては、例えば、小坂研究所社製「Surfcorder SE300」等を用いることができる。この際、測定時のカットオフ値を2.5mm、基準長さを2.5mm、測定長さを12.5mmとし、予備長さを2.5mmとし、触診針の送り速度を0.5mm/秒、触針形状を先端半径2μm、先端角60°のものを用いる条件により測定することができる。また、測定時の環境は23℃及び30RH%下である。
【0019】
隣接する上記刻線状の凹部の間隔Smの好ましい下限は100μm、好ましい上限は500μmである。上記刻線状の凹部の間隔Smをこの範囲内とすることにより、優れた脱気性を発揮することができる。上記刻線状の凹部の間隔Smのより好ましい下限は160μm、より好ましい上限は350μmであり、更に好ましい上限は250μmである。
なお、本明細書において刻線状の凹部の間隔Smは、光学顕微鏡(SONIC社製「BS-D8000III」)を用いて、合わせガラス用中間膜の第1面及び第2面(観察範囲20mm×20mm)を観察し、隣接する凹部の間隔を測定したうえで、隣接する凹部の最底部間の最短距離の平均値を算出することにより得られる。
【0020】
本発明の合わせガラス用中間膜において、上記凹部を有する表面のStrを0.04以下とする具体的な方法を、上記刻線状の凹部を少なくとも一方の表面に有する合わせガラス用中間膜を例として説明する。
合わせガラス用中間膜の表面に上記刻線状の凹部を付与する方法は、通常、樹脂膜の表面に微細な凹凸を付与する第1の工程と、刻線状の凹部を付与する第2の工程とからなる。
具体的には例えば、第1の工程では、同形状の1対のエンボスロールを凹凸形状転写装置として用い、樹脂膜の両面にランダムな凹凸形状を転写する。該エンボスロールとしては、鉄ロール表面に、ブラスト剤によりランダムな凹凸を施し、バーチカル研削した後、バーチカル研削後の平坦部により微細なブラスト剤を用いて微細な凹凸を施す方法により製造した、粗大なメインエンボスと微細なサブエンボスをもつエンボスロールを用いることができる。また、第1の工程では、メルトフラクチャーを利用した押出リップエンボス法により微細な凹凸を付与してもよい。
また、第2の工程では、三角形斜線型ミルを用いて表面に彫刻加工を施した金属ロールと65~75のJIS硬度を有するゴムロールとからなる一対のロールを凹凸形状転写装置として用い、樹脂膜をこの凹凸形状転写装置に通し、一方の表面に底部が連続した溝形状(刻線状)である凹部が平行して等間隔に並列した凹凸を付与する。
【0021】
ここで、合わせガラス用中間膜の凹部を有する表面のStrを0.04以下とするためには、第1の工程後の樹脂膜のJIS B 0601(1994)に準拠して測定される算術平均粗さRaを4μm以下とする(条件1)ことが重要である。更に、第2の工程において樹脂膜に刻線状の凹部を付与するとき(凹凸形状転写装置に通すとき)の線速を10m/分以下とする(条件2)ことが重要である。
【0022】
上記第1の工程では、合わせガラス用中間膜を重ねたときにブロッキングが生じないように、算術平均粗さRaが1μm以上となるように微細の凹凸を付与することが好ましい。このとき、該微細な凹凸の算術平均粗さRaを4μm以下とすることにより、得られる合わせガラス用中間膜の凹部を有する表面のStrを0.04以下とすることができる。上記第1の工程後の樹脂膜の算術平均粗さRaは2μm以下であることが好ましい。
また、第1の工程後の樹脂膜のJIS B 0601(1994)に準拠して測定される算術平均粗さRaと凹部の間隔Smとの積(Ra×Sm)が2500以下であることが好ましい。Ra×Smを2500以下とすることにより、より確実に凹部を有する表面のStrを0.04以下とすることができる。
【0023】
上記第2の工程では、樹脂膜を凹凸形状転写装置に通して刻線状の凹部を付与する。ここで樹脂膜を凹凸形状転写装置に通す際の線速を10m/分以下とする、即ち、刻線状の凹部の賦形時間をゆっくりとすることにより、得られる合わせガラス用中間膜の凹部を有する表面のStrを0.04以下とすることができる。上記第2の工程における線速は5m/分以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリオキシメチレン(又は、ポリアセタール)樹脂、アセトアセタール樹脂、ポリビニルベンジルアセタール樹脂、ポリビニルクミンアセタール樹脂等が挙げられる。なかでも、本発明の合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール、又は、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましく、ポリビニルアセタールを含有することがより好ましい。
【0025】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールであれば特に限定されないが、ポリビニルブチラールが好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
【0026】
上記ポリビニルアセタールのアセタール基量の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
上記ポリビニルアセタールは、水酸基量の好ましい下限が15モル%、好ましい上限が40モル%である。水酸基量が15モル%以上であると、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が高くなる。水酸基量が40モル%以下であると、合わせガラス用中間膜の取り扱いが容易になる。
なお、上記アセタール基量及び水酸基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0027】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70~99.9モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。上記ポリビニルアルコールの鹸化度は、80~99.9モル%であることが好ましい。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が500以上であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記ポリビニルアルコールの重合度が4000以下であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
【0028】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ポリビニルベンジルアルデヒド、ポリビニルクミンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-バレルアルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の合わせガラス用中間膜は、可塑剤を含有することが好ましい。
上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0030】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、例えば、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n-ノニル酸)、デシル酸等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ-2-エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ-n-オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキシル酸エステル等が好適である。
【0031】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0032】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、アジピン酸エステル、炭素数4~9のアルキルアルコール及び炭素数4~9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等の炭素数6~8のアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0033】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0034】
更に、上記可塑剤として、加水分解を起こしにくいため、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)を含有することが好ましい。テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を含有することがより好ましい。トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含有することがより好ましい。
【0035】
本発明の合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限が30重量部、好ましい上限が90重量部である。上記可塑剤の含有量が30重量部以上であると、合わせガラス用中間膜の溶融粘度が低くなり、これを合わせガラス用中間膜として合わせガラスを製造する際の脱気性が高くなる。上記可塑剤の含有量が90重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は35重量部、より好ましい上限は70重量部、更に好ましい上限は63重量部である。
なお、上記可塑剤の含有量を55重量部以上にすると、該合わせガラス用中間膜に優れた遮音性を付与することができる。
【0036】
本発明の合わせガラス用中間膜は、接着力調整剤を含有することが好ましい。接着力調整剤を含有することにより、ガラスに対する接着力を調整して、耐貫通性に優れる合わせガラスを得ることができる。
上記接着力調整剤としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びマグネシウム塩からなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。上記接着力調整剤として、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
上記塩を構成する酸としては、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、2-エチル酪酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸の有機酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
【0037】
本発明の合わせガラス用中間膜に遮熱性が要求される場合には、熱線吸収剤を含有してもよい。
上記熱線吸収剤は、赤外線を遮蔽する性能を有すれば特に限定されない。具体的には、スズドープ酸化インジウム(ITO)粒子、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)粒子、スズドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子、セシウムドープ酸化タングステン(CWO)粒子、6ホウ化ランタン粒子及び6ホウ化セリウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
【0038】
本発明の合わせガラス用中間膜に発光性が要求される場合には、発光材料を含有してもよい。
上記発光材料は、励起光を照射することにより発光する性能を有すれば特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子を含む配位子を有するランタノイド錯体や、テレフタル酸エステル構造を有する発光材料等が挙げられる。
【0039】
本発明の合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、紫外線遮蔽剤、酸化防止剤、光安定剤、接着力調整剤として変性シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料又は染料からなる着色剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0040】
本発明の合わせガラス用中間膜は、単層構造であってもよいし、複数の層を積層した多層構造であってもよい。
本発明の合わせガラス用中間膜が多層構造である場合、組み合わせる各層の構成成分を調整することにより、得られる合わせガラス用中間膜に種々の機能を付与することも可能である。
例えば、本発明の合わせガラス用中間膜に遮音性能を付与するために、一の層における熱可塑性樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)を、他の層における熱可塑性樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)よりも多くすることができる。この場合、上記含有量Xは上記含有量Yよりも5重量部以上多いことが好ましく、10重量部以上多いことがより好ましく、15重量部以上多いことが更に好ましい。合わせガラス用中間膜の耐貫通性がより一層高くなることから、上記含有量Xと上記含有量Yとの差は、50重量部以下であることが好ましく、40重量部以下であることがより好ましく、35重量部以下であることが更に好ましい。なお、上記含有量Xと上記含有量Yとの差は、(上記含有量Xと上記含有量Yとの差)=(上記含有量X-上記含有量Y)により算出される。
【0041】
上記含有量Xの好ましい下限は45重量部、好ましい上限は80重量部であり、より好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は75重量部であり、更に好ましい下限は55重量部、更に好ましい上限は70重量部である。上記含有量Xを上記好ましい下限以上とすることにより、高い遮音性を発揮することができる。上記含有量Xを上記好ましい上限以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトの発生を抑止し、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。
上記含有量Yの好ましい下限は20重量部、好ましい上限は45重量部であり、より好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は43重量部であり、更に好ましい下限は35重量部、更に好ましい上限は41重量部である。上記含有量Yを上記好ましい下限以上とすることにより、高い耐貫通性を発揮することができる。上記含有量Yを上記好ましい上限以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトの発生を抑止し、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。
【0042】
また、本発明の合わせガラス用中間膜に遮音性を付与するためには、上記一の層における熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタールXであることが好ましい。上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、得られる合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0043】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は4、好ましい上限は6である。アルデヒドの炭素数を4以上とすることにより、充分な量の可塑剤を安定して含有させることができ、優れた遮音性能を発揮することができる。また、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。アルデヒドの炭素数を6以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保できる。上記炭素数が4~6のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n-ブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド等が挙げられる。
【0044】
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量の好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量を30モル%以下とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量のより好ましい上限は28モル%、更に好ましい上限は26モル%、特に好ましい上限は24モル%であり、好ましい下限は10モル%、より好ましい下限は15モル%、更に好ましい下限は20モル%である。
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0045】
上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は85モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を60モル%以上とすることにより、上記一の層の疎水性を高くして、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトや白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を85モル%以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の下限は65モル%がより好ましく、68モル%以上が更に好ましい。
上記アセタール基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXのアセタール基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0046】
上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を0.1モル%以上とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、ブリードアウトを防止することができる。また、上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を30モル%以下とすることにより、上記一の層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量のより好ましい下限は1モル%、更に好ましい下限は5モル%、特に好ましい下限は8モル%であり、より好ましい上限は25モル%、更に好ましい上限は20モル%である。
上記アセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0047】
特に、上記一の層に遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を容易に含有させることができることから、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が65モル%以上のポリビニルアセタールであることが好ましい。また、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が68モル%以上のポリビニルアセタールであることが、より好ましい。
【0048】
また、本発明の合わせガラス用中間膜に遮音性を付与するためには、上記他の層における熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタールYであることが好ましい。ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアセタールXより水酸基量が大きいことが好ましい。
【0049】
上記ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。また、上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、他の層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
【0050】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は3、好ましい上限は4である。アルデヒドの炭素数を3以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。アルデヒドの炭素数を4以下とすることにより、ポリビニルアセタールYの生産性が向上する。上記炭素数が3~4のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n-ブチルアルデヒド等が挙げられる。
【0051】
上記ポリビニルアセタールYの水酸基量の好ましい上限は33モル%、好ましい下限は28モル%である。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を33モル%以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を28モル%以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0052】
上記ポリビニルアセタールYのアセタール基量の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は80モル%である。上記アセタール基量を60モル%以上とすることにより、充分な耐貫通性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができる。上記アセタール基量を80モル%以下とすることにより、上記他の層とガラスとの接着力を確保することができる。上記ポリビニルアセタールYのアセタール基量のより好ましい下限は65モル%、より好ましい上限は69モル%である。
【0053】
上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量の好ましい上限は7モル%である。上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量を7モル%以下とすることにより、他の層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量のより好ましい上限は2モル%であり、好ましい下限は0.1モル%である。
なお、ポリビニルアセタールYの水酸基量、アセタール基量、及び、アセチル基量は、ポリビニルアセタールXと同様の方法で測定できる。
【0054】
また、例えば、本発明の合わせガラス用中間膜に遮熱性能を付与するために、多層構造を構成する層のいずれか1層、いずれか2層、又は、すべての層に熱線吸収剤を含有させることができる。
上記熱線吸収剤は、赤外線を遮蔽する性能を有すれば特に限定されない。具体的には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)粒子、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子、6ホウ化ランタン粒子及び6ホウ化セリウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
【0055】
本発明の合わせガラス用中間膜の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は50μm、好ましい上限は1700μmであり、より好ましい下限は100μm、より好ましい上限は1000μm、更に好ましい上限は900μmである。なお、上記合わせガラス用中間膜の厚みの下限は、合わせガラス用中間膜の最小厚さの部分の厚みを意味し、上記合わせガラス用中間膜の厚みの上限は、合わせガラス用中間膜の最大厚さの部分の厚みを意味する。
【0056】
本発明の合わせガラス用中間膜は、断面形状が楔形であってもよい。合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形であれば、合わせガラスの取り付け角度に応じて、楔形の楔角θを調整することにより、運転者が視線を下げることなく前方視野と計器表示とを同時に視認することができるヘッドアップディスプレイに用いたときに二重像やゴースト像の発生を防止することができる。二重像をより一層抑制する観点から、上記楔角θの好ましい下限は0.1mrad、より好ましい下限は0.2mrad、更に好ましい下限は0.3mradであり、好ましい上限は1mrad、より好ましい上限は0.9mradである。
なお、例えば押出機を用いて樹脂組成物を押出し成形する方法により断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜を製造した場合、薄い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、薄い側の一端から内側に向かって0X~0.2Xの距離の領域)に最小厚みを有する形状とすることがある。また、厚い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、厚い側の一端から内側に向かって0X~0.2Xの距離の領域)に最大厚みを有する形状となることがある。本明細書においては、このような形状も楔形に含まれる。なお、上記合わせガラス用中間膜の一端と他端との距離Xは、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下、特に好ましくは1.5m以下であり、好ましくは0.5m以上、より好ましくは0.8m以上、特に好ましくは1m以上である。
【0057】
上記断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜の楔角θは、合わせガラス用中間膜の一方の表面における最大厚み部分と最小厚み部分とを結んだ直線と、他方の表面における最大厚み部分と最小厚み部分とを結んだ直線との交点における内角を意味する。
なお、各表面の最大厚み部分が複数ある、最小厚み部分が複数ある、最大厚み部分が上記0X~0.2Xの距離の領域にある、又は最小厚み部分が上記0X~0.2Xの距離の領域にある場合には、求められる楔角θが最も大きくなるように最大厚み部分及び最小厚み部分を選択する。
【0058】
本発明の合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形である場合、一の層と、他の層(以下、「形状補助層」と呼ぶ場合がある。)を含む多層構造を有することが好ましい。上記一の層の厚みを一定範囲とする一方、上記形状補助層を積層することにより、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状が一定の楔角である楔形となるように調整することができる。上記形状補助層は、上記一の層の一方の面にのみ積層されていてもよく、両方の面に積層されていてもよい。更に、複数の形状補助層を積層してもよい。
【0059】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂と必要に応じて配合される他の成分とを混練し、押出成形記する方法等が挙げられる。
上記混練の方法は特に限定されない。この方法として、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー又はカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。
【0060】
本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層を有する紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【0061】
本発明の合わせガラスは、真空脱気法により好適に製造することができる。
真空脱気法では、少なくとも2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体をゴムバックに入れて減圧吸引し、ガラス板と中間膜との間に残留する空気を脱気しながら予備圧着し、次いで、例えばオートクレーブ内で加熱加圧して本圧着を行うことにより合わせガラスを得る。
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記凹部を有する表面の表面テクスチャー比Strが一定以下であることにより、真空脱気法において工程時間を短縮するために予備圧着時の脱気と本圧着時の加熱とを平行して行っても先行シールが生じにくく、高い可視光線透過率の合わせガラスを製造することができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、真空脱気法において予備圧着時の脱気と本圧着時の加熱とを平行して行っても、高い可視光線透過率の合わせガラスを製造可能な合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜の製造方法、及び、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】表面に底部が連続した溝形状である凹部が等間隔、かつ、隣接する凹部が平行して並列している合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図である。
【
図2】表面に底部が連続した溝形状である凹部が等間隔、かつ、隣接する凹部が平行して並列している合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図である。
【
図3】表面に底部が連続した溝形状である凹部が等間隔ではないが、隣接する凹部が平行して並列している合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図である。
【
図4】実施例において合わせガラス製造時における予備圧着後の積層体の平行光線透過率Tpを測定する際の測定位置を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
(1)樹脂膜の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn-ブチルアルデヒドでアセタール化することにより、アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%のポリビニルブチラールを得た。得られたポリビニルブチラール100質量部に対して、可塑剤を39質量部、接着力調整剤を膜中におけるマグネシウム濃度が50ppmとなるように添加した。ミキシングロールで充分に混練し、樹脂組成物を得た。
なお、可塑剤は、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を用いた。接着力調整剤は、ビス(2-エチル酪酸)マグネシウムと酢酸マグネシウムの50質量%:50質量%混合物を用いた。
得られた樹脂組成物を、押出機を用いて押出することにより、厚さ760μmの単層構造の樹脂膜を得た。
【0066】
(2)第1の工程
鉄ロール表面に、ブラスト剤によりランダムな凹凸を施し、バーチカル研削した後、バーチカル研削後の平坦部により微細なブラスト剤を用いて微細な凹凸を施す方法により、粗大なメインエンボスと微細なサブエンボスをもつエンボスロールを製造した。第1の工程として、1対の該エンボスロールを凹凸形状転写装置として用い、得られた樹脂膜の両面にランダムな凹凸形状を転写した。
この時の転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を80℃、上記ロールの温度を145℃、線速を10m/min、線幅を1.5m、プレス線圧を1~100kN/mの間で調整した。
【0067】
第1の工程後の樹脂膜について、JIS B 0601(1994)に準じる方法により算術平均粗さRa及び凹部の間隔Smを測定した。測定は、温度23℃、湿度30RH%の環境下で、カットオフ値=2.5mm、基準長さ=2.5mm、予備長さ2.5mm、評価長さ=12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で行った。
なお、Smが450μmを超える場合、基準長さ2.5mmは精度良く測れない場合がある。その場合はカットオフ値を8mm又はそれ以上に変更して測定した。
【0068】
(3)第2の工程
第2の工程として、三角形斜線型ミルを用いて表面に彫刻加工を施した金属ロールと65~75のJIS硬度を有するゴムロールとからなる一対のロールを凹凸形状転写装置として用い、第1の工程後の樹脂膜をこの凹凸形状転写装置に通し、樹脂膜の一方の表面に底部が連続した溝形状(刻線状)である凹部が平行して等間隔に並列した凹凸を付与した。このときの転写条件として、樹脂膜の温度を70℃、ロール温度を140℃、線速を10m/min、プレス線圧を1~100kN/mとした。
次いで、樹脂膜の他方の表面に、同様の操作を施し、底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部を付与した。
【0069】
第2の工程後の樹脂膜について、JIS B 0601(1994)に準じる方法により十点平均粗さRz、算術平均粗さRa及び凹部の間隔Smを測定した。なお、測定は、温度23℃、湿度30RH%の環境下で、底部が連続した溝形状に対して垂直方向とし、カットオフ値=2.5mm、基準長さ=2.5mm、予備長さ2.5mm、評価長さ=12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で行った。
なお、Smが450μmを超える場合、基準長さ2.5mmは精度良く測れない場合がある。その場合はカットオフ値を8mm又はそれ以上に変更して測定した。
【0070】
(4)Strの測定
温度23℃、湿度30RH%の環境下で、以下の方法によりStrを測定した。
3次元白色光干渉型顕微鏡(ブルカーエイエックスエス社製、ContourGT-K)を用い、対物レンズの倍率を50倍、内部レンズの倍率を0.5倍、解像度設定を「half resolution」とする条件で、合わせガラス用中間膜表面を2mm四方の視野で測定して画像を得た。この際、光量及びThreshholdは、ノイズが測定に極力入らない、適切な条件で行った。得られた画像について、平坦化処理及びノイズ除去処理を施し、更に、Gaussianフィルターを用いて粗大な凹凸を除去したうえで、ISO 25178で規定され方法によりStr値を算出した。
画像処理には、装置付属の解析ソフトである、「Vision64」を用いた。平坦化処理として、以下の第1から第3の処理を行った。即ち、第1の処理として、Analysis Toolbox上の「Terms Removal(F-Operator)」処理を、解析条件「Tilt only(Plane Fit)」で行った。第2の処理として、「Statistic Filter」処理を、解析条件「Filter type:median」および「Filter size:3」で行った。第3の処理として、「data Restore」処理を、解析条件「Legacy」を選択し、かつ、RestoreEdge条件を選択し、Iteration条件はデータ補完が充分に行われる値に設定して行った。ノイズ除去処理(第4の処理)として「Gaussian Regression Filter」処理を、解析条件「Band pass条件下、order:0、Type:Regular、Long wavelength cutoff:1mm,Short wavelength cutoff:0.002mm」で行った。この際、advace setupは初期条件で行った。第1から第4の処理を行った画像データを第5の処理として「S parameters-Spatial」処理を解析条件「Angle resolution:1deg、Search range:From 0 to 90」で行った結果得られる「Str」を、Str値とした。
サンプルとなる合わせガラス用中間膜の10cm四方の中央部2点を測定し、その平均値をStr値とした。それ以外はISO 25178(2012)に準じた。
【0071】
Strは、製造後に加熱を行っていない合わせガラス用中間膜(加熱前)と、以下の方法により100℃、15分間加熱後の合わせガラス用中間膜(加熱後)について測定した。
即ち、まず、ギアオーブン中に厚み5mmステンレスプレート及び厚み2.5mmのクリアガラス3枚を置き、その表面温度がいずれも100℃になるように加熱した。なお、100℃に加熱する前に予め、ステンレスプレートの面のうち、後の工程に於いて合わせガラス用中間膜が触れる面に、シリコーン離型剤(信越シリコーン社製、SEPA-COAT SP)で表面処理を施した。ステンレスプレート及びクリアガラスの表面温度が100℃となった後、ギアオーブン自体の温度も100℃に設定した。該ステンレスプレート上に10cm×10cmの大きさに裁断した合わせガラス用中間膜を置き、その上に内寸7cm×7cmの額縁状に切り出した厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートを置き、更にその上に100℃に加熱しておいた10cm×10cm、厚み2.5mmのクリアガラス3枚を置いた。なお、ステンレスプレート及び合わせガラス用中間膜に置く前に、合わせガラス用中間膜及びPETシートは、23℃及び湿度30%の雰囲気下に3時間静置しておいた。
15分間、100℃のギアオーブン内で保持した後、合わせガラス用中間膜を取り出し、23℃のステンレスプレート上に移して冷却した。Strの測定は、ステンレス側の面の中央部で行った。
【0072】
(実施例2~13、比較例1~6)
第1の工程及び第2の工程の条件を変えて、表1、2のようにした以外は実施例1と同様にして表面に刻線状の凹部を有する合わせガラス用中間膜を製造した。なお、第1の工程及び第2の工程の線速は同一とした。
なお、実施例6、比較例4では、樹脂膜を押出機により押出する際の金型としてリップ法用の口金形状を有するものを用いた。この際、リップ金型としてリップの間隙が0.7~1.4mmのものを用い、金型入口の樹脂組成物の温度を150~270℃、リップ金型の温度を210℃に調整し、ラインスピード10m/分、各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅を0.4%以下に抑える方法により、表面に微細な凹凸を有する樹脂膜を得た。実施例6、比較例4では、これを第1の工程に代えた。
【0073】
(実施例14)
(1)樹脂膜の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn-ブチルアルデヒドでアセタール化することにより、アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%のポリビニルブチラールを得た。得られたポリビニルブチラール100質量部に対して、可塑剤を39質量部、接着力調整剤を膜中におけるマグネシウム濃度が50ppmとなるように添加した。ミキシングロールで充分に混練し、樹脂組成物を得た。
なお、可塑剤は、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を用いた。接着力調整剤は、ビス(2-エチル酪酸)マグネシウムと酢酸マグネシウムの50質量%:50質量%混合物を用いた。
【0074】
得られた樹脂組成物を、押出機を用いて断面形状が楔形となるように押出すことにより、樹脂膜を作製した。得られた樹脂膜は、一端に最小厚みを有し、他端に最大厚みを有し、厚み均一部位を有していなかった。得られた樹脂膜において、一端と他端との距離は1mであった。
得られた断面形状が楔形の樹脂膜を用い、第1の工程及び第2の工程の条件を変えて、表3のようにした以外は実施例1と同様にして、表面に刻線状の凹部を有する合わせガラス用中間膜を製造した。なお、第1の工程及び第2の工程の線速は同一とした。
得られた中間膜の最小厚み、最大厚み、断面形状及び楔角を計測したところ、表3に記載の値であった。
【0075】
(実施例15~17、比較例7)
得られた中間膜の最小厚み、最大厚み、断面形状及び楔角が表3に記載の値となるように、押出し条件を調整して、断面形状が楔形の樹脂膜を得た。
得られた断面形状が楔形の樹脂膜を用い、第1の工程及び第2の工程の条件を変えて、表3のようにした以外は実施例14と同様にして表面に刻線状の凹部を有する合わせガラス用中間膜を製造した。なお、第1の工程及び第2の工程の線速は同一とした。
【0076】
(実施例18)
(1)第1の樹脂層用組成物の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn-ブチルアルデヒドでアセタール化することにより、アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%のポリビニルブチラールを得た。得られたポリビニルブチラール100質量部に対して、可塑剤を36質量部、接着力調整剤を膜中におけるマグネシウム濃度が50ppmとなるように添加した。ミキシングロールで充分に混練し、第1の樹脂層用樹脂組成物を得た。
なお、可塑剤は、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を用いた。接着力調整剤は、ビス(2-エチル酪酸)マグネシウムと酢酸マグネシウムの50質量%:50質量%混合物を用いた。
【0077】
(2)第2の樹脂層用組成物の調製
平均重合度が2300のポリビニルアルコールをn-ブチルアルデヒドでアセタール化することにより、アセチル基量12.5モル%、ブチラール基量64モル%、水酸基量23.5モル%のポリビニルブチラールを得た。得られたポリビニルブチラール100質量部に対して、可塑剤としてエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を76.5質量部添加した。ミキシングロールで充分に混練し、第2の樹脂層用樹脂組成物を得た。
【0078】
(3)樹脂膜の調製
得られた第1の樹脂層用樹脂組成物と第2の樹脂層用樹脂組成物を、共押出機を用いて共押出しして、第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層の積層構造を有する、断面が矩形状の樹脂膜を作製した。
得られた断面形状が矩形状の樹脂膜を用い、第1の工程及び第2の工程の条件を変えて、表4のようにした以外は実施例1と同様にして、表面に刻線状の凹部を有する合わせガラス用中間膜を製造した。なお、第1の工程及び第2の工程の線速は同一とした。
得られた中間膜の第1の樹脂層、第2の樹脂層及び中間膜の平均厚みを計測したところ、表4に記載の値であった。
【0079】
(実施例19~23、比較例8)
ポリビニルブチラールや可塑剤の含有量を表4に示す値に変更して第1の樹脂層用樹脂組成物及び第2の樹脂層用樹脂組成物を調製し、第1の樹脂層、第2の樹脂層及び中間膜の平均厚みが表4に記載の値となるように共押出し条件を調整して、第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層の積層構造を有する断面が矩形状の樹脂膜を作製した。
得られた断面形状が矩形状の樹脂膜を用い、第1の工程及び第2の工程の条件を変えて、表4のようにした以外は実施例18と同様にして、表面に刻線状の凹部を有する合わせガラス用中間膜を製造した。なお、第1の工程及び第2の工程の線速は同一とした。
【0080】
(実施例24)
(1)第1の樹脂層用組成物の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn-ブチルアルデヒドでアセタール化することにより、アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%のポリビニルブチラールを得た。得られたポリビニルブチラール100質量部に対して、可塑剤を36.0質量部、接着力調整剤を膜中におけるマグネシウム濃度が50ppmとなるように添加した。ミキシングロールで充分に混練し、第1の樹脂層用樹脂組成物を得た。
なお、可塑剤は、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を用いた。接着力調整剤は、ビス(2-エチル酪酸)マグネシウムと酢酸マグネシウムの50質量%:50質量%混合物を用いた。
【0081】
(2)第2の樹脂層用組成物の調製
平均重合度が2300のポリビニルアルコールをn-ブチルアルデヒドでアセタール化することにより、アセチル基量12.5モル%、ブチラール基量64モル%、水酸基量23.5モル%のポリビニルブチラールを得た。得られたポリビニルブチラール100質量部に対して、可塑剤としてエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を76.5質量部添加した。ミキシングロールで充分に混練し、第2の樹脂層用樹脂組成物を得た。
【0082】
(3)樹脂膜の調製
得られた第1の樹脂層用樹脂組成物と第2の樹脂層用樹脂組成物を、共押出機を用いて共押出しして、第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層の積層構造を有する、断面形状が楔形の樹脂膜を作製した。得られた断面形状が楔形の樹脂膜は、一端に最小厚みを有し、他端に最大厚みを有し、厚み均一部位を有していなかった。得られた断面形状が楔形の中間膜において、一端と他端との距離は1mであった。
得られた断面形状が楔状の樹脂膜を用い、第1の工程及び第2の工程の条件を変えて、表5のようにした以外は実施例1と同様にして、表面に刻線状の凹部を有する合わせガラス用中間膜を製造した。なお、第1の工程及び第2の工程の線速は同一とした。
得られた中間膜の第1の樹脂層、第2の樹脂層、中間膜の最小厚み、最大厚み、断面形状及び楔角を計測したところ、表5に記載の値であった。
【0083】
(比較例9)
ポリビニルブチラールや可塑剤の含有量を表5に示す値に変更して第1の樹脂層用樹脂組成物及び第2の樹脂層用樹脂組成物を調製した。更に、第1の樹脂層、第2の樹脂層、中間膜の最小厚み、最大厚み、断面形状及び楔角が表5に記載の値となるように共押出し条件を調整して、第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層の積層構造を有する断面形状が楔形の樹脂膜を作製した。
得られた断面形状が楔形の樹脂膜を用い、第1の工程及び第2の工程の条件を変えて、表5のようにした以外は実施例24と同様にして、表面に刻線状の凹部を有する合わせガラス用中間膜を製造した。なお、第1の工程及び第2の工程の線速は同一とした。
【0084】
(評価)
実施例及び比較例で得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて、以下の方法により評価した。
結果を表1~5に示した。
【0085】
(1)脱気性(23℃→90℃)の評価
実施例1~13、比較例1~6、実施例18~23、比較例8に関しては、得られた合わせガラス用中間膜を二枚のクリアガラス板(縦15cm×横15cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、評価用積層体を得た。
【0086】
実施例14~17、比較例7、実施例24及び比較例9に関しては、合わせガラス用中間膜の最小厚みを有する一端が積層体に含まれ、かつ、クリアガラス板の端部と合わせガラス用中間膜の端部とが揃うようにして合わせガラス用中間膜を二枚のクリアガラス板の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、最薄部評価用積層体を得た。また、合わせガラス用中間膜の最大厚みを有する一端が積層体に含まれ、かつ、クリアガラス板の端部と合わせガラス用中間膜の端部とが揃うようにして合わせガラス用中間膜を二枚のクリアガラス板の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、最厚部評価用積層体を得た。
なお、本願の実施例及び比較例で製造した断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜は、一端に最小厚みを有し、他端に最大厚みを有していることから、上記手順により最薄部評価用積層体及び最厚部評価用積層体を作製した。最小厚み及び最大厚みを有する部位が端部以外である合わせガラス用中間膜の場合には、該最小厚み及び最大厚みを有する部位がクリアガラス板の中心に位置するように最薄部評価用積層体及び最厚部評価用積層体を作製することが好ましい。ただし、該最小厚み及び最大厚みを有する部位がクリアガラス板の中心に位置するようにすることが困難な場合には、上記手順に従って、クリアガラス板の端部と合わせガラス用中間膜の端部とが揃うようにして最薄部評価用積層体及び最厚部評価用積層体を作製してもよい。
【0087】
得られた評価用積層体、最薄部評価用積層体、最厚部評価用積層体を23℃30RH%下でガラスの表面温度が23℃になるまで保管した後、ゴムバッグ内に移し、ゴムバッグを吸引減圧機に接続し、加熱すると同時に減圧し、-600mmHgの減圧下で、14分間後に積層体のガラスの表面温度(予備圧着温度)が90℃となるように加熱した。その後、積層体のガラスの表面温度が40℃になるまで冷却した後に、大気圧に戻して予備圧着を終了した。
予備圧着された積層体をオートクレーブ中に入れ、温度140℃、圧力1300kPaの条件下で10分間保持した後、50℃まで温度を下げ大気圧に戻すことにより本圧着を終了して、合わせガラスを得た。
【0088】
JIS K 7105に準拠して、合わせガラス製造時における予備圧着後の積層体の平行光線透過率Tp(%)を、ヘーズメーター(村上色彩研究所社製、HM-150)を用いて測定した。
平行光線透過率Tpを測定する際の測定位置を説明する模式図を
図4に示した。縦15cm×横15cmの積層体において、2つの対角線が交差する中央部に、積層体の各頂点から対角線方向に5.6cm離れた4点を合わせた5点(
図4において点線で囲んだ各点)において平行光線透過率を測定し、その平均値を平行光線透過率Tpとした。
合わせガラスの透明性の低下は、予備圧着時における脱気不良に起因する。従って、合わせガラス用中間膜の脱気性は、合わせガラスの発泡性等を評価するよりも、予備圧着後の積層体の平行光線透過率を測定することにより、より精密に評価することができる。
自動車用のフロントガラス等の用途に用いるためには、平行光線透過率Tpは少なくとも56%以上であることが要求される。
【0089】
(2)脱気性(50℃→90℃)の評価
脱気性(23℃→90℃)の評価の場合と同様の方法により、評価用積層体、最薄部評価用積層体、最厚部評価用積層体を得た。
得られた評価用積層体、最薄部評価用積層体、最厚部評価用積層体をガラスの表面温度が50℃になるまでギアオーブンの中で保管した後、50℃に予熱したゴムバッグ内に移し、3分間保管した。その後、ゴムバッグを吸引減圧機に接続して減圧し、-600mmHgの減圧下で、14分間後に積層体のガラスの表面温度(予備圧着温度)が90℃となるように加熱した後、積層体のガラスの表面温度が40℃になるまで冷却した後に、大気圧に戻して予備圧着を終了した。
予備圧着された積層体をオートクレーブ中に入れ、温度140℃、圧力1300kPaの条件下で10分間保持した後、50℃まで温度を下げ大気圧に戻すことにより本圧着を終了して、合わせガラスを得た。
上記と同様の方法により、合わせガラス製造時における予備圧着後の積層体の平行光線透過率Tp(%)を測定した。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によれば、真空脱気法において予備圧着時の脱気と本圧着時の加熱とを平行して行っても、高い可視光線透過率の合わせガラスを製造可能な合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜の製造方法、及び、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 凹部
2 凹部
3 凹部
4 合わせガラス製造時における予備圧着後の積層体
A 凹部1と凹部2との間隔
B 凹部1と凹部3との間隔