(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】メッセンジャーRNAの精製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20240626BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240626BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240626BHJP
C12P 19/34 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C12N15/10 120Z
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/12
C12P19/34 A
(21)【出願番号】P 2023037742
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2021065401の分割
【原出願日】2015-04-24
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2014-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517316797
【氏名又は名称】トランスレイト バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】フランク デローサ
(72)【発明者】
【氏名】アヌシャ ディアス
(72)【発明者】
【氏名】シュリラン カルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ハートレイン
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第98/05673(WO,A1)
【文献】特表2014-506873(JP,A)
【文献】国際公開第2014/152966(WO,A1)
【文献】Journal of Virology,1972年,Vol.10, No.6,p.1126-1129
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッセンジャーRNA(mRNA)の製造方法であって、前記方法は、
mRNAをin vitroで合成すること;ならびに
バッチあたり、1グラムまたは1グラムを超える規模でin vitro合成されたmRNAを精製すること
を含み、ここで、前記精製は、以下:
(a)in vitro mRNA合成反応混合物を含む不純調製物からmRNAを沈殿させるステップ;および
(b)沈殿されたmRNAを含む前記不純調製物を、前記沈殿されたmRNAが膜に捕捉されるよう、膜ろ過を含む精製工程に供するステップ;および
(c)前記捕捉された沈殿mRNAを洗浄するステップ;および
(d)前記mRNAを再可溶化することにより前記膜から前記捕捉された沈殿mRNAを溶離し、それにより精製されたmRNA溶液を得るステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記膜ろ過を含む精製工程が、ダイレクトフローろ過である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記mRNAを沈殿させるステップが、前記不純調製物を、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、酢酸アンモニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬を含む溶液を用いて処理することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試薬が、チオシアン酸グアニジニウムである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液が、4Mのチオシアン酸グアニジニウム、0.5%のラウリルサルコシルナトリウム、及び25mMのクエン酸ナトリウムを含む、請求項2に記載方法。
【請求項6】
前記溶液が、4Mのチオシアン酸グアニジニウム、及び0.5%のラウリルサルコシルナトリウムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液が、4Mのチオシアン酸グアニジニウム、及び25mMのクエン酸ナトリウムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記mRNAを沈殿させるステップが、無水エタノールを用いて前記不純調製物を処理するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記膜が、ポリエーテルスルホン(mPES)(修飾なし)、ポリエーテルスルホン(mPES)中空糸膜、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、酢酸セルロース、ニトロセルロース、MCE(混合セルロースエステル類)、超高分子量ポリエチレン(UPE)、ポリフルオロテトラエチレン(PTFE)、ナイロン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄ステップが、グアニジニウム緩衝液及びエタノールを含有する洗浄溶液、次いで70~80%のエタノールを用いた複数回のすすぎサイクルを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数回のすすぎサイクルは、5回より多いサイクルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶離ステップが、RNAseが含まれていない水を用いて前記捕捉された沈殿mRNAを再可溶化することを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記RNAseが含まれていない水が、5~10分間、再循環される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記精製されたmRNA溶液を透析するステップをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記精製されたmRNA溶液が、100kDaの分子量カットオフ(MWCO)膜を用いて、1mMのクエン酸ナトリウムと透析される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記不純調製物が未完了で中断されたRNA及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記精製されたmRNA溶液が、1%未満の未完了で中断されたRNA及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記精製されたmRNA溶液が、0.5%未満の未完了で中断されたRNA及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記精製されたmRNA溶液が、0.1%未満の未完了で中断されたRNA及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記精製されたmRNA溶液が、未完了で中断されたRNA及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を実質的に含有しない、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記未完了で中断されたRNA及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬が、銀染色、ゲル電気泳動、HPLC、UPLC、及び/またはキャピラリー電気泳動により測定される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記未完了で中断されたRNAが、15未満の塩基を含有する、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記未完了で中断されたRNAが、8~12の塩基を含有する、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記in vitro合成において用いられた酵素試薬が、T7 RNAポリメラーゼ、DNAse I、ピロホスファターゼ、及び/またはRNAse阻害剤を含有する、請求項16~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記mRNAが、バッチ当たり10グラム以上、100グラム以上、1kg以上、10kg以上、または100kg以上の規模で精製される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記mRNAが、キャップ及びテールが前記mRNAに付加される前に精製される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記mRNAが、キャップ及びテールが前記mRNAに付加された後に精製される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記mRNAが、キャップが付加された後に精製される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記mRNAが、キャップ及び/またはテールが前記mRNAに付加される前及び後の両方で精製される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記mRNAが、1kb以上、1.5kb以上、2kb以上、2.5kb以上、3kb以上、3.5kb以上、4kb以上、4.5kb以上、5kb以上、6kb以上、7kb以上、8kb以上、9kb以上、10kb以上、11kb以上、12kb以上、13kb以上、14kb以上、15kb以上、または20kb以上の長さである、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記mRNAが、安定性を増強させるために1つ以上の修飾を含有する、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ以上の修飾が、修飾ヌクレオチド及び/または修飾糖リン酸主鎖を含有し、任意選択的に前記修飾ヌクレオチドが1-メチル-シュードウラシルである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記mRNAが、修飾されていない、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記精製されたmRNAが、95%以上の完全性を有する、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記精製されたmRNAが、98%以上の完全性を有する、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記精製されたmRNAが、99%以上の完全性を有する、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年4月25日に出願された米国仮特許出願第61/984,503号の優先権を主張するものであり、当該出願の開示内容は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
メッセンジャーRNA療法は、ますます様々な疾患治療のための重要な方法となりつつある。メッセンジャーRNA療法は、当該療法の必要がある患者に、メッセンジャーRNA(mRNA:messengerRNA)を投与し、当該患者体内で当該mRNAによりコードされるタンパク質を産生させることを含む。それゆえ、治療用途に適した高純度で高い安全性のmRNA製品の大規模製造に対する高いニーズが存在する。
【0003】
配列表
本明細書は、配列表(「Sequence listing.txt」と名付けられ、.txtファイルとして2015年4月24日に電子的に提出されている)を参照するものである。当該.txtファイルは2015年4月22日に作成されたものであり、11,184バイトのサイズがある。当該配列表の全内容が、参照により本明細書において援用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、メッセンジャーRNA(mRNA)、特に治療用途に適したin vitro合成されたmRNAの効率的な精製のための改善方法を提供するものである。本発明は、一つには、非常に珍しい組合せであるmRNA沈殿後の膜ろ過が、高品質のmRNAの大規模製造という予想を超える成功をもたらしたという驚くべき発見に基づくものである。
【0005】
従って、一つの態様において、本発明は、メッセンジャーRNA(mRNA)の精製方法を提供するものであり、当該方法は、(a)不純調製物からmRNAを沈殿するステップ、(b)沈殿したmRNAを含む当該不純調製物を、当該沈殿mRNAが膜に捕捉されるよう膜ろ過を含む精製工程に供するステップ、及び(c)当該mRNAの再可溶化により当該膜から当該捕捉された沈殿mRNAを溶離させ、それにより精製されたmRNA溶液を得るステップを含む。一部の実施形態において、本発明に適した膜ろ過を含む精製工程は、タンジェンシャルフローろ過である。一部の実施形態において、本発明に適した膜ろ過を含む精製工程は、ダイレクトフローろ過である。
【0006】
一部の実施形態において、mRNAを沈殿させるステップは、不純調製物を、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、酢酸アンモニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬を含有する溶液を用いて処理することを含む。一部の実施形態において、適切な試薬は、チオシアン酸グアニジニウムである。
【0007】
一部の実施形態において、mRNA沈殿に適した溶液は、約1M以上、約2M以上、約3M以上、約4M以上、約5M以上、約6M以上、約7M以上、約8M以上、約9M以上、または約10M以上の濃度でチオシアン酸グアニジニウムを含有する。一部の実施形態において、mRNA沈殿に適した溶液は、約4Mの濃度でチオシアン酸グアニジニウムを含有する。一部のかかる実施形態において、適切な溶液はさらにラウリルサルコシルナトリウム(sodium lauryl sarcosyl)、及び/またはクエン酸ナトリウムを含有する。たとえばある特定の実施形態において、mRNA沈殿に適した溶液は、4Mチオシアン酸グアニジニウム、0.5%ラウリルサルコシルナトリウム、及び25mMクエン酸ナトリウムを含有する。ある特定の実施形態において、mRNA沈殿に適した溶液は、4Mチオシアン酸グアニジニウム、及び0.5%ラウリルサルコシルナトリウムを含有する。ある特定の実施形態において、mRNA沈殿に適した溶液は、4Mチオシアン酸グアニジニウム、及び25mMクエン酸ナトリウムを含有する。
【0008】
一部の実施形態において、mRNAを沈殿させるステップはさらに無水エタノールを用いて不純調製物を処理するステップを含む。
【0009】
一部の実施形態において、mRNAを沈殿させるステップはさらにイソプロピルアルコールを用いて不純調製物を処理するステップを含む。
【0010】
一部の実施形態において、本発明に適した膜は、ポリエーテルスルホン(mPES)(修飾なし)、ポリエーテルスルホン(mPES)中空糸膜、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、酢酸セルロース、ニトロセルロース、MCE(混合セルロースエステル類)、超高分子量ポリエチレン(UPE)、ポリフルオロテトラエチレン(PTFE)、ナイロン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される物質から作製される。
【0011】
一部の実施形態において、本発明による方法はさらに溶離の前に捕捉された沈殿mRNAを洗浄することを含む。一部の実施形態において、当該洗浄ステップは、グアニジニウム緩衝液及びエタノールを含有する洗浄溶液、続いて約70~80%エタノール(例えば、約70%、75%、または80%のエタノール)を用いた複数回のすすぎサイクルを含む。一部の実施形態において、本発明に適した当該複数回のすすぎサイクルは、少なくとも5回、または5回より多いサイクルである(たとえば、約5~10回のサイクル、または約5、6、7、8、9若しくは10回のサイクル)。
【0012】
一部の実施形態において、溶離ステップは、RNAseが含まれていない水を用いて、捕捉された沈殿mRNAを再可溶化することを含む。一部の実施形態において、当該RNAseが含まれていない水は、約5~10分間(たとえば、約5、6、7、8、9または10分間)、再循環される。
【0013】
一部の実施形態において、本発明による方法は精製されたmRNA溶液を透析するステップをさらに含む。一部の実施形態において、精製されたmRNA溶液は、100kDaの分子量カットオフ(MWCO:molecular weight cut off)膜を用いて、1mMクエン酸ナトリウムと透析される。
【0014】
様々な実施形態において、本発明は、in vitro mRNA合成反応混合物を含有する不純調製物からin vitro合成されたmRNAを精製するために用いられてもよい。一部の実施形態において、当該不純調製物は、未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する。
【0015】
一部の実施形態において、精製されたmRNA溶液は、約5%未満(たとえば、約4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%、0.1%未満)の未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する。ある特定の実施形態において、精製されたmRNA溶液は、約1%未満(たとえば、約0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%未満)の未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する。ある特定の実施形態において、精製されたmRNA溶液は、約0.5%未満(たとえば、約0.4%、0.3%、0.2%、または0.1%未満)の未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する。一部の実施形態において、精製されたmRNA溶液は、約0.1%未満の未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する。一部の実施形態において、精製されたmRNA溶液は、実質的に、未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含まない。
【0016】
一部の実施形態において、未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬は、銀染色、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)及び/またはキャピラリー電気泳動により測定される。
【0017】
一部の実施形態において、未完了で中断されたRNA配列は、15個未満の塩基(たとえば、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、または3個未満の塩基)を含有する。一部の実施形態において、未完了で中断されたRNA配列は、約8~15、8~14、8~13、8~12、8~11、または8~10個の塩基を含有する。
【0018】
一部の実施形態において、in vitro合成において用いられた酵素試薬は、T7RNAポリメラーゼ、DNAseI、ピロホスファターゼ、及び/またはRNAse阻害剤を含有する。
【0019】
一部の実施形態において、mRNAは、バッチ当たり、1グラム、5グラム、10グラム、15グラム、20グラム、25グラム、30グラム、35グラム、40グラム、45グラム、50グラム、75グラム、100グラム、150グラム、200グラム、250グラム、300グラム、350グラム、400グラム、450グラム、500グラム、550グラム、600グラム、650グラム、700グラム、750グラム、800グラム、850グラム、900グラム、950グラム、1kg、2.5kg、5kg、7.5kg、10kg、25kg、50kg、75kg、または100kg以上の規模で精製される。以下の実施例において示されているとおり、本発明方法を用いることにより、10グラム以上(25グラム以上)の量で精製mRNAを含有するバッチが容易に達成され得る。
【0020】
一部の実施形態において、mRNAは、キャップ及び/またはテールが当該mRNAに付加される前に精製される。一部の実施形態において、mRNAは、キャップ及び/またはテールが当該mRNAに付加された後に精製される。一部の実施形態において、mRNAは、キャップが付加された後に精製される。一部の実施形態において、mRNAは、キャップ及び/またはテールが当該mRNAに付加される前及び後の両方で精製される。
【0021】
一部の実施形態において、mRNAは、約1kb、1.5kb、2kb、2.5kb、3kb、3.5kb、4kb、4.5kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、または20kb以上の長さである。
【0022】
一部の実施形態において、mRNAは、安定性を増強させるために1以上の修飾を含有する。一部の実施形態において、当該1以上の修飾は、修飾ヌクレオチド及び/または修飾糖リン酸主鎖を含有する。一部の実施形態において、mRNAは、修飾されていない。
【0023】
一部の実施形態において、精製されたmRNAは、約95%以上(たとえば、約96%、97%、98%、または99%以上)の完全性を有している。一部の実施形態において、精製されたmRNAは、約98%以上の完全性を有している。一部の実施形態において、精製されたmRNAは、約99%以上の完全性を有している。
【0024】
一部の実施形態において、本発明は、メッセンジャーRNA(mRNA)の精製方法を提供するものであり、当該方法は、(a)不純調製物からmRNAを沈殿させること、(b)当該沈殿したmRNAがろ過膜により捕捉される一方で不純物が透過により廃棄されるよう、沈殿したmRNAを含む当該不純調製物をタンジェンシャルフローろ過に供すること、及び(c)当該沈殿したmRNAの再可溶化により当該捕捉された沈殿mRNAを溶離させ、それにより精製されたmRNA溶液を得ること、を含む。
【0025】
他の態様において、本発明によりメッセンジャーRNA(mRNA)を製造するための方法が提供され、当該方法は、in vitroでmRNAを合成すること、及び本明細書に記載される方法を用いて当該in vitro合成されたmRNAを精製すること、を含む。
【0026】
とりわけ、本発明はまた、本明細書に記載される方法を用いて精製されたメッセンジャーRNA(mRNA)を提供するものである。
【0027】
他の態様において、本発明はまた、ヒト対象への投与に適した5グラム以上の単一種のmRNAを含有する精製mRNAのバッチを提供するものである。一部の実施形態において、当該バッチは、10グラム以上の単一種のmRNAを含有する。一部の実施形態において、当該バッチは、25グラム以上の単一種のmRNAを含有する。一部の実施形態において、当該バッチは、mRNA合成工程由来の不純物を実質的に含まない。一部の実施形態において、当該バッチは、未完了で中断されたRNA配列、DNA鋳型及び/または単一種のmRNAのin vitro合成に用いられた酵素試薬を実質的に含まない。一部の実施形態において、当該精製mRNAは、in vitro合成において用いられた酵素試薬を約5%未満含有する。一部の実施形態において、当該精製mRNAは、約95%を超える完全性を有する。
【0028】
他の態様において、本発明はまた、本明細書に記載される方法を用いて精製されたメッセンジャーRNAを含有する組成物を提供するものである。
【0029】
他の態様において、本発明はまた、in vitro合成されたメッセンジャーRNAを含有する組成物を提供するものであり、ここで当該組成物は、1%未満の未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成で用いられた酵素試薬を含有している。
【0030】
他の態様において、本発明はまた、in vitro合成されたメッセンジャーRNA(mRNA)を含有する組成物を提供するものであり、ここで当該mRNAは、95%以上の完全性を有している。
特定の態様において、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
メッセンジャーRNA(mRNA)の精製方法であって、
(a)不純調製物からmRNAを沈殿させること、及び
(b)沈殿したmRNAを含有する前記不純調製物を、前記沈殿したmRNAが膜に捕捉される膜ろ過を含む精製工程に供すること、及び
(c)前記mRNAを再可溶化することにより前記膜から前記捕捉された沈殿mRNAを溶離し、それにより精製されたmRNA溶液を得ること、
を含む前記方法。
(項目2)
膜ろ過を含む前記精製工程が、タンジェンシャルフローろ過である、項目1に記載の方法。
(項目3)
膜ろ過を含む前記精製工程が、ダイレクトフローろ過である、項目1に記載の方法。
(項目4)
mRNAを沈殿させる前記ステップが、前記不純調製物を、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、イソチアン酸グアニジニウム、酢酸アンモニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬を含有する溶液を用いて処理することを含む項目1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記試薬が、チオシアン酸グアニジニウムである、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記溶液が、4Mのチオシアン酸グアニジニウム、0.5%のラウリルサルコシルナトリウム、及び25mMのクエン酸ナトリウムを含有する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記溶液が、4Mのチオシアン酸グアニジニウム、及び0.5%のラウリルサルコシルナトリウムを含有する、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記溶液が、4Mのチオシアン酸グアニジニウム、及び25mMのクエン酸ナトリウムを含有する、項目5に記載の方法。
(項目9)
前記mRNAを沈殿させるステップが、無水エタノールを用いて前記不純調製物を処理するステップを含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記膜が、ポリエーテルスルホン(mPES)(修飾なし)、ポリエーテルスルホン(mPES)中空糸膜、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、酢酸セルロース、ニトロセルロース、MCE(混合セルロースエステル類)、超高分子量ポリエチレン(UPE)、ポリフルオロテトラエチレン(PTFE)、ナイロン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記方法が、溶離の前に前記捕捉された沈殿mRNAを洗浄することをさらに含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記洗浄ステップが、グアニジニウム緩衝液及びエタノールを含有する洗浄溶液、次いで約70~80%のエタノールを用いた複数回のすすぎサイクルを含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記複数回のすすぎサイクルは、5回より多いサイクルである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記溶離ステップは、RNAseが含まれていない水を用いて前記捕捉された沈殿mRNAを再可溶化することを含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記RNAseが含まれていない水が、5~10分間、再循環される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記方法がさらに、前記精製されたmRNA溶液を透析するステップを含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記精製されたmRNA溶液が、100kDaの分子量カットオフ(MWCO)膜を用いて、1mMのクエン酸ナトリウムと透析される、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記mRNAはin vitro合成され、前記不純調製物がIn vitro mRNA合成反応混合物を含有する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記不純調製物が未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記精製されたmRNA溶液が、1%未満の未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記精製されたmRNA溶液が、0.5%未満の未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記精製されたmRNA溶液が、0.1%未満の未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記精製されたmRNA溶液が、未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を実質的に含まない、項目19に記載の方法。(項目24)
前記未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬が、銀染色、ゲル電気泳動、HPLC、UPLC、及び/またはキャピラリー電気泳動により測定される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記未完了で中断されたRNA配列が、15未満の塩基を含有する、項目19~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記未完了で中断されたRNA配列が、約8~12の塩基を含有する、項目19~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記in vitro合成において用いられた酵素試薬が、T7 RNAポリメラーゼ、DNAseI、ピロホスファターゼ、及び/またはRNAse阻害剤を含有する、項目19~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記mRNAが、バッチ当たり1グラム、10グラム、100グラム、1kg、10kg、または100kg以上の規模で精製される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。(項目29)
前記mRNAが、キャップ及びテールが前記mRNAに付加される前に精製される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記mRNAが、キャップ及びテールが前記mRNAに付加された後に精製される、項目1~28のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記mRNAが、キャップが付加された後に精製される、項目1~28のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記mRNAが、キャップ及び/またはテールが前記mRNAに付加される前及び後の両方で精製される、項目1~28のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記mRNAが、約1kb、1.5kb、2kb、2.5kb、3kb、3.5kb、4kb、4.5kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、または20kb以上の長さである、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記mRNAが、安定性を増強させるために1つ以上の修飾を含有する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記1つ以上の修飾が、修飾ヌクレオチド及び/または修飾糖リン酸主鎖を含有する、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記mRNAが修飾されていない、項目1~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記精製されたmRNAが、95%以上の完全性を有する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記精製されたmRNAが、98%以上の完全性を有する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記精製されたmRNAが、99%以上の完全性を有する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
メッセンジャーRNA(mRNA)の精製方法であって、
(a)不純調製物からmRNAを沈殿させること、及び
(b)沈殿されたmRNAを含有する前記不純調製物を、前記沈殿されたmRNAがろ過膜に捕捉される一方で不純物が透過により廃棄されるよう、タンジェンシャルフローろ過に供すること、及び
(c)前記沈殿したmRNAの再可溶化により前記捕捉された沈殿mRNAを溶離させ、それにより精製されたmRNA溶液を得ること、
を含む前記方法。
(項目41)
メッセンジャーRNA(mRNA)の作製方法であって、
in vitroでmRNAを合成すること、及び
先行項目のいずれか1項に記載の方法を用いて前記in vitro合成されたmRNAを精製すること、
を含む前記方法。
(項目42)
先行項目のいずれか1項に記載の方法を用いて精製されたメッセンジャーRNA(mRNA)。
(項目43)
ヒト対象への投与に適した単一種のmRNAを5グラム以上含有する精製されたmRNAのバッチ。
(項目44)
10グラム以上の単一種のmRNAを含有する、項目43に記載のバッチ。
(項目45)
25グラム以上の単一種のmRNAを含有する、項目43に記載のバッチ。
(項目46)
mRNA合成工程からの不純物が実質的に含まれていない、項目42~45のいずれか1項に記載のバッチ。
(項目47)
前記バッチが、未完了で中断されたRNA配列、DNA鋳型、及び/または前記単一種のmRNAのin vitro合成において用いられた酵素試薬を実質的に含まない、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記精製されたmRNAが、約5%未満のin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する、項目43~47のいずれか1項に記載のバッチ。
(項目49)
前記精製されたmRNAが、約95%を超える完全性を有する、項目43~48のいずれか1項に記載のバッチ。
(項目50)
先行項目のいずれか1項に記載の方法を用いて精製されたメッセンジャーRNAを含有する組成物。
(項目51)
in vitro合成されたメッセンジャーRNAを含有する組成物であって、前記組成物は、1%未満の未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する、前記組成物。
(項目52)
in vitro合成されたメッセンジャーRNA(mRNA)を含有する組成物であって、前記mRNAは、95%以上の完全性を有する、前記組成物。
【0031】
本明細書において用いられる「約」及び「およそ」という用語は、同等なものとして用いられる。本明細書において、約/およそと共に、または約/およそを伴わずに用いられるすべての数字は、関連分野の当業者により認識される任意の通常の変動を包含することが意図される。
【0032】
本発明の他の特長、目的、及び利点は、以下に続く詳細な記述において明らかである。しかし、当該詳細な記述は本発明の実施形態を示しているが、解説のみを目的として提示されるものであり、限定を与えるものではないことを理解されたい。本発明の範囲内にある様々な変更及び改変は、当該詳細な記述から当分野の当業者に明らかとなる。
【0033】
以下の図面は、解説の目的のためのみであり、限定を目的とはしていない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】負荷、洗浄及び溶離ステップを含む、mRNAの大規模精製のための例示的な工程を図示する。たとえば、沈殿したmRNAが残留物として捕捉される一方で、可溶性不純物ならびに0.22um未満の不溶性不純物が透過により廃棄され得るように、当該沈殿したmRNAは、膜に負荷されることができる。捕捉の後、当該固形沈殿物は、様々な緩衝液を用いて洗浄され、次いで、再可溶化され、純粋なメッセンジャーRNA産物として溶離される。
【
図2】提示される方法による、1グラムの初期in vitro転写(IVT)反応からの修飾嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)mRNA(3回の溶離を用いた)及びIVT反応に含まれる対照酵素の例示的な銀染色タンパク質ゲルを示す。
【
図3】提示される方法による、1.5グラムの初期in vitro転写(IVT)反応からの修飾CFTR mRNA(6回の溶離を用いた)及びIVT反応に含まれる対照酵素の例示的な銀染色タンパク質ゲルを示す。
【
図4】アガロースゲル電気泳動により示される、提示される方法により精製及びろ過された修飾CFTR mRNAのin vitro転写(IVT)試料中の例示的なmRNAの長さを示す。大規模沈殿後の修飾CFTR mRNAの完全性は完全に維持されていた。
【
図5】提示される方法による、1グラムの初期in vitro転写(IVT)反応からのアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNA(5回の溶離を用いた)及びIVT反応に含まれる対照酵素の例示的な銀染色タンパク質ゲルを示す。
【
図6】提示される方法による、1グラムの初期in vitro転写(IVT)反応からのアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNA(5回の溶離を用いた)及びIVT反応に含まれる対照酵素の例示的なSYPRO染色タンパク質ゲルを示す。
【
図7】アガロースゲル電気泳動により示される、提示される方法により精製及びろ過されたASS1 mRNAのin vitro転写(IVT)試料中の例示的なmRNAの長さを示す。大規模沈殿後のASS1 mRNAの完全性は完全に維持されていた。
【
図8】提示される方法による、初期in vitro転写(IVT)反応からの蛍ルシフェラーゼ(FFL)mRNA(一または二重沈殿のいずれかを用いた)及びIVT反応に含まれる対照酵素の例示的な銀染色タンパク質ゲルを示す。
【
図9】提示される方法による、初期in vitro転写(IVT)反応からの蛍ルシフェラーゼ(FFL)mRNA(一または二重沈殿のいずれかを用いた)及びIVT反応に含まれる対照酵素の例示的なSYPRO染色タンパク質ゲルを示す。
【
図10】アガロースゲル電気泳動により示される、提示される方法により精製及びろ過された蛍ルシフェラーゼ(FFL)mRNAのin vitro転写(IVT)試料中の例示的なmRNAの長さを示す。大規模沈殿及び再沈殿後のFFL mRNAの完全性は完全に維持されていた。
【
図11】最終キャップ付加及びテール付加反応からのアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNA(3回の溶離を用いた)ならびにキャップ付加及びテール付加反応に含まれる対照酵素の例示的な銀染色タンパク質ゲルを示す。
【
図12】アガロースゲル電気泳動により示される、提示される方法により精製及びろ過された例示的な最終ASS1 mRNAの長さを示す。大規模沈殿及び再沈殿後のASS1 mRNAの完全性は完全に維持されていた。
【
図13】FFL mRNA処理されたHEK293T細胞の細胞溶解物内で観察された例示的な発光を示す。細胞はトランスフェクション後24時間で回収された。供給業者が作製したmRNAとスピンカラム精製したmRNA(市販キット)と沈殿-TFF精製FFL mRNAの翻訳能の比較が表されている。
【
図14】hCFTR mRNAをトランスフェクトされたHEK293T細胞の細胞溶解物内で観察された例示的なCFTRタンパク質のレベルを示す。細胞はトランスフェクション後24時間で回収された。TFF精製mRNAとスピンカラム(市販キット)hCFTR mRNAの翻訳能の比較が表されている。
【
図15】提示される方法により精製及びろ過されたアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNAのin vitro転写(IVT)試料からの例示的なmRNAの長さを示す。大規模(5グラム)沈殿後のASS1 mRNAの完全性は完全に維持されていた。
【
図16】提示される方法により精製及びろ過されたアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNAのin vitro転写(IVT)試料からの例示的なmRNA(キャップ付加/テール付加される前及び後)の長さを示す。大規模(5グラム)沈殿後のASS1 mRNAの完全性は完全に維持されていた。
【
図17】提示される方法による最終精製(5グラム)後のアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNAならびに当該反応に含まれる対照酵素の例示的な銀染色タンパク質ゲルを示す。
【
図18】ASS1 mRNAで処理されたHEK293T細胞の細胞溶解物内で観察された例示的なヒトASS1タンパク質産物を示す。細胞はトランスフェクション後24時間で回収された。スピンカラム精製mRNA(市販キット)と沈殿-TFF精製ASS1 mRNA(5グラム)の翻訳能の比較が表されている。
【
図19】アガロースゲル電気泳動により示される、提示される方法により精製及びろ過された嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)mRNAのin vitro転写(IVT)試料中の例示的なmRNA(キャップ付加/テール付加される前及び後)の長さを示す。大規模(10グラム)沈殿後のCFTR mRNAの完全性は完全に維持されていた。
【
図20】提示される方法による最終精製(10G)後の嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)mRNAならびに当該反応に含まれる対照酵素の例示的な銀染色タンパク質ゲルを示す。
【
図21】大規模産生及び精製からのhCFTR mRNAをトランスフェクトされたHEK293T細胞の細胞溶解物内で観察された例示的なCFTRタンパク質レベルを示す。細胞はトランスフェクション後24時間で回収された。
【
図22】アルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNAの25グラムスケールの産生でのin vitro転写(IVT)試料中の例示的なmRNAの長さを示す。大規模(25グラム)単離後のASS1 mRNAの完全性は完全に維持されていた。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
本発明がさらに簡便に理解されるために、まず若干数の用語を以下に定義する。以下の用語及び他の用語の追加の定義は、本明細書全体を通して記述されている。
【0036】
動物:本明細書において、「動物」という用語は、動物界の任意の種を指す。一部の実施形態において、「動物」とは、任意の発達段階にあるヒトを指す。一部の実施形態において、「動物」とは、任意の発達段階にある非ヒト動物を指す。ある特定の実施形態において、当該非ヒト動物は哺乳類(たとえば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類及び/またはブタ等)である。一部の実施形態において、動物は、ほ乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、及び/または蠕虫類を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物及び/またはクローンでありうる。
【0037】
およそまたは約:本明細書において、対象の1以上の値に対して適用された場合の「およそ」または「約」とは、規定された基準値に類似する値を指す。ある特定の実施形態において、「およそ」または「約」という用語は、別段の記載が無い限り、または文脈から別様に明白ではない限り(かかる数値が、可能値の100%を超える場合を除く)、規定された基準値のいずれかの方向(規定された基準値より大きい、または規定された基準値より小さい)に、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下の範囲に入る値の範囲を指す。
【0038】
生物学的に活性な:本明細書において、「生物学的に活性な」という表現は、生物学的システムにおいて、特に生物体中において活性を有する任意の剤の特性を指す。たとえば、生物体に投与されたときにその生物体に対する生物学的効果を有する剤は、生物学的に活性であるとみなされる。
【0039】
発現:本明細書において、核酸配列の「発現」とは、ポリペプチドへのmRNAの翻訳、完全なタンパク質への複数のポリペプチドの組み立て、及び/またはポリペプチド若しくは完全に組み立てられたタンパク質の翻訳後修飾を指す。本出願において、「発現」及び「産生」という用語、ならびに文法的に同等の用語は、相互交換可能に用いられる。
【0040】
機能的な:本明細書において、「機能的な」生物学的分子とは、それを特徴づける特性及び/または活性を示す形態にある生物学的分子である。
【0041】
改善する、増加する、または減少する:本明細書において、「改善する」、「増加する」若しくは「減少する」または文法的に同等の用語は、たとえば本明細書に記述される処置の開始前の同一個体における測定値または本明細書に記述される処置を行わない対照の対象(複数含む)における測定値等の基準となる測定値に対し相対的な値を示す。「対照の対象」は、当該対象が処置される疾患の同一形態に罹患した対象であり、当該処置される対象とほぼ同じ年齢である。
【0042】
不純物:本明細書において、「不純物」という用語は、限定された量内の液体、ガスまたは固体の物質を指し、当該物質は標的物質または化合物の化学的組成とは異なっている。不純物はまた汚染物質とも呼称される。
【0043】
in vitro:本明細書において、「in vitro」という用語は、多細胞生物体内ではなく、たとえば試験管または反応槽中、細胞培養中等の人工的環境中で発生する事象を指す。
【0044】
in vivo:本明細書において、「in vivo」という用語は、たとえばヒト及び非ヒト動物等の多細胞生物体内で発生する事象を指す。細胞をベースとした系の状況下では、当該用語は、(たとえばin vitro系中とは対照的に)生細胞内で発生する事象を指すために用いられ得る。
【0045】
単離された:本明細書において、「単離された」という用語は、(1)(自然環境下、及び/または実験的設定下のいずれでも)当初それらが産生されたときに伴う構成要素の少なくとも一部から分離された、及び/若しくは(2)ヒトの手により産生、調製、及び/または製造された、物質ならびに/または実体を指す。単離された物質及び/または実体は、当初伴っていた他の構成要素の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約99%より多くら分離されていてもよい。一部の実施形態において、単離された剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%より高い純度である。本明細書において、他の構成要素が実質的に無い場合、物質は「純粋」である。本明細書において、単離された物質及び/または実体の純度の割合の算出は、添加剤(たとえば緩衝剤、溶媒、水等)を除外するものとする。
【0046】
メッセンジャーRNA(mRNA):本明細書において、「メッセンジャーRNA(mRNA)」という用語は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。本明細書において用いられるmRNAは、修飾RNA及び非修飾RNAの両方を包含する。mRNAは、1以上のコード領域及び非コード領域を含有し得る。
【0047】
mRNAの完全性:本明細書において、「mRNAの完全性」という用語は通常、mRNAの質を指す。一部の実施形態において、mRNAの完全性は、精製工程(たとえばタンジェンシャルフローろ過)の後で分解されていないmRNAの割合(%)を指す。mRNAの完全性は、当分野に公知の方法を用いて、たとえばRNAアガロースゲル電気泳動(たとえば、Ausubelら、John Weley & Sons,Inc.,1997,Current Protocols in Molecular Biology)により決定されてもよい。
【0048】
核酸:本明細書において、「核酸」という用語は、そのもっとも広い意味で、ポリヌクレオチド鎖へと組み込まれる、若しくは組み込まれることができるすべての化合物及び/または物質を指す。一部の実施形態において、核酸は、ホスホジエステル結合を介してポリヌクレオチド鎖へと組み込まれる、若しくは組み込まれることができる化合物及び/または物質である。一部の実施形態において、「核酸」は、個々の核酸残基(たとえばヌクレオチド及び/またはヌクレオシド)を指す。一部の実施形態において、「核酸」は、個々の核酸残基を含有するポリヌクレオチド鎖を指す。一部の実施形態において、「核酸」は、RNA、ならびに一本鎖及び/若しくは二本鎖DNAならびに/またはcDNAを包含する。さらに「核酸」、「DNA」、「RNA」という用語及び/または類似の用語は、核酸類似体、すなわち、ホスホジエステル主鎖以外を有する類似体を含む。たとえばいわゆる「ペプチド核酸」が当分野において公知であり、それらは当該主鎖においてホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を有しており、本発明の範囲内にあるとみなされる。「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」という用語は、互いの縮重版であり、及び/または同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列のすべてを含む。タンパク質及び/またはRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る。核酸は、天然源から精製されることができ、組み換え発現系を用いて産生されることができ、及び任意選択的に精製され、化学的に合成されること等ができる。たとえば化学的に合成された分子の場合等、適切な場合には、核酸は、たとえば化学的修飾された塩基または糖類、主鎖修飾等を有するヌクレオシド類似体等を含むことができる。核酸配列は、別段の表示がない限り、5’から3’の方向で表される。一部の実施形態において、核酸は、天然型ヌクレオシド(たとえばアデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)、ヌクレオシド類似体(たとえば2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、及び2-チオシチジン)、化学修飾された塩基、生物修飾された塩基(たとえばメチル化塩基)、挿入された塩基、修飾糖(たとえば2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)、及び/若しくは修飾リン酸基(たとえばホスホロチオエート及び5’-N-ホスホロアミダイト結合)である、またはそれらを含有する。一部の実施形態において、本発明は、送達を促進または送達を成し得るために化学的に修飾されていない核酸(たとえば、ヌクレオチド及び/またはヌクレオシドを含む、ポリヌクレオチドならびに残基)を意味する、「非修飾核酸」を特に目的とするものである。
【0049】
患者:本明細書において、「患者」または「対象」という用語は、実験目的、診断目的、予防目的、美容目的及び/または治療目的のために提供される組成物が投与され得るすべての生物体を指す。典型的な患者としては、動物(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類及び/またはヒト等の哺乳類)が挙げられる。一部の実施形態において、患者はヒトである。ヒトは、出生前及び出生後の形態を含む。
【0050】
薬学的に許容される:本明細書において用いられる「薬学的に許容される」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題若しくは合併症を伴わず、合理的な利益/リスク比に見合う、ヒト及び動物の組織と接触する使用に適している物質を指す。
【0051】
未完了で中断されたRNA配列:本明細書において用いられる「未完了で中断されたRNA配列」という用語は、mRNA合成反応(たとえばin vitro合成反応)の不完全な産物を指す。様々な理由により、RNAポリメラーゼはDNA鋳型を常に完全には転写しない。すなわち、RNA合成が未完了の状態で終結する。RNA合成の未完了の終結の考えられる理由としては、DNA鋳型の質、鋳型中に存在する特定のポリメラーゼに対するポリメラーゼ終了配列、劣化した緩衝液、温度、リボヌクレオチドの枯渇、及びmRNAの二次構造が挙げられる。未完了で中断されたRNA配列は、所望される転写産物の予定される長さよりも短い任意の長さであり得る。たとえば、未完了で中断されたmRNA配列は、1000塩基未満、500塩基未満、100塩基未満、50塩基未満、40塩基未満、30塩基未満、20塩基未満、15塩基未満、10塩基未満、またはより短くともよい。
【0052】
塩:本明細書において用いられる「塩」という用語は、酸と塩基の間の中和反応から生じる、または生じうるイオン性化合物を指す。
【0053】
対象:本明細書において、「対象」という用語は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(たとえばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。ヒトは、出生前及び出生後の形態を含む。多くの実施形態において、対象は、ヒトである。対象は、患者であってもよく、患者とは、医療提供者に対して疾患の診断または治療を申し出ているヒトを指す。「対象」という用語は、本明細書において、「個体」または「患者」と相互交換可能に用いられる。対象は、疾患または障害に罹患していてもよく、または罹患しやすくてもよいが、当該疾患または障害の症状を示している可能性も、示していない可能性もある。
【0054】
実質的に:本明細書において、「実質的に」という用語は、対象の特徴または特性の完全若しくはほぼ完全な度合いまたは程度を示す質的な状態を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的及び化学的現象は、仮にあるとしても、まれにしか完了まで到達しない、及び/または完全な状態まで進行しない、または完全な結果を達成しない、若しくは完全な結果を回避しないことを理解するであろう。ゆえに「実質的に」という用語は、本明細書において、多くの生物学的現象及び化学的現象に本来的に備わっている完全性の欠落の可能性を表現するために用いられる。
【0055】
実質的に含まれない:本明細書において、「実質的に含まれない」という用語は、除去される物質(たとえば、未完了で中断されたRNA配列)が比較的少ない量で存在するか、または全く存在しない状態を指す。たとえば、「未完了で中断されたRNA配列が実質的に含まれない」とは、当該未完了で中断されたRNA配列が、不純物のおよそ5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.0%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満またはそれ以下のレベル(w/w)で存在していることを意味する。あるいは、「未完了で中断されたRNA配列が実質的に含まれない」とは、当該未完了で中断されたRNA配列が、約100ng未満、90ng未満、80ng未満、70ng未満、60ng未満、50ng未満、40ng未満、30ng未満、20ng未満、10ng未満、1ng未満、500pg未満、100pg未満、50pg未満、10pg未満またはそれより少ないレベルで存在していることを意味する。
【0056】
詳細な説明
本発明は、とりわけ、mRNAを沈殿させ、次いで膜ろ過(たとえば、タンジェンシャルフローろ過)を行うことを含む工程に基づいた、不純調製物(たとえば、in vitro合成反応混合物)からmRNAを精製するための改善された方法を提供するものである。
【0057】
本発明の様々な態様が以下の項に詳細に記述されている。当該項の使用は、本発明を限定することを意味しない。各項は、本発明の任意の態様に適用することができる。本出願において、別段の表示がない限り、「または」の使用は「及び/または」を意味する。
【0058】
mRNAの合成
本発明を用いて、任意のmRNAを精製してもよい。mRNAとは一般的にDNAからリボソームへと情報を運搬するRNA型と考えられている。mRNAの存在は一般的に非常に短く、プロセッシングと翻訳、その後の分解を含んでいる。一般的に、真核生物体においてmRNAのプロセッシングは、N-終末(5’)末端上に「キャップ」を、及びC-終末(3’)末端上に「テール」を付加することを含む。典型的なキャップは、7-メチルグアノシンキャップであり、7-メチルグアノシンキャップは最初の転写ヌクレオチドに5’-5’-三リン酸結合を介して結合されるグアノシンである。キャップの存在は、ほとんどの真核細胞に存在しているヌクレアーゼに対する抵抗性をもたらすという点で重要である。テールは一般的にポリアデニル化事象であり、それによりポリアデニリル部分がmRNA分子の3’末端に付加される。この「テール」の存在により、エキソヌクレアーゼ分解からのmRNAの保護が供される。メッセンジャーRNAはリボソームにより一連のアミノ酸へと翻訳され、当該アミノ酸がタンパク質を形成する。
【0059】
本発明によるmRNAは、様々な公知の方法のいずれかにより合成されてもよい。たとえば、本発明によるmRNAは、in vitro転写(IVT)により合成されてもよい。簡潔に記載すると、IVTは通常、プロモーターを含有する直線状または環状DNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸塩のプール、DTT及びマグネシウムイオンを含有し得る緩衝液系、ならびに適切なRNAポリメラーゼ(たとえば、T3、T7、またはSP6
RNAポリメラーゼ)、DNAseI、ピロホスファターゼ、ならびに/またはRNAse阻害剤を用いて行われる。正確な条件は具体的な応用方法によって変化し得る。これら試薬の存在は、いくつかの実施形態による最終産物中においては望ましいものではなく、それ故、不純物と呼称され得、これら不純物を1つ以上含有する調製物は不純調製物と呼称され得る。
【0060】
様々な実施形態によると、本発明を用いて、様々な長さのin vitro合成されたmRNAを精製してもよい。一部の実施形態において、本発明を用いて、約1kb、1.5kb、2kb、2.5kb、3kb、3.5kb、4kb、4.5kb、5kb6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、または20kb以上の長さのin vitro合成されたmRNAを精製してもよい。一部の実施形態において、本発明を用いて、約1~20kb、約1~15kb、約1~10kb、約5~20kb、約5~15kb、約5~12kb、約5~10kb、約8~20kb、または約8~15kbの長さの範囲にあるin vitro合成されたmRNAを精製してもよい。たとえば、一般的なmRNAは約1kb~約5kbの長さでありうる。より一般的には、mRNAは約1kb~約3kbの長さを有する。しかし、一部の実施形態において、本発明組成物中のmRNAはよりずっと長い(約20kb超)。一部の実施形態において、本発明を用いて、一般的に安定性を増強させる修飾を1つ以上含有するmRNAを精製してもよい。一部の実施形態において、1つ以上の修飾は修飾ヌクレオチド、修飾糖リン酸主鎖、5’及び/または3’非翻訳領域から選択される。一部の実施形態において、本発明を用いて修飾されていないin vitro合成されたmRNAを精製してもよい。
【0061】
一般的に、mRNAは安定性を増強させるために修飾される。mRNAの修飾としては、たとえばRNAのヌクレオチドの修飾が挙げられる。従って、本発明による修飾mRNAはたとえば主鎖修飾、糖修飾、または塩基修飾を含有し得る。一部の実施形態において、抗体をコードするmRNA(たとえば重鎖及び軽鎖をコードするmRNA)は、限定されないが、プリン類(アデニン(A)、グアニン(G))若しくはピリミジン類(チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U))、ならびにたとえば1-メチル-アデニン、2-メチル-アデニン、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニル-アデニン、N6-メチル-アデニン、N6-イソペンテニル-アデニン、2-チオ-シトシン、3-メチル-シトシン、4-アセチル-シトシン、5-メチル-シトシン、2,6-ジアミノプリン、1-メチル-グアニン、2-メチル-グアニン、2,2-ジメチル-グアニン、7-メチル-グアニン、イノシン、1-メチル-イノシン、シュードウラシル(5-ウラシル)、ジヒドロ-ウラシル、2-チオ-ウラシル、4-チオ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-ウラシル、5-フルオロ-ウラシル、5-ブロモ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、5-メチル-2-チオ-ウラシル、5-メチル-ウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチルアミノメチル-ウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5’-メトキシカルボニルメチル-ウラシル、5-メトキシ-ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、1-メチル-シュードウラシル、キュエオシン(queosine)、.ベータ.-D-マンノシル-キュエオシン、ワイブトキソシン(wybutoxosine)及びホスホロアミド酸塩、ホスホロチオエート、ペプチドヌクレオチド、メチルホスホン酸塩、7-デアザグアノシン、5-メチルシトシン、及びイノシン等のプリン類ならびにピリミジン類の修飾ヌクレオチド類似体若しくは誘導体をはじめとする天然型ヌクレオチドならびに/またはヌクレオチド類似体(修飾ヌクレオチド)から合成されてもよい。かかる類似体の調製は、たとえばその開示内容が参照によりその全範囲で本明細書に含有される米国特許第4,373,071号、米国特許第4,401,796号、米国特許第4,415,732号、米国特許第4,458,066号、米国特許第4,500,707号、米国特許第4,668,777号、米国特許第4,973,679号、米国特許第5,047,524号、米国特許第5,132,418号、米国特許第5,153,319号、米国特許第5,262,530号、及び第5,700,642号から当分野の当業者に公知である。
【0062】
一般的に、mRNAの合成は、N-終末(5’)末端上の「キャップ」、及びC-終末(3’)末端上の「テール」の付加を含む。キャップの存在は、ほとんどの真核細胞に存在しているヌクレアーゼに対する抵抗性を提供するという点において重要である。「テール」の存在により、エキソヌクレアーゼ分解からのmRNAの保護が供される。
【0063】
それ故、一部の実施形態において、mRNAは5’キャップ構造を含む。5’キャップは一般的に以下のように付加される。最初にRNA末端ホスファターゼが当該5’ヌクレオチドから末端リン酸基の1つを除去し、2つの末端リン酸を残す。次いで、グアニリルトランスフェラーゼを介して末端のリン酸にグアノシン三リン酸(GTP)が付加され、5’5’5三リン酸結合が形成される。次いでグアニンの7-窒素がメチルトランスフェラーゼによりメチル化される。キャップ構造の例としては、限定されないが、m7G(5’)ppp(5’(A,G(5’)ppp(5’)A及びG(5’)ppp(5’)Gが挙げられる。
【0064】
一部の実施形態において、in vitro転写反応から合成されたmRNAが望ましい場合がある一方で、細菌、真菌、植物及び/または動物から産生された野生型mRNAを含む他の源のmRNAも本発明の範囲内にあると企図される。
【0065】
一部の実施形態において、mRNAは5’及び/または3’非翻訳領域を含む。一部の実施形態において、5’非翻訳領域は、たとえば鉄応答要素等のmRNAの安定性または翻訳に影響を与える要素を1つ以上含有する。一部の実施形態において、5’非翻訳領域は、約50~500ヌクレオチドの長さでありうる。
【0066】
一部の実施形態において、3’非翻訳領域は、ポリアデニル化シグナル、mRNAの細胞内局在性の安定性に影響を与えるタンパク質に対する結合部位、またはmiRNAに対する1つ以上の結合部位のうちの1つ以上を含有する。一部の実施形態において、3’非翻訳領域は、50~500ヌクレオチド以上の長さでありうる。
【0067】
本発明を用いて様々なタンパク質をコードするmRNAを精製してもよい。蛍ルシフェラーゼ、アルギニノコハク酸シンテターゼ、第IX因子、及びCFTRをコードするmRNAの精製に関する非限定的な例を実施例において詳細に記述する。
【0068】
典型的には、本発明を用いて単一種のmRNAを精製するものであり、すなわち、精製されるmRNA調製物は、一つの遺伝子、または単回の合成若しくは一つの発現構築物から誘導されたmRNAを含有する。対照的に、細胞から精製された総mRNAは複数種のmRNAを含有する。
【0069】
本発明による精製工程は合成の間に、または合成後に引き続き行われてもよい。たとえばmRNAはキャップ及び/またはテールがmRNAに付加される前に本明細書に記述されるように精製されてもよい。一部の実施形態において、mRNAはキャップ及び/またはテールがmRNAに付加された後に精製される。一部の実施形態において、mRNAはキャップが付加された後に精製される。一部の実施形態において、mRNAはキャップ及び/またはテールがmRNAに付加される前及び後の両方で精製される。一般に、本明細書に記述される精製ステップは、任意選択的にたとえば透析等の他の精製工程とともにmRNA合成の各ステップの後で行われてもよい。たとえばmRNAは初期合成(たとえばテールを伴う、または伴わない)後にショートマー(shortmer)を除去するために透析を経てもよく、次いで本明細書に記述されるように沈殿及び精製に供され、次いでキャップ及び/またはテールの付加の後に再度沈殿及び精製により精製されてもよい。
【0070】
mRNAの沈殿
本発明によると、mRNAはたとえばin vitro合成反応混合物等の不純調製物から当分野に公知の様々な沈殿法を用いて沈殿されてもよい。本明細書において、「沈殿」という用語(またはその文法的に同等のすべての用語)は、溶液中での固体の形成を指す。mRNAに関連して使用されるとき、当該「沈殿」という用語は、液体中のmRNAの不溶性形態または固体形態の形成を指す。
【0071】
mRNAの沈殿に適したすべての方法を、本発明の実施に用いることができる。典型的には、mRNAの沈殿は変性条件を含む。本明細書において、「変性条件」という用語は、mRNAの固有立体配座の破壊をもたらし得る任意の化学的条件または物理的条件を指す。分子の固有立体配座は通常、最も水溶性であるので、分子の二次構造または三次構造の破壊は、可溶性に変化をもたらし得、溶液からのmRNAの沈殿を発生させ得る。
【0072】
たとえば、不純調製物からのmRNAの適切な沈殿法は、mRNAを沈殿させる変性試薬を用いて当該不純調製物を処理することを含む。本発明に適した変性試薬の例としては、限定されないが、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、酢酸アンモニウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。適切な試薬は、固形形態または溶液中で供給されてもよい。
【0073】
非限定的な例として、チオシアン酸グアニジニウムを用いてmRNAを沈殿させてもよい。典型的には、チオシアン酸グアニジニウムは、約1M以上、約2M以上、約3M以上、約4M以上、約5M以上、約6M以上、約7M以上、約8M以上、約9M以上、または約10M以上の濃度で溶液中に供給されてもよい。一部の実施形態において、mRNA沈殿に適した溶液は、約4Mの濃度でチオシアン酸グアニジニウムを含有する。
【0074】
変性試薬に加え、mRNAの沈殿に適した溶液は、追加の塩、界面活性剤、及び/または緩衝剤を含有してもよい。たとえば適切な溶液はラウリルサルコシルナトリウム及び/またはクエン酸ナトリウムをさらに含有してもよい。非限定的な例として、mRNAに適した溶液は、4Mのチオシアン酸グアニジニウム、0.5%のラウリルサルコシルナトリウム、及び25mMのクエン酸ナトリウムを含有してもよく、または4Mのチオシアン酸グアニジニウム、及び0.5%のラウリルサルコシルナトリウムを含有してもよく、または4Mのチオシアン酸グアニジニウム、及び25mMのクエン酸ナトリウムを含有してもよい。
【0075】
典型的には、相当量のmRNAの沈殿が可能となる望ましい温度で、一定の期間、本明細書に記載される変性試薬の1つ以上と不純調製物をインキュベートすることが望ましい。たとえば不純調製物と変性剤の混合物は、室温または大気温度で一定の期間インキュベートされてもよい。典型的には、適切なインキュベート時間は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、または60分以上の期間である。一部の実施形態において、適切なインキュベート時間は、約60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、または5分以下の期間である。一部の実施形態において、当該混合物は室温で約5分間インキュベートされる。典型的には、「室温」または「大気温度」とは、たとえば約20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、または25℃等の約20~25℃の範囲にある温度を指す。一部の実施形態において、不純調製物と変性剤の混合物は、室温よりも高い温度(たとえば、約30~37℃、または特に約30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、若しくは37℃)または室温よりも低い温度(たとえば、約15~20℃、または特に約15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、若しくは20℃)でインキュベートされてもよい。インキュベーション期間は、インキュベート温度に基づき調節され得る。典型的には、高いインキュベーション温度では短いインキュベーション時間が必要となる。
【0076】
あるいは、またはさらに、溶媒を用いてmRNA沈殿を促進させてもよい。適切な溶媒の例としては、限定されないが、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、メタノール、デナトニウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。たとえば溶媒(たとえば無水エタノール)は、mRNA沈殿をさらに増強及び/または促進させるために、本明細書に記述される変性剤とともに不純調製物に添加されてもよく、または変性剤の添加及びインキュベーションの後に添加されてもよい。典型的には、適切な溶媒(たとえば無水エタノール)の添加の後、当該混合物を室温で新たな期間インキュベートしてもよい。典型的には、適切なインキュベーション期間は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、または60分以上である。一部の実施形態において、適切なインキュベーション期間は、約60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、または5分以下である。典型的には、当該混合物は室温で新たに約5分間インキュベートされる。室温を上回る温度、または下回る温度を、インキュベーション時間の適した調節とともに用いてもよい。あるいは、沈殿のためにインキュベーションを4℃、または-20℃で行うこともあり得る。
【0077】
典型的には、本明細書に記載される方法により、不純調製物から相当量のmRNAの沈殿が発生する。一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、不純調製物から少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の総mRNAの沈殿を生じさせる。一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、不純調製物から実質的に100%の総mRNAの沈殿を生じさせる。
【0078】
膜ろ過
本発明によると、沈殿したmRNAを含有する不純調製物を、当該沈殿したmRNAが膜に捕捉または保持される、膜ろ過を含む精製工程に供してもよい。したがって、一部の実施形態において、不純調製物は、不溶物を除去するための前処理を行わずに沈殿を行った後に膜ろ過に供される。
【0079】
様々なタイプの膜ろ過を用いて、沈殿したmRNAを捕捉または保持してもよい。典型的には、膜ろ過は、1つ以上の挿入された透過膜を用いて液体から個体を分離することを含む。また膜ろ過を用いてガス性試料から粒子をろ過してもよい。一般的に言えば、膜ろ過には受動ろ過と能動ろ過の2つの主要な形態があり、受動ろ過は単に溶液の拡散によって進行し、能動ろ過は液体またはガスが強制的に膜を通り抜けるように陽圧または陰圧(すなわち真空)を使用する。
【0080】
mRNAを精製するための膜ろ過を含む工程の例を
図1に示す。典型的には、かかる工程は、負荷、洗浄及び溶離ステップを含む。
【0081】
負荷
典型的には、負荷ステップは、膜上に供給物(たとえば沈殿mRNAを含有する不純調製物)を負荷し、供給物を陽圧または陰圧により強制的に通過させ、残留物を膜上に捕捉または保持させることを含む。本明細書において、「残留物」という用語は、膜により保持される任意の非透過性の溶質及び/または不溶性物質を指す。本発明によると沈殿したmRNAは残留物として膜に捕捉される。本明細書において、「膜」という用語は、任意の多孔質の層または物質のシートを指す。本出願において、「膜」という用語は、フィルターと相互交換可能に用いられる。
【0082】
一部の実施形態において、適切な膜は、不純物(可溶性不純物及び/または孔のサイズよりも小さいサイズの不溶性不純物を含む)は透過させながら通過させ、一方で沈殿したmRNAは捕捉または保持するのに適した孔のサイズを有する。一部の実施形態において、適切な膜は、約0.10μm、0.20μm、0.22μm、0.24μm、0.26μm、0.28μm、0.30μm、0.40μm、0.50μm、または1.0μm以上の平均孔サイズを有する。特定の実施形態において。適切な膜は約0.22μmの平均孔サイズを有する。特定の実施形態において、沈殿したmRNAの保持に適した孔サイズは、分子量カットオフ(MWCO:molecular weight cut off)とも呼称される、沈殿mRNAの公称分画分子量(NMWL:nominal molecular weight limits)により決定され得る。典型的には、沈殿したmRNAのNMWLまたはMWCOよりも小さい孔サイズの膜が使用される。一部の実施形態において、沈殿したmRNAのNMWLまたはMWCOよりも2~6(たとえば、2、3、4、5または6)倍小さい孔サイズの膜が使用される。一部の実施形態において、本発明に適した膜は、約100キロダルトン(kDa)、300kDa、500kDa、1,000kDa、1,500kDa、2,000kDa、2,500kDa、3,000kDa、3,500kDa、4,000kDa、4,500kDa、5,000kDa、5,500kDa、6,000kDa、6,500kDa、7,000kDa、7,500kDa、8,000kDa、8,500kDa、9,000kDa、9,500kDa、または10,000kDa以上の孔サイズを有し得る。
【0083】
本発明に適した膜は、任意の材料から作製されてもよい。例示的な膜の材料としては、限定されないが、ポリエーテルスルホン(mPES)(修飾なし)、ポリエーテルスルホン(mPES)中空糸膜、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、酢酸セルロース、ニトロセルロース、MCE(混合セルロースエステル類)、超高分子量ポリエチレン(UPE)、ポリフルオロテトラエチレン(PTFE)、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、塩化ポリビニル及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0084】
本発明に適した膜は、様々な表面積を有し得る。一部の実施形態において、適切な膜は、mRNAの大規模産生を促進するための十分な大きさの表面積を有する。たとえば適切な膜は、約2,000cm2、2,500cm2、3,000cm2、3,500cm2、4,000cm2、4,500cm2、5,000cm2、7,500cm2、10,000cm2、5m2、10m2、12m2、15m2、20m2、24m2、25m2、30m2、または50m2以上の表面積を有し得る。
【0085】
膜ろ過は沈殿したmRNAを捕捉するための様々な形式で行われてもよい。一部の実施形態において、膜ろ過はタンジェンシャルフローろ過(TFF)の一部として行われる。
【0086】
タンジェンシャルフローろ過(TFF)はクロスフローろ過とも呼称され、ろ過される材料がフィルターを通過するのではなく接線方向にフィルターを横切るタイプのろ過である。TFFにおいて、望ましくない透過物はフィルターを通過し、一方で望ましい残留物(たとえば沈殿したmRNA)はフィルターに沿って通過し、下流でフィルターもしくは膜上に捕捉または保持される。
【0087】
タンジェンシャルフローろ過の主な利点は、従来的な「袋小路」のろ過の場合には、フィルターに凝集し、塞いでしまう可能性のある非透過性の残留物(場合により、「フィルターケーキ」と呼称される)が、そうではなくフィルターの表面に沿って押し流されていくという点である。この利点によって、タンジェンシャルフローろ過は、沈殿mRNAの大規模精製に特に適したものとなる。一部の実施形態において、バッチあたり、約1グラム、10グラム、50グラム、100グラム、200グラム、300グラム、400グラム、500グラム、600グラム、700グラム、800グラム、900グラム、1kg、5kg、10kg、50kg、または100kg以上のmRNAの処理量が適用され得る。
【0088】
典型的なTFF工程において少なくとも3つの工程変量が重要である。膜透過圧、供給速度、そして透過物の流速である。膜透過圧は、透過性分子を運びながらフィルターに液体を通過させる力である。一部の実施形態において、膜透過圧は1ポンド/平方インチ(psi)以上、30ポンド/平方インチ(psi)以下である。
【0089】
供給速度(クロスフロー速度としても知られる)は、供給チャンネルを通り、フィルターを横切る溶液の流れの速度である。供給速度は、フィルターを塞ぎ、または詰まらせ、それによりろ過速度を制限し得る分子を押し流す力を決定する。一部の実施形態において、供給速度は、1~500L/分である。一部の実施形態において、供給速度は、50~800mL/分である。一部の実施形態において、供給速度は、50~750mL/分である。一部の実施形態において、供給速度は、50~300mL/分である。一部の実施形態において、供給速度は、50~200mL/分である。一部の実施形態において、供給速度は、75~200mL/分である。一部の実施形態において、供給速度は、100~200mL/分である。一部の実施形態において、供給速度は、125~175mL/分である。一部の実施形態において、供給速度は、130mL/分である。一部の実施形態において、供給速度は、60mL/分~220mL/分である。一部の実施形態において、供給速度は、60mL/分以上である。一部の実施形態において、供給速度は、100mL/分以上である。一部の実施形態において、供給速度は、150mL/分以上である。一部の実施形態において、供給速度は、200mL/分以上である。一部の実施形態において、供給速度は、220mL/分以上である。
【0090】
透過物の流速は、透過物が当該系から除去される速度である。一定の供給速度に対して、透過物の流速を上げることにより、フィルターを通る圧を増加させることができ、それによりろ過速度は上昇する一方で、フィルターの閉塞または目詰まりのリスクも増加する可能性がある。TFFに用いられる原理、理論、及び装置は、Separations Technology, Pharmaceutical and Biotechnology Applicationsにおいて、Michaelsらの”Tangential Flow Filtration”(W. P. Olson(編)、Interpharm Press, Inc., Buffalo Grove, Ill. 1995)に記載されている。また、高速タンジェンシャルフローろ過(HP-TFF)の記述に関しては、TFFに対する改良を説明している、米国特許第5,256,294号及び第5,490,937号を参照のこと。一部の実施形態において、流速は、1~100L/分である。一部の実施形態において、流速は、10~100mL/分である。一部の実施形態において、流速は、10~90mL/分である。一部の実施形態において、流速は、10~80mL/分である。一部の実施形態において、流速は、10~70mL/分である。一部の実施形態において、流速は、10~60mL/分である。一部の実施形態において、流速は、10~50mL/分である。一部の実施形態において、流速は、10~40mL/分である。一部の実施形態において、流速は、20~40mL/分である。一部の実施形態において、流速は、30mL/分である。
【0091】
本明細書に記載される様々な工程変量の任意の組み合わせを用いてもよい。一部の実施形態において、タンジェンシャルフローろ過はおよそ100~200mL/分(たとえば、およそ100~180mL/分、100~160mL/分、100~140mL/分、110~190mL/分、110~170mL/分、または110~150mL/分)の供給速度、及び/またはおよそ10~50mL/分(たとえば、およそ10~40mL/分、10~30mL/分、20~50mL/分、または20~40mL/分)の流速で行われる。一部の実施形態において、タンジェンシャルフローろ過は、およそ100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、若しくは200mL/分の供給速度、及び/またはおよそ10、20、30、40若しくは50mL/分の流速で行われる。他の実施形態において、タンジェンシャルフローろ過は、およそ500、750mL/分、1、2、3、4、もしくは5L/分の供給速度、及び/または100、200、250、500、750mL/分もしくは1L/分の流速で行われる。
【0092】
洗浄
典型的には、捕捉された不溶性mRNAは、膜上に保持された不純物を取り除くため、溶離の前に洗浄され得る。一部の実施形態において、洗浄ステップは、1以上の洗浄溶液を用いた複数回のすすぎサイクルを含む。たとえば、洗浄ステップは、グアニジニウム緩衝液及びエタノール、その後に70~80%のエタノール(たとえば、約70%、75%、または80%のエタノール)を用いた複数回のすすぎサイクルにより行われてもよい。ある特定の実施形態において、当該複数回のすすぎサイクルは、2回より多い、3回より多い、4回より多い、5回より多い、6回より多い、7回より多い、8回より多い、9回より多い、または10回より多いサイクルである。
【0093】
溶離
典型的には、捕捉または保持されたmRNAは、当該沈殿mRNAの溶液への再可溶化により溶離される。たとえば、捕捉されたmRNAはRNAseが含まれていない水を用いて溶離されてもよい。ある特定の実施形態において、捕捉されたmRNAの溶離は、RNAseを含まない水の再循環が含まれる。たとえば、当該RNAseを含まない水は、約5~30分間(たとえば、約5~25分、約5~20分、または約5~15分)循環されてもよい。特定の実施形態において、当該RNAseを含まない水は、約5~10分間(たとえば、約5、6、7、8、9、または10分間)再循環される。
【0094】
一部の実施形態において、再可溶化されたmRNAは、所望される濃度で所望される配合組成物へと透析され得る。様々な配合組成物を透析に用いてもよい。一部の実施形態において、精製されたmRNA溶液は、1mMのクエン酸ナトリウムを用いて透析される。一部の実施形態において、精製されたmRNA溶液は、酢酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、酢酸ピリジニウム、ギ酸ピリジニウム、酢酸アンモニウム、尿素、塩化カリウム等を用いて透析される。対象mRNAのサイズに応じて、適切な分子量カットオフ(MWCO)を有する透析膜が用いられ得る。たとえば適切な透析膜は、約50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDa、150kDa、200kDa、250kDa、300kDa、350kDa、400kDa、450kDa、または500kDaのMWCOを有し得る。
【0095】
精製されたmRNAの特徴解析
本発明により提供される特有の利点は、mRNA、特にin vitro合成されたmRNAを大規模で、または工業規模で精製する能力である。たとえばin vitro合成されたmRNAは、バッチ当たり約1グラム、1グラム、10グラム、50グラム、100グラム、200グラム、300グラム、400グラム、500グラム、600グラム、700グラム、800グラム、900グラム、1kg、5kg、10kg、50kg、または100kg以上の規模で精製され得る。一つの特定の実施形態において、in vitro合成されたmRNAはバッチ当たり10グラムの規模で精製され得る。他の特定の実施形態において、in vitro合成されたmRNAはバッチ当たり100グラムの規模で精製され得る。さらに他の特定の実施形態において、in vitro合成されたmRNAはバッチ当たり1kgの規模で精製され得る。
【0096】
様々な実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、限定されないが、未完了で中断されたRNA配列、DNA鋳型及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬を含むmRNA合成工程由来の不純物を実質的に含まない。
【0097】
特に、本発明は、未完了で中断されたRNA配列(「ショートマー」としても知られる)を高度に除去または排除する。一部の実施形態において、本発明による方法は、約90%、95%、96%、97%、98%、99%を超える、または実質的にすべての未完了で中断されたRNA配列を除去する。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、未完了で中断されたRNA配列を実質的に含まない。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、約5%未満(たとえば、約4%、3%、2%、または1%未満)の未完了で中断されたRNA配列を含有する。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、約1%未満(たとえば、約0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、または0.1%未満)の未完了で中断されたRNA配列を含有する。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、たとえばエチジウムブロミド染色及び/またはクマシン染色等により測定される、検出限界以下の未完了で中断されたRNA配列を含有する。一部の実施形態において、未完了で中断されたRNA配列は、15未満の塩基(たとえば、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、または3未満の塩基)を含有する。一部の実施形態において、未完了で中断されたRNA配列は、約8~15、8~14、8~13、8~12、8~11、または8~10塩基を含有する。
【0098】
一部の実施形態において、本発明による方法は、限定されないが、T7 RNAポリメラーゼ、DNAseI、ピロホスファターゼ、及び/またはRNAse阻害剤を含む、in vitro合成において用いられた酵素試薬を高い割合で除去または排除する。一部の実施形態において、本発明は特にT7 RNAポリメラーゼの除去に有効である。一部の実施形態において、本発明による方法は、in vitro合成において用いられた酵素試薬の約90%、95%、96%、97%、98%、99%超または実質的にすべてを除去する。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、in vitro合成において用いられた酵素試薬を実質的に含まない。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、in vitro合成において用いられた酵素試薬を約5%未満(たとえば、約4%、3%、2%、または1%未満)含有する。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、in vitro合成において用いられた酵素試薬を約1%未満(たとえば、約0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、または0.1%未満)含有する。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、たとえばエチジウムブロミド染色及び/またはクマシン染色等により測定され、検出限界以下のin vitro合成において用いられた酵素試薬を含有する。
【0099】
精製されたmRNA中の未完了で中断されたRNA配列及び/または酵素試薬のレベルは、当分野に公知の様々な方法を用いて測定され得る。たとえば未完了で中断されたRNA配列及び/またはin vitro合成において用いられた酵素試薬は、銀染色、電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)、及び/またはキャピラリー電気泳動を介して測定され得る。
【0100】
様々な実施形態において、本明細書に記載される方法を用いて精製されたmRNAは、高度な完全性を維持している。本明細書において、「mRNAの完全性」という用語は、一般的に、精製後のmRNAの質を指す。一部の実施形態において、mRNAの完全性とは、タンジェンシャルフローろ過後に分解されていないmRNAの割合(%)を指す。mRNAの完全性は、たとえばRNAアガロースゲル電気泳動(たとえばAusubelら、John Weley & Sons, Inc., 1997, Current Protocols in Molecular Biology)等の当分野に公知の方法を用いて測定され得る。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、約95%超の(たとえば約96%超、97%超、98%超、99%超、またはそれを超える)完全性を有する。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、98%超の完全性を有する。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、99%超の完全性を有する。一部の実施形態において、本発明により精製されたmRNAは、およそ100%の完全性を有する。
【0101】
治療応用のための、mRNAの大規模バッチ産生
本発明は、治療応用に要求される高度な純度及び完全性を有する精製mRNAの大規模産生に対する緊急の必要性に取り組むものである。従来からある方法は一般的に規模の小さいものであり、充分に費用効率が高く、ヒト対象への投与に適した工業規模でのmRNA製造に必要とされる程度にまで規模を拡張することができない。対照的に、本発明方法は実施例において示されるように十分に拡張可能なものであり、医薬グレードのmRNAの費用効率が高い大規模製造が可能である。
【0102】
本発明に従い生産された精製mRNAの各バッチは、ヒト対象への投与に適した単一種のmRNAを5グラム以上含有する。一部の実施形態において、1つのバッチは、10グラム以上の単一種mRNAを含有する。特定の実施形態において、1つのバッチは、25グラム以上の単一種mRNAを含有する。
【0103】
本発明方法により、mRNA合成工程由来の不純物を実質的に含まない精製mRNAバッチが産生される。特に、当該バッチは、未完了で中断されたRNA配列、DNA鋳型、及び/または単一種mRNAのin vitro合成において用いられた酵素試薬を実質的に含まない。たとえば本発明に従い産生された精製mRNAのバッチは、in vitro合成において用いられた酵素試薬を約5%未満含有する。各バッチの精製mRNAは通常、約95%を超える完全性を有する。
【0104】
本発明方法に従い産生されたmRNAバッチは、1つ以上の下流処理ステップ(複数を含む)を必要とする、治療剤の調製に用いることができる。典型的には、各mRNAバッチは、患者への投与が可能なたとえば脂質ナノ粒子、リポソーム、ポリマーベースのポリプレックス等へとmRNAをカプセル化させることにより製剤化される。典型的な投与経路は、限定されないが、精製mRNAの静脈内送達または肺送達を含む。
【実施例】
【0105】
実施例1.メッセンジャーRNA(mRNA)の作製及び精製
メッセンジャーRNAの合成
蛍ルシフェラーゼ(FFL)、アルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)、及びヒト嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)のメッセンジャーRNAを、当該遺伝子をコートするプラスミドDNA鋳型からin vitro転写により合成し、次いでそれらに5’キャップ構造(Cap1)(Fechter, P.; Brownlee, G.G. “Recognition of mRNA cap structures by viral and cellular proteins” J. Gen. Virology 2005, 86, 1239-1249)、及びゲル電気泳動で測定して、およそ200ヌクレオチドの長さの3’ポリ(A)テールを付加した。各mRNA産物中に存在する5’及び3’非翻訳領域はそれぞれX及びYと表され、記述されるように定義される(以下を参照のこと)。標的メッセンジャーRNA構築物の合成は、5’及び3’非翻訳領域に隣接するコード配列からなる初期鎖が合成される2ステップの工程を含んだ。このキャップ及びテールを有さない構築物は精製され、さらにキャップ付加ステップで処理され、次いでポリ-A付加テール付加ステップが行われた。テール付加反応の最後に、初期精製工程と同様の方法で第二の精製ステップが行われた。
【0106】
例示的なコドン最適化された嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)のmRNA
構築物の設計:
X1-配列番号1-Y1
AUGCAGCGGUCCCCGCUCGAAAAGGCCAGUGUCGUGUCCAAACUCUUCUUCUCAUGGACUCGGCCUAUCCUUAGAAAGGGGUAUCGGCAGAGGCUUGAGUUGUCUGACAUCUACCAGAUCCCCUCGGUAGAUUCGGCGGAUAACCUCUCGGAGAAGCUCGAACGGGAAUGGGACCGCGAACUCGCGUCUAAGAAAAACCCGAAGCUCAUCAACGCACUGAGAAGGUGCUUCUUCUGGCGGUUCAUGUUCUACGGUAUCUUCUUGUAUCUCGGGGAGGUCACAAAAGCAGUCCAACCCCUGUUGUUGGGUCGCAUUAUCGCCUCGUACGACCCCGAUAACAAAGAAGAACGGAGCAUCGCGAUCUACCUCGGGAUCGGACUGUGUUUGCUUUUCAUCGUCAGAACACUUUUGUUGCAUCCAGCAAUCUUCGGCCUCCAUCACAUCGGUAUGCAGAUGCGAAUCGCUAUGUUUAGCUUGAUCUACAAAAAGACACUGAAACUCUCGUCGCGGGUGUUGGAUAAGAUUUCCAUCGGUCAGUUGGUGUCCCUGCUUAGUAAUAACCUCAACAAAUUCGAUGAGGGACUGGCGCUGGCACAUUUCGUGUGGAUUGCCCCGUUGCAAGUCGCCCUUUUGAUGGGCCUUAUUUGGGAGCUGUUGCAGGCAUCUGCCUUUUGUGGCCUGGGAUUUCUGAUUGUGUUGGCAUUGUUUCAGGCUGGGCUUGGGCGGAUGAUGAUGAAGUAUCGCGACCAGAGAGCGGGUAAAAUCUCGGAAAGACUCGUCAUCACUUCGGAAAUGAUCGAAAACAUCCAGUCGGUCAAAGCCUAUUGCUGGGAAGAAGCUAUGGAGAAGAUGAUUGAAAACCUCCGCCAAACUGAGCUGAAACUGACCCGCAAGGCGGCGUAUGUCCGGUAUUUCAAUUCGUCAGCGUUCUUCUUUUCCGGGUUCUUCGUUGUCUUUCUCUCGGUUUUGCCUUAUGCCUUGAUUAAGGGGAUUAUCCUCCGCAAGAUUUUCACCACGAUUUCGUUCUGCAUUGUAUUGCGCAUGGCAGUGACACGGCAAUUUCCGUGGGCCGUGCAGACAUGGUAUGACUCGCUUGGAGCGAUCAACAAAAUCCAAGACUUCUUGCAAAAGCAAGAGUACAAGACCCUGGAGUACAAUCUUACUACUACGGAGGUAGUAAUGGAGAAUGUGACGGCUUUUUGGGAAGAGGGUUUUGGAGAACUGUUUGAGAAAGCAAAGCAGAAUAACAACAACCGCAAGACCUCAAAUGGGGACGAUUCCCUGUUUUUCUCGAACUUCUCCCUGCUCGGAACACCCGUGUUGAAGGACAUCAAUUUCAAGAUUGAGAGGGGACAGCUUCUCGCGGUAGCGGGAAGCACUGGUGCGGGAAAAACUAGCCUCUUGAUGGUGAUUAUGGGGGAGCUUGAGCCCAGCGAGGGGAAGAUUAAACACUCCGGGCGUAUCUCAUUCUGUAGCCAGUUUUCAUGGAUCAUGCCCGGAACCAUUAAAGAGAACAUCAUUUUCGGAGUAUCCUAUGAUGAGUACCGAUACAGAUCGGUCAUUAAGGCGUGCCAGUUGGAAGAGGACAUUUCUAAGUUCGCCGAGAAGGAUAACAUCGUCUUGGGAGAAGGGGGUAUUACAUUGUCGGGAGGGCAGCGAGCGCGGAUCAGCCUCGCGAGAGCGGUAUACAAAGAUGCAGAUUUGUAUCUGCUUGAUUCACCGUUUGGAUACCUCGACGUAUUGACAGAAAAAGAAAUCUUCGAGUCGUGCGUGUGUAAACUUAUGGCUAAUAAGACGAGAAUCCUGGUGACAUCAAAAAUGGAACACCUUAAGAAGGCGGACAAGAUCCUGAUCCUCCACGAAGGAUCGUCCUACUUUUACGGCACUUUCUCAGAGUUGCAAAACUUGCAGCCGGACUUCUCAAGCAAACUCAUGGGGUGUGACUCAUUCGACCAGUUCAGCGCGGAACGGCGGAACUCGAUCUUGACGGAAACGCUGCACCGAUUCUCGCUUGAGGGUGAUGCCCCGGUAUCGUGGACCGAGACAAAGAAGCAGUCGUUUAAGCAGACAGGAGAAUUUGGUGAGAAAAGAAAGAACAGUAUCUUGAAUCCUAUUAACUCAAUUCGCAAGUUCUCAAUCGUCCAGAAAACUCCACUGCAGAUGAAUGGAAUUGAAGAGGAUUCGGACGAACCCCUGGAGCGCAGGCUUAGCCUCGUGCCGGAUUCAGAGCAAGGGGAGGCCAUUCUUCCCCGGAUUUCGGUGAUUUCAACCGGACCUACACUUCAGGCGAGGCGAAGGCAAUCCGUGCUCAACCUCAUGACGCAUUCGGUAAACCAGGGGCAAAACAUUCACCGCAAAACGACGGCCUCAACGAGAAAAGUGUCACUUGCACCCCAGGCGAAUUUGACUGAACUCGACAUCUACAGCCGUAGGCUUUCGCAAGAAACCGGACUUGAGAUCAGCGAAGAAAUCAAUGAAGAAGAUUUGAAAGAGUGUUUCUUUGAUGACAUGGAAUCAAUCCCAGCGGUGACAACGUGGAACACAUACUUGCGUUACAUCACGGUGCACAAGUCCUUGAUUUUCGUCCUCAUCUGGUGUCUCGUGAUCUUUCUCGCUGAGGUCGCAGCGUCACUUGUGGUCCUCUGGCUGCUUGGUAAUACGCCCUUGCAAGACAAAGGCAAUUCUACACACUCAAGAAACAAUUCCUAUGCCGUGAUUAUCACUUCUACAAGCUCGUAUUACGUGUUUUACAUCUACGUAGGAGUGGCCGACACUCUGCUCGCGAUGGGUUUCUUCCGAGGACUCCCACUCGUUCACACGCUUAUCACUGUCUCCAAGAUUCUCCACCAUAAGAUGCUUCAUAGCGUACUGCAGGCUCCCAUGUCCACCUUGAAUACGCUCAAGGCGGGAGGUAUUUUGAAUCGCUUCUCAAAAGAUAUUGCAAUUUUGGAUGACCUUCUGCCCCUGACGAUCUUCGACUUCAUCCAGUUGUUGCUGAUCGUGAUUGGGGCUAUUGCAGUAGUCGCUGUCCUCCAGCCUUACAUUUUUGUCGCGACCGUUCCGGUGAUCGUGGCGUUUAUCAUGCUGCGGGCCUAUUUCUUGCAGACGUCACAGCAGCUUAAGCAACUGGAGUCUGAAGGGAGGUCGCCUAUCUUUACGCAUCUUGUGACCAGUUUGAAGGGAUUGUGGACGUUGCGCGCCUUUGGCAGGCAGCCCUACUUUGAAACACUGUUCCACAAAGCGCUGAAUCUCCAUACGGCAAAUUGGUUUUUGUAUUUGAGUACCCUCCGAUGGUUUCAGAUGCGCAUUGAGAUGAUUUUUGUGAUCUUCUUUAUCGCGGUGACUUUUAUCUCCAUCUUGACCACGGGAGAGGGCGAGGGACGGGUCGGUAUUAUCCUGACACUCGCCAUGAACAUUAUGAGCACUUUGCAGUGGGCAGUGAACAGCUCGAUUGAUGUGGAUAGCCUGAUGAGGUCCGUUUCGAGGGUCUUUAAGUUCAUCGACAUGCCGACGGAGGGAAAGCCCACAAAAAGUACGAAACCCUAUAAGAAUGGGCAAUUGAGUAAGGUAAUGAUCAUCGAGAACAGUCACGUGAAGAAGGAUGACAUCUGGCCUAGCGGGGGUCAGAUGACCGUGAAGGACCUGACGGCAAAAUACACCGAGGGAGGGAACGCAAUCCUUGAAAACAUCUCGUUCAGCAUUAGCCCCGGUCAGCGUGUGGGGUUGCUCGGGAGGACCGGGUCAGGAAAAUCGACGUUGCUGUCGGCCUUCUUGAGACUUCUGAAUACAGAGGGUGAGAUCCAGAUCGACGGCGUUUCGUGGGAUAGCAUCACCUUGCAGCAGUGGCGGAAAGCGUUUGGAGUAAUCCCCCAAAAGGUCUUUAUCUUUAGCGGAACCUUCCGAAAGAAUCUCGAUCCUUAUGAACAGUGGUCAGAUCAAGAGAUUUGGAAAGUCGCGGACGAGGUUGGCCUUCGGAGUGUAAUCGAGCAGUUUCCGGGAAAACUCGACUUUGUCCUUGUAGAUGGGGGAUGCGUCCUGUCGCAUGGGCACAAGCAGCUCAUGUGCCUGGCGCGAUCCGUCCUCUCUAAAGCGAAAAUUCUUCUCUUGGAUGAACCUUCGGCCCAUCUGGACCCGGUAACGUAUCAGAUCAUCAGAAGGACACUUAAGCAGGCGUUUGCCGACUGCACGGUGAUUCUCUGUGAGCAUCGUAUCGAGGCCAUGCUCGAAUGCCAGCAAUUUCUUGUCAUCGAAGAGAAUAAGGUCCGCCAGUACGACUCCAUCCAGAAGCUGCUUAAUGAGAGAUCAUUGUUCCGGCAGGCGAUUUCACCAUCCGAUAGGGUGAAACUUUUUCCACACAGAAAUUCGUCGAAGUGCAAGUCCAAACCGCAGAUCGCGGCCUUGAAAGAAGAGACUGAAGAAGAAGUUCAAGACACGCGUCUUUAA(配列番号1)
【0107】
例示的なコドン最適化された蛍ルシフェラーゼ(FFL)のmRNA
構築物の設計:
X1-配列番号2-Y1
AUGGAAGAUGCCAAAAACAUUAAGAAGGGCCCAGCGCCAUUCUACCCACUCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCUGCACAAAGCCAUGAAGCGCUACGCCCUGGUGCCCGGCACCAUCGCCUUUACCGACGCACAUAUCGAGGUGGACAUUACCUACGCCGAGUACUUCGAGAUGAGCGUUCGGCUGGCAGAAGCUAUGAAGCGCUAUGGGCUGAAUACAAACCAUCGGAUCGUGGUGUGCAGCGAGAAUAGCUUGCAGUUCUUCAUGCCCGUGUUGGGUGCCCUGUUCAUCGGUGUGGCUGUGGCCCCAGCUAACGACAUCUACAACGAGCGCGAGCUGCUGAACAGCAUGGGCAUCAGCCAGCCCACCGUCGUAUUCGUGAGCAAGAAAGGGCUGCAAAAGAUCCUCAACGUGCAAAAGAAGCUACCGAUCAUACAAAAGAUCAUCAUCAUGGAUAGCAAGACCGACUACCAGGGCUUCCAAAGCAUGUACACCUUCGUGACUUCCCAUUUGCCACCCGGCUUCAACGAGUACGACUUCGUGCCCGAGAGCUUCGACCGGGACAAAACCAUCGCCCUGAUCAUGAACAGUAGUGGCAGUACCGGAUUGCCCAAGGGCGUAGCCCUACCGCACCGCACCGCUUGUGUCCGAUUCAGUCAUGCCCGCGACCCCAUCUUCGGCAACCAGAUCAUCCCCGACACCGCUAUCCUCAGCGUGGUGCCAUUUCACCACGGCUUCGGCAUGUUCACCACGCUGGGCUACUUGAUCUGCGGCUUUCGGGUCGUGCUCAUGUACCGCUUCGAGGAGGAGCUAUUCUUGCGCAGCUUGCAAGACUAUAAGAUUCAAUCUGCCCUGCUGGUGCCCACACUAUUUAGCUUCUUCGCUAAGAGCACUCUCAUCGACAAGUACGACCUAAGCAACUUGCACGAGAUCGCCAGCGGCGGGGCGCCGCUCAGCAAGGAGGUAGGUGAGGCCGUGGCCAAACGCUUCCACCUACCAGGCAUCCGCCAGGGCUACGGCCUGACAGAAACAACCAGCGCCAUUCUGAUCACCCCCGAAGGGGACGACAAGCCUGGCGCAGUAGGCAAGGUGGUGCCCUUCUUCGAGGCUAAGGUGGUGGACUUGGACACCGGUAAGACACUGGGUGUGAACCAGCGCGGCGAGCUGUGCGUCCGUGGCCCCAUGAUCAUGAGCGGCUACGUUAACAACCCCGAGGCUACAAACGCUCUCAUCGACAAGGACGGCUGGCUGCACAGCGGCGACAUCGCCUACUGGGACGAGGACGAGCACUUCUUCAUCGUGGACCGGCUGAAGAGCCUGAUCAAAUACAAGGGCUACCAGGUAGCCCCAGCCGAACUGGAGAGCAUCCUGCUGCAACACCCCAACAUCUUCGACGCCGGGGUCGCCGGCCUGCCCGACGACGAUGCCGGCGAGCUGCCCGCCGCAGUCGUCGUGCUGGAACACGGUAAAACCAUGACCGAGAAGGAGAUCGUGGACUAUGUGGCCAGCCAGGUUACAACCGCCAAGAAGCUGCGCGGUGGUGUUGUGUUCGUGGACGAGGUGCCUAAAGGACUGACCGGCAAGUUGGACGCCCGCAAGAUCCGCGAGAUUCUCAUUAAGGCCAAGAAGGGCGGCAAGAUCGCCGUGUAA(配列番号2)
【0108】
例示的なコドン最適化されたヒトアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)のmRNA
構築物の設計:
X1-配列番号3-Y2
AUGAGCAGCAAGGGCAGCGUGGUGCUGGCCUACAGCGGCGGCCUGGACACCAGCUGCAUCCUGGUGUGGCUGAAGGAGCAGGGCUACGACGUGAUCGCCUACCUGGCCAACAUCGGCCAGAAGGAGGACUUCGAGGAGGCCCGCAAGAAGGCCCUGAAGCUGGGCGCCAAGAAGGUGUUCAUCGAGGACGUGAGCCGCGAGUUCGUGGAGGAGUUCAUCUGGCCCGCCAUCCAGAGCAGCGCCCUGUACGAGGACCGCUACCUGCUGGGCACCAGCCUGGCCCGCCCCUGCAUCGCCCGCAAGCAGGUGGAGAUCGCCCAGCGCGAGGGCGCCAAGUACGUGAGCCACGGCGCCACCGGCAAGGGCAACGACCAGGUGCGCUUCGAGCUGAGCUGCUACAGCCUGGCCCCCCAGAUCAAGGUGAUCGCCCCCUGGCGCAUGCCCGAGUUCUACAACCGCUUCAAGGGCCGCAACGACCUGAUGGAGUACGCCAAGCAGCACGGCAUCCCCAUCCCCGUGACCCCCAAGAACCCCUGGAGCAUGGACGAGAACCUGAUGCACAUCAGCUACGAGGCCGGCAUCCUGGAGAACCCCAAGAACCAGGCCCCCCCCGGCCUGUACACCAAGACCCAGGACCCCGCCAAGGCCCCCAACACCCCCGACAUCCUGGAGAUCGAGUUCAAGAAGGGCGUGCCCGUGAAGGUGACCAACGUGAAGGACGGCACCACCCACCAGACCAGCCUGGAGCUGUUCAUGUACCUGAACGAGGUGGCCGGCAAGCACGGCGUGGGCCGCAUCGACAUCGUGGAGAACCGCUUCAUCGGCAUGAAGAGCCGCGGCAUCUACGAGACCCCCGCCGGCACCAUCCUGUACCACGCCCACCUGGACAUCGAGGCCUUCACCAUGGACCGCGAGGUGCGCAAGAUCAAGCAGGGCCUGGGCCUGAAGUUCGCCGAGCUGGUGUACACCGGCUUCUGGCACAGCCCCGAGUGCGAGUUCGUGCGCCACUGCAUCGCCAAGAGCCAGGAGCGCGUGGAGGGCAAGGUGCAGGUGAGCGUGCUGAAGGGCCAGGUGUACAUCCUGGGCCGCGAGAGCCCCCUGAGCCUGUACAACGAGGAGCUGGUGAGCAUGAACGUGCAGGGCGACUACGAGCCCACCGACGCCACCGGCUUCAUCAACAUCAACAGCCUGCGCCUGAAGGAGUACCACCGCCUGCAGAGCAAGGUGACCGCCAAGUGA(配列番号3)
【0109】
5’及び3’のUTR配列
X1=
GGACAGAUCGCCUGGAGACGCCAUCCACGCUGUUUUGACCUCCAUAGAAGACACCGGGACCGAUCCAGCCUCCGCGGCCGGGAACGGUGCAUUGGAACGCGGAUUCCCCGUGCCAAGAGUGACUCACCGUCCUUGACACG(配列番号4)
Y1=
CGGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUGGCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCCUAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAGCU(配列番号5)
Y2=
GGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUGGCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCCUAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAAGCU(配列番号6)
【0110】
mRNAの合成
以下の各実施例において、mRNAの合成はRNAseが完全に無い状態で行われた。すべての試験管、バイアル、ピペットチップ、ピペット、緩衝液等は別段の明示が無い限り、ヌクレアーゼ不含有であることが必要であった。
【0111】
以下の実施例において、別段の表示がない限り、mRNAは直線型DNA鋳型からin
vitro転写を介して合成された。所望されるmRNA前駆体(IVT)構築物を作製するために、約8mgの直線型DNA、rNTP(7.25mM)、DTT(10mM)、T7 RNAポリメラーゼ、RNAse阻害剤、ピロホスファターゼ、及び反応緩衝液(10xで、800mM Hepes(pH 8.0)、20mMのスペルミジン、250mMのMgCl2、pH7.7)の混合物を、RNaseが含まれていない水を用いて調製し、最終体積を180mLとした。反応混合物を20分~60分の間の時間幅で、37℃でインキュベートする。終了した時点で、当該混合物をDNaseIでさらに15分間処理し、適切にクエンチする。
【0112】
5’キャップ及び3’テールの付加
上記のIVTステップからの精製mRNA産物(及び場合によって同様に最初のTFFろ過物)を10分間、65℃で変性させた。別個に、ある分量のGTP(1.0mM)、S-アデノシルメチオニン、RNAse阻害剤、2’-O-メチルトランスフェラーゼ、及びグアニリルトランスフェラーゼを反応緩衝液(10xで、500mMのTris-HCl(pH 8.0)、60mMのKCl、12.5mMのMgCl2)とともに混合し、最終濃度は1.6Lとする。変性が行われた時点で、mRNAを氷上で冷却させ、次いで当該反応混合物へ加えた。混合溶液を37℃で25~90分の間の時間幅でインキュベートした。完了後、ATP(2.0mM)、ポリAポリメラーゼ、及びテール付加反応緩衝液(10xで、500mMのTris-HCl(pH8.0)、2.5MのNaCl、100mMのMgCl2)のアリコートを添加し、総反応混合物をさらに37℃、20~45分の間の時間幅でインキュベートした。完了後、最終反応混合物をクエンチし、適切に精製した。
【0113】
mRNAの精製
mRNAの精製
メッセンジャーRNAは様々な方法を用いて沈殿させることができる。たとえば塩化リチウム、塩化カリウム、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、酢酸アンモニウム、及び他の塩の使用により、反応混合物からmRNAが効率的に沈殿される。
【0114】
タンジェンシャルフローろ過
以下の実施例において、他で別段の表記が無い限り、タンジェンシャルフローろ過(TFF)系は、ろ過膜及び蠕動ポンプ(Spectrum system社)から構成され、膜を通過する液体のタンジェンシャル循環は約130mL/分の供給速度であり、透過に対する流速は30mL/分であった。使用されたTFF膜は、MidiKros 500kDa mPES 115cm
2(Spectrum Labs社)であった。使用前に、フィルターカートリッジはヌクレアーゼが含まれていない水を用いて洗浄され、さらに0.2NのNaOHを用いて清浄化された。最終的に当該系は、透過物及び残留物のpHが約pH6に達するまでヌクレアーゼが含まれていない水を用いて清浄化された。TFFを介したmRNAの単離は
図1に記載されるように行うことができる。
【0115】
蛍ルシフェラーゼmRNAの精製
mRNA精製の代表的な例として、1グラムのバッチの蛍ルシフェラーゼ(FFL)mRNAを、in vitro法を用いて転写し、キャップ及びポリAテールが無い上記の中間構築物を製造した。この反応は、総量約180mLを維持し、完了した時点でDNAseI(約9.0KU)を添加することによりクエンチされた。得られた溶液は4Mのチオシアン酸グアニジニウム、0.5%のラウリルサルコシルナトリウム、及び25mMのクエン酸ナトリウムの均一な溶液(1500mL)を用いて処理され、総量は1.68Lとした。得られた混合物は約5分間、大気温度中に置かれ、次いで1.1Lの無水エタノールでさらに処理された。mRNAはゆっくりと沈殿し、懸濁液は約5分間、大気温度に置かれた。完了した時点で、タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて全ての不均一懸濁液をろ過膜にポンプで通した。
【0116】
本実施例において、2600cm2の表面積を有する修飾ポリエーテルスルホン(mPES)中空糸膜が用いられた。得られた不均一混合物(沈殿後)は、小分けされ、750mL/分の流速でおよそ8分間、フィルターシステムにポンプで通された。完了した時点で、得られた捕捉沈殿物を、グアニジニウム緩衝液/エタノール混合緩衝液、次いで80%エタノール(500mL、750mL/分)を用いてすすぎ、これを複数回(5回超)繰り返した。洗浄が完了した時点で、膜に分散されたmRNA固体物を、RNAseが含まれていない水(250mL)を用いて処理し、確実に溶解させるために5~10分かけて再循環させた。この工程は、回収されるmRNAが無くなるまで繰り返された。完了した時点で、1mMのクエン酸ナトリウム(pH6.4)とともに100kDaのMWCO膜を用いて得られたmRNA溶液をさらに透析し、すべての残留エタノールを除去し、適切な保管用溶液中に最終mRNA産物を得た。最終濃度は、260nm(λmax)での吸光度により測定された。メッセンジャーRNAの純度はUV吸光度(260/280の比)ならびにタンパク質ゲル(銀染色、SYPRO染色、クマシン等)により測定された。メッセンジャーRNAの完全性はゲル電気泳動ならびにタンパク質産物のin vitro/in vivo解析により測定された。
【0117】
ASS1 mRNAの精製
mRNA精製の第二の代表例として、1グラムのバッチのASS1 mRNAをin vitro法を用いて転写し、キャップ及びポリAテールが無い上記の中間構築物を製造した。この反応は、総量約180mLを維持し、完了した時点でDNAseI(約9.0KU)を添加することによりクエンチされた。得られた溶液を4Mのチオシアン酸グアニジニウム、0.5%のラウリルサルコシルナトリウム、及び25mMのクエン酸ナトリウムの均一な溶液(1500mL)を用いて処理し、総量は1.68Lとした。得られた混合物は約5分間、大気温度中に置かれ、次いで1.1Lの無水エタノールでさらに処理された。メッセンジャーRNAはゆっくりと沈殿し、懸濁液は約5分間、大気温度に置かれた。完了した時点で、タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて全ての不均一懸濁液をろ過膜にポンプで通し、上述のように単離した。
【0118】
CFTR mRNAの精製
mRNA精製の第三の代表例として、1.5グラムのバッチの修飾CFTR mRNAをin vitro法を用いて転写し、キャップ及びポリAテールが無い上記の中間構築物を製造した。この反応は、総量約270mLを維持し、完了した時点でDNAseI(約13.5KU)を添加することによりクエンチされた。得られた溶液を4Mのチオシアン酸グアニジニウム、0.5%のラウリルサルコシルナトリウム、及び25mMのクエン酸ナトリウムの均一な溶液(1500mL)を用いて処理し、総量は1.77Lとした。得られた混合物は約5分間、大気温度中に置かれ、次いで1.1Lの無水エタノールでさらに処理された。mRNAはゆっくりと沈殿し、懸濁液は約5分間、大気温度に置かれた。完了した時点で、タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて全ての不均一懸濁液をろ過膜にポンプで通し、上述のように単離した。
【0119】
実施例2.精製されたmRNAの解析
精製されたmRNA中の酵素の存在に関する検証
SYPRO染色ゲル
標準的なSYPRO染色タンパク質ゲルを行い、精製の前後に存在するすべての残留試薬酵素の有無を測定した。ゲルは35分間、200Vで泳動された。
【0120】
銀染色ゲル
すべてのmRNAバッチ及び分画の銀染色は、SilverQuest(登録商標)(Life Technologies社、カタログ番号LC6070)を用いて、メーカーのプロトコールを使用し行われた。簡潔に述べると、試料を負荷し(RNAseの処理有り、またはなし)、負荷された酵素対照のレーンと比較しながらモニターされた。ゲルは35分間、200Vで泳動された。露出時間は8分間、割り当てられた。
【0121】
アガロースゲル電気泳動解析を用いたmRNAの完全性の評価
別段の表記が無い限り、mRNAのサイズ及び完全性は、ゲル電気泳動を用いて評価された。自分達で注ぎ作製した1.0%のアガロースゲル、またはInvitrogen社のE-Gelプレキャスト1.2%アガロースゲルのいずれかを用いた。メッセンジャーRNAはウェル当たり1.0~1.5μgの量で負荷した。完了した時点で、mRNAのバンドはエチジウムブロミドを用いて可視化させた。
【0122】
In vitroでのmRNA完全性の解析
別段の記載がない限り、蛍ルシフェラーゼ(FFL)、アルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)のmRNA、及びCFTRのmRNAのin vitroトランスフェクションは、HEK293T細胞を用いて行われた。1マイクログラムの各mRNA構築物のトランスフェクションは、リポフェクタミンを用いて別々のウェル中で行われた。細胞は、選択時点(たとえば4時間、8時間等)で回収され、各タンパク質産物が解析された。FFL mRNAに対しては、生物発光アッセイ法を用いて、細胞溶解物がルシフェラーゼ産生に関し解析された。ASS1 mRNAに対しては、ELISAアッセイ法を用いて、細胞溶解物がASS1産生に関し解析された。CFTR mRNAに対しては、ウェスタンブロット法を用いて、細胞溶解物がCFTR産生に関し解析された。
【0123】
ルシフェラーゼアッセイ
Promega社のLuciferase Assay System(商品番号E1500)を用いて生物発光アッセイ法が行われた。ルシフェラーゼアッセイ試薬は、10mLのルシフェラーゼアッセイ緩衝液をルシフェラーゼアッセイ基質に加え、ボルテックスにより混合することにより調製された。20μLの均一な試料を96ウェルプレート上に負荷し、次いで20μLの各試料に対するプレート対照を負荷した。それとは別に、120μLのルシフェラーゼアッセイ試薬(上述のように調製)を96ウェルの平底プレートの各ウェルに負荷した。Molecular Device社のFlex Station装置を用いて適切なチャンバーに各プレートを挿入し、発光量を相対発光量(RLU)にて測定した。
【0124】
ASS1 ELISAアッセイ
続いて標準的なELISA法を、捕捉抗体としてマウス抗ASS1 2D1-2E12
IgGを、二次(検出)抗体としてウサギ抗ASS1 #3285 IgG(Shire Human Genetic Therapies社)を用いて行った。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ウサギIgGは、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液の活性化のために用いた。20分後、反応は2NのH2SO4を用いてクエンチされた。検出はMolecular Device社のSpectraMax装置上で吸光(450nm)によりモニターされた。未処理のマウス血清及び器官、ならびにヒトASS1タンパク質を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として用いた。
【0125】
CFTRのウェスタンブロット解析
ウェスタンブロットは免疫沈降法(DynabeadsG)を用いて得られたタンパク質試料上で行われた。概略すると、細胞及び組織のホモジネートを処理し、抗ヒトCFTR抗体(R&D Systems社、MAB25031)に前もって結合されたDynabead Gを用いて処理した。ヒトCFTRタンパク質の検出はAb570を用いて行われた。
【0126】
実施例3.精製結果
本実施例は、沈殿後にタンジェンシャルフローろ過を用いることにより、酵素試薬ならびにショートマーが除去され、蛍ルシフェラーゼ(FFL)mRNA、アルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNA、及び嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)mRNAの精製が成功したことを示す。多くの典型的なカオトロピック条件の使用に成功し、上記に列記されるmRNAを沈殿させた。
【0127】
この成功を示すために、修飾CFTR mRNA IVT反応混合物の大規模産物(約1グラム)を、4Mのグアニジニウム緩衝液(上述)に供した。得られた混合物を、次いで、無水エタノールで処理し、室温で5分間インキュベートした。沈殿したmRNAの単離は上述のTFFにより得られた。
図2は銀染色されたタンパク質ゲルを表し、得られたmRNAは、上述の条件を用いたTFF後に単離されたことを示す。完了時点で検出可能な酵素(T7 ポリメラーゼ、DNAseI、ピロホスファターゼ、RNAse阻害剤)は存在しなかった。レーン1~3は、溶離1(E1)、溶離2(E2)、及び溶離3(E3)後の修飾CFTRであった。レーン4~7はIVT反応中に存在する対照酵素であった。
図3は銀染色タンパク質ゲルを表しており、より大きな規模(1.5グラムバッチ)の沈殿及びろ過工程から得られた純粋なmRNAに残留酵素が無いことを示す。レーン1~6は溶離1~6後のmRNAであった。レーン7~10はIVT反応中に存在する対照酵素(T7 ポリメラーゼ、DNAseI、RNAse阻害剤及びピロホスファターゼ)であった。
図4は、修飾CFTR mRNAがかかる精製後に全く損なわれていないことを示す。
図4は沈殿及びろ過による精製後の修飾CFTR mRNAのアガロース(1.0%)ゲル電気泳動の結果を示すものである。レーン1はRiboRuler HRラダーであった。レーン2~7は沈殿後のろ過により精製された修飾CFTR mRNAであった。
【0128】
この工程は複数の異なるmRNA構築物に広く適用可能である。たとえば第二のmRNA構築物を合成し、本方法を用いて精製した。この例において、アルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNAが作製され、上述の方法を用いて沈殿された。固形沈殿物はTFF系に負荷され、記載される工程に従い単離された。
図5は得られたASS1 mRNAの銀染色解析を表しており、残留酵素(T7 ポリメラーゼ、DNAseI、RNAse阻害剤、ピロホスファターゼ)が存在しないことを示す。レーン1~5は溶離1~5後のmRNAであった。レーン6~9はIVT反応中に存在する対照酵素であった。mRNA試料が負荷される前にRNAseAで前処理されていたので、レーン10は対照としてRNaseAを含んでいた。
図5に示されるように、銀染色発色に広範にさらされた後、酵素は存在しなかったことが示された。これは、
図6に示されるように、残留酵素に対するSYPRO染色を用いてさらに確認された。本方法を用いることにより、本工程を用いて単離されたASS1 mRNAの純度を再度示すことができる。レーン1~5は溶離1~5後のmRNAであった。レーン6~9はIVT反応中に存在した対照酵素であった。これに加え、RNAゲル電気泳動は、ASS1 mRNAの完全性が維持されており、この工程後も全長ASS1 mRNAは完全に損なわれていないことを示した(
図7)。
図7において、レーン1はRiboRuler HRラダーを含み、レーン2~6は溶離1~5後のASS1 mRNAを含んだ。
【0129】
本精製技術が複数の異なるmRNA構築物に広く適用可能であることをさらに示すために、FFL mRNAを合成し、本方法を用いて精製した。mRNAは4Mのグアニジニウム緩衝液系を用いて沈殿され、ろ過された。
図8は、得られた単離FFL mRNAの銀染色解析を表しており、残留酵素は存在しなかったことを示している。レーン1~4は、一度の沈殿(XL1)または二度の沈殿(XL2)により精製されたFFL mRNAであり、レーン2~4は第二の沈殿回収からの別の溶離物であった。レーン6~9はIVT反応中に存在する対照酵素であった。
図8に示されるように、銀染色発色の広範な露出の後でも酵素は存在しなかった。さらに、望まれない残留酵素すべての除去は、一度の沈殿で十分と思われることが理解できるであろう。これは
図9に示されるように、残留酵素に対するSYPRO染色によりさらに確認された。本方法を用いることにより、本工程を用いて単離されたFFL mRNAの純度を再度示すことができる。
図9において、レーン1~4は一度の沈殿(XL1)または二度の沈殿(XL2)により精製されたFFL mRNAであり、レーン2~4は第二の沈殿回収からの別の溶離物であった。レーン6~9はIVT反応中に存在した対照酵素であった。これに加え、RNAゲル電気泳動は、FFL mRNAの完全性が維持されており、この工程後も全長FFL mRNAは完全に損なわれていないことを示した(
図10)。さらに、mRNAは複数回の再沈殿後であっても差が無い。
図10において、レーン1はRiboRuler HRラダーであり、レーン2~5は一度の沈殿(XL1)または二度の沈殿(XL2)により精製されたFFL
mRNAであった。
【0130】
この単離mRNAをさらにキャップ付加及びテール付加された最終産物とした時点で、TFF法をさらに用いて最終標的mRNA精製した。
図11は、沈殿後にタンジェンシャルフローろ過を用いて捕捉及び溶離することにより、純粋な最終mRNA産物を得ることに成功したことを示す。
図11において、レーン1~3は一度の沈殿で精製されたキャップ/テール反応からのASS1 mRNAであった(E1~3=溶離1~3)。レーン4~6は両反応ステップ中に存在する主要な対照酵素であった。レーン7は、mRNA試料が負荷前にRNAseIを用いて前処理されていたので、RNaseI対照を含んだ。これに加え、RNAゲル電気泳動より、FFL mRNAの完全性が、この工程の後でも全長FFL mRNAが全く損なわれていないことが示された(
図12)。
図12において、レーン1~3はキャップ付加及びテール付加されたASS1 mRNAであった。
【0131】
かかる特徴解析により純度及びmRNAのサイズ/完全性に関する情報が得られる一方で、mRNAの質の真の評価基準は、所望されるタンパク質を産生するその能力のうちにある。ゆえに、単離されたFFL mRNA構築物の各々の比較(TFFとスピンカラム)が行われた。以下に列記される3つの構築物の各々をHEK293T細胞へとトランスフェクトし、対応するFFLタンパク質の産生を、ルシフェリンに曝露された際のFFL発光の形式でのFFLタンパク質活性により評価した(上記参照)。細胞はトランスフェクト後24時間で回収された。
FFL構築物:
1.外部供給業者から購入したFFL mRNA
2.市販キットで精製したFFL mRNA
3.沈殿-TFF法で精製したFFL mRNA
【0132】
各々から産生されたFFLタンパク質の発光量の比較を
図13に表す。TFF-精製されたFFL mRNAの完全性は、記載される条件下の沈殿及びタンジェンシャルフローろ過の工程を通じて維持されていた。
【0133】
さらに、ヒトCFTRタンパク質検出の成功は、上記の工程を用いて単離されたhCFTR mRNAのトランスフェクションから達成された。
図14において、市販キットまたは上記のTFF-ベースの沈殿法のいずれかにより精製されたhCFTR mRNAのトランスフェクション後、ヒトCFTRタンパク質の産生が成功したことを示す。適切に輸送された全長CFTRタンパク質の指標である、CFTRタンパク質に対するこの「C-バンド」の可視化により、かかる条件により単離されたmRNAの完全性及び活性状態が十分に支持される。この工程はさらに容易に拡張可能である。たとえば別のmRNA構築物を合成し、本方法を用いて5グラムの規模で精製した。この例において、アルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNAが産生され、上述の方法を用いて沈殿された。固形沈殿物をTFF系上に負荷し、記載される工程に従い単離した。
【0134】
製造されたmRNA薬剤物質の完全性は2つの別々の方法を用いて示された。
図15は提示された方法に従い精製及びろ過されたアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNAのin vitro転写(IVT)試料からの典型的なmRNAの長さを示す。mRNAの長さはアガロースゲル-オン-チップ-電気泳動(agarose gel-on-a-chip electrophoresis)により示された。IVT前駆物質ならびにキャップ付加及びテール付加最終構築物の両方に対し、損なわれていない、全長のmRNAがゲル電気泳動を用いて確認された(
図16)。大規模(5グラム)沈殿後のASS1 mRNAに関し、充分な完全性が保持されていた。
【0135】
従前に示されたように、
図17は、沈殿後のタンジェンシャルフローろ過を用いた捕捉及び溶離により、純粋な最終mRNA産物の作製に成功したことを示す。レーン1は一度の沈殿で精製されたキャップ/テール反応からのASS1 mRNAであった。レーン2~8は両反応ステップ中に存在する主要な対照酵素であった。レーン9は、mRNA試料が負荷前にRNAseIを用いて前処理されていたので、RNaseI対照を含んだ。かかる銀染色法により、残留酵素が存在しないことが示される。
【0136】
かかる特徴解析により純度及びmRNAのサイズ/完全性に関する情報が得られる一方で、mRNAの質の真の評価基準は、所望されるタンパク質を産生するその能力のうちにある。ゆえに、単離されたASS1 mRNA構築物の比較(TFFとスピンカラム)が行われた(
図18)。以下に列記される構築物の各々をHEK293T細胞へとトランスフェクトし、対応するASS1タンパク質の産生を、ELISA法により評価した。細胞はトランスフェクト後、約18時間で回収された。
【0137】
拡張性のさらなる証拠は、本方法を用いた10グラム規模でのCFTR mRNAの合成及び精製を用いて得られた。この例において、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)mRNAが産生され、上述の方法を用いて沈殿された。固形沈殿物をTFF系上に負荷し、記載される工程に従い単離した。製造されたmRNA薬剤物質の完全性はアガロースゲル電気泳動を用いて示された。損なわれていない全長mRNAが、IVT前駆物質ならびにキャップ付加及びテール付加最終構築物の両方に対して確認された(
図19)。大規模(10G)沈殿後のCFTR mRNAに関し、充分な完全性が保持されていた。
【0138】
10グラム規模で作製された産物の純度を、
図20に示される銀染色により再度示した。レーン1は一度の沈殿から精製されたキャップ/テール反応からのCFTR mRNAであった。レーン2~8は、両反応ステップ中に存在する主要な対照酵素であった。レーン9は、mRNA試料が負荷前にRNAseIを用いて前処理されていたので、RNaseI対照を含んだ。かかる銀染色法により、残留酵素が存在しないことが示される。
【0139】
かかる特徴解析により純度及びmRNAのサイズ/完全性に関する情報が得られたが、mRNAの質の真の評価基準はさらに、所望されるタンパク質を産生するその能力のうちにある。ゆえに、様々な量のCFTR mRNAをHEK293T細胞へとトランスフェクトし、対応するCFTRタンパク質の産生を、ウェスタンブロット法により評価した(
図21)。細胞はトランスフェクト後、約18時間で回収された。
【0140】
他の実施形態において、拡張性のさらなる証拠が、本方法を用いて25グラムの規模で合成及び精製されたASS1 mRNAにより得られた。この例において、アルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)mRNAが作製され、上述の方法を用いて沈殿された。固形沈殿物をTFF系上に負荷し、記載される工程に従い単離した。製造されたmRNA薬剤物質の完全性はアガロースゲル電気泳動を用いて示された。損なわれていない全長mRNAが、大規模(25グラム)沈殿後のASS1 mRNAに対し確認された(
図22)。
【0141】
均等及び範囲
当分野の当業者であれば、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識する、または日常的な実験の範囲を超えずに確認することができるであろう。本発明の範囲は上記の詳細な説明に限定されず、以下の請求項において記載される通りである。
【配列表】