(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】動作玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 13/16 20060101AFI20240626BHJP
A63H 3/31 20060101ALI20240626BHJP
A63H 5/00 20060101ALI20240626BHJP
A63H 29/04 20060101ALI20240626BHJP
A63H 31/08 20060101ALI20240626BHJP
A63H 33/42 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A63H13/16
A63H3/31
A63H5/00 J
A63H29/04 B
A63H31/08 B
A63H33/42 B
(21)【出願番号】P 2023112249
(22)【出願日】2023-07-07
【審査請求日】2024-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秋男
【審査官】宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/006673(WO,A1)
【文献】特開2008-029416(JP,A)
【文献】登録実用新案第3165639(JP,U)
【文献】特開平10-113477(JP,A)
【文献】特開平02-198575(JP,A)
【文献】特開2003-275474(JP,A)
【文献】実公平06-032159(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
囲繞体と、前記囲繞体に対する直線往復動によって前記囲繞体に対して出没する動作体と、前記囲繞体の下端部に設けられ前記囲繞体に対して上下動可能なベースと、を備え、前記ベースが前記囲繞体に対して上動したときに前記動作体が前記囲繞体から突出し、前記ベースが前記囲繞体に対して下動したときに前記動作体が前記囲繞体に没するように構成された、動作玩具であって。
前記ベースは、前記動作玩具を接地した際に接地面に当接して前記囲繞体の重さによって前記囲繞体に対して上動し、前記囲繞体を介して前記動作玩具を持ち上げた際に、前記囲繞体に対して下動するように構成され、
前記囲繞体の内部には、前記ベースの前記囲繞体に対する相対移動を前記動作体の前記囲繞体に対する移動に変換する運動変換機構が設けられ、
前記運動変換機構は、前記囲繞体の外側において前記ベースの前記囲繞体に対する移動距離よりも大きな距離となるように、前記動作体を前記囲繞体に対して移動させる、
ことを特徴とする動作玩具。
【請求項2】
空気室を備え、前記囲繞体と前記動作体との相対移動によって、小孔からの前記空気室への空気の入出が可能な状態で前記空気室の体積変化を生じさせることで前記動作体の速力を落とす徐行機構を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の動作玩具。
【請求項3】
前記徐行機構は、前記動作体の内部に設けられた前記空気室と、前記囲繞体に設けられたピストンとを備える、ことを特徴とする請求項2に記載の動作玩具。
【請求項4】
前記空気室又は前記ピストンの一方に形成された空気入出口には、空気の流通によって音出しをする鳴き笛が設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載の動作玩具。
【請求項5】
前記運動変換機構は、第1ラックと第1歯車とから構成され前記ベースの前記囲繞体に対する上下動を前記第1歯車の回転運動に変換する第1ラック・ピニオン機構と、第2ラックと前記第1歯車よりも大径の第2歯車とから構成され前記第1歯車の回転動力によって回転される前記第2歯車の回転運動を前記動作体の直線往復動に変換する第2ラック・ピニオン機構と、を備える、ことを特徴とする請求項2に記載の動作玩具。
【請求項6】
前記第1歯車は、前記囲繞体と一体的な部分に設けられ、
前記第1ラックは、前記ベースに対して上方の第1位置と下方の第2位置との間で移動可能に構成され、
前記ベースと前記第1ラックとは、前記第1ラックを前記第1位置に向けて付勢するコイルばねによって係合され、前記ベースが前記囲繞体に対して相対的に上動するときには、前記第1ラックは、前記コイルばねの付勢力によって、前記ベースと一体的に前記囲繞体に対して上動するように構成され、
前記第2歯車は、前記第1歯車と同軸に設けられ、
前記第2ラックは、前記動作体と一体的な部分に設けられている、ことを特徴とする請求項5に記載の動作玩具。
【請求項7】
前記ベース及び前記
囲繞体は、前記ベースを底壁とし、前記囲繞体を周壁とする飲料カップの形をしており、前記動作体は動物の上半身の形をした人形となっており、前記動作体は前記
囲繞体の上部開口から出没するように構成されている、ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の動作玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、玩具に設けられた動作体の動作に人手を必要とする動作玩具として、例えば、出入り人形が知られている(特許文献1参照)。
この動作玩具は、上面開口のケース(囲繞体)と、ケースの底を摺動自由に貫通して配備された突き棒と、ケースの開口側にて突き棒の先端に固定されケースに出没可能に収容される人形(動作体)と、人形又は突き棒の先端とケースの開口縁にまたがって取り付けられた繋ぎ布と、で構成されている。
そして、この動作玩具では、人手により突き棒を押し引きすることによって、人形をケースから突出させたり、ケースに没入させたりして遊ぶようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の動作玩具では、突き棒に人形が固定されているため、突き棒と人形が一体的に動作し、突き棒及び人形の互いの動作量が同じとなっている。つまり、この動作玩具によれば、突き棒をケースに押し込んだ分だけ人形がケースから突出し、突き棒をケースから引いた分だけ人形がケースに没入する。
そのため、人形を人手で操作している感が強く、人形の動作に意外性を生じさせるものではなかった。
このような問題は、突き棒に人形に代えて他の動作体を設けた場合でも同様に生じる。
本発明は、斯かる問題に鑑みなされたもので、動作体の動作に意外性がある動作玩具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
囲繞体と、前記囲繞体に対する直線往復動によって前記囲繞体に対して出没する動作体と、前記囲繞体の下端部に設けられ前記囲繞体に対して上下動可能なベースと、を備え、前記ベースが前記囲繞体に対して上動したときに前記動作体が前記囲繞体から突出し、前記ベースが前記囲繞体に対して下動したときに前記動作体が前記囲繞体に没するように構成された、動作玩具であって。
前記ベースは、前記動作玩具を接地した際に接地面に当接して前記囲繞体の重さによって前記囲繞体に対して上動し、前記囲繞体を介して前記動作玩具を持ち上げた際に、前記囲繞体に対して下動するように構成され、
前記囲繞体の内部には、前記ベースの前記囲繞体に対する相対移動を前記動作体の前記囲繞体に対する移動に変換する運動変換機構が設けられ、
前記運動変換機構は、前記囲繞体の外側において前記ベースの前記囲繞体に対する移動距離よりも大きな距離となるように、前記動作体を前記囲繞体に対して移動させる、
ことを特徴とする動作玩具である。
【0006】
第2の手段は、第1の手段であって、空気室を備え、前記囲繞体と前記動作体との相対移動によって、小孔からの前記空気室への空気の入出が可能な状態で前記空気室の体積変化を生じさせることで前記動作体の速力を落とす徐行機構を備える、ことを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第2の手段であって、前記徐行機構は、前記動作体の内部に設けられた前記空気室と、前記囲繞体に設けられたピストンとを備える、ことを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第3の手段であって、前記空気室又は前記ピストンの一方に形成された空気入出口には、空気の流通によって音出しをする鳴き笛が設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第2の手段であって、前記運動変換機構は、第1ラックと第1歯車とから構成され前記ベースの前記囲繞体に対する上下動を前記第1歯車の回転運動に変換する第1ラック・ピニオン機構と、第2ラックと前記第1歯車よりも大径の第2歯車とから構成され前記第1歯車の回転動力によって回転される前記第2歯車の回転運動を前記動作体の直線往復動に変換する第2ラック・ピニオン機構と、を備える、ことを特徴とする。
【0010】
第6の手段は、第5の手段であって、
前記第1歯車は、前記囲繞体と一体的な部分に設けられ、
前記第1ラックは、前記ベースに対して上方の第1位置と下方の第2位置との間で移動可能に構成され、
前記ベースと前記第1ラックとは、前記第1ラックを前記第1位置に向けて付勢するコイルばねによって係合され、前記ベースが前記囲繞体に対して相対的に上動するときには、前記第1ラックは、前記コイルばねの付勢力によって、前記ベースと一体的に前記囲繞体に対して上動するように構成され、
前記第2歯車は、前記第1歯車と同軸に設けられ、
前記第2ラックは、前記動作体と一体的な部分に設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
第7の手段は、第1~第6のいずれかの手段であって、前記ベース及び前記囲繞体は、前記ベースを底壁とし、前記囲繞体を周壁とする飲料カップの形をしており、前記動作体は動物の上半身の形をした人形となっており、前記動作体は前記囲繞体の上部開口から出没するように構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の手段によれば、動作玩具を接地するときには、ベースが囲繞体に対して上動し、囲繞体から動作体が突出する。物を接地したり、持ち上げたりする行為は、人が日常的に行う行為であり、それによって、動作体が動作するので、乳幼児でも簡単に遊べる動作玩具が実現できる。
加えて、囲繞体の外側において、ベースの囲繞体に対する移動距離よりも大きな距離、動作体が囲繞体に対して移動するので、意外性があり、興趣性の高い動作玩具を実現できる。
【0013】
ベースの移動距離よりも動作体の移動距離を大きくすると、その分、ベースの移動速度よりも動作体の移動速度が速くなる。そのため、突出までの動作体の動きを目で追いにくくなる。
この点、第2の手段によれば、徐行機構によって、動作体がゆっくりと動作するので、動作体の動きを目で追い易くなる。また、動作玩具を接地したり持ち上げたりした後にも、動作体がしばらく動き続けることから、動作体が自ら動いているかの感覚を生じさせることができる。
【0014】
第3の手段によれば、動作体の内部に空気室を設けているので、囲繞体の内部に特別に空気室を作る必要がなくなる。
【0015】
第4の手段によれば、徐行機構の空気室への入出を利用して音出しを行うので、徐行機構及び音出し機構をそれぞれ別個に設ける場合に比べて、構造が簡素となる。
【0016】
第5の手段によれば、2つのラック・ピニオン機構を用い、ピニオンを同軸に設けているため、徐行機構をコンパクトに構成できる。
【0017】
第6の手段によれば、動作玩具の接地の際に、突出している動作体をコイルばねの付勢力に抗して人手で下げることができるとともに、コイルばねの付勢力によって動作体を元位置まで戻すことができる。その結果、付加的な遊びを楽しむことができる。
【0018】
第7の手段によれば、飲料カップに対して人形の上半身が出没するので、愛くるしく面白みのある動作玩具が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の動作玩具を持ち上げた状態を示した正面図である。
【
図2】実施形態の動作玩具を接地した状態を示した正面図である。
【
図3】動作玩具を持ち上げた状態を示した斜視図である。
【
図4】動作玩具を分解した状態を示す斜視図である。
【
図5】動作玩具の内部構造を分解して示した正面側から見た斜視図である。
【
図6】動作玩具の内部構造を分解して示した背面側から見た斜視図である。
【
図7】ピストンと鳴き笛との取付け構造を分解して示した斜視図である。
【
図9】動作玩具の動作状態を、前壁を取り除いて示した背面図である。
【
図10】動作玩具の動作状態を、後壁を取り除いて示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
《概略》
(概略構成)
図1は、実施形態の動作玩具100を持ち上げた状態を示した正面図、
図2は、動作玩具100を接地した状態を示した正面図である。
動作玩具100は、ベース10と、所定の高さを有しベース10の周囲を取り囲む円筒状の囲繞体20と、囲繞体20の天板21に対して突出位置(浮上位置)と没入位置(沈下位置)とを取る丸頭棒状の動作体30と、を備える。このうちベース10及び囲繞体20は、飲料カップを模した形状を呈している。また、動作体30は動物の上身体を模した人形となっている。
【0021】
そして、ベース10は、囲繞体20を基準にすれば、囲繞体20に対して上下動可能で、上昇位置では囲繞体20に没し、下降位置では囲繞体20の下方に突出するように構成されている。
【0022】
また、動作体30は、囲繞体20を基準にすれば、囲繞体20に対して上下動可能で、上昇位置では囲繞体20の上方に突出し、下降位置では囲繞体20の中に没入するように構成されている。
【0023】
(概略動作)
この動作玩具100によれば、テーブル上に動作玩具100を乗せた(接地させた)状態では、動作体30が囲繞体20の上に突出し、ベース10が囲繞体20の下部で隠れた状態にある(
図2)。この状態から、グリップ20aを摘まんで動作玩具100を持ち上げると、動作体30が囲繞体20の中に没入するとともに、囲繞体20の下からベース10が突出する(
図1)。さらに、動作体30の没入に伴って、音が発せられる。
【0024】
一方、持上げ状態にある動作玩具100をテーブル上に乗せると、ベース10が囲繞体20の下部で覆われて、囲繞体20の下端がテーブルに接地し、動作体30が囲繞体20の上に突出する(
図2)。また、動作体30の突出に伴って、音が発せられる。
【0025】
また、
図2の状態で、突出した動作体30を指で押し下げると、動作体30は囲繞体20の中に押し込まれ、その後、指を離すと、動作体30は元の突出位置まで戻る。
【0026】
《詳細構成》
(囲繞体20)
図3は、動作玩具100を持ち上げた状態を示した斜視図である。
囲繞体20は、飲料カップの周壁を模した形状を呈している。この囲繞体20にはグリップ20aが設けられている。また、囲繞体20の下端に近い部分には括れ部20bが形成されている。
【0027】
図4は、動作玩具100を分解した状態を示す斜視図である。
囲繞体20は、前壁20F及び後壁20Rから構成されている。この前壁20F及び後壁20Rは、略鏡面対称形に構成されている。そして、前壁20F及び後壁20Rは、後壁20Rの挿通孔20cを通した雄ねじ(図示せず)を前壁20Fの雌ねじ(図示せず)に螺合させることによって、互いに結合され、囲繞体20が構成されている。
【0028】
前壁20F及び後壁20Rの上端には、それぞれ半環状の内向フランジ21F、21Rが形成されている。半環状の内向フランジ21F、21Rは、前壁20F及び後壁20Rを互いに結合させた状態では、環状の内向フランジとなり、天板21を構成している。この環状の内向フランジは、飲料の表面に似せて作られていて、この環状の内向フランジによって画成される中央の孔21a(
図3)を通して動作体30が上下動する。
【0029】
なお、前壁20F及び後壁20Rには、ポケット20d(
図9及び
図10参照)が設けられ、このポケット20dには、湾曲した板状金属製の重り(図示せず)が挿入されている。この重りは、持上げ状態にある動作玩具100をテーブル上に乗せた際に、囲繞体20をベース10に対して下動させるためのものである。囲繞体20自体が十分重量がある場合には重りは不要である。
【0030】
図5は、動作玩具100の内部構造を分解して示した正面側から見た斜視図、
図6は、動作玩具100の内部構造を分解して示した背面側から見た斜視図である。
後壁20Rには、動作玩具100の各種機構部品を取り付けるための取付け板22が雄ねじ22c(
図10)によって螺着されている。この螺着は、限定はされないが、内部構造体が全て組み上がった状態で行われることが好ましい。
【0031】
取付け板22の前面には、上下方向中間部の幅方向一側に大径歯車23が前後方向に延びる軸24に固定されて設けられている。軸24は取付け板22を前後に貫通している。この大径歯車23は、後述のラック40を上下動させるためのものである。
また、取付け板22の前面には、幅方向中央に円柱状のボス25aが設けられている。このボス25aは、後述のラック40を上下動可能に取り付けるためのものである。このラック40の取付け構造については後述する。
さらに、取付け板22の前面には、ボス25aを間にして対峙する一対の案内部25b、25cが設けられている。この案内部25b、25cは、後述のラック40の上下動を案内するためのものである。
【0032】
一方、取付け板22の後面には、上記軸24に固定されて小径歯車26が設けられている。この小径歯車26は、後述のラック45を上下動させるためのものである。
また、取付け板22の後面には、上下に円柱状の2つのボス27U、27Lが設けられている。この2つのボス27U、27Lは、後述のラック45及び支持板11を取り付けるとともに、その上下動を案内するためのものである。このラック45及び支持板11の取付け構造については後述する。
【0033】
さらに、取付け板22の上部の二股部分22aには、有天円筒状のピストン50が取り付けられている。すなわち、ピストン50の天板に形成された孔51aに挿通された雄ねじ(図示せず)を二股部分22aの雌ねじ22bに螺合させることにより、二股部分22aにピストン50が取り付けられている。
ピストン50は、その動作によって後述の動作体30の空気室(中空部)の体積を変化させるためのものである。この空気室の体積変化に伴って空気室に対して空気が入出される。つまり、ピストン50の中心には円形の孔51aが形成され、この孔51aを通して空気が入出される。
図7は、ピストン50と鳴き笛52との取付け構造を分解して示した斜視図であり、
図7(A)は、上方から見た分解斜視図、
図7(B)は、下方から見た分解斜視図である。
ピストン50の天板の中央には略円柱状のボス51が垂設されている。このボス51を上下に貫通して上記孔51aが形成されている。そして、孔51aには円柱状の鳴き笛52が嵌合されている。鳴き笛52は、上下の孔52a、52bを通して内部に空気が流通するように構成され、空気室に対する空気の入出によって、内部のリード(図示せず)が振動して音が発せられるように構成されている。この鳴き笛52を設けることにより、空気室への空気の入出を浄化的に抑制することができる。
【0034】
(動作体30)
動作体30は、丸頭円筒状の円筒部31と、円筒部31の下端外周に設けられ円筒部31の半径方向外方に張り出す外向フランジ32と、を備えている(
図4)。この動作体30の円筒部31及び外向フランジ32は一体成型されている。
図8は、動作体30を下方から見た斜視図である。
同図に示すように、円筒部31は外筒31aと内筒31bとの二重構造となるようにしている。これは、動作体30に目玉などの立体物を取り付ける際、目玉などが円筒部31の表面から突出するのを防止する一方で、動作体30に形成される空気室の気密性を確保するためである。つまり、円筒部31の外筒31aを繰り抜いて目玉を付けられるようにし、目玉などが円筒部31の表面から突出するのを防止する一方で、内筒31bで動作体30の空気室の気密性を確保している。
【0035】
円筒部31の内筒31bは中空となっており、中空部は空気室を構成し下方に開口している。空気室には、下方から上記ピストン50が挿入されている。この空気室とピストン50によって徐行機構が構成されている。
また、外向フランジ32は、動作体30を後述のラック40に取り付けるためのものである。さらに、外向フランジ32は、動作体30の上動時に上記囲繞体20の内向フランジ21F、21Rの下面に突き当たり、動作体30の上動範囲を規制する。
【0036】
(動作体30の取付け構造)
動作体30は、ラック40を介して取付け板22に取り付けられている。
1.ラック40
ラック40は、上下方向に長尺で、主面が前後方向に向くように設けられている。ラック40の幅方向一側には、上記大径歯車23に噛合する多数の歯41が刻設されている。つまり、ラック40と大径歯車23とはラック・ピニオン機構(第2ラック・ピニオン機構)を構成している。
また、ラック40の幅方向中央には上下方向に長尺な長孔42が形成されている。さらに、ラック40の上部には、左右の縁に動作体30を取り付けるためのアーム43L、43Rが突出して設けられている。
そして、このアーム43L、43Rの挿通孔44L、44Rを下方から通した雄ねじ(図示せず)を動作体30の外向フランジ32の雌ねじ32aに螺合させることによって、ラック40に動作体30が取り付けられる。
【0037】
2.ラック40の取付け構造
動作体30が取り付けられたラック40は、次のようにして取付け板22に取り付けられる。
ボス25aをラック40の長孔42に挿入した状態で、ワッシャ(図示せず)を介して雄ねじ(図示せず)を上記ボス25aの雌ねじに螺合させることにより、ラック40は取付け板22に取り付けられる。ワッシャは、取付け板22からのラック40の離脱を防止するように機能する。
【0038】
(ベース10)
ベース10は、ペトリ皿状に形成されている。つまり、ベース10は、有底短円筒状に形成されている。
ベース10の中央には、支持板11が長尺方向を上下にして立設されている。この支持板11の主面には、上下方向に長尺な長孔12が形成されている。また、支持板11の幅方向一側には、コイルばねSの上端が掛けられるばね掛け部13が形成されている。
【0039】
(ラック45)
ラック45は、本来の遊びに加えて付加的な遊びを実現するためのものであり、同時に、手で押し下げた際に壊れるのを防ぐための、クラッチの役割もしている。
ラック45は、取付け板22の後面側に設けられている。このラック45の幅方向一端には、上記小径歯車26に噛合する多数の歯46が刻設されている。つまり、ラック45と小径歯車26とはラック・ピニオン機構(第1ラック・ピニオン機構)を構成している。
また、ラック45には、上下方向に長尺な長孔47が形成されている。
さらに、ラック45には幅方向一側に、コイルばねSの下端が掛けられるばね掛け部48が形成されているとともに、ばね掛け部48の直ぐ上には上記ばね掛け部13に当接可能な当接部49が形成されている。この当接部49は、常態ではコイルばねSの付勢力でばね掛け部13に当接されている。このばね掛け部13への当接によって、ベース10に対するラック45の上動範囲が規制されている。
【0040】
(ベース10及びラック45の取付け構造)
支持板11及びラック45は、重畳された状態で取付け板22に取り付けられる。
すなわち、支持板11の長孔12とラック45の長孔47には、取付け板22のボス27U、27Lが挿入される。そして、ワッシャ(図示せず)を介して雄ねじ(図示せず)を上記ボス27U、27Lの雌ねじに螺合させることにより、支持板11及びラック45は取付け板22に取り付けられる。ワッシャは、取付け板22からの支持板11及びラック45の離脱を防止するように機能する。
【0041】
《動作》
図9(A)、(B)は、動作玩具100の内部機構の動作状態を示した背面図、
図10(A)、(B)は、動作玩具100の内部機構の動作状態を示した正面図である。
動作玩具100をテーブルの上に置くときには、先ず、ベース10がテーブルに接地した後、囲繞体20が自重によってベース10に対して下降しようとする。このときには、囲繞体20の取付け板22に設けられた小径歯車26がラック45の歯46上を転動して下動する(
図9(A)から
図9(B))。一方、囲繞体20の取付け板22に付設された大径歯車23は歯41を介してラック40ひいては動作体30を押し上げる(
図10(A)から
図10(B))。このとき、ピストン50が動作体30の空気室から出ようとするので、空気室は負圧となり、鳴き笛52を介して空気室に空気が流入する。これによって、鳴き笛52から音が出るとともに、動作体30の速力が落ち動作体30がゆっくりと囲繞体20の上に突出する(
図9(B)及び
図10(B))。
【0042】
また、テーブルの上に動作玩具100を置いた状態で、囲繞体20の上に突出した動作体30を手で押し下げると、動作体30が没入する。このとき、ラック40が下降するので大径歯車23が回転し、それに連れて小径歯車26も回転する。これにより、ラック45がコイルばねSの付勢力に抗して下動する。このラック45の下降によってコイルばねSが延びて蓄勢され、その後、動作体30から手を離すと、コイルばねSの蓄勢された付勢力によって、動作体30は押し下げる前の状態に戻される。
【0043】
一方、テーブルの上にある動作玩具100を持ち上げるときには、ベース10の重さもあり、先ず、囲繞体20がベース10に対して上動し始める。このとき、ラック45の当接部49がコイルばねSの付勢力によってばね掛け部13に当接しているので、囲繞体20の取付け板22に設けられた小径歯車26がラック45の歯46上を転動して上動する(
図9(B)から
図9(A))。これにより、小径歯車26と同軸の大径歯車23が回転し、動作体30を囲繞体20に対して下動させようとする(
図10(B)~
図10A))。その際、囲繞体20の取付け板22に取り付けられたピストン50が動作体30の空気室の奥に入ろうとするので、空気室内の空気が圧縮される。そのため、ピストン50がゆっくりと動作体30の空気室の奥に入るので、大径歯車23及び小径歯車26の回転速度も遅くなり、ベース10の速力が落ちベース10がゆっくりと下動し、動作体30もゆっくりと囲繞体20の中に没入する(
図9(A)及び
図10(A))。また、空気室内の空気が圧縮されるので、空気室内の空気が鳴き笛52を介して排出される。これによって、鳴き笛52から音が出る。
【0044】
《実施形態の効果》
実施形態に係る動作玩具100の効果を説明すれば、次の通りである。
先ず、動作玩具100を接地するときには、囲繞体20がベース10に対して下動(ベース10が囲繞体20に対して上動)し、その囲繞体20から動作体30が突出する。物を置いたり持ち上げたりする行為は、人が日常行う自然な行為であり、当該自然な行為によって遊べるので乳幼児でも簡単に遊ぶことができる。また、自然な行為によって動作体30が出没するので、「いないいないバー」遊びができ、面白みのある動作玩具100が実現できる。加えて、囲繞体20の外側において、ベース10の囲繞体20に対する移動距離よりも大きな距離、動作体30が囲繞体20に対して移動するので、意外性があり、興趣性の高い動作玩具100を実現できる。
【0045】
なお、ベース10の移動距離よりも動作体30の移動距離を大きくすると、その分、ベース10の移動速度よりも動作体30の移動速度が速くなる。そのため、突出までの動作体30の動きを目で追いにくくなる。
この点、実施形態の動作玩具100によれば、徐行機構によって、動作体30がゆっくりと動作するので、動作体30の動きを目で追い易くなる。また、動作玩具100を接地したり持ち上げたりした後にも、動作体30がしばらく動き続けることから、動作体30が自ら動いているかの感覚を生じさせることができる。
【0046】
また、動作体30の内部に空気室を設けているので、囲繞体20の内部に特別に空気室を作る必要がなくなる。
【0047】
さらに、徐行機構の空気室への空気の入出を利用して音出しを行うので、徐行機構及び音出し機構をそれぞれ別途に設ける場合に比べて、構造が簡素となる。
【0048】
また、2つのラック・ピニオン機構を用い、大径歯車23及び小径歯車25を同軸に設けているため、徐行機構をコンパクトに構成できる。
【0049】
また、動作玩具100の接地の際に、突出している動作体30を人手で下げることができるとともに、コイルばねSの付勢力によって動作体30を元位置まで戻すので、付加的な遊びを楽しむことができる。
【0050】
さらに、飲料カップに対して人形が出没するので、愛くるしく面白みのある動作玩具100が実現できる。
【0051】
《変形例》
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0052】
例えば、上記実施形態では、2つのラック・ピニオン機構を設けて、囲繞体20を上下動させたときにベース10及び動作体30を囲繞体20に対して動作させることとしたが、2つのラック・ピニオン機構を設けずに、ベース10と囲繞体20との間にコイルばねを設け、コイルばねの伸縮によってベース10を囲繞体20に対して上下動させる一方で、ベース10の支持板11に、アーム長の異なるシーソ部材を設け、シーソ部材の一端に囲繞体20を、シーソ部材の他端に動作体30を取り付け、囲繞体20の上下動によってベース10及び動作体30を囲繞体20に対して動作させるようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、空気室とピストン50によって、空気室に対して空気を入出することにより鳴き笛52に音出しをさせるようにしたが、空気室及びピストン50の代わりに空気室を持つ蛇腹を用いて蛇腹の伸縮による空気の入出によって鳴き笛52に音出しをさせるようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、動作玩具100の外観を、飲料カップを模したものとしたが、飲料カップに限定されず、果物や野菜(例えば、リンゴやカボチャ)などとし、動作体30を例えば虫を模した人形などとすることもできる。
【0055】
さらに、上記実施形態では、囲繞体20が下動したときに囲繞体20の下端が接地して、ベース10が完全に隠れるように構成したが、囲繞体20が下動しても、ベース10の一部が露出するものとしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、ラック45の歯46に小径歯車26を噛合させたが、支持板11に小径歯車26が噛合する歯を設けてもよい。つまり、支持板11自体をラック45としてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、動作体30の本体は2重構造となっており、内筒が空気室となっているが、空気室を構成する筒のみで構成されていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、動作体30側に空気室を、囲繞体20側にピストン50を設けたが、逆に、動作体30側にビストンを、囲繞体側に空気室を設けてもよい。
【0059】
さらには、上記実施形態では、ピストン50に空気を入出するための孔51aを設けたが、空気室側に孔を設けてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、動作体30を囲繞体20に対して上下動可能に構成したが、ラック40を傾けることにより、動作体30を斜め或いは横方向で直線往復動させることもできる。
【0061】
さらに、上記実施形態では、徐行機構を構成する空気室への空気の入出を利用して音出しを行うようにしたが、音出しをしないのであれば、孔51aの径を選択することで動作体30の速力を適宜に変化させることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 ベース
11 支持板
20 囲繞体
20F 前壁
20R 後壁
22 取付け板
23 大径歯車
25 小径歯車
25a ボス
26 小径歯車
30 動作体
40 ラック
45 ラック
50 ピストン
52 鳴き笛
100 動作玩具
S コイルばね
【要約】
【課題】動作体の動作に意外性がある動作玩具を提供すること。
【手段】 接地によって囲繞体の外側に動作体が突出し、持上げによって囲繞体に前記動作体が没入するように構成された動作玩具であって、囲繞体、動作体及びベースは、互いに相対移動可能に連結され、囲繞体は、動作玩具が接地した際に、囲繞体の重さによってベースに対して下動し、囲繞体を介して動作玩具を持ち上げた際に、ベースに対して上動するように構成され、囲繞体がベースに対して下動することで動作体を囲繞体の外側に突出させ、囲繞体がベースに対して上動することで動作体を囲繞体の中に没入させるように構成され、囲繞体の外側における動作体の囲繞体に対する移動距離は、ベースの囲繞体に対する移動距離よりも大きくなるように設定されている。
【選択図】
図2