(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/40 20240101AFI20240626BHJP
G06Q 10/083 20240101ALI20240626BHJP
【FI】
G06Q50/40
G06Q10/083
(21)【出願番号】P 2023138355
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110135
【氏名又は名称】石井 裕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100163452
【氏名又は名称】南郷 邦臣
(74)【代理人】
【識別番号】100180312
【氏名又は名称】早川 牧子
(72)【発明者】
【氏名】張 磊
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 大心
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-59433(JP,A)
【文献】特開2021-163005(JP,A)
【文献】特開2023-20209(JP,A)
【文献】特開2020-201553(JP,A)
【文献】特開2020-67677(JP,A)
【文献】特開2019-149116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00、
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配達先の住所を含む配達先情報と、該配達先の駐停車位置と、配達者が車両から降車してから配達先へ荷物を配達して該車両に乗車するまでの時間であるドアステップタイムと、を関連付けるドアステップタイム情報を記憶するデータベースに登録されていない新たな配達先情報を取得する配達先情報取得部と、
前記データベースから、前記配達先情報取得部により取得された前記新たな配達先情報の住所と同一もしくは類似する住所を含む複数のドアステップタイム情報を抽出するドアステップタイム情報抽出部と、
前記ドアステップタイム情報抽出部により抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置、および、ドアステップタイムに基づき、前記新たな配達先情報に対する駐停車位置およびドアステップタイムを予測するドアステップタイム予測部と、
を備える推定装置。
【請求項2】
前記ドアステップタイム情報抽出部は、前記新たな配達先情報の住所の文字列と、前記データベースに登録されている各配達先情報の住所の文字列との類似度を算出し、求めた類似度が閾値以上の、前記データベースに登録されている配達先情報を含むドアステップタイム情報を抽出する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記ドアステップタイム予測部は、前記ドアステップタイム情報抽出部により抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置の中心位置を前記新たな配達先情報に対する駐停車位置に予測し、前記複数のドアステップタイム情報に含まれるドアステップタイムの平均を前記新たな配達先情報に対するドアステップタイムに予測する、
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記ドアステップタイム予測部は、前記類似度に応じて、前記ドアステップタイム情報抽出部により抽出された複数のドアステップタイム情報の重みをそれぞれ決定し、前記抽出された前記ドアステップタイム情報に含まれるドアステップと決定された重みに基づく加重平均を前記新たな配達先情報に対するドアステップタイムに予測する、
請求項2に記載の推定装置。
【請求項5】
前記ドアステップタイム情報抽出部により抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置およびドアステップタイムのばらつきにより、前記ドアステップタイム予測部により予測された駐停車位置およびドアステップタイムの誤差を推定する誤差推定部、をさらに備える、
を備える請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項6】
コンピュータが、
配達先の住所を含む配達先情報と、該配達先の駐停車位置と、配達者が車両から降車してから配達先へ荷物を配達して該車両に乗車するまでの時間であるドアステップタイムと、を関連付けるドアステップタイム情報を記憶するデータベースに登録されていない新たな配達先情報を取得するステップと、
前記データベースから、取得された前記新たな配達先情報の住所と同一もしくは類似する住所を含む複数のドアステップタイム情報を抽出するステップと、
抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置、および、ドアステップタイムに基づき、前記新たな配達先情報に対する駐停車位置およびドアステップタイムを予測するステップと、
を含む推定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
配達先の住所を含む配達先情報と、該配達先の駐停車位置と、配達者が車両から降車してから配達先へ荷物を配達して該車両に乗車するまでの時間であるドアステップタイムと、を関連付けるドアステップタイム情報を記憶するデータベースに登録されていない新たな配達先情報を取得する処理と、
前記データベースから、取得された前記新たな配達先情報の住所と同一もしくは類似する住所を含む複数のドアステップタイム情報を抽出する処理と、
抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置、および、ドアステップタイムに基づき、前記新たな配達先情報に対する駐停車位置およびドアステップタイムを予測する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
配達車が配達する複数の荷物の配達計画を作成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、配達通知情報の送信時刻と配達通知情報が閲覧された閲覧時刻との差に基づいてユーザの関心度を算出し、算出した関心度に基づいて、複数の荷物の配達順序を設定する提示装置が開示されている。この提示装置において、各荷物の配達先の住所を用いて配達コストが最小となるような配達経路を地図情報から探索することで各荷物の配達予定時刻を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、配達者は、車両を一時的に駐停車して降車し、荷物を配達先まで届けるため、例えば、高層マンションと公道に面した一軒家等の配達先とでは、駐停車してから荷物を配達して車両に乗車するまでの時間が大きく異なる。ここで、当該時間をドアステップタイムと呼ぶ。そのため、予め作成された配達計画通りに配達できない可能性がある。したがって、配達先ごとのドアステップタイムを考慮することにより、より精度の高い配達計画を立てることが可能となる。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、より精度の高い配達計画を立てるために必要なドアステップタイムを算出する推定装置、推定方法、および、プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る推定装置は、
配達先の住所を含む配達先情報と、該配達先の駐停車位置と、配達者が車両から降車してから配達先へ荷物を配達して該車両に乗車するまでの時間であるドアステップタイムと、を関連付けるドアステップタイム情報を記憶するデータベースに登録されていない新たな配達先情報を取得する配達先情報取得部と、
前記データベースから、前記配達先情報取得部により取得された前記新たな配達先情報の住所と同一もしくは類似する住所を含む複数のドアステップタイム情報を抽出するドアステップタイム情報抽出部と、
前記ドアステップタイム情報抽出部により抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置、および、ドアステップタイムに基づき、前記新たな配達先情報に対する駐停車位置およびドアステップタイムを予測するドアステップタイム予測部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より精度の高い配達計画を立てるために必要なドアステップタイムを算出する推定装置、推定方法、および、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】推定装置と他の機器の連携を示す説明図である。
【
図2】配達者端末が受信する配達指示リストの一例を示す図である。
【
図3】推定装置の機能的な構成を示す説明図である。
【
図4】位置情報取得部により取得される時系列データの一例を示す図である。
【
図5】部分時系列抽出部により抽出された時系列データの一例を示す図である。
【
図6】部分時系列抽出部により部分時系列と配達先とを紐付ける処理の一例を説明する図である。
【
図7】時系列データを地図上にプロットした一例を示す図である
【
図8】
図7に例示する時系列データの部分時系列の先頭部分と末尾部分とを示す図である。
【
図9】ドアステップタイム推定部により生成されるドアステップタイムテーブルの一例を示す図である。
【
図10】配達先情報取得部が受信する配達予定リストの一例を示す図である。
【
図11】予測部により生成される予測結果テーブルの一例を示す図である。
【
図13】ドアステップタイム推定処理のフローチャートである。
【
図14】ドアステップタイム予測処理のフローチャートである。
【
図15】予測部による処理の一例を説明する図である。
【
図16】予測部による処理の別の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は説明のためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0010】
(推定装置及び配達者端末とプログラムの関係)
本実施例に係る推定装置は、車両を運転して荷物を配達先へ配達する配達者が、駐停車位置に車両を停車して降車してから、荷物を配達して駐停車位置に戻り、車両に乗車するまでの時間であるドアステップタイムを推定するものである。推定装置は、1台もしくは複数台のサーバ装置により構成される。推定装置は、配達者が操作するコンピュータである配達者端末の位置の時系列を収集し、収集した時系列に基づいて配達先と駐停車位置との組み合わせに係るドアステップタイムを算出する。
【0011】
本実施例の推定装置は、プログラムをコンピュータに実行させることにより実現するのが一般的であるが、専用電子回路により処理を実行させることも可能である。このほか、コンピュータと専用電子回路の中間形態として、プログラムを電子回路の設計スクリプトにコンパイルして、当該設計スクリプトに基づいて電子回路を動的に構成するFPGA(Field Programmable Gate Array)などの技術を適用することにより、本実施例の推定装置を構成することも可能である。
【0012】
本実施例に係る推定装置は、配達者端末と通信をする1台又は複数台のサーバコンピュータが、1つ又は複数のサーバプログラムにより実現される各機能を実行することによって実現される。
【0013】
本実施例に係る配達者端末は、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブル端末等を実現する端末コンピュータであり予め提供された端末プログラムを実行することによって実現することができる。端末プログラムとしては、いわゆる「アプリ(App)」に相当するものを採用することができる。
【0014】
このほか、端末プログラムとして、一般的なブラウザを採用することもできるし、ブラウザ上で動作するスクリプトプログラムを端末プログラムとして採用することもできる。
【0015】
一般に、サーバコンピュータや端末コンピュータで実行されるプログラムは、コンパクトティスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な非一時的(non-transitory)情報記録媒体に記録することができる。この情報記録媒体は、サーバコンピュータとは独立して配布・販売することもできる。
【0016】
サーバコンピュータや端末コンピュータでは、フラッシュメモリやハードディスク等の非一時的(non-transitory)情報記録媒体に記録されたプログラムを、一時的(temporary)記憶装置であるRAM(Random Access Memory)に読み出してから、読み出されたプログラムに含まれる指令をCPU(Central Processing Unit)が実行する。ただし、ROMとRAMを一つのメモリ空間にマッピングして実行することが可能なアーキテクチャでは、ROMに格納されたプログラムに含まれる指令を、直接CPUが読み出して実行する。
【0017】
さらに、サーバプログラムや端末プログラムは、当該プログラムが実行されるコンピュータとは独立して、コンピュータ通信網等の一時的(temporary)伝送媒体を介して、事業者が管理する配布サーバ等からサーバコンピュータや端末コンピュータ等へ配布・販売することができる。
【0018】
なお、推定装置が複数のコンピュータにより構成される場合には、各コンピュータで動作するプログラムは、互いに異なる機能を有しつつ協働する、互いに異なる複数のサーバプログラムということになる。そこで当該複数のプログラムを合わせたものは、予測装置を実現するためのシステムプログラムと考えることができる。
【0019】
(全体構成)
図1は、推定装置と他の機器との連携を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【0020】
推定装置100は、配達者端末200とインターネット等のコンピュータ通信網300を介して接続されている。
【0021】
推定装置100は、例えば、荷物の宅配・配達サービスを提供する事業者、ネットスーパー等が運用するもので、過去の配達実績に基づき、配達先毎に、駐停車位置に車両を停車して降車してから、荷物を配達して駐停車位置に戻り、車両に乗車するまでの時間であるドアステップタイムを推定する。推定装置100は、配達者端末200の位置を示す時系列データを取得し、各位置における移動速度を算出する。推定装置100は、移動速度に基づいて、配達者が車両から降車していると推定される区間を示す部分時系列を抽出し、抽出した部分時系列を用いて、配達先毎に推定される駐停車位置を特定して、ドアステップタイムを算出する。推定装置100は、算出結果をデータベースに蓄積する。推定装置100は、データベースに登録されていない新たな配達先へ荷物を配達する際、データベースを参照して、住所が一致または類似する配達先の情報に基づき、新たな配達先のドアステップタイムの予測値を算出する。なお、配達先とは、住所と氏名の組み合わせを示し、推定装置100は、住所が同一で氏名が異なる配達先をそれぞれ異なる配達先として識別する。
【0022】
配達者端末200は、荷物を配達する配達者が作業従事中に携帯するスマートフォン、タブレット、その他の配達専用端末である。配達者端末200は、配達者端末200の位置を検出する位置検出手段、および、情報を表示する表示手段を含む。
【0023】
位置検出手段は、衛星からの信号を受信する受信器を含む。受信器は、例えば、現在位置を測定するためのシステムであるグローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System:GPS)である。位置検出手段は、予め設定された時間毎にGPSによって受信された信号に基づいて、配達者端末200の位置情報である緯度及び経度を取得する。配達者端末200は、位置検出手段により取得された位置情報と、取得された時刻とを関連付けて推定装置100に送信する。なお位置検出手段は、配達者端末200と通信している携帯電話基地局に基づいて配達者端末200の位置情報を取得するようにしてもよい。あるいは、位置検出手段は、配達者端末200と通信している無線LAN基地局に基づいて配達者端末200の位置情報を取得するようにしてもよい。
【0024】
表示手段は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等である。例えば、配達者は、日毎、半日毎等の配達先の一覧を示す配達指示リストを表示手段に表示させて、配達先の住所、配達順などを確認して荷物の配達作業を行う。この配達指示リストは、配達計画を立案する配達計画立案システムにより作成され、推定装置100、および、配達者端末200に送信される。
図2に例示する通り、配達指示リストは、配達情報を一意に識別するための「配達ID」、配達先を識別する識別情報である「配達先ID」、配達先の氏名を示す「氏名」、配達先の住所を示す「住所」、配達先毎の配達の目標時刻を示す「配達目標時刻」などの情報を含む。なお、配達指示リストは、注文を受け付けた際に顧客から指定された配達時間帯、配達する荷物を識別するための荷物IDなどの情報を含んでもよい。
【0025】
(推定装置の機能構成)
次に、
図3を用いて、推定装置100の機能的な構成を説明する。推定装置100は、位置情報取得部110と、移動速度推定部120と、部分時系列抽出部130と、降車乗車位置特定部140と、ドアステップタイム推定部150と、ドアステップタイム記憶部160と、ドアステップタイム予測部170と、を備える。
【0026】
位置情報取得部110は、配達者端末200から送信された、配達者端末200の位置情報と位置情報の取得時刻とを含む時系列データを取得する。時系列データは、推定装置100のメモリに記憶される。
図4に例示する通り、時系列データは、配達者端末200が位置情報を取得した年月日を示す「年月日」、取得時刻を示す「時刻t」、取得された位置座標を示す「位置情報」等の情報を含む。なお、時系列データは、位置情報を収集した配達者端末200を識別する端末IDなどの情報を含んでもよい。
【0027】
図3に戻り、移動速度推定部120は、配達者端末200の移動速度を推定する。具体的に、移動速度推定部120は、推定装置100のメモリに蓄積された
図4に例示する時系列データに含まれる時刻情報および位置情報から配達者端末200の移動距離および移動時間を算出し、算出した移動距離および移動時間から配達者端末200の移動速度を算出する。
【0028】
図3に戻り、部分時系列抽出部130は、推定装置100のメモリに蓄積された時系列データの中から、配達者が車両に搭乗していないと推定される区間の時系列データである部分時系列を、配達先毎に抽出する。具体的に、部分時系列抽出部130は、予め設定されたルールに基づき、配達先毎の部分時系列を抽出する。例えば、
図5に例示する通り、部分時系列抽出部130は、位置情報取得部110により取得された
図4に示す時系列データから、移動速度推定部120により算出された移動速度が、予め設定された閾値以下、例えば6km/h以下のデータを時系列データから抽出する。なお、移動速度に関する閾値は、6km/hに限られず、配達者が車両で移動していないと推定される任意の速度を設定してよい。
【0029】
次に、部分時系列抽出部130は、移動速度が閾値以下の時系列データを、時間的に連続する複数の部分時系列に分割する。例えば、複数の配達先に荷物を配達した際の時系列データには、配達先毎に、配達者が車両に搭乗していないと推定される複数の部分時系列が少なくとも含まれる。部分時系列抽出部130は、例えば、1つ前の時系列データとの時刻の差が1分以内の場合、2つの時系列データを同じ部分時系列に分類し、1つ前の時系列データとの時刻の差が1分以上の場合、2つの時系列データを異なる部分時系列に分類する等の任意のルールにより、抽出された時系列データを、複数の部分時系列に分割する。
【0030】
次に、部分時系列抽出部130は、部分時系列と配達先との紐付けを行う。具体的に、部分時系列抽出部130は、各部分時系列に含まれる各時系列の位置と、
図2に例示する配達指示リストに含まれる各配達先の位置との距離を算出し、
図6に例示する通り、距離がもっとも近い部分時系列と配達先とを紐付ける。なお、部分時系列抽出部130は、部分時系列選択部の一例である。
【0031】
図3に戻り、降車乗車位置特定部140は、部分時系列抽出部130により配達先と紐付けられた部分時系列に基づいて、配達先に配達した際の車両の降車位置と乗車位置とを特定する。具体的に、降車乗車位置特定部140は、配達先と紐付けられた各部分時系列から、予め設定されたルールに基づく個数の、取得時刻が早い位置データである先頭部分と、取得時刻が遅い位置データである末尾部分とを抽出する。
図8は、
図7に例示する時系列データの部分時系列の先頭部分と末尾部分とを示す図である。図示する通り、例えば、先頭部分と末尾部分とをそれぞれ5つずつ抽出するとのルールに基づき、降車乗車位置特定部140は、取得時刻が1~5番目に早い位置データA1~A5を先頭部分として抽出し、取得時刻が1~5番目に遅い位置データB1~B5を末尾部分として抽出する。次に、降車乗車位置特定部140は、先頭部分のそれぞれの位置データA1~A5と末尾部分のそれぞれの位置データB1~B5との距離をそれぞれ算出し、距離がもっとも近い先頭部分の位置データを降車位置として特定し、距離がもっとも近い末尾部分の位置データを乗車位置として特定する。例えば、A5とB2との距離が他の組み合わせとの距離よりもっとも近い場合、降車乗車位置特定部140は、A5を降車位置、B2を乗車位置として特定する。
【0032】
図3に戻り、ドアステップタイム推定部150は、車両の駐停車位置と配達先との組み合わせに係るドアステップタイムを算出する。具体的に、ドアステップタイム推定部150は、降車乗車位置特定部140により特定された降車位置と乗車位置とのそれぞれの座標の中心位置を駐停車位置として特定する。次に、ドアステップタイム推定部150は、特定された乗車位置が検知された時刻から、特定された降車位置が検知された時刻を減算することによりドアステップタイムを算出する。ドアステップタイム推定部150は、算出したドアステップタイムを、特定した駐停車位置、および、配達先と関連付けてドアステップタイム推定部150に記憶させる。
【0033】
ドアステップタイム記憶部160は、ドアステップタイム推定部150により算出された配達先毎のドアステップタイムを示すドアステップタイムテーブルを記憶する。
図9に例示する通り、ドアステップタイムテーブルは、配達情報を一意に識別するための「配達ID」、配達先を識別する識別情報である「配達先ID」、配達先の氏名を示す「氏名」、配達先の住所を示す「住所」、配達先毎の駐停車位置の位置情報を示す「駐停車位置」、配達先毎のドアステップタイムを示す「ドアステップタイム」などの情報を含む。なお、図示する通り、ドアステップタイム推定部150は、乗車位置が検知された時刻と降車位置が検知された時刻との平均を、荷物を配達した時刻の推定時刻として算出し、算出結果である「配達完了推定時刻」をドアステップタイムテーブルに含めてもよい。
【0034】
図3に戻り、ドアステップタイム予測部170は、配達先情報取得部171、ドアステップタイム情報抽出部172、予測部173、誤差推定部174を含み、ドアステップタイム記憶部160に記憶されるドアステップタイムテーブルを参照して、配達予定の配達先のドアステップタイムの予測値を算出する。
【0035】
配達先情報取得部171は、日別、半日別等の配達予定の配達先の一覧を示す配達予定リストの入力を受け付け、各配達先の配達情報を取得する。
図10に例示する通り、配達予定リストは、配達情報を一意に識別するための「配達ID」、配達先を識別する識別情報である「配達先ID」、配達先の氏名を示す「氏名」、配達先の住所を示す「住所」、配達先毎の配達指定時間を示す「配達指定時間」などの情報を含む。なお、配達先のユーザが配達時間を指定しなかった場合、配達指定時間には、時間の情報を含めなくてもよいし、午前・午後のいずれかのみが指定されている場合は、午前か午後かを特定する情報を含めればよい。配達先情報取得部171は、入力された配達予定リストから、各配達先の情報を取得し、
図9に示すドアステップタイムテーブルを参照して、各配達先がドアステップタイム未算出の新たな配達先であるか否かを判定する。具体的に、配達予定リストに含まれる各配達先の配達先IDがドアステップタイムテーブルに含まれるか否か、または、配達予定リストに含まれる各配達先の氏名と住所との組み合わせと一致する組み合わせがドアステップタイムテーブルに含まれるか否か、により新たな配達先であるか否かを判定する。
【0036】
図3に戻り、ドアステップタイム情報抽出部172は、ドアステップタイム記憶部160に記憶される
図9に示すドアステップタイムテーブルから、各配達先のドアステップタイムの予測に使用されるデータである、ドアステップタイムと駐停車位置とを含むドアステップタイム情報を抽出する。具体的に、配達先情報取得部171により、算出対象の配達先がドアステップタイム算出済みで新たな配達先ではないと判定された場合、ドアステップタイムテーブルから、この配達先と同一の配達先のドアステップタイムと駐停車位置とを抽出する。
【0037】
また、ドアステップタイム情報抽出部172は、配達先情報取得部171により。算出対象の配達先がドアステップタイム未算出の新たな配達先であると判定された場合、ドアステップタイムテーブルから、この配達先の住所と同一または類似する住所を有する複数の配達先のドアステップタイムと駐停車位置とを抽出する。この処理の詳細については、後述する。
【0038】
予測部173は、ドアステップタイム情報抽出部172により抽出されたドアステップタイムと駐停車位置とに基づき、
図10に例示する配達予定リストに含まれる配達先のドアステップタイム、および、駐停車位置の予測を算出する。具体的に、ドアステップタイムテーブルに含まれる配達先と同一であると判定された配達先の予測の場合、予測部173は、ドアステップタイムテーブルに記憶されたドアステップタイムと駐停車位置とを、算出対象の配達のドアステップタイムと駐停車位置として特定する。
【0039】
また、予測部173は、新たな配達先であると判定された配達先の予測の場合、ドアステップタイム情報抽出部172により抽出された、算出対象の配達先の住所と同一または類似する住所を有する複数の配達先のドアステップタイムと駐停車位置とによりそれぞれの予測を算出する。具体的に、予測部173は、抽出された複数の配達先のドアステップタイムの平均、および、駐停車位置の中心位置を求め、求めたドアステップタイムの平均と駐停車位置の中心位置とを、算出対象の配達先のドアステップタイムと駐停車位置として算出する。
【0040】
誤差推定部174は、予測部173により算出された配達先のドアステップタイムと駐車停止位置それぞれの誤差を算出し、予測部173による予測結果と算出した誤差とに基づき、各配達先のドアステップタイムの予測を示す予測結果テーブルを作成する。
図11に例示する通り、予測結果テーブルは、配達先を識別する識別情報である「配達先ID」、配達先の氏名を示す「氏名」、配達先の住所を示す「住所」、配達先毎のドアステップタイムを示す「ドアステップタイム」、ドアステップタイムの誤差を示す「ドアステップタイム誤差」、配達先毎の駐停車位置の位置情報を示す「駐停車位置1」、「駐停車位置2」、「駐停車位置3」、駐停車位置の誤差を示す「駐停車位置誤差」などの情報を含む。誤差推定部174の処理の詳細は後述する。
【0041】
(推定装置の物理構成)
以上説明した機能的構成を有する推定装置100は、物理的に、
図12に示すように、プログラムに従った処理を実行するCPU11と、揮発性メモリであるRAM12と、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)13と、データを記憶する記憶部14と、情報の入力を受け付ける入力部15と、情報を可視化して表示する表示部16と、情報の送受信を行う通信部17と、を備え、これらが内部バス99を介して接続されている。
【0042】
CPU11は、記憶部14に記憶されたプログラムをRAM12に読み出して実行することにより、各種処理を実行する。CPU11は、プログラムにより提供される主要な機能として、移動速度推定部120、部分時系列抽出部130、降車乗車位置特定部140、ドアステップタイム推定部150、ドアステップタイム予測部170による各処理を実行する。
【0043】
RAM12は、CPU11のワークエリアとして使用される。ROM13は、推定装置100の基本動作のためにCPU11が実行する制御プログラム、BIOS(Basic Input Output System)等を記憶する。
【0044】
記憶部14は、ハードディスクドライブを備え、CPU11が実行するプログラムを記憶し、プログラム実行の際に使用される各種データを記憶する。記憶部14は、ドアステップタイム記憶部160として機能する。
【0045】
入力部15は、キーボード、マウス、通信装置等を備えるユーザインタフェースである。表示部16は情報を可視化して表示する液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置である。
【0046】
通信部17は、ネットワークに接続する網終端装置または無線通信装置、およびそれらと接続するシリアルインタフェースまたはLAN(Local Area Network)インタフェースである。
【0047】
(ドアステップタイム推定処理)
続いて、推定装置100の動作について説明する。まず、過去の配達実績に基づいて、配達先毎のドアステップタイムを推定するドアステップタイム推定処理について、
図13を参照して説明する。
【0048】
事前準備として、推定装置100の記憶部14には、
図4に例示する時系列データが予め記憶されている。推定装置100の位置情報取得部110は、配達者端末200から送信される位置情報と位置情報が取得された時刻とを受信し、図示する時系列データを生成して、記憶部14に記憶させる。
【0049】
ユーザが推定装置100の入力部15を操作して、時系列データを参照したい期間を設定し、推定装置100にドアステップタイム推定処理の開始を指示すると、推定装置100は処理を開始する。
【0050】
推定装置100の位置情報取得部110は、処理対象の時系列データを取得する(ステップS101)。具体的に、設定された期間の時系列データを、推定装置100の記憶部14から取得する。
【0051】
次に、移動速度推定部120は、配達者端末200の移動速度を推定する(ステップS102)。具体的に、移動速度推定部120は、ステップS101で取得した
図4に例示する時系列データに含まれる時刻情報および位置情報から配達者端末200の移動距離および移動時間を算出し、算出した移動距離および移動時間から配達者端末200の移動速度を算出する。例えば、例示する位置情報(a2、b2)での移動速度を求める場合、移動速度推定部120は、1つ前の時系列データの位置情報(a1、b1)と(a2、b2)との距離である移動距離と、位置情報(a2、b2)の取得時刻t2=10時13分22秒と位置情報(a1、b1)の取得時刻t1=10時13分10秒との差である移動時間とを求め、移動距離を移動時間で除算することにより移動速度を算出する。また、例えば、移動速度推定部120は、前後の時系列データを用いて、1つ前の時系列データの位置情報(a1、b1)と(a2、b2)との距離と、1つ後の時系列データの位置情報(a3、b3)と(a2、b2)との距離との和である移動距離と、位置情報(a3、b3)の取得時刻t3=10時13分30秒と位置情報(a1、b1)の取得時刻t1=10時13分10秒との差である移動時間とを求め、移動距離を移動時間で除算するなどの方法により、位置情報(a2、b2)の移動速度を算出してもよい。
【0052】
図13に戻り、次に、部分時系列抽出部130は、ステップS102により算出された移動速度に基づき、時系列データの中から、配達者が車両に搭乗していないと推定される区間の時系列データである部分時系列を、配達先毎に抽出する(ステップS103)。具体的に、部分時系列抽出部130は、移動速度推定部120により算出された移動速度が、予め設定された閾値以下、例えば6km/h以下のデータを時系列データから抽出する。
【0053】
次に、部分時系列抽出部130は、移動速度が閾値以下の時系列データを、時間的に連続する複数の部分時系列に分割する。部分時系列抽出部130は、例えば、1つ前の時系列データとの時刻の差が1分以内の場合、2つの時系列データを同じ部分時系列に分類し、1つ前の時系列データとの時刻の差が1分より大きい場合、2つの時系列データを異なる部分時系列に分類する等の任意のルールにより、移動速度が閾値以下の時系列データを、複数の部分時系列に分割する。
【0054】
次に、部分時系列抽出部130は、
図2に例示する配達指示リストに基づき、分割した部分時系列と配達先との紐付けを行う。具体的に、部分時系列抽出部130は、部分時系列の取得日と同日の配達指示リストを参照して、部分時系列に含まれる各時系列の位置ともっとも近い位置の配達先を特定して、部分時系列に紐付ける。距離は、例えば、部分時系列に含まれる各位置と配達先との距離の平均を算出する、あるいは、部分時系列の最初の位置、または、最後の位置と配達先との距離を算出するなど、任意の方法により算出されればよい。
図6に例示する通り、部分時系列抽出部130は、例えば、部分時系列1と、配達先ID「A001」の位置との距離がもっとも近いと判定した場合、部分時系列1と配達先ID「A001」とを紐付ける。
【0055】
図13に戻り、次に、降車乗車位置特定部140は、ドアステップタイムを算出する対象の配達先の部分時系列を選択する(ステップS104)。具体的に、降車乗車位置特定部140は、配達指示リストから未処理の配達先を特定し、特定した配達先の部分時系列を選択する。例えば、配達先ID「A001」が未処理であると特定した場合、降車乗車位置特定部140は、ステップS104で生成された部分時系列の中から、配達先ID「A001」に紐付けられた部分時系列を選択する。
【0056】
次に、降車乗車位置特定部140は、ステップS104で選択された部分時系列に基づいて、配達先に配達した際の車両の降車位置と乗車位置とを特定する(ステップS105)。具体的に、降車乗車位置特定部140は、部分時系列から、予め設定されたルールに基づく個数の、取得時刻が早い位置データである先頭部分と、取得時刻が遅い位置データである末尾部分とを抽出する。先頭部分と末尾部分は、設定された個数の位置データがそれぞれ抽出されてもよいし、部分時系列に含まれる全データ数に対する設定された割合に基づく個数の一データがそれぞれ抽出されてもよい。
図8に例示する通り、降車乗車位置特定部140は、例えば、先頭部分と末尾部分とをそれぞれ5つずつ抽出とのルールに基づき、取得時刻が1~5番目に早い位置データA1~A5を先頭部分として抽出し、取得時刻が1~5番目に遅い位置データB1~B5を末尾部分として抽出する。次に、降車乗車位置特定部140は、先頭部分のそれぞれの位置データA1~A5と末尾部分のそれぞれの位置データB1~B5との距離をそれぞれ算出し、距離がもっとも近い先頭部分の位置データを降車位置として特定し、距離がもっとも近い末尾部分の位置データを乗車位置として特定する。例えば、位置データA5と位置データB2との距離が他の組み合わせとの距離よりもっとも近い場合、降車乗車位置特定部140は、位置データA5を降車位置、位置データB2を乗車位置として特定する。
【0057】
図13に戻り、ドアステップタイム推定部150は、車両の駐停車位置と配達先との組み合わせに係るドアステップタイムを算出する。具体的に、ドアステップタイム推定部150は、降車乗車位置特定部140により特定された降車位置と乗車位置とのそれぞれの座標の中心位置を駐停車位置として特定する(ステップS106)。
図8の例において、位置データA5が降車位置として特定され、位置データB2が乗車位置として特定された場合、位置データA5と位置データB2の中心位置を駐停車位置として特定する。
【0058】
次に、ドアステップタイム推定部150は、特定された乗車位置が検知された時刻から、特定された降車位置が検知された時刻を減算することによりドアステップタイムを算出する(ステップS107)。例えば、降車位置である位置データA5の取得時刻t=10時13分53秒で、乗車位置である位置データB2の取得時刻t=10時14分55秒の場合、ドアステップタイム推定部150は、62秒をドアステップタイムとして算出する。ドアステップタイム推定部150は、算出したドアステップタイムを、特定した駐停車位置、および、配達先と関連付けて、
図9に示すドアステップタイムテーブルを作成し、ドアステップタイム記憶部160に記憶させて(ステップS108)、処理を終了する。
【0059】
(ドアステップタイム予測処理)
次に、ドアステップタイム推定処理にて作成されたドアステップタイムテーブルに基づいて、配達予定の各配達先のドアステップタイムの予測を算出するドアステップタイム予測処理について、
図14を参照して説明する。以下の説明では、推定装置100に、
図10に例示する、配達予定の配達先の一覧を示す配達予定リストが入力され、配達予定リストに含まれる各配達先のドアステップタイムを予測する処理を例に説明する。
【0060】
配達先情報取得部171は、処理対象の配達先の情報である配達先情報を取得する(ステップS201)。具体的に、配達先情報取得部171は、
図10に例示する配達予定リストから、各配達先の情報を取得し、
図9に示すドアステップタイムテーブルを参照して、各配達先がドアステップタイム未算出の新たな配達先であるか否かを判定する。
図10に例示する配達予定リストにおいて、配達先ID「A001」、「A002」、「A003」は、
図9のドアステップタイムに含まれているため、配達先情報取得部171は、これらの配達先はドアステップタイム算出済みであると判定する。また、配達先ID「B001」は、ドアステップタイムに含まれていないため、配達先情報取得部171は、配達先ID「B001」はドアステップタイム未算出の新たな配達先であると判定する。なお、配達先情報取得部171は、配達先IDによらずに、氏名と住所の組み合わせが同一か否かによりドアステップタイムテーブルに含まれるか否かを判定してもよい。
【0061】
次に、ドアステップタイム情報抽出部172は、
図9に示すドアステップタイムテーブルから、各配達先のドアステップタイムの予測に使用されるデータである、ドアステップタイムと駐停車位置とを含むドアステップタイム情報を抽出する。具体的に、ステップS201にて、処理対象の配達先がドアステップタイムテーブルに含まれる配達先であり、新たな配達先ではないと判定された場合(ステップS202;No)、ドアステップタイムテーブルから、この配達先と同一の配達先のドアステップタイムと駐停車位置とを抽出する(ステップS203)。例えば、処理対象の配達先IDが「A001」の場合、ドアステップタイム情報抽出部172は、
図9に示すドアステップタイムテーブルから、配達先ID「A001」のドアステップタイム「300秒」と、駐停車位置「(X1、Y1)」とを抽出する。なお、ドアステップタイムテーブルに同一の配達先のドアステップタイム情報が複数存在する場合、ドアステップタイム情報抽出部172は、複数のドアステップタイム情報を抽出する。
【0062】
一方、ステップS201にて、処理対象の配達先がドアステップタイムテーブルに含まれていない新たな配達先であると判定された場合(ステップS202;Yes)、ドアステップタイム情報抽出部172は、この配達先の住所と同一または類似する住所を有する配達先のドアステップタイムと駐停車位置とを抽出する(ステップS204)。具体的に、ドアステップタイム情報抽出部172は、ドアステップタイムテーブルから、住所が同一で氏名が異なる配達先、または、類似度が高い住所を有する配達先を特定して、特定した複数の配達先のドアステップタイムと駐停車位置とを抽出する。類似度が高い住所の特定方法は、例えば、住所1と住所2との比較において、各住所の文字列を広域から狭域へ向かって走査して共通文字列を求め、住所1の文字数aと住所2の文字数bと共通文字列の文字数cとを用いて、2×c/(a+b)、c2/(a×b)などの式により類似度を算出し、類似度が閾値以上の場合に類似度が高い住所であると判定する。なお、住所が同一または類似する配達先が複数ある場合、ドアステップタイム情報抽出部172は、条件を満たす複数の配達先のドアステップタイム情報をドアステップタイムテーブルか抽出する。
【0063】
次に、予測部173は、ドアステップタイム情報抽出部172により抽出されたドアステップタイム情報に基づき、
図10に例示する配達予定リストに含まれる配達先のドアステップタイムと駐停車位置との予測を算出する(ステップS205)。具体的に、ステップS202でドアステップタイムテーブルに含まれる配達先と同一であると判定された配達先の予測の場合、予測部173は、ステップS203で抽出されたドアステップタイムと駐停車位置とを、処理対象の配達先のドアステップタイムと駐停車位置として算出する。
【0064】
なお、ステップS202で、複数のドアステップタイム情報が抽出された場合、複数のドアステップタイムの平均、および、複数の駐停車位置の中心位置をそれぞれ算出対象の配達先のドアステップタイム、および、駐停車位置として算出してもよい。また、距離が近い駐停車位置を1つの駐停車位置としてまとめて、複数の駐停車位置を算出してもよい。具体的に、例えば、駐停車位置間の距離の上限値を定め、その互いの距離が上限値内に収まる駐停車位置を1つにまとめればよい。
図15に例示する通り、駐停車位置C1~C6が抽出された場合、互いの距離が上限値内に収まる駐停車位置C1~C3と駐停車位置C4~C6の、それぞれの中心位置C7、および、中心位置C8を処理対象の配達先の駐停車位置としてそれぞれ算出し、駐停車位置C1~C3のドアステップタイムの平均と、駐停車位置C4~C6のドアステップタイムの平均と、をそれぞれの駐停車位置のドアステップタイムとして算出すればよい。
【0065】
一方、ステップS202で新たな配達先であると判定された配達先の予測の場合、予測部173は、ステップS204で抽出された複数の配達先のドアステップタイムの平均を算出して、算出した平均を処理対象の配達先のドアステップタイムとして算出する。また、予測部173は、ステップS204で抽出された複数の配達先の駐停車位置の中心位置を処理対象の配達先の駐停車位置として算出する。具体的に、
図16に例示する通り、例えば、新たな配達先が建物D3の3Fであり、住所が類似する配達先として、建物D1、建物D2、建物D3の1Fが特定された場合、予測部173は、建物D1、建物D2、建物D3の1Fのドアステップタイムの平均を、算出対象の新たな配達先である建物D3の3Fのドアステップタイムとして算出する。また、予測部173は、建物D1の駐停車位置C9、建物D2の駐停車位置C10、建物D3の1Fの駐停車位置C11の中心位置C12を、算出対象の新たな配達先である建物D3の3Fの駐停車位置として算出する。なお、平均は、単純平均に限られず、住所の類似度に応じて、配達先毎に重みを設定して、加重平均を求め、新たな配達先のドアステップタイムにしてもよい。例えば、算出対象の新たな配達先である建物D3の3Fと階数のみ異なる建物D3の1Fのドアステップタイムに、建物D1、建物D2より大きい重みを設定するなどにより加重平均を求めればよい。
【0066】
次に、誤差推定部174は、予測部173により算出された配達先のドアステップタイムと駐車停止位置それぞれの誤差を算出する(ステップS206)。具体的に、ステップS202でドアステップタイムテーブルに含まれる配達先と同一であると判定された配達先であって、複数の駐停車位置が特定されている場合、誤差推定部174は、各駐停車位置のドアステップタイムと位置情報とに基づき、ドアステップタイムと駐車停止位置それぞれの誤差を算出する。例えば、2つの駐停車位置が特定された場合、駐停車位置1のドアステップタイムと駐停車位置2のドアステップタイムとの標準偏差に、駐停車位置1と駐停車位置2のドアステップタイムの平均もしくは最大値を加算することにより、ドアステップタイムの誤差を算出する。また、駐停車位置1と駐停車位置2との距離を求め、求めた距離を駐停車位置の誤差として算出する。なお、駐停車位置が3つ以上ある場合、駐停車位置の距離がもっとも大きい距離を駐停車位置の誤差としてもよいし、駐停車位置間の距離の標準偏差を駐停車位置の誤差としてもよい。
【0067】
また、誤差推定部174は、ステップS202で新たな配達先であると判定された配達先の誤差を算出する場合、住所が同一または類似する複数の配達先のドアステップタイムと駐停車位置とに基づき、上述した方法と同様の方法によりそれぞれの誤差を求める。具体的に、ドアステップタイムの誤差を求める場合、新たな配達先と同一または類似する住所を有する複数の配達先のドアステップタイムの標準編差に、当該複数の配達先のドアステップタイムの平均もしくは最大値を加算することによりドアステップタイムの誤差を算出する。また、駐停車位置の誤差を求める場合、新たな配達先と同一または類似する住所を有する複数の配達先の駐停車位置の中で駐停車位置間の距離がもっとも大きい距離、または、駐停車位置間の距離の標準偏差を算出する。
【0068】
誤差推定部174は、予測部173による予測結果とステップS206で求めたドアステップタイムと駐停車位置それぞれの誤差に基づき、
図11に例示する予測結果テーブルを生成する(ステップS207)。生成された予測結果テーブルは、配達ルート、配達順、配達人数などを含む配達計画を作成する配達計画作成システムに送られ、配達計画作成システムは、予測結果テーブルに含まれる各配達先のドアステップタイム、駐停車位置を考慮して配達計画を作成する。
【0069】
具体的に、例えば、配達計画作成システムは、従来のカーナビゲーションシステムに搭載された経路検索手段を用いて、出発位置から配達先への車両による移動経路を探索する。配達計画作成システムは、得られた探索結果における駐停車位置を特定して、駐停車位置からのドアステップタイムとその誤差を取得することにより、出発位置から配達先へ移動して配達先への配達を完了し、当該配達先の駐停車位置を次の配達先への新たな出発位置とする際の所要時間とその誤差を算定する。配達計画作成システムは、複数の配達先への配達計画を立案する際、この所要時間を短くすることに加え、各配達先の所要時間の誤差の総和が、例えば、営業所で荷物を積載して配達を開始してから営業所に戻るまでの配達スロットで許される誤差の範囲内に収まる配達計画を立案する。
【0070】
以上のように、推定装置100は、配達過程で検知された配達者端末200の位置の時系列データから、配達先毎の駐停車位置を特定して、ドアステップタイムを算出する。推定装置100は、算出したドアステップタイムと駐停車位置とを、配達先に関連付けてデータベースに蓄積する。推定装置100は、蓄積されたデータベースから、配達予定の配達先のドアステップタイムと駐停車位置とを取得する。データベースに登録されていない新たな配達先が配達予定リストに含まれる場合、推定装置100は、住所が同一または類似する複数の配達先のドアステップタイムと駐停車位置とから、新たな配達先のドアステップタイムと駐停車位置との予測を算出する。したがって、より精度の高い配達計画を立てるために必要なドアステップタイムを算出することが可能となる。
【0071】
(変形例)
上記の実施形態では、部分時系列抽出部130は、部分時系列に含まれる各位置との距離がもっとも近い配達先と部分時系列とを紐付けるものとして説明したが、これに限られない。例えば、配達者が配達先に荷物を配達する毎に、配達を完了した旨の情報を登録する運用の場合、部分時系列に含まれる各位置の取得時刻ともっとも時刻の近い配達完了時刻の配達先を、部分時系列に紐付ければよい。
【0072】
また、推定装置100等によって実行されるプログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc),MO(Magneto-Optical Disk),USBメモリ,メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布することも可能である。そして、かかるプログラムを特定の又は汎用のコンピュータにインストールすることによって、当該コンピュータを上記の実施形態における推定装置100として機能させることも可能である。
【0073】
また、上記のプログラムをインターネットといった通信ネットワーク上のサーバ装置が有するディスク装置に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロードするようにしてもよい。また、通信ネットワークを介してプログラムを転送しながら起動実行することによっても、上述の処理を達成することができる。さらに、プログラムの全部又は一部をサーバ装置上で実行させ、その処理に関する情報をコンピュータが通信ネットワークを介して送受信しながらプログラムを実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
【0074】
なお、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを上記の記録媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロードしてもよい。
【0075】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0076】
(付記1)
配達先の住所を含む配達先情報と、該配達先の駐停車位置と、配達者が車両から降車してから配達先へ荷物を配達して該車両に乗車するまでの時間であるドアステップタイムと、を関連付けるドアステップタイム情報を記憶するデータベースに登録されていない新たな配達先情報を取得する配達先情報取得部と、
前記データベースから、前記配達先情報取得部により取得された前記新たな配達先情報の住所と同一もしくは類似する住所を含む複数のドアステップタイム情報を抽出するドアステップタイム情報抽出部と、
前記ドアステップタイム情報抽出部により抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置、および、ドアステップタイムに基づき、前記新たな配達先情報に対する駐停車位置およびドアステップタイムを予測するドアステップタイム予測部と、
を備える推定装置。
【0077】
(付記2)
前記ドアステップタイム情報抽出部は、前記新たな配達先情報の住所の文字列と、前記データベースに登録されている各配達先情報の住所の文字列との類似度を算出し、求めた類似度が閾値以上の、前記データベースに登録されている配達先情報を含むドアステップタイム情報を抽出する、
付記1に記載の推定装置。
【0078】
(付記3)
前記ドアステップタイム予測部は、前記ドアステップタイム情報抽出部により抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置の中心位置を前記新たな配達先情報に対する駐停車位置に予測し、前記複数のドアステップタイム情報に含まれるドアステップタイムの平均を前記新たな配達先情報に対するドアステップタイムに予測する、
付記1または2に記載の推定装置。
【0079】
(付記4)
前記ドアステップタイム予測部は、前記類似度に応じて、前記ドアステップタイム情報抽出部により抽出された複数のドアステップタイム情報の重みをそれぞれ決定し、前記抽出された前記ドアステップタイム情報に含まれるドアステップと決定された重みに基づく加重平均を前記新たな配達先情報に対するドアステップタイムに予測する、
付記2に記載の推定装置。
【0080】
(付記5)
前記ドアステップタイム情報抽出部により抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置およびドアステップタイムのばらつきにより、前記ドアステップタイム予測部により予測された駐停車位置およびドアステップタイムの誤差を推定する誤差推定部、をさらに備える、
付記1から4のいずれか1つに記載の推定装置。
【0081】
(付記6)
コンピュータが、
配達先の住所を含む配達先情報と、該配達先の駐停車位置と、配達者が車両から降車してから配達先へ荷物を配達して該車両に乗車するまでの時間であるドアステップタイムと、を関連付けるドアステップタイム情報を記憶するデータベースに登録されていない新たな配達先情報を取得するステップと、
前記データベースから、取得された前記新たな配達先情報の住所と同一もしくは類似する住所を含む複数のドアステップタイム情報を抽出するステップと、
抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置、および、ドアステップタイムに基づき、前記新たな配達先情報に対する駐停車位置およびドアステップタイムを予測するステップと、
を含む推定方法。
【0082】
(付記7)
コンピュータに、
配達先の住所を含む配達先情報と、該配達先の駐停車位置と、配達者が車両から降車してから配達先へ荷物を配達して該車両に乗車するまでの時間であるドアステップタイムと、を関連付けるドアステップタイム情報を記憶するデータベースに登録されていない新たな配達先情報を取得する処理と、
前記データベースから、取得された前記新たな配達先情報の住所と同一もしくは類似する住所を含む複数のドアステップタイム情報を抽出する処理と、
抽出された前記複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置、および、ドアステップタイムに基づき、前記新たな配達先情報に対する駐停車位置およびドアステップタイムを予測する処理と、
を実行させるプログラム。
【0083】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この開示の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、配達者端末の位置を示す時系列データに基づき、配達先のドアステップタイムを推定する推定装置、推定方法、及びプログラムに好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0085】
100 推定装置、200 配達者端末、300 コンピュータ通信網、110 位置情報取得部、120 移動速度推定部、130 部分時系列抽出部、140 降車乗車位置特定部、150 ドアステップタイム推定部、160 ドアステップタイム記憶部、170 ドアステップタイム予測部、171 配達先情報取得部、172 ドアステップタイム情報抽出部、173 予測部、174 誤差推定部、11 CPU、12 RAM、13 ROM、14 記憶部、15 入力部、16 表示部、17 通信部、99 内部バス、C1,C2,C3,C4,C5,C6,C9,C10、C11 駐停車位置、C7,C8,C12 中心位置、D1,D2,D3 建物。
【要約】
【課題】より精度の高い配達計画を立てるために必要なドアステップタイムを算出する推定装置、推定方法、および、プログラムを提供する。
【解決手段】推定装置100は、配達先の住所を含む配達先情報と、該配達先の駐停車位置と、ドアステップタイムと、を関連付けるドアステップタイム情報を記憶するデータベースに登録されていない新たな配達先情報を取得する配達先情報取得部171と、データベースから、取得された新たな配達先情報の住所と同一もしくは類似する住所を含む複数のドアステップタイム情報を抽出するドアステップタイム情報抽出部172と、抽出された複数のドアステップタイム情報に含まれる駐停車位置、および、ドアステップタイムに基づき、新たな配達先情報に対する駐停車位置およびドアステップタイムを予測するドアステップタイム予測部170と、を備える。
【選択図】
図3