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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】骨移植片の成形および切断のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20240626BHJP
   A61B 17/14 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61F2/46
A61B17/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023501775
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 IB2021056124
(87)【国際公開番号】W WO2022013686
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】102020000016882
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルドーニ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ロメオ,アントニーノ
(72)【発明者】
【氏名】ローザ,アンドレーア
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0255562(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0173852(US,A1)
【文献】特開2008-183412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/46
A61B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨移植片を成形および切断するためのキットであって、
装置であって、
下端(2i)から上端(2s)まで長手方向軸(X)に沿って延在する本体(2)であって、その内部に、成形される骨移植片(100)の挿入のためのハウジング(3)を有する本体(2)と、前記骨移植片(100)を前記ハウジング(3)に挿入するための、前記上端(2s)に位置する上部開口部(4)と、前記骨移植片を支持するように設計された下部支持体(5)と、を備え、
前記本体(2)は、切断面を規定する上面(6)であって、前記上端(2s)に配置され且つ前記上部開口部(4)を含む上面(6)を備え、
前記本体(2)は交換可能であり、選択され且つ前記下部支持体(5)に関連付けられた前記本体(2)に応じて、前記上面(6)は90°から30°の範囲の角度(α)だけ前記長手方向軸(X)に対して傾斜している、装置と、
交換可能である複数の前記本体(2)であって、各々が切断面を規定する上面(6)を有し、前記上面の各々が互いに異なり且つ90°から30°の間の範囲の角度(α)だけ前記長手方向軸(X)に対して予め設定された傾斜を有する複数の本体(2)とを備える、キット。
【請求項2】
前記装置は、前記本体(2)に結合できる係合および調整本体(7)であって、前記本体(2)の前記下端(2i)を形状結合で受け入れるように設計された係合部分(8)と、前記長手方向軸(X)に沿って移動可能であり、前記下部支持体(5)を規定するベース部分(9)とを有する係合および調整本体(7)を備える、請求項1に記載のキット
【請求項3】
前記ベース部分(9)は、前記骨移植片を支持状態で受けるように設計されたフランジヘッド(10)であって、前記係合部分(8)に存在するねじ孔(12)内にねじ込むことができるねじ付きシャンク(11)に接続されたフランジヘッド(10)と、前記フランジヘッド(10)と反対側の位置で前記ねじ付きシャンク(11)に接続されて、前記本体(2)の前記ハウジング(3)内の前記フランジヘッド(10)の位置を調整するために、前記ベース部分(9)を回転させて前記ベース部分(9)を垂直方向に移動させる把持および操作要素(13)とを備える、請求項2に記載のキット
【請求項4】
前記フランジヘッド(10)は、前記骨移植片(100)の中央ボア用の孔開け工具を当接状態で受けるために、前記長手方向軸(X)と同軸の中央キャビティ(24)を備える、請求項3に記載のキット
【請求項5】
前記係合および調整本体(7)は、前記本体(2)と前記係合および調整本体(7)との間の結合を案内して、前記骨移植片に前記長手方向軸(X)に直交する力を加えることにより、切断ステップ中に前記本体(2)内に前記骨移植片(100)を恒久的に固定するように設計された少なくとも第1のアーム(18)を備える、請求項2に記載のキット
【請求項6】
前記係合および調整本体(7)は、前記本体(2)と前記係合および調整本体(7)との間の結合を案内するように設計された少なくとも第2のアーム(21)を備える、請求項5に記載のキット
【請求項7】
前記本体(2)は、前記骨移植片(100)の前記ハウジング(3)の範囲を定める側壁(2b)上に、前記係合および調整本体(7)の前記第1のアーム(18)の挿入のために設計された少なくとも1つの窓(19)を備える、請求項5に記載のキット
【請求項8】
前記本体(2)は、前記骨移植片(100)の前記ハウジング(3)の範囲を定める側壁(2b)上に、前記係合および調整本体(7)の前記第2のアーム(21)を収容するように設計された少なくとも1つの溝(22)を備える、請求項6に記載のキット
【請求項9】
前記装置は、クランプ構成で前記第1のアーム(8)を固定するために、前記第1のアーム(18)の固定ピン(20)を備え、前記クランプ構成では、前記第1のアームは、切断を進めて前記長手方向軸(X)に沿った前記切断のシフトを防止するために、予め定められた固定位置で前記骨移植片(100)を保持する、請求項5に記載のキット
【請求項10】
前記装置は、前記本体(2)と前記係合および調整本体(7)との間の正しい結合および固定のためのセンタリングおよび固定機構(23)を備える、請求項2に記載のキット
【請求項11】
前記センタリングおよび固定機構(23)は、前記係合および調整本体(7)にボール押しボタン(23a)を備え、前記ボール押しボタン(23a)は、前記本体(2)に実現された孔(23b)の内側に係合可能である、請求項10に記載のキット
【請求項12】
前記本体(2)は、前記骨移植片(100)の前記ハウジング(3)の範囲を定める側壁(2b)に配置された少なくとも1つの第1のスリット(14)を備え、前記少なくとも1つの第1のスリット(14)は、前記骨移植片(100)の切断高さを示すように設計された目盛り付きスケール(5)を有する、請求項1に記載のキット
【請求項13】
前記本体(2)は、前記骨移植片(100)の前記ハウジング(3)の範囲を定める前記側壁(2b)の前記第1のスリット(14)の反対側に第2のスリット(16)を備え、前記第2のスリット(16)は、前記骨移植片(100)の切断高さを示すように設計された目盛り付きスケール(17)を有する、請求項12に記載のキット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨移植片を成形および切断するための装置に関する。
【0002】
肩の外方化(lateralisation)、または関節窩の変性疾患による骨の変形がある場合、関節の正しい機能を回復させるために、関節面を横方向に移動させることができる骨移植を見つける必要がある。
【背景技術】
【0003】
現在、肩関節を外方化するために、関節窩の骨構造と当該関節窩上にあるインプラントの一部との間に配置された骨移植片が使用されている。このように配置されたこの骨移植片は、関節の本来の機能を回復させるために、関節面を横方向に移動させる。
【0004】
従来技術では、自家骨移植片は患者自身の骨構造から抽出される。実際、肩関節の再建手術では、上腕骨頭が取り除かれて人工上腕骨頭に置き換えられる。関節窩も、適切な補綴物を挿入することによって置き換えられる。したがって、外科医は、上腕骨頭の除去を利用して、そこから関節の外方化に必要な骨移植片を抽出できる。これを行うために、従来技術では、外科医はキルヒナーワイヤと呼ばれるガイドワイヤを上腕骨頭の正しい位置に挿入する作業を進める。前記ワイヤにより、円筒形状を有するカッタを上腕骨頭に接触させ、これにより、上腕骨頭に骨の円筒部分を刻むことができる。刻まれた骨の前記部分を抽出するために、次に、刻まれた部分を含む骨の部分が適切な平面に沿って切断される。この切断は、外科医によってフリーハンドで行われる。この時点で、骨移植片を抽出できる。抽出される骨移植片は、(ベース面の高さおよび傾斜に関して)術前段階で確立された形状を既に持っている場合がある、または関節の正しい外方化に必要な要件を満たすために、さらに処理が必要になる場合がある。実際、骨移植片が規則的な切断面を有し、そのベースが相互に予め定められた傾斜を有することがしばしば必要である。したがって、手術の種類および個々の患者の骨の構造に応じて、適切な関節機能を回復させるために、互いに平行であり且つ予め定められた角度だけ互いに傾いたベース面を備えた骨移植片が必要になり得る。
【0005】
骨移植片が上腕骨頭の原位置で成形される場合、骨移植片および/または関節窩の準備において関節の適切な外方化に必要な寸法および幾何学的要件を満たさないような寸法および/または幾何学的エラーが生じる可能性がある。このような状況では、術前段階で計画された望ましい最終結果を達成することは不可能である。
【0006】
したがって、円筒形状の骨移植片を抽出して抽出後の後の段階でそれを成形することがしばしば好ましい。
【0007】
骨移植片が抽出されたら、したがって、術前段階で確立されたパラメータを順守するように移植片を準備する必要がある。
【0008】
現在使用されている技術では、この処理はバックテーブルと呼ばれる、手術室にあるサービステーブルで行われる。ここでは、外科医またはその助手が、患者から抽出されたものを成形する。より具体的には、外科医は、骨移植片が正しいサイズであること(すなわち、その軸方向の展開が十分であること)を確認し、骨移植片のベース面が予め定められた傾斜を有することを確認する。これらのパラメータの1つが術前段階で計画されたものに適合しない場合、外科医は、上記のパラメータを計画されたものに適合するように戻すために骨移植片の成形に進む。これらの骨移植片の再配置手術は現在、外科医によってフリーハンドで行われており、多くの欠点がある。
【0009】
実際、再配置段階での切断エラーは、手術の成功を損なう、必要な外方化に対して小さすぎる(すなわち、軸方向の展開が不十分な)骨移植片を得ることにつながり得る。同様に、骨移植片のベースの一方(または両方)の傾斜が誤って修正されると、この場合も手術の失敗につながり得る。残念ながら、これらの手術は外科医によってフリーハンドで行われるので、骨移植片の形状を近似的に補正してしまうことが少なくなく、これは、人工関節の効率が悪くなることにつながり得る。
【0010】
さらに、この段階で外科医が犯したエラーが特に重大である場合、骨移植片が使えなくなる可能性があり、手術の成功が危ぶまれ、自家骨移植片の使用も不可能になる。
【0011】
さらに、外科医が骨移植片をフリーハンドで成形するステップでの骨移植片の取り扱いは、移植片上の体液の存在、その限られたサイズ、および骨移植片が抽出された骨の質の悪さの可能性のために困難である。
【0012】
最後になるが、肩の手術段階で骨移植片を成形するステップが行われなければならず、その結果、患者の手術時間および病院の費用が増加することが、先行技術の欠点として認識されている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することである。
【0014】
特に、本発明の目的は、成形および切断を完全にフリーハンドで行うことを回避するが、外科医にとってこの手術を容易にする特別に設計された器具の補助を提供する、骨移植片を成形および切断するための装置を提案することである。
【0015】
したがって、本発明の目的は、正確な高さを有する骨移植片であって、予め定められた正確な傾斜を有する規則的な対向したベース面を有する骨移植片を成形することを可能にする、骨移植片を成形および切断するための装置を提供することである。したがって、本発明の目的は、骨移植片の高さおよび上面の角度の両方に関して幅広い寸法選択を提供する、骨移植片を成形および切断するための装置を実現することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、限られたサイズまたは体液の存在下でも外科医にとって容易な取り扱いを可能にし、バックテーブル上で成形する可能性を与える、骨移植片を成形および切断するための装置を実現することである。
【0017】
また、本発明の目的は、手術時間を短縮し且つ骨の質が悪い場合でも移植片を形成することを可能にする、骨移植片を成形および切断するための装置を提供することである。
【0018】
これらおよびさらなる目的および利点は、添付の特許請求の範囲による骨移植片を成形および切断するための装置によって達成される。
概要
本発明の第1の態様は、下端から上端まで長手方向軸に沿って延在し且つ成形される骨移植片を挿入するためのハウジングを内部に有する本体を備える、骨移植片を成形および切断するための装置を提供する。本体は、骨移植片をハウジングに挿入するための、上端に配置された上部開口部と、骨移植片を支持するように設計された下部支持体とを備える。本体は切断面を規定する上面を備え、上面は、上端に配置され且つ上部開口部を含む。本体は交換可能であり、選択され且つ下部支持体に関連付けられた本体に応じて、上面は90°から30°、好ましくは90°から60°の範囲の角度だけ長手方向軸に対して傾斜している。
【0019】
骨移植片を成形および切断するための装置は、本体に結合できる係合および調整本体をさらに備え、係合および調整本体は、本体の下端を形状結合(shape coupling)で受け入れるように設計された係合部分と、長手方向軸に沿って移動可能な、下部支持体を規定するベース部分とを有する。
【0020】
ベース部分は、フランジヘッドと、把持および操作要素とを備え、フランジヘッドは、骨移植片を支持状態で受けるように設計されており、係合および調整部分に存在するねじ孔の内側にねじ込むことができるねじ付きシャンクに接続されており、把持および操作要素は、フランジヘッドと反対側の位置でねじ付きシャンクに接続され、支持部を回転させて垂直方向に移動させ、本体のハウジング内のフランジヘッドの位置を調整する。
【0021】
係合および調整本体のベース部分のフランジヘッドは、骨移植片の中央ボアに使用される孔開け工具を当接状態で受け入れるために、長手方向軸と同軸の中央キャビティを備える。
【0022】
係合および調整本体は、本体と係合および調整本体との間の結合を案内して、骨移植片の長手方向軸に直交する力を与えることによって、切断ステップ中に骨移植片を本体内に恒久的に固定するように設計された少なくとも第1のアームを備える。
【0023】
係合および調整本体は、本体と係合および調整本体との間の結合を案内するように設計された少なくとも第2のアームを備える。
【0024】
本体は、骨移植片のハウジングの範囲を定める側壁に配置され且つ係合および調整本体の第1のアームを挿入するように設計された少なくとも1つの窓を備える。
【0025】
本体は、骨移植片のハウジングの範囲を定める側壁に配置され且つ係合および調整本体の第2のアームを収容するように設計された少なくとも1つの溝を備える。
【0026】
装置は、クランプ構成で第1のアームを固定するために第1のアームの固定ピンを備え、第1のアームは、切断を進めるために骨移植片を予め定められた固定位置に保持して長手方向軸に沿ったそのシフトを防止する。
【0027】
装置はまた、本体と係合および調整本体との間の正しい結合および固定のためのセンタリングおよび固定機構を備える。
【0028】
センタリングおよび固定機構は、本体に実現された孔の内部に係合できる、係合および調整本体に配置されたボール押しボタンを備える。
【0029】
本体は、骨移植片のハウジングの範囲を定める側壁に、骨移植片の切断高さを示すように設計された目盛り付きスケールを有する少なくとも1つのスリットを備える。
【0030】
本体はまた、骨移植片のハウジングの範囲を定める側壁の第1のスリットの反対側に、骨移植片の切断高さを示すように設計された目盛り付きスケールを有する第2のスリットを備える。
【0031】
第2の態様では、本発明は、前述に従って骨移植片を成形および切断するための装置と、複数の本体であって、各々が切断面を規定する上面を有し、上面の各々が互いに異なる傾斜を有する複数の本体とを含む、骨移植片を成形および切断するためのキットを提供する。キットに含まれる複数の本体の各本体は、90°から30°の間、好ましくは90°から60°の間の角度だけ長手方向軸に対して他とは異なる予め定められた傾斜を有する上面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明は、例としてのみ提供される添付の図面を参照して、以下の詳細な説明によってより明確になるであろう。
図1】まだ成形されていない骨移植片に関連付けられた、本発明による骨移植片を成形および切断するための装置の正面斜視図を示す。
図2】上面を切断および成形するステップにおいて、骨移植片に関連付けられた、図1に示される骨移植片を成形および切断するための装置の正面斜視図を示す。
図3図1に示される装置の分解斜視図を示す。
図4】前の図に示される装置の背面斜視図を示す。
図5】装置の内部を見ることを可能にするように骨移植片が分離された、図1に示される装置の斜視図を示す、
図6図5に示される装置の正面断面図を示す。
図7図1に示される装置の正面断面図を示す。
【0033】
図8A、8B、8Cは、本発明の装置の主題の構成要素の3つの代替構成を示す。
図8A】本発明の装置の主題の構成要素の一の構成を示す。
図8B】本発明の装置の主題の構成要素の一の構成を示す。
図8C】本発明の装置の主題の構成要素の一の構成を示す。
図9A】上腕骨頭から骨移植片を抽出するために使用されるトレフィンを示す。
図9B】骨移植片をくり抜くために図9Aのトレフィンと共に使用される円筒形状のリーマを示す。
図9C図9Bのトレフィンに結合された図9Aの円筒形状のリーマを示す。
【0034】
図9D、9E、9Fは、骨移植片の抽出のための3つのステップを示す。
図9D】上腕骨頭に接近する円筒形状のリーマおよび一対の孔を示す。
図9E】骨へのカッターの挿入を示す。
図9F】円筒形状の内部に穿孔された移植片の抽出を示す。
図10A図9Aのトレフィンと、トレフィンをガイドワイヤ(Kワイヤ)上で案内し且つトルクをカッターに伝達して骨を切断するアダプタとの分解図を示す。
図10B】骨の質が悪い場合に、使用中にカッターを案内するために骨に固定された安定化本体と結合する使用の第1のステップにおいて、図10Aのアダプタと組み付けられたトレフィンを示す。
図10C】移植片を抽出するためにカッターが骨に食い込んでいる使用の第2のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
上記の図では、本発明による骨移植片を成形および切断するための装置は、総称して1と呼ばれる。
【0036】
以下に説明される装置1は、手術器具を使用し且つ以下に説明される技術を適用することによって、上腕骨頭から得られる骨移植片100を切断および成形するために使用される。
【0037】
骨移植片を抽出するために使用される器具は、図9A-9Fおよび10A-10Cおいて、2つの異なる構成に従って示されており、各々が対応する抽出方法のために使用される。
【0038】
骨移植片100は、トレフィン102(図9A)および円筒形状のリーマ103(図9B)からなるくり抜き器具(coring tool)101、101’(それぞれ図9Cおよび10Aに示される)によって上腕骨頭Oから取られる。第1の構成要素102、すなわち図9Aに見られるトレフィンは、円筒形状の側壁102dであって、有利なことに外部に目盛りが付けられた円筒形状の側壁102dを有する円筒形状の本体と、第1の端部に配置され且つ円筒形状の側面の範囲を定める円形の切断エッジ102bと、によって規定される。トレフィン102は、骨移植片100の外面を切断するために使用される。
【0039】
トレフィン102はさらに、切断端部の反対側にある第2の端部102cを含み、これは、器具を所定の位置に保持することを可能にするボタン104によって、円筒形状のリーマ103との接続として機能する。
【0040】
トレフィン102の内部は中空であり、トレフィン102は、第2の端部102cに、円筒形状のリーマ103が軸方向に挿入される開口部102fを有する。
【0041】
トレフィン102の円筒形状の側壁102dの外面には目盛り付きスケール105があり、これは、外科医がくり抜き深さを選択することを可能にするために役立つ。
【0042】
トレフィン102は、円筒形状の側壁102d上に少なくとも1つ、好ましくは2つの窓102eを有し、当該窓102eは、外科医が外部基準として目盛り付きスケール105を有することによってくり抜き深さを見ることを可能にするように設計されている。
【0043】
器具は、骨移植片のサイズに応じて様々な直径および長さで利用できる。
【0044】
上述のように、くり抜き器具101の第2の構成要素は、展開軸101aに沿って長手方向に細長い形状と、軸101aに沿って長手方向に展開する側縁103bに沿っておよびその自由端103cの両方に存在する切削プロファイルとを有する円筒形状のリーマ103(図9B)である。
【0045】
円筒形状のリーマ103は、一端103dに、円筒形状のリーマ103を回転させる器具を結合するための部分を備える。
【0046】
円筒形状のリーマ103はまた、トレフィン102と結合するように設計された干渉部分103eであって、トレフィン102に回転を伝達する干渉部分103eを有する。
【0047】
円筒形状のリーマ103は、図9A-9Cに示されるように、切断端部とは反対側の端部102cに配置されたトレフィン102の孔102fを通して、トレフィン102の内側に挿入され、したがって、切断接続端103cおよび中央軸方向ブレード103bを備えた円筒形状の側壁を有するくり抜き器具101を得ることが可能になり、このようにして、軸100a全体に沿って移植片の高さ全体を貫通する中央孔を備えた中空の円筒形状の骨移植片100を形成する。したがって、円筒形状のリーマ103は、移植片100の内径を規定する。
【0048】
円筒形状のリーマ103は、トレフィン102に組み付けられ、前述の円筒形状のリーマ103の干渉部分103e(具体的には、トレフィン102に存在する中央孔と逆の形状)によって、骨を切断するために使用されるトルクは、トレフィン102に伝達される。
【0049】
円筒形状のリーマ103は軸方向の貫通孔103fを有し、器具をガイドワイヤF(kワイヤ)に挿入し、このようにして、移植片の準備中にくり抜き器具101を案内することを可能にする。
【0050】
円筒形状のリーマ103は、様々な直径および長さで利用できる。
【0051】
くり抜き器具はまた、骨の質が悪い場合または骨の表面が平らでない場合に使用可能である。
【0052】
骨の質が悪い場合に使用されるくり抜き器具101’は図10A-10Cに示されている。
【0053】
そのような場合では、中央の円筒形状のリーマは、ガイドワイヤF(kワイヤ)上でトレフィン102を案内するために、アダプタ106として機能する別の構成要素に置き換えられる。アダプタは、アダプタの長手方向の展開全体を軸方向に貫通する孔106fを有する細長い円筒形状を有する。ガイドワイヤFは、アダプタ106の孔106fを貫通する。
【0054】
アダプタ106は、円筒形状のリーマ103よりも低い高さを有する。なぜなら、アダプタ106は、移植片の中心にドリルで孔をあける必要がなく、回転トルクをトレフィン102に伝達するだけでよいので、トレフィン102の高さ全体に沿って延在する必要がないからである。
【0055】
この目的のために、アダプタ106は、円筒形状のリーマ103と同様に、トレフィン102と結合するように設計された干渉部分106eを備え、干渉部分106eはトレフィン102に回転を伝達する。
【0056】
トレフィン102は、上述のものと同一であり、したがって、アダプタ106、特に干渉部分106eが挿入される干渉部分106eに結合するように設計された適切な形状の孔102fを有する。
【0057】
アダプタ106とトレフィン102との間の結合は、トレフィンが骨を切断することを可能にするトルクを伝達するために、円筒形状のリーマとトレフィンとの間の結合に関して既に説明したものと同様である。
【0058】
トレフィン102は、トレフィン102の第2の端部102cに位置する孔102fに挿入されるアダプタ106に組み付けられ、干渉部分103e(具体的には、トレフィン102に存在する中央孔と逆の形状)によって、骨を切断するために使用されるトルクは、トレフィン102に伝達される。
【0059】
骨の質が悪い場合でも、トレフィンが骨移植片を正しくくり抜くために、安定化本体107(図10B)は、ガイドワイヤFによって骨に固定されてその使用中にカッターを案内する。安定化本体107の寸法は、抽出される骨移植片の寸法に適合するように、様々な直径および長さで利用可能である。
【0060】
骨移植片が得られたら、それを成形する必要がある。特に、高さを調整する必要があり、2つのベースのうち少なくとも1つは、人工関節と結合するように設計された傾斜面に沿って切断されて、正しい関節機能が回復されなければならない。
【0061】
本発明の主題である装置1は、この成形および切断手術に使用され、以下に詳細に説明される。
【0062】
図1-8Cに示される成形および切断装置1は、上記の方法に従って器具101、101’を用いて抽出される骨移植片を保持して安定に保つのに役立つ。成形および切断装置1は、成形される骨移植片を挿入するためのハウジング3を内部に有する本体2を備える。
【0063】
本体2は、長手方向軸Xに沿って下端2iから上端2sまで延在する。本体2は、上端2sに位置する上部開口部4を有し、上部開口部4を通して骨移植片がハウジング3に挿入される。
【0064】
装置1は、骨移植片を支持するように設計された下部支持体5をさらに有する。
【0065】
上端2sに、中央本体2は、上部開口部4を含む、切断面を規定する上面6を有する。上面6は、90°から30°の間、好ましくは90°から60°の間の範囲の角度αだけ長手方向軸Xに対して傾斜してもよい。
【0066】
本体2は交換可能である、すなわち、本体2の直径および高さにおいて異なるサイズが提供される。移植片の所望の傾斜に応じて、適切な傾斜を有する上面6を有する中央本体2が選択されて、下部支持体5と関連付けられる。長手方向軸Xに対する上面6の傾斜は、90°から30°の間、好ましくは90°から60°の間の範囲の角度αを形成する。
【0067】
したがって、様々な角度の上面6を持つ中央本体2が、図8A-8Cに示されるように、利用できる。ここでは、もっぱら例として、長手方向軸Xに直交する面に対して0°、10°および30°だけ傾斜した面を有する本体2が表されている。
【0068】
本体2の交換可能性により、所望の傾斜を有し且つ骨移植片100に与えられる形状に適切な上面6の選択が可能になる。
【0069】
骨移植片100がハウジング内に挿入されて固定されると、ブレードL(図2)は、上面6によって規定される切断面上をスライドすることによって、術前段階で確立された傾斜に従って骨移植片の上部を正確に切断し、これにより、成形手術が大幅に高速化され、高精度の切断および正しい望ましい傾斜が保証される。
【0070】
装置1は、本体2の下方に結合できる係合および調整本体7をさらに備える。
【0071】
本体2が選択され、得られる骨移植片に適した寸法を有すると、それは係合および調整本体7と結合される。
【0072】
係合および調整本体7は、本体2の下端2iを形状結合で受け入れるように設計された係合部分8と、装置1の前述の下部支持体5を規定するベース部分9とを有する。ベース部分9は、骨移植片の切断高さ、したがって最終的な高さを規定するように、長手方向軸Xに沿って移動可能である。
【0073】
ベース部分9は、フランジヘッド10を含み、その上に骨移植片が置かれ、フランジヘッド10は、その下部で、係合部分8に存在するねじ孔12内にねじ込み可能なねじ付きシャンク11に接続されており、ベース部分9は、フランジヘッド10とは反対側の位置でねじ付きシャンク11に接続された、ノブなどの把持および操作要素13を含む。把持および操作要素13によって、ねじ付きシャンク11、および、ひいてはフランジヘッド10は、シャンク11と孔12との間のねじ結合のおかげで、骨移植片の実際の支持面を規定するフランジヘッド10が本体2のハウジング内の所望の高さに達するまで、回転されて上方または下方に移動される。
【0074】
詳細には、本体2は、骨移植片のハウジング3の範囲を定める側壁2bに、垂直方向に、したがって長手方向軸Xに平行に延びた少なくとも1つのスリット14を備え、これは、フランジヘッド10の高さの位置を視認して正確に調整できるように、ハウジング3の内部に視認性を与える。より高い精度のために、スリット14は、フランジヘッド10の正確な垂直位置、したがって骨移植片の高さの正確な測定を示すように設計された目盛り付きスケール15に隣接している。この寸法は通常、手術前に決定されるが、本発明の装置の主題は、手術成形ステップ中に形状(骨移植片の高さおよびベース面の傾斜に関して)を調整することを可能にする。実際、手術中に最も適切な高さを成形するために、可能な限り軸方向の展開を有する骨移植片を抽出することが好ましい。
【0075】
有利には、第1のスリット14の反対側に同様の第2のスリット16がある。第2のスリット16も、骨移植片のハウジング3の範囲を定める側壁2bに形成され、フランジヘッド10の正確な垂直位置、したがって、骨移植片の高さの正確な測定を示すように設計された目盛付きスケール17を有する。この第2のスリット16により、骨移植片の切断高さを反対側からも制御できるので、装置のより良い使用が可能になる。
【0076】
係合および調整本体7は、本体2と結合するために、係合部分8から上方に突出する少なくとも第1のアーム18を備える。
【0077】
前記第1のアーム18は、本体2と係合および調整本体7自体との間の結合を案内し、主に、切断ステップ中に本体2内に骨移植片を恒久的に固定するように設計されている。実際、第1のアーム18は、骨移植片に横方向に作用して長手方向軸Xに直交する力を骨移植片に与える。
【0078】
したがって、本体2は、係合および調整本体7の第1のアーム18の挿入のために設計された、骨移植片のハウジング3の範囲を定める側壁2b上に、少なくとも1つの窓19を備え、これは、第1のアーム18と骨移植片100との間の直接接触を可能にする。
【0079】
非使用位置では、第1のアーム18は、ヒンジ接続18bの存在のおかげで、図6に見られるように、係合部分8から離れてわずかに広がる。骨移植片100がハウジング3の内側に挿入される場合に、第1のアーム18は、外科医によって外側から内側に向かって半径方向に加えられる圧力によって、または固定ピン20によって、骨移植片100に対してクランプされる。前記ピン20は、第1のアーム18にクランプ構成でねじ込まれ、それ自体を係合部分8に挿入する。このようにして、第1のアーム18は、外科医が安全に切断を進めることを可能にし長手方向軸Xに沿った骨移植片100のシフトを防止するために、骨移植片を予め定められた固定位置に保持する。これにより、外科医が第1のアーム18に常に圧力をかけ続ける必要がなくなり、外科医はグリップを解放して手を自由にできる。さらに、第1のアームのグリップを解放することによって、外科医は手を切断ブレードから離し、起こり得る怪我を防止できる。
【0080】
係合および調整本体7は、本体2と結合するために、係合部分8から上方に突出する少なくとも第2のアーム21をさらに備える。第2のアーム21は、有利には、係合部分8の長手方向軸Xに対して、第1のアーム18の位置とは反対の位置に配置される。
【0081】
第2のアーム21は、主に、本体2と係合および調整本体7との間の結合を案内するように設計されている。
【0082】
係合および調整本体7の第2のアーム21を収容するために、本体2は、骨移植片のためのハウジング3の範囲を定めるその側壁2bに少なくとも1つの溝22を含む。溝21に代えて、本体2は窓を備えてもよい。
【0083】
本体2と係合および調整本体7との間の正しい結合および固定をさらに確実にし且つ改善するために、装置1は、センタリングおよび固定機構23をさらに備える。
【0084】
有利には、前記センタリングおよび固定機構23は、係合および調整本体7に、本体2上に実現された孔23cの内側に係合できるボール押しボタン23bを備える。
【0085】
好ましくは、フランジヘッド10は、骨移植片が載置されるその上面に、骨移植片の中央ボア用の孔開け工具を当接状態で受け入れるために、長手方向軸Xと同軸の中央キャビティ24を備える。
【0086】
本発明はさらに、上記による装置と、複数の本体2であって、各々が切断面を規定する上面6を有し、上面6の各々が互いに異なる傾斜であって、90°から30°の間、好ましくは90°から60°の間の範囲の角度αだけ長手方向軸Xに対して予め定められた傾斜を有する複数の本体2とを備える、骨移植片を成形するためのキットを提供する。
【0087】
使用時には、成形される骨移植片の上面6の寸法および傾斜に最も適した本体2が選択され、係合および調整本体7と結合される。
【0088】
上述のように、骨移植片が上腕骨頭から抽出されると、成形および切断される移植片は、上部開口部4を通して、装置1の中央本体2のスリット3に挿入される。
【0089】
次いで、フランジヘッド10の高さは、事前に確立された切断高さ、したがって移植骨の高さを得るために、ハウジング3内のフランジヘッドの高さを第1の目盛り付きスリット14を通して見ながら、正しい位置に調整される。
【0090】
骨移植片は、単純な手の圧力によって、またはピン20をクランプすることによって、骨移植片の側壁に対して第1のアーム18をクランプすることによって、所定の位置に保持される。
【0091】
この時点で、結合は装置1の内部に固定され、切断面を規定する傾斜面6上をブレードでスライドすることによって切断を安全に行うことができる。
【0092】
骨移植片は、少なくともガイドワイヤの通過のために、常に軸方向の貫通孔を有する。したがって、孔をリーマ加工する必要がある場合、フランジヘッド10の上面にあるキャビティ24の存在は、適切な孔開け工具の孔開けヘッドが当接するエンドストップまたはくぼみとして機能する。
【0093】
本発明は、骨移植片をインプラントに結合せずに成形することを可能にすることにより、意図した目的を達成し、成形中にインプラントが切断器具によって損傷を受けないことを保証する。
【0094】
さらに、この装置はバックテーブルでの成形を可能にし、手術時間を大幅に短縮し、骨移植片の正確な切断および成形を保証する。
【0095】
本発明の装置の主題はまた、骨移植片を成形するために様々な厚さおよび角度を選択する可能性を提供する。
【0096】
骨の質が悪い場合または同種移植片の場合には、バックテーブル上で骨移植片に中央孔を形成することも可能である。
【0097】
したがって、この装置は、任意の種類の骨質および任意の種類のインプラントに使用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A-9B】
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C