(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】光コネクタ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2023505101
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2021042889
(87)【国際公開番号】W WO2022190467
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2021039283
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】清野 里々花
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-153511(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0066306(KR,A)
【文献】国際公開第2019/186657(WO,A1)
【文献】実開平03-119804(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36 - 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを保持するフェルールと、
前記フェルールを保持する保持部と、
前記保持部が有するスリーブ固定部に、先端が固定される保護スリーブと、
前記スリーブ固定部の少なくとも一部を内部に収容するインナーハウジングと、
前記インナーハウジングの少なくとも一部を内部に収容するアウターハウジングと、を備え、
前記インナーハウジングは、径方向に傾倒可能な爪部を有し、
前記爪部は、前記アウターハウジングの内側に位置した状態では、径方向内側に傾倒することで前記保護スリーブに圧力を加えるように構成されて
おり、
前記爪部は、前記スリーブ固定部と対向する位置に配置されている、光コネクタ。
【請求項2】
前記スリーブ固定部は、長手方向に間隔を空けて配置されるとともに径方向外側に突出した複数の突起を有し、
前記爪部は、前記複数の突起の少なくとも一部と対向する位置に配置される、請求項
1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
長手方向から見て、前記爪部の内周面は円弧形状である、請求項1
または2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記爪部は、前記保護スリーブに圧力を加える状態において、前記アウターハウジングに当接する当接面を有し、
前記当接面は前記アウターハウジングの内面に対して傾斜している、請求項1から
3のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記保護スリーブの内側には抗張力体が配置され、
前記抗張力体が前記爪部と前記スリーブ固定部との間に位置している、請求項1から
4のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタに関する。
本願は、2021年3月11日に、日本に出願された特願2021-039283号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フェルール部材に保持された内蔵ファイバを、他の光ファイバに融着接続し、その融着接続部を保護スリーブによって保護した構成を有する光コネクタが開示されている。保護スリーブは、熱収縮によって、フェルール部材のフランジ部に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保護スリーブには張力が作用する場合がある。特許文献1のように、加熱による収縮力のみによって保護スリーブを固定した場合には、固定状態が不安定になりやすい。その結果、張力によって保護スリーブがフェルール部材から脱落する可能性があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、保護スリーブの固定状態を安定させた光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る光コネクタは、光ファイバを保持するフェルールと、前記フェルールを保持する保持部と、前記保持部が有するスリーブ固定部に、先端が固定される保護スリーブと、前記スリーブ固定部の少なくとも一部を内部に収容するインナーハウジングと、前記インナーハウジングの少なくとも一部を内部に収容するアウターハウジングと、を備え、前記インナーハウジングは、径方向に傾倒可能な爪部を有し、前記爪部は、前記アウターハウジングの内側に位置した状態では、径方向内側に傾倒することで前記保護スリーブに圧力を加えるように構成されている。
【0007】
上記態様によれば、爪部をアウターハウジングの内側に位置させることで、爪部を径方向内側に傾倒させて、保護スリーブに圧力を加えることができる。この圧力によって、保護スリーブをスリーブ固定部に固定することが可能となる。このため、例えば保護スリーブの熱収縮力など、加熱によって固定状態が影響を受ける構造のみによって保護スリーブを固定する場合と比較して、固定状態を安定させることができる。
【0008】
ここで、前記爪部は、前記スリーブ固定部と対向する位置に配置されていてもよい。
【0009】
また、前記スリーブ固定部は、長手方向に間隔を空けて配置されるとともに径方向外側に突出した複数の突起を有し、前記爪部は、前記複数の突起の少なくとも一部と対向する位置に配置されてもよい。
【0010】
また、長手方向から見て、前記爪部の内周面は円弧形状であってもよい。
【0011】
また、前記爪部は、前記保護スリーブに圧力を加える状態において、前記アウターハウジングに当接する当接面を有し、前記当接面は前記アウターハウジングの内面に対して傾斜していてもよい。
【0012】
また、前記保護スリーブの内側には抗張力体が配置され、前記抗張力体が前記爪部と前記スリーブ固定部との間に位置していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記態様によれば、保護スリーブの固定状態を安定させた光コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る光コネクタの斜視図である。
【
図4】
図2のフェルール、第1部材、および第2部材を抜き出した図である。
【
図5】本実施形態の光コネクタについて、ケースおよびアウターハウジングが装着される前の状態の断面図である。
【
図7】
図5のインナーハウジングに対してアウターハウジングを装着した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態の光コネクタについて図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、光コネクタ1は、ケース10と、アウターハウジング20と、インナーハウジング30と、フェルール40と、保持部2と、付勢部材60と、保護ユニット80と、ブーツ90と、を備える。光コネクタ1は、光ケーブルCの端部に設けられる。フェルール40は、ファイバ孔41と、ファイバ孔41が開口する接続端面42と、を有する。
【0016】
(方向定義)
本実施形態では、ファイバ孔41が延びる方向を長手方向Xという。長手方向Xに直交する一方向を第1方向Zといい、長手方向Xおよび第1方向Zの双方に直交する方向を第2方向Yという。長手方向Xにおいて、フェルール40の接続端面42側を前方(+X側)または先端側という。前方とは反対の方向を後方(-X側)または基端側という。長手方向Xから見て、ファイバ孔41の中心軸に交差する方向を径方向といい、前記中心軸回りに周回する方向を周方向という。第1方向Zを上下方向という場合がある。第1方向Zに沿う一方向を上方(+Z側)という場合がある。上方とは反対の方向を下方(-Z側)という場合がある。また、第2方向Yに沿う一方向を左方(+Y側)と言う場合がある。左方とは反対の方向を右方(-Y側)という場合がある。
【0017】
図1に示すように、ケース10は長手方向Xに延びる四角形の筒状である。ケース10の径方向内側に、アウターハウジング20、インナーハウジング30、フェルール40等が配置されている。フェルール40は、ケース10から前方に突出している。
図2に示すように、アウターハウジング20は長手方向Xに延びる四角形の筒状である。なお、ケース10およびアウターハウジング20の形状は適宜変更可能であり、例えば円筒状であってもよい。アウターハウジング20には、一対の係止孔21が形成されている。一対の係止孔21はそれぞれ、アウターハウジング20の右側面(右方を向く面)および左側面(左方を向く面)に形成されている。つまり、一対の係止孔21は、ファイバ孔41を中心にして径方向対称に形成されている。
【0018】
図3に示すように、インナーハウジング30は、第1筒部30aと、第1筒部30aよりも後方に位置する第2筒部30bと、を有する。第1筒部30aは、長手方向Xに延びる断面が四角形の筒状である。第2筒部30bは、長手方向Xに延びる円筒状である。第1筒部30aの少なくとも一部は、アウターハウジング20の内側に収容される。
【0019】
第1筒部30aの上面(上方を向く面)および下面(下方を向く面)にはそれぞれ、スリット31および爪部32が形成されている。つまり、インナーハウジング30は、径方向対称に一対のスリット31および一対の爪部32を有している。上下のスリット31および爪部32は、互いに上下対称な形状を有している。各スリット31は、第1方向Zから見て、後方に向けて開口するC字状である。インナーハウジング30のうち、スリット31によって囲われた部分が爪部32である。爪部32の基端部(後方の端部)は第1筒部30aに接続されている。
【0020】
爪部32は第1筒部30aに対して弾性変形が可能な部位である。爪部32は、当該爪部32の先端側に外力を受けると、基端部(基端側)を基点として、第1方向Zにおいて弾性変形可能に構成されている。つまり、本実施形態の場合、上方に位置する爪部32は下方に向けて傾倒可能であり、下方に位置する爪部32は上方に向けて傾倒可能である。爪部32の先端部(前方の端部)には、第1方向Zにおける外側に向けて突出した凸部36が形成されている。凸部36は、傾斜面36a(第1の傾斜面)と、当接面36bと、を有する。
【0021】
傾斜面36aは、インナーハウジング30がアウターハウジング20に対して後方から挿入されることを容易にするために設けられている。傾斜面36aは、後方に向かうに従って第1方向Zにおける外側に向かうように傾斜している。当接面36bは、傾斜面36aの後方に位置している。当接面36bは、インナーハウジング30がアウターハウジング20内に挿入された際に、アウターハウジング20の内面に当接する(
図7参照)。当接面36bの詳細については後述する。
【0022】
図3に示すように、第1筒部30aの上面には、キー溝35が形成されている。キー溝35は、インナーハウジング30の前端から後方に向かって窪んでいる。
第1筒部30aの右側面(右方を向く面)および左側面(左方を向く面)にはそれぞれ、係止片33と、2つのスリット34と、が形成されている。左右の係止片33およびスリット34は、径方向において互いに左右対称な形状を有している。第1筒部30aの右側面および左側面にそれぞれ形成された2つのスリット34は、第1方向Zに間隔を空けて配置され、長手方向Xに沿って延びている。これら2つのスリット34同士の間に配置される部位が係止片33である。
【0023】
長手方向Xにおける係止片33の中央部には、係止突起33aが形成されている。各係止突起33aは、第1筒部30aの右側面または左側面よりも、第2方向Yにおける外側に突出している。インナーハウジング30が、アウターハウジング20に対して当該アウターハウジング20の後方から挿入される。そして、係止突起33aがアウターハウジング20の係止孔21内に係止されることで、インナーハウジング30がアウターハウジング20に連結される。インナーハウジング30のアウターハウジング20に対する連結を容易にするため、係止突起33aには、後方に向かうに従って第2方向Yにおける外側に向けて傾斜する傾斜面33b(第2の傾斜面)が形成されている。
【0024】
図4に示すように、フェルール40は、長手方向Xに延びる円筒状である。フェルール40の材質としては、例えばジルコニアを採用できる。フェルール40のファイバ孔41には、光ファイバFが挿入されている(
図5参照)。光ファイバFは、例えば接着剤等によって、フェルール40に固定されている。光ファイバFの端部は接続端面42に露出している。
【0025】
図4に示すように、フェルール40の後端部は、保持部2によって保持されている。本実施形態の保持部2は、別体の第1部材50および第2部材70が組み合わされた構造を有する。ただし、保持部2は1つの部材(例えば第1部材50および第2部材70が一体となった部材)であってもよい。
第1部材50は、フランジ部51と、摺動筒部52と、を有する。フランジ部51は筒状であり、フェルール40の後端部を囲っている。フランジ部51の内側にフェルール40が嵌合されている。フランジ部51の後端面51aは、付勢部材60によって、前方に向けて付勢される(
図2参照)。このため、フランジ部51によって保持されたフェルール40も前方に向けた付勢力を受ける。
【0026】
図4に示すように、摺動筒部52は、フランジ部51から後方に延びている。摺動筒部52の外径はフランジ部51の外径より小さい。摺動筒部52は、第2部材70が有する囲繞筒部71の内側に位置している。摺動筒部52は、囲繞筒部71に対して長手方向Xに摺動可能である。摺動筒部52には、上方に向けて突出したスライドリブ53が形成されている。スライドリブ53は長手方向Xに沿って直線状に延びている。スライドリブ53は、囲繞筒部71に形成されたスライド溝72の内側に位置しており、スライド溝72に対して摺動する。摺動筒部52の後端部には、一対の抜け止め54が形成されている。抜け止め54は、摺動筒部52から、第2方向Yにおける外側に向けて突出している。
【0027】
各抜け止め54は、囲繞筒部71に形成された一対の孔部75の内側に位置している。これにより、第1部材50と第2部材70とが連結されている。
図4に示すように、長手方向Xにおいて、抜け止め54の寸法は孔部75の寸法より小さい。抜け止め54が孔部75の前端部に位置している状態において、囲繞筒部71の前端面71aとフランジ部51の後端面51aとの間には、長手方向Xにおける隙間が設けられる。この隙間の範囲内で、第1部材50が第2部材70に対して後方にスライドすることができる。
【0028】
第2部材70は、囲繞筒部71と、スリーブ固定部73と、第2フランジ部74と、を有する。囲繞筒部71は長手方向Xに延びる円筒状である。第2フランジ部74は、囲繞筒部71の後端部に位置し、径方向外側に向けて突出している。第2フランジ部74は、前方を向くバネ受け面74aを有する。付勢部材60が、フランジ部51の後端面51aと第2フランジ部74のバネ受け面74aとの間で圧縮されることで、先述の付勢力が生じる(
図2参照)。付勢部材60としては、例えばコイルバネを用いることができる。第2フランジ部74には、上方に向けて突出したキー部76が形成されている。図示は省略するが、光コネクタ1が組み立てられた状態において、キー部76はインナーハウジング30のキー溝35内に挿入される。
【0029】
スリーブ固定部73は、第2フランジ部74から後方に延びた円筒状である。スリーブ固定部73の外径は、囲繞筒部71の外径より小さい。スリーブ固定部73には、複数の突起73aが形成されている。複数の突起73aは、スリーブ固定部73から径方向外側に突出するとともに、長手方向に間隔を空けて配置されている。スリーブ固定部73には、保護ユニット80の前端部が固定される(
図5参照)。
【0030】
光コネクタ1が他の光コネクタに接続される際には、フェルール40の接続端面42が、他の光コネクタ1が有するフェルールに突き当てられる。このときフェルール40は、付勢部材60による前方に向けた付勢力に抗して、後退する。より詳しくは、フェルール40および第1部材50が一体となって、付勢部材60を長手方向Xに圧縮しながら、第2部材70に対して後退する。このとき、光ファイバFは囲繞筒部71の内部で撓むことができる。
【0031】
図5は、本実施形態の光コネクタ1について、ケース10およびアウターハウジング20が装着される前の状態の断面図である。
図6は、
図5のVI-VI断面矢視図である。
図7は、
図5のインナーハウジング30に対してアウターハウジング20を装着した状態の断面図である。なお、
図2および
図6は、保護スリーブ81が加熱収縮される前の状態を示している。
図5および
図7は、保護スリーブ81が加熱収縮した後の状態を示している。
【0032】
図5および
図6に示すように、保護ユニット80は、保護スリーブ81と、一対の抗張力体82と、棒状抗張力体83と、接着層84と、を有する。保護スリーブ81は長手方向Xに延びる筒状である。保護スリーブ81としては、熱収縮チューブを用いることができる。
【0033】
スリーブ固定部73に固定される前の保護スリーブ81は、スリーブ固定部73に形成された複数の突起73aの最大外径よりも大きい内径を有する。保護スリーブ81がスリーブ固定部73および複数の突起73aを覆った状態で、保護スリーブ81を加熱すると、保護スリーブ81が熱収縮する。これにより、
図5および
図7に示すように、保護スリーブ81が突起73aを締め付けるように収縮し、保護スリーブ81がスリーブ固定部73に固定される。
【0034】
一対の抗張力体82および棒状抗張力体83は、保護スリーブ81の内側に配置されている。
図5に示すように、抗張力体82は、長手方向Xに延びるシート状である。抗張力体82としては、例えば、繊維を織ることで得られた布や、繊維を樹脂で固めたシート材を用いることができる。繊維としては、例えばアラミド繊維あるいはガラス繊維等を採用できる。保護スリーブ81がスリーブ固定部73に固定された状態において、各抗張力体82は突起73aと保護スリーブ81との間に挟まれる。一対の抗張力体82は、スリーブ固定部73の上方および下方にそれぞれ配置される。
【0035】
棒状抗張力体83は、長手方向Xに延びる棒状(例えば円柱状)である。棒状抗張力体83としては、任意の材質を採用可能である。棒状抗張力体83は、スリーブ固定部73よりも後方に位置する。接着層84は、例えばホットメルト接着剤等の、加熱によって軟化する材質によって形成されている。本実施形態では、
図6に示すように、光コネクタ1の組み立て前の状態における接着層84は筒状であり、一対の抗張力体82および棒状抗張力体83の径方向内側に配置されている。保護スリーブ81を加熱する際に、接着層84は軟化し、少なくとも一部が保護スリーブ81の内周面に付着して一体化する。
図5、
図7において接着層84の図示は省略されている。接着層84は、例えば保護スリーブ81の内周面に予め塗布されていてもよい。
【0036】
図5に示すように、光ファイバFは、元は別体であった2本の光ファイバ(内蔵ファイバF1および接続ファイバF2)が、融着接続点Pにおいて融着接続された構造を有する。つまり、本実施形態の光コネクタ1は、いわゆる融着接続型コネクタである。保護ユニット80は、融着接続点Pを覆って保護する役割を有する。内蔵ファイバF1は、内蔵ファイバF1と接続ファイバF2とが融着接続される前に、予めフェルール40に固定される光ファイバである。接続ファイバF2は、光ケーブルC(
図1参照)に内蔵された光ファイバである。
【0037】
光ケーブルCの端部に光コネクタ1を設ける作業、すなわち、内蔵ファイバF1と接続ファイバF2とを融着接続する作業は、光ケーブルCの敷設現場において行われる場合がある。したがって、融着接続の後に行われる、保護スリーブ81を加熱する作業も、光ケーブルCの敷設現場において行われる場合がある。
なお、1本の光ケーブルCに対して、複数の光コネクタ1が設けられてもよい。
【0038】
次に、光コネクタ1の組み立て方法(製造方法)について説明する。
【0039】
まず、フェルール40を、第1部材50のフランジ部51の内側に挿入および固定する。その後、内蔵ファイバF1を、第1部材50を介してフェルール40に挿通させ、当該フェルール40の接続端面42に内蔵ファイバF1の先端側の端部を合わせた(露出させた)状態で、接着剤により固定する。そして、付勢部材60および第2部材70の内側に内蔵ファイバF1を挿通した上で、第1部材50と第2部材70とを接続する。具体的には、付勢部材60を囲繞筒部71の外側にセットした状態で、摺動筒部52を囲繞筒部71の内側に挿入する。このとき、スライドリブ53をスライド溝72内に位置させ、抜け止め54を孔部75内に位置させる(
図4参照)。
【0040】
このようにして、内蔵ファイバF1、フェルール40、第1部材50、付勢部材60、および第2部材70を組み合わせると、内蔵ファイバF1の基端側の一部は、第2部材70が備えるスリーブ固定部73から後方に延出した状態となる。なお、この状態において、内蔵ファイバF1の基端側は保護のための樹脂が被覆されている。このため、融着接続の前に当該被覆樹脂を剥がしておくことが一般的に行われる。
次に、内蔵ファイバF1の被覆が剥がされた基端側と接続ファイバF2とを融着接続する。このとき、予めインナーハウジング30内に接続ファイバF2および保護ユニット80を挿通させておく。
【0041】
次に、保護スリーブ81をスリーブ固定部73に固定させる。具体的には、保護スリーブ81をスリーブ固定部73に被せて、保護スリーブ81を加熱する。加熱に伴い、保護スリーブ81が熱収縮し、スリーブ固定部73の突起73aを締め付ける。また、保護スリーブ81の内側に配置された接着層84が軟化するとともに、冷却に伴って硬化する。これにより、保護スリーブ81がスリーブ固定部73に接着固定される。このとき、抗張力体82はスリーブ固定部73と保護スリーブ81との間で挟まれるため、抗張力体82もスリーブ固定部73に固定される。
【0042】
次に、インナーハウジング30を保持部2(第2部材70)に対して前方に移動させる。これにより、
図5に示す状態となる。
図5では図示されていないが、インナーハウジング30のキー溝35内に保持部2のキー部76が進入することで、保持部2のインナーハウジング30に対する回転が規制される。また、保護ユニット80は保持部2に固定されている。したがって、一対の抗張力体82および一対の爪部32の、周方向における相対位置がずれてしまうことが抑制される。言い換えると、一対の爪部32同士の間に、一対の抗張力体82が位置した状態となる。
【0043】
次に、
図7に示すように、アウターハウジング20をインナーハウジング30に装着する。より具体的には、フェルール40、保持部2、およびインナーハウジング30を、アウターハウジング20に対して当該アウターハウジング20の後方から挿入する。このとき、インナーハウジング30の凸部36および係止突起33aに、それぞれ傾斜面36a、傾斜面33bが形成されているため、挿入作業が容易である。インナーハウジング30の係止突起33aがアウターハウジング20の係止孔21内に進入することで、アウターハウジング20とインナーハウジング30とが連結される。
【0044】
ここで、アウターハウジング20内にインナーハウジング30を挿入すると、凸部36がアウターハウジング20の内壁によって径方向内側に押される。これは、インナーハウジング30をアウターハウジング20に挿入する前の状態における、一対の凸部36の径方向外端の間の距離が、アウターハウジング20の内部空間の第1方向Zにおける寸法より大きいためである。凸部36が押されることで、爪部32は径方向内側に向けて傾倒し、保護スリーブ81を押圧する。
【0045】
爪部32が保護スリーブ81を押圧することにより、保護スリーブ81が爪部32と突起73aとの間に挟まれる。この構成により、保護スリーブ81のスリーブ固定部73に対する固定力を高めることができる。保護スリーブ81のスリーブ固定部73に対する固定力は、例えば、保護スリーブ81を後方に引っ張り、保護スリーブ81がスリーブ固定部73から抜けた際の力の大きさによって表すことが可能である。
【0046】
また、一対の抗張力体82はそれぞれ、爪部32とスリーブ固定部73との間に位置している。したがって、保護スリーブ81とともに抗張力体82も爪部32と突起73aとの間で挟まれる。保護スリーブ81の熱収縮力のみによって、保護スリーブ81および抗張力体82をスリーブ固定部73に固定する場合と比較して、保護スリーブ81および抗張力体82をより強固にスリーブ固定部73に固定することができる。
【0047】
爪部32がアウターハウジング20の内側で傾倒した状態において、凸部36の当接面36bはアウターハウジング20の内面に当接する。ここで、
図7に示すように、当接面36bはアウターハウジング20の内面に対して傾斜している。したがって、当接面36bの後端部のみがアウターハウジング20に対して当接している。この構成によれば、当接面36bの全体をアウターハウジング20に対して当接させる場合と比較して、爪部32の径方向内側への傾倒量をより安定させることができる。爪部32の傾倒量が安定することで、保護スリーブ81に加わる圧力も安定する。
【0048】
その後、ケース10をアウターハウジング20の外側に装着することで、光コネクタ1の組み立てが完了する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の光コネクタ1は、光ファイバFを保持するフェルール40と、フェルール40を保持する保持部2と、保持部2が有するスリーブ固定部73に、先端が固定される保護スリーブ81と、スリーブ固定部73の少なくとも一部を内部に収容するインナーハウジング30と、インナーハウジング30の少なくとも一部を内部に収容するアウターハウジング20と、を備え、インナーハウジング30は、径方向に傾倒可能な爪部32を有し、爪部32は、アウターハウジング20の内側に位置した状態では、径方向内側に傾倒することで保護スリーブ81に圧力を加えるように構成されている。このような構成を有する光コネクタ1によれば、爪部32をアウターハウジング20の内側に位置させることで、爪部32を径方向内側に傾倒させて、保護スリーブ81に圧力を加えることができる。この圧力によって、保護スリーブ81をスリーブ固定部73に固定することが可能となる。このため、例えば保護スリーブ81の熱収縮力や接着層84による接着等、加熱によって固定状態が影響を受ける構造のみによって保護スリーブ81を固定する場合と比較して、固定状態を安定させることができる。
【0050】
また、
図7に示すように、爪部32は、第1方向Zにおいてスリーブ固定部73と対向する位置に配置されている。この構成によれば、爪部32が保護スリーブ81を径方向内側に押圧する力を用いて、爪部32とスリーブ固定部73との間で保護スリーブ81を挟持することができる。したがって、スリーブ固定部73に対する保護スリーブ81の固定力をより高めることができる。
【0051】
また、スリーブ固定部73は、長手方向Xに間隔を空けて配置されるとともに径方向外側に突出した複数の突起73aを有し、爪部32は、第1方向Zにおいて複数の突起73aの少なくとも一部と対向する位置に配置されている。この構成によれば、爪部32が保護スリーブ81に加える圧力によって、突起73aを保護スリーブ81に食い込ませることができる。したがって、スリーブ固定部73に対する保護スリーブ81の固定力をより高めることができる。
【0052】
また、
図6に示すように、長手方向Xから見て、爪部32の内周面32aは円弧形状である。この構成によれば、爪部32が径方向内側に傾倒したときに、爪部32と保護スリーブ81との接触面積を大きくすることができる。したがって、保護スリーブ81に対してより安定して圧力を加えることができる。
【0053】
また、爪部32は、保護スリーブ81に圧力を加える状態において、アウターハウジング20に当接する当接面36bを有する。
図7に示すように、当接面36bはアウターハウジング20の内面に対して傾斜している。この構成によれば、当接面36bの全体がアウターハウジング20の内面に当接する場合と比較して、径方向内側に向けた爪部32の傾倒量が安定する。したがって、爪部32が保護スリーブ81に加える圧力を安定させることができる。
【0054】
また、保護スリーブ81の内側には抗張力体82が配置され、抗張力体82が爪部32とスリーブ固定部73との間に位置している。この構成によれば、爪部32が保護スリーブ81に加える圧力を用いて、抗張力体82をスリーブ固定部73に固定することができる。
【0055】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
例えば、前記実施形態では、インナーハウジング30が2つの爪部32を有していた。しかしながら、インナーハウジング30が有する爪部32の数は変更可能である。爪部32の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
また、保護スリーブ81の内側に配置される抗張力体82の数は変更可能である。抗張力体82の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、径方向において爪部32とスリーブ固定部73とが対向するように配置されていた。しかしながら、爪部32はスリーブ固定部73と必ずしも対向していなくてもよい。例えば、爪部32がスリーブ固定部73より後方に位置している場合も、爪部32が保護スリーブ81に対して径方向内側に圧力を加えることで、保護スリーブ81をスリーブ固定部73の突起73aに食い込ませることは可能である。同様に、爪部32は突起73aと対向する位置に配置されていなくてもよい。
【0058】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…光コネクタ 2…保持部 20…アウターハウジング 30…インナーハウジング 32…爪部 32a…内周面 36b…当接面 40…フェルール 73…スリーブ固定部 73a…突起 81…保護スリーブ 82…抗張力体 F…光ファイバ X…長手方向