(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】小分子金属キレート剤及び金属酸イオン交換組成物を使用して体液からイオンを除去するプロセス
(51)【国際特許分類】
A61M 1/18 20060101AFI20240626BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20240626BHJP
B01J 39/02 20060101ALI20240626BHJP
B01J 39/14 20060101ALI20240626BHJP
B01J 39/10 20060101ALI20240626BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240626BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20240626BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240626BHJP
C01B 33/20 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
A61M1/18 500
A61M1/36 185
B01J39/02
B01J39/14
B01J39/10
B01D15/00 N
B01J20/10 C
B01J20/28 Z
C01B33/20
(21)【出願番号】P 2023519250
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 US2021071641
(87)【国際公開番号】W WO2022173523
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-04-19
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ラプトン、フランシス スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、グレゴリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホッジス、ジェームス エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヤクブザク、パウリナ
(72)【発明者】
【氏名】シレジマニ-レカリウ、ミモザ
(72)【発明者】
【氏名】シーツ、ウィリアム
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0056976(US,A1)
【文献】特表2004-502508(JP,A)
【文献】特開2000-015001(JP,A)
【文献】国際公開第2000/066198(WO,A1)
【文献】米国特許第06579460(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/18
A61M 1/36
B01J 39/02
B01J 39/14
B01J 39/10
B01D 15/00
B01J 20/10
B01J 20/28
C01B 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に、Pb
2+、Hg
2+及び他の重金属毒素又はそれらの混合物のうちの少なくとも1種を有する個体から、前記重金属毒素を除去するためのイオン交換体であって、
前記重金属毒素は、小分子重金属キレート剤又はイオノフォアと前記重金属毒素とを含む錯体を含む血流又は胃液を前記イオン交換体と接触させ、前記イオン交換体と前記血流又は胃液との間のイオン交換及び続いての前記イオン交換体の前記個体から除去によって、前記個体から除去され、
前記錯体は、ある量の小分子重金属キレート剤又はイオノフォアを前記個体に投与して、前記個体の骨及び軟組織内の細胞内で前記重金属毒素を錯体化して形成され、前記錯体は前記細胞から前記個体の血流又は胃液に移動する、
イオン交換体。
【請求項2】
前記イオン交換体が、
チタンシリケート及びニオビウム-チタンシリケート又はこれらの混合物から選択される結晶性金属酸イオン交換体であって、前記結晶性金属酸が、無水系における実験式を有し:
A
mTi
aNb
1-aSi
xO
y
式中、Aが、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ヒドロニウムイオン又はこれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「m」が、Aの全金属(全金属=Ti+Nb)に対するモル比であり、0.10~2.0の値を有し、「a」が、Tiである全金属のモル分率であり、0.25~1の値を有し、「1-a」が、Nbである全金属のモル分率であり、0~0.75の値を有し、ここで、a+(1-a)=1であり、「x」が、Siの全金属に対するモル比であり、0.25~1.50の値を有し、「y」が、Oの全金属に対するモル比であり、2.55~7.38の値を有し、100%の相対強度で7Å~8Åのd間隔を有する少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを示す、毒鉄鉱構造、シチナカイト構造、これら2つの構造の連晶、又はこれらの混合物のいずれかを有するという点を特徴とし、前記結晶性金属酸が前記毒鉄鉱構造を有する場合に、X線前記回折パターンが、少なくとも表Aに記載の前記ピーク及びd間隔を有する、
【表1】
又は、前記結晶性金属酸が前記シチナカイト構造を有する場合、前記X線回折パターンが少なくとも表Bに記載される前記d間隔及び強度を有する、
【表2】
又は、前記結晶性金属酸が、毒鉄鉱-シチナカイト連晶、若しくは任意の組み合わせでの、毒鉄鉱、シチナカイト、及び毒鉄鉱-シチナカイト連晶相の混合物である場合、前記X線回折パターンが、100%の相対強度で7Å~8Åのd間隔を有する少なくとも1つのピークを有する、結晶性金属酸イオン交換体である、
請求項1に記載のイオン交換体。
【請求項3】
前記イオン交換体が、無水系における実験式を有する希土類シリケート組成物であり:
A
r+
pM
s+
1-xM
’t+
xSi
nO
m
式中、Aが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、四級アンモニウムイオン、及びこれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「r」がAの加重平均原子価であり、1~2まで変化し、「p」が、全金属(全金属=M+M’)に対するAのモル比であり、1~5まで変化し、「M」が、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるフレームワーク希土類金属であり、「s」が、Mの加重平均原子価であり、3~4まで変化し、「1-x」が、Mである全金属のモル分率であり、M’が、+2、+3、+4、又は+5の原子価を有するフレームワーク金属であり、「t」が、M’の加重平均原子価であり、2~5まで変化し、「x」が、M’である全金属のモル分率であり、0~0.99まで変化し、「n」が、Siの全金属に対するモル比であり、3~10の値を有し、「m」が、Oの全金属に対するモル比であり、
【数1】
によって所与される、請求項1に記載のイオン交換体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年9月30日に出願された、米国特許仮出願番号第63/085834号に対する優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、体液から鉛及びイオンを除去するための体外プロセス又は体内プロセスに関する。血液又はその他の体液を、毒素を選択的に除去することが可能な金属酸イオン交換組成物及び小分子金属キレート剤と直接接触させる。小分子金属キレート剤は、細胞からイオンを除去するのに有効であり、その結果、金属酸イオン交換組成物は、鉛及びその他の金属イオンを吸収し得る。
【背景技術】
【0003】
哺乳動物、例えばヒトにおいて、腎臓及び/又は肝臓が、身体からの代謝廃棄産物の除去に失敗した場合、身体のその他の臓器の大部分もまたやがて衰える。したがって、血液の体外処置によって患者の血液から毒素を除去するための、安全かつ有効な方法を発見しようと、広範囲にわたる努力が行われてきた。昏睡及び肝不全という疾病の原因と考えられている小分子毒素、タンパク質結合分子又はより大きな分子を除去するための多数の方法が提案されてきた。これらの毒性化合物の一部は、クレアチン、アンモニア、フェノール、メルカプタン、短鎖脂肪酸、芳香族アミノ酸、偽神経伝達物質(オクトパミン)、神経阻害剤(グルタミン酸)及び胆汁酸塩として特定されている。当該技術は、このような毒素を含有する血液を処置するいくつかの方法を示している。古典的な方法は、当然ながら透析である。透析は、半透膜を横切って第2の液体に拡散することで液体から物質を除去することとして定義される。身体外部の血液の透析(血液透析)は、「人工腎臓」の基礎となる。現在、一般に使用されている人工腎臓の処置手順は、1940年代にKolffによって開発されたものに類似している。1940年代以来、人工腎臓又は人工肝臓の改善に取り組んだ開示がいくつか存在する。すなわち、米国特許第4,261,828号は、血液を解毒する装置を開示している。この装置は、木炭又は樹脂、及び場合により酵素担体などの吸着剤が充填された筐体を備える。血液と吸着剤との直接接触を防止するため、吸着剤は、吸収はされるが赤血球の構成成分と吸着剤との間の直接接触は防止する、物質の透過が可能なコーティングでコーティングされてもよい。米国特許第4,581,141号は、透析に使用するための組成物を開示しており、これは、表面吸着性物質、水、懸濁化剤、ウレアーゼ、カルシウム担持陽イオン交換体、脂肪族カルボン酸樹脂及び代謝可能な有機酸緩衝液を含有する。カルシウム担持陽イオン交換体は、カルシウム交換されたゼオライトとすることができる。欧州特許第0046971(A1)号は、ゼオライトWが、アンモニアを除去する血液透析に使用され得ることを開示している。最後に、米国特許第5,536,412号は、血液ろ過及び血漿ろ過デバイスを開示しているが、この場合、血液は中空繊維膜の内部を流れ、血液が流れている間、吸着剤懸濁液が中空繊維膜の外面に循環される。別の工程は、血液の血漿画分を膜の内部に交互に出入りさせて、それによって毒素の除去を達成することを含む。吸着剤は、ゼオライト又は陽イオン交換樹脂などのイオン交換体と一緒になった活性炭とし得る。
【0004】
上記の特許に開示されている吸着剤に伴う課題が存在する。例えば、木炭は、水、リン酸塩、ナトリウム又はその他のイオンのいずれも除去しない。ゼオライトは、透析溶液に部分的にしか溶解することができず、アルミニウム及び/又はケイ素が血液中に入ることが可能であるという欠点を有する。更に、ゼオライトは、血液のナトリウムイオン、カルシウムイオン及びカリウムイオンを吸着する可能性があり、それによって、これらのイオンを血液に戻すことが必要となり得る。
【0005】
最近になって、体液(とりわけ、血液)などの流体に実質的に不溶性の微多孔質イオン交換体の実施例、すなわち、米国特許第5,888,472号、同第5,891,417号及び同第6,579,460号のジルコニウム系シリケート及びチタン系シリケートが開発されている。血液又は透析液から毒性のアンモニウム陽イオンを除去するために、これらのジルコニウム系シリケート又はチタン系シリケートの微多孔質イオン交換体を使用することが、米国特許第6,814,871号、同第6,099,737号及び同第6,332,985号に記載されている。更に、これらの組成物のいくつかは、カリウムイオン交換においても選択的であり、体液からカリウムイオンを除去して高カリウム血症の疾患を治療することができることが見出されたが、これは米国特許第8,802,152号、同第8,808,750号、同第8,877,255号、同第9,457,050号、同第9,662,352号、同第9,707,255号、同第9,844,567号、同第9,861,658号、同第10,413,569号、同第10,398,730号、米国特許出願公開第2016/0038538号及び米国特許第10,695,365号で論じられている。例えば、透析におけるこれらの物質の生体外用途は、米国特許第9,943,637号に記載されている。
【0006】
血液適合性ポリマーもまた、体液を処置するデバイスに組み込まれている。米国特許第9,033,908号は、血液から毒素を除去するための、小型の卓上型デバイス及び装着可能なデバイスを開示している。本デバイスは、血液適合性多孔質ポリマーマトリックスに埋め込まれたナノ粒子を利用する収着フィルタを特徴とする。本デバイス及びフィルタシステムによって標的とされる毒性物質の中には、カリウム、アンモニア、リン酸塩、ウレア及び尿酸がある。同様に、ポリジアセチレン系ナノ粒子が拘束されている架橋型ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートからなる3D印刷ヒドロゲルマトリックスが、毒素であるメリチンの除去に成功を収めたことが証明されている(Nature Communications,5,3774,2014)。
【0007】
代謝廃棄物由来の毒素と比較すると、ヒトは、例えば、摂取、皮膚からの吸収又は吸入によって身体に進入するおそれがある環境毒素の影響を受けやすい。通常の周知の毒性金属は鉛である。長年にわたり、鉛は、テトラエチル鉛の形態でガソリンの重要な成分、及び塗料の重要な成分であった。現在、これらの産業では鉛はもはや使用されていないか、ほとんど使用されていないが、依然として環境面で危険である。鉛含有塗料により塗装されている古い家におけるリフォーム作業は、吸入されるおそれがあるか、土壌近傍に行き着くおそれがあるダストを生成し、鉛は、地下水に漏出されるか、又は植物によって取り込まれる。信頼性に乏しい、又は規制されていない給水は、最も注目すべきことには米国ミシガン州のフリントにおける最近の例であるPb2+毒性への危険な曝露を呈した。新しい都市水供給源に曝露した後の血液中において、一部の居住者が危険なほどに高いPb2+レベルを有することが判明した。鉛混入は、神経系及び泌尿器系に影響を及ぼすこと、並びに曝露した子供における学習及び発達障害を含めた多数の不健全な健康への影響に関連している。罹患患者の血液から鉛を除去すると、更なる曝露及び損傷が低減される。
【0008】
別の周知の毒性金属は水銀である。環境中に見出される、ヒトにより生成されるほとんどの水銀は化石燃料の燃焼に由来し、主な源は石炭燃焼発電所であるが、種々の工業プロセスもまた環境中に水銀を放出する。環境中の水銀は、重金属の非常に有毒な形態であるメチル水銀の形態で魚貝類に生体蓄積し、汚染された海産物の消費は、ヒトにおける水銀中毒の最も一般的な原因である。一旦体内に入ると、メチル水銀は二価水銀に変換される可能性が高く、そこで還元-酸化経路に供給される。別の一般的な曝露源は、水銀アマルガムからなる歯科用充填材からのものである。水銀の血中レベルの上昇は、神経障害及び腎不全を含む多種多様な疾患を引き起こす可能性があり、これらの悪影響は小児において増幅される。
【0009】
血液からこれらの金属毒素の一部を除去しようとするため、キレーション療法が使用されてきた。キレーション療法により、血液からCo2+、Cr3+及びCd2+が除去されることが指向されてきた(J Med Toxicol.,(2013)9,355-369)。静脈内投与されるキレート剤CaNa2EDTAを含むキレーション療法もまた、Pb2+中毒に使用されてきた。(Int.J.Environ.Res.Public Health,(2010),7,2745-2788)。ジメルカプトコハク酸(DMSA)は、重金属中毒に対する解毒剤として認識されており、Co2+、Cd2+及びPb2+中毒を治療するために使用されてきた(米国特許第5,519,058号を参照のこと)。担持キレート剤、すなわち樹脂に結合されたキレート剤は透析様式で重金属を除去するために使用されてきた。この様式では、血液は半透膜の側に、樹脂担持キレート剤はもう一方の側に存在する。(米国特許第4,612,122号を参照のこと)。キレーション療法はある程度効果的であるため、より効果的にすることができれば望ましい。
【0010】
ゼオライトは慢性鉛中毒を治療するために提案されており、米国特許出願公開第20180369279(A1)号では、ピル状形態で服用されるが、ゼオライトは、とりわけ、胃腸管における安定性に限界がある。
【0011】
本出願人らは、体液(とりわけ、血液)又は透析溶液などの、流体に実質的に不溶性である、イオノフォア又はキレート剤を金属酸イオン交換体と組み合わせて使用する処理剤を使用するプロセスを開発した。
【発明の概要】
【0012】
明記したとおり、本発明は、体液、透析溶液及びこれらの混合物からなる群から選択される流体から、Pb2+、Hg2+及びその他の金属イオンを除去するプロセスに関する。本プロセスは、毒素を含有する流体を、細胞膜を横切ってイオンを運搬するのに特に有用なイオノフォア又はキレート剤と接触させることを含む。同時に又はその後に、イオン交換された微多孔質組成物(金属酸イオン交換体とも称される)が使用され、それによって、流体から毒素が除去される。キレート剤は、2,3-ジメルカプトプロパノール、2,3-ジメルカプトコハク酸、エチレンジアミン四酢酸、グルタチオン、及びシステインから選択されてもよい。イオノフォアは、モネンシン、ピリチオン、ニゲリシン、イオノマイシン及びA23187から選択されてもよい。小分子重金属キレート剤及びイオノフォアは、Pb2+及びHg2+などの金属イオンにより錯体を形成するように作用する。特に、それらは、骨及び軟組織からこれらのイオンを除去し、次に、イオンを除去することがより容易である血液及び肝臓にそれらを運ぶように作用する。次に、イオンと錯体を形成したキレート剤及びイオノフォアは、肝臓から胆汁を介して腸に進入し得るか、腸の内層を横切る拡散によって通過し得るが、ここでこれらは金属酸イオン交換体に遭遇し、次に、イオンは、金属酸イオン交換体に吸着されるが、これは、次に、自然な身体機能を介して身体から排出されてもよい。キレート剤又はイオノフォアの両方を金属酸イオン交換体と組み合わせて使用することで、身体からの鉛及びその他のイオンの除去において相乗的相互作用を有することを証明し得る。
【0013】
使用され得るいくつかの異なるイオン交換体が存在するが、特に、身体から金属イオンを除去することにおいて以前に有効性を示している任意のイオン交換体が存在する。イオン交換体の1つのクラスである希土類シリケートイオン交換体は、無水系におけるそれらの実験式によって同定される:
Ar+
pMs+
1-xM’t+
xSinOm
【0014】
本式において、「A」は、平衡陽イオンとしても作用する構造指向陽イオンであり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、四級アンモニウムイオン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。アルカリ金属の具体例としては、ナトリウム、カリウム及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。アルカリ土類金属の実施例としては、マグネシウム及びカルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。「r」は、Aの加重平均原子価であり、1~2で変化する。「A」対全金属(全金属=M+M’)のモル比である「p」の値は、1~5で変化する。骨格構造は、ケイ素、少なくとも1種の希土類元素(M)、及び任意選択的にM’金属から構成される。全金属はM+M’として定義され、希土類金属Mである全金属のモル分率は「1-x」によって所与され、M’金属である全金属のモル分率は「x」によって所与される。Mで表される希土類元素は、+3価又は+4価を有し、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムが挙げられる。Mについてのこれらの選択肢に従って、「s」、Mの加重平均原子価は、3から4まで変化する。同様に、2種以上のM’金属が存在し得、各M’金属は異なる原子価を有し得る。骨格中に置換され得るM’金属は、+2、+3、+4、又は+5の原子価を有する。これらの金属の実施例としては、亜鉛(+2)、鉄(+3)、チタン(+4)、ジルコニウム(+4)、及びニオビウム(+5)が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、M’の加重平均原子価「t」は、2から5まで変化する。最後に、「n」は、全金属に対するSiのモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、全金属に対するOの比であり、
【0015】
【0016】
組成物が、体液(中性及び軽度の酸性又は塩基性のpH)に本質的に不溶性であるので、それらの組成物は、胃腸管系から重金属及び代謝性毒素を除去するために経口摂取されて、透析溶液から毒素、特にPb2+、Hg2+、K+、及びNH4
+を除去するために使用され得る。
【0017】
使用し得る別のイオン交換体は、無水系における実験式を有し:
AmTiaNb1-aSixOy
式中、Aは、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ヒドロニウムイオン又はこれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「m」は、Aの全金属(全金属=Ti+Nb)に対するモル比であり、0.10~2.00の値を有し、「a」は、Tiである全金属のモル分率であり、0.25~1の値を有し、「1-a」は、Nbである全金属のモル分率であり、0~0.75の値を有し、ここで、a+(1-a)=1であり、「x」は、Siの全金属に対するモル比であり、0.25~1.50の値を有し、「y」は、Oの全金属に対するモル比であり、2.55~7.38の値を有し、100%の相対強度で7Å~8Åのd間隔を有する少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを示す、毒鉄鉱構造、シチナカイト構造、これら2つの構造の連晶、又はこれらの混合物を有するという点を特徴とし、ここで、材料が毒鉄鉱構造を有する場合に、当該回折パターンは、少なくとも表Aに記載のピーク及びd間隔を有する、
【0018】
【0019】
又は、当該回折パターンは、材料がシチナカイト構造を有する場合、少なくとも表Bに記載されるd間隔及び強度を有する、
【0020】
【0021】
又は、材料が、毒鉄鉱-シチナカイト連晶、若しくは任意の組み合わせでの、毒鉄鉱、シチナカイト、及び毒鉄鉱-シチナカイト連晶相の混合物である場合、当該回折パターンが、100%の相対強度で7Å~8Åのd間隔を有する少なくとも1つのピークを有する。
【0022】
本目的及びその他の目的、並びに本実施形態及びその他の実施形態は、本発明の詳細な説明の後に一層明確になろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
明記したとおり、出願人は、人体から選択された流体からPb2+及びHg2+などの重金属毒素を除去するための新しいプロセスを開発した。重金属は、人体に存在すると重大な害を引き起こす可能性がある。特に鉛は、古い塗料への曝露及び汚染された飲料水からの曝露のために懸念される。メタロシリケートなどの微多孔質無機吸着剤は、鉛に結合し、回腸の細胞組織によるその取り込みを防止する能力を有する。しかしながら、鉛が既に細胞内に運搬されると、細胞壁のリン脂質二重層は、摂取された鉛と、脂質二重層障壁を横切って移動することができないメタロシリケートとの間の相互作用に対する障壁として作用してしまう。リン脂質二重層は、疎水性又は水を嫌う内部、及び親水性又は水を好む外部を有する、リン脂質の2つの層からなる。親水性(極性)先端基及び疎水性尾部(脂肪酸鎖)は、単一リン脂質分子内に見出される。
【0024】
イオノフォアは、イオンに可逆的に結合する化学種である。多くのイオノフォアは、細胞膜を横切ってイオンを運搬する脂溶性独立体である。これらの化合物は、生存している細胞中に見られる脂質二重層を横切るイオンの運搬を触媒する。更に、イオノフォアは特定のイオンに対して高度に選択的であり得る。これらのイオノフォアのいくつかは、その他の陽イオンよりも鉛に対して高い選択性を有する。イオノフォアへの金属結合の可逆性のために、細胞の内外へのイオンの運搬は、細胞質の内側と外側との間の金属濃度の平衡によって推進される。したがって、イオノフォアは、摂取されたイオンの濃度と細胞中の濃度との間で鉛などのイオンの平衡をもたらし得る。細胞外への鉛の輸送を推進する濃度勾配などの平衡を乱す方法は、イオノフォアが細胞質から鉛を除去する能力を改善させる。
【0025】
小分子重金属キレート剤は、2,3-ジメルカプトプロパノール、2,3-ジメルカプトコハク酸、エチレンジアミン四酢酸、グルタチオン、及びシステインから選択されてもよい。2,3-ジメルカプトプロパノールとも称されるジメルカプロールは、ヒ素、アンチモン、鉛、金及び水銀の中毒の治療に使用されてきた。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、いくつかのその他の名称でも周知であり、工業及び医療の両方の目的で使用される化学物質である。エデト酸カルシウムナトリウムとして周知のEDTAの特定の塩は、水銀中毒及び鉛中毒を治療するためなどのキレーション療法の実施において金属イオンを結合させるために、並びに身体から過剰な鉄を除去するために、使用される。グルタチオン(GSH)は、植物、動物、真菌、並びにいくつかの細菌及び古細菌における抗酸化剤である。グルタチオンは、フリーラジカル、過酸化物、過酸化脂質、及び重金属などの活性酸素種によって引き起こされる重要な細胞成分への損傷を防止することが可能である。システインは、式HO2CCH(NH2)CH2SHを有する半必須タンパク質構成アミノ酸である。システイン中のチオール側鎖は、多くの場合、求核試薬として酵素反応に関与する。チオールは酸化を受けやすく、多くのタンパク質において重要な構造的役割を果たすジスルフィド誘導体シスチンを生成する。
【0026】
本発明において特に有用なイオノフォアとしては、モネンシン、ピリチオン、ニゲリシン、イオノマイシン及びA23187が挙げられる。モネンシンは、ストレプトマイセス・シナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)から単離されたポリエーテル抗生物質である。これは多くの場合、ナトリウムモネンシンと称され、天然に存在するポリエーテルイオノフォア抗生物質である。これは反芻動物の飼料に広く使用されている。1967年に、モネンシンの構造がAgtarapらによって最初に記載され、その構造が解明された最初のポリエ-テル抗生物であった(J.Am.Chem.Soc.,1967,89,5737-739を参照のこと)。亜鉛イオノフォアピリチオンは、特定のウイルス感染に対して有効性を有することが見出されており、本出願において有効であり得る。ニゲリシンは、ストレプトミセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)由来の抗生物質である。ニゲリシンの構造及び特性は、抗生物質モネンシンに類似している。イオノマイシンは、イオノフォアであり、1:1の比でカルシウムイオンに結合する抗生物質である。それは、細菌ストレプトマイセス・コングロバタス(Streptomyces conglobatus)によって産生される。それはまた、マグネシウム及びカドミウムのようなその他の二価陽イオンに結合するが、好ましくはCa2+に結合する。それは14個のキラル中心を有する。A23187は、二価陽イオンと安定した錯体を形成する移動性イオンキャリアである。A23187は、カルシマイシン、カルシウムイオノフォア、抗生物質A23187及びカルシウムイオノフォアA23187としても周知である。これは、ストレプトマイセス・チャートリュウセンシス(Streptomyces chartreusensis)の発酵によって生成される。
【0027】
特に、キレート剤及びイオノフォアは、骨及び軟組織からこれらのイオンを除去し、次に、イオンを除去することがより容易である血液及び肝臓にそれらを運ぶように作用する。次に、イオンと錯体を形成したキレート剤及びイオノフォアは、肝臓から胆汁を介して腸に進入し得るか、腸の内層を横切る拡散によって通過し得る。ここで、キレート剤及びイオノフォアは金属酸イオン交換体に遭遇し、続いてイオンが金属酸イオン交換体に吸着される。次に、イオン含有金属酸イオン交換体は、自然の身体機能を介して身体から排出される。キレート剤又はイオノフォアの両方を金属酸イオン交換体と組み合わせて使用することで、身体からの鉛及びその他のイオンの除去において相乗的相互作用を有することを証明し得る。
【0028】
本プロセスの1つの必須要素は、イオン交換体である。一般に、Pb2+及びHg2+などの重金属イオンをイオン交換し得るイオン交換体は、本発明において有用である。1つのイオン交換体は、無水系におけるそれらの実験式によって同定される:
Ar+
pMs+
1-xM’t+
xSinOm
【0029】
本式において、「A」は、平衡陽イオンとしても作用する構造指向陽イオンであり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、四級アンモニウムイオン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。アルカリ金属の具体例としては、ナトリウム、カリウム及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。アルカリ土類金属の例としては、マグネシウム及びカルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。「r」は、Aの加重平均原子価であり、1~2で変化する。「A」対全金属(全金属=M+M’)のモル比である「p」の値は、1~5で変化する。骨格構造は、ケイ素、少なくとも1種の希土類元素(M)、及び任意選択的にM’金属から構成される。全金属はM+M’として定義され、希土類金属Mである全金属のモル分率は「1-x」によって所与され、M’金属である全金属のモル分率は「x」によって所与される。Mで表される希土類元素は、+3価又は+4価を有し、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムが挙げられる。Mについてのこれらの選択肢に従って、「s」、Mの加重平均原子価は、3から4まで変化する。同様に、2種以上のM’金属が存在し得、各M’金属は異なる原子価を有し得る。骨格中に置換され得るM’金属は、+2、+3、+4、又は+5の原子価を有する。これらの金属の実施例としては、亜鉛(+2)、鉄(+3)、チタン(+4)、ジルコニウム(+4)、及びニオビウム(+5)が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、M’の加重平均原子価「t」は、2から5まで変化する。最後に、「n」は、全金属に対するSiのモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、全金属に対するOの比であり、
【0030】
【0031】
組成物が、体液(中性及び軽度の酸性又は塩基性のpH)に本質的に不溶性であるので、それらの組成物は、胃腸管系から重金属及び代謝性毒素を除去するために経口摂取されて、透析溶液から毒素、特にPb2+、Hg2+、K+、及びNH4
+を除去するために使用され得る。これらのイオン交換体は、同時係属中の特許.....に記載されている。
【0032】
使用し得る別のイオン交換体は、無水系における実験式を有し:
AmTiaNb1-aSixOy
式中、Aは、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ヒドロニウムイオン又はこれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「m」は、Aの全金属(全金属=Ti+Nb)に対するモル比であり、0.10~2.00の値を有し、「a」は、Tiである全金属のモル分率であり、0.25~1の値を有し、「1-a」は、Nbである全金属のモル分率であり、0~0.75の値を有し、ここで、a+(1-a)=1であり、「x」は、Siの全金属に対するモル比であり、0.25~1.50の値を有し、「y」は、Oの全金属に対するモル比であり、2.55~7.38の値を有し、100%の相対強度で7Å~8Åのd間隔を有する少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを示す、毒鉄鉱構造、シチナカイト構造、これら2つの構造の連晶、又はこれらの混合物を有するという点を特徴とし、ここで、材料が毒鉄鉱構造を有する場合に、当該回折パターンは、少なくとも表Aに記載のピーク及びd間隔を有する、
【0033】
【0034】
又は、当該回折パターンは、材料がシチナカイト構造を有する場合、少なくとも表Bに記載されるd間隔及び強度を有する、
【0035】
【0036】
又は、材料が、毒鉄鉱-シチナカイト連晶、若しくは任意の組み合わせでの、毒鉄鉱、シチナカイト、及び毒鉄鉱-シチナカイト連晶相の混合物である場合、当該回折パターンが、100%の相対強度で7Å~8Åのd間隔を有する少なくとも1つのピークを有する。これらのイオン交換体は、2020年9月30日に出願された同時係属中の特許出願第63/085784号、同第63/085804号、及び同第63/085819号に記載されており、これらの特許出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0037】
これらのイオン交換組成物が粉末形態で使用可能であること、又は当該分野で周知の手段によって種々の形状に形成可能であることもまた、本発明の範囲内にある。これらの種々の形状の実施例としては、ピル、押出成形物、球体、ペレット及び不規則形状粒子が挙げられる。これは、米国特許第6,579,460(B1)号及び同第6,814,871(B1)号で既に実証されている。本発明のイオン交換組成物はまた、理想的には、米国特許第9,033,908(B2)号に開示されている収着フィルタ中などの、血液と適合可能な多孔質ネットワーク内への挿入又は結合を含めた多孔質ネットワーク中に、担持されていてもよい。多孔質ネットワークは、天然又は合成ポリマー、及びバイオポリマー及びメソ細孔性金属酸化物、及びシリケートから構成されていてもよい。好適な天然ポリマー(バイオポリマー)は、炭水化物又はタンパク質のオリゴマー及びポリマーから作製されている、架橋炭水化物又はタンパク質を含んでもよい。バイオポリマーは、好ましくは多糖類である。多糖類の実施例としては、1,3-、1,4-及び/又は1,6-連結基を有するα-グルカンが挙げられる。これらの中で、アミロース、アミロペクチン及びデキストリンを含めた「デンプンファミリー」がとりわけ好ましいが、1,6-連結基の割合は、好ましくは、70%未満、より好ましくは60%未満であるものの、プルラン、エルシナン、ロイテラン及びその他のα-グルカンもまた好適である。その他の好適な多糖類としては、β-1,4-グルカン(セルロース)、β-1,3-グルカン、キシログルカン、グルコマンナン、ガラクタン及びガラクトマンナン(グアーガム及びローカストビーンガム)、キサンタン、ガティ、カラギーナンのような不均質ガムを含めたその他のガム、アルギネート、ペクチン、β-2,1-及びβ-2,6-フルクタン(イヌリン及びイエバン(Ievan))などが挙げられる。好ましいセルロースは、カルボキシメチルセルロース(CMC、例えば、AKZO NobelのAKUCELL)である。このように使用され得る炭水化物は、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、ラクトース、並びにこれらの糖のオリゴマー及びポリマー、セルロース、デキストリン(マルトデキストリンなど)、アガロース、アミロース、アミロペクチン、及び、例えばグアーガム等のガムなどの、C、H及びO原子だけからなる炭水化物である。好ましくは、DP2からの重合度(DP)を有するオリゴマー炭水化物又はDP50からのポリマー炭水化物が使用される。これらは、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、セルロース及びガム、又はリン酸化若しくは酸化によって形成され得るそれらの誘導体などの、天然ポリマーとすることができる。デンプンは、陽イオン性又は陰イオン性変性デンプンであってもよい。変性され得る好適な(変性)デンプンの実施例は、トウモロコシ-デンプン、バレイショ-デンプン、米-デンプン、タピオカデンプン、バナナデンプン及びキャッサバデンプンである。その他のポリマーもまた使用され得る(例えば、カプロラクトン)。ある種の実施形態では、バイオポリマーは、陽イオン性デンプン、最も好ましくは、酸化デンプン(例えば、次亜塩素酸塩により酸化されたC6)である。酸化レベルは、吸着剤材料の適用に適するよう自由に選択されてもよい。非常に好適には、酸化レベルは、5~55%、最も好ましくは、25~35%、更により好ましくは28%及び32%である。最も好ましくは、酸化デンプンは、架橋化されている。好ましい架橋剤は、ジエポキシドである。架橋レベルは、吸着剤材料の適用に適するよう自由に選択されてもよい。非常に好適には、架橋レベルは、0.1~25%、より好ましくは1~5%、及び最も好ましくは2.5~3.5%である。使用し得るタンパク質としては、アルブミン、オボアルブミン、カゼイン、ミオシン、アクチン、グロブリン、ヘモグロビン、ミオグロビン、ゼラチン及び小ペプチドが挙げられる。タンパク質については、植物性材料又は動物性材料の加水分解物から得られるタンパク質もまた使用され得る。特に、好ましいタンパク質ポリマーは、ゼラチン又はゼラチンの誘導体である。
【0038】
明記したとおり、これらの組成物は、体液、透析溶液及びこれらの混合物から選択される流体から、Pb2+及びHg2+、又はこれらの組み合わせを含めた種々の金属毒素又はその他の毒素を吸着する際に特定の利用性を有する。本明細書で使用する場合、及び特許請求の範囲において、体液は、血液、血漿及び胃腸液を含むが、これらに限定されない。同様に、本組成物は、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、サル、ゴリラ、ウマ、イヌなどを含めるがこれらに限定されない、任意の哺乳動物の身体の体液を処置するために使用されることが意図されている。瞬間的プロセスは、人体から毒素を除去するのに特に適している。流体に、所望のイオン交換体を直接又は間接的に接触させるための手段がいくつか存在し、これによって毒素を除去する。技法の1つは血管潅流であり、これは、上記のイオン交換組成物をカラムに充填し、血液をこのカラムに流すことを含む。このようなシステムの1つは、米国特許第4,261,828号に記載されている。同‘828号特許に明記されているとおり、本イオン交換組成物は、好ましくは、球体などの所望の形状に形成される。更に、本イオン交換組成物粒子は、セルロース誘導体などの化合物によりコーティングされ得、本セルロース誘導体は、血液と適合可能であるが、赤血球成分に非透過性である。1つの特定の場合では、上記の所望のイオン交換組成物の球体は中空繊維に充填されており、それによって、半透膜をもたらし得る。2種以上のイオン交換組成物が、本プロセスの効率を増強するために、本プロセスにおいて混合及び使用され得ることもまた、指摘するべきである。
【0039】
本プロセスを実施するための別の方法は、米国特許第5,536,412号に記載されているものなどの、当該分野で周知の手段によって、モレキュラーシーブ吸着剤の懸濁液又はスラリーを調製することである。同‘412号特許に記載されている装置もまた、本プロセスを実施するために使用され得る。本プロセスは、金属毒素を含有する流体、例えば血液を中空繊維の内部に通過させること、及び当該通過の間に、中空繊維膜の外面に吸着剤懸濁液を循環させることを基本的に含む。同時に、正圧の断続的なパルスを吸着剤溶液に適用し、その結果、流体が、交互に中空繊維膜内部から出たり、この中に再度入ったりすることで毒素を流体から除去する。
【0040】
別の種類の透析は、腹膜透析である。腹膜透析では、腹腔又は腹部の空洞(腹部)を、腹腔に挿入したカテーテルを介して、腹膜に接触する透析流体又は透析溶液で満たす。腹部における臓器の外側を取り囲む膜である腹膜を介して、血液から透析流体に毒素及び過剰の水が流れる。透析液は、毒素を除去するのに十分な時間(滞留時間)、身体に留まる。必要とされる滞留時間後、透析液は、カテーテルを介して腹腔から除去される。2つの種類の腹膜透析が存在する。連続的な外来腹膜透析(CAPD)では、透析は1日中行われる。本プロセスは、腹腔中に透析溶液を維持すること、及び消費された透析液(毒素を含有する)を定期的に除去すること、及び腹腔に新しい透析溶液を再充填することを含む。これは、1日中、数回行われる。第2の種類は、自動化腹膜透析又はAPDである。APDでは、透析溶液は、患者が睡眠している夜間にデバイスによって交換される。どちらの種類の透析でも、交換毎に新しい透析溶液が使用されなければならない。
【0041】
本発明のイオン交換体は、腹膜透析中に使用される透析溶液を再生成するために使用され得、それによって、血液を浄化するために必要な透析液の量、及び/又は交換を行うために必要な時間の量が更に減少する。本再生成は、従来の透析に関して上記の手段のいずれかによって行われる。例えば、間接接触法では、腹腔の透析液、すなわち腹膜を通過して移動された金属毒素を捕捉する第1の透析液は、ここで膜に接触され、第2の透析溶液及び金属毒素は、膜を通過して移動され、それによって第1の透析溶液が精製され、すなわち精製済み透析溶液になる。金属毒素を含有する第2の透析溶液は、上記のイオン交換体の少なくとも1種を含有する少なくとも1つの吸着床に流され、それによって、金属毒素が除去され、精製済みの第2の透析溶液が得られる。毒性金属イオン、すなわちPb2+及びHg2+が除去されるまで、吸着剤床に第2の透析溶液を連続的に循環させることが、通常好ましい。第1の透析溶液が腹腔に循環されることが同様に好ましく、それによって、毒性金属の除去効率が向上し、全滞留時間が減少する。
【0042】
直接接触法もまた行うことができるが、この場合、第1の透析溶液が腹腔に導入され、次に、少なくとも1種のイオン交換体を含有する少なくとも1つの床に流される。上記のとおり、これは、CAPD又はAPDとして実施され得る。透析溶液の組成は、身体における適切な電解質バランスを確実にするため、変化し得る。これは、透析を実施するための種々の装置と共に、当該分野で周知である。
【0043】
イオン交換体、キレート剤、及びイオノフォアはまた、経口摂取され得る丸状又はその他の形状に形成され得、イオン交換体が腸を通過すると、胃腸液中の毒素を捕捉し、最後に排出される。胃内の高酸性内容物からイオン交換体を保護するため、成形物品は、胃内で溶解しないが、腸内で溶解する種々のコーティング剤によりコーティングされてもよい。
【0044】
同様に明記したとおり、本組成物は、種々の交換可能な陽イオン(「A」)を用いて合成されるが、陽イオンを、血液と一層適合可能な、又は血液に悪影響を及ぼさない二次陽イオン(A’)と交換することが好ましい。この理由のため、ナトリウム、カルシウム、ヒドロニウム及びマグネシウムが好ましい陽イオンである。好ましい組成物は、ナトリウム及びカルシウム又はナトリウム、カルシウム及びヒドロニウムイオンを含有するものである。ナトリウム及びカルシウムの相対量は、かなり種々になり得、血液中のこれらのイオンの組成及び濃度に依存する。
【0045】
特定の実施形態
以下を特定の実施形態と併せて説明するが、本明細書は、前述の説明及び添付の特許請求の範囲の範囲を例解するものであり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0046】
本発明の第1の実施形態は、体内に、Pb2+、Hg2+及び他の重金属毒素又はそれらの混合物のうちの少なくとも1種を有する個体から、毒素を除去するプロセスであって、ある量の小分子重金属キレート剤又はイオノフォアを個体に投与して、個体の骨及び軟組織内の細胞内で毒素を錯体化し、小分子重金属キレート剤又はイオノフォアと毒素とを含む錯体を形成し、錯体が細胞から個体の血流又は胃液に移動し、次に、錯体を含有する血流又は胃液をイオン交換体と接触させて、イオン交換体と体液との間のイオン交換によって流体から毒素を除去し、続いてイオン交換体を身体から除去することを含む、プロセスである。本発明の実施形態は、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てであり、小分子重金属キレート剤が、2,3-ジメルカプトプロパノール、2,3-ジメルカプトコハク酸、エチレンジアミン四酢酸、グルタチオン、及びシステインから選択される。本発明の一実施形態は、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てであり、イオノフォアが、細胞内から血流へと少なくとも1種の毒素を運搬することが可能である。本発明の実施形態は、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てであり、イオノフォアが、モネンシン、ピリチオン、ニゲリシン、イオノマイシン、及びカルシマイシンから選択される。本発明の実施形態は、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てであり、イオノフォアが、個体の体重の0.01~0.6mg/kgの量で個体に投与される。本発明の実施形態は、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てであり、イオノフォアが、個体の体重の0.5~0.6mg/kgの量で個体に投与される。本発明の一実施形態は、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てであり、イオン交換体は、チタンシリケート及びニオビウム-チタンシリケート又はこれらの混合物から選択される結晶性金属酸イオン交換体であり、金属酸は、無水系における実験式を有し:
AmTiaNb1-aSixOy
式中、Aは、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ヒドロニウムイオン又はこれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「m」は、Aの全金属(全金属=Ti+Nb)に対するモル比であり、0.10~2.0の値を有し、「a」は、Tiである全金属のモル分率であり、0.25~1の値を有し、「1-a」は、Nbである全金属のモル分率であり、0~0.75の値を有し、ここで、a+(1-a)=1であり、「x」は、Siの全金属に対するモル比であり、0.25~1.50の値を有し、「y」は、Oの全金属に対するモル比であり、2.55~7.38の値を有し、100%の相対強度で7Å~8Åのd間隔を有する少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを示す、毒鉄鉱構造、シチナカイト構造、これら2つの構造の連晶、又はこれらの混合物のいずれかを有するという点を特徴とし、材料が毒鉄鉱構造を有する場合に、回折パターンは、少なくとも表Aに記載のピーク及びd間隔を有する
【0047】
【0048】
又は、材料がシチナカイト構造を有する場合、回折パターンは、少なくとも表Bに記載のd間隔及び強度を有する、
【0049】
【0050】
又は、材料が、毒鉄鉱-シチナカイト連晶、若しくは任意の組み合わせでの、毒鉄鉱、シチナカイト、及び毒鉄鉱-シチナカイト連晶相の混合物である場合、回折パターンが、100%の相対強度で7Å~8Åのd間隔を有する少なくとも1つのピークを有する。本発明の実施形態は、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てであり、ここで、イオン交換体は、無水系における実験式を有する希土類シリケート組成物であり:
A
r+
pM
s+
1-xM
’t+
xSi
nO
m
式中、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、四級アンモニウムイオン、及びこれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「r」は、Aの加重平均原子価であり、1~2まで変化し、「p」は、全金属(全金属=M+M’)に対するAのモル比であり、1~5まで変化し、「M」は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるフレームワーク希土類金属であり、「s」は、Mの加重平均原子価であり、3~4まで変化し、「1-x」は、Mである全金属のモル分率であり、M’は、+2、+3、+4、又は+5の原子価を有するフレームワーク金属であり、「t」は、M’の加重平均原子価であり、2~5まで変化し、「x」は、M’である全金属のモル分率であり、0~0.99まで変化し、「n」は、Siの全金属に対するモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、Oの全金属に対するモル比であり、
【数3】
によって所与される。
【0051】
本発明の実施形態は、体液が、全血、血漿、又は血液のその他の構成成分、胃腸液、及び血液、血漿、血液のその他の構成成分又は胃腸液を含有する透析溶液からなる群から選択される、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、イオン交換体が、膜に組み込まれた中空繊維に充填されている、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、イオン交換体が、セルロース誘導体組成物を含むコーティング剤によりコーティングされた粒子表面に含まれている、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、本方法が、血液潅流法であり、体液は、イオン交換体を含有するカラムに通過させる、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、透析溶液が腹腔に導入され、次に、少なくとも1種のイオン交換体を含有する少なくとも1種の吸着剤床に流される、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、イオン交換体が、経口消化される成形物品に形成され、続いてイオン交換体と哺乳動物の腸内の胃腸液に含まれているPb2+毒素及びHg2+毒素との間でイオン交換され、次に、毒素を含有するイオン交換体が排出される、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、成形物品が、胃内の条件によって溶解しないコーティング剤によりコーティングされている、本段落における第1の実施形態にまで至る本段落における先行実施形態のうちの1つ、いずれか、又は全てである。
【0052】
更に詳述することなく、前述の説明を使用して、当業者が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明を最大限まで利用し、かつ本発明の本質的な特性を容易に確認することができ、本発明の種々の変更及び修正を行い、種々の使用及び条件に適合させることができると考えられる。したがって、先行する好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなるようにも本開示の残りを限定するものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる種々の修正及び同等の構成を網羅することを意図するものである。
【0053】
前述では、全ての温度は摂氏度で記載され、全ての部及び百分率は、別途記載のない限り、重量基準である。