(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
A61G 1/013 20060101AFI20240626BHJP
A61G 1/056 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61G1/013
A61G1/056 702
(21)【出願番号】P 2024012662
(22)【出願日】2024-01-31
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591159055
【氏名又は名称】株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】片山 綾子
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05509159(US,A)
【文献】特開2003-111801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/013
A61G 1/056
A61G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1脚部リンク及び第2脚部リンクを備えたストレッチャに取り付けられて、ストレッチャ本体を昇降させるための昇降装置
において、
前記第1脚部リンクに取り付けられて、前記第1脚部リンクを引っ張ることにより前記第1脚部リンクの高さを調節する第1紐状部材と、
前記第2脚部リンクに取り付けられて、前記第2脚部リンクを引っ張ることにより前記第2脚部リンクの高さを調節する第2紐状部材と、
前記ストレッチャ本体に固定するためのユニットブラケット、前記第1紐状部材及び前記第2紐状部材を巻き取るプーリ、前記プーリを駆動するモータ、及び前記モータの回転を減速して前記プーリに伝達する減速機を有する減速機ユニットと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、
前記モータを制御する制御部と
前記プーリから間隔を空けて前記ストレッチャ本体に取り付けられて、前記プーリから延在する前記第1紐状部材を前記第1脚部リンクに向けて折り返すためのガイドとを備えたことを特徴とする、昇降装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の昇降装置において、前記ガイドを前記ストレッチャ本体に固定するためのガイドブラケットをさらに備え、前記ガイドと前記減速機ユニットとが個別に前記ストレッチャ本体に取り付けられることを特徴とする、昇降装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の昇降装置において、前記ガイドブラケットは、前記バッテリを支持することを特徴とする、昇降装置。
【請求項4】
請求項1に記載の昇降装置において、前記ユニットブラケットは、前記ストレッチャ本体と間隔を空けて前記減速機を支持することを特徴とする、昇降装置。
【請求項5】
請求項1に記載の昇降装置において、前記バッテリを前記ストレッチャ本体に固定するためのバッテリブラケットをさらに備え、前記バッテリブラケットは、前記ストレッチャ本体と間隔を空けて前記バッテリを支持することを特徴とする、昇降装置。
【請求項6】
請求項1に記載の昇降装置において、前記第1紐状部材及び前記第2紐状部材の少なくとも一方は、ベルトであることを特徴とする、昇降装置。
【請求項7】
請求項1に記載の昇降装置において、前記制御部は、前記第1脚部リンク及び前記第2脚部リンクの少なくとも一方の高さを調節する前に、前記第1脚部リンク及び前記第2脚部リンクのロックを解除することを特徴とする、昇降装置。
【請求項8】
請求項1に記載の昇降装置において、前記第1脚部リンク及び前記第2脚部リンクの少なくとも一方が最上位置まで移動したときに、前記モータの駆動を停止させることを特徴とする、昇降装置。
【請求項9】
請求項1に記載の昇降装置において、前記第1脚部リンク及び前記第2脚部リンクの少なくとも一方が最下位置まで移動したときに、前記モータの駆動を停止させることを特徴とする、昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1脚部リンク及び第2脚部リンクを備えたストレッチャに取り付けられて、ストレッチャ本体を昇降させるための昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレッチャ本体を昇降させる第1脚部リンク及び第2脚部リンクを備えたストレッチャが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のストレッチャは、主に救急用であり、救急車に搭載されて救急患者を搬送する用途に用いられている。この救急用のストレッチャは、第1脚部リンク及び第2脚部リンクを折り畳んでストレッチャの高さを最下位置にし、第1脚部リンク及び第2脚部リンクをストレッチャ本体から開いてストレッチャの高さを最上位置にして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によるストレッチャでは、ストレッチャ本体の昇降作業を作業者の背筋力による人力で行っており、特に大柄な傷病者をストレッチャに載せた場合や、何度も搬送作業を行う場合等に作業者の腰に大きな負担となっていた。
【0005】
また、救急隊員の高齢化や女性の救急隊員の増加等により、ストレッチャ本体を容易に昇降させることのできるストレッチャのニーズが増加していた。
【0006】
さらに、既に保有しているストレッチャを容易に昇降することのできるものに買い替えることは費用負担が大きかった。
【0007】
本発明は、上記従来の技術による課題を解消し、ストレッチャに後付け可能、かつ、ストレッチャ本体を容易に昇降させることのできる昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1脚部リンク及び第2脚部リンクを備えたストレッチャに取り付けられて、ストレッチャ本体を昇降させるための昇降装置おいて、前記第1脚部リンクに取り付けられて、前記第1脚部リンクを引っ張ることにより前記第1脚部リンクの高さを調節する第1紐状部材と、前記第2脚部リンクに取り付けられて、前記第2脚部リンクを引っ張ることにより前記第2脚部リンクの高さを調節する第2紐状部材と、前記ストレッチャ本体に固定するためのユニットブラケット、前記第1紐状部材及び前記第2紐状部材を巻き取るプーリ、前記プーリを駆動するモータ、及び前記モータの回転を減速して前記プーリに伝達する減速機を有する減速機ユニットと、前記モータに電力を供給するバッテリと、前記モータを制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記第1紐状部材または前記第2紐状部材を折り返しながら移動させるガイドをさらに備えていてもよい。前記ガイドを前記ストレッチャ本体に固定するためのガイドブラケットをさらに備え、前記ガイドと前記減速機ユニットとが個別に前記ストレッチャ本体に取り付けられていてもよい。前記ガイドブラケットは、前記バッテリを支持してもよい。前記ユニットブラケットは、前記ストレッチャ本体と間隔を空けて前記減速機を支持してもよい。前記バッテリを前記ストレッチャ本体に固定するためのバッテリブラケットをさらに備え、前記バッテリブラケットは、前記ストレッチャ本体と間隔を空けて前記バッテリを支持してもよい。前記第1紐状部材及び前記第2紐状部材の少なくとも一方は、ベルトであってもよい。前記制御部は、前記第1脚部リンク及び前記第2脚部リンクの少なくとも一方の高さを調節する前に、前記第1脚部リンク及び前記第2脚部リンクのロックを解除してもよい。前記第1脚部リンク及び前記第2脚部リンクの少なくとも一方が最上位置まで移動したときに、前記モータの駆動を停止させてもよい。前記第1脚部リンク及び前記第2脚部リンクの少なくとも一方が最下位置まで移動したときに、前記モータの駆動を停止させてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ストレッチャに後付け可能、かつ、ストレッチャ本体を容易に昇降させることのできる昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る昇降装置が取り付けられたストレッチャが最上位置にある状態の斜視図を示す。
【
図2】ストレッチャが最下位置にある状態の斜視図を示す。
【
図4】ストレッチャから昇降装置を取り外した様子の分解斜視図を示す。
【
図7】バッテリ近傍におけるストレッチャ及び昇降装置の断面図を示す。
【
図8】ストレッチャの昇降制御のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、昇降装置が取り付けられたストレッチャが最上位置にある状態の斜視図を示し、
図2は、ストレッチャが最下位置にある状態の斜視図を示し、
図3は、昇降装置のブロック図を示し、
図4は、ストレッチャから昇降装置を取り外した様子の分解斜視図を示し、
図5は、減速機ユニットの斜視図を示し、
図6は、リンクスライド近傍の模式図を示し、
図7は、バッテリ近傍におけるストレッチャ及び昇降装置の断面図を示す。なお、
図6においては、理解を容易にするために、第1リンクスライド21aが一方のリミットスイッチ48に当たったことによって、第1脚部リンク20が最下位置にあることを検出した様子と、第2リンクスライド32aが他方のリミットスイッチ48に当たったことによって、第2脚部リンク30が最上位置にあることを検出した様子を模式的に示している。
【0013】
ストレッチャ100は、救急車に搭載されて救急患者を搬送する用途に用いられる救急用のものである。このストレッチャ100は、
図1に示すように、ストレッチャ本体10、第1脚部リンク20、及び第2脚部リンク30を備えており、昇降装置40が取り付けられている。
【0014】
ストレッチャ本体10は、表側に傷病者等を寝かせるための担架であり、第1端部10aから第2端部10bまで長手方向Lに延在するチューブと長手方向Lに垂直な横方向Wに延在するチューブとを組み合わせて形成されている。このストレッチャ本体10は、裏側に第1脚部リンク20と第2脚部リンク30とが取り付けられている。ストレッチャ本体10は、救急車に搭載されるときに用いられる回転自在な本体側キャスタ11が第1端部10aに設けられている。
【0015】
第1脚部リンク20は、本体側キャスタ11と第2脚部リンク30との間でストレッチャ本体10の裏側に取り付けられている。この第1脚部リンク20は、第1メインリンク21及び第1保持リンク22を備えている。
【0016】
第1メインリンク21は、先端に第1キャスタ23が固定されて取り付けられている一方、基端は横方向Wに延在する円形形状を有するチューブで形成されて第1リンクスライド21a(
図6参照)が取り付けられている。この第1リンクスライド21aはストレッチャ本体10の裏面に沿って長手方向Lにスライド移動可能になっている。
【0017】
第1保持リンク22は、先端が第1メインリンク21の中間位置近傍に旋回自在に取り付けられている一方、基端がストレッチャ本体10に旋回自在に取り付けられている。
【0018】
第1脚部リンク20は、第1メインリンク21の第1リンクスライド21aが長手方向Lにスライド移動したときに、ストレッチャ本体10に対する第1メインリンク21及び第1保持リンク22の角度が変化する。これにより、ストレッチャ100は、救急車に搭載されていない通常の状態で、第1リンクスライド21aが第2端部10bに向けてスライドしたときに、ストレッチャ本体10と第1キャスタ23との間隔が小さくなって、ストレッチャ100の高さが低く調節されるようになっている。
【0019】
一方、ストレッチャ100は、救急車に搭載されていない通常の状態で、第1リンクスライド21aが第1端部10aに向けてスライドしたときに、ストレッチャ本体10と第1キャスタ23との間隔が大きくなって、ストレッチャ100の高さが高く調節されるようになっている。なお、ストレッチャ100は、救急車に搭載される際には、第1リンクスライド21aがさらに第1端部10a側にスライド移動して第1リンクスライド21aが第1保持リンク22の基端近傍まで移動する。これにより、第1メインリンク21は、第1保持リンク22と重なる角度まで傾き、第1キャスタ23が第2脚部リンク30側かつストレッチャ本体10近傍まで移動するようになっている。
【0020】
第2脚部リンク30は、第1脚部リンク20よりも第1端部10aから離れた位置でストレッチャ本体10の裏側に取り付けられている。この第2脚部リンク30は、第2メインリンク31、第2保持リンク32、キャスタリンク34、及びサブリンク35を備えている。
【0021】
第2メインリンク31は、先端にキャスタリンク34が旋回自在に取り付けられている一方、基端がストレッチャ本体10に旋回自在に取り付けられている。
【0022】
キャスタリンク34は、先端に第2キャスタ33が旋回自在に取り付けられている。このキャスタリンク34は、第1脚部リンク20側に突出するアームを介することにより第2メインリンク31に対してオフセットした位置で旋回自在にサブリンク35が取り付けられている。
【0023】
サブリンク35は、第2メインリンク31に沿って延在しており、先端がキャスタリンク34に旋回自在に取り付けられている一方、基端がストレッチャ本体10に旋回自在に取り付けられている。第2キャスタ33の旋回軸は、
図2に示すように、ストレッチャ100の高さを最下位置に調節してもほとんど傾かないようになっている。
【0024】
第2保持リンク32は、
図1に示すように、先端が第2メインリンク31の中間位置近傍に旋回自在に取り付けられている一方、基端は横方向Wに延在する円形形状を有するチューブで形成されて第2リンクスライド32a(
図6参照)が取り付けられている。この第2リンクスライド32aはストレッチャ本体10の裏面に沿って長手方向Lにスライド移動可能になっている。
【0025】
第2脚部リンク30は、第2保持リンク32の第2リンクスライド32aが長手方向Lにスライド移動したときに、ストレッチャ本体10に対する第2メインリンク31、第2保持リンク32、及びサブリンク35の角度が変化する。これにより、ストレッチャ100は、第2リンクスライド32aが第2端部10bに向けてスライドしたときに、ストレッチャ本体10と第2キャスタ33との間隔が小さくなり、ストレッチャ100の高さが低く調節されるようになっている。一方、ストレッチャ100は、第2リンクスライド32aが第1端部10aに向けてスライドしたときに、ストレッチャ本体10と第2キャスタ33との間隔が大きくなり、ストレッチャ100の高さが高く調節されるようになっている。
【0026】
ストレッチャ100は、救急車に搭載されていない通常の状態において、第1脚部リンク20の第1リンクスライド21aと第2脚部リンク30の第2リンクスライド32aとが共にストレッチャ本体10の第1端部10aに向けてスライドしたときにストレッチャ本体10が上昇し、第1脚部リンク20の第1リンクスライド21aと第2脚部リンク30の第2リンクスライド32aとが共にストレッチャ本体10の第2端部10bに向けてスライドしたときにストレッチャ本体10が下降するようになっている。
【0027】
昇降装置40は、
図3に示すように、第1ベルト(第1紐状部材)41、第2ベルト(第2紐状部材)42、プーリ43、減速機44、モータ45、バッテリ46、制御部47、リミットスイッチ48、リンクロック解除49、及び操作部50を備えている。
【0028】
第1ベルト41は、
図1に示すように、第1脚部リンク20に取り付けられている。この第1ベルト41は、プーリ43からストレッチャ本体10の第1端部10aに向けて延在した後にガイド54で折り返されており、第1脚部リンク20の第1リンクスライド21aを引っ張ることにより第1脚部リンク20の高さを調節するようになっている。
【0029】
また、第1ベルト41は、プーリ43から間隔を空けて設けられたガイド54で折り返されながら移動することにより、第2ベルト42が引っ張る第2リンクスライド32aと同じ方向に第1リンクスライド21aを引っ張るようになっている。これにより、第1リンクスライド21a及び第2リンクスライド32aが同じ方向に引っ張られるようになっていても、プーリ43は第1端部10a側と第2端部10b側との両方から同時に略同じ力で引っ張られるようになっている。このため、プーリ43は、第1端部10a側または第2端部10b側のいずれか一方のみからの偏った力で引っ張られないようになっている。
【0030】
第2ベルト42は、第2脚部リンク30に取り付けられている。この第2ベルト42は、プーリ43からストレッチャ本体10の第2端部10bに向けて延在しており、第2リンクを引っ張ることにより第2脚部リンク30の高さを調節するようになっている。
【0031】
プーリ43は、
図4に示すように、第1ベルト41及び第2ベルト42の端部が取り付けられており、回転したときに第1ベルト41及び第2ベルト42を巻き取ったり、巻き出したりするようになっている。このプーリ43は、第1ベルト41及び第2ベルト42が第1脚部リンク20及び第2脚部リンク30を略同時に最上位置まで引っ張る位置に設けられる。
【0032】
減速機44は、
図5に示すように、入力軸にモータ45が取り付けられるとともに出力軸にプーリ43が取り付けられており、モータ45の回転を減速してプーリ43に駆動力を伝達するようになっている。プーリ43、減速機44、及びモータ45は、一対のユニットブラケット51,51とともに減速機ユニット40aとして一体で構成されている。
【0033】
モータ45は、制御部47の制御下において減速機44を駆動するようになっている。
【0034】
バッテリ46は、
図3に示すように、モータ45、制御部47、リミットスイッチ48、及びリンクロック解除49に電気的に接続されて電力を供給するようになっている。
【0035】
制御部47は、モータ45、リミットスイッチ48、リンクロック解除49、及び操作部50に電気的に接続されている。この制御部47は、リミットスイッチ48からの信号を受信するとともに、モータ45、及びリンクロック解除49を制御するための制御装置である。
【0036】
リミットスイッチ48は、第1脚部リンク20(
図1参照)及び第2脚部リンク30(
図1参照)が最上位置または最下位置に到達したことを検出するためのセンサである。本実施形態では、
図6に示すように、第1リンクスライド21aが当たって第1脚部リンク20が最下位置に到達したことを検出する第1リミットスイッチ48aと、第2リンクスライド32aが当たって第2脚部リンク30が最上位置に到達したことを検出する第2リミットスイッチ48bとを備えている。
【0037】
第1リミットスイッチ48aは第1脚部リンク20が最下位置に到達したときに、第2リミットスイッチ48bは第2脚部リンク30が最上位置に到達したときに、それぞれその旨に対応する信号を制御部47に送信するようになっている。これにより、制御部47は、第1脚部リンク20が最下位置まで到達したとき、及び第2脚部リンク30が最上位置まで到達したときに、モータ45の駆動を停止させるようになっている。
【0038】
リンクロック解除49は、
図3に示すように、制御部47に電気的に接続されている。このリンクロック解除49は、第1脚部リンク20の第1リンクスライド21aと第2脚部リンク30の第2リンクスライド32aとの意図しないスライドを防止するための物理的なロックを解除するための解除装置である。リンクロック解除49は、第1脚部リンク20及び第2脚部リンク30の各々に設けられており、制御部47の制御下において第1脚部リンク20及び第2脚部リンク30のロックを解除するようになっている。すなわち、制御部47は、第1脚部リンク20及び第2脚部リンク30の高さを調節する前に、リンクロック解除49に第1脚部リンク20及び第2脚部リンク30のロックを解除させることができるようになっている。
【0039】
操作部50は、制御部47に信号を出力するためのボタンを有し、作業者が操作することにより制御部47にストレッチャ本体10の昇降を指示できるようになっている。本実施形態に係る操作部50は、ストレッチャ本体10を上昇させるための上昇ボタン、ストレッチャ本体10の上昇を停止させるための上昇停止ボタン、ストレッチャ本体10を下降させるための下降ボタン、及びストレッチャ本体10の下降を停止させるための下降停止ボタンを有している。
【0040】
昇降装置40は、
図4に示すように、減速機44、モータ45、バッテリ46、及び制御部47がストレッチャ本体10の裏側にストレッチャ本体10と間隔を空けて設けられている。
【0041】
昇降装置40は、一対のユニットブラケット51,51、一対のガイドブラケット52,52、及びバッテリブラケット53を備えており、これらユニットブラケット51,51、ガイドブラケット52,52、及びバッテリブラケット53を介してストレッチャ本体10に固定されている。
【0042】
一対のユニットブラケット51,51の各々は、ストレッチャ本体10に上から当接するユニットブラケット上部51aと、ストレッチャ本体10に下から当接するユニットブラケット下部51bとで構成されている。これらユニットブラケット上部51a及びユニットブラケット下部51bは、ストレッチャ本体10の横方向Wに延在する2つのチューブにそれぞれ嵌るように円弧形状を有する凹部が形成されている。ユニットブラケット51,51は、ユニットブラケット上部51aとユニットブラケット下部51bとでストレッチャ本体10を挟んでボルトを用いて一体に結合されることにより、ストレッチャ本体10に固定されている。
【0043】
一対のガイドブラケット52,52の各々は、ストレッチャ本体10に上から当接するガイドブラケット上部52aと、ストレッチャ本体10に下から当接するガイドブラケット下部52bとで構成されている。これらガイドブラケット上部52a及びガイドブラケット下部52bは、ストレッチャ本体10の横方向Wに延在する2つのチューブにそれぞれ嵌るように円弧形状を有する凹部が形成されている。ガイドブラケット52,52は、ガイドブラケット上部52aとガイドブラケット下部52bとでストレッチャ本体10を挟んでボルトを用いて一体に結合されることにより、ストレッチャ本体10に固定されている。
【0044】
バッテリブラケット53は、ストレッチャ本体10に上から当接するバッテリブラケット上部53aと、ストレッチャ本体10に下から当接するバッテリブラケット下部53bとで構成されている。これらバッテリブラケット上部53a及びバッテリブラケット下部53bは、ストレッチャ本体10の長手方向Lに延在する2つのチューブにそれぞれ嵌るように円弧形状を有する凹部が形成されている。バッテリブラケット53は、バッテリブラケット上部53aとバッテリブラケット下部53bとでストレッチャ本体10を挟んでボルトを用いて一体に結合されることにより、ストレッチャ本体10に固定されている。
【0045】
減速機44は、
図5に示すように、減速機ブラケット44aが上部に設けられており、ストレッチャ本体10に取り付けられる一対のユニットブラケット51,51に減速機ブラケット44aが固定されている。ユニットブラケット51,51は、ストレッチャ本体10と間隔を空けて減速機44を支持している。
【0046】
減速機ブラケット44aは、減速機44の出力軸に向けて下方に延在する支持部44bが形成されており、この支持部44bには減速機44の出力軸が回転可能に嵌る貫通孔が形成されている。
【0047】
また、減速機ブラケット44aの上部には、
図6に示すように、一対のリミットスイッチ48a,48bが設けられている。
【0048】
バッテリ46は、
図4に示すように、ストレッチャ本体10に直接的に取り付けられた一対の本体側キャスタ11の間に取り付けられるようになっている。バッテリ46は、ガイドブラケット52,52の各々に1つずつ取り付けられた第1柱部材55a,55a、及びバッテリブラケット53に2つ取り付けられた第2柱部材55b,55bを介して、ガイドブラケット52,52及びバッテリブラケット53に取り付けられたパネル55の上面に載置されて固定されている。すなわち、ガイドブラケット52,52及びバッテリブラケット53の各々は、ストレッチャ本体10と間隔を空けてバッテリ46を支持している。パネル55の下面には、
図7に示すように、制御部47を格納するケーシング56が固定されており、制御部47はこのケーシング56内に載置されて固定されている。
【0049】
図8は、ストレッチャの昇降制御のフローチャートを示す。
ストレッチャ100の電源が入れられると、制御部47に電力が供給されてスタンバイ状態になり、制御部47は、以下の処理を実行する。
【0050】
制御部47は、先ず、作業者が操作部50に設けられた上昇ボタンを押したか否か、すなわち上昇操作がONであるか否かを判断する(ステップS1)。
【0051】
ステップS1において、上昇操作がONであると判断すると(ステップS1:Yes)、制御部47は、リンクロック解除49を作動させてロックを解除し、第1ベルト41及び第2ベルト42を巻き取る方向にモータ45を回転させる(ステップS2)。
【0052】
一方、ステップS1において、上昇操作がONではないと判断すると(ステップS1:No)、制御部47は、作業者が操作部50に設けられた下降ボタンを押したか否か、すなわち下降操作がONであるか否かを判断する(ステップS6)。
【0053】
ステップS2において、第1ベルト41及び第2ベルト42を巻き取る方向にモータ45を回転させると、制御部47は、作業者が操作部50に設けられた上昇停止ボタンを押したか否か、すなわち上昇操作がOFFであるか否かを判断する(ステップS3)。
【0054】
ステップS3において、上昇操作がOFFであると判断すると(ステップS3:Yes)、制御部47は、モータ45を停止させてリンクロック解除49によるロックの解除を中止し(ステップS5)、ステップS1から一連の処理を繰り返す。
【0055】
一方、ステップS3において、上昇操作がOFFでないと判断すると(ステップS3:No)、制御部47は、ストレッチャ本体10が最上位置に到達したか否か、すなわち第1リミットスイッチがONであるか否かを判断する(ステップS4)。
【0056】
ステップS4において、第1リミットスイッチがONではないと判断すると(ステップS4:No)、制御部47は、ステップS2から一連の処理を繰り返す。
【0057】
一方、ステップS4において、第1リミットスイッチがONであると判断すると(ステップS4:Yes)、制御部47は、モータ45を停止させてリンクロック解除49によるロックの解除を中止し(ステップS5)、ステップS1から一連の処理を繰り返す。
【0058】
ステップS6において、下降操作がONであると判断すると(ステップS6:Yes)、制御部47は、リンクロック解除49を作動させてロックを解除し、第1ベルト41及び第2ベルト42を巻き出す方向にモータ45を回転させる(ステップS7)。これにより、ストレッチャ本体10は自重によって下降するようになっている。
【0059】
一方、ステップS6において、下降操作がONではないと判断すると(ステップS6:No)、制御部47は、ステップS1から一連の処理を繰り返す。
【0060】
ステップS7において、第1ベルト41及び第2ベルト42を巻き出す方向にモータ45を回転させると、制御部47は、作業者が操作部50に設けられた下降停止ボタンを押したか否か、すなわち下降操作がOFFであるか否かを判断する(ステップS8)。
【0061】
ステップS8において、上昇操作がOFFであると判断すると(ステップS8:Yes)、制御部47は、モータ45を停止させてリンクロック解除49によるロックの解除を中止し(ステップS10)、ステップS1から一連の処理を繰り返す。
【0062】
一方、ステップS8において、下降操作がOFFでないと判断すると(ステップS8:No)、制御部47は、ストレッチャ本体10が最下位置に到達したか否か、すなわち第2リミットスイッチがONであるか否かを判断する(ステップS9)。
【0063】
ステップS9において、第2リミットスイッチがONではないと判断すると(ステップS9:No)、制御部47は、ステップS7から一連の処理を繰り返す。
【0064】
一方、ステップS9において、第2リミットスイッチがONであると判断すると(ステップS9:Yes)、制御部47は、モータ45を停止させてリンクロック解除49によるロックの解除を中止し(ステップS10)、ステップS1から一連の処理を繰り返す。
【0065】
以上の処理により、制御部47は、作業者による操作部50の操作に応じて、ストレッチャ本体10の上昇及び下降を制御することができる。
【0066】
また、制御部47は、ストレッチャ本体10が最上位置に到達したときに上昇動作を停止させ、ストレッチャ本体10が最下位置に到達したときに下降動作を停止させることができる。
【0067】
本実施形態に係る昇降装置40は、第1脚部リンク20に取り付けられて、第1脚部リンク20を引っ張ることにより第1脚部リンク20の高さを調節する第1ベルト41と、第2脚部リンク30に取り付けられて、第2脚部リンク30を引っ張ることにより第2脚部リンク30の高さを調節する第2ベルト42と、ストレッチャ本体10に固定するためのユニットブラケット51,51、第1ベルト41及び第2ベルト42を巻き取るプーリ43、プーリ43を駆動するモータ45、及びモータ45の回転を減速してプーリ43に伝達する減速機44を有する減速機ユニット40aと、モータ45に電力を供給するバッテリ46と、モータ45を制御する制御部47とを備えている。これにより、ストレッチャ本体10の裏側に取り付けて、第1ベルト41を第1リンクスライド21aに取り付けるとともに、第2ベルト42を第2リンクスライド32aに取り付けただけで、電動により第1脚部リンク20の第1リンクスライド21a及び第2脚部リンク30の第2リンクスライド32aをスライド移動させることができる。このため、昇降装置40は、ストレッチャ100に後付け可能、かつ、ストレッチャ本体10を容易に昇降させることができる。
【0068】
また、昇降装置40は、ファスナ部品等を救急車両に架装する必要がないため、救急車両を買い替えたり、救急車両に追加の架装を施したりする必要がない。
【0069】
さらに、昇降装置40は、ストレッチャ100に取り付けられても重量があまり重くならないため、救急車両に搭載する資器材を減らす必要がない。
【0070】
さらにまた、昇降装置40は、ストレッチャ100に取り付けられても全体的な大きさが従来のストレッチャとほとんど変わらないため、急斜面、狭い道路、住宅内等での取り回しがし易い。
【0071】
また、昇降装置40は、ストレッチャ100に取り付けられてもストレッチャ100に防振ベッドが使えるため、高規格要件を満たすことができる。
【0072】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明はこれに限定しない。例えば、上記実施形態では、第1脚部リンク20が最下位置に到達したことを検出する第1リミットスイッチ48aと、第2脚部リンク30が最上位置に到達したことを検出する第2リミットスイッチ48bとの2つのリミットスイッチを備えているが、これに限定されない。第1脚部リンク20及び第2脚部リンク30が最上位置または最下位置に到達したことを検出することができれば、リミットスイッチの個数は限定しない。
【0073】
また、上記実施形態では、第1脚部リンク20及び第2脚部リンク30を引っ張るための紐状部材としてベルトである第1ベルト41及び第2ベルトを用いているが、これに限定されない。プーリ43で巻き取ったり巻き出したりすることのできる紐状部材であれば、ワイヤ、ロープ、チェーン等であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…ストレッチャ本体
10a…第1端部
10b…第2端部
11…本体側キャスタ
20…第1脚部リンク
21…第1メインリンク
21a…第1リンクスライド
22…第1保持リンク
23…第1キャスタ
30…第2脚部リンク
31…第2メインリンク
32…第2保持リンク
32a…第2リンクスライド
33…第2キャスタ
34…キャスタリンク
35…サブリンク
40…昇降装置
40a…減速機ユニット
41…第1ベルト(第1紐状部材)
42…第2ベルト(第2紐状部材)
43…プーリ
44…減速機
44a…減速機ブラケット
44b…支持部
45…モータ
46…バッテリ
47…制御部
48…リミットスイッチ
48a…第1リミットスイッチ
48b…第2リミットスイッチ
49…リンクロック解除
50…操作部
51…ユニットブラケット
51a…ユニットブラケット上部
51b…ユニットブラケット下部
52a…ガイドブラケット上部
52b…ガイドブラケット下部
52…ガイドブラケット
53…バッテリブラケット
53a…バッテリブラケット上部
53b…バッテリブラケット下部
54…ガイド
55…パネル
56…ケーシング
55a…第1柱部材
55b…第2柱部材
100…ストレッチャ
【要約】 (修正有)
【課題】ストレッチャに後付け可能、かつ、ストレッチャ本体を容易に昇降できる昇降装置を提供する。
【解決手段】第1脚部リンク20及び第2脚部リンク30を備えたストレッチャに取り付けられて、ストレッチャ本体を昇降させるための昇降装置40において、前記第1脚部リンクに取り付けられて、前記第1脚部リンクを引っ張ることにより前記第1脚部リンクの高さを調節する第1紐状部材41と、前記第2脚部リンクに取り付けられて、前記第2脚部リンクを引っ張ることにより前記第2脚部リンクの高さを調節する第2紐状部材42と、前記ストレッチャ本体に固定するためのユニットブラケット、前記第1紐状部材及び前記第2紐状部材を巻き取るプーリ、前記プーリを駆動するモータ、及び前記モータの回転を減速して前記プーリに伝達する減速機を有する減速機ユニットと、前記モータに電力を供給するバッテリと、前記モータを制御する制御部とを備える。
【選択図】
図4