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特許7510579評価支援を行うためのプログラム、装置、方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】評価支援を行うためのプログラム、装置、方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0639 20230101AFI20240626BHJP
【FI】
G06Q10/0639
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024021441
(22)【出願日】2024-02-15
【審査請求日】2024-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512313953
【氏名又は名称】株式会社ビズリーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友部 博教
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-164699(JP,A)
【文献】特許第7358666(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0015393(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象者について評価を行う評価者を選出するための処理であって、
複数の人員間のコミュニケーション情報を取得するステップと、
前記コミュニケーション情報に基づいて前記複数の人員間の関係性の度合いを決定し、前記複数の人員のうちの評価対象者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人員を、前記評価対象者に対する評価を行う評価者として選出するステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記選出するステップにおいて、一の人員が、予め設定された、前記評価者として選出される選出回数の上限値を超えないように制限する、
プログラム。
【請求項2】
前記人員のうち相対的に優先度の高い優先評価者を決定するステップをさらに有し、
前記選出するステップにおいて、前記一の人員が前記優先評価者として設定された場合、前記上限値を超える回数の選出を許容する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記選出された評価者が評価を行う期限を設定するステップと、
前記選出された一の評価者が、ある期間において所定数以上の評価対象者についての評価者として選定された場合、前記評価を行う期間が長くなるように、設定された前記期限を調整するステップと
を前記コンピュータにさらに実行させる
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記選出するステップにおいて、前記関係性の度合が高い順から所定数の人員を前記評価者として選出する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記取得するステップにおいて、少なくとも前記評価対象者および前記評価者が参加者として含まれたイベントの開催情報をさらに取得し、
前記選出するステップにおいて、該取得した開催情報に基づいて前記関係性の度合を決定する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記開催情報には、前記イベントへの参加回数、参加人数、開催頻度のうち少なくとも1つのイベント詳細情報が含まれ、
前記選出するステップにおいて、前記イベント詳細情報に基づいて前記関係性の度合を決定する
請求項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記人員のうち相対的に優先度の高い優先評価者を決定するステップをさらに有し、
前記優先評価者の人数が前記所定数よりも大きい場合、前記所定数を超える人数の選出を許容する
請求項4に記載のプログラム。
【請求項8】
前記取得するステップにおいて、各人員による、前記評価対象者に関する情報を閲覧した頻度を示す頻度情報をさらに取得し、
前記選出するステップにおいて、前記頻度情報にさらに基づいて前記評価者を選出する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項9】
前記取得するステップにおいて、各人員の属性をさらに取得し、
前記選出するステップにおいて、前記評価者の属性および前記評価対象者の属性のうち少なくともいずれかにさらに基づいて、前記評価者を選出する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項10】
評価対象者について評価を行う評価者を選出するための装置であって、
複数の人員間のコミュニケーション情報を取得する取得部と、
前記コミュニケーション情報に基づいて前記複数の人員間の関係性の度合いを決定し、
前記複数の人員のうちの評価対象者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人
員を、前記評価対象者に対する評価を行う評価者として選出する選出部と
を有し、
前記選出部は、一の人員が、予め設定された、前記評価者として選出される選出回数の上限値を超えないように制限する、
評価支援装置。
【請求項11】
評価対象者について評価を行う評価者を選出するための方法であって、
コンピュータの取得手段が、複数の人員間のコミュニケーション情報を取得する取得ステップと、
前記コンピュータの選出手段が、前記コミュニケーション情報に基づいて前記複数の人員間の関係性の度合いを決定し、前記複数の人員のうちの評価対象者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人
員を、前記評価対象者に対する評価を行う評価者として選出する選出ステップと
を有し、
前記選出するステップにおいて、一の人員が、予め設定された、前記評価者として選出される選出回数の上限値を超えないように制限する、
評価支援方法。
【請求項12】
評価対象者について評価を行う評価者を選出するためのシステムであって、
複数の人員間のコミュニケーション情報を取得する取得部と、
前記コミュニケーション情報に基づいて前記複数の人員間の関係性の度合いを決定し、
前記複数の人員のうちの評価対象者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人
員を、前記評価対象者に対する評価を行う評価者として選出する選出部と
を有し、
前記選出部は、一の人員が、予め設定された、前記評価者として選出される選出回数の上限値を超えないように制限する、
評価支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組織内の人員の評価を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業などの組織では、サーベイなどと呼ばれる聞き取り調査を行って、組織内の人員に対する評価(例えば、人事評価やその他の各種評価など)が行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-185080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、企業などの組織において行われるサーベイは、誰を評価者または回答者に設定するかによって、サーベイ結果の質が大きく左右される。特に、いわゆる360度評価等と呼ばれる、評価対象者のパフォーマンスやスキルを多角的に評価すべく、上司、同僚、部下、あるいは場合よっては顧客やパートナーなどの組織外部の人なども含む多方面からの評価を前提とする評価手法においては、対象人員のレポートラインや所属組織外の回答者(例えば、組織を超えた同じプロジェクトを担当するなど)を選ぶ必要があり、適任者を選任するのがより困難である。このため、人事部門等の経験や感覚に頼って回答者を選定しているのが実態である。そのため、サーベイ結果の質を担保しつつ効率的なサーベイを実現するのは容易ではなかった。
【0005】
この発明は、組織に属する人員を評価するに際し、適切な評価者を選出することを支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、評価対象者について評価を行う評価者を選出するための処理であって、組織内の複数の人員間のコミュニケーション情報を取得するステップと、前記コミュニケーション情報に基づいて前記複数の人員間の関係性の度合いを決定し、前記複数の人員のうちの評価者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人員を、前記評価対象者に対する評価を行う評価者として選出するステップとを含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【0007】
好ましい態様では、前記選出するステップにおいて、前記関係性の度合が高い順から所定数の人員を前記評価者として選出する。
【0008】
他の好ましい態様では、前記取得ステップにおいて、少なくとも前記評価対象者および前記評価者が参加者として含まれたイベントの開催情報をさらに取得し、前記選出するステップにおいて、該取得した開催情報に基づいて前記関係性の度合を決定する。
【0009】
他の好ましい態様において、前記開催情報には、前記イベントへの参加回数、参加人数、開催頻度のうち少なくとも1つのイベント詳細情報が含まれ、前記選出するステップにおいて、前記イベント詳細情報に基づいて前記関係性の度合を決定する。
【0010】
他の好ましい態様では、前記人員のうち相対的に優先度の高い優先評価者を決定するステップをさらに有し、前記優先評価者の人数が前記所定数よりも大きい場合、前記所定数を超える人数の選出を許容する。
【0011】
他の好ましい態様では、前記選出するステップにおいて、一の人員が、予め設定された、前記評価者として選出される選出回数の上限値を超えないように制限する。
【0012】
他の好ましい態様では、前記取得するステップにおいて、各人員による、前記評価対象者に関する情報を閲覧した頻度を示す頻度情報をさらに取得し、前記選出するステップにおいて、前記頻度情報にさらに基づいて前記評価者を選出する。
【0013】
他の好ましい態様では、前記取得するステップにおいて、各人員の属性をさらに取得し、前記選出するステップにおいて、前記評価者の属性および前記評価対象者の属性のうち少なくともいずれかにさらに基づいて、前記評価者を選出する。
【0014】
他の好ましい態様では、前記選出するステップにおいて、前記一の人員が前記優先評価者として設定された場合、前記上限値を超える回数の選出を許容する。
【0015】
他の好ましい態様では、前記選出された評価者が評価を行う期限を設定するステップと、前記選出された一の評価者が、ある期間において所定数以上の評価対象者についての評価者として選定された場合、前記評価を行うことができる期間が長くなるように、該設定された期限を調整するステップとを前記コンピュータにさらに実行させる。
【0016】
また、この発明は、評価対象者について評価を行う評価者を選出するための装置であって、組織内の複数の人員間のコミュニケーション情報を取得する取得部と、前記コミュニケーション情報に基づいて前記複数の人員間の関係性の度合いを決定し、前記複数の人員のうちの評価対象者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人員を、前記評価対象者に対する評価を行う評価者として選出する選出部とを有する評価支援装置を提供する。
【0017】
また、この発明は、評価対象者について評価を行う評価者を選出するための方法であって、組織内の複数の人員間のコミュニケーション情報を取得する取得ステップと、前記コミュニケーション情報に基づいて前記複数の人員間の関係性の度合いを決定し、前記複数の人員のうちの評価対象者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人員を、前記評価対象者に対する評価を行う評価者として選出する選出ステップとを有する評価支援方法を提供する。
【0018】
また、この発明は、評価対象者について評価を行う評価者を選出するためのシステムであって、組織内の複数の人員間のコミュニケーション情報を取得する取得部と、前記コミュニケーション情報に基づいて前記複数の人員間の関係性の度合いを決定し、前記複数の人員のうちの評価対象者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人員を、前記評価対象者に対する評価を行う評価者として選出する選出部とを有する評価支援システムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、組織に属する人員を評価するに際し、適切な評価者を選出することが支援される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の第1実施形態である評価支援装置を利用した評価システムの構成を示すブロック図である。
図2】同評価支援装置の構成を示すブロック図である。
図3】同実施形態の関係性テーブルを例示する図である。
図4】この発明の第3実施形態の動作例を示す図である。
図5】この発明の第4実施形態の動作例を示す図である。
図6】同実施形態の動作例を示す図である。
図7】この発明の第5実施形態の動作アルゴリズムを説明するための図である。
図8】この発明の第6実施形態の動作アルゴリズムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である評価支援装置10を含む評価システム100の構成例を示すブロック図である。評価支援装置10は、企業などの組織内に設置され、組織内の人員を対象としたサーベイの実施を支援する装置である。評価支援装置10は、組織内のLANおよび外部のインターネット等を含むネットワーク20に接続される。ネットワーク20には、組織内の人員の端末が接続されている(図示略)。サーベイは、これらの端末を介して実施される。また、ネットワーク20にはデータベース30が接続されている。
【0023】
データベース30は、組織内の人員に関する各種情報(性別、年齢、職種、職歴、勤続年数、各種の人事・査定など情報など)を記憶する。加えて、データベース30は、組織内の人員間のコミュニケーションを示すコミュニケーション情報を記憶する。データベース30は、例えば組織内の各人員が共用する会議予約システムやカレンダー(スケジュール管理)システム(図示せず)などと接続され、このようなシステムから、定期的にまたは評価支援装置からの要求に応じて取得し、取得した情報を一時的にまたは永続的に記憶する。この場合、組織内の各人員が参加する会議等のイベントに関する情報であれば、参加者、開催日時等の情報がコミュニケーション情報に含まれる。また、カレンダー情報であれば、例えば各人員の行動予定または過去の行動記録などの行動に関する情報がコミュニケーション情報に含まれる。なお、例えば組織外の者と協同する業務に関連した、組織内の人員と組織外の者とのコミュニケーションに関する情報も含まれうる。また、組織外の者に関する各種情報を含んでいてもよい。要するに、ある人員に対する評価を依頼する人物を選定する際に利用できる情報であれば、その人物が属する組織が、評価者の属する組織と同じであるか否かは問わない。
【0024】
また、データベース30は、電子メール、電話、slack(登録商標)などのSNS(ソーシャルネットワーキングシステム)など、各種コミュニケーションツールを用いて人員間でなされたコミュニケーションに関する情報を、コミュニケーション情報として記憶してもよい。例えば、電話(音声によるコミュニケーション)であれば、データベース30は、電話による通話の状況を管理するシステム(図示せず)と接続し、通話者、通話日時、通話時間などをこのシステムから適宜取得する。電子メールであれば、例えば、データベース30は電子メールサーバと接続し、送受信されたメールの送信者、受信者、送受信時間などを取得する。不特定あるいは特定の相手に向けてテキストメッセージや画像(静止画、動画)を含むコンテンツ情報を投稿するSNSであれば、例えば、コンテンツの投稿者、宛先、投稿がなされた時刻、相手が投稿を閲覧したか否かの状況、投稿者に対して返信を行った否かの状況についての情報を取得する。
【0025】
なお、コミュニケーション情報は、組織内の人員と組織外の人員との間のコミュニケーションを示す情報でもあってもよい。例えば、業務の一環としての会議や業務外の懇親会などのイベントへの参加を示すコミュニケーション情報がデータベース30に記憶される。
【0026】
評価支援装置10は、サーベイの支援、具体的にはサーベイにおける評価対象者について評価を行う評価者を選出するための処理を実行するコンピュータである。この評価支援装置10は、プロセッサと記憶部とを少なくとも含む。記憶部は、プログラムを記憶した不揮発性記憶部とプロセッサによってワークエリアとして使用される揮発性記憶部とを含む。本実施形態において、評価支援装置10のプロセッサは、不揮発性記憶部内のプログラムを実行することにより取得部11および選出部12として機能する。
【0027】
ここで、取得部11は、図2に示すように、対象となる複数の人員h間のコミュニケーション情報cをデータベース30から取得する手段である。同図において、hであらわされるオブジェクトはコミュニケーションの対象となる各人員(同日人物が複数登場する場合もありえる)を示し、点線で表されたオブジェクトはその囲まれた複数の人員が参加したイベント(会議など)があった結果、当該複数の人員の間でコミュニケ―ションが発生したことを意味している。例えば、人員901、902および903において会議というコミュニケーション910が行われ、このコミュニケーションに関する情報c1が取得部にて取得される。取得部11は、当該対象となる複数の人員hの間で行われたすべてのコミュニケーション情報(c1、c2,c3・・・=c)を取得する。
【0028】
このコミュニケーション情報は、例えば、所定期間において、参加した会議の数や参加した時間の合計や、同時に出席していた他の参加者の情報などを含む。あるいは、各種コミュニケーションツール(電子メール、電話、slackなど)を用いてやり取りしたメッセージの送受者を特定する情報、やりとりした情報の量、やり取りした回数や頻度などの情報を含んでいてもよい。また、過去に行われたコミュニケーション実績だけでなく、カレンダー情報から各種イベントの開催に関する情報を抽出することで、将来予定されているコミュニケーションも考慮してもよい。要するに、評価対象者とコミュニケーション密度が高いそうな人(換言すると、当該対象者の評価者として適切だと考えられる人)を推定できればよい。
【0029】
選出部12は、コミュニケーション情報cに基づいて複数の人員h間の関係性の度合いを算出し、複数の人員hのうちの評価対象者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人員を、評価対象者に対する評価を行う評価者として選出する手段である。ここで、関係性の度合いは、「0」(例えば、関連性が最低レベルまたは価対象者と接点が全く無いなど)~「1」(関連性が最高レベルあるいは評価対象者にとって唯一の接点がある者など)までの数値など、その表現形式は任意である。また、評価は、いわゆる360度評価、アセスメント評価、インタビュー、人事評価・査定などが該当し、評価の種類、内容、観点、方法、目的、評価結果の表現形式等は問わない。
本実施形態において、選出部12は、関係性の度合(評価者候補としての序列)が高い順から所定数の人員を評価者として選出する。このように評価対象者と関りがある(あるいはあった)者であっても関係性が薄いと推定されるものに対しては回答者から除外することで、例えば多数の人員と広く浅く関係している者など特定の者に回答の負担が集中することを防止できる。所定数は、例えば7人など、評価を行うための質問の項目数や量など、回答者の負担度に応じて設定してもよい。
【0030】
次に、本実施形態の動作例を説明する。ある組織に属する人員についてのサーベイを実施する場合に、それに先立って評価支援装置10が起動される。評価支援装置10では、取得部11により取得されるコミュニケーション情報cに基づいて、選出部12は、図3に例示する関係性テーブル121を生成する。
【0031】
この関係性テーブル121は、評価対象者の各々について、当該評価対象者と他の人員との関係性の度合を、コミュニケーション情報cに基づいて「0」(関係性が全くないと推定される)~「1」(関係性が最も高い水準にあると推定される)の値として算出し、度合が「0」より大きい他の人員(すなわち、何らかの関係性があると推定される者)の名前を度合の大きさ順に序列化したテーブルである。具体的には、第1行目が評価対象者を示し、第2行名以下が評価者候補を示す。例えば、評価対象者であるナカムラマサルに対する関係性の度合は、サトウリエコが第1位、オハラタイゾウが第2位、…、コンノシゲオが第8位となっている。
【0032】
なお、関係性テーブル121に記録される人員の閾値(下限値)は「0」に限らず、任意の値(例えば0.1)でよい。あるいは、関係性テーブル121に記録されるか否かの判断にあたっては、閾値でなく、度合いが上位から所定数番目(例えば10番目)以内か否かで判断してもよい。例えば、広く浅い交流関係を有する評価対象者がいた場合、0よりも大きな関係性度合いを有する人員が存在する可能性があるが、この場合であっても、順序が11番名以下あるいは0.1以下であるものは関係性テーブル121から除外されるようにする。これにより、評価対象者とあまり関係が深くない者が評価者として選出され、その結果、評価の内容(妥当性)が低下することを防ぐことができる。
【0033】
続いて、選出部12は、関係性の度合が高い順から所定数の人員を評価者として選出する。この所定数は、サーベイでの質問項目量(回答負担度)に応じて設定してもよい。例えば、質問項目量が予め定められた標準値よりも多い場合は、上記所定数の基準値(
例えば7人)よりも少なく(例えば5人)する。評価者一人あたりの質問項目数(回答すべき項目数)あるいはこれに基づいて算出される回答負担度に選定される評価者の数を乗じた値をサーベイに要する人的リソースと考えると、この人的リソースの範囲内において、サーベイの質問項目数と選定する評価者の人数とを設定することが好ましい。こうすることで、評価者側の負担と評価者から得られる回答(サーベイ結果)の質のバランスをとることができる。なお、上記所定数ないしリソースはサーベイの内容に応じて予め決定されていてもよいし、人事部等のサーベイの策定者が自由に設定してもよい。
図3の例では、所定数は7名である。従って、選出部12は、関係性の度合が第1位から第7位までの人員を評価者として選出する。
【0034】
図3の例において、評価対象者タナカスケオに関しては、関係性の度合が「0」より大きい人員が5名しかいない。そこで、この場合、選出部12は、関係性の度合が「0」より大きい第1位から第5位までの5名を評価者として選出する。
【0035】
サーベイ実施時、このようにして選出された評価者に対し、評価対象者に関連した質問がメール等により送られ、各評価者から回答が収集される。メール等の作成は、評価者支援装置と接続された他のシステムが受信した評価者のリストに基づいて、当該システムの端末において人事部などに所属する人員(管理者)が電子メールクライアントアプリケーションを操作して宛先の入力や質問文の入力、送信の実行指示を入力してもよい。あるいは、評価者リストを受信すると、宛先を特定し、自予め定められた質問文の入力および当該宛先へ送信事項を自動的に実行してもよい。
このように、本実施形態によれば、人事部門等の経験や感覚に頼ることなく、対象者のコミュニケーションの状況に基づいて合理的かつ適正な評価者を選出してサーベイを実施することができる。
【0036】
<第2実施形態>
この発明の第2実施形態において、取得部11は、少なくとも評価対象者および評価者が参加者として含まれたイベントの開催情報をさらに取得する。ここで、イベントとは、例えば業務上の会議、打ち合わせ、ミーティングや、業務外の懇親会などである。また、開催情報は、開催日時、開催場所、参加者などの情報を含む。また、開催情報には、イベントへの参加回数、参加人数、開催頻度のうち少なくとも1つのイベント詳細情報が含まれている。なお、イベントは、レポートライン内など、評価対象者が属する一つの組織内のイベントであってもよいし、部署を跨いだプロジェクトに係る打ち合わせのように、評価対象者が属する組織以外の者が参加するものであってもよい。
【0037】
そして、選出部12は、取得部11が取得した開催情報に基づいて、上述した関係性の度合を決定する。例えば、評価対象者とともに参加したイベント回数、頻度、同時に参加していた総時間が多い人ほど、その評価対象者と関係性の度合が高い人であると推定する。
また、会議等イベントの出席者が少ないほど、コミュニケーションの密度が高いと推定されるので、関係性の度合いがより高いと推定する。また、所定数(例えば10人)以上のイベントについては、関係性の度合の算定からは除外してもよい。多数の参加者がいるイベントの場合は、評価対象者とのコミュニケ―ションが希薄であるあるいは事実上ないという可能性があるからである。
これにより、イベントの内容に応じて、より適正な評価者を選出してサーベイを実施することができる。
【0038】
関係性の度合の推定において、イベントの開催タイミングをさらに考慮してもよい。例えば、開催タイミングが業務時間内であるより業務時間外である方が関係性の度合が高いと推定する。あるいはイベントの属性ないし性質を加味してもよい。例えば、イベントの開催形態を考慮してもよい。例えば、オンライン開催(web会議など参加者が物理的に離れた場所にいるような形態)よりもオフライン開催(物理的に同じ場所で参加する形態)の方が関係性の度合が高いと推定する。あるいは、イベントの公開性(秘匿性)を加味してもよい。例えば、参加者以外にも公開されるイベント(公開イベント)よりも参加者以外には公開されないイベント(非公開イベント)の方が関係性の度合が高いと推定する。また、イベントの参加の必須性を加味してもよい。例えば、評価対象者または評価者が任意出席者である場合よりも必須出席者である場合の方が関係性の度合が高いと推定する。
これにより、さらに正確に関係性の度合を算出することができる。
【0039】
<第3実施形態>
本実施形態において、評価支援装置10は、人員のうち相対的に優先度の高い優先評価者を決定する手段をさらに有する。選出部12は、優先評価者の人数が上述した所定数よりも大きい場合、例外的に、所定数を超える人数の選出を行ってもよい。優先評価者は、例えば、そのサーベイにおいて評価義務者として設定されている者(例えば直属の上司など)であり、例えば、人事評価やアセスメント評価にて必須評価者として設定されているなどを含む。このような場合、選出部12は、関係性の度合に基づいて決定される評価者よりも優先して優先評価者を評価者として選定する。
【0040】
図4は、本実施形態における優先評価者の決定方法を例示する図である。なお、以下で説明する優先評価者を決定する方法は一例にすぎず、例えばサーベイを実施しようするごとに、サーベイの作成者が自由に決定することできる。
図4に示すように、サーベイの種類ごとに、優先評価者に関する条件が規定される。サーベイの種類に関し、360度評価とは、評幅広い者からの評価を集めて評価対象者を多角的に評価することを目的とするサーベイである。アセスメント評価とは、主に、本人または上司等が設定した業務上の目標に対する達成の度合いを評価することを目的とするサーベイである。インタビューとは、基本的に、評価対象者と関係が深い少数の者から詳細に聞き取ることを目的とするサーベイである。「人事評価・査定」とは、上司または人事部等によって作成される人事上の評価を行うために必要な情報を収集することを目的とするものである。
【0041】
「必須評価者」とは、必須評価者を設定する必要があるか否かを意味する。すなわち。必須評価者が「有」の場合、所定の条件を満たす者を必ず優先評価者として選定しなければいけないことを示す。「レポートライン外あるいは組織外の評価者設定」とは、優先評価者の選定に際し、対象者をレポートライン外あるいは組織外から選出することが許容されるか否かを示す。すなわち、「有」は優先評価者をレポートライン外あるいは組織外から選出することが許容され、「無」は優先評価者をレポートライン外あるいは組織外から選出することができないことを意味する。
同図の例では、360度評価を行うに際し、評価対象者の上司またはメンターの関係にある者は必ず優先評価者として選定されなければならず、かつ他の優先評価者を選定する場合は、レポートライン外あるいは組織外から選定してもよいことが規定されている。
【0042】
優先評価者を選定するためのアルゴリズムを、職種ごとに設定されてもよい。例えば、360度評価の場合において、評価対象者がエンジニア職の場合は上司およびメンターを優先評価者として設定するのに対し、評価対象者が管理職の場合は、上司およびメンターに加えて、部下のうち少なくとも1名が優先評価者として選定されるように規定してもよい。
【0043】
これにより、サーベイの有効性あるいは回答結果の質を担保することができる。
【0044】
<第4実施形態>
本実施形態において、選出部12は、一の人員が、予め設定された、評価者として選出される選出回数の上限値を超えないように制限する。
【0045】
ここで、図5および図6を参照し、本実施形態の動作例を説明する。図5は、関係性の度合に基づいて評価者を選出した場合に各人員が評価者として選出された回数を例示している。例えば、上限値が「4」である場合、ハシグチイチロウの選出回数「6」が上限値「4」を超えている。
【0046】
一方、この例において、関係性テーブル121は、図6に示す通りである。そこで、選出部12は、この関係性テーブル121において、各評価対象者に対するハシグチイチロウの関係性の度合を度合の低いものから順に選択し、ハシグチイチロウを評価者から除外する操作を行うことにより、ハシグチイチロウの評価者としての選出回数を上限値「4」以内に収める。図6の例では評価対象者タマムラナオキおよびホリオミサコに対する関係性の度合が低いので、これらの評価対象者に対する評価者からハシグチイチロウが除外される。この結果、このハシグチイチロウが評価者から除外された評価対象者タマムラナオキおよびホリオミサコについては、それぞれ、関係性の度合いが高い者から評価者を選定する。例えば、評価対象者タマムラナオキおよびホリオミサコについては、アオヤマタロウ、クロウマユミ、タケイユウコ・・・の順の優先度で評価対象者として選出されることになる。しかし、この例においては、アオヤマタロウ(序列5位)、クロウマユミ(序列6位)、タケイユウコ(序列7位)は他の評価対象者との関係において、序列4位以上となっており、この結果、関係性を有しており、すでに選出「4」回以上選出されているため、選出対象から除外される。序列8位のマエカワミユはまだ選出回数が「4」を超えていない。この結果、タマムラナオキおよびホリオミサコについては、関係性の度合が8位であるマエカワミユキおよびタケイユウコがハシグチイチロウの代わりに評価者に選出される。
【0047】
このように本実施形態によれば、特定の者の評価者としての選出回数が他の者よりも極端に多くなることで評価作業の負担が特定の者に偏ることを防止することができる。
【0048】
<第5実施形態>
本実施形態において、取得部11は、各人員の属性をさらに取得する。また、選出部12は、人員の属性および評価対象者の属性のうち少なくともいずれかにさらに基づいて、評価者を選出する。
【0049】
ここで、「属性」とは、職位、職階、職責、職種、業務内容、年齢、性別、入社年度、その人員に対する評価などである。「人員の属性および評価対象者の属性のうち少なくともいずれかにさらに基づいて、評価者を選出する」とは、具体的には次の通りである。
【0050】
例1:評価者候補の属性のみに基づく場合
例えば、職位という属性の観点から、部長職のほうが課長職よりも評価者として選ばれやすくする。部長職のような管理職の人員は評価に慣れており、回答内容の信頼性が高いと推定されるからである。
【0051】
例2:評価対象者の属性と評価者候補の属性とに基づく場合
例えば、評価対象者と同じ職種の人間が評価者として選ばれやすくする。評価対象者と同じ職種、業務内容、部門の人間の方が正確に評価できる可能性が高いと考えられるからである。評価対象者と評価者との相対的関係性を考慮したものである。
【0052】
例3:評価対象者の属性のみに基づく場合
評価対象者が特殊な職種の場合には、評価対象者の属性のみを考慮するのが適切である。例えば、職種や業務内容が非常に専門的あるいは特殊なものであって、同一または類似する(関連性が所定度合い以上ある)職種ないし業務内容に従事する者しか性格に評価できないといったケースが想定される。
【0053】
図7は本実施形態の動作アルゴリズムを説明するための図である。取得部11は、評価者の候補の属性として、職位、職種および評価を取得している。関係性スコアとは、コミュニケーション情報cに基づいて算出された評価対象者との関係性の度合である。本実施形態では、この関係性の度合に対し、職位、職種および評価に応じた度合を加味したスコアが算出され、このスコアに基づいて評価者として選出される優先順位が決定される。
【0054】
本実施形態によれば、各人員の属性を加味することで、上記第1実施形態と比べて、評価対象者の評価を行うのにより適した人員が評価者として選出される。
【0055】
<第6実施形態>
本実施形態では、組織内の各人員を評価者として選出する優先順位の決定に際し、評価対象者の情報についての閲覧の状況を考慮する。例えば、評価対象者の情報を普段から閲覧している人は、その対象者の評価を行うのに適切な人である可能性が高いと合理的に推定できるからである。
【0056】
本実施形態において、取得部11は、各人員による、評価対象者に関する情報を閲覧した頻度を示す頻度情報をさら取得する。また、選出部12は、頻度情報にさらに基づいて評価者を選出する。
図8は、本実施形態の動作アルゴリズムを説明するための図である。取得部11は、第5実施形態に係る情報に加えて、評価対象者についての情報の閲覧状況を示す情報を取得している。評価対象者についての情報とは、例えば評価対象の勤怠や業績等の情報を管理する人事システムが有するファイルであってもよし、各種情報の発信を行うための社内SNSにおける評価対象者が有するページであってもよい。

具体的には、閲覧状況を示す情報として、同図に示すように、所定期間(例えば現在から過去1件間)において評価対象者についての情報を閲覧した回数(閲覧数)を取得する。そして、この閲覧数に応じて第5実施形態で算出したスコアを補正する。この例では、閲覧数が10回以上の場合、5~9回の場合、1~4回の場合、それぞれスコアにそれぞれ「0.1」、「0.05」、「0.03」を加算している。なお、評価対象者の情報は、例えばネットワーク20に接続された、人事部等が運営・管理しているシステム(図示せず)にて生成される情報であって、当該情報を閲覧した場合、閲覧者、閲覧が行われたタイミング、閲覧された内容に関係する者(評価対象者)がデータベース30に記憶されるようになっている。
なお、この例では、職位・職種・評価といった属性情報に基づくスコア値の算出を前提としているが、このような属性情報を用いずに、コミュニケ―ションの情報と閲覧状況の情報とのみに基づいてスコア(および優先順位)を決定してもよい。
【0057】
これにより、評価対象者の評価を行うのにより適した人員が評価者として選出される。
【0058】
<第7実施形態>
本実施形態は、上記第4実施形態に対し、上記第3実施形態に対応した例外を設けたものである。本実施形態において、選出部12は、一の人員が優先評価者として設定された場合、上限値を超える回数の選出を許容する。
【0059】
本実施形態では、優先評価者(例えば回答義務者など)については、回答負担軽減の調整対象とはしない。評価の質を担保するためには、ある程度負担が大きいとしても優先評価者の評価は必要だからである。
【0060】
<第8実施形態>
本実施形態において、評価支援装置10は、選出された評価者が評価を行う期限を設定する期限設定部と、選出された一の評価者が、ある期間において所定数以上の評価対象者についての評価者として選定された場合、評価を行うことができる期間が長くなるように、該設定された期限を調整する期限調整部とを有する。例えば、評価支援装置10は、評価者と各評価者に対して設定された回答期限とをセットにして、端末を操作してサーベイの依頼メールを作成する人員の端末に送信してもよいし、電子メールを自動的に配信するシステムへ提供してもよい。
【0061】
ここで、「期限を調整する」とは、回答期限を後ろにずらす、回答依頼自体を一時的に保留する、回答期間を長くするなどである。本実施形態によれば、回答依頼の数を調整することはできないが、回答期限をずらすことによって回答者の負担を減らすことができる。
【0062】
上記各実施形態においては、1台のコンピュータである評価支援装置10がプログラムに従って取得部11としての処理および選出部12としての処理を実行したが、ネットワークを介して接続された複数台のコンピュータが協働して取得部11としての処理および選出部12としての処理を実行してもよい。すなわち、この発明は、取得部11としての処理および選出部12としての処理を実行する方法あるいはシステムとして実現される場合がある。後述する第2実施形態以降の各実施形態についても同様である。また、評価支援装置10は、電子メールやチャットアプリケーション等を用いて評価者へ依頼および回答内容の取集を行うシステムの一部として組み込まれてもよい。
要するに、本発明に係る情報処理システムにおいて、1以上のコンピュータにおいて、評価対象者について評価を行う評価者を選出するための処理であって、複数の人員間のコミュニケーション情報を取得するステップと、前記コミュニケーション情報に基づいて前記複数の人員間の関係性の度合いを決定し、前記複数の人員のうちの評価者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人員を、前記評価対象者に対する評価を行う評価者として選出するステップとを含む処理が実行されていればよい。
【符号の説明】
【0063】
100……評価システム、10……評価支援装置、20……ネットワーク、30……データベース、11……取得部、12……選出部。
【要約】
【課題】人事部門等の経験やカンに頼ることなく、適切な回答者を選出する。
【解決手段】評価支援装置10は、複数の人員間のコミュニケーション情報を取得する取得部11と、コミュニケーション情報に基づいて複数の人員間の関係性の度合いを決定し、複数の人員のうちの評価対象者との関係性の度合が所定値以上である1以上の他の人員を、評価対象者に対する評価を行う評価者として選出する選出部12とを有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8