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特許75105802液型手塗り用ウレタン塗膜組成物およびウレタン防水塗膜層の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物およびウレタン防水塗膜層の施工方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/06 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
C09D175/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024070014
(22)【出願日】2024-04-23
【審査請求日】2024-04-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594162663
【氏名又は名称】アイシーケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】吉川 優敏
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 尚人
(72)【発明者】
【氏名】青山 直親
(72)【発明者】
【氏名】藤田 恒
(72)【発明者】
【氏名】陣内 照道
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043740(JP,A)
【文献】特開2017-218481(JP,A)
【文献】特開平10-017819(JP,A)
【文献】特開2015-007241(JP,A)
【文献】特開2005-299103(JP,A)
【文献】特開2007-000720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、芳香族ポリアミンおよび無機充填剤を含む硬化剤とからなる2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物であって、
主剤中のイソシアナート基末端プレポリマーを構成するポリイソシアナートが70当量%超の脂肪族および/または脂環式イソシアナートを含み、主剤のNCO含有量が3.0質量%~6.0質量%であり、
主剤中のイソシアナート基末端プレポリマーを構成するポリオールが分子量500以上のジオールを5当量%~95当量%および分子量500未満のジオールと官能基数3以上のポリオールを合わせて5当量%~95当量%含み、全ポリオール中の10当量%~80当量%が脂肪族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートポリオールからなり、
硬化剤は全反応成分の80当量%超が芳香族ポリアミンであり、芳香族ポリアミンの70当量%超がジエチルトルエンジアミンであり、硬化剤は無機充填剤を20質量%~80質量%含み、
主剤中のイソシアナート基末端プレポリマー100質量部に対し5質量部~40質量部の可塑剤を硬化剤に、または主剤と硬化剤の両方に分けて、配合し、
ウレタン塗膜組成物に対して5質量%~40質量%の溶剤を、主剤および/または硬化剤に配合し、溶剤は溶解度パラメーター(SP値)が8.0~14.0の非プロトン性溶剤を30質量%超含み、
可塑剤の質量(g)に対する芳香族ポリアミンのアミノ基量(ミリ当量)の比が2.0~20.0である、2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物。
【請求項2】
主剤のイソシアナート基と硬化剤中の芳香族ポリアミンのアミノ基との当量比が0.9~1.5である、請求項1に記載の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物。
【請求項3】
ウレタン塗膜組成物の硬化塗膜のJIS D硬度が25以上且つ引張強さが10N/mm以上である、請求項1または2に記載の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物。
【請求項4】
基盤面上に、プライマー層を施した後、またはプライマー層とウレタン防水材層を施した後に、請求項1に記載の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物を塗工することを含むウレタン防水塗膜層の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物(塗り床材、防水材)およびその組成物を用いたウレタン防水塗膜層の施工方法に関する。更に詳しくは、スポーツフロアや重歩行用として実用性に問題がないうえでトップコートを塗布する必要のない程度にまで耐候性の改善された、2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物およびその組成物を用いたウレタン防水塗膜層の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン塗り床材や防水材は、不定形状および狭小部分の施工に適していることより、マンションなど集合住宅のベランダ、庇の防水や、役物類が多い屋上の防水を初め、通気緩衝シートを用いた本格的な屋上防水まで幅広く使用されてきた。一方、スポーツフロアや歩行量の多い通路などの比較的強い負荷がかかる部分には、弾性と硬度に富んだ高硬度ウレタン塗膜防水層が仕上げ材として必要になってくる。更に、近年では深刻な人手不足により、工程の省力化も強く求められている。
【0003】
現在使用されているウレタン防水材は、JIS A 6021「建築用塗膜防水材」により、高伸張形と高強度形の2種類に分類されている。高伸張形は手塗用の汎用性のある防水材であり、破断時の伸び率(以下、「伸び率」と称す。)が450%以上、引張強さが2.3N/mm2以上、抗張積が280N/mm以上と規定されており、主に非歩行用や軽歩行用部分に使用されている。一方の高強度形は、伸び率が200%以上、引張強さが10N/mm2以上、抗張積が700N/mm以上という規格になっており、駐車場用防水床、屋上緑化用耐根性防水材、金属屋根用防水材などの特殊な用途に使用される場合が多く、高反応性の2成分を衝突混合させる専用のスプレー装置によりスプレー塗布する超速硬化性ウレタン材料が主体となっている。しかしながら、スプレー施工は、施工時に発生するミストの飛散が大きな問題であり、施工する近辺を厳重にフィルムなどで養生することはもとより、近隣の住居や車にも注意を払わなければならないため、住宅密集地や屋内での施工には適していない。また、スプレー装置が高価であり、しかも専任技術者が必要となるため、施工できる工事店が限定されてしまうという問題もある。
【0004】
施工上の問題が少ない2液型手塗り用ウレタン防水材は、2液の液状物を攪拌機で混合した後、コテ、ヘラ、ローラー、刷毛などで手塗り施工するものである。日本では冬季の施工と夏季の施工では外気温が大幅に異なるため、30℃前後での施工に適した夏用配合と、10℃前後の施工に適した冬用配合が用意されているのが一般的である。一例ではあるが2液混合後から粘度が6万~10万mPa・sに到達するまでの時間(以下、可使時間と称す。)が、夏用配合では23℃での可使時間が45分以上、冬用配合では23℃での可使時間が30分以上を目処としている。
また、ウレタン防水材を夕方に塗布し終わり、翌日朝には軽歩行できるほどに硬化し次工程が実施できることが望まれており、次の工程が実施できるまでの時間(以下、施工可能時間と称す。)は年間を通して17時間以内に調整できることが最良とされている。
【0005】
一般的に2液型手塗り用ウレタン防水材では、年間を通して施工に必要な可使時間を有し、高伸張性・高硬度な性能を確保するために可塑剤が使用されている。使用する可塑剤の一部を最終的に空気中に揮発する溶剤に置換えることにより、樹脂濃度を上げてウレタン塗膜の硬度を高めることは比較的容易に可能である。しかしながら、その場合主剤と硬化剤の反応が促進されて、十分な可使時間を確保することが難しくなる。
【0006】
また、硬化塗膜が屋外暴露されると日光により変褪色し、長期の耐候性に劣るために、一般的には塗膜の上にアクリルウレタン塗料などのトップコートを塗布しこれを保護することが必要不可欠とされている。上記トップコートは4~5年毎に塗り替えを行う必要がある。また、アクリルウレタン塗料は多量の溶剤を含んでいるので環境への悪影響も懸念されている。
【0007】
2液型手塗り用ウレタン防水材の中でも、比較的高硬度な塗膜として、主剤のポリイソシアナートがイソホロンジイソシアナート(以下、IPDIと称す。)を含み、硬化剤がジエチルトルエンジアミン(以下、DETDAと称す。)を含むJIS A 6021のウレタンゴム系高強度形に該当する、2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物が知られている。
特許文献1にはIPDIとポリオキシアルキレンポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、DETDAを含む芳香族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤とからなるJIS A 6021のウレタンゴム系高強度形に該当する、2液型手塗り用ウレタン防水組成物が報告されているが、主剤ポリオールの主成分としてポリオキシアルキレンポリオールを使用しているため、硬化剤と組合せたときの硬化塗膜は、屋外暴露でチョーキングし易く、耐候性に劣るものとなってしまう。
【0008】
特許文献2にはIPDIとポリエステルポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、DETDAを含む芳香族ポリアミンおよび可塑剤を含む硬化剤とからなる、トップコートを塗布する必要のない程度にまで耐候性の改善されたポリウレタン塗り床材、防水材の製造方法が報告されているが、主剤ポリオールとしてポリエステルポリオールを使用しているため、主剤粘度が高くなり特に冬季施工での缶からの主剤の取り出しや混合が難しくなる。更に硬化剤と組合せたときの可使時間が短くなる傾向があるため、年間を通じて可使時間を十分に確保することが難しい。
また、上記技術は結晶性の少ない液状の脂肪族ポリエステルポリオールを用いるものであるが、特に脂肪族ポリエステルポリオールは耐加水分解性、耐アルカリ水性、耐バクテリア性に問題があるため、アルカリ性であるコンクリート建造物周辺や屋上緑化・土木分野に用いるには不適当であり、スポーツフロアや重歩行用の高強度形ウレタン防水材の用途に適しているとは言い難い。芳香族ポリエステルポリオールを用いれば上記の弱点はある程度改善されると思われるが、脂肪族ポリエステルポリオールよりも更に高粘性となるためさらに施工上の問題が大きくなると共に芳香族骨格に由来する耐候性の低下も懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-43740号公報
【文献】特開平10-17819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
スプレータイプの超速硬化性ウレタン防水材は、施工時に発生するミストの飛散や専任技術者が必要となるなどの問題がある。一方従来の2液型手塗り用ウレタン防水材の配合技術では、硬度などがスポーツフロアや重歩行用として実用性に問題がないうえで、夏季の施工に必要とされる可使時間を十分に確保するという技術には限界があり、年間を通して十分な可使時間を保持したうえで耐アルカリ水性にも優れ、スポーツフロアや重歩行用にも十分耐えられる2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物の提供が望まれていた。
更に工程省力化が可能となる、トップコートの塗布作業が必要ないほどに耐候性が改善された2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物の提供も同時に望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らはこれらの問題点を鑑み、硬度などがスポーツフロアや重歩行用として実用性に問題がないうえで、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ且つトップコートを塗布する必要のない程度にまで耐候性の改善された2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物に関して鋭意検討した結果、ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、芳香族ポリアミンおよび無機充填剤を含む硬化剤とからなる2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物において、主剤のポリイソシアナートとして脂肪族および/または脂環式イソシアナートを、ポリオールとして脂肪族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートポリオールを含み、ポリオールの中の分子量500以上のジオールと分子量500未満のジオールおよび官能基数3以上のポリオールの当量比を特定の範囲に調整し、硬化剤中の芳香族ポリアミンとしてジエチルトルエンジアミンを使用し、全可塑剤量(g)に対する芳香族ポリアミンのアミノ基量(ミリ当量)の比を特定の範囲に調整し、更に溶剤として特定の範囲の溶解度パラメーター(SP値)を有する非プロトン性溶剤を使用することにより、硬度などがスポーツフロアや重歩行用として実用性に問題がないうえで、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ且つトップコートを塗布する必要のない程度にまで耐候性の改善された2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本件第一発明は、ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、芳香族ポリアミンおよび無機充填剤を含む硬化剤とからなる2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物であって、
主剤中のイソシアナート基末端プレポリマーを構成するポリイソシアナートが70当量%超の脂肪族および/または脂環式イソシアナートを含み、主剤のNCO含有量が3.0質量%~6.0質量%であり、
主剤中のイソシアナート基末端プレポリマーを構成するポリオールが分子量500以上のジオールを5当量%~95当量%および分子量500未満のジオールと官能基数3以上のポリオールを合わせて5当量%~95当量%含み、全ポリオール中の10当量%~80当量%が脂肪族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートポリオールからなり、
硬化剤は全反応成分の80当量%超が芳香族ポリアミンであり、芳香族ポリアミンの70当量%超がジエチルトルエンジアミンであり、硬化剤は無機充填剤を20質量%~80質量%含み、
主剤中のイソシアナート基末端プレポリマー100質量部に対し5質量部~40質量部の可塑剤を硬化剤に、または主剤と硬化剤の両方に分けて、配合し、
ウレタン塗膜組成物に対して5質量%~40質量%の溶剤を、主剤および/または硬化剤に配合し、溶剤は溶解度パラメーター(SP値)が8.0~14.0の非プロトン性溶剤を30質量%超含み、
可塑剤の質量(g)に対する芳香族ポリアミンのアミノ基量(ミリ当量)の比が2.0~20.0であることを特徴とする。
本件第二発明は、基盤面上に、プライマー層を施した後、またはプライマー層とウレタン防水材層を施した後に、本件第一発明の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物を塗工することを含むウレタン防水塗膜層の施工方法である。
【0013】
本発明は、次の態様を含む。
[1]ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、芳香族ポリアミンおよび無機充填剤を含む硬化剤とからなる2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物であって、
主剤中のイソシアナート基末端プレポリマーを構成するポリイソシアナートが70当量%超の脂肪族および/または脂環式イソシアナートを含み、主剤のNCO含有量が3.0質量%~6.0質量%であり、
主剤中のイソシアナート基末端プレポリマーを構成するポリオールが分子量500以上のジオールを5当量%~95当量%および分子量500未満のジオールと官能基数3以上のポリオールを合わせて5当量%~95当量%含み、全ポリオール中の10当量%~80当量%が脂肪族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートポリオールからなり、
硬化剤は全反応成分の80当量%超が芳香族ポリアミンであり、芳香族ポリアミンの70当量%超がジエチルトルエンジアミンであり、硬化剤は無機充填剤を20質量%~80質量%含み、
主剤中のイソシアナート基末端プレポリマー100質量部に対し5質量部~40質量部の可塑剤を硬化剤に、または主剤と硬化剤の両方に分けて、配合し、
ウレタン塗膜組成物に対して5質量%~40質量%の溶剤を、主剤および/または硬化剤に配合し、溶剤は溶解度パラメーター(SP値)が8.0~14.0の非プロトン性溶剤を30質量%超含み、
可塑剤の質量(g)に対する芳香族ポリアミンのアミノ基量(ミリ当量)の比が2.0~20.0である、2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物。
[2]主剤のイソシアナート基と硬化剤中の芳香族ポリアミンのアミノ基との当量比が0.9~1.5である、[1]に記載の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物。
[3]ウレタン塗膜組成物の硬化塗膜のJIS D硬度が25以上且つ引張強さが10N/mm以上である、[1]または[2]に記載の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物。
[4]基盤面上に、プライマー層を施した後、またはプライマー層とウレタン防水材層を施した後に、[1]に記載の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物を塗工することを含むウレタン防水塗膜層の施工方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物は硬度などがスポーツフロアや重歩行用として実用性に問題がないうえで、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ且つトップコートを塗布する必要のない程度にまで耐候性が改善されている。
本発明のウレタン防水塗膜層の施工方法はガラスメッシュなどの補強材を必要とせず、更にトップコートの塗布も必要としないため、工程が省略され施工効率性、経済性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物に関する。ここで、2液とは、主剤と硬化剤の2つをいう。手塗り用とは、コテ、ヘラ、ローラー、刷毛などを用いて人の手で塗って使用するものであることをいう。トップコートを塗布する必要のない程度にまで優れた耐候性として、JIS A 6021に規定する促進暴露伸び時の劣化性状にて、定められた試験期間325時間を超えた500時間で、著しいひび割れ変形が見られないことが望ましい。また、トップコートが無いため、従来の耐久性より優れた性能が必要であり、耐アルカリ水性に優れる耐久性として、80℃アルカリ水4週間浸漬で引張強さの保持率が70%以上であることが望ましい(JIS A 6021では23℃で7日浸漬後の引張強さの保持率が60%以上)。年間を通して十分な可使時間の目安として、23℃で45分以上あることが望ましい。
【0016】
スポーツフロアや重歩行用塗膜層として十分な性能を確保するためには、本発明の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物の硬化塗膜はJIS A 6021「建築用塗膜防水材」高強度形規格である引張強さが10N/mm以上、抗張積が700N/mm以上であることが望ましい。硬度は、JIS K 6253に規定する加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法による、JIS D硬度(デュロメータ硬さ試験タイプD)で25以上であることが望ましい。引張強さが10N/mm未満、JIS D硬度が25未満では耐衝撃性、耐摩耗性などが不十分となる。一方、高強度形の規格では伸び率が200%以上となっているが、従来からの知見でコンクリートなどクラックが発生する被着体に対しては、防水材の伸び率を高くすることが重要であると認識されており、コンクリート下地など無機系下地への施工に関しては高強度形といえども、伸び率を300%以上できれば高伸長形と同様の450%以上とできるだけ高くして、ウレタン防水材の特徴であるクラック追従性を確保することが望ましい。
【0017】
本発明の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物は、ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤とからなる。
【0018】
(ポリイソシアナート)
主剤中のイソシアナート基末端プレポリマーを構成するポリイソシアナートは、脂肪族および/または脂環式イソシアナートを70当量%超含む必要があり、80当量%以上含むことが好ましく、90当量%以上含むことがより好ましい。脂肪族および/または脂環式イソシアナートが70当量%以下ではトップコートを塗布する必要のない程度にまで優れた耐候性を得ることが困難となる。
本発明に用いることができる脂肪族イソシアナートおよび/または脂環式イソシアナートとしては、本発明の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタン塗膜組成物に用いることができる脂肪族イソシアナートおよび/または脂環式イソシアナートを、1種または2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0019】
脂肪族イソシアナートとしては、トリメチレンジイソシアナート、1,2-プロピレンジイソシアナート、ブチレンジイソシアナート(テトラメチレンジイソシアナート、1,2-ブチレンジイソシアナート、2,3-ブチレンジイソシアナート、1,3-ブチレンジイソシアナート)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアナート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,6-ジイソシアナートメチルカプエート、リジンジイソシアナート、リジンエステルトリイソシアナート、1,6,11-ウンデカントリイソシアナート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,5-ペンタメチレンジイソシアナート(PDI)、デカメチレンジイソシアナート、およびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0020】
脂環式イソシアナートとしては、1,3-シクロペンタンジイソシアナート、1,3-シクロペンテンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート(1,4-シクロヘキサンジイソシアナート、1,3-シクロヘキサンジイソシアナート)、3-イソシアナートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアナート(イソホロンジイソシアナート、IPDI)、ダイマー酸ジイソシアナート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアナート、水素添加トリレンジイソシアナート(水添TDI)、水素添加キシリレンジイソシアナート(水添XDI)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアナート(水添TMXDI)などの単環式脂環式イソシアナート;ノルボルネンジイソシアナート、ノルボルナンジイソシアナートメチル、ビシクロヘプタントリイソシアナート、シイソシアナートメチルビシクロヘプタン、ジ(ジイソシアナートメチル)トリシクロデカンなどの架橋環式脂環式イソシアナート、およびこれらの誘導体が挙げられる。
中でもIPDI、水添XDIなどの脂環式イソシアナートの使用が好ましい。
【0021】
また、30当量%以下であれば脂肪族イソシアナートおよび/または脂環式イソシアナート以外のポリイソシアナートを併用することもできる。併用できるポリイソシアナートとしては、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナートといった芳香族ポリイソシアナートも一部使用することができるが、トリレンジイソシアナートは労働安全衛生法の特定化学物質であり、環境的な面より好ましくない。
【0022】
(主剤NCO含有量およびNCO/OH当量比)
本発明は主剤のNCO含有量が3.0質量%~6.0質量%である必要があり、3.3質量%~5.5質量%であることが好ましい。NCO含有量が3.0質量%以下ではスポーツフロアや重歩行用にも十分耐えられる高硬度化は達成できない。一方、NCO含有量が6.0質量%を超えると反応成分の主成分であるDETDA量も多くなるため、可使時間が短くなり施工性に問題を生じる。
主剤製造時のポリイソシアナートのNCO基とポリオールのOH基との当量比であるNCO/OH当量比は1.5~2.5であることが好ましく、1.6~2.3であることがより好ましい。1.5未満となると主剤の増粘が激しくなり、2.5超となるとフリーのポリイソシアナートが多くなるため、伸び率の低下や可使時間の短縮といった問題が生じやすくなる。
【0023】
(主剤ポリオール)
本発明において、主剤に使用するポリオールとしてはポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアルキレンポリオールなどの従来ポリウレタン塗膜組成物に使用されているポリオールの1種または2種以上を使用することができるが、伸び率確保のために分子量500以上のジオールを5当量%~95当量%用いる必要があり、20当量%~80当量%用いることが好ましい。分子量500以上のジオール95当量%超では、硬化剤と組合せたときの硬化物中の分技点が少なくなりウレタン結合の濃度も低下するため、硬度発現性および硬化性の低下、さらには最終硬度の低下を引き起こしてしまう。
主剤に使用するポリオールとして、更に分子量500未満のジオールと官能基数3以上のポリオールを合わせて5当量%~95当量%を用いる必要があり、20当量%~80当量%用いることが好ましい。分子量500未満のジオールを用いることで、硬化物中のウレタン結合およびウレア結合の濃度が高くなるため、伸び率をあまり損ねずに高硬度化させることができる。また、官能基数が3以上のポリオールを用いることで、硬化物中に分枝点を作ることができるため、硬度発現性および硬化性を向上させることができ、高硬度化が容易となると共に耐アルカリ水性も向上する。分子量500未満のジオールと官能基数3以上のポリオールを合わせて5当量%未満では高硬度化および耐アルカリ水性が不十分となり、95当量%超では主剤が高粘度化すると共に可使時間や伸び率の確保が難しくなる。
【0024】
また、主剤に使用する全ポリオール中の10当量%~80当量%が脂肪族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートポリオールである必要があり、20当量%~75当量%であることが好ましく、25当量%~50当量%であることがより好ましい。80当量%超では、耐アルカリ水性が低下してしまう。更に主剤粘度が高くなり特に冬季施工での缶からの主剤の取り出しや混合が難しくなると共に硬化剤と組合せたときの可使時間が十分に確保できない。一方、10当量%未満ではトップコートを塗布する必要のない程度の耐候性を得ることができない。
【0025】
分子量500以上のジオールとしては、従来ポリウレタン塗膜組成物に使用されている分子量500以上のポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオールなどのジオールの1種または2種以上を使用することができる。
分子量500以上のポリエステルジオールとしては耐候性の観点から脂肪族ポリエステルジオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートジオールの使用が好ましく、分子量500以上の脂肪族ポリエステルジオールとしては例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸と、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(3MPD)、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオールなど、もしくは、これらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール、ε-カプロラクトン、メチルバレロラクトンなどのラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール、ポリカプロラクトンジオールなどを挙げることができる。中でもアジピン酸あるいはセバシン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオール(3MPD)から得られる脂肪族ポリエステルジオールが好ましい。
分子量500以上の脂肪族ポリカーボネートジオールとしては例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコールなどの多価アルコールの少なくとも1種と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを反応させて得られるものを挙げることができる。
分子量500以上のポリエーテルジオールとしては、分子量500~10000の一般的なポリオキシアルキレンジオールを用いることができるが、結晶性が少なく低粘度であるポリオキシプロピレンジオールおよびポリオキシエチレンプロピレンジオールを用いることが好ましい。更に、ビスフェノール化合物にアルキレンオキシドを反応させることにより得られる分子量500以上のビスフェノール骨格含有ポリエーテルポリオールも使用することができる。
【0026】
分子量500未満のジオールとしては、従来ポリウレタン塗膜組成物に使用されている分子量500未満のポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリアルキレンジオールなどのジオールの1種または2種以上を使用することができるが、分子量100~500未満のポリオキシアルキレンジオール、ビスフェノール化合物にアルキレンオキシドを反応させることにより得られる分子量500未満のビスフェノール骨格含有ポリエーテルポリオール、分子量500未満のアルカンジオールなどが好ましく用いられる。
具体的にはポリプロピレングリコール200、ポリプロピレングリコール400等のポリオキシアルキレンジオール、ビスフェノールAのPO付加物、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールといった短鎖ポリオールも使用することができる。中でもポリプロピレングリコール400、1,4-ブタンジオールが好ましい。
【0027】
官能基数3以上のポリオールとしては、従来ポリウレタン塗膜組成物に使用されている官能基数が3以上のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアルキレンポリオールなどのポリオールの1種または2種以上を使用することができるが、分子量200~10000の一般的なポリオキシプロピレントリオールあるいはポリオキシエチレンプロピレントリオールが好ましい。なお、官能基数が4以上のポリオキシプロピレンポリオールあるいはポリオキシエチレンプロピレンポリオールは伸び率を拘束する傾向があるため、少量であれば使用することができる。また、トリメチロールプロパン、グリセリンといった3官能短鎖ポリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトールといった4官能以上の短鎖ポリオールも伸び率を拘束する傾向があるため、少量に限って使用することができる。
【0028】
(主剤合成法)
イソシアナート基末端プレポリマーの合成方法であるが、ポリイソシアナートとポリオールを単に加熱するだけでは反応が促進しにくいため、触媒を用いることが好ましい。一般的なウレタン化触媒が使用できるが、なかでもジブチル錫ジラウレート(DBTDL)やジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)といった有機第2錫触媒が好ましく、0.0001~0.1質量%といった少量の添加で効率的に反応を促進させることができる。反応温度は60℃~100℃であることが好ましく、1~6時間程度で反応を完結させることができる。尚、反応終了後には、リン酸などにより触媒を失活させておく方が好ましい。
【0029】
(硬化剤中の活性水素)
硬化剤としては、高硬度化を達成するためには全反応成分の80当量%超が芳香族ポリアミンであることが必要であり、90当量%超であることが好ましい。反応成分としてのポリオールは伸び率を確保する効果はある程度あるが、芳香族ポリアミンよりは低凝集性であるため、耐久性向上にはあまり効果的でない。
また、芳香族ポリアミン中の70当量%超がジエチルトルエンジアミン(DETDA)であることが必要であり、80当量%超であることが好ましく、90当量%超であることがより好ましい。非結晶性で高反応性であるDETDAが70当量%以下では、脂肪族および/または脂環式イソシアナートとの良好な反応性による硬化性が難しくなる。
【0030】
硬化剤において、併用できる芳香族ポリアミンとしては、DETDAと同様の高反応性であるクミアイ化学工業株式会社製のキュアハード(登録商標)MED(4,4′-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン))、日本化薬株式会社製のカヤハード(登録商標)AA(4,4′-メチレンビス(2-エチルアニリン))、日本化薬株式会社製のカヤボンド(登録商標)C-300(4,4′-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン))、日本化薬株式会社製のカヤボンド(登録商標)C-400(4,4′-メチレンビス(2,6-ジiso-プロピルアニリン))などが挙げられる。また、低反応性の芳香族ポリアミンではあるが、アルベマール社製のエタキュア420(4,4′-メチレンビス(N-sec-ブチルアニリン))、アルベマール社製のエタキュア300(ジメチルチオトルエンジアミン)なども使用できる。
【0031】
20当量%以下であれば反応成分としてポリオールを使用してもかまわない。用いられるポリオールとしては、分子量1500未満のポリオールが好ましく、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどの短鎖ポリオール類、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールといった比較的高凝集性のポリオールが挙げられる。その中でも1級水酸基ポリオールの方が反応性は高く未反応で残りにくいためより好ましく、中でも、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、および分子量300~800の芳香族含有ポリエステルポリオールが高硬度化のためにさらに好ましい。尚、芳香族ポリエステルポリオールとしては、クラポール(株式会社クラレ製)のように低結晶性のポリオールを用いた液状品であるものが好ましい。
また、分子量が1500以上のポリオールも使用することができ、低粘度であるポリオキシプロピレンポリオールあるいはポリオキシエチレンプロピレンポリオールが挙げられる、低凝集性であるため高硬度化の面からは好ましくはない。
【0032】
(溶剤)
本発明において、溶剤は溶解度パラメーター(SP値)が8.0~14.0の非プロトン性溶剤を30質量%超含み、全溶剤はウレタン塗膜組成物に対して5質量%~40質量%となるように、主剤および/または硬化剤に配合される必要がある。ここで、非プロトン性とは、主剤に含まれるイソシアナート基末端プレポリマーのイソシアナート基と反応する活性水素(水酸基、アミノ基、カルボン酸基など)を含まないことを意味する。
本発明における溶解度パラメーター(SP値)とは、ハンセン溶解度パラメーターのことを指し、2成分系溶液の溶解度の目安となる指標である。
各溶剤のSP値δ((cal/cm1/2)を計算するための方法として、下記式(1)を用いた。
δ=((δd+δp+δh)/4.2)1/2 ・・・(1)
ここで、δdはLondon分散力項、δpは分子分極項、δhは水素結合項という。
また、ハンセン溶解度パラメータ・ソフトウェア(HSPiPver.4.1.x)、あるいは、“HANSEN SOLBILITY PARAMETERS” A User′s Handbook Second Editionに記載される値(δd、δp、δh:単位(J/cm1/2)をもとに算出することができる。
また、溶剤を複数使用する場合のSP値は、下記式(2)により、各溶剤のSP値の加重平均として求めた。
m=δ1φ1+δ2φ2 ・・・(2)
ここでδ1、δ2は各溶剤成分のSP値であり、φ1、φ2は各溶剤成分の体積分率である。
【0033】
本発明において、全溶剤量はウレタン塗膜組成物に対して5質量%~40質量%ある必要があり、15~30質量%であることが好ましく、主剤および/または硬化剤に配合される。
全溶剤量がウレタン塗膜組成物に対して5質量%未満の場合は十分な可使時間を確保することは難しい。一方、全溶剤量がウレタン防水材組成物に対して40質量%超になると施工後の揮発により収縮を起こす危険性や無機充填剤を沈降しやすくする傾向があるため好ましくない。
本発明において、全溶剤の30質量%超が溶解度パラメーター(SP値)8.0~14.0の非プロトン性溶剤である必要があり、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。なお、全溶剤が溶解度パラメーター(SP値)8.0~14.0である非プロトン性溶剤でもかまわない。非プロトン性溶剤が全溶剤量の30質量%以下の場合は十分な可使時間を確保することは難しい。非プロトン性溶剤の溶解度パラメーター(SP値)が8.0未満では十分な可使時間を確保することは難しく、14.0超では塗膜の硬度が不十分となるため好ましくない。一方、全溶剤に対して70質量%未満であれば溶解度パラメーター(SP値)が8.0未満あるいは14.0超の非プロトン性溶剤を併用してもかまわない。併用できる溶解度パラメーター(SP値)が8.0未満あるいは14.0超の非極性溶剤としては芳香族含有石油系炭化水素溶剤類、脂肪族および脂環式石油系炭化水素溶剤類、炭素数7~10の脂環式炭化水素溶剤類などが挙げられ、具体的には、MC-2000ソルベント(SP値=7.2~7.8、炭素数9~11のノルマルパラフィン、イソパラフィン混合物、三協化学株式会社製)が好ましく用いられる。
本発明において、主剤に含まれるイソシアナート基末端プレポリマーのイソシアナート基と反応する可能性があるプロトン性溶剤は使用しないことが好ましい。
【0034】
本発明では溶解度パラメーター(SP値)が8.0~14.0であるエーテル系、エステル系、ケトン系、ニトリル系、芳香族炭化水素系などの非プロトン性溶剤が使用できる。エーテルあるいはエステル系としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル(SP値=8.6)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(SP値=8.8)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(SP値=8.7)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(SP値=8.3)などのジアルキルグリコールエーテル類、1,4-ジオキサン(SP値=10.0)などの環状エーテル類、アニソール(SP値=9.4)などの芳香族エーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値=10.0)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値=9.6)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値=8.9)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値=9.4)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値=9.0)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値=8.7)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値=9.0)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値=9.2)、メトキシブチルアセテート(SP値=8.7)などのグリコールエーテルアセテート類、炭酸ジメチル(SP値=9.9)、炭酸ジエチル(SP値=8.8)などの炭酸エステル類、酢酸エチル(SP値=9.1)、γーブチロラクトン(SP値=12.6)などの脂肪酸エステル類、安息香酸メチル(SP値=10.5)などの安息香酸エステル類が挙げられる。また、アセチルアセトン(SP値=10.6)、アセトフェノン(SP値=10.6)などのケトン類、アセトニトリル(SP値=11.9)、ベンゾニトリル(SP値=8.4)などのニトリル類、N、N-ジメチルホルムアミド(SP値=12.1)、N、N-ジメチルホルムアセトアミド(SP値=10.8)などのアミド類、トルエン(SP値=8.9)、1,2-ジクロロベンゼン(SP値=10.0)などの芳香族炭化水素類などが挙げられる。
なかでもジエチレングリコールジメチルエーテル(SP値=8.8)、1,4-ジオキサン(SP値=10.0)、アニソール(SP値=9.4)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値=8.7)、メトキシブチルアセテート(SP値=8.7)、炭酸ジメチル(SP値=9.9)、炭酸ジエチル(SP値=8.8)、酢酸エチル(SP値=9.1)、γーブチロラクトン(SP値=12.6)、安息香酸メチル(SP値=10.5)、アセチルアセトン(SP値=10.6)、アセトフェノン(SP値=10.6)、アセトニトリル(SP値=11.9)、ベンゾニトリル(SP値=8.4)、N、N-ジメチルホルムアミド(SP値=12.1)、N、N-ジメチルホルムアセトアミド(SP値=10.8)、トルエン(SP値=8.9)、1,2-ジクロロベンゼン(SP値=10.0)が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値=8.7)、メトキシブチルアセテート(SP値=8.7)の使用が最も好ましい。
【0035】
本発明に使用される溶剤の沸点は、70~250℃の範囲であることが好ましく、100~200℃であることがより好ましい。沸点が250℃を超えると溶剤が揮散せずに防水塗膜に残りやすくなるため、硬度の低下などの原因となる。一方、沸点が70℃未満では硬化剤から溶剤が揮散しやすくなるため、硬化剤の安定性や作業環境上の問題となるので好ましくない。
【0036】
(無機充填剤)
硬化剤には無機充填剤を20質量%~80質量%配合する必要がある。無機充填剤の補強効果なしでは、高硬度化は非効率となってしまい、実用性のある防水塗膜層とはならない。無機充填剤が20質量%未満では補強効果が不十分となり、80質量%超では増粘のために施工性が悪化する。無機充填剤の配合量は、好ましくは30質量%~75質量%であり、より好ましくは40質量%~70質量%である。
【0037】
無機充填剤としては炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムは経済効果が高いと同時に、硬化剤製造時の分散性が良好であり多量に配合しても増粘性が少なく、硬化剤貯蔵時の沈降性を少なくすることも容易であり、物性面でも悪影響が少ない。なお、炭酸カルシウムには、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、表面処理コロイダル炭酸カルシウムなど種々の炭酸カルシウムがあるが、いずれの炭酸カルシウムも使用することができ、表面処理コロイダル炭酸カルシウムによりチクソ性を付与した立面用防水材として使用することもできる。また、シリカ、カオリン、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化バリウムなどの無機充填剤を一部使用することができる。尚、上記のような無機充填剤には付着水を含有するため、硬化剤中の水分量が1000ppm~3000ppm程度となり、この付着水が2液混合後に過剰なイソシアナート基と徐々に反応し、高物性化に寄与すると推察される。
【0038】
(可塑剤)
次に、年間を通して施工に必要な可使時間を有し、高伸張性・高硬度な性能を確保するためには、主剤中のイソシアナート基末端プレポリマー100質量部に対し、可塑剤を5質量部~40質量部必要とし、10質量部~35質量部であることが好ましく、さらには20質量部~30質量部であることが最も好ましい。可塑剤が5質量部未満では、可使時間および伸び率の確保が難しくなり、40質量部超では塗膜が脆弱化する。尚、可塑剤は硬化剤に配合するのが原則であるが、一部を主剤に配合することも可能である。すなわち、可塑剤は硬化剤に、または主剤と硬化剤の両方に分けて、配合される。
【0039】
可塑剤としては、ウレタン樹脂に一般的に配合できる可塑剤を使用することができる。例として、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)などのフタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、セバシン酸エステル類、エポキシ脂肪酸エステル類、グリコールエステル類、動植物油系脂肪酸エステル類、石油・鉱物油系可塑剤、アルキレンオキシド重合系可塑剤などが挙げられる。
中でも、引火点が200℃以上である、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)は長期的にも重量減少を起こし難く、芳香族ポリエステルであり加水分解も起こし難いため、好ましく使用することができる。
【0040】
(可塑剤当たりのアミノ基当量)
主剤と硬化剤を混合した状態で、芳香族ポリアミンのアミノ基量(ミリ当量)と可塑剤量(g)との比「アミノ基(ミリ当量)/可塑剤(g)」(以下、「可塑剤の質量(g)に対する芳香族ポリアミンのアミノ基量(ミリ当量)の比」または「可塑剤当たりのアミノ基当量」とも称す。)を、2.0~20.0の範囲にする必要があり、2.5~15.0とすることが好ましく、さらには2.8~13.0とすることが最も好ましい。「可塑剤当たりのアミノ基当量」が2.0未満では芳香族ポリアミンの濃度が低くなり塗膜が脆弱化し、10.0超になると可使時間の確保が難しくなる。
【0041】
(イソシアナート基/芳香族アミノ基 当量比)
主剤のイソシアナート基と硬化剤中の芳香族ポリアミンのアミノ基との当量比(以下、「イソシアナート基/芳香族アミノ基当量比」と称す。)を0.9~1.5の範囲で実施することが好ましく、0.92~1.40であることがより好ましく、0.95~1.35であることがさらに好ましい。イソシアナート基/芳香族アミノ基当量比が1.5を超えると硬化性が低下し、0.9未満では硬化過程で末端アミノ基が多くなり塗膜が脆弱化してしまう。
【0042】
(硬化促進剤)
本発明ではイソシアナート基との反応において湿気硬化促進効果があるとされている、有機第2錫系化合物、3級アミン、カルボン酸金属塩などが反応促進剤として使用できる。
有機第2錫系化合物としては、例えばジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ2-エチルへキサノエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプタイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトネート、ジブチル錫オキシラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、ジブチル錫ビスブチルマレート、ジオクチル錫2-エチルヘキシルマレートなどが挙げられ、中でもジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートが好ましい。有機第2錫系化合物は硬化剤中に0.001~0.1質量%使用することが好ましい。
【0043】
3級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N-エチルモルホリン、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル、ジアザビシクロウンデセンなどの一般的な3級アミンを使用する事ができるが、特殊な3級アミンであるイミダゾール化合物が発泡抑制および硬化促進効果の面より好ましく、イミダゾール化合物としては、例えば1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールのような1位と2位に置換基を有する化合物や、1-メチルイミダゾール、1-アリルイミダゾールのような1位に置換基を有する化合物が使用できる。中でも、1位と2位に置換基を有するイミダゾール化合物は硬化促進効果が高くより好ましい。3級アミンは、硬化剤中に0.01~2.0質量%使用することが好ましい。
【0044】
また、一般的にはウレタン化触媒であるカルボン酸金属塩も使用することができる。カルボン酸金属塩は湿気硬化促進効果は弱いが、芳香族ポリアミンとの反応を強く促進し、可使時間および硬化時間を短くするため、夏季用触媒よりも冬季用触媒として用いることが好ましい。カルボン酸金属塩としては、例えば2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、樹脂酸の鉛塩、亜鉛塩、ビスマス塩、ジルジルコニウム塩、錫塩、銅塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などが挙げられ、中でも、2-エチルヘキサン酸カルシウム、2-エチルヘキサン酸亜鉛は高硬度発現促進効果が高いため好ましい。カルボン酸金属塩は硬化剤中に0.1~4.0質量%使用することが好ましい。一方、カルボン酸鉛は可使時間と硬化時間の短縮効果は高いが、環境面から見ると使用することは好ましくはない。
【0045】
以上のように、湿気硬化を促進すると思われる化合物を用いることができるが、中でも有機第2錫系化合物およびイミダゾール化合物は、いずれも可使時間を短縮することなしに硬化を促進することができ、発泡抑制性にも優れており、特に夏季用触媒として好ましく使用できる。
また、イミダゾール化合物は、金属系触媒が多量に添加すると熱劣化を促進する傾向が強いのに対して、多目に添加してもほとんど熱劣化を促進しないという特徴があるため、更に好ましい。なお、湿気硬化促進剤は硬化剤に配合することが原則であるが、相当量を施工現場で2液混合時に添加しても構わない。一方、主剤側に配合することも可能ではあるが、貯蔵安定性を損ねる可能性があるため、あまり好ましくはない。
【0046】
一方、カルボン酸あるいは酸無水物は、イソシアナートプレポリマーと芳香族ポリアミンとの反応を促進するため、可使時間および硬化時間の短縮に有効であり、カルボン酸金属塩のような熱劣化促進もほとんどないため、特に冬用促進剤として好ましく使用できる。但し、湿気硬化促進効果は殆どないため、イソシアナート基/芳香族アミノ基当量比が高い配合においては硬化促進効果があまり望めない。
カルボン酸としては、例えばプロピオン酸、2-メチルペンタン酸、オクチル酸、イソノナン酸、ナフテン酸などが挙げられ、中でもオクチル酸が好ましい。
酸無水物としては、例えば無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸などが挙げられ、中でもメチルテトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。
カルボン酸および酸無水物は、硬化剤中に0.05~2.0質量%使用することが望ましく、その一部あるいは全量を主剤側に配合しても構わない。
【0047】
さらに、酸無水物触媒は主剤側にあらかじめ配合するか、主剤と硬化剤を混合するときに酸無水物を配合することが好ましい。ただし、施工現場で施工の都度に酸無水物を添加する方法では、酸無水物の貯蔵性や管理上の問題、施工現場での煩雑さに伴う計量ミスといった問題があるため、酸無水物をあらかじめ主剤側に配合する方法がより好ましい。
【0048】
(その他添加剤)
その他、硬化剤には、湿潤剤、消泡剤、顔料、耐候性付与剤などの添加剤類を必要に応じて配合することができる。
【0049】
(主剤/硬化剤 配合比)
主剤と硬化剤の配合比は特に限定はされないが、質量比で1/1~1/2の範囲であることが好ましい。ただし、一般的に1/2配合とした場合には主剤の樹脂分が減り、耐久性には不利となるため、1/1~1/1.75であることが好ましく、1/1~1/1.5であることがより好ましい。
【0050】
(ウレタン塗膜組成物)
本発明は、コンクリート下地等経年によりクラックが発生するような下地の防水を目的のひとつとしているため、クラック追従性に必要とされる伸び率を確保することを重視した。そのため高強度形ウレタン防水材のJIS規格では伸び率が200%以上であるのに対し、伸び率を300%以上とすることが好ましく、450%以上とすることがより好ましい。
その結果、従来の防水材よりも抗張積が格段と高くなり、補強布なしでも破壊されにくい塗膜層となるため、補強メッシュを用いない施工方法も可能となる。大面積の屋上防水においては、従来通り下地コンクリート中の水分(湿分)を脱気する通気緩衝工法がよいが、小面積の施工や立ち上がり部分、庇部分、役物廻り部分、側溝部分といった従来施工に手間の掛かる部分の施工において、補強布(メッシュ)を挿入せずとも防水性能を発揮することができ、大幅な省力化が達成できる。
【0051】
(ウレタン防水塗膜層の施工方法)
本件第二発明は、スポーツフロアや重歩行用ウレタン防水塗膜層の施工方法に関する。
本件第二発明は、基盤面上に、プライマー層を施した後、またはプライマー層とウレタン防水材層を施した後に、本件第一発明の2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物を塗工することを含むウレタン防水塗膜層の施工方法である。
本発明の施工方法では、コンクリートなどの無機系下地に対し直接塗布することはできない。無機系下地の場合はウレタン防水材とは接着しないため、下地の水分をある程度遮蔽し接着性を確保することのできるプライマーを塗布した後に、施工することができる。また改修時を含め、既存ウレタン防水層の上に場合によっては仲介プライマーを施し施工することができる。また、無機系下地に対し通気緩衝シート、塩ビシートなど高分子系シート、ゴムシート、不織布シートをプライマー、接着剤、機械固定、置き敷きなどで固定した上に施工することができる。さらに、金属系下地の場合も直接本発明のスポーツフロアや重歩行用ウレタン塗膜層の施工方法で塗布しても接着性は確保できないため、専用のプライマーを塗布した後に塗布することができる。本発明のプライマー層は通常ウレタン防水層に用いられるものが使用できる。
【0052】
本発明の施工方法において、無機系下地などにプライマーを塗布した後、従来の低硬度である高伸長形の2液型防水材あるいは1液型防水材を塗布し、その上に本発明の高強度形塗膜組成物を塗布することができる。このように、硬度の違う2層構造を構築することで、下層の低硬度部分が下地に発生するクラックの動きを緩衝する役目を果し、しかも上層が高伸長・高強度の高硬度部分となるため、補強布を用いなくとも破断することのない防水層を構築することができる。また、本発明の高強度形防水材を塗布した上に、塩ビなど高分子系防水材、防根シート、ノンスリップ材、各種成形品を設置することができる。
【実施例
【0053】
原材料
以下の実施例および比較例で用いた原材料は、次のとおりである。
〔イソシアナート〕
IPDI: イソホロンジイソシアナート、VESTANAT(登録商標)IPDI(商品名)、NCO含有量37.8質量%、NCO官能基数約2.0、エボニック・ジャパン株式会社製
水添XDI: 水添キシレンジイソシアナート、タケネート(登録商標)600(商品名)、NCO含有量43.3質量%、NCO官能基数約2.0、三井化学株式会社製
〔ポリオール〕
PA-2000: ポリオキシプロピレンジオール、サンニックス(登録商標)PA-2000(商品名)、平均分子量2000、OH価56.1mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製
PP-400: ポリオキシプロピレンジオール、サンニックス(登録商標)PP-400(商品名)、平均分子量400、OH価280.5mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製
GA-3000: ポリオキシプロピレントリオール、サンニックス(登録商標)GA-3000(商品名)、平均分子量3000、OH価:56.1mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製
GP-600: ポリオキシプロピレントリオール、サンニックス(登録商標)GP-600(商品名)、平均分子量600、OH価:279mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製
V278: 脂肪族ポリエステルジオール、平均分子量1800、OH価:63mgKOH/g、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社製
V429: 脂肪族ポリエステルジオール、平均分子量1500、OH価:77mgKOH/g、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社製
V425: 脂肪族ポリエステルジオール、平均分子量1000、OH価:112mgKOH/g、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社製
PDP-70: 芳香族ポリエステルジオール、STENPANPOL(登録商標)PDP-70(商品名)、平均分子量1600、OH価:70.1mgKOH/g、Stepan Company製
220EB: 脂肪族ポリエステルジオール、PLACCEL(登録商標)220EB(商品名)、OH価:56.1mgKOH/g、株式会社ダイセル製
PCDX-208: 脂肪族ポリカーボネートジオール、DURANOL(登録商標)PCDX-208(商品名)、平均分子量2000、OH価:56.1mgKOH/g、旭化成株式会社製
T5650E: 脂肪族ポリカーボネートジオール、DURANOL(登録商標)T5650E(商品名)、平均分子量500、OH価:224.4mgKOH/g、旭化成株式会社製
T5650J: 脂肪族ポリカーボネートジオール、DURANOL(登録商標)T5650J(商品名)、平均分子量800、OH価:140,2mgKOH/g、旭化成株式会社製
P-2050: 脂肪族ポリエステルジオール、クラレポリオールP-2050(商品名)、平均分子量2000、OH価:56.1mgKOH/g、株式会社クラレ製
P-2010: 脂肪族ポリエステルジオール、クラレポリオールP-2010(商品名)、平均分子量2000、OH価:56.1mgKOH/g、株式会社クラレ製
P-510: 脂肪族ポリエステルジオール、クラレポリオールP-510(商品名)、平均分子量500、OH価:224.4mgKOH/g、株式会社クラレ製
F-1010: 脂肪族ポリエステルトリオール、クラレポリオールF-1010(商品名)、平均分子量1000、OH価:167.4mgKOH/g、株式会社クラレ製
1,4-BD: 1,4-ブタンジオール(商品名)、三菱ケミカル株式会社製
〔ポリアミン〕
DETDA: ジエチルトルエンジアミン、エタキュア100(商品名)、アルベマール日本株式会社製
〔触媒〕
DOTDL: ジオクチル錫ジラウレート、KS-1200A-1(商品名)、共同薬品株式会社製
U-CAT(登録商標)IM240: 1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、U-CAT(登録商標)IM240(商品名)、サンアプロ株式会社製
〔溶剤〕
MC-2000: MC-2000ソルベント(商品名)、炭素数9~11のノルマルパラフィン、イソパラフィン混合物、SP値:7.2~7.8、三協化学株式会社製
PMA: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、PMA(商品名)、SP値:8.7、三協化学株式会社製
メトアセ: 酢酸メトキシブチル、SP値:8.8、三協化学株式会社製
DMSO: ジメチルスルホキシド、SP値:14.5、ナカライテスク株式会社製
〔可塑剤〕
DINP: ジイソノニルフタレート、サンソサイザー(登録商標)DINP(商品名)、新日本理化株式会社製
〔無機充填剤〕
NS#100: 炭酸カルシウム、NS#100(商品名)、日東粉化工業株式会社製
添加剤類: 楠本化成株式会社製
〔市販防水材副資材〕
プライマー: 速硬化OTプライマーMブルー、OTプライマーQQ(商品名)、田島ルーフィング株式会社製
補強布: メッシュUB(商品名)、田島ルーフィング株式会社製
〔市販汎用防水材〕
高伸長形JISに該当する汎用防水材: オルタックエース(商品名)、田島ルーフィング株式会社製
【0054】
主剤の調製
表1~表4の配合に従って、四つ口フラスコに所定のポリオール、溶剤およびジオクチル錫ジラウレートを仕込み、次いで所定のポリイソシアナート化合物を仕込んだ。その後攪拌しながら90~100℃で1~2時間反応させて各主剤を得た。
【0055】
硬化剤の調製
表1~表4の配合に従って、金属容器に所定の液物を仕込み、攪拌機(ディゾルバー羽根)で低速混合し均一にした後、炭酸カルシウムを所定量配合し1500rpmで10分間混合して各硬化剤を得た。
【0056】
実施例1
実施例1は表1の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤として溶解度パラメーター(SP値)が8.7であるPMAを主剤に対して20質量%使用し、脂肪族ポリエステルポリオールであるV278を20当量%使用した実施例1の可使時間は68分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は88%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0057】
実施例2
実施例2は表1の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、脂肪族ポリエステルポリオールであるV278を40当量%使用した実施例2の可使時間は57分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は85%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0058】
実施例3
実施例3は表1の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、脂肪族ポリエステルポリオールであるV278を60当量%使用した実施例3の可使時間は53分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は81%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0059】
実施例4
実施例4は表1の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、脂肪族ポリエステルポリオールであるV425を75当量%使用した実施例4の可使時間は70分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は74%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0060】
比較例1
比較例1は表1の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、脂肪族ポリエステルポリオールを一切使用していない比較例1の可使時間は76分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は90%であったが、耐候性試験にてひび割れが発生していた。
【0061】
比較例2
比較例2は表1の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、脂肪族ポリエステルポリオールであるV429を85当量%使用した比較例2の可使時間は55分、耐候性は良好であったが、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は56%と、耐アルカリ水性が不十分であった。
【0062】
比較例3
比較例3は表1の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤として溶解度パラメーター(SP値)が7.2~7.8であるMC-2000を主剤に対して20質量%使用し、脂肪族ポリエステルポリオールを100当量%使用した比較例3の耐候性は良好であったが、可使時間は19分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は48%と、年間を通して十分な可使時間を有さず、耐アルカリ水性も不十分であった。
【0063】
実施例5
実施例5は主剤に使用する溶剤としてPMAの代わりに、溶剤として溶解度パラメーター(SP値)が8.8であるメトアセを使用した以外は、実施例2と同様に行った。
実施例5の可使時間は58分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は84%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0064】
実施例6
実施例6は主剤に使用する溶剤としてPMAの20質量%のうち、10質量%を溶解度パラメーター(SP値)が7.2~7.8であるMC-2000とした以外は、実施例2と同様に行った。
実施例6の可使時間は49分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は78%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0065】
比較例4、5
比較例4、5は主剤に使用する溶剤としてPMAの代わりに、溶解度パラメーター(SP値)が7.2~7.8であるMC-2000あるいは溶解度パラメーター(SP値)が14.5であるDMSOを使用した以外は、実施例2と同様に行った。溶解度パラメーター(SP値)が8.0未満である非プロトン性溶剤を使用した比較例4の耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は84%、耐候性は良好であったが、可使時間は37分と短く、年間を通しての可使時間としては不十分であった。一方、溶解度パラメーター(SP値)が14.0超の非プロトン性溶剤を使用した比較例5の可使時間は106分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は100%であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性にも優れていたが、耐候性試験においてひび割れが発生していた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として不十分であった。
【0066】
実施例7
実施例7はイソシアナート基/芳香族アミノ基当量比を1.10とした以外は、実施例5と同様に行った。
実施例7の可使時間は46分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は76%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0067】
実施例8
実施例8はイソシアナート基/芳香族アミノ基当量比を1.50とした以外は、実施例5と同様に行った。
実施例8の可使時間は66分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は84%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0068】
実施例9
実施例9は硬化剤中のDINPのうち10質量%をPMAとした以外は、実施例2と同様に行った。
実施例9の可使時間は68分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は76%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0069】
実施例10
実施例10は主剤のNCO/OH当量比を調整してNCO含有量を4.70質量%とし、硬化剤中のDINPのうち15質量%をPMAとし、表3の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
実施例10の可使時間は45分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は70%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0070】
実施例11
実施例11は表4の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、イソシアナートとして水添XDIを使用し、脂肪族ポリエステルポリオールであるP-2050を40当量%使用した実施例11の可使時間は45分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は85%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0071】
実施例12
実施例12は表4の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、ポリカプロラクトンポリオールであるPLACCEL(登録商標)220EBを40当量%使用した実施例12の可使時間は65分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は80%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0072】
実施例13
実施例13は表4の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、脂肪族ポリカーボネートジオールであるPCDX-208を20当量%使用した実施例13の可使時間は70分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は87%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0073】
実施例14
実施例14は表4の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、脂肪族ポリカーボネートジオールであるT5650Eを60当量%使用した実施例14の可使時間は70分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は80%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0074】
実施例15
実施例15は表4の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、脂肪族ポリカーボネートジオールであるT5650Jを60当量%使用した実施例15の可使時間は62分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は82%、耐候性は良好であり、年間を通して十分な可使時間を有し、耐アルカリ水性に優れ、トップコートを塗布する必要のない程度の耐候性となっていた。また硬化塗膜の初期物性はスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な塗膜物性を示した。
【0075】
比較例6
比較例6は表4の配合に従って、主剤と硬化剤を得た。これら主剤と硬化剤を質量比1:1で混合しウレタン塗膜組成物を得た。
溶剤としてPMAを主剤に対して20質量%使用し、芳香族ポリエステルジオールであるPDP-70を40当量%使用した比較例6の可使時間は81分、耐アルカリ水性80℃4週の引張強さ比は63%と低く、耐候性試験にてひび割れが発生していた。
【0076】
実施例16(重歩行用複層構造の実施例)
コンクリート製の基盤の表面に浸透プライマーとして「速硬化OTプライマーMブルー」を0.15kg/m、増膜プライマーとして「OTプライマーQQ/セメント=3/2~4/1」を0.15kg/mとなるよう均一にローラーで塗布し、乾燥させた。
ついで、防水層として高伸長形JISに該当する汎用防水材の「オルタックエース」を2.6kg/mとなるようクシゴテで塗布・乾燥した。
ついで、仕上げ材として実施例2に記載した2液型手塗り用ウレタン防水材組成物を1.3kg/mとなるようクシゴテで塗布・乾燥した。
上記複層積層物の低速ゼロスパン下地亀裂追従性試験の破壊エネルギーは15.3Jでありスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材として良好な値であった。
【0077】
比較例7(重歩行用複層構造の比較例)
仕上材として高伸長形JISに該当する汎用防水材の「オルタックエース」を2.6kg/mとなるようクシゴテで塗布・乾燥した以外は実施例16と同様に行った結果、低速ゼロスパン下地亀裂追従性試験の破壊エネルギーは2.9Jでありスポーツフロアや重歩行用2液型手塗り用ウレタン防水層の仕上げ材としては不十分な値であった。
【0078】
参考例(補強布を使用した重歩行用複層構造の参考例)
比較例7において補強布としてガラスメッシュ「メッシュUB」を使用した結果、低速ゼロスパン下地亀裂追従性試験の破壊エネルギーは13.3Jであった。
【0079】
表1~表4の各評価項目の測定方法は次のとおりである。
【0080】
[NCO(質量%)]
200mLの三角フラスコに主剤約1gを精秤し、これに0.5Nジ-n-ブチルアミン(トルエン溶液)10mL、トルエン10mLおよび適量のブロムフェノールブルーを加えた後メタノール約100mLを加え溶解する。この混合液を0.25N塩酸溶液で滴定する。NCO(質量%)は以下の式によって求められる。
NCO(質量%)=(ブランク滴定値-0.5N塩酸溶液滴定値)×4.202×0.25N塩酸溶液のファクター×0.25÷サンプル重量
【0081】
[可使時間(分)]
温度23℃、湿度50%の空気循環型環境試験室内において、主剤と硬化剤を所定の割合で攪拌・混合開始から、BH型粘度計で2rpmにおける粘度が60,000mPa・sになるまでの時間を測定した。
【0082】
[施工可能時間(時間)]
温度23℃、湿度50%の空気循環式型環境試験室内において、主剤と硬化剤を所定の割合で攪拌・混合した防水材を2kg/m塗布し、完全には硬化していないが、靴で歩行が可能となり、次工程の作業を開始できる時間を測定した。
【0083】
[初期物性測定用の塗膜作成]
JIS A 6021に基づいて温度23℃、湿度50%の空気循環式型環境試験室内において、主剤と硬化剤を所定の割合で攪拌・混合した防水材を2kg/m塗布し、温度23±2℃、相対湿度(50±10)%で96時間養生後脱型し、塗膜を裏返して更に温度23±2℃、相対湿度(50±10)%で240時間養生し初期物性測定用の塗膜を作成した。
【0084】
[引張強さ(N/mm)]
初期物性測定用の塗膜を用い、JIS A 6021に基づいて測定を行った。
【0085】
[破断時の伸び率(%)]
初期物性測定用の塗膜を用い、JIS A 6021に基づいて測定を行った。
【0086】
[抗張積(N/mm)]
上記の引張強さと破断時の伸び率を用いて、JIS A 6021に基づいて計算を行った。
【0087】
[JIS D硬度(タイプDデュロメーター)]
初期物性測定用の塗膜を用い、JIS K 6253に基づいて測定を行った。
【0088】
[耐アルカリ水性試験]
温度80℃(JIS A 6021では23℃)のJIS K 8576に規定する水酸化ナトリウム特級品の0.1%水溶液中に、JIS K 8575に規定する水酸化カルシウム特級品を飽和させ、その溶液400ml中に試験片3個を28日(JIS A 6021では7日)浸せきする。浸せき後の試験片は十分水洗し、温度23±2℃、相対湿度(50±10)%に4時間以上静置した試験片について、JIS A 6021に基づいて行い、処理前に対する引張り強さ比(%)および破断時の伸び率(%)を求めた。
【0089】
[耐候性試験]
初期物性測定用の塗膜を用い、JIS A 6021の伸び時の劣化性状試験に基づき、試験片の標線間距離40mmを60mmになるように伸長し、キセノンウェザーメーターに500時間(JIS A 6021では325時間)暴露し、表面のひび割れの有無を観察した。
【0090】
[低速ゼロスパン下地亀裂追従性試験の試験体の作製]
400mm×150mm×8mmの石綿スレートフレキシブル板の裏面の長手方向の中央に幅5mmのスリットを深さ6mmまで入れる。次に石綿スレートフレキシブル板の表面にプライマーを塗布する。プライマーが乾燥後、ウレタン防水材組成物を300mm×100mm×2mm(塗膜厚み)で塗布し、23℃、湿度50%の空気循環式型環境試験室内において、1週間養生させた後、試験体とした。
【0091】
[低速ゼロスパン下地亀裂追従性試験]
試験体のスリット部を折って石綿スレートフレキシブル板にクラックを入れる。引張試験機にセットして、1分間0.5mmの低速度で石綿スレートフレキシブル板の両端を長手方向に引っ張り破断するまでの距離=破断時伸び(mm)および破断するまでの総エネルギー=破壊エネルギー(J)を測定した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の組成物および施工方法は、2液型手塗り用ウレタン防水材として、スポーツフロアや重歩行用に好適に使用することができる。
【要約】
【課題】高い硬度と強度を示し、十分な可使時間と耐アルカリ水性および耐候性に優れた2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物を提供する。
【解決手段】主剤は脂肪族および/または脂環式イソシアナートと分子量500以上のジオール、分子量500未満のジオールおよび官能基数3以上のポリオールを含み、全ポリオール中の10~80当量%が脂肪族ポリエステルポリオールおよび/または脂肪族ポリカーボネートポリオールからなり、NCO含有量が3.0~6.0質量%であり、硬化剤はDETDAと無機充填剤を含み、特定量の可塑剤が主剤または硬化剤に配合され、更に組成物に対して5~40質量%の溶剤が主剤および/または硬化剤に配合され、溶剤は溶解度パラメーターが8.0~14.0の非プロトン性溶剤を30質量%超含み、可塑剤量(g)に対する芳香族ポリアミンのアミノ基量(ミリ当量)の比が2.0~20.0である2液型手塗り用ウレタン塗膜組成物。
【選択図】なし