(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】検知装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/78 20060101AFI20240627BHJP
G01V 8/12 20060101ALI20240627BHJP
H01H 35/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H03K17/78 P
G01V8/12 A
H01H35/00 E
(21)【出願番号】P 2020070732
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000210403
【氏名又は名称】竹中エンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪口 典久
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073323(JP,A)
【文献】国際公開第2006/106732(WO,A1)
【文献】特開2012-118076(JP,A)
【文献】特開2000-002586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/74ー17/96
G01V 8/12
H01H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光器と受光器により構成され、
前記投光器及び受光器は光学系を備え、
前記投光器は投光素子を備え、
前記受光器は受光素子を備え、
前記投光器及び前記受光器の一方又は両方に光角度調整装置を備え、
前記光角度調整装置により、光出力角度
の大きさと光入力角度
の大きさの一方又は両方を調整出来、
前記投光器と前記受光器が対向していることを特徴とする検知装置。
【請求項2】
前記光角度調整装置において、前記投光素子または前記受光素子と前記光学系との距離を変更することにより、前記光出力角度の大きさと前記光入力角度の大きさの一方又は両方を調整出来ることを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記受光器において、受光量が閾値に満たなくなると検知出力を行うことを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記光角度調整装置の調整可能とする範囲を、焦点を通過しない範囲とすることを特徴と
する請求項2または請求項3に記載の検知装置。
【請求項5】
前記投光器と前記受光器の一方又は両方に、
加速度センサーと、
アクチュエータとを備え、
前記加速度センサーにより揺動を検知することにより、
前記光出力角度
の大きさと前記光入力角度
の大きさの一方又は両方を調整することを特徴とする
請求項1から4のいずれか一項に記載の検知装置。
【請求項6】
前記光出力角度
の大きさの拡大時に前記投光器の電流を増加し投光する光線の強度を高めることを特徴とする請求項1から5
のいずれか一項に記載の検知装置。
【請求項7】
前記光入力角度
の大きさの拡大時に前記受光器の受光信号の増幅器の倍率を高めることを特徴とする請求項1から6
のいずれか一項に記載の検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光器と受光器で構成される検知装置に関するものであり、特に不安定な設置場所における誤動作防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、侵入者の検出や装置の起動を目的として使用されるこの種の検知装置としては、投光信号を光線として投光する投光器と、光線を受光し受光信号とする受光器とにより構成され、対となる投光器と受光器とを検知区間を隔てて対向し、光軸を合せて設置する形態のものがある。検知区間を通過する人間や物体により、投光器から投光される光線が遮断され、受光器に到達しないか、受光器に到達する光線(主に赤外線が用いられる)の量が低下したことを検出して、検知動作をするものである。
【0003】
光軸とは、投光器の光出力角度の中心軸や、受光器の光入力角度の中心軸のことを指す。これらの光入出力角度の中心軸が重なるよう対向させることを、光軸を合わせるといい、光軸を容易に、正確に調整する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対になる投光器と受光器の光軸が遮断されていないにもかかわらず検知動作をすることを誤動作という。海上フロートのような不安定な場所においても検知装置の設置を必要とする場合があり、光軸調整後に波や振動などの要因により光軸がずれることで、誤動作となることがある。
【0006】
この発明の課題は、不安定な場所への設置時における誤動作を軽減する、耐揺動性の高い検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために本発明の検知装置は、投光器と受光器により構成され、前記投光器及び前記受光器は光学系を備え、前記投光器は投光素子を備え、前記受光器は受光素子を備え、前記投光器及び前記受光器の一方又は両方は光角度調整装置を備え、光出力角度と光入力角度の一方又は両方を調整出来ることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記光角度調整装置の調整可能とする範囲を、焦点を通過しない範囲とすることが好ましい。
【0009】
また、前記投光器と前記受光器を一体としてもよい。
【0010】
また、前記投光器と前記受光器の一方又は両方に、加速度センサーと、アクチュエータとを備え、前記加速度センサーにより揺動を検知することにより、前記光出力角度と前記光入力角度の一方又は両方を調整することとしてもよい。
【0011】
また、前記光出力角度の拡大時に前記投光器の電流を増加し投光する光線の強度を高めてもよい。
【0012】
また、前記光入力角度の拡大時に前記受光器の受光信号の増幅器の倍率を高めてもよい。
【0013】
かかる課題を解決するために本発明による検知装置の光軸調整方法は、前記投光器又は前記受光器の向きを調整した後、前記光入力角度または前記光出力角度が狭くなるように前記投光素子または前記受光素子の位置を調整し、さらに前記投光器又は前記受光器の向きを調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検知装置によれば、不安定な場所に検知装置を設置したときの光軸ずれによる誤報を軽減する。
【0015】
また、本発明による検知装置の光軸調整方法によれば、正確に光軸調整ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による検知装置の実施例を示した機能ブロック図である。
【
図2】本発明による検知装置の光学系と素子の位置関係を調整する様子を示す図である。
【
図3】本発明による検知装置の投光器または受光器が揺動したときの受光領域の位置変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る検知装置を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【0018】
本発明は、
図1のような検知装置100を構成する。検知装置100は投光器10と受光器20を対向し、検知区間を隔てて光軸を合せて設置される。投光器10において、制御装置15は投光素子11に電気信号である投光信号41を送信し、投光素子11は電気信号を光に変換し、さらに光学系14を通して光出力角度13にて示す角度で光線を発する。受光器20において、投光器10より発せられた光線は、光入力角度23で示される角度の範囲内で光学系24に入力されれば光線は受光素子21で電気信号である受光信号51に変換され、制御装置25にて増幅、受光量に変換され、受光量がある一定の閾値以上であれば検知出力52は行われず、侵入者などの検知対象物が光線を遮断すると受光量は閾値に満たなくなり図示されない警報受信機に検知出力52が行われる。例えば、警報受信機は警備センターや建物の管理人室などに設置され、そこに常駐する人が監視を行う。
【0019】
投光器10又は受光器20のうち少なくともどちらか一方が不安定な場所に設置される場合、設置後に光軸がずれることにより投光器10と受光器20の間に検知対象物が無くとも受光量が閾値に満たなくなる。この検知装置が特徴とするところは、投光器10における光角度調整装置12を用いて投光素子11を焦点から外れる方向に位置を調整することによって、光出力角度13を拡げ、受光器20における光角度調整装置22を用いて受光素子21を焦点から外れる方向に位置を調整することによって光入力角度23を拡げられることにある。
【0020】
光学系には、レンズ(フレネルレンズを含む)、反射鏡などを用いる。
【0021】
投光器10が不安定な場所に設置される場合、投光器10の角度や位置がずれることにより、受光器20の光学系24が光出力角度13の外側に位置してしまうことがある。また、受光器20が不安定な場所に設置される場合、受光器20の角度や位置がずれることにより、投光器10の光学系14から発せられた光線が光入力角度23の外側に位置してしまうことがある。
【0022】
例えば、投光器10と受光器20がそれぞれ別の海上フロートに設置され、その間を通過する船舶を検知しようとした時、波浪の影響により光軸がずれることで、誤動作となることがある。また、両方を洋上のメガフロートに設置する場合は投光器10と受光器20がひとつの浮体に設置されることにはなるが、波浪により浮体のしなりやねじれ等により、投光器10と受光器20の光軸がずれることで誤動作となることがある。
【0023】
また、陸上において、長いポールに固定したり、仮設工事の鉄パイプなどに設置したりして、風などにより揺動する場合も同様である。
【0024】
図2(側面視)に投光素子11(受光素子21)と光学系14(光学系24)の位置関係を示す。投光器10と受光器20は同じ
図2(側面視)にて説明できる。ここで光学系14(光学系24)は位置P(f)に点光源があるとき、前述の光学系を通過し平行に光が照射されるように設計されたものとし、投光素子11(受光素子21)は点光源と同様の極めて面積の小さいものとする。
【0025】
投光素子11(受光素子21)は焦点である位置P(f)を基本位置とする。そこから、光学系14(光学系24)と投光素子11(受光素子21)の相対的位置関係を変える光角度調整装置を操作することにより、投光素子11(受光素子21)の位置が段階的あるいは無段階に調整され、光出力角度13(光入力角度23)が調整される。例えば、位置P(a)、(b)及びP(f)は、光出力角度13(a)、(b)及び13(f)、または光入力角度23(a)、(b)及び23(f)に対応する。
【0026】
図2(受光素子正面視)を併せて参照しつつ、受光素子21を、位置P(a)や位置P(b)に調整する場合について示す。この図は、光学系24を通った光線が受光素子21に照射される様子を示している。受光素子21が位置P(f)にあれば点で示す受光領域A0に光線が照射され、位置P(a)や位置P(b)にあれば受光素子21の上に受光領域A1が拡がる。
【0027】
受光領域が広くなれば、その面積当たりの受光量が減少する。受光領域A1は受光素子21よりも広いため、受光領域A0の場合と同じだけの受光量は得られないため感度が低下し、検知区画を短く設定する必要が生じる。
【0028】
また、光角度調整装置の作動に応じて、光出力角度の拡大時に投光器10の電流を増加し投光する光線の強度を高めたり、光入力角度の拡大時に受光器20の受光量51の増幅器の倍率を高めたりすることにより、前述の感度の低下を打ち消すことができる。
【0029】
図2(受光素子正面視)においては真正面から光線を受けた場合を示しているが、前述の通り不安定な場所に設置すれば対向する投光器10の位置や向きがぶれることがある。そのようなときには、
図3に示すように受光領域と受光素子21の位置関係は変わり、受光領域A0としていれば全く受光せず、受光領域A1としていれば受光素子21の全体が受光領域A1に入ったままとなる。
【0030】
特に光角度調整装置で無段階に位置Pを調整可能とする場合には、位置P(f)を境界として光学的特性が切り替わるため、位置P(f)を通過しないように制限すべきである。例えばダイヤルを用いた光角度調整装置で、ダイヤルをある方向に回すと、素子の位置P(a)から位置P(f)までは光出力角度13や光入力角度23が狭くなり位置P(f)では平行となる。位置P(f)から位置P(b)では平行より狭くなるため、ある距離を離れたところで光線は収束しそれより遠くは角度が拡がる。
【0031】
光線が収束するところでは光線が細くなるため、小さい物体が通過する場合でも完全に遮断してしまうことから誤動作の原因となる。
【0032】
上記実施形態においては、投光素子11及び受光素子21は点光源と同様に極めて面積の小さいものとして説明したが、面積は設計によって異なり、広くするにつれて光出力角度13や光入力角度23は拡大する。
【0033】
本発明による検知装置の実施形態の説明は以上である。
【0034】
本発明による検知装置は、光軸調整の煩雑さを解消するとともに正確な光軸調整を行えるため、その方法を以下に説明する。
【0035】
従来の光軸調整は、投光器10及び受光器20それぞれに備えられた照準器(図示しない)により目視で粗調整し、投光器10から発せられる光線が受光器20に届くと、その受光量に応じた電圧を出力し始め、テスター等でその電圧により受光量を確認しながら投光器10や受光器20の向きを調整し、予め定められた受光量を超え、受光量が最大となる角度に調整することで光軸調整は完了となる。
【0036】
本発明を用いた光軸調整は、光出力角度13や光入力角度23が広くなるように素子の位置Pを(例えば、位置P(b)に)調整して粗調整を行う。これにより、従来は受光しなかった光出力角度13や光入力角度23であっても受光するため、早い段階から受光量を確認しながら投光器10や受光器20の向きを調整することができ、光軸調整が容易となる。
【0037】
さらに、光出力角度13や光入力角度23を狭めつつ光軸調整を行い、素子を位置P(f)に調整し、受光量が予め定められた受光量を超え、最大となるように投光器10や受光器20の向きを微調整する。
【0038】
最後に設置場所の不安定さに応じて、投光素子11や受光素子21を位置P(a)や位置P(b)等の、焦点である位置P(f)から離れる方向に調整し、改めて予め定められた受光量を超えていることを確認し、光軸調整を完了する。
【0039】
光入力角度や光出力角度が広くなるほど角度の変化に伴う受光量の変化が小さくなるため、光軸を受光量が最大となる向きに調整することが困難となるが、この光軸調整方法によれば、光軸調整の進度に応じて投光素子11や受光素子21の位置Pを調整し、最も光出力角度13や光入力角度23が狭くなる位置P(例えば、位置P(f))にて微調整を行うことにより、より正確に光軸の調整を行うことができる。
【0040】
本発明による検知装置の光軸調整方法は以上である。
【0041】
位置Pとは素子と光学系の相対的位置関係のことをいい、素子と光学系の相対的距離が変更できれば、素子を動かしても光学系を動かしても目的とする結果は得られ、本発明の技術的範囲内に含まれる。
【0042】
投光素子11(受光素子21)は極めて面積が小さいものとして説明したが現実には面積が拡がるにつれて光出力角度13(光入力角度23)が拡がる。
【0043】
投光器と受光器のいずれか一方、又はその両方に加速度センサーを備え、揺動の発生に応じて光入出力角度を拡げることも出来る。その際のアクチュエータとしてソレノイドやモータ等を用いて光学系または素子の位置Pを調整し一時的に光入出力角度を拡げ、揺動が無くなれば位置Pを再調整し光入出力角度を狭めることにより、光出力角度を拡げる際の投光器の電流を増やす時間や、光入力角度を拡げる際に受光器の増幅器の倍率を高めることを一時的なものとすることができる。
【0044】
実施形態として、投光器と受光器が分かれたものを説明しているが、投光器と受光器は一体となっており、反射板(再帰反射板等)との間の光線が遮断されたことを検知する検知装置であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 投光器
20 受光器
11 投光素子
21 受光素子
12、22 光角度調整装置
13 光出力角度
23 光入力角度
14、24 光学系
15、25 制御装置
41 投光信号
51 受光信号
52 検知出力
100 検知装置