(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】巻線用ボビン
(51)【国際特許分類】
H01F 5/02 20060101AFI20240627BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01F5/02 B
H01F27/32 150
(21)【出願番号】P 2020063545
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 浩
(72)【発明者】
【氏名】森田 淳司
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-051402(JP,A)
【文献】特開2012-015290(JP,A)
【文献】特開平3-156901(JP,A)
【文献】特開昭55-173123(JP,A)
【文献】特開2014-157916(JP,A)
【文献】実開昭55-173123(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/02
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が
複数本同時に巻回される筒状の巻回部と、該巻回部の両端に各々設けられた
板状の鍔部材とを備え、これら鍔部材の少なくとも一方の内側面が、連続
的に前記巻回中の前記巻線が押し付けられる規制面として設けられ、
前記鍔部材自体が前記巻回部の内側に入り込むように1回転で巻線の前記複数本線径分だけ軸方向に変化する角度の螺旋状に設置されて、前記規制面が形成される前記巻回部の軸方向位置が、該巻回部の回転に伴って該巻回部の端部から離れる方向に徐々に変化するように構成されていることを特徴とする巻線用ボビン。
【請求項2】
前記鍔部材のうち一方に、前記巻線を前記巻回部に引き込む巻線引込部が形成され、この一方の鍔部材の内側面が前記規制面として構成されていることを特徴とする
請求項1に記載の巻線用ボビン。
【請求項3】
前記巻回部が断面略矩形状
からなることを特徴とする請求項
1または2に記載の巻線用ボビン。
【請求項4】
前記巻回部が円筒状からなることを特徴とする請求項
1または2に記載の巻線用ボビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、自動巻線機を用いて導線による巻線を巻回するのに有効な各種リアクトル等に用いられる巻線用ボビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、外周に巻線が巻回される巻回部の両端に板状の鍔部材を備えた巻線用ボビンが知られている。この従来技術の一例としての巻線用ボビン70は、
図12,
図13A,
図13Bに示すように、筒状の巻回部71の外周に導線3(コイル)が巻回されるものであり、該巻回部71の両端には板状の鍔部材72,73が設置されている。
【0003】
そして、一方の鍔部材72の巻線引込部75から引き込まれた導線3は、巻回部71に一端から螺旋状に巻回され、この一方の鍔部材72から他方の鍔部材73まで1層目の巻回層を巻回し終わると折り返して、1層目の巻回層の上に、逆方向に他方の鍔部材73から一方の鍔部材72に向かって巻回され、2層目の巻回層が形成される。このような巻回操作が繰り返されることで、複数の巻回層が積層されることになる。
【0004】
上記一方の鍔部材72の部分において、2層目の巻回層から3層目の巻回層に切り換わるときに、この折り返し部分に導線3が巻回されていない空間部Mが形成されてしまう(
図13B参照)。つまり、折り返し部分においては、下層の巻回層の上に、折り返しの巻回層が巻回角度を下層のものと交差させるように乗り上げて巻回することになり、その際、3層目の端部の巻線が鍔部材72の内側側面から離れて巻回され、上記空間部Mが形成され、後にこの部分に巻回される導線3が落ち込むことに起因する問題が生じる。同様の空間部Mの形成は、他方の鍔部材73での3層目の巻回層から4層目の巻回層に切り換わるときにも発生しやすく、同様の問題が生じることになる。
【0005】
特に、図示のように、この導線3を、例えば一度に2本ずつ平行に並列巻きするバイファイラ巻の場合、上記空間部Mに、そのうちの1本の導線が落ち込んでしまうことがあり、2本の導線3の高さが異なることにより、その後の巻線の整列巻きができなくなるため、巻姿が乱れることになる。これにより自動巻線機による巻線処理が難しくなり、手作業により行うことで処理効率の向上が図れなくなる問題を生じている。
【0006】
一方、下記特許文献1には、鍔部材の根元部に段状に突起を形成してなる巻線用ボビンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この特許文献1の巻線用ボビンでは、巻回層の折り返し部分で形成される上述したような空間部Mの形状を考慮した突起とはされていないので、例えば、上記のようなバイファイラ巻の巻線乱れを未然に防止することはできず、処理効率の向上を十分に達成することは困難である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、鍔部材での巻線の折り返し時における空間部の発生をなくし、巻回中の導線の落ち込みの発生を未然に防止してその後の巻姿乱れをなくし、良好な整列巻きを自動巻線機によって実施できるようにした巻線用ボビンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の巻線用ボビンは、
巻線が複数本同時に巻回される筒状の巻回部と、該巻回部の両端に各々設けられた板状の鍔部材とを備え、これら鍔部材の少なくとも一方の内側面が、連続的に前記巻回中の前記巻線が押し付けられる規制面として設けられ、
前記鍔部材自体が前記巻回部の内側に入り込むように1回転で巻線の前記複数本線径分だけ軸方向に変化する角度の螺旋状に設置されて、前記規制面が形成される前記巻回部の軸方向位置が、該巻回部の回転に伴って該巻回部の端部から離れる方向に徐々に変化するように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記鍔部材のうち一方に、前記巻線を前記巻回部に引き込む巻線引込部が形成され、この一方の鍔部材の内側面が前記規制面に構成されていてもよい。
【0013】
また、前記巻回部が断面略矩形状とされていてもよい。
【0016】
また、前記巻回部が円筒状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る巻線用ボビンによれば、巻回部に巻回される巻線が折り返される位置に巻線が押し付けられる鍔部材の内側面が巻線巻回位置を規制する規制面となり、この規制面が巻回部の回転に伴って端部から離れる方向に徐々に変化するように構成したことにより、従来巻線が落ち込んで巻姿が乱れる原因となっていた巻線の空間部の形成が未然に防止される。特に、導線を2本以上並列巻とする場合においても、良好な整列巻きを実施することができるので、自動巻線機にも対応でき、処理効率の向上が図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本発明の第1の実施形態に係る巻線用ボビンの表側斜視図である。
【
図2A】第1の実施形態に係る巻線状態の巻線用ボビンの表側斜視図である。
【
図3A】本発明の第2の実施形態に係る巻線用ボビンの表側斜視図である。
【
図4A】第2の実施形態に係る巻線状態の巻線用ボビンの表側斜視図である。
【
図5A】本発明の第3の実施形態に係る巻線用ボビンの表側斜視図である。
【
図6】第3の実施形態に係る巻線状態の巻線用ボビンの表側斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態の変型例1に係る巻線用ボビンの斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態の変型例2に係る巻線用ボビンの斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態の変型例2に係る巻線状態の巻線用ボビンの斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態の変型例3に係る巻線用ボビンの斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態の変型例3に係る巻線状態の巻線用ボビンの斜視図である。
【
図12】従来技術に係る巻線用ボビンの斜視図である。
【
図13A】従来技術に係る巻線状態の巻線用ボビンの表側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る巻線用ボビン10の構成について、
図1A,Bおよび
図2A,Bに基づいて説明する。
【0020】
巻線用ボビン10は、外周に巻線3が巻回される筒状の巻回部11と、この巻回部11の両端に各々設けられた一方および他方の鍔部材12,13とを備える。前記巻回部11は、断面略矩形状で、内部に軸方向に形成された空洞部14を有し、巻線3が巻回される外周面は4つの平面部11aと4つの曲面角部11bとで構成されている。
【0021】
前記巻回部11の一方(図で左方)の端部に設けられた一方の鍔部材12は、その内側面に巻回される巻線(断面略円形)3が押し付けられるもので、この連続する内側面が巻線3の巻回位置を規制する規制面Sとなる。この一方の鍔部材12は、周方向に移動するのに伴って厚みが徐々に大きくなるように変化し、これにより上記規制面Sの軸方向位置が、該巻回部11の巻回回転に伴って巻回部11の端部から離れる方向に徐々に変化するように形成されている。
【0022】
なお、上記規制面Sの軸方向の位置変化、つまり、その傾きは、図のように巻線3を2本同時に整列巻回するバイファイラ巻の場合には、1巻回(1回転)で巻線(導線)3の2線径分だけ軸方向に変化する角度で、巻線3を巻回することになるので、これに相当した角度に設定される。この角度設定により、
図13Bに示した巻回層の折り返しに伴って生じる空間部Mが形成されないことになる。つまり、
図2Bの巻線状態に示すように、前記空間部Mを形成する巻線3に接して規制面Sが位置することで、空間部Mを埋めるような規制面Sが存在することになる。
【0023】
すなわち、前記一方の鍔部材12は壁状の部材が、巻回部11の一周に亘って形成され、その厚みは周方向に移行するに従って徐々に大きくなる。そして、該一方の鍔部材12は、厚みの一番薄い始端部には、スリット状の巻線引込部15が横方向に設けられ、ここから巻線3の巻回方向に回転するのに従って、徐々に厚みが大きくなり、最も厚い終端部が始端部に臨むように構成されている。他方の鍔部材13は、両側面が平坦で厚みが一定の板状に設けられている。
【0024】
前記一方の鍔部材12において、巻回方向の厚みの変化は上記の通りであるが、巻線用ボビン10の成型性(型抜き性)を確保する点から、前記巻回部11の平面部11aに対応する鍔部材12の平面部12aは上記厚みが徐々に変化するように形成され、一方、前記巻回部11の曲面角部11bに対応する鍔部材12の扇形部12bは厚みが変化せず一定に形成されている。
【0025】
上記のように構成された巻線用ボビン10に対する巻線3の巻回を、
図2Aおよび
図2Bを参照して説明すれば、一方の鍔部材12の始端部における前記巻線引込部15から引き込まれた巻線3は、この巻線引込部15で鍔部材12の内側面の規制面Sに沿うように折り曲げられる。続いて、この規制面Sに押し付けられながら鍔部材12の終端部まで、巻回部11の外周に巻回され、次には、1周目の巻線3に接するように2周目が巻回され、他方の鍔部材13に向けて順次巻回されて、1層目の巻回層が設けられる。他方の鍔部材13に至ると、折り返して、1層目の巻回層の上に乗り上げるとともに、巻回角度を1層目の巻回角度と交差するように変更して、元に戻るように一方の鍔部材12に向けて2層目の巻回層が巻回される。
【0026】
この第1の実施形態では、一方の鍔部材12にのみ規制面Sが形成されているので、1~3層の巻回層の巻回についてはこの規制面Sの作用によって巻乱れることなく、好適な巻回が実行され、巻線の巻姿も良好となる。なお、この形態では、3層目の巻回層の終わりの巻線3が、他方の鍔部材13の内側面との間に生じる空間部Mに落ち込むことになる。
【0027】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係る巻線用ボビン20の構成について、
図3A,Bおよび
図4A,Bに基づいて説明する。
【0028】
巻線用ボビン20は、外周に巻線3が巻回される筒状の巻回部21と、この巻回部21の両端に各々設けられた一方および他方の鍔部材22,23とを備える。前記巻回部21は、断面略矩形状で、内部に軸方向に形成された空洞部24を有し、巻線3が巻回される外周面は4つの平面部21aと4つの曲面角部21bとで形成されている。
【0029】
この実施形態の巻線用ボビン20は、両端部の一方および他方の鍔部材22,23の両方に、傾斜した規制面Sが形成されている。
つまり、一方の鍔部材22は、第1の実施形態における一方の鍔部材12と同形状であり、その内側面に巻回される巻線23が押し付けられるもので、この連続する内側面が巻線3の巻回位置を規制する規制面Sとなる。
【0030】
また、この一方の鍔部材22は、第1の実施形態における一方の鍔部材12と同様に、周方向に移動するのに伴って厚みが徐々に大きくなるように変化し、これにより上記規制面Sの軸方向位置が、該巻回部21の巻回回転に伴って巻回部21の端部から離れる方向に徐々に変化するように形成されている。
【0031】
また、他方の鍔部材23は、一方の鍔部材22と対応する形状(一方の鍔部材22とは逆の巻回方向に厚みが増加する形状)に設けられているが、その他は、上記一方の鍔部材22と同様の形状に形成されている。
【0032】
そして、両鍔部材22,23の始端部には、それぞれ巻線引込部25,26を有し、上述したように、そこから巻回方向に対して巻回軸21の端部から離れる方向に、内側面が1巻回で2巻線径分だけ徐々に変化する形態に規制面S,Sがそれぞれ形成される。
したがって、両鍔部材22,23の規制面S,Sの間隔は、巻回部21の回転に対して一定値となるように平行に設定されている。
【0033】
この第2の実施形態の構成とされたことにより、一方の鍔部材22の規制面Sの形状によって第2層目から第3層目に切り替わる際等における空間部Mの発生が阻止され、また、他方の鍔部材23の規制面Sの形状によって第3層目から第4層目に切り替わる際等における空間部Mの発生が阻止される。これにより、4層目以上の多数巻回層においても、両方の鍔部材22,23の近傍に空間部Mが形成されるのを防止して、巻線の落ち込みが発生することなく、良好な並列巻を維持し、図のように、巻姿の良いバイファイラ巻を実行できる構造となっている。
【0034】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態に係る巻線用ボビン30の構成について、
図5A,Bおよび
図6に基づいて説明する。
【0035】
この実施形態の巻線用ボビン30も巻回部31の両端に一方および他方の鍔部材32,33を備えるが、この鍔部材32,33が断続的に形成され、その内側面による規制面Sも断続的である。前記巻回部31は、断面略矩形状で、内部に軸方向に形成された空洞部34を有し、巻線3が巻回される外周面は4つの平面部31aと4つの曲面角部31bとで形成されている。
【0036】
鍔部材32,33は、具体的には、巻回部31の矩形断面の4か所の平面部31aに対応する位置に、一方の端部には各々分割した平板状の一方の鍔部片32A~32Dが、他方の端部には各々分割した平板状の他方の鍔部片33A~33D(一方の鍔部片32A~32Dとは逆の巻回方向に厚みが増加する形状)がそれぞれ立設されてなる。また、巻回部31の曲面角部31bに相当する端部には、鍔部材は形成されていない。
【0037】
上記各鍔部片32A~32D,33A~33Dの内側面が、巻回される巻線3が押し付けられる規制面Sとなり、その設置の軸方向位置は、巻回方向に対して巻回部31の端部から離れる方向に、内側面が1巻回で2巻線径分だけ徐々に変化する形態に規制面S,Sがそれぞれ形成されている。上記規制面S,Sの位置は、各鍔部片32A~32D,33A~33Dの厚みが順に変位されることで、設定されている。
すなわち、これらの鍔部材32,33は、前述した第2の実施形態における鍔部材22,23において、4つの曲面角部21bに対応する角部を切り取った形状に対応する。
【0038】
なお、この実施形態においては、巻回部31の4つの平面部31aに対応して、両端にそれぞれ4つの鍔部片32A~32D,33A~33Dを設置しているが、少なくとも対向面の対応する位置に少なくとも2つの鍔部片が設置されることが好ましく、これにより一応の効果が期待できるものである。つまり、巻線3が落ち込む空間が形成されずに、良好な並列巻が実施できることになる。
【0039】
なお、本発明の巻線用ボビンとしては、上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の変更態様を採用することができる。
例えば、上記実施形態においては、規制面Sの軸方向位置を徐々に変更する構成を鍔部材または鍔部片の厚みを変更することで実現しているが、それに限られず、同じ厚みの鍔部材または鍔部片をその規制面Sとなる位置が上記実施形態のものと同様の位置となるように、鍔部材または鍔部片の設置位置または形状を変更することによって実現することも可能である。
【0040】
例えば、上記第3の実施形態における一方の鍔部材32において、各鍔部片32A~32Dの厚みが互いに同じで、各鍔部片32A~32D自体も厚みが変化しないように形成することによって、上記第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、上記第1の実施形態における鍔部材12および上記第2の実施形態における鍔部材22,23においても、厚みを変化させるのではなく、鍔部材12,22,23の設置位置や形状を変化させて、規制面が巻回部11,21の端部から離れる方向に徐々に変化するように構成してもよく、このように構成することによっても、上記第1の実施形態や上記第2の実施形態の巻線用ボビンと同様の効果を得ることができる。このような変更態様の一例に係る変型例1については後述する。
【0042】
また、上記第1の実施形態の鍔部材12および上記第2の実施形態の鍔部材22,23においては、規制面Sの巻線巻回方向への傾斜が平面部12a,22a,23aに対応する位置に設けられ、曲面角部12b,22b,23bに対応する位置には設けられていないが、逆に、規制面Sの巻線巻回方向への傾斜を、曲面角部12b,22b,23bに対応する位置に設け、平面部12a,22a,23aに対応する位置に設けないようにしても上述した実施形態の巻線用ボビンと同様の作用効果を得ることができ、また、このような構成としても、巻線用ボビン10,20,30の成型時における良好な成型性(型抜き性)を奏することができる。このような変更態様の2つの例に係る変型例2および変型例3については後述する。
【0043】
なお、巻線用ボビン10,20,30の形状によって、成型時における良好な成型性(型抜き性)を得ることが特に要求されない場合には、規制面Sの巻線巻回方向への傾斜を、平面部12a,22a,23a、および曲面角部12b,22b,23bの両方に設けるように、すなわち、傾斜する規制面を鍔部材12,22,23の1周に亘り連続的に設けるようにすることができる。
【0044】
また、上記各実施形態においては、巻線3が巻回部11,21,31に2本並列にバイファイラ巻とされている様子を示しているが、巻回部11,21,31に単線あるいは3本以上の複数本を並列巻(例えばトリファイラ巻等)としても、本発明の巻線用ボビンの効果を奏することができる。
【0045】
また、上記各実施形態においては、巻回部11,21,31は、断面略矩形状の角筒状に形成された例を示しているが、円筒状に形成されたものでもよい。
【0046】
<変型例1>
ここで、上述した変型例1に係る巻線用ボビンについて
図7を用いて説明を行う。
図7に示す部材においては、第1の実施形態に係る巻線用ボビン10と同様の部材について、
図1Aの部材の符号に30を加えた符号を付し、重複する説明は省略する。
すなわち、この巻線用ボビン40の一方の鍔部42は、上述した第1の実施形態の鍔部12のように、周方向に移動するのに伴って厚みが徐々に大きくなるように変化するものではなく、周方向に移動するのに伴って、鍔部42自体が巻回部41の内側に入り込むように螺旋状に形成されている。これにより、規制面Sの軸方向位置が、該巻回部41の巻回回転に伴って巻回部41の端部から離れる方向に徐々に変化するように形成されている。
【0047】
なお、上記規制面Sの軸方向の位置変化、つまり、その傾きは、例えば
図2Aに示すように、巻線3を2本同時に整列巻回するバイファイラ巻の場合には、1巻回(1回転)で巻線(導線)3の2線径分だけ軸方向に変化する角度で、巻線3を巻回することになるので、これに相当した角度に設定される。この角度設定により、
図13Bに示した巻回層の折り返しに伴って生じる空間部Mが形成されないことになり、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0048】
<変型例2>
ここで、上述した変型例2に係る巻線用ボビン50について
図8,9を用いて説明を行う。
図8に示す部材においては、第3の実施形態に係る巻線用ボビン30と同様の部材について、
図5Aの部材の符号に20を加えた符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
すなわち、この変型例2の巻線用ボビン50も巻回部51の両端に一方および他方の鍔部材52,53を備えるが、この鍔部材52,53が断続的に形成され、その内側面による規制面Sも断続的である。巻線3が巻回される外周面は4つの平面部51aと4つの曲面角部51bとで形成されている。
【0050】
鍔部材52,53は、具体的には、巻回部51の矩形断面の4か所の曲面角部51bに対応する位置に、一方の端部には各々分割した平板状の一方の鍔部片52A~52Dを備えた鍔部材52が、他方の端部には各々分割した平板状の他方の鍔部片53A~53D(一方の鍔部片52A~52Dとは逆の巻回方向に厚みが増加する形状)を備えた鍔部材53が、それぞれ立設されてなる。また、巻回部51の平面部51aに相当する端部には、鍔部材は形成されていない。
【0051】
上記各鍔部片52A~52D,53A~53Dの内側面が、巻回される巻線3が押し付けられる規制面Sとなり、その設置の軸方向位置は、巻回部51の各鍔部片52A~52D,53A~53Dの厚みが巻回方向に対して巻回部51の端部から離れる方向に、内側面が1巻回で2巻線径分だけ徐々に変化する形態に規制面S,Sがそれぞれ断続的に形成されている。上記規制面S,Sの位置は、各鍔部片52A~52D,53A~53Dの厚みが順に変位されることで、設定されている。
【0052】
すなわち、これらの鍔部材52,53は、前述した第2の実施形態における鍔部材22,23において、4つの平面部22a,23aに対応する部分を切り取った形状に対応する。
これにより、
図9に示すように、
図13Bに示したような巻回層の折り返しに伴って生じる空間部Mが形成されないことになり、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0053】
<変型例3>
次に、上述した変型例3に係る巻線用ボビン60について
図10,11を用いて説明を行う。
図10に示す部材においては、上述した変型例2に係る巻線用ボビン50と類似した構成とされているので、同様の部材について、
図8の部材の符号に10を加えた符号を付し、重複する説明は省略する。
【0054】
変型例3に係る巻線用ボビン60は、上述した変型例2に係る巻線用ボビン50と構成および作用効果が類似しているが、変型例2に係る巻線用ボビン50の鍔部材52,53の鍔部片52A~52D、53A~53Dが各々板状とされているのに対し、変型例3に係る巻線用ボビン60の鍔部材62,63の鍔部片62A~62D、63A~63Dは各々略円柱形状をなしており、また、他方の鍔部片63A~63Dは一方の鍔部片62A~62Dとは、逆の巻回方向に円柱断面の円径が増加する形状とされている。
【0055】
上記各鍔部片62A~62D,63A~63Dの円柱内側面が、巻回される巻線3が押し付けられる規制面Sとなり、その設置の軸方向位置は、巻回部61の各鍔部片62A~62D,63A~63Dの厚み(円柱断面の円径)が巻回方向に対して巻回部61の端部から離れる方向に、内側面が1巻回で2巻線径分だけ徐々に変化する形態に規制面S,Sが断続的に形成されている。上記規制面S,Sの位置は、各鍔部片62A~62D,63A~63Dの厚み(円柱断面の円径)が順に変位されることで、設定されている。
【符号の説明】
【0056】
3 巻線
10,20,30,40,50,60,70 巻線用ボビン
11,21,31,41,51,61,71 巻回部
11a,21a,31a,41a,51a,61a 平面部
11b,21b,31b,41b,51b,61b 曲面角部
12,22,32,42,52,62,72 一方の鍔部材
13,23,33,43,53,63,73 他方の鍔部材
14,24,34,44,54,64,74 空洞部
15,25,26,45,75,76 巻線引込部
32A~32D,33A~33D,52A~52D、53A~53D,62A~62D,63A~63D 鍔部片
S 規制面