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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】車両内装構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020205643
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092757
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茶座 聖始
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-141259(JP,A)
【文献】特許第6485219(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/053774(WO,A1)
【文献】中国実用新案第208344086(CN,U)
【文献】特開2013-010437(JP,A)
【文献】実開昭62-155043(JP,U)
【文献】特開2006-160035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318430(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも車両の荷室の床面を構成するデッキボードを含む車両の内側面を被覆可能なカバー装置を備える車両内装構造であって、
前記カバー装置は、
可撓性を有するシート状の一対のシートカバーと、
前記一対のシートカバーを引き出し可能に巻き取る一対の巻き取り軸と、
前記一対の巻き取り軸を並んだ状態で内部において支持して前記一対の巻き取り軸が巻き取った前記一対のシートカバーを収容するケースと、を備え、
前記荷室の床に、前記カバー装置を前記ケースの上面が前記床面と面一になるように着脱可能な取付部が車両前後方向に延びて設けられ、
前記取付部に取り付けられた前記カバー装置は、
前記一対の巻き取り軸が、車両前後方向に延び、かつ、巻き取り方向が反対となる向きで前記ケース内に支持され、
前記一対のシートカバーの各々は、前記ケースの上端に設けられた開口部から互いに反対方向に向けて水平に引き出し可能なものとされ、前記ケースから引き出された状態において前記車両の内側面のうち車両幅方向における前記取付部の左右両側に配された部分をそれぞれ被覆可能とされている車両内装構造。
【請求項2】
前記取付部は前記床面から溝状に窪む凹部とされ、前記デッキボードのうち前記凹部の側方に配されたボード部は、前記凹部と前記ボード部との境界部を回動中心として回動可能とされている請求項1に記載の車両内装構造。
【請求項3】
前記シートカバーは、前記巻き取り軸に沿った方向の寸法が、引き出し方向における先端側が小さく基部側が大きい先細りの略台形状とされるとともに、引き出し方向における先端に、当該シートカバーの展開状態を車両前後方向において支持する展開支持部を備えており、
前記展開支持部は、前記ケースに設けられた切欠部に嵌め入れられることにより前記シートカバーの巻き取り後の姿勢が調節可能とされている請求項1または請求項2に記載の車両内装構造。
【請求項4】
前記床面は、車両幅方向における両端部において当該床面から立ち上がるように配された一対の側壁面と連なっており、
前記取付部は、前記床の車両幅方向における中間に設けられ、
前記シートカバーは、前記床面および前記側壁面を被覆可能な寸法とされ、前記側壁面に対して係止可能とされている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両内装構造。
【請求項5】
前記車両の内側面および前記シートカバーの裏面の少なくとも一部に面ファスナーが設けられており、前記シートカバーは前記車両の内側面に対して前記面ファスナーにより係止可能とされている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両内装構造。
【請求項6】
前記シートカバーの表面は撥水性を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両内装構造。
【請求項7】
前記デッキボードは、車両前方に向けて下がる傾斜状に配されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両内装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばバン型等の車両の荷室構造として、床下にスペアタイヤや工具等を収納する凹状の収納部が設けられ、これをデッキボードで覆うことにより、荷室の床面を構成するようにしたものが知られている。このようなデッキボードには、その上面に荷物の他、ペットや自転車等、汚れたり、においがつくものが載せられることがあるため、必要に応じて取り外して洗浄できるシート状のカバーが設けられる場合がある。特許文献1には、デッキボードの下部に、シートカバーを引き出し・収納自在に収納する収納部を設けるとともに、引き出されたシートカバーの縁部を上方に立ち上げて車両に係合することで、シートカバーがボックス状に形成される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-160035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述したシートカバーは、展開使用する際に、荷物の多少にかかわらず、荷室内の荷物等を全て一旦積み下ろす必要がある。また、シートカバーをボックス形状に形成する際に、シートカバーの縁部を車両側の所定個所に位置合わせし、係合させる手間を要する。さらに、シートカバーを収納部に収納する際には、係合を解除したり、シートカバーを小さく折りたたむ作業が必要である。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、車両の内側面から取り外し可能で使用時の利便性に優れるカバー装置を備えた車両内装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みてなされた本発明は、少なくとも車両の床面を含む車両の内側面を被覆可能なカバー装置を備える車両内装構造であって、前記カバー装置は、可撓性を有するシート状の一対のシートカバーと、前記一対のシートカバーを引き出し可能に巻き取る一対の巻き取り軸と、前記一対の巻き取り軸を並んだ状態で内部において支持して前記一対の巻き取り軸が巻き取った前記一対のシートカバーを収容するケースと、を備え、前記一対のシートカバーの各々は、互いに反対方向に引き出し可能なものとされ、車両の床には、車両前後方向に延びて前記カバー装置を着脱可能な取付部が設けられ、前記取付部に取り付けられた前記カバー装置は、引き出された前記シートカバーによって、前記車両の内側面のうち車両幅方向における前記取付部の左右両側に配された部分をそれぞれ被覆可能とされている。
【0007】
このような構成によれば、シートカバーが汚れたり破損した際には、カバー装置を床から取り外し、カバー装置ごと移動させてシートカバーを洗浄したり取り替えたりすることができる。また、シートカバーを使用する際には、ケース内の巻き取り軸に巻き付けられたシートカバーを引き出して展開すればよく、シートカバーが不要となった際には、巻き取り軸に巻き取るだけでよいから、シートカバーを折り畳んで床下に収納する構成と比較して、畳んであるものを開いたり、折り畳んで収納する等の手間が不要で、取扱性に優れる。
【0008】
また、シートカバーは一対設けられており、互いに反対方向に向けて引き出されるようになっているから、使用時に展開する際や、床下スペースにアクセスする等、巻き取りの際に、床上の荷物等を全て一旦積み下ろす必要がなく、車両の片側に荷物等を寄せながら、片側ずつ操作を行うことができる。
【0009】
さらに、カバー装置は、一対の巻き取り軸を並んだ状態でケース内に支持して車両前後方向に延びるように床に取り付けられており、シートカバーは車両幅方向に展開されるようになっているから、例えば荷室や足元等、車両の幅方向における片側だけを必要に応じて使用することもできる。
【0010】
前記床面は、車両幅方向における両端部において当該床面から立ち上がるように配された一対の側壁面と連なっており、前記取付部は、前記床の車両幅方向における中間に設けられ、前記シートカバーは、前記床面および前記側壁面を被覆可能な寸法とされ、前記側壁面に対して係止可能とされていてもよい。
【0011】
このような構成によれば、床面だけでなく、床面に連なる側壁面が傷ついたり汚れたりすることを抑制することができる。また、シートカバーの巻き取り軸からの引き出し長さを調節することにより、側壁面のどの部分まで覆うか必要に応じて設定することができる。
【0012】
前記車両の内側面および前記シートカバーの裏面の少なくとも一部に面ファスナーが設けられており、前記シートカバーは前記車両の内側面に対して前記面ファスナーにより係止可能とされていてもよい。
【0013】
このような構成によれば、被覆したい分だけシートカバーを引き出してその裏面を内側面に宛がうだけでシートカバーを固定することができるから、シートカバーを固定する際の操作性に優れる。
【0014】
前記取付部は車両前後方向に延びて前記床面から溝状に窪む凹部であって、前記カバー装置は前記凹部に嵌め入れられていてもよい。このような構成により、カバー装置を床に対して簡単かつ安定的に固定することができる。
【0015】
前記ケースの上端に前記シートカバーを引き出すための開口部が設けられており、前記ケースはその上面が前記床面と面一になるように配されていてもよい。このような構成によれば、床面からケースが上方に突出しないから、取り付けられたカバー装置により床面が仕切られることがなく、床を使用する際の自由度が高い。
【0016】
前記シートカバーの引き出し方向における先端に、前記シートカバーの展開状態を車両前後方向において支持する展開支持部が設けられていてもよい。このような構成によれば、可撓性を有するシートカバーをケースから引き出したり収納したりする際の操作性が高まる。
【0017】
前記シートカバーの表面は撥水性を有していてもよい。このような構成によれば、シートカバーが汚れ難く、洗浄し易い。
【0018】
前記床は、車両の荷室の床面を構成するデッキボードであってもよい。床が荷室のデッキボードである場合、車両の後方からカバー装置を操作することになるため、一対の巻き取り軸が車両前後方向に延びた状態でカバー装置が床に取り付けられると、展開・巻き取り時の操作がより容易である。また荷室の構成上、荷室の片側だけ使用する際の利便性にも優れるとともに、カバーシートを引き出し方向において先細りの形状とすることができるから、巻き取り易く、設計も容易である。
【0019】
前記デッキボードは、車両前方に向けて下がる傾斜状に配されていてもよい。このような構成によれば、衝突等により車両前後方向へ衝撃が加わった際に、カバー装置が乗員に対して下方へ逃げ易く、乗員への危険性を低減させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両の内側面から取り外し可能で使用時の利便性に優れるカバー装置を備えた車両内装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態の車両荷室を車両後方から視た一部切欠正面図
図2図1の状態からカバー装置を取り外した状態の車両荷室の一部切欠正面図
図3】カバー装置の斜視図
図4】デッキボードに固定された状態のカバー装置の縦断面図
図5】他の実施形態の車両荷室を車両後方から視た一部切欠正面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を車両の荷室10に適用した一実施形態の車両内装構造1について、図1から図4を用いて説明する。なお、図1および図2における紙面奥側が車両前方側であり、手前側が車両後方側である。また、以下の説明で、上下左右とは、各部材が荷室10内に配された状態における車両上下方向、車両幅方向を、それぞれ意味することとする。
【0023】
図1は、荷室10を車両後方から視た一部切欠正面図である。図1に示すように、車両後部には荷室10が設けられており、車両後方ドア(図示せず)を開けた状態で車両後部開口11から荷室10内へアクセス可能とされている。この荷室10は、床面20A(内側面の一例)を構成するデッキボード20(床の一例)と、デッキボード20の車両幅方向両側に配され、デッキボード20の両端部から立ち上がる形態で側壁面30A(内側面の一例)を構成する一対のデッキサイドトリム30と、デッキボード20の車両前方に配され、前壁を構成する後部座席15のシートバック15Aと、で囲まれた収容空間を有している。
【0024】
デッキボード20は、図1に示すように、車両前後方向かつ車両幅方向に沿って延在する板状をなしており、その上面(床面20A)に荷物等の搭載物が載置可能とされている。また、デッキボード20の下には収納凹部が設けられており、床下にも荷物等の搭載物が収納可能とされている。
【0025】
デッキボード20の車両幅方向における中央には、図2に示すように、所定の幅を有して前後方向に延びるとともに下方に向けて窪む断面矩形の溝状の凹部21(取付部の一例)が設けられており、この凹部21に、後述するカバー装置40が嵌め込み可能とされている。以下、デッキボード20のうち凹部21の左端に配された部分を左側ボード部20Lとし、凹部21の右側に配された部分を右側ボード部20Rとする。
【0026】
左側ボード部20Lと凹部21との境界である左側境界部22L、および、右側ボード部20Rと凹部21との境界である右側境界部22Rは、左側ボード部20Lおよび右側ボード部20Rを車両幅方向において回動可能としている。具体的には、左側境界部22Lおよび右側境界部22Rは、板厚を部分的に薄く設定することにより構成されたインテグラルヒンジとされており、これにより、デッキボード20は、左側ボード部20Lおよび右側ボード部20Rが、左側境界部22Lおよび右側境界部22Rを回動軸としてそれぞれ荷室10の上側かつ荷室10の内側方向に向けて回動可能とされ、床下の収容凹部を塞ぐ略平坦な状態と、収容凹部を開放する垂直状態との間で変位可能とされている。
【0027】
なお、本実施形態のデッキボード20は、全体として、車両前方に向けてやや下がる傾斜状に配されている。
【0028】
デッキサイドトリム30は、車両上下方向かつ車両前後方向に沿って延在する板状をなし、その車両幅方向内側を向く側壁面30Aが荷室10内に臨む構成とされている。一対のデッキサイドトリム30は、左右対称に構成されている。デッキサイドトリム30には、その車両前側かつ下側に、ホイールハウスに倣う形で荷室10内に膨出するホイールハウス部31が設けられている。また、デッキサイドトリム30の上側部分は、車室内に向けて断面L字形状に張り出した張出部32とされている。
【0029】
上述したデッキボード20の凹部21には、カバー装置40が着脱可能な状態で取り付けられている。カバー装置40は、一対のマット41(シートカバーの一例)と、一対のマット41をそれぞれ引き出し可能に巻き取る一対の巻き取り軸44と、一対の巻き取り軸44を収容するユニットケース45(ケースの一例)と、を備えて構成されている。カバー装置40は、デッキボード20に取り付けられた状態において、一対のマット41でデッキボード20の床面20Aを被覆可能としている。
【0030】
以下、カバー装置40を構成する各部材について図3および図4を参照して説明する。まず、巻き取り軸44は、全体として長尺な略円柱状をなしており、その軸芯を回転軸としてユニットケース45に対して回転自在に支持されている。巻き取り軸44は、マット41を引き出し可能に巻き取ることが可能な構成とされている。具体的には、巻き取り軸44には、ばねなどからなる回転巻き取り機構が付設されており(図示せず)、マット41に巻き取り方向への付勢力を作用させる構成となっている。また巻き取り軸44は、引き出したマット41を引き出し状態に保持可能なロック機構を備えている(図示せず)。
【0031】
マット41は可撓性を有するシート状の部材からなり、その一端側が巻き取り軸44に連結されている。マット41は、図3に示すように、巻き取り軸44に沿った方向の寸法が、引き出し方向における先端側が小さく、引き出し方向における基部側が大きい、所謂、先細りの略台形状とされている。
【0032】
マット41のうち、引き出し方向における先端側の端部(巻き取り軸44と連結された端部と反対側)には、長尺な帯板状の支持部42(展開支持部の一例)が全体に亘って設けられている。また、支持部42の長手方向における中央部には、支持部42からマット41の一面側に対して立ち上がる形態の操作部43が設けられている。支持部42は、マット41の巻き取り軸44に沿った方向の展開状態を支持するものであり、操作部43は、マット41を展開または巻き取る際に把持して操作する部分として機能する。
【0033】
また支持部42は、マット41がユニットケース45に収納された状態(巻き取り軸44に巻き取られた状態)では、後述するようにユニットケース45の外面に係止され、マット41の先端部がユニットケース45内へ引き込まれることを防止する機能を有する。
【0034】
上述したマット41は、その表面41A(上面)が合成樹脂製のレザーシート等の撥水性を有する部材、あるいは滑り難い素材により構成され、その裏面41B(下面)は、起毛性を有する素材から構成されている。この起毛性を有する素材は、面ファスナーのループ面として機能する。
【0035】
一方、デッキボード20の床面20Aのうちデッキサイドトリム30に隣接する部分と、デッキサイドトリム30の張出部32には、マット41の裏面41Bを係止可能な帯状の面ファスナー25,35が設けられている。面ファスナー25,35は、マット41の裏面41Bに対して係止可能なフック面とされる。これらの面ファスナー25,35は、図1に示すように、車両前後方向に延びるように設けられている。
【0036】
ユニットケース45は、図3示すように、その外形が断面矩形状の長尺な角筒状とされ、一対の巻き取り軸44を、それらの軸芯が平行に並んだ状態、かつ、巻き取り方向が反対となる向きで、内部に収容している。これら一対の巻き取り軸44は、独立して(それぞれ別個に)回転可能とされている。ユニットケース45の内部には、図4に示すように、一対の巻き取り軸44を隔離する隔壁453が設けられている。ユニットケース45は、一対のマット41および巻き取り軸44を一体化して、一括して取り扱うことを可能とする機能を有する。なお、ユニットケース45は、アルミ製あるいはステンレス製等、剛性を有する材料で形成することが好ましいが、これに限るものではない。
【0037】
ユニットケース45のうち、当該ユニットケース45がデッキボード20の凹部21に取り付けられた状態において上端に位置する一対の長尺な角部には、図3および図4に示すように、ユニットケース45内からマット41を引き出すためのスリット46(開口部の一例)が形成されている。これらのスリット46のうち、ユニットケース45の上壁451側の縁部461には、上述したマット41の支持部42を係止するための切欠部47が形成されている(図3参照)。これらの切欠部47により、マット41が巻き取り軸44に巻き取られた状態において、支持部42がユニットケース45の角部から張り出さずに切欠部47内にぴったり嵌め入れられる(図4参照)。またこれら一対の切欠部47は、支持部42の位置決め機能を有しており、マット41が巻き取り軸44に対して所定方向からやや傾斜して巻き取られた場合でも、巻き取り後の姿勢を微調節可能としている。
【0038】
またスリット46のうち、ユニットケース45の側壁452側の縁部462には、ユニットケース45の内側に向けて水平方向に屈曲された形態の受け部48が形成されている(図4参照)。受け部48により、支持部42がユニットケース45内に落ち込んで引き込まれることが防止されている。
【0039】
なお、図4に示すように、一対の巻き取り軸44は、それぞれ、マット41がその巻回部の上端からユニットケース45の外部に略水平に引き出される方向となるように、ユニットケース45内に収容されている。具体的には、図4の左側に位置する巻き取り軸44Lは時計回りに巻き取り付勢され、右側に位置する巻き取り軸44Rは反時計回りに巻き取り付勢される方向となるように、ユニットケース45内に収容されている。
【0040】
このようなカバー装置40は、図1に示すように、ユニットケース45の筒軸(長手方向)が車両前後方向に一致する方向とされて、デッキボード20の凹部21に着脱自在に嵌め入れられている。ユニットケース45の上面45Aは、デッキボード20の床面20Aと面一状をなし、一対のマット41は、一対のスリット46から車両幅方向における反対方向に向けて互いに引き出され、デッキボード20の左側ボード部20Lおよび右側ボード部20Rを覆うことが可能な構成とされている(図1図4参照)。なお、面一とは、荷室10の床面20A(デッキボード20)に荷物等の搭載物を載置した際に、がたつき等の影響を受け難い程度の段差を有する状態を含むものとする。
【0041】
また、マット41は、カバー装置40のユニットケース45がデッキボード20の凹部21に取り付けられた状態において、車両幅方向における寸法(引き出し方向の寸法)が、ユニットケース45の側端部からデッキボード20の側端部までの寸法より大きい寸法を有する構成とされており、これにより、デッキサイドトリム30の側壁面30Aを被覆可能としている。つまり、マット41は、車両前後左右方向に沿って延在する姿勢でデッキボード20の床面20Aを覆うとともに、車両前後上下方向に沿って延在する姿勢でデッキサイドトリム30の側壁面30Aを覆うことが可能な構成とされている(図1参照)。
【0042】
このようなカバー装置40によりデッキボード20の床面20Aを被覆する際には、デッキボード20の凹部21に取り付けられたユニットケース45のスリット46の縁部(切欠部47)に配された操作部43を手でつまみ、車両幅方向に沿って引っ張って、ユニットケース45内において巻き取り軸44に巻回された状態のマット41をユニットケース45から引き出す。そして、マット41を引き延ばし、デッキボード20の床面20Aを被覆した状態として、その裏面41Bを面ファスナー25に押し当てる。また必要な場合は、マット41をデッキサイドトリム30の側壁面30Aを覆うことが可能な位置まで引き延ばし、その裏面41Bを、デッキサイドトリム30の面ファスナー35に押し当てるとともに、デッキボード20の面ファスナー25に押し当てる。
【0043】
この時、デッキボード20に荷物等の搭載物が載置されている場合があるが、そのような場合でも、搭載物を全て一旦取り出す必要はなく、搭載物をデッキボード20の片側に寄せ、片側を空にした状態で上述した操作を行った後、片側に寄せられていた荷物を反対側に移動させ、再び、上述した操作を行うことが可能である。また、必要に応じで、片側だけをマット41で被覆し、反対側は被覆しない形態とすることも可能である。
【0044】
一方、被覆状態のマット41を収納する際には、操作部43を手でつまみ、マット41の裏面41Bを面ファスナー25,35から引き剥がす。そして、支持部42をマット41の引き出し方向にわずかに引っ張ることで巻き取り軸44のロックを解除し、巻き取り軸44の付勢力によりマット41を巻き取り軸44に巻き取らせる。巻き取り軸44に巻き取られたマット41の先端は、支持部42および操作部43がスリット46の縁部461に係止するとともに、受け部48に支持されることにより、ユニットケース45内へ引き込まれることが規制される。このようにして、マット41がユニットケース45内に収容される。
【0045】
また、マット41が汚れたり破損した際には、カバー装置40を凹部21から取り外すことで、簡単にマット41を洗浄したり、交換したりすることが可能である。
【0046】
次に、作用効果について説明する。本実施形態の車両内装構造1は、車両の荷室10の床面20Aおよび側壁面30Aを被覆可能なカバー装置40を備えるものであって、カバー装置40は、可撓性を有するシート状の一対のマット41と、一対のマット41を引き出し可能に巻き取る一対の巻き取り軸44L,44Rと、一対の巻き取り軸44L,44Rを並んだ状態で内部において支持して一対の巻き取り軸44L,44Rが巻き取った一対のマット41を収容するユニットケース45と、を備え、一対のマット41の各々が、互いに反対方向に引き出し可能なものとされ、デッキボード20には、車両前後方向に延びてカバー装置40を着脱可能な凹部21が設けられ、凹部21に取り付けられたカバー装置40は、引き出されたマット41によって、車両の床面20Aおよび側壁面30Aのうち車両幅方向における凹部21の左右両側に配された部分をそれぞれ被覆可能とされている。
【0047】
このような構成によれば、マット41が汚れたり破損した際には、カバー装置40をデッキボード20から取り外し、カバー装置40ごと移動させてマット41を洗浄したり取り替えたりすることができる。また、マット41を使用する際には、ユニットケース45内の巻き取り軸44に巻き付けられたマット41をスリット46から引き出して展開すればよく、マット41が不要となった際には、巻き取り軸44に巻き取るだけでよいから、シートカバーを折り畳んで床下に収納する構成と比較して、畳んであるものを開いたり、折り畳んで収納する等の手間が不要で、取扱性に優れる。
【0048】
また、マット41は一対設けられており、互いに反対方向に向けて引き出されるようになっているから、使用時に展開する際や、床下スペースにアクセスする等、巻き取りの際に、床上の荷物等を全て一旦積み下ろす必要がなく、車両の片側に荷物等を寄せながら、片側ずつ操作を行うことができる。また、必要に応じて車両の幅方向における片側だけを使用することもできる。
【0049】
さらに、カバー装置40の操作は車両の後方から行われるが、一対の巻き取り軸44は車両前後方向に延び、かつ、車両幅方向に並んだ状態でユニットケース45内に収容されており、マット41は車両幅方向に展開されるようになっているから、一対の巻き取り軸が車両幅方向に延び、かつ、車両前後方向に並んだ状態で設置される構成と比較して、展開・巻き取り時の操作が容易である。また荷室10の構成上、荷室10の片側だけ使用する際の利便性にも優れるとともに、マット41を引き出し方向において先細りの形状とすることができるから、巻き取り易く、設計も容易である。
【0050】
また、デッキボード20の床面20Aは、車両幅方向における両端部において当該床面20Aから立ち上がるように配された一対のデッキサイドトリム30の側壁面30Aと連なっており、凹部21は、デッキボード20の車両幅方向における中間に設けられ、マット41は床面20Aおよび側壁面30Aを被覆可能な寸法とされて、デッキサイドトリム30に対して係止可能とされている。
【0051】
このような構成によれば、床面20Aだけでなく、床面20Aに連なる側壁面30Aが傷ついたり汚れたりすることを抑制することができる。また、マット41の巻き取り軸44からの引き出し長さを調節することにより、側壁面30Aのどの部分まで覆うか必要に応じて設定することができる。
【0052】
また、マット41の裏面41Bは面ファスナーのループ面を構成する起毛性を有する素材で構成され、床面20Aおよび側壁面30Aの一部にフック面を構成する面ファスナー25,35が設けられており、マット41の裏面41Bは床面20Aおよび側壁面30Aに対して面ファスナーにより係止可能とされている。
【0053】
このような構成によれば、被覆したい分だけマット41を引き出してその裏面41Bを床面20Aおよび側壁面30Aに宛がうだけでマット41を固定することができるから、マット41を固定する際の操作性に優れる。
【0054】
また、デッキボード20は車両前後方向に延びて溝状に窪む凹部21を備え、カバー装置40は凹部21に嵌め入れられている。このような構成により、カバー装置40をデッキボード20に対して簡単かつ安定的に固定することができる。
【0055】
また、ユニットケース45の上端にマット41を引き出すためのスリット46が設けられており、ユニットケース45はその上面45Aがデッキボード20の床面20Aと面一になるように配されている。このような構成によれば、デッキボード20からユニットケース45が上方に突出しないから、取り付けられたカバー装置40によりデッキボード20が仕切られることがなく、デッキボード20を使用する際の自由度が高い。
【0056】
また、マット41の引き出し方向における先端に、マット41の展開状態を車両前後方向において支持する支持部42が設けられている。このような構成によれば、可撓性を有するマット41をユニットケース45から引き出したり収納したりする際の操作性が高まる。
【0057】
また、マット41の表面41Aは撥水性を有している。このような構成によれば、マット41が汚れ難く、洗浄し易い。
【0058】
また、デッキボード20は、車両前方に向けて下がる傾斜状に配されているから、衝突等により車両前後方向へ衝撃が加わった際に、カバー装置40が乗員に対して下方へ逃げ易く、乗員への危険性を低減させることができる。
【0059】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0060】
(1)上記実施形態では、一対のマット41がデッキボード20を被覆する例を示したが、一対のシートカバー(マット)は、床に搭載した荷物等を荷物等の上方から固縛して荷物等の移動を抑制するカバーのように使用することもできる。その場合、荷物等の大きさに応じて、シートカバーの先端部をデッキボードに係止したり、デッキサイドトリムに係止することができる。
【0061】
(2)上記実施形態では、カバー装置40を荷室10(デッキボード20)の車両幅方向における中央に設ける形態を示したが、カバー装置40は、車両幅方向における中央ではなく、図5に示すように、左右のどちらかに寄った位置や、デッキボードの端部に設ける構成としてもよい。デッキボードの端部に設ける場合には、一方側のカバーシートは側壁面だけを被覆することができる。またカバー装置40は一つに限らず、複数設ける構成としてもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、デッキボード20にカバー装置40を取り付けるための溝状の凹部21を設け、デッキボード20を左側境界部22Lおよび右側境界部22Rで屈曲させることにより、床下の収容空間にアクセス可能な構成としたが、デッキボードを左右に分割し、一対のデッキボードの間に、カバー装置を固定する部材を別途設ける構成としてもよい。
【0063】
(4)巻き取り軸44は、ユニットケース45から着脱可能な構成とすることもできる。
【0064】
(5)また、巻き取り軸44に、巻き取り方向への付勢機構や引き出し状態のロック機構が備えられていない構成とすることもできる。
【0065】
(6)フック面を構成する面ファスナー25,35を設ける位置は、上記実施形態に限るものではなく、荷室の構造や用途に応じて、様々な位置に設けることができる。例えば、車両上下方向に延びる面ファスナーを設けることもできる。また、面ファスナーは帯状に限るものでない。さらに、カバーシート(マット)の裏面を起毛性を備えない素材にて構成し、別途、ループ面を構成する面ファスナーを設ける構成も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
(7)上記実施形態では、マット41は、表面が(上面)が合成樹脂製のレザーシート等で構成され、裏面(下面)が起毛性を有する部材から構成される形態を示したが、カバーシート(マット)を構成する材料は上記実施形態に限るものではない。例えば、表面をゴム製としたり、PVC等で撥水加工する構成のものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0067】
(8)上記実施形態では、デッキボード20を車両前方に向けてやや下がる傾斜状に配することにより、衝突時の危険性を低減させる構成としたが、デッキボードは、車両後方に向けてやや下がる傾斜状としたり、水平方向に延在する構成としてもよい。そのような場合には、カバー装置自体が衝撃を吸収可能な構成とすることが好ましい。
【0068】
(9)マット41をデッキボード20やデッキサイドトリム30に係止する構成は上記実施形態に限るものでなく、締結部材やフック、ボタン等、任意の方法を利用することができる。
【0069】
(10)ユニットケース45の上面45Aは必ずしもデッキボード20と面一とされていなくてもよく、床面から突出していたり、床面から窪んだ位置に配されていてもよい。
【0070】
(11)側壁面を被覆不可能なカバー装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0071】
(12)上記実施形態では、本発明を車両の荷室の床面を構成するデッキボードに適用した例を示したが、本発明は、荷室だけでなく、例えば乗員室の床に適用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1:車両内装構造、10:荷室、20:デッキボード(床)、20A:床面(内側面)、20L:左側ボード部、20R:右側ボード部、21:凹部(取付部)、25,35:面ファスナー、30:デッキサイドトリム、30A:側壁面(内側面)、40:カバー装置、41:マット(シートカバー)、41A:表面、41B:裏面、42:支持部(展開支持部)、43:操作部、44:巻き取り軸、45:ユニットケース(ケース)、45A:上面、46:スリット(開口部)
図1
図2
図3
図4
図5