(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】アレルゲン固定化担体の製造方法及びアレルゲン特異的抗体の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 Q
(21)【出願番号】P 2020569213
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2020027835
(87)【国際公開番号】W WO2021015123
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2019136987
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 和美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正照
(72)【発明者】
【氏名】荒井 大河
(72)【発明者】
【氏名】若山 翔
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-107154(JP,A)
【文献】特表2014-512535(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0101031(US,A1)
【文献】特開平4-225163(JP,A)
【文献】国際公開第2010/110454(WO,A1)
【文献】特開2005-77191(JP,A)
【文献】特表2017-527555(JP,A)
【文献】特開2018-171041(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0131546(EP,A2)
【文献】佐藤久美子ほか,スギ花粉アレルギーの研究 II マイクロプレートを用いた酵素抗体法によるスギ花粉特異的IgE抗体の迅速測,群馬大学医療技術短期大学部紀要,日本,1986年03月30日,第6巻,第103-107頁
【文献】佐々木揚,堀田康雄,スギ花粉症アレルゲンCri j 1定量技術の開発,2002年日本林学会大会学術講演集,日本,2002年04月,第113回,第329頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53,33/543,
C07K 17/02,
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルゲン特異的抗体を検出するためのアレルゲン固定化担体の製造方法であって、
アレルゲン抽出物を加熱してアレルゲン抽出物の加熱処理物を得る工程[1]、及び
前記工程[1]で得られた加熱処理物を担体に固定化する工程[2]
を含む、担体の製造方法。
【請求項2】
前記工程[1]の加熱温度は、60℃以上100℃未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アレルゲン特異的抗体がIgE抗体である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程[2]において、前記加熱処理物が、前記担体に共有結合により固定化される請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの方法により製造されたアレルゲン固定化担体に検体を接触させ、当該担体に固定化されたアレルゲンと複合体を形成した検体中の特異的抗体を検出する工程を含む、検体中のアレルゲン特異的抗体を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲン特異的抗体を検出するためのアレルゲンが固定化された担体の製造方法及び当該アレルゲン固定化担体を用いるアレルゲン特異的抗体の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内には、細菌やウイルス等の異物が侵入してきた際、それらと結合する抗体が産生され、異物を排除して体を守る免疫機構が存在する。しかしながら、大部分の人には無害である異物、例えば花粉や食品、ダニなどに対しても、それらと結合する抗体が産生され、過剰に免疫を引き起こし、自分自身が傷害されるアレルギー反応を引き起こす体質の人が存在する。
【0003】
異物が体内に侵入するとIgM、IgG、IgA等様々な抗体が産生されるが、アレルギーの直接誘発に関わるのはIgE抗体であり、アレルギーの原因となるアレルゲンと特異的に結合するIgE抗体は特異的IgE抗体と呼ばれる。体内に侵入してきたアレルゲンと特異的IgE抗体が結合することで、肥満細胞などからヒスタミンを初めとした各種化学伝達物質が放出され、血管拡張、気管支平滑筋収縮、毛細血管透過性亢進などの作用により発赤や咳、鼻水等のアレルギー症状が現れる。症状が重い場合には呼吸困難、血圧低下などのショック症状によるアナフィラキシー反応が生じ、生命を脅かす危険な状態に陥ることもある。そのため、アレルギー症状の原因物質を特定し、治療に繋げたり、アレルゲンとの接触や摂取を避けたりすることでアレルギー症状を引き起こさないようにする必要がある。従ってアレルギーの検査は、高感度かつ正確に検出されることが強く望まれている。
【0004】
アレルギー検査は、主に「皮膚テスト」、「経口負荷試験(食物アレルギー)」及び「血液検査」に大別される。
【0005】
皮膚テストは、花粉や食品、ダニ等の抽出物から希薄溶液を調製し、それらを皮膚に乗せて細い針で出血しない程度に指すもしくは引っかく(プリックテスト、スクラッチテスト)、または皮内に注射(皮内テスト)した際に膨疹を観察する方法である。皮膚テストは感度が高いものの、特異度が低いという問題があり、陰性・陽性の判別性能に問題がある。
【0006】
また、食物アレルギーでは、皮内テストはショックの可能性や偽陽性率が高いため、アレルギーが確定しているか疑われている食品を少量摂取させ、アレルギー症状の有無を確認する検査である、経口負荷試験が実施される。しかし、この方法においても依然としてショックのリスクがあるため、緊急対応が十分可能な施設でのみの実施に限られる。
【0007】
これに対し、血液検査によるアレルギー検査は、採血した血液中の好塩基球に花粉や食品、ダニ等の抽出物からの希薄溶液を反応させ、好塩基球から遊離してくるヒスタミンの量を測定する方法である(ヒスタミン遊離試験)。採血という低侵襲性の検査であり、生体内の反応を反映できるという利点が存在するが、症例の約20%に低反応を示すLow-Responderが存在し、これらはヒスタミン遊離試験の適用外となってしまう。また、冷蔵保存した血液を3日以内に検査する必要があるため、臨床現場では汎用されていない。
【0008】
現在、臨床現場で汎用的に実施されているアレルギー検査は、血液中の特異的IgE抗体の量を測定する方法である。
【0009】
特異的IgE抗体の検出は、アレルゲンを担体に固定化したアレルゲン固定化担体を用意し、これに血液(血清・血漿)検体を反応させて、アレルゲンと結合する特異的IgE抗体を捕捉し、そのアレルゲンと特異的抗体との複合体を酵素や蛍光標識した抗IgE抗体を用いて検出することで行われている。臨床の現場で広く用いられている特異的IgE抗体検査法の具体例としては、サーモフィッシャーダイアグノスティックス株式会社のCAP(capsulated hydrophilic carrier polymer)法が挙げられる。
【0010】
非特許文献1には、CAP法の感度を向上させるために、多孔質のセルローススポンジにアレルゲンを固定化した担体を用い、表面積を増やすことで担体当たりのアレルゲン固定化量を多くする方法が記載されている。
【0011】
また、特許文献1には、加熱した食品(にんにく)と加熱していない食品とからアレルゲンを抽出し、これらの抽出したアレルゲンを個別にスポットしたアレルギー診断用のチップが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Bousquet et al., J. Allergy Clin. Immunol., 85, 1039(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年ではアレルギーの種類が細分化されており、検査項目が増加する傾向にある。そのため、より少量の検体からでも高感度に検出可能な新たな方法が求められている。
【0015】
本発明は、このようなニーズに応えるものであり、アレルゲン特異的抗体を高い感度で検出可能なアレルギー検査用のアレルゲン固定化担体の製造方法及び当該担体を用いるアレルゲン特異的抗体の検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、アレルギー検査用のアレルゲン固定化担体の製造において、アレルギー原材料から抽出したアレルゲン抽出物を加熱処理して、当該アレルゲン抽出物の加熱処理物を担体に固定化することにより、加熱処理を行わないアレルゲン抽出物を固定化した担体と比べて、固定化されるアレルゲン量が増加することを見出した。また、この方法により作製したアレルゲン固定化担体を用いることにより、従来より特異的抗体をより高感度に検出できることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
本発明は、以下のものを提供する。
【0018】
(1)アレルゲン特異的抗体を検出するためのアレルゲン固定化担体の製造方法であって、
アレルゲン抽出物を加熱してアレルゲン抽出物の加熱処理物を得る工程[1]、及び
前記工程[1]で得られた加熱処理物を担体に固定化する工程[2]
を含む、担体の製造方法。
(2)前記工程[1]の加熱温度は、60℃以上100℃未満である、(1)に記載の製造方法。
(3)前記特異的抗体が特異的IgE抗体である、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)前記工程[2]において、前記加熱処理物が、前記担体に共有結合により固定化される(1)~(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)(1)~(4)のいずれかの方法により製造されたアレルゲン固定化担体に検体を接触させ、当該担体に固定化されたアレルゲンと複合体を形成した検体中の特異的抗体を検出する工程を含む、検体中のアレルゲン特異的抗体を検出する方法。
【発明の効果】
【0019】
アレルギー検査用のアレルゲン固定化担体の製造において、アレルゲン抽出物を加熱処理後に固定化することにより、未加熱で用いた場合より多くのアレルゲンが固定化されたアレルゲン固定化担体を得ることが可能となる。また、当該担体を用いることにより、少量の検体であっても高い感度でアレルゲン特異的抗体を検出することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明で用いるアレルゲン抽出物は、アレルギー原材料に含まれるタンパク質を抽出したものである。
【0021】
アレルギー原材料は、アレルギーを引き起こすアレルゲンを含む材料の総称であり、具体的には、微生物、植物、動物、昆虫およびハウスダスト、並びにこれらが含まれる食品などが挙げられる。アレルギーを引き起こすか否かは、体質に依存する。
【0022】
アレルゲンを含む微生物の例としては、アルテルナリア、アスペルギルス、カンジダ、マラセチア、ダニなどが挙げられる。
【0023】
アレルゲンを含む植物の例としては、スギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカンバ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギおよびオオアワガエリ、並びにこれらの花粉などが挙げられる。
【0024】
アレルゲンを含む動物の例としては、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、インコ、アヒルなどが挙げられる
アレルゲンを含む昆虫の例としては、ガ、ゴキブリ、ハチなどが挙げられる。
【0025】
アレルゲンを含む食品の例としては、卵、牛乳、小麦、落花生、大豆、蕎麦、ゴマ、米、エビ、カニ、イカ、タコ、キウイ、バナナ、リンゴ、モモ、トマト、ニンニク、マグロ、鮭、サバ、牛肉、豚肉、鶏肉などが挙げられる。
【0026】
アレルゲン抽出物は、市販されているものを用いてもよいし、自らアレルギー原材料から抽出したものを用いてもよい。市販のアレルゲン抽出物は、ITEA株式会社や、コスモバイオ株式会社などから購入することができる。アレルゲン抽出物の抽出方法は、特に限定されないが、公知の方法によって抽出すればよい。具体的には以下の方法で抽出することができる。
【0027】
まず、アレルギー原材料を刻む又は凍結乾燥後に粉砕する等により細かくし、溶媒を添加してホモジェナイズし、4℃で一晩抽出した後に遠心分離して上清を得る。続いて、上清をろ紙やガーゼ、フィルターなどでろ過することを数回繰り返した後に遠心分離して上清を得る。さらに、その上清を緩衝液で透析したものや、さらに凍結乾燥させて得られたものを、本発明のアレルゲン抽出物として用いることができる。
【0028】
上記抽出方法において、抽出に用いる溶媒としては、イオン交換水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リン酸ナトリウム緩衝液、炭酸水素ナトリウム水溶液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、Good‘s buffer、その他のタンパク質の溶解に適した溶液を用いればよい。これらの中でも、リン酸ナトリウム緩衝液、炭酸水素ナトリウム水溶液が溶媒として好ましく用いられる。また、アレルゲンの安定化のために、抽出の際にDimethyl sulfoxide(DMSO)、N,N-dimethylformamide(DMF)、グリセロールやメタノールまたはエタノールなどのアルコール、グルコース、フルクトース、トレハロースなどの糖類が添加されていてもよい。
【0029】
本発明で用いるアレルゲン抽出物は、粗抽出物であってもよいし、粗抽出物を精製した精製物であってもよい。粗抽出物を精製する方法の例としては、例えば、脂質の多いアレルギー原材料の場合、これを凍結乾燥後に粉砕した後、ヘキサンで処理し、ペレットを得て乾燥させることで脂質を除去する方法、イオン交換クロマトグラフィ、ゲルクロマトグラフィまたは限外濾過などにより不純物を除去したり、特定のタンパク質を単離したりする方法などが挙げられる。
【0030】
本発明は、アレルゲン抽出物を加熱処理した後に担体に固定化することを特徴とする。アレルゲン抽出物の加熱処理温度は60℃以上100℃未満が好ましく、より好ましくは80℃以上100℃未満、最も好ましくは、80℃以上95℃以下である。加熱時間は、処理するアレルゲン抽出物の量に応じて適宜設定することができるが、好ましくは1分以上である。加熱時間の上限は特になく、加熱時間は例えば60分間以下、特には30分以下であるが、通常10分であれば十分である。
【0031】
アレルゲン抽出物の加熱処理は、アレルゲン抽出物を液体に溶解させて行うことが好ましい。アレルゲン抽出物の溶解液には、上記のアレルゲンの抽出で用いる溶媒を用いることができる。市販のアレルゲン抽出物を用いる場合等、アレルゲンの抽出で用いる溶媒が不明な場合等では、アレルゲン抽出物を溶解する液体としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、イオン交換水、リン酸ナトリウム緩衝液、炭酸水素ナトリウム水溶液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、Good‘s buffer、その他のタンパク質の溶解に適した溶媒を用いることができる。
【0032】
アレルゲン抽出物の加熱処理は、界面活性剤の共存下で実施してもよい。界面活性剤はタンパク質の可溶化作用や熱処理時の凝固防止作用があるため、好ましく用いられる。また、加熱処理されたアレルゲン抽出物を担体に固定化させる場合に、界面活性剤が存在することで濡れ性が向上し、均一な固定化が可能となる。なお、濡れ性が向上して均一な固定化が可能となるという効果は、加熱処理後に界面活性剤を添加した場合にでも得ることができるので、加熱処理を界面活性剤の非存在下で行う場合でも、加熱処理後に界面活性剤を添加することも好ましい。
【0033】
界面活性剤には、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などの種類があるが、いずれも好ましく用いることができる。アニオン界面活性剤として、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などが挙げられる。両性界面活性剤として、3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonate(CHAPS)、3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio)-2-hydroxypropanesulfonate(CHAPSO)などが挙げられる。ノニオン界面活性剤として、Triton X-100(商標)、Triton X-114(商標)、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween20(商標)、Tween80(商標)、Octyl Glucoside、Octyl thioglucosideなどが挙げられる。これらの中でも、SDSやTween20(商標)が特に好ましく用いられる。界面活性剤の濃度が高すぎると、加熱処理されたアレルゲン抽出物が特異的IgE抗体と結合できないほど変性させてしまうことがある。そのため、SDSやTween20(商標)を用いる場合は、アレルゲン抽出物の加熱処理を実施する溶液に対して、終濃度が0.001~0.1容量%となるように添加することが好ましく、特に0.003~0.05容量%となるように添加することが好ましい。
【0034】
本発明の方法で製造されるアレルゲン固定化担体は、アレルゲン抽出物の加熱処理物を固定化した担体と検体とを接触させることにより、担体表面のアレルゲンと複合体を形成した、検体中に含まれる特異的IgE抗体等の特異的抗体を検出することができるものである。つまり、本発明の提供するアレルゲン固定化担体を用いると、検体中の、アレルゲンと複合体を形成する特異的抗体を検出することができる。
【0035】
複数のアレルゲン抽出物の加熱処理物が1つの担体上の複数箇所にそれぞれ固定化されており、各加熱処理物が検体と1つの反応場(後述)で接触反応させることができれば、より少量の検体から複数のアレルゲン特異的IgE抗体を同時検査できるので、より好ましい。
【0036】
アレルゲン抽出物の加熱処理物を固定化する担体の材料としては、ガラス、樹脂、金属、金属酸化物、ゲル、セルロース、炭素材料などが挙げられるが、固定化が可能な担体であればこれらに限定されない。担体の材料として用いられる樹脂には、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンスクシネート、ポリ乳酸、ポリアミド系樹脂、ABSなどを用いることができる。担体の材料として用いられる金属には、金、銀、銅、白金、チタン、パラジウム、鉄、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの合金などを用いることができる。固相担体の材料として用いられる金属酸化物には、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム又は複合酸化物などを用いることができる。
【0037】
担体の形状は、板状、薄膜、粒子状、多孔質状などから、適宜選択すればよいが、好ましくは板状である。板状の担体の材料には、射出成型による製造が可能な、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの樹脂材料が生産性の面から好ましい。
【0038】
アレルゲン抽出物の加熱処理物を担体に固定化する方法としては、物理吸着と化学結合があるが、化学的に固定化する方法が好ましい。また、化学的固定化の中でも共有結合による結合が好ましい。共有結合によって、担体にアレルゲン抽出物の加熱処理物を固定化させるためには、アレルゲン抽出物の加熱処理物と結合可能な官能基を有する担体を用いる。例えば、担体上に公知の方法でカルボキシル基を生成させることで、アレルゲン抽出物の加熱処理物のアミノ基と共有結合で固定化することができる。具体的には、担体がポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂の場合には、以下の方法が挙げられる。担体の表面を苛性ソーダなどのアルカリ性水溶液によって加水分解処理し、カルボキシル基を樹脂表面に生成させた後、当該カルボキシル基と、アレルゲン抽出物の加熱処理物に含まれるアミノ基とを直接共有結合(アミド結合)させることにより固定化することができる。また、担体上に生成させたカルボキシル基に対し、エステル結合でマレイミド基を導入し、当該マレイミド基と、アレルゲン抽出物の加熱処理物に含まれるシステイン残基由来のチオール基とを共有結合させることにより固定化することもできる。なお、担体上のカルボキシル基にタンパク質を共有結合方法させる方法自体は周知であり、下記実施例にも具体的に記載されている。
【0039】
また、アレルゲン抽出物の加熱処理物を共有結合により化学的に固定化する際には、アレルゲン抽出物の加熱処理物を溶媒に溶解させた状態で行うことができる。溶媒の具体例としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、イオン交換水、リン酸ナトリウム緩衝液、炭酸水素ナトリウム水溶液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、Good‘s buffer、その他のタンパク質の溶解に適した溶媒を用いることができる。アレルゲン抽出物を溶解、加熱、担体への固定化まで一貫して同一の溶媒を用いることが可能な場合、途中で溶媒置換の操作が不要であり、アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体を製造する上で簡便な工程を採用することができるので好ましい。この場合の溶媒としては、PBS、リン酸ナトリウム緩衝液、炭酸水素ナトリウム水溶液が好ましく用いられる。
【0040】
アレルゲン抽出物の加熱処理物の溶液と担体とを接触させる方法としては、溶液に担体を浸漬させる方法や、担体に溶液を滴下する方法を用いることができる。アレルゲンと、検体が1つの反応場で同時に接触できるように固定化させれば、より少ない検体から複数のアレルギーを同時に検出することができるので、公知のスポッティング装置を用いて同一の板状担体上に複数のアレルゲン抽出物の加熱処理物の溶液をそれぞれスポッティングして固定化することが好ましい。ここで、アレルゲンと検体を「1つの反応場で接触させる」とは、複数のアレルゲン抽出物の加熱処理物がそれぞれ独立に隔壁なく固定化された担体に対して、検体を添加して接触させることであり、検体中の特異的抗体が、固定化されたいずれかのアレルゲン抽出物の加熱処理物と同じ空間で自由に接触できることを意味する。それぞれのアレルゲン抽出物の加熱処理物に結合した特異的抗体を検出することで、アレルギーの原因となる複数の特異的抗体を同時検出することができる。1つの反応場で1種類の特異的抗体が検出できるシステムと比較して、隔壁のない1つの反応場で反応、検出を行うことができれば、アレルギー1項目あたりの検査に必要な検体量を減らすことができる。
【0041】
固定化されたアレルゲンの量は、担体表面のアレルゲンのタンパク質量を直接定量する方法、固定化されたアレルゲンを担体に酸や還元剤などを含む溶液を反応させて担体からアレルゲンを乖離させ、溶液中に存在するタンパク質量をBCA法やBradford法、紫外吸光高度法等により定量する方法のいずれも用いることができる。このうち、担体と共有結合、例えばアミド結合しているアレルゲンを担体から乖離させることは容易でないため、担体表面上のアレルゲンタンパク質量を直接定量する方法が好ましい。担体表面上のアレルゲンのタンパク質量を定量する方法としては、高速原子間力顕微鏡による観察や表面プラズモン共鳴法等が挙げられるが、担体が樹脂製の場合、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた定量法が好ましい。
【0042】
本発明で用いる検体は、体液由来のものが好ましい。体液は、血液、汗、尿、涙液、唾液、喀痰・気道分泌液、母乳、羊水、脳脊髄液、腹水、胸水、関節液、精液、膣分泌物などが挙げられるが、特異的IgE抗体等の特異的抗体が含まれる量が多い血液が好ましい。また、検体は、必要に応じて前処理を行ってもよい、例えば、血液の場合、血清や血漿も好ましく使用できる。
【0043】
本発明において、担体表面のアレルゲンと特異的抗体との複合体は、以下の方法で検出することができる。例えば、結合による屈折率差を検出原理とする表面プラズモン共鳴法や共振周波数差を検出原理とする水晶振動子マイクロバランス法などによる検出法が挙げられる。また、蛍光物質(蛍光色素)や、発色・発光物質を生成する酵素、放射性同位体元素等で修飾(標識)した抗IgE抗体などの二次抗体を用いる方法も挙げられる。これらの中でも、安全かつ簡便に取り扱いが可能な、蛍光物質で修飾した抗IgE抗体を用いる方法が好ましい。
【0044】
本発明の提供するアレルゲン固定化担体を用いて、アレルゲンと特異的抗体とにより形成された複合体を検出する場合には、特異的抗体の検出のみならず、特異的抗体の量を定量することもできる。特異的IgE抗体の定量には、蛍光物質を修飾した抗IgE抗体を用いることが好ましい。本発明の方法を用いて、検体に含まれる特異的IgE抗体の量を定量する具体的な方法は、以下の方法が挙げられる。
【0045】
特異的アレルギー診断における定量的免疫測定法では通常、世界保健機構IgE国際標準品(WHO International Standard immunoglobuline(IgE),human serum)を用いてまたは参照して、校正システムを構築する。この国際標準品は、ヒト血清由来の総IgE抗体のフリーズドライ試料であり(The 3rd International Standard for serum IgE: report of the international collaborative study to evaluate the candidate preparation: Geneva, 21 to 25 October 2013:WHO/BS/2013.2220)、例えば、これを用いて様々な濃度の総IgE抗体標準溶液を調製し、標準品と検体の測定値を比較することによって定量することができる。
【実施例】
【0046】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。
【0047】
<アレルゲン抽出物>
以降の実施例と比較例に用いた各アレルゲンの抽出物は以下の購入先より入手し、またはアレルギー原材料より抽出して調製した。
【0048】
カニアレルゲン抽出物は鳥居薬品株式会社から購入した。ゴキブリアレルゲン抽出物はビオスタ社から購入した。ハンノキ花粉アレルゲン抽出物はITEA社より購入した。ブタクサアレルゲン抽出物は鳥居薬品株式会社から購入した。トマトアレルゲン抽出物は鳥居薬品株式会社から購入した。シラカンバ花粉アレルゲン抽出物はITEA社から購入した。ヒノキ花粉アレルゲン抽出物はITEA社から購入した。バナナアレルゲン抽出物はバナナをアレルギー原材料として参考例1の方法で作製した。加熱ニンニクアレルゲン抽出物は、生ニンニクを95℃で20分間加熱したものをアレルギー原材料として参考例1の方法で作製した。大豆アレルゲン抽出物はStallergenes Greer社から購入した。
【0049】
参考例1 アレルゲン抽出物の作製
アレルギー原材料を細かくすりつぶし、3倍重量のPBSを添加して攪拌し、4℃で一晩抽出した後に遠心分離して上清を得た。続いて上清をろ紙でろ過し、さらに遠心分離して得た上清をPBSで透析し、アレルゲン抽出物を得た。
【0050】
参考例2 特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体の作製
以降の実施例と比較例では、以下の方法で作製した特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を用いた。
【0051】
担体としてポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂基板(クラレ製、外形75mm×25mm×1mm、平均分子量3万)を用いた。本基板を10規定の水酸化ナトリウムに70℃で14時間浸漬させた後、純水で3回洗浄し、乾燥した。このようにして、基板表面のPMMAの側鎖を加水分解して、カルボキシル基を生成した。次いで、50mM MES緩衝液(pH6)で3回基板を洗浄し、20%N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を含む50mM MES緩衝液(pH6)に1-エチル―3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(和光純薬社製)およびsulfo-N-hydroxysuccinimide(Sulfo-NHS)(和光純薬社製)が5重量%となるように調製した溶液に室温で1時間浸漬させた後、0.5mM塩酸で3回洗浄してNHSエステル化PMMA樹脂基板を得た。
【0052】
次いで、各アレルゲン抽出物の加熱処理物(実施例)または非加熱処理物(比較例)を、スポッティング用ロボット(日本レーザー電子(株)、GTMASStamp-2)を用いて上記で作製した同一のNHSエステル化PMMA樹脂基板上に4点スポットした。次いで、基板を、密閉したプラスチック容器に入れて、37℃、湿度100%の条件で一晩インキュベートし、各アレルゲン抽出物の加熱処理物または非加熱処理物を固定化した。続いて、0.05%Tween20(商標)を含むPBS(PBST)で3回洗浄し、乾燥させて、特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を得た。
【0053】
参考例3 アレルゲン特異的抗体の検出
以降の実施例及び比較例では、以下の方法で検体中に存在するアレルゲン特異的抗体を検出するため、蛍光色素で標識された抗IgE抗体を用いて蛍光強度を測定した。
【0054】
参考例2で作製した特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を、1重量%ウシ血清アルブミン(BSA)(シグマアルドリッチ社製)を含むPBS溶液に4℃で一晩浸漬させてブロッキング処理したのち、PBSTで3回洗浄した。
【0055】
各検体10μLについて1重量%BSAを含むPBS水溶液で3倍希釈した溶液を、上記処理後の担体のアレルゲンが固定化されている部分に滴下し、ギャップカバーグラス(松波硝子工業株式会社製:24mm×25mm、ギャップサイズ20μm)を被せて封止した。37℃で2時間反応させた後、ギャップカバーグラスを外し、PBSTで3回洗浄した。次いで、1重量%BSAを含むPBSTで1000倍希釈した、Dylight-650色素標識抗ヒトIgEヤギポリクローナル抗体(Novus biologicals製)を30μL基板に添加し、ギャップカバーグラスを被せて室温で1時間反応させた。その後、ギャップカバーグラスを外し、PBSTで3回洗浄後に乾燥させて、スキャナー装置(東レ株式会社製、3D-GeneScanner3000)で蛍光強度を次の条件で測定した。
【0056】
蛍光強度測定条件
装置:3D-GeneScanner3000(東レ製)
励起光波長:635nm
検出波長:670nm
PMT:30。
【0057】
実施例1 カニアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
カニアレルゲン抽出物を、終濃度1mg/mLとなるよう20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解させ、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を終濃度0.003容量%となるように添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0058】
このアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法でカニアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製した。
【0059】
このアレルゲン固定化担体を用いて、参考例3に記載の方法により、陽性検体および陰性検体の蛍光強度を測定し、アレルゲン特異的抗体を検出した。
【0060】
陽性検体として、PlasmaLab社よりカニアレルギー陽性血漿を購入して用いた。陰性検体としては、株式会社エスアールエルのカニアレルギー検査の結果陰性であることを確認した血漿を用いた。
【0061】
参考例3に記載の方法により、蛍光強度を測定した結果と陰性検体の蛍光強度に対する陽性検体の蛍光強度の比(陽性検体/陰性検体)を表1に示す。なお、各測定値は、4点のスポットの測定値の平均値である。
【0062】
比較例1 カニアレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。測定結果を表1に示す。
【0063】
実施例2 カニアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理時に界面活性剤としてSDSを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に終濃度0.02容量%となるように添加して用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。測定結果を表1に示す。
【0064】
比較例2 カニアレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で実施した。測定結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
表1に示すとおり、カニアレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることも確認された。以上のとおり、カニアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、カニに対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。
【0067】
実施例3 ゴキブリアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
ゴキブリアレルゲン抽出物を、終濃度1mg/mLとなるよう20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解させ、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を終濃度0.003容量%となるように添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0068】
このアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法でゴキブリアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製した。
【0069】
このアレルゲン固定化担体を用いて、参考例3に記載の方法により、陽性検体および陰性検体の蛍光強度を測定し、アレルゲン特異的抗体を検出した。
【0070】
陽性検体として、PlasmaLab社よりゴキブリアレルギー陽性血漿を購入して用いた。陰性検体としては、株式会社エスアールエルのゴキブリアレルギー検査の結果陰性であることを確認した血漿を用いた。
【0071】
参考例3に記載の方法により、蛍光強度を測定した結果と陰性検体の蛍光強度に対する陽性検体の蛍光強度の比(陽性検体/陰性検体)を表2に示す。なお、各測定値は、4点のスポットの測定値の平均値である。
【0072】
実施例4 ゴキブリアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理条件を60℃にしたこと以外は、実施例3と同様の方法で実施した。測定結果を表2に示す。
【0073】
比較例3 ゴキブリアレルゲン抽出物の非加熱理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で実施した。測定結果を表2に示す。
【0074】
実施例5 ゴキブリアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理時に界面活性剤としてSDSを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に終濃度0.02容量%となるように添加して用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で実施した。測定結果を表2に示す。
【0075】
実施例6 ゴキブリアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理条件を60℃にしたこと以外は、実施例5と同様の方法で実施した。測定結果を表2に示す。
【0076】
比較例4 ゴキブリアレルゲン抽出物の非加熱理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例5と同様の方法で実施した。測定結果を表2に示す。
【0077】
【0078】
表2に示すとおり、ゴキブリアレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることも確認された。以上のとおり、ゴキブリアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、ゴキブリに対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。
【0079】
実施例7 ハンノキ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
ハンノキ花粉アレルゲン抽出物を、終濃度1mg/mLとなるよう20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解させ、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を、終濃度0.003容量%となるよう添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0080】
このアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法でハンノキ花粉アレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製した。
【0081】
このアレルゲン固定化担体を用いて、参考例3に記載の方法により、陽性検体および陰性検体の蛍光強度を測定し、アレルゲン特異的抗体を検出した。
【0082】
陽性検体として、PlasmaLab社よりハンノキ花粉アレルギー陽性血漿を購入して用いた。陰性検体としては、株式会社エスアールエルのハンノキ花粉アレルギー検査の結果陰性であることを確認した血漿を用いた。
【0083】
参考例3に記載の方法により、蛍光強度を測定した結果と陰性検体の蛍光強度に対する陽性検体の蛍光強度の比(陽性検体/陰性検体)を表3に示す。なお、各測定値は、4点のスポットの測定値の平均値である。
【0084】
実施例8 ハンノキ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理条件を60℃にしたこと以外は、実施例7と同様の方法で実施した。測定結果を表3に示す。
【0085】
比較例5 ハンノキ花粉アレルゲン抽出物の非加熱理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例7と同様の方法で実施した。測定結果を表3に示す。
【0086】
実施例9 ハンノキ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理時に界面活性剤としてSDSを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に終濃度0.02容量%となるように添加して用いたこと以外は、実施例7と同様の方法で実施した。測定結果を表3に示す。
【0087】
実施例10 ハンノキ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理条件を60℃にしたこと以外は、実施例9と同様の方法で実施した。測定結果を表3に示す。
【0088】
比較例6 ハンノキ花粉アレルゲン抽出物の非加熱理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例9と同様の方法で実施した。測定結果を表3に示す。
【0089】
【0090】
表3に示すとおり、ハンノキ花粉アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることも確認された。以上のとおり、ハンノキ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、ハンノキ花粉に対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。
【0091】
実施例11 ブタクサ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
ブタクサ花粉アレルゲン抽出物を、終濃度1mg/mLとなるよう20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解させ、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を終濃度0.003容量%となるように添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0092】
このアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法でブタクサ花粉アレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製した。
【0093】
このアレルゲン固定化担体を用いて、参考例3に記載の方法により、陽性検体および陰性検体の蛍光強度を測定し、アレルゲン特異的抗体を検出した。
【0094】
陽性検体として、Abbaltis社よりブタクサ花粉アレルギー陽性血漿を購入して用いた。陰性検体としては、株式会社エスアールエルのブタクサ花粉アレルギー検査の結果陰性であることを確認した血漿を用いた。参考例3に記載の方法により、蛍光強度を測定した結果と陰性検体の蛍光強度に対する陽性検体の蛍光強度の比(陽性検体/陰性検体)を表4に示す。なお、各測定値は、4点のスポットの測定値の平均値である。
【0095】
比較例7 ブタクサ花粉アレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例11と同様の方法で実施した。測定結果を表4に示す。
【0096】
実施例12 ブタクサ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理時に界面活性剤としてSDSを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に終濃度0.02容量%となるように添加して用いたこと以外は、実施例11と同様の方法で実施した。測定結果を表4に示す。
【0097】
比較例8 ブタクサ花粉アレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例12と同様の方法で実施した。測定結果を表4に示す。
【0098】
【0099】
表4に示すとおり、ブタクサ花粉アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることも確認された。以上のとおり、ブタクサ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、ブタクサ花粉に対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。
【0100】
実施例13 トマトアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
トマトアレルゲン抽出物を、終濃度1mg/mLとなるよう20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解させ、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を終濃度0.003容量%となるように添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0101】
このアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法でトマトアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製した。
【0102】
このアレルゲン固定化担体を用いて、参考例3に記載の方法により、陽性検体および陰性検体の蛍光強度を測定し、アレルゲン特異的抗体を検出した。
【0103】
陽性検体として、PlasmaLab社よりトマトアレルギー陽性血漿を購入して用いた。陰性検体としては、株式会社エスアールエルのトマトアレルギー検査の結果陰性であることを確認した血漿を用いた。
【0104】
参考例3に記載の方法により、蛍光強度を測定した結果と陰性検体の蛍光強度に対する陽性検体の蛍光強度の比(陽性検体/陰性検体)を表5に示す。なお、各測定値は、4点のスポットの測定値の平均値である。
【0105】
比較例9 トマトアレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例13と同様の方法で実施した。
【0106】
実施例14 トマトアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理時に界面活性剤としてSDSを添加した。20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に終濃度0.02容量%となるようSDSを添加して用いたこと以外は、実施例13と同様の方法で実施した。
【0107】
比較例10 トマトアレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例14と同様の方法で実施した。
【0108】
【0109】
表5に示すとおり、トマトアレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることも確認された。以上のとおり、トマトアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、トマトに対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。
【0110】
実施例15 シラカンバ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
シラカンバ花粉アレルゲン抽出物を、終濃度1mg/mLとなるよう0.02容量%SDSを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解させ、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を終濃度0.003容量%となるように添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0111】
このアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法でシラカンバ花粉アレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製した。
【0112】
前記シラカンバ花粉アレルゲンの特異的アレルゲン固定化担体を用いて、参考例3に記載の方法により、陽性検体および陰性検体の蛍光強度を測定し、アレルゲン特異的抗体を検出した。
【0113】
陽性検体として、PlasmaLab社よりシラカンバ花粉アレルギー陽性血漿を購入して用いた。陰性検体としては、株式会社エスアールエルのシラカンバ花粉アレルギー検査の結果陰性であることを確認した血漿を用いた。
【0114】
参考例3に記載の方法により、蛍光強度を測定した結果と陰性検体の蛍光強度に対する陽性検体の蛍光強度の比(陽性検体/陰性検体)を表6に示す。なお、各測定値は、4点のスポットの測定値の平均値である。
【0115】
実施例16 シラカンバ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理条件を60℃にしたこと以外は、実施例15と同様の方法で実施した。測定結果を表6に示す。
【0116】
比較例11 シラカンバ花粉アレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例15と同様の方法で実施した。測定結果を表6に示す。
【0117】
【0118】
表6に示すとおり、シラカンバ花粉アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることも確認された。以上のとおり、シラカンバ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、シラカンバ花粉に対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。
【0119】
実施例17 ヒノキ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
ヒノキ花粉アレルゲン抽出物を、終濃度1mg/mLとなるよう20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解させ、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を終濃度0.003容量%となるよう添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0120】
このアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法でヒノキ花粉アレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製した。
【0121】
このアレルゲン固定化担体を用いて、参考例3に記載の方法により、陽性検体および陰性検体の蛍光強度を測定し、アレルゲン特異的抗体を検出した。
【0122】
陽性検体として、Abbaltis社よりヒノキ花粉アレルギー陽性血漿を購入して用いた。陰性検体としては、株式会社エスアールエルのヒノキ花粉アレルギー検査の結果陰性であることを確認した血漿を用いた。
【0123】
参考例3に記載の方法により、蛍光強度を測定した結果と陰性検体の蛍光強度に対する陽性検体の蛍光強度の比(陽性検体/陰性検体)を表7に示す。なお、各測定値は、4点のスポットの測定値の平均値である。
【0124】
実施例18 ヒノキ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理条件を60℃にしたこと以外は、実施例17と同様の方法で実施した。測定結果を表7に示す。
【0125】
比較例12 ヒノキ花粉アレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例17と同様の方法で実施した。測定結果を表7に示す。
【0126】
【0127】
表7に示すとおり、ヒノキ花粉アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることも確認された。以上のとおり、ヒノキ花粉アレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、ヒノキ花粉に対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。
【0128】
実施例19 バナナアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
バナナアレルゲン抽出物を、終濃度1mg/mLとなるようPBSで希釈し、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を終濃度0.003容量%となるように添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0129】
前記アレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法でバナナアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製した。
【0130】
前記バナナアレルゲンの特異的アレルゲン固定化担体を用いて、参考例3に記載の方法により、陽性検体および陰性検体の蛍光強度を測定し、アレルゲン特異的抗体を検出した。
【0131】
陽性検体として、PlasmaLab社よりバナナアレルギー陽性血漿を購入して用いた。陰性検体としては、株式会社エスアールエルのバナナアレルギー検査の結果陰性であることを確認した血漿を用いた。
【0132】
参考例3に記載の方法により、蛍光強度を測定した結果と陰性検体の蛍光強度に対する陽性検体の蛍光強度の比(陽性検体/陰性検体)を表8に示す。なお、各測定値は、4点のスポットの測定値の平均値である。
【0133】
比較例13 バナナアレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例19と同様の方法で実施した。測定結果を表8に示す。
【0134】
実施例20 バナナアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理時に界面活性剤としてSDSを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に終濃度0.02容量%となるように添加して用いたこと以外は、実施例19と同様の方法で実施した。測定結果を表8に示す。
【0135】
比較例14 バナナアレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例20と同様の方法で実施した。測定結果を表8に示す。
【0136】
【0137】
表8に示すとおり、バナナアレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることも確認された。以上のとおり、バナナアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、バナナに対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。
【0138】
実施例21 カニアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
カニアレルゲン抽出物を、終濃度1mg/mLとなるよう20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解させ、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を終濃度0.003容量%となるように添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0139】
このアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法でカニアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製した。
【0140】
このアレルゲン固定化担体を用いて、参考例3に記載の方法により、陽性検体および陰性検体の蛍光強度を測定し、アレルゲン特異的抗体を検出した。
【0141】
陽性検体として、アレルギークラス4のカニアレルギー陽性血漿と、アレルギークラス5のカニアレルギー陽性血漿をPlasmaLab社より入手して用いた。陰性検体としては、株式会社エスアールエルのカニアレルギー検査の結果陰性(アレルギークラス0)であることを確認した血漿を用いた。
【0142】
参考例3に記載の方法により、蛍光強度を測定した結果と陰性検体の蛍光強度に対する陽性検体の蛍光強度の比(陽性検体(クラス4)/陰性検体、陽性検体(クラス5)/陰性検体)、陽性検体同士の蛍光強度比(陽性検体(クラス5)/陽性検体(クラス4))を表9に示す。なお、各測定値は、4点のスポットの測定値の平均値である。
【0143】
実施例22 カニアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理条件を90℃にしたこと以外は、実施例21と同様の方法で実施した。測定結果を表9に示す。
【0144】
実施例23 カニアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理条件を80℃にしたこと以外は、実施例21と同様の方法で実施した。測定結果を表9に示す。
【0145】
比較例15 カニアレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例21と同様の方法で実施した。測定結果を表9に示す。
【0146】
【0147】
表9に示すとおり、カニレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることが確認された。以上のとおり、カニアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、カニに対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。
【0148】
また、アレルギークラス4の陽性検体に対するアレルギークラス5の陽性検体の蛍光強度比(陽性検体(クラス5)/陽性検体(クラス4))の値も、アレルゲン抽出物の加熱処理物を用いた場合は非加熱処理物を用いた場合と比べて大きくなることが示された。すなわち、アレルゲン抽出物を加熱処理して用いることにより、アレルギークラスを高精度に判別可能で、特異的IgE抗体の濃度も測定可能であることが示された。
【0149】
実施例24 カニアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理時に界面活性剤としてSDSを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0に終濃度0.02容量%となるように添加して用いたこと以外は、実施例21と同様の方法で実施した。測定結果を表10に示す。
【0150】
実施例25 カニアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理条件を90℃にしたこと以外は、実施例24と同様の方法で実施した。測定結果を表10に示す。
【0151】
実施例26 カニアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理条件を80℃にしたこと以外は、実施例24と同様の方法で実施した。測定結果を表10に示す。
【0152】
比較例16 カニアレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例24と同様の方法で実施した。測定結果を表10に示す。
【0153】
【0154】
表10に示すとおり、カニアレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることが確認された。以上のとおり、カニアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、カニに対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。
【0155】
また、アレルギークラス4の陽性検体に対するアレルギークラス5の陽性検体の蛍光強度比(陽性検体(クラス5)/陽性検体(クラス4))の値も、アレルゲン抽出物の加熱処理物を用いた場合は非加熱処理物を用いた場合と比べて大きくなることが示された。すなわち、アレルゲン抽出物を加熱処理して用いることにより、アレルギークラスを高精度に判別可能で、特異的IgE抗体の濃度も測定可能であることが示された。
【0156】
参考例4 担体に固定化されたアレルゲン量の測定
PMMA樹脂基板上にタンパク質が一定量固定された標準基板(単位面積当たりのタンパク質量0mg/μm2から9.5E-12mg/μm2間で7水準)を作成し、飛行時間型2次イオン質量分析法により、質量スペクトルを得た。このうち、タンパク質由来のピークとPMMA由来のピークの強度比から単位面積当たりに固定されたタンパク質量を算出する検量線を作成した。
【0157】
被験担体について、飛行時間型2次イオン質量分析を実施し、アレルゲンタンパク質由来のピークとPMMA由来のピークの強度比から、前記検量線を用いて単位面積当たりに固定化されたタンパク質量を算出した。
【0158】
測定条件
装置:TOF.SIMS 5(ION-TOF社製)
1次イオン:Bi3
++
2次イオン極性:正イオンのみ。
【0159】
実施例27 カニアレルゲン抽出物の加熱処理物を固定化した担体の、アレルゲン固定化量の測定
実施例1で作製したカニアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体に固定されたアレルゲン量を、参考例4に記載の方法で測定した。その結果を表11に示す。
【0160】
比較例17 カニアレルゲン抽出物の非加熱処理物を固定化した担体の、アレルゲン固定化量の測定
比較例1で作製したカニアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体に固定されたアレルゲン量を、参考例4に記載の方法で測定した。その結果を表11に示す。
【0161】
実施例28 カニアレルゲン抽出物の加熱処理物を固定化した担体の、アレルゲン固定化量の測定
実施例2で作製したカニアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体に固定されたアレルゲン量を、参考例4に記載の方法で測定した。その結果を表11に示す。
【0162】
比較例18 カニアレルゲン抽出物の非加熱処理物を固定化した担体の、アレルゲン固定化量の測定
比較例2で作製したカニアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体に固定されたアレルゲン量を、参考例4に記載の方法で測定した。その結果を表11に示す。
【0163】
【0164】
表11に示すとおり、カニアレルゲン抽出物を加熱処理することによって、担体に固定化されるアレルゲン量が増加することが示された。即ち、アレルゲン抽出物を加熱処理して固定化することで、非加熱処理物を用いる場合と比較して、より多くのアレルゲンが担体に固定されるため、アレルゲン特異的抗体をより高感度に検出できることができることがわかった。
【0165】
実施例29 加熱ニンニクアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン固定化量の測定
加熱ニンニクアレルゲン抽出物を、終濃度0.2mg/mLとなるようPBSで希釈し、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を終濃度0.003容量%となるように添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0166】
このアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法で加熱ニンニクアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製し、固定化されたアレルゲン量を、参考例4に記載の方法で測定した。その結果を表12に示す。
【0167】
比較例19 加熱ニンニクアレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン固定化量の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例29と同様の方法で、加熱ニンニクアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製し、固定化されたアレルゲン量を、参考例4に記載の方法で測定した。その結果を表12に示す。
【0168】
実施例30 加熱ニンニクアレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン固定化量の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理時に界面活性剤としてSDSを、添加した。20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に終濃度0.02容量%となるように添加して用いたこと以外は、実施例29と同様の方法で、加熱ニンニクアレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製し、固定化されたアレルゲン量を、参考例4に記載の方法で測定した。その結果を表12に示す。
【0169】
【0170】
表12に示すとおり、加熱ニンニクアレルゲン抽出物は、抽出段階で既に加熱処理がされているものである(特許文献1において開示されている火を通したニンニクに相当)が、本発明の方法によりこれをさらに加熱処理してから固定化することによって、担体に固定化されるアレルゲン量が増加することが示された。
【0171】
実施例31 大豆アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
大豆アレルゲン抽出物を、終濃度1mg/mLとなるよう20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解させ、溶液を100μLに調製した。続いて、溶液を95℃の加熱条件で10分間加熱処理を実施した。その後、Tween20(商標)を終濃度0.003容量%となるように添加して、アレルゲン抽出物の加熱処理物を得た。
【0172】
このアレルゲン抽出物の加熱処理物を用いて、参考例2に記載の方法で大豆アレルゲンの特異的抗体検出用のアレルゲン固定化担体を作製した。
【0173】
このアレルゲン固定化担体を用いて、参考例3に記載の方法により、陽性検体および陰性検体の蛍光強度を測定し、アレルゲン特異的抗体を検出した。
【0174】
陽性検体として、PlasmaLab社より大豆アレルギー陽性血漿を購入して用いた。陰性検体としては、株式会社エスアールエルの大豆アレルギー検査の結果陰性であることを確認した血漿を用いた。
【0175】
参考例3に記載の方法により、蛍光強度を測定した結果と陰性検体の蛍光強度に対する陽性検体の蛍光強度の比(陽性検体/陰性検体)を表13に示す。なお、各測定値は、4点のスポットの測定値の平均値である。
【0176】
比較例20 大豆アレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例31と同様の方法で実施した。測定結果を表13に示す。
【0177】
実施例32 大豆アレルゲン抽出物の加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理時に界面活性剤としてSDSを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に終濃度0.02容量%となるように添加して用いたこと以外は、実施例31と同様の方法で実施した。測定結果を表13に示す。
【0178】
比較例21 大豆アレルゲン抽出物の非加熱処理物の固定化担体の作製、アレルゲン特異的抗体の測定
アレルゲン抽出物の加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例32と同様の方法で実施した。測定結果を表13に示す。
【0179】
【0180】
表13に示すとおり、大豆アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陽性検体の蛍光強度が著しく上昇することがわかった。また、陰性検体については、アレルゲン抽出物の加熱処理の有無では大きな変化が見られなかった。さらに、アレルゲン抽出物を加熱処理することによって、陰性検体に対する陽性検体の蛍光強度比(陽性検体/陰性検体)が加熱処理しなかった場合に比べて大きくなることも確認された。以上のとおり、大豆アレルゲン抽出物の加熱処理物を用いることで、大豆に対する特異的IgE抗体を高い感度、高い特異度で検出できることが示された。