(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】アノードのための活性材料、アノード活性材料を生成する方法、負極フィルム、およびバッテリセル
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240627BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240627BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240627BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240627BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240627BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20240627BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240627BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240627BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240627BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/58
H01M4/36 E
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M4/134
H01M4/136
H01M10/052
H01M10/0568
H01M10/0569
(21)【出願番号】P 2020539095
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 US2019014323
(87)【国際公開番号】W WO2019144026
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-12
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522418587
【氏名又は名称】アンプリウス テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、カイ
(72)【発明者】
【氏名】ホンドゥアン、ホァン
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521620(JP,A)
【文献】特開2017-204374(JP,A)
【文献】特表2018-538674(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0089643(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134-4/62
H01M 10/052
H01M 10/0568-10/0569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素を含む領域と、
金属ケイ化物を含む領域と、
ケイ酸リチウムを含む領域と、
を含む複合ケイ酸ケイ化物粒子を含み、
各粒子が外側表面を有し、
前記複合ケイ酸ケイ化物粒子を通じて、ケイ素領域およびケイ酸リチウム領域と混合される金属ケイ化物領域が存在する、
リチウムイオンバッテリセルにおけるアノードのための活性材料。
【請求項2】
前記金属ケイ化物は、ケイ素と、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された金属とを含む、請求項1に記載の活性材料。
【請求項3】
前記ケイ酸リチウム領域の少なくともいくつかは、1または複数のドーパントを含む、請求項1に記載の活性材料。
【請求項4】
前記外側表面は、少なくともいくつかのケイ酸リチウム領域を含み、前記外側表面における前記少なくともいくつかのケイ酸リチウム領域は、前記外側表面にはないケイ酸リチウム領域より高いドーピング濃度を有する、請求項3に記載の活性材料。
【請求項5】
前記1または複数のドーパントは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の活性材料。
【請求項6】
前記外側表面の少なくとも一部は、金属ケイ化物領域を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の活性材料。
【請求項7】
前記複合ケイ酸ケイ化物粒子はさらに、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1または複数のドーパントを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の活性材料。
【請求項8】
前記複合ケイ酸ケイ化物粒子は、10:1-25:1の酸素:金属のモル比を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の活性材料。
【請求項9】
a)SiOxを含む粒子を提供する段階と、
b)金属塩および還元剤を前記粒子に加えて、第1混合物を形成する段階と、
c)不活性雰囲気で第1混合物をアニーリングする段階と、
d)リチウム種を含む有機液体を前記粒子に加えて、第2混合物を形成する段階と、
e)不活性雰囲気で前記粒子をアニーリングして、ケイ素領域、ケイ酸リチウム領域、および金属ケイ化物領域を含む粒子を形成する段階と、
を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の活性材料を生成する方法。
【請求項10】
前記第1混合物は、0.1時間から20時間の間、500℃と1000℃の間の温度でアニーリングされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2混合物は、0.1時間から48時間の間、500℃と1200℃の間の温度でアニーリングされる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属塩は、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
段階d)において、前記リチウム種は、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、炭酸リチウムおよびリチウムアルコキシドからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
段階d)において、前記リチウム種はリチウム金属粒子である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
段階d)において、前記リチウム種は、テトラヒドロフランおよび多環芳香族炭化水素によるリチウム金属の溶液である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第1混合物にドーパントを加える段階をさらに含み、前記ドーパントは、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の活性材料の複合ケイ酸ケイ化物粒子と、
黒鉛粒子と、
バインダとの混合物を含む、
負極フィルム。
【請求項18】
前記負極フィルムは、電子導電性粒子をさらに含む、請求項
17に記載の負極フィルム。
【請求項19】
前記負極フィルムと電子的に通信する集電体をさらに含む、請求項
17または
18に記載の負極フィルム。
【請求項20】
請求項1に記載の活性材料の複合ケイ酸ケイ化物粒子、黒鉛粒子、バインダ、必要に応じて集電体、および電解質の混合物を含む負極と、
正極活性材料粒子、電子導電性粒子、必要に応じて集電体、および電解質を含む正極と、
正極および負極の間にあり、前記電解質を含むセパレータ領域と、
を含む、バッテリセル。
【請求項21】
前記電解質は、炭酸プロピレン(PC)、エチレンカーボネート(EC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン(DOL)、ヒドロフルオロエーテル(HFE)、およびテトラヒドロフラン(THF)に溶解された、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiCF3SO3
からなる群から選択される、請求項2
0に記載のバッテリセル。
【請求項22】
前記正極活性材料粒子は、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケル酸リチウム(LNO)、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC)、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸リチウムコバルト(LCP)、およびリン酸リチウムバナジウム(LVP)からなる群から選択される、請求項2
0または2
1に記載のバッテリセル。
【請求項23】
前記ケイ酸リチウム領域の少なくともいくつかは、1または複数のドーパントを含み、
前記1または複数のドーパントは、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の活性材料。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2018年1月19日に出願された、米国仮特許出願第62/619,711号、および米国特許出願第16/250,635号の優先権の利益を請求し、それらは全体として、およびすべての目的のために、本明細書に参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、リチウムベースのバッテリセル用のアノード活性材料に関し、より具体的には、リチウムイオンバッテリセルに用いられる場合に、非常に小さい容量損失を有するケイ素酸化物活性材料に関する。
【0003】
ケイ素およびケイ素酸化物の両方を含むケイ素酸化物ベースの粒子は、それらの高い容量および良好なサイクル安定性が理由で、高エネルギーアノード材料としてはるかに明るい見通しを提示する。しかし、そのような材料は大きな問題点を有する。すなわち、それらは第1セルサイクルにおいて大きい容量損失を有する。バッテリセルにおける、そのようなケイ素酸化物ベースの粒子の第1リチオ化の最中に、顕著な量のケイ素酸化物が、ケイ酸リチウムを形成するように不可逆的に反応し、第1セルサイクルにおいて低いクーロン効率と、セルに関する全体的に低減した容量をもたらす。
【0004】
ケイ素酸化物ベースの粒子において、いくらかのケイ素酸化物は、リチウム種と共にそのような粒子をアニーリングすることによって、バッテリアノードに用いられる前に、ケイ酸リチウムに変換され得ることが示されている。しかし、そのような変換は多くの場合、ケイ素の少なくともいくらかの結晶化をもたらし、そのサイクル寿命を顕著に低減させる。より重要には、セルアノードの製造中、スラリー処理および電極流延において幅広く用いられる水は、ケイ酸リチウムからリチウムイオンを浸出することがある。従って、処理中、ケイ素酸化物ベースの粒子内に導入されたリチウムの多くは、ケイ酸リチウム相から、特にそのような粒子の表面の近くから、水内へと浸出して、バッテリを組み立て得る前でさえも、アノードへと失われる。更に、リチウムイオンの水内への浸出は、スラリーのpHを上昇させ、それは次にケイ素をエッチングし、アノードの特定の容量を減少させる。ケイ素がエッチングされて離れるので、より多くのケイ酸リチウムが暴露され、より多くの浸出が起こり、より多くのケイ素エッチングさえも、もたらす。この現象は、特に、長サイクル寿命のアノード材料として有用であるナノサイズの粒子であるケイ素酸化物ベースの粒子において、より目立つ。
【0005】
必要とされることは、ケイ素酸化物ベースの粒子を、その非結晶状態を維持すると同時に、初期容量損失を最小化して、バッテリセルアノードに用いられる場合の長サイクル寿命を保持すべく、変化させる方法である。任意のそのような修正が、標準的なバッテリセル製造および組立て技術と両立するならば、特に有用であろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一実施形態において、リチウムイオンバッテリセルにおけるアノードのための活性材料が開示される。活性材料は、ケイ素を含む領域、金属ケイ化物を含む領域、およびケイ酸リチウムを含む領域を含む粒子を含む。1つの構成において、金属ケイ化物領域はケイ素と、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された金属とを含む。いくつかの実施形態において、粒子はドーパントを含む。ドーパントは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびそれらの組み合わせのうち任意のものであってもよい。1つの構成において、ケイ酸リチウム領域の少なくともいくらかは、1または複数のドーパントを含む。粒子の表面におけるケイ酸リチウム領域の少なくともいくらかは、粒子のより深い内側であるケイ酸リチウム領域より高いドーピング濃度を有してもよい。1つの構成において、粒子の外側表面の少なくとも一部に金属ケイ化物領域が存在する。1つの構成において、外側表面はケイ素領域を含まない。
【0007】
本発明の別の実施形態において、アノード活性材料を生成する方法は、SiOxを含む粒子を提供する段階と、粒子に金属塩および還元剤を加える段階と、不活性雰囲気で、0.1時間から20時間の間、500℃と1000℃の間の温度で第1アニーリングをする段階と、リチウム種を含む有機液体に粒子を加える段階と、不活性雰囲気で、0.1時間から48時間の間、500℃と1200℃の間の温度で第2混合物の第2アニーリングをして、ケイ素領域、ケイ酸リチウム領域、および金属ケイ化物領域を含む粒子を形成する段階と、を含む。金属塩は、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、およびそれらの組み合わせのうち任意のものを含んでもよい。リチウム種は、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、炭酸リチウムおよびリチウムアルコキシドのうち任意のものを含んでもよい。1つの構成において、リチウム種はリチウム金属粒子である。1つの構成において、リチウム種は、テトラヒドロフランおよび多環芳香族炭化水素によるリチウム金属の溶液である。
【0008】
本発明の別の実施形態は、アノード活性材料を生成する方法は、SiおよびSiOxを含む第1の粒子を提供する段階と、1または複数のドーパントおよび水と一緒に粒子を混合する段階と、ドープされた第1の粒子を形成するようにアニーリングする段階と、1または複数のLi種を提供する段階と、リチウム種を含む有機液体を第1の粒子に加える段階と、不活性雰囲気で0.1時間から48時間の間、500℃と1200℃との間の温度でアニーリングして、ケイ素領域およびケイ酸リチウム領域を含むドープされた粒子を形成する段階とを含む。ドーパントは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびそれらの組み合わせのうち任意のものを含んでもよい。
【0009】
1つの構成において、第1アニーリングは、空気または不活性ガスにおいて、0.1時間から20時間の間、500℃と1000℃の間の温度でアニーリングすることを伴う。1つの構成において、リチウム種は、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、炭酸リチウムおよびリチウムアルコキシドのうち任意のものであり、第1アニーリングは、空気または不活性ガスにおいて、0.1時間から48時間の間、500℃と1200℃の間の温度でアニーリングすることを伴う。1つの構成において、リチウム種はリチウム金属粒子を含み、第1アニーリングは、不活性ガスにおいて、0.1時間から48時間の間、500℃と1200℃の間の温度でアニーリングすることを含む。1つの構成において、リチウム種はテトラヒドロフランおよび多環芳香族炭化水素におけるリチウム金属の溶液であり、第1アニーリングは、不活性ガスにおいて、0.1時間から48時間の間、500℃と1200℃の間の温度でアニーリングすることを伴う。
【0010】
本発明の別の実施形態において、負極フィルムが提供される。負極フィルムは、本明細書に説明される任意の活性材料、黒鉛粒子、およびバインダを含む。いくつかの構成において、負極フィルムはまた、電子導電性のある粒子を含む。1つの構成において、負極フィルムと電子的に通信する集電体が存在する。
【0011】
本発明の別の実施形態において、バッテリセルが提供される。バッテリセルは、上で説明されたような負極フィルムと、正極活性材料粒子、電子導電性粒子、および必要に応じて集電体を含む正極と、正極および負極の間のセパレータ領域とを含む。負極フィルム、正極およびセパレータにおいて含まれる、電解質もまた存在する。
【0012】
電解質は、炭酸プロピレン(PC)、エチレンカーボネート(EC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン(DOL)、テトラヒドロフラン(THF)、ヒドロフルオロエーテル(HFE)、およびそれらの組み合わせに溶解する、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiCF3SO3などのうち任意のものであってもよい。
【0013】
正極活性材料粒子は、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケル酸リチウム(LNO)、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC)、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸リチウムコバルト(LCP)、リン酸リチウムバナジウム(LVP)のうち任意のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
前述の複数の態様およびその他の態様は、添付の図面と共に読まれた場合に、例示的な実施形態の以下の説明から当業者によって容易に認識されるであろう。
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、ケイ素酸化物ベースの粒子の概略断面図である。
【0016】
【
図2】本発明の一実施形態に係る、ケイ酸リチウム粒子を形成する段階を示すフロー図である。
【0017】
【
図3】本発明の一実施形態に係る、ケイ素領域およびケイ酸リチウム領域を含む複合ケイ酸リチウム粒子の概略断面図である。
【0018】
【
図4】本発明の一実施形態に係る、複合ケイ酸ケイ化物粒子を形成する段階を示すフロー図である。
【0019】
【
図5】本発明の一実施形態に係る、複合ケイ酸ケイ化物粒子の概略断面図である。
【0020】
【
図6】本発明の一実施形態に係る、負極の概略断面図である。
【0021】
【
図7】本発明の一実施形態に係る、バッテリセルの概略断面図である。
【0022】
【
図8】サイクルの関数としてバッテリセル容量を示す、プロットである。
【0023】
【
図9】銅およびアルミニウム粒子の割合の関数として、発生する気体を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の複数の実施形態は、リチウムイオンバッテリセルの文脈で例示される。前述の要件は、本明細書で説明されたような本発明の実施形態における、材料および処理によって満たされる。
【0025】
本明細書に開示されたすべての範囲は、他に別段に具体的に述べられない限り、中に包摂されるすべての範囲を含むことを意図する。本明細書に用いられるように、「中に包摂される任意の範囲」は、述べられた範囲内にある任意の範囲を意味する。
【0026】
本明細書で用いられるように、用語「ケイ酸リチウム」は、化学式Li2O・zSiO2によって説明され得、ここで、zは1/4、1/3、1/2、2/3、1、2および3であってよい。ケイ酸リチウムは、多くの場合、異なるx値をとる様々な種を含むことが理解されるべきである。
【0027】
添え字「x」「y」「a」および「b」は、化合物の構成要素のモル比を示す、0より大きい数である。
【表1】
【0028】
本明細書で説明されるように、ケイ素酸化物ベースの粒子は、ケイ素領域とケイ素酸化物領域の両方を含む粒子である。そのようなケイ素酸化物ベースの粒子は、ケイ素領域およびケイ酸リチウム領域の両方を含む複合ケイ酸ケイ素粒子を形成するように、任意の数のリチウム種による処理によってプレリチオ化され得る。ケイ素酸化物ベースの粒子は、複合ケイ化物ケイ素酸化物ベースの粒子を形成するように、また、他の金属によって処理され得、そこにはケイ素領域、ケイ素酸化物領域、および金属ケイ化物領域が存在する。ケイ素酸化物ベースの粒子は、また、ケイ素領域、金属ケイ化物領域、およびケイ酸リチウム領域を含む、複合ケイ酸ケイ化物粒子を形成するように処理され得る。これらの粒子は、下により詳細に説明される。
【0029】
本発明の一実施形態において、ケイ素酸化物ベースの粒子は、多価ドーピング要素によってドープされ、次に、任意の数のリチウム種による処理によってプレリチオ化され、ドープされた複合ケイ酸リチウム粒子を形成する。材料の高い容量および良好なサイクル効率を保持し、リチウムイオンバッテリセルのアノードにおける活性材料として用いられる場合の第1のサイクルの容量損失を相殺しながら、含水媒体におけるケイ酸リチウム相の安定性を保証する(リチウムの浸出を防止する)ように、そのような処理が示されている。
【0030】
本発明の一実施形態において、ケイ素酸化物ベースの粒子は金属によって昇温し、粒子の表面のケイ素の少なくとも一部は金属ケイ化物に変化し、次に、任意の数のリチウム種による処理によってプレリチオ化され、複合ケイ酸ケイ化物粒子を形成する。ケイ化物を形成するように用いられ得る金属は、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る、ケイ素酸化物ベースの粒子100の概略断面図である。粒子100は、ケイ素酸化物(SiO
x)領域120(ドットの領域)およびケイ素領域140(ストライプの領域)を有する。粒子100は、
図1では球状として示されるものの、それは他の形状を有してもよい。粒子100は、明確に画定された領域120、140を有するように示されるものの、領域はいかなる任意の形状を有してもよいことが、理解されるべきである。1つの構成において、ケイ素酸化物(SiOx)領域120およびケイ素領域140は、全く明確に画定されてはおらず、粒子100は、ケイ素酸化物とケイ素との固溶体または純度の高い混合物として説明され得る。本発明の一実施形態において、粒子100は、0.1μmから100μmの範囲である平均直径を有する、ほぼ等軸晶である。1つの構成において、ケイ素酸化物領域120は、粒子のうち1重量%から99重量%を占め、ケイ素領域140は、粒子の残りの99重量%から1重量%を占める。ケイ素酸化物ベースの粒子100を製造する際に用いられた条件に応じて、ケイ素酸化物領域120およびケイ素領域140のサイズは、1nmより小さい(非結晶)ものから、100nm程度(高度に結晶化された)ものまでの範囲をとり得る。
【0032】
本発明の一実施形態において、ケイ素酸化物ベースの粒子を複合ケイ酸ケイ素粒子に変換する方法が、
図2のフロー図に示される。段階210において、
図1に説明されるものなどのケイ素酸化物ベースの粒子が提供される。段階220において、リチウムを含む溶液が、不活性雰囲気においてケイ素酸化物ベースの粒子に加えられる。溶液は、リチウム源からケイ素酸化物ベースの粒子にリチウムを導くための媒体として機能してよい。溶液におけるリチウム種は、水素化リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、炭酸リチウム、リチウムアルコキシド、またはリチウム金属のうち任意のものであってよい。溶液は、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテルに溶けた多環芳香族炭化水素を含んでもよい。有用な多環芳香族炭化水素の例は、ナフタレン、ジフェニル、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、およびピレンを含むが、それらに限定されない。溶液に用いられ得る他の有機溶媒は、ジエチルエーテル(DEE)、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、およびメチルtertブチルエーテルを含むが、それらに限定されない。段階230において、有機溶媒が溶液から除去される。段階240において、ケイ素酸化物ベースの粒子が、0.1時間から48時間の間、400℃と1000℃の間の温度でアニーリングされて、複合ケイ酸ケイ素粒子を形成する。リチウム金属および水素化リチウムなどのリチウム種において、段階240のアニーリングは、アルゴンなどの不活性ガスにおいて行われる。
【0033】
任意の具体的な理論に束縛されるものではないが、リチウムがひとたびケイ素酸化物ベースの粒子内に導入されると、粒子内の原子の構成は、もはや同質ではなくなるかもしれない。リチウムはケイ素酸化物と結合して、ケイ酸リチウムを形成し、反応後に残存する任意の元素Siは、複合ケイ酸ケイ素粒子に更なるケイ素領域を形成するように利用可能である。複合ケイ酸ケイ素粒子の領域のサイズは、ケイ素酸化物ベースの粒子の領域サイズと類似してもよい。より高い処理温度により、結晶化度がより高いケイ素およびケイ酸リチウム両方の領域がより大きく形成され得るが、これはバッテリサイクル寿命に悪影響となり得る。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係る、複合ケイ酸ケイ素粒子300の概略断面図である。粒子300は、ケイ酸リチウム領域320およびケイ素領域340を有する。粒子300は
図3に球状として示されるものの、それは他の形状を有してもよい。粒子300は、明確に画定された領域320、340を有するとして示されるものの、領域はいかなる任意の形状を有してもよいことが、理解されるべきである。本発明の一実施形態において、粒子300は、0.1μmから300μmの範囲である平均直径を有する、ほぼ等軸晶である。1つの構成において、ケイ酸リチウム領域320は、粒子のうち1重量%から99重量%を占め、ケイ素領域340は、粒子の残りの99重量%から1重量%を占める。複合ケイ酸ケイ素粒子300を製造する際に用いられた条件に応じて、ケイ酸リチウム領域320およびケイ素領域340のサイズは、1nmより小さい(非結晶)ものから、100nm程度(高度に結晶化された)ものまでの範囲をとり得る。
【0035】
上で説明されるように、ケイ酸リチウムが水に暴露されるとき、リチウムイオンはケイ酸リチウムから浸出して、リチウムイオンを水のプロトンと交換して、水のpHを増加させる。リチウムイオンの、ケイ酸リチウム領域からのそのような浸出は、上で説明されるように、複合ケイ酸ケイ素粒子が水と混合された場合に起こり得る。水のpHの増大は、ケイ素領域の食刻を促進し、粒子におけるケイ素活性材料の量を低減させる。更に、ケイ素領域が食刻されるにつれて、更なるケイ酸リチウム領域が水に暴露され、水のpHはより一層高くなり、ケイ素領域の食刻が加速する。そのようなチェーン反応は、全粒子が破壊されるまで継続し得る。
【0036】
この問題を緩和する2つのやり方があるかもしれない。1)ケイ酸リチウムからのリチウムイオンの浸出を遅延させる。2)ケイ素の食刻を遅延させる。ケイ酸リチウムの浸出の遅延
【0037】
本発明の一実施形態において、複合ケイ酸ケイ素粒子におけるケイ酸リチウムが、水へのケイ酸リチウムの浸出可能性を減らすようにドープされる。ケイ素酸化物ベースの粒子が、ドーパントと組み合わされ、アニーリングされる。有用なドーパントの例は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびそれらの組み合わせの塩を含むが、それらに限定されない。1つの構成において、ケイ素酸化物ベースの粒子およびドーパントは、空気またはアルゴンなどの不活性ガスにおいて、0.1時間から20時間の間、500℃から1000℃の間の温度でアニーリングされる。ケイ素酸化物ベースの粒子がドープされた後、それらは、リチウム液でコーミングし、次に再びアニーリングすることによって、複合ケイ酸ケイ素粒子に変換され得る。1つの構成において、そのようなアニーリングは、空気、またはアルゴンなどの不活性ガスにおいて、0.1時間から20時間の間、500℃から1000℃の間の温度で行われる。
【0038】
本発明の別の実施形態において、ケイ素酸化物ベースの粒子の、複合ケイ酸リチウム粒子への変換と、複合ケイ酸リチウム粒子のドーピングが、1度のアニーリングによって行われ得る。ケイ素酸化物ベースの粒子は、リチウム液とドーパントの両方と組み合わされ、リチウム液における有機溶媒が除去され、混合物はアニーリングされる。1つの構成において、アニーリングは、アルゴンなどの不活性ガスにおいて、0.1時間から48時間の間、500℃から1000℃の間の温度で行われる。リチウム金属および水素化リチウムを除くすべてのリチウム種において、アニーリングは、不活性雰囲気の代わりに空気において行われてもよい。 ケイ素の食刻の防止
【0039】
本発明の別の実施形態において、ケイ素酸化物ベースの粒子の表面の少なくとも一部が金属ケイ化物領域に変換され、次に、粒子はリチオ化されて、水に暴露される前に、複合ケイ酸ケイ化物粒子(金属ケイ化物領域、ケイ素領域、およびケイ酸リチウム領域を含む)を形成する。1つの構成において、複合ケイ酸ケイ化物粒子を通じて、ケイ素領域およびケイ酸リチウム領域と混合される金属ケイ化物領域が存在する。そのような複合ケイ酸ケイ化物粒子が水に暴露されるとき、リチウムイオンは、なおもケイ酸リチウム領域から浸出するかもしれず、水のpHを上昇させるかもしれない。しかし、ケイ素と異なり、様々な金属ケイ化物は、食刻に非常に抵抗性がある。複合ケイ酸ケイ化物粒子の表面の少なくとも一部上の金属ケイ化物によって、そのような複合ケイ酸ケイ化物粒子は少々劣化するのみであり、たとえあったとしても、水での処理中において、バッテリセルにおけるアノード活性材料として用いられ得る。
【0040】
本発明の一実施形態において、ケイ素酸化物ベースの粒子を複合ケイ酸ケイ化物粒子に変換する方法が、
図4のフロー図に示される。段階410、
図1に説明されるものなどの、ケイ素酸化物ベースの粒子が提供される。段階420において、金属塩および炭素の前駆体が、ケイ素酸化物ベースの粒子と均一に混合される。用いられ得る金属塩の例は、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、およびそれらの組み合わせの、硝酸、酢酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸、または炭酸塩を含むが、それらに限定されない。段階430において、ケイ素酸化物ベースの粒子、金属塩および炭素前駆体(糖)が、アルゴンまたは窒素などの不活性ガスにおいて、0.1時間から48時間の間、500℃から1000℃の間の温度でアニーリングされ、ケイ化物ケイ素酸化物ベースの粒子、すなわち、金属ケイ化物領域、ケイ素領域、およびケイ素酸化物領域を有する粒子を形成する。段階440において、上で説明されたように、リチウムを含む溶液が、不活性雰囲気においてケイ化物ケイ素酸化物ベースの粒子に加えられる。溶液に関しての詳細は、
図2を参照して上に含まれる。段階450において、有機溶媒が除去される。段階460において、ケイ化物ケイ素酸化物ベースの粒子が、0.1時間から48時間の間、400℃と1000℃の間の温度でアニーリングされて、複合ケイ酸ケイ化物粒子を形成する。リチウム金属および水素化リチウムなどのリチウム種において、段階460のアニーリングは、アルゴンなどの不活性ガスにおいて行われる。
【0041】
図4の反応は、次に明示され得る。SiO+M→MSi
x+Si+SiO
2Li+SiO
2→Li
2O・zSiO
2
【0042】
図5は、本発明の一実施形態に係る、複合ケイ酸ケイ化物粒子500の概略断面図である。粒子500は、ケイ酸リチウム領域520、ケイ素領域540、および金属ケイ化物領域560を有する。粒子500は
図5に球状として示されるものの、それは他の形状を有してもよい。粒子500は、明確に画定された領域520、540、560を有するとして示されるものの、領域はいかなる任意の形状を有してもよいことが、理解されるべきである。本発明の一実施形態において、粒子500は、0.1μmから500μmの範囲である平均直径を有する、ほぼ等軸晶である。1つの構成において、ケイ酸リチウム領域520は、粒子のうち1重量%から99重量%を占め、ケイ素領域540およびケイ化物領域560は一緒に、粒子の残りの99重量%から1重量%を占める。1つの構成において、ケイ酸リチウム領域520は1nmから50nmまでのサイズの範囲にある。1つの構成において、ケイ素領域540は、1nmから50nmまでのサイズの範囲にある。いくつかの実施形態において、ケイ素領域540は、15nmまたはより小さい。領域サイズは、TEMまたは他の造影技術を用いて観察されてもよい。ケイ素領域は、より小さいサイズの複数のケイ素粒子を含むことに留意されるべきである。1つの構成において、金属ケイ化物領域560は、粒子500を通って延在する。1つの構成において(図示せず)、金属ケイ化物領域560は主に、粒子500の表面の近くにあり、水処理中に、ケイ素の食刻を防止するのに有用な一種の網を形成する。
【0043】
本発明の別の実施形態において、複合ケイ酸ケイ化物粒子は、複合ケイ酸ケイ素粒子に関して上に説明したように、ケイ酸リチウム領域をドーピングすべくさらなる処理を経る。
【0044】
いくつかの実施形態において、複合ケイ酸ケイ化物粒子は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびそれらの組み合わせから選択されるドーパントを含む。いくつかの実施形態において、ドーパントは、アルミニウム、マグネシウム、およびジルコニウムのうち1つである。ドーパントは、ケイ酸リチウム領域内、またはそうでなければ、粒子内にあってよい。いくつかの実施形態において、ドーパントは、主に粒子の表面の近くもあってもよく、または、粒子を通じて分配されてもよい。いくつかの実施形態において、ドーパントは、金属ケイ化物領域を有する粒子の表面近くに、主に粒子を通じて均一的に分配されてもよい。
【0045】
様々な実施形態によれば、粒子は、以下の属性の1または複数によって特徴づけられてもよい。第1に、上で説明されたように、いくつかの実施形態において、粒子は、金属ケイ化物(MaSib)とケイ酸リチウム(Li2O・xSiO2)の両方を含むことによって特徴づけられる。いくつかの実施形態において、金属は、銅、マンガン、およびニッケルのうち1または複数である。いくつかの実施形態において、粒子は酸素:金属(O:M)のモル比10:1-25:1、例えば17:1を有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、粒子はさらに、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびそれらの組み合わせから選択されるドーパントを含む。いくつかの実施形態において、ドーパントは、アルミニウム、マグネシウム、およびジルコニウムのうち1つである。粒子は、約1:2から5:1の間のM:ドーパントモル比を有することを特徴としてもよい。いくつかの実施形態において、比は約2:1である。
【0047】
上で説明されるように、いくつかの実施形態において、ケイ素酸化物ベースの粒子が金属塩と混合されて、必要に応じて含まれるドーパントと共に、金属ケイ化物を形成する。いくつかの実施形態において、M:ドーパント:SiOの相対的な量は、M(例えば、Cu)が1-20%、ドーパント(例えば、Al)が0-10%、残りはSiOであるように特徴づけられる。いくつかの実施形態において、Mは2-10%、ドーパントは0-5%、残りはSiOである。いくつかの実施形態において、Mは約2%でドーパントは約1%である。バッテリセル
【0048】
図6は、本発明の一実施形態に係る、負極アセンブリ600を示す概略断面図である。負極アセンブリ600は、負極610および集電体620を有する。負極610は、上の
図3および5を参照して説明されるものなどの、電解質630と一緒に混合される、負極活性材料粒子615を含む。いくつかの構成において、電極600はまた、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、または導電性黒鉛などの、小さい、電子導電性の薬剤(小さい灰色のドットで示されるような)を含む。1つの構成において、負極活性材料粒子615は、スチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(CMC/SBR)などのバインダ、または、ポリアクリル酸またはアルギン酸ナトリウムなどの他の先進的なバインダ(図示せず)によって、一緒に把持され、電解質は、負極活性材料粒子615とバインダとの間の空間を埋める。負極集電体は、金属フィルムであってもよい。
【0049】
図7は、本発明の一実施形態に係る、新規な負極710を有するバッテリセル700の概略断面図である。負極710の、あり得る構成および材料が、
図6において上で説明されている。セル700はまた、正極760を有する。負極710と正極760の間に、セパレータ領域770が存在する。いくつかの構成において、正極760に隣接する集電体780、および/もしくは、負極710に隣接する集電体720が存在する。
【0050】
技術分野において知られているように、正極760は一般に正極活性材料粒子、バインダ、および電解質を含み、また、カーボンブラックなどの小さい電子導電性粒子を含んでもよい。1つの構成において、正極活性材料粒子は、PVDFなどのバインダによって一緒に把持され、電解質は、正極活性材料粒子とバインダとの間の空間を埋める。正極活性材料の例は、コバルト酸リチウム、酸化ニッケルコバルトアルミニウム、酸化ニッケルコバルトマンガン、および、当業者に知られている他の物質を含むが、それに限定されない。
【0051】
複数のリチウムを含む化合物のうち任意のものが、本発明の複数の実施形態における正極活性材料として用いられてもよい。一実施形態において、正極活性材料は、LiMO2の形であってもよく、ここで、Mは金属であり、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2である。コバルト酸リチウム(LiCoO2)は、小さなセルに一般的に用いられる材料であるが、また、最も高価なものの1つでもある。LiCoO2におけるコバルトは、部分的に、Sn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、またはCuと置換されてもよい。ニッケル酸リチウム(LiNiO2)は、LiCoO2よりも熱暴走を起こしにくいが、また高価である。マンガン酸リチウム(LiMnO2)は、通常の材料の群の中で最も安価であり、その三次元結晶構造がより多くの表面積を提供し、それにより、電極間により多くのイオンフラックスを可能とするので、相対的に高パワーである。リン酸鉄リチウム(LiFePO4)もまた、正極活性材料として現在商業的に用いられている。
【0052】
正極活性材料の他の例は、M'およびM''が異なる金属(例えば、Li(NiXMnY)O2、Li(Ni1/2Mn1/2)O2、Li(CrXMn1-X)O2、Li(AlXMn1-X)O2)であるLi(M'XM''Y)O2、Mが金属(例えば、Li(CoXNi1-X)O2およびLi(CoXFe1-X)O2)であるLi(CoXM1-X)O2、Li1-W(MnXNiYCoZ)O2(例えば、Li(CoXMnyNi(1-x-Y))O2、Li(Mn1/3Ni1/3Co1/3)O2、Li(Mn1/3Ni1/3Co1/3-xMgX)O2、Li(Mn0.4Ni0.4Co0.2)O2、Li(Mn0.1Ni0.1Co0.8)O2)、Li1-W(MnXNiXCo1-2X)O2、Li1-W(MnXNiYCoAlW)O2、Li1-W(NiXCoYAlZ)O2(例えば、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2)、Mが金属であるLi1-W(NiXCoYMZ)O2、Mが金属であるLi1-W(NiXMnYMZ)O2、Li(NiX-YMnYCr2-X)O4、M'およびM''が異なる金属(例えば、LiMn2-Y-ZNiYO4、LiMn2-Y-ZNiYLiZO4、LiMn1.5Ni0.5O4、LiNiCuO4、LiMn1-XAlXO4、LiNi0.5Ti0.5O4、Li1.05Al0.1Mn1.85O4-zFz、Li2MnO3)であるLiM'M''2O4、LiXVYOZ、例えば、LiV3O8、LiV2O5、およびLiV6O13を含む。正極活性材料の1つの群は、Mが金属であるLiMPO4として説明されてよい。リン酸鉄リチウム(LiFePO4)はこの群の1つの例である。他の例は、M'およびM''が異なる金属であるLiMXM''1-XPO4、Mが金属(例えば、LiVOPO4Li3V2(PO4)3)であるLiFeXM1-XPO4、Mが鉄またはバナジウムなどの金属であるLiMPO4を含む。さらに、正極は、V6O13、V2O5、V3O8、MoO3、TiS2、WO2、MoO2、およびRuO2など、充電および放電容量を向上させるための二次的活性材料を含み得る。いくつかの構成において、正極活性材料は、LiNiVO2を含む。
【0053】
セパレータ領域770は、正極760と負極710との間のイオン連通を提供する任意電解質を含んでもよい。様々な構成において、セパレータ領域770は、負極710および正極760と同じ電解質を含む。
【0054】
いくつかのリチウムイオンセルに好適な非水系溶媒のいくつかの例としては、以下の環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)、および炭酸ビニルエチレン(VEC))、ラクトン(例えば、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)、ガンマ-バレロラクトン(GVL)、およびアルファ-アンゲリカラクトン(AGL))、直鎖カーボネート(例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸メチルブチル(NBC)および炭酸ジブチル(DBC))、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2‐メチルテトラヒドロフラン、1,4‐ジオキサン、1,2‐ジメトキシエタン(DME)、1,2‐ジエトキシエタン、および1,2‐ジブトキシエタン)、ニトリル(例えば、アセトニトリルおよびアジポニトリル)、直鎖エステル(例えば、メチルプロピオネート、メチルピバレート、ブチルピバレート、およびオクチルピバレート)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、有機リン酸塩(例えば、リン酸トリメチルおよびリン酸トリオクチル)、S=O基を含有する有機化合物(例えば、ジメチルスルホンおよびジビニルスルホン)、ならびにこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、化学式R-O-R'を有するフッ化エーテル溶媒が用いられ、Rおよびは独立したCxH2x+1-yFyであり、xおよびyは整数である。
【0055】
非水系液体溶媒が、組み合わせて使用されてもよい。組み合わせの例としては、環状カーボネート・直鎖カーボネート、環状カーボネート・ラクトン、環状カーボネート・ラクトン・直鎖カーボネート、環状カーボネート・直鎖カーボネート・ラクトン、環状カーボネート・直鎖カーボネートエーテル、および環状カーボネート・直鎖カーボネート・直鎖エステルの組み合わせを含む。一実施形態において、環状カーボネートは直鎖エステルと組み合わされてもよい。更に、環状カーボネートは、ラクトンおよび直鎖エステルと組み合わされてもよい。特定の実施形態において、環状カーボネートと直鎖エステルとの体積比は約1:9から10:0であり、望ましくは2:8から7:3である。
【0056】
液体電解質に関する塩は、以下の1または複数を含んでもよい。LiPF6、LiBF4、LiCl4、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF3(イソ-C3Fl)3、LiPFs)イソ-C3F1)、環状アルキル基を有するリチウム塩(例えば、(CF2)2(SO2)2xLiおよび(CF2)3(SO2)2xLi)、およびそれらの組み合わせ。共通の組み合わせは、LiPF6およびLiBF4、LiPF6およびLiN(CF3SO2)2、LiBF4およびLiN(CF3SO2)2を含む。例
【0057】
以下の例は、本発明によるブロック共重合体電解質の合成、製造および性能特性に関連する詳細を提供する。以下は例示のみであり、本発明は、これらの例において明らかにされた詳細によって限定されないことが、理解されるべきである。
【0058】
1:1のSi:O比と、5μmの平均サイズを有していたケイ素酸化物ベースの粒子(50グラム)が、イオンを除去された500mLの水において、10重量%のCuに等しい酢酸銅および5重量%のスクロースと混合された。浮遊物は分散され、スプレードライヤを用いて乾燥され、前駆体を形成した。Cuおよびスクロースの均一な供給による生成物は捕集され、4時間アルゴン内でアニーリングされ、本質的にケイ化銅粒子を形成した。その後、材料は300mL無水テトラヒドロフランに分散された。ビフェニル(2グラム)が溶液内に加えられ、次に5グラムの研磨されたリチウム金属箔が、溶液内に加えられた。溶液は、すべてのリチウム金属が材料によって吸収されるまで、24時間の間、密閉容器内で撹拌された。溶媒が濾過された後、材料は乾燥され、2時間の間、600℃で、アルゴンのもとでアニーリングされ、バッテリセルアノードにおける活性材料として用いられる複合ケイ酸ケイ化物粒子を形成した。
【0059】
複合ケイ酸ケイ化物粒子は、9%の濃度で水ベースのスラリーと混合され、アノードを形成するように用いられた。スラリーはまた、1%のSBRおよび0.8%のCMC、並びに0.1%のカーボンナノチューブを含み、その残りは黒鉛であった。銅箔の方に向けられたスラリーのコーティングの後、アノードは乾燥され、バッテリセル組立てのために1.65g/ccでプレスされた。バッテリは、アノード、ポリエチレンベースのセパレータ、およびリチウムコバルト(LCO)カソードを含んでいた。3:7のEC:DMC溶液で1.2MのLiPF6を含む電解質が、実験前にバッテリセルに加えられた。
【0060】
比較のために、アノード活性材料において複合ケイ酸ケイ化物粒子に変換されなかったケイ素酸化物ベースの粒子を用いて、第2バッテリセルが用意された。ケイ素酸化物ベースの粒子は、1:1のSi:O比を有しており、上で説明されたように、複合ケイ酸ケイ化物粒子が形成されるのと同じやり方で、バッテリセルを形成するように用いられた。
【0061】
バッテリテストプログラムは、4.4Vへの充電で0.5Cのレート、一定電圧で0.05C、0.5Cのレートでの3Vへの放電を含んでいた。カソード重量(特定の容量)ごとに供給された特定の容量に対するサイクルインデックスは、セル性能のためのベンチマークとして用いられた。
図8は、複合ケイ酸ケイ化物粒子で作成されたアノード(A)と、ケイ素酸化物ベースの粒子で作成されたアノード(B)に関するテストの結果を示す。両方のアノードが、類似の減衰スロープを有するが、アノードAがはるかにより高い容量を有する。
【0062】
複合ケイ酸ケイ化物粒子は、上で説明されるような、様々な濃度の金属(Cu)およびドーパント(Al)を用いて形成された。具体的に、以下の濃度が、粒子を形成するように用いられた。Cuのみ:2,10,15,5Cu/Al:1/2.5,10/1,10/5,2/1,2/2,2/2.5,3/1.5,5/2,5/2.5
【0063】
濃度は、開始のSiO+Cu+Al混合物におけるSiOの残量のモルパーセンテージで与えられる。1gのそれぞれの粉末が、脱イオン化された水に60h浸漬された。浸漬後に測定された1atmでの気体の総体積が、
図9に測定されてプロットされた。理解され得るように、Alの存在は、顕著に気体の発生を低減させる。このことは重要である。すなわち、材料が水に暴露された後に気体を発生する場合、この材料を含むアノードのための含水スラリーが、多数のバブルを含み、泡にさえもなることがある。このことは、集電体上の活性材料の均一なコーティングを妨げることがある。
【0064】
本発明は、本明細書において、新規な複数の原理の適用、および必要とされるそのような複数の専用コンポーネントの構成および使用に関連する情報を当業者に提供するべく、相当詳細に説明されている。しかし、本発明は、異なる機器、材料、およびデバイスにより実行され得、本発明自体の範囲を逸脱することなく、機器および動作手順の両方に関する様々な修正が実現され得ることが理解されるべきである。