(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】半導体素子および装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240627BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240627BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240627BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20240627BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20240627BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240627BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20240627BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20240627BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20240627BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L29/80 L
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L21/28 301B
H01L29/50 J
H01L21/28 301R
H01L29/48 D
H01L29/48 M
H01L29/86 301D
H01L29/86 301F
H01L29/06 301M
(21)【出願番号】P 2020065401
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301041553
【氏名又は名称】株式会社パウデック
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壽朗
(72)【発明者】
【氏名】竹中 靖博
(72)【発明者】
【氏名】神谷 真央
(72)【発明者】
【氏名】篠田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】上村 俊也
(72)【発明者】
【氏名】河合 弘治
(72)【発明者】
【氏名】八木 修一
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092751(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0104064(US,A1)
【文献】特開2018-056379(JP,A)
【文献】特開2018-064108(JP,A)
【文献】特開2014-045154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0185930(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 21/337
H01L 21/28
H01L 29/417
H01L 29/47
H01L 29/872
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体層と、
前記第1半導体層より上層の第2半導体層と、
前記第2半導体層より上層の第3半導体層と、
前記第3半導体層より上層の第4半導体層と、
前記第2半導体層または前記第3半導体層の上のソース電極およびドレイン電極と、
前記第4半導体層の上のゲート電極と、
を有し、
前記第1半導体層と前記第2半導体層と前記第3半導体層と前記第4半導体層とは、
III 族窒化物半導体層であり、
前記第2半導体層のバンドギャップは、
前記第1半導体層および前記第3半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第1半導体層と前記第2半導体層と前記第3半導体層とは、
アンドープの半導体層であり、
前記第4半導体層は、
p型半導体層であり、
前記ゲート電極と前記ソース電極と前記ドレイン電極とのうちの少なくとも一つは、
コンタクト電極と配線電極とパッド電極とを有し、
前記配線電極は、
前記コンタクト電極と前記パッド電極とを連結し、
前記配線電極は、
弧状に湾曲する湾曲部を有
し、
前記第2半導体層または前記第3半導体層と前記ソース電極とが接触する領域をソース電極接触領域とし、前記第4半導体層とゲート電極とが接触する領域をゲート電極接触領域として、
前記ソース電極接触領域は、互いに間隔を空けて複数存在しており、
前記ゲート電極接触領域は、各前記ソース電極接触領域を囲む環状のパターンである、ことを含む半導体素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体素子において、
前記ゲート電極と前記ソース電極と前記ドレイン電極とのうちの少なくとも一つは、
複数のパッド電極を有すること
を含む半導体素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体素子において、
前記ゲート電極と前記ソース電極と前記ドレイン電極とは、
コンタクト電極と配線電極とパッド電極とを有し、
前記ゲート電極の前記配線電極
の上に絶縁層を有し、
前記絶縁層は、
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上の第2絶縁層と、
を有すること
を含む半導体素子。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体素子において、
前記第1絶縁層は、無機誘電体膜であり、
前記第2絶縁層は、有機誘電体膜であること
を含む半導体素子。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の半導体素子において、
前記第1半導体層と前記第2半導体層とは直接接触しており、
前記第1半導体層と前記第2半導体層とが接触する接触面の形状が、
長方形であること
を含む半導体素子。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の半導体素子を有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、半導体素子および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNに代表されるIII 族窒化物半導体は、高い絶縁破壊電界と高い融点とを備えている。そのため、III 族窒化物半導体は、GaAs系半導体に代わる、高出力、高周波、高温用の半導体デバイスの材料として期待されている。そのため、III 族窒化物半導体を用いるHEMT素子などが研究開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、分極接合により電子および正孔を同時に発生させる技術が開示されている(特許文献1の
図4等参照)。また、特許文献2には、GaN層、AlGaN層、GaN層、p型GaN層の順で形成する技術が開示されている(特許文献2の段落[0034])。これにより、p型GaN層の価電子帯の上端のエネルギーEvをフェルミ準位Efまで引き上げ、2次元ホールガスを発生させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-134607号公報
【文献】WO2011/162243
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体素子には、一般に優れた電気的特性が求められる。このような電気的特性として例えば、高い耐圧性、低いオン抵抗、短い応答時間、大電流に対する対応性、リーク電流の抑制、が挙げられる。
【0006】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、配線電極の周囲に強い電界が形成されることを抑制できる半導体素子および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層または第3半導体層の上のソース電極およびドレイン電極と、第4半導体層の上のゲート電極と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。ゲート電極とソース電極とドレイン電極とのうちの少なくとも一つは、コンタクト電極と配線電極とパッド電極とを有する。配線電極は、コンタクト電極とパッド電極とを連結する。配線電極は、弧状に湾曲する湾曲部を有する。第2半導体層または第3半導体層とソース電極とが接触する領域をソース電極接触領域とし、第4半導体層とゲート電極とが接触する領域をゲート電極接触領域として、ソース電極接触領域は、互いに間隔を空けて複数存在しており、ゲート電極接触領域は、各ソース電極接触領域を囲む環状のパターンである。
【0008】
この半導体素子においては、配線電極は、弧状に湾曲する湾曲部を有する。このため、高電圧が印加された場合であっても、湾曲部および湾曲部の周囲に強い電界が形成されることが抑制される。また、絶縁層内の内部応力も緩和される。
【発明の効果】
【0009】
本明細書では、少なくとも一つ以上の電気的特性に優れている半導体素子および装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態の半導体素子の上面図である。
【
図2】第1の実施形態の半導体素子の積層構造を示す図である。
【
図3】第1の実施形態の半導体素子の素子機能領域の電極の接触領域を示す図である。
【
図4】第1の実施形態の半導体素子のソースコンタクト電極およびドレインコンタクト電極の周辺の拡大図である。
【
図5】第1の実施形態の半導体素子のソース電極露出領域の周辺の断面構造を示す図(その1)である。
【
図6】第1の実施形態の半導体素子のドレイン電極露出領域の周辺の断面構造を示す図である。
【
図7】第1の実施形態の半導体素子のゲート電極露出領域の周辺の断面構造を示す図である。
【
図8】第1の実施形態の半導体素子のソース電極露出領域の周辺の断面構造を示す図(その2)である。
【
図9】第1の実施形態の半導体素子のソース電極接触領域およびドレイン電極接触領域と絶縁層との間の位置関係を示す図である。
【
図10】第1の実施形態の半導体素子のゲート電極の配線を示す図である。
【
図11】第1の実施形態の半導体素子のソース電極の配線を示す図である。
【
図12】第1の実施形態の半導体素子のソース電極およびドレイン電極の積層構造を示す図である。
【
図13】第1の実施形態の半導体素子のゲート電極の積層構造を示す図である。
【
図14】第1の実施形態の半導体素子の2次元電子ガスおよび2次元ホールガスを示す図である。
【
図15】第1の実施形態の半導体素子のバンド構造を示す図である。
【
図16】第1の実施形態の半導体素子のゲート電極に逆バイアスが印加された場合の電界を概念的に示す模式図である。
【
図17】第1の実施形態の半導体素子の製造方法を説明するための図(その1)である。
【
図18】第1の実施形態の半導体素子の製造方法を説明するための図(その2)である。
【
図19】第1の実施形態の半導体素子の製造方法を説明するための図(その3)である。
【
図20】第2の実施形態の半導体素子の上面図である。
【
図21】第3の実施形態の半導体素子の積層構造を示す図である。
【
図22】第4の実施形態の半導体素子のゲートパッド電極の周辺を示す図である。
【
図23】第4の実施形態の半導体素子のドレイン電極露出領域の周辺の断面構造を示す図である。
【
図24】第4の実施形態の変形例における半導体素子の上面図である。
【
図25】第4の実施形態の変形例における半導体素子におけるゲートパッド電極の周辺の拡大図である。
【
図26】第8の実施形態の半導体素子の積層構造を示す図である。
【
図27】第8の実施形態の半導体素子の電極形成領域を示す図である。
【
図28】第8の実施形態の変形例における半導体素子の電極形成領域を示す図である。
【
図29】第8の実施形態の変形例における半導体素子の積層構造を示す図(その1)である。
【
図30】第8の実施形態の変形例における半導体素子の積層構造を示す図(その2)である。
【
図31】第8の実施形態の変形例における半導体素子の積層構造を示す図(その3)である。
【
図32】ゲート電極接触領域GC1がソース電極接触領域SC1を囲っている場合のFETを示す図である。
【
図33】ゲート電極接触領域GC1がソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との間にある場合のFETを示す図である。
【
図34】FETのドレイン電極に0.1Vを印加したときのゲート電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
【
図35】FETのゲート電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
【
図36】FETのドレイン電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
【
図37】FETにおけるオフ時のドレイン電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
【
図38】FETにおけるオフ時のドレイン電圧とゲート電流との間の関係を示すグラフである。
【
図40】FETの評価における出力値を示すグラフである。
【
図41】FETの立ち上がり時間trおよび立ち下がり時間tfの定義を示す図である。
【
図43】FETにおける第2のアンドープGaN層(第3半導体層)とMgドープpGaN層(第4半導体層)との接合面積と半導体素子の耐圧との間の関係を示すグラフである。
【
図44】FETのゲート長と応答時間との間の関係を示すグラフである。
【
図45】FETにおける分極超接合領域PSJ1を除いた第3半導体層と第4半導体層との接合面積と応答時間との間の関係を示すグラフである。
【
図46】FETにおける転位密度と接合面積との間の関係を示すグラフである。
【
図48】FETにおける転位密度とソース・ドレイン間距離との間の関係を示すグラフである。
【
図50】FETにおける転位密度と応答時間との間の関係を示すグラフである。
【
図52】FETにおける分極超接合長Lpsjと規格化オン抵抗との間の関係を示すグラフである。
【
図53】FETにおけるソース・ドレイン間距離と規格化オン抵抗との間の関係を示すグラフである。
【
図54】FETにおける転位密度と半導体素子の特性との間の関係を示す表である。
【
図55】FETのチップサイズとドレイン電圧Vdが2Vのときの電流値との間の関係を示す表である。
【
図56】FETのアクティブ領域面積とドレイン電圧Vdが2Vのときの電流値との間の関係を示すグラフである。
【
図57】FETにおける分極超接合長Lpsjとソースコンタクト電極S1cとドレインコンタクト電極D1cとの間の距離Lsdを変えたときのFETの耐圧性を示す表である。
【
図58】FETにおける分極超接合長Lpsjとソースコンタクト電極S1cとドレインコンタクト電極D1cとの間の距離Lsdを変えなかったときのFETの耐圧性を示す表である。
【
図59】FETにおける分極超接合長LpsjとFETの耐圧性との間の関係を示すグラフである。
【
図60】FETにおけるドレイン電極接触領域DC1と分極超接合面との間の距離と耐圧性との間の関係を示すグラフである。
【
図61】FETにおける分極超接合長Lpsjと半導体素子の耐圧性との間の関係を示すグラフである。
【
図62】FETのドレイン電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
【
図63】FETのドレイン電圧が0.1Vのときのゲート電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
【
図64】FETのオフ時のドレイン電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
【
図65】FETのオフ時のドレイン電圧とゲート電流との間の関係を示すグラフである。
【
図66】分極超接合長Lpsjが20μmのショットキーバリアダイオードの逆回復時間特性を示すグラフである。
【
図67】ショットキーバリアダイオードの順方向特性を示すグラフである。
【
図68】ショットキーバリアダイオードの逆方向特性を示すグラフである。
【
図69】分極超接合長Lpsjとアノード電極接触領域AC1とカソード電極接触領域CC1との間の距離Lacを変えたときのショットキーバリアダイオードの耐圧性を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態について、半導体素子とその製造方法および装置を例に挙げて説明する。しかし、本明細書の技術はこれらの実施形態に限定されるものではない。本明細書において、アンドープの半導体層とは、意図的に不純物をドープしていない半導体層のことである。図面における各層の厚みの比は、必ずしも実際の厚みの比を反映しているわけではない。
【0012】
(第1の実施形態)
1.半導体素子の構造
1-1.半導体素子の領域
図1は、第1の実施形態の半導体素子100の上面図である。半導体素子100は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)である。
図1に示すように、半導体素子100は、素子機能領域FR1と、ソース電極露出領域SR1と、ドレイン電極露出領域DR1と、ゲート電極露出領域GR1、GR2と、を有する。
【0013】
素子機能領域FR1は、素子としての機能を発揮する領域である。素子機能領域FR1は、後述するように、半導体に実際に電流が流れる領域である。素子機能領域FR1は、ポリイミド等の絶縁体で覆われている。そのため、素子機能領域FR1においては、半導体または金属が露出していない。
【0014】
ソース電極露出領域SR1は、ソース電極が露出している領域である。ソース電極露出領域SR1は、外部電極と電気的に接続するためのパッド電極が露出している領域である。ソース電極露出領域SR1は、端部SR1aと端部SR1bと中央部SR1cとを有する。端部SR1aおよび端部SR1bは、素子機能領域FR1の側で中央部SR1cから離れる向きに延伸している。素子機能領域FR1およびドレイン電極露出領域DR1に近づくにつれて、ソース電極露出領域SR1は広がっている。
【0015】
ドレイン電極露出領域DR1は、ドレイン電極が露出している領域である。ドレイン電極露出領域DR1は、外部電極と電気的に接続するためのパッド電極が露出している領域である。
【0016】
ゲート電極露出領域GR1、GR2は、ゲート電極が露出している領域である。ゲート電極露出領域GR1、GR2は、外部電極と電気的に接続するためのパッド電極が露出している領域である。
【0017】
ソース電極露出領域SR1およびドレイン電極露出領域DR1およびゲート電極露出領域GR1、GR2は、絶縁層を介して、半導体の上に形成されている。そのため、これらのソース電極露出領域SR1およびドレイン電極露出領域DR1およびゲート電極露出領域GR1、GR2では、ソース電極とドレイン電極とゲート電極とは、半導体に接触していない。
【0018】
ソース電極露出領域SR1は、素子機能領域FR1を間に挟んだ状態でドレイン電極露出領域DR1と対向して配置されている。ソース電極露出領域SR1とゲート電極露出領域GR1、GR2とを合わせた領域は、帯状に配置されている。ドレイン電極露出領域DR1は、帯状に配置されている。
【0019】
ゲート電極露出領域GR1、GR2は、ソース電極露出領域SR1の側に形成されている。ゲート電極露出領域GR1、GR2は、素子機能領域FR1を間に挟んだ状態でドレイン電極露出領域DR1と対向して配置されている。ゲート電極露出領域GR1およびゲート電極露出領域GR2の間には、ソース電極露出領域SR1が配置されている。ゲート電極露出領域GR1は、ソース電極露出領域SR1の端部SR1aおよび中央部SR1cに対面している。ゲート電極露出領域GR2は、ソース電極露出領域SR1の端部SR1bおよび中央部SR1cに対面している。
【0020】
ゲート電極露出領域GR1と素子機能領域FR1との間には、ソース電極露出領域SR1の端部SR1aが位置している。ゲート電極露出領域GR2と素子機能領域FR1との間には、ソース電極露出領域SR1の端部SR1bが位置している。素子機能領域FR1に対面する位置では、ソース電極露出領域SR1の幅とドレイン電極露出領域DR1の幅とはほぼ等しい。
【0021】
1-2.素子機能領域
1-2-1.断面構造
図2は、第1の実施形態の半導体素子100の積層構造を示す図である。
図2は、
図1のII-II断面を示す図である。
図2に示すように、半導体素子100は、サファイア基板Sub1と、バッファ層Bf1と、第1半導体層110と、第2半導体層120と、第3半導体層130と、第4半導体層140と、ソース電極S1と、ドレイン電極D1と、ゲート電極G1と、ポリイミド層PI1と、を有する。
【0022】
サファイア基板Sub1は、半導体層を支持する支持基板である。サファイア基板Sub1は、例えば、+c面から半導体層を成長させる成長基板であってもよい。サファイア基板Sub1の厚みは、例えば、50μm以上500μm以下である。
【0023】
バッファ層Bf1は、サファイア基板Sub1の上に形成されている。バッファ層Bf1は、低温GaNバッファ層である。バッファ層Bf1は、例えば、低温AlNバッファ層であってもよい。バッファ層Bf1の膜厚は、例えば、20nm以上50nm以下である。
【0024】
第1半導体層110は、バッファ層Bf1より上層に形成されている。第1半導体層110は、例えば、GaN層である。第1半導体層110は、不純物を意図的にはドープされていない。第1半導体層110の膜厚は、例えば、300nm以上5000nm以下である。
【0025】
第2半導体層120は、第1半導体層110より上層に形成されている。第2半導体層120は、第1半導体層110に直接接触している。第2半導体層120は、例えば、AlGaN層である。第2半導体層120のAl組成は、例えば、0.1以上0.5以下である。第2半導体層120のバンドギャップは、第1半導体層110および第3半導体層130のバンドギャップよりも大きい。第2半導体層120は、不純物を意図的にはドープされていない。第2半導体層120の膜厚は、例えば、20nm以上150nm以下である。
【0026】
第3半導体層130は、第2半導体層120より上層に形成されている。第3半導体層130は、第2半導体層120に直接接触している。第3半導体層130は、例えば、GaN層である。第3半導体層130は、不純物を意図的にはドープされていない。第3半導体層130は、凹部X1および凹部X2に挟まれて区画されている。また、第3半導体層130は、ソース電極S1の形成領域である凹部X1の周囲を取り囲んでいる。第3半導体層130の膜厚は、例えば、20nm以上150nm以下である。
【0027】
第4半導体層140は、第3半導体層130より上層に形成されている。第4半導体層140は、第3半導体層130に直接接触している。第4半導体層140は、例えば、p型GaN層である。第4半導体層140は、p型不純物をドープされている。p型不純物は、例えば、Mgである。第4半導体層140の不純物濃度は、例えば、1×1017cm-3以上3×1020cm-3以下である。ゲート電極G1に近いほど、第4半導体層140の不純物濃度は高い。第4半導体層140の膜厚は、例えば、20nm以上150nm以下である。
【0028】
ソース電極S1は、第2半導体層120の上に形成されている。ソース電極S1は、第2半導体層120に直接接触している。ソース電極S1の形成箇所には、凹部X1が形成されている。凹部X1は、第4半導体層140から第2半導体層120の途中まで達している。凹部X1の底部には、第2半導体層120が露出している。ソース電極S1は、凹部X1の上に形成されている。
【0029】
ドレイン電極D1は、第2半導体層120の上に形成されている。ドレイン電極D1は、第2半導体層120に直接接触している。ドレイン電極D1の形成箇所には、凹部X2が形成されている。凹部X2は、第4半導体層140から第2半導体層120の途中まで達している。凹部X2の底部には、第2半導体層120が露出している。ドレイン電極D1は、凹部X2の上に形成されている。
【0030】
ゲート電極G1は、第4半導体層140の上に形成されている。ゲート電極G1は、第4半導体層140に直接接触している。
【0031】
ポリイミド層PI1は、半導体層の表面を覆っている。また、ポリイミド層PI1は、素子機能領域FR1の各電極を覆っている。
【0032】
このように、第1半導体層110と第2半導体層120と第3半導体層130と第4半導体層140とは、III 族窒化物半導体層である。第1半導体層110と第2半導体層120と第3半導体層130とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層140は、p型半導体層である。
【0033】
第3半導体層130は、凹部X3と、第4半導体層140と接触する領域と、を有する。凹部X3は、第4半導体層140から第3半導体層130の途中まで達している。凹部X3における第3半導体層130の膜厚は、第4半導体層140と接触している第3半導体層130の膜厚よりも薄い。
【0034】
凹部X1および凹部X2は、つながっていない。後述するように、凹部X1は棒状形状であり、凹部X2は櫛歯形状である。そして、凹部X1と凹部X2との間に第3半導体層130が配置されている。
【0035】
1-2-2.平面的構造
図3は、第1の実施形態の半導体素子100の素子機能領域FR1の電極の接触領域を示す図である。
図3では、素子機能領域FR1における電極の接触領域を第2半導体層120に射影した場合の領域を示している。半導体素子100は、ソース電極接触領域SC1と、ドレイン電極接触領域DC1と、ゲート電極接触領域GC1と、を有する。
【0036】
ソース電極接触領域SC1は、ソース電極S1と第2半導体層120とが接触している領域である。ドレイン電極接触領域DC1は、ドレイン電極D1と第2半導体層120とが接触している領域である。ゲート電極接触領域GC1は、ゲート電極G1と第4半導体層140とが接触している領域である。
【0037】
ソース電極接触領域SC1は、例えば、第1電極接触領域である。ドレイン電極接触領域DC1は、例えば、第2電極接触領域である。ゲート電極接触領域GC1は、例えば、第3電極接触領域である。
【0038】
ソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1とゲート電極接触領域GC1とは、サファイア基板Sub1と第1半導体層110と第2半導体層120とのうちのいずれかに射影した場合に、互いに重ならない。
【0039】
ソース電極接触領域SC1は、棒状形状を有する。ゲート電極接触領域GC1は、ソース電極接触領域SC1の周囲を非接触で囲っている。厳密には、ゲート電極接触領域GC1は、第4半導体層140の上にあり、ソース電極接触領域SC1は、第2半導体層120の上にある。
【0040】
ゲート電極G1と第4半導体層140とが接触するゲート電極接触領域GC1を第2半導体層120に射影した領域は、ソース電極S1と第2半導体層120とが接触するソース電極接触領域SC1の周囲を非接触で囲んでいる。ゲート電極接触領域GC1およびソース電極接触領域SC1をサファイア基板Sub1または第1半導体層110に射影した場合に、ゲート電極接触領域GC1は、ソース電極接触領域SC1の周囲を非接触で取り囲んでいる。
【0041】
ドレイン電極接触領域DC1は、櫛歯形状を有する。ソース電極接触領域SC1およびゲート電極接触領域GC1は、ドレイン電極接触領域DC1の櫛歯と櫛歯との間の位置に挟まれた状態で配置されている。すなわち、ソース電極接触領域SC1の棒状形状が、ドレイン電極接触領域DCの櫛歯形状の間に配置されている。
【0042】
第1半導体層110と第2半導体層120とが接触する接触面の形状は、長方形である。ソース電極接触領域SC1の棒状形状をその接触面に射影した領域の長手方向が、その長方形の短辺に平行な方向に配置されている。
図2および
図3に示すように、ソース電極接触領域SC1の棒状形状の長手方向に垂直な断面では、ソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1とが交互に配置されている。
【0043】
図3に示すように、ソースコンタクト電極S1cは、先端部分の弧状部S1c1と先端部分以外の棒状部S1c2とを有する。ソースコンタクト電極S1cの棒状部S1c2は、弧状部S1c1と弧状部S1c1との間に挟まれている。
【0044】
ドレインコンタクト電極D1cは、先端部分の弧状部D1c1と先端部分以外の棒状部D1c2とを有する。ドレインコンタクト電極D1cの棒状部D1c2は、弧状部D1c1と弧状部D1c1との間に挟まれていない。
【0045】
ゲートコンタクト電極G1cは、先端部分の弧状部G1c1と先端部分以外の帯状部G1c2とを有する。ゲートコンタクト電極G1cの弧状部G1c1は、帯状部G1c2と帯状部G1c2との間に位置している。ゲートコンタクト電極G1cの弧状部G1c1および帯状部G1c2は、環状形状である。
【0046】
図1に示すように、ソース電極接触領域SC1の棒状部分の数が、ドレイン電極接触領域DC1の櫛歯形状の棒状部分の数よりも1本多い。このように、半導体素子100の最も外側に位置している電極接触領域は、ドレイン電極接触領域DC1ではなくソース電極接触領域SC1である。
【0047】
図4は、第1の実施形態の半導体素子100のソースコンタクト電極S1cおよびドレインコンタクト電極D1cの周辺の拡大図である。
【0048】
1-2-3.分極超接合領域
図2に示すように、半導体素子100は、分極超接合領域PSJ1を有する。分極超接合領域PSJ1は、第1半導体層110と第2半導体層120と第3半導体層130とを有し、第4半導体層140を有さない領域である。つまり、分極超接合領域PSJ1は、第3半導体層130が形成されているとともに第4半導体層140が形成されていない領域であってゲート電極接触領域GC1とドレイン電極接触領域DC1との間に位置する領域である。
【0049】
このように分極超接合領域PSJ1は、p型半導体層を有さない。分極超接合領域PSJ1は、ゲート電極接触領域GC1とドレイン電極接触領域DC1とで挟まれた領域に位置する。分極超接合長Lpsjは、ソース電極接触領域SC1からドレイン電極接触領域DC1までの最短距離を結ぶ方向における分極超接合領域PSJ1の長さである。
【0050】
1-3.ソース電極露出領域
図5は、第1の実施形態の半導体素子100のソース電極露出領域SR1の周辺の断面構造を示す図(その1)である。
図5は、
図1のV-V断面を示す図である。
図5に示すように、第1半導体層110の上に絶縁層IL1が形成されている。そして、絶縁層IL1の上にソース電極S1が形成されている。また、ゲート電極G1のゲート配線電極G1wとソース電極S1のソース配線電極S1wとの間には、ポリイミド層PI1が形成されている。ポリイミド層PI1は、ゲート電極G1とソース電極S1とを絶縁する。ソース電極露出領域SR1においては、ソース電極S1と半導体とは電気的に接続されていない。
【0051】
第1半導体層110には、ソース電極露出領域SR1の少なくとも一部に沿って溝U1が形成されている。溝U1があるため、第1半導体層110とソース電極S1との間の距離を大きくとることができる。つまり、第1半導体層110とソース電極S1との間の絶縁性が高められている。
【0052】
ソース電極S1は、ソースコンタクト電極S1cと、ソース配線電極S1wと、ソースパッド電極S1pと、を有する。ソースコンタクト電極S1cは、第2半導体層120と直接接触している。ソース配線電極S1wは、ソースコンタクト電極S1cとソースパッド電極S1pとを連結する。ソースパッド電極S1pは、外部電源と電気的に接続するための電極である。
【0053】
1-4.ドレイン電極露出領域
図6は、第1の実施形態の半導体素子100のドレイン電極露出領域DR1の周辺の断面構造を示す図である。
図6は、
図1のVI-VI断面を示す図である。
図6に示すように、第1半導体層110の上に絶縁層IL1が形成されている。そして、絶縁層IL1の上にドレイン電極D1が形成されている。また、ポリイミド層PI1は、ドレイン電極D1と絶縁層IL1との間の隙間を埋めている。ドレイン電極露出領域DR1においては、ドレイン電極D1と半導体とは電気的に接続されていない。
【0054】
第1半導体層110には、ドレイン電極露出領域DR1の少なくとも一部に沿って溝U2が形成されている。溝U2があるため、第1半導体層110とドレイン電極D1との間の距離を大きくとることができる。つまり、第1半導体層110とドレイン電極D1との間の絶縁性が高められている。
【0055】
ドレイン電極D1は、ドレインコンタクト電極D1cと、ドレイン配線電極D1wと、ドレインパッド電極D1pと、を有する。ドレインコンタクト電極D1cは、第2半導体層120と直接接触している。ドレイン配線電極D1wは、ドレインコンタクト電極D1cとドレインパッド電極D1pとを連結する。ドレインパッド電極D1pは、外部電源と電気的に接続するための電極である。
【0056】
1-5.ゲート電極露出領域
図7は、第1の実施形態の半導体素子100のゲート電極露出領域GR1の周辺の断面構造を示す図である。
図7は、
図1のVII-VII断面を示す図である。
図7に示すように、第1半導体層110の上に絶縁層IL1が形成されている。そして、絶縁層IL1の上にゲート電極G1が形成されている。ゲート電極露出領域GR1においては、ゲート電極G1と半導体とは電気的に接続されていない。
【0057】
ゲート電極G1は、ゲートコンタクト電極G1cと、ゲート配線電極G1wと、ゲートパッド電極G1pと、を有する。ゲートコンタクト電極G1cは、第4半導体層140と直接接触している。ゲート配線電極G1wは、ゲートコンタクト電極G1cとゲートパッド電極G1pとを連結する。ゲートパッド電極G1pは、外部電源と電気的に接続するための電極である。
【0058】
1-6.絶縁膜の形成領域
図8は、第1の実施形態の半導体素子100のソース電極露出領域SR1の周辺の断面構造を示す図(その2)である。
図8は、
図1のVIII-VIII断面を示す図である。
図8に示すように、ドレイン電極D1のドレインコンタクト電極D1cが、ソースパッド電極S1pの側に延伸している。ドレイン電極D1のドレインコンタクト電極D1cがソースパッド電極S1pの側に伸びている延長上では、絶縁層IL1は、第1半導体層110および第2半導体層120に接触していない。ただし、絶縁層IL1は、第1半導体層110の上に形成されており、溝U1の底部で第1半導体層110と接触している。
【0059】
図9は、第1の実施形態の半導体素子100のソース電極接触領域SC1およびドレイン電極接触領域DC1と絶縁層IL1との間の位置関係を示す図である。
図9は、絶縁層IL1とソース電極接触領域SC1およびドレイン電極接触領域DC1とを抜き出して描いた平面図である。
【0060】
図9に示すように、絶縁層IL1は、ソース電極接触領域SC1およびゲート電極接触領域GC1に向かって突出する突出部IL1aを有する。
図9に示すように、突出部IL1aは、ゲート配線電極G1wと第1半導体層110との間の位置であって、ソース電極接触領域SC1の長手方向の延長上の位置に配置されている。
【0061】
図5および
図9に示すように、絶縁層IL1は、突出部IL1aの位置で第2半導体層120と接触している。
図8および
図9に示すように、絶縁層IL1は、突出部IL1a以外の位置では第2半導体層120に接触していない。
図5に示すように、絶縁層IL1の突出部IL1aは、第2半導体層120と第3半導体層130と第4半導体層140とゲートコンタクト電極G1cとゲート配線電極G1wとに接触している。
【0062】
1-7.電極の配線構造
図10は、第1の実施形態の半導体素子100のゲート電極G1の配線を示す図である。ゲート電極接触領域GC1のゲート電極G1は、ゲート配線電極GW2に連結されている。ゲート配線電極GW2は、ソース電極接触領域SC1の長手方向に平行な方向に形成されている。ゲート配線電極GW1は、ゲート配線電極GW2を介して複数のゲートコンタクト電極G1cと電気的に接続されている。ゲート配線電極GW1およびゲート配線電極GW2は、ゲート配線電極G1wの一部である。
【0063】
図11は、第1の実施形態の半導体素子100のソース電極S1の配線を示す図である。ソースコンタクト電極S1cは、ソース配線電極SW2に連結されている。ソース配線電極SW2は、ソース電極接触領域SC1の長手方向に平行な方向に形成されている。ソース配線電極SW1は、ソース配線電極SW2を介して複数のソースコンタクト電極S1cと電気的に接続されている。ソース配線電極SW1およびソース配線電極SW2は、ソース配線電極S1wの一部である。
【0064】
図11に示すように、ソース電極S1のソース配線電極S1wを第2半導体層120に射影した領域は、ドレイン電極D1のドレイン配線電極D1wを第2半導体層120に射影した領域と重ならない。
【0065】
図10および
図11に示すように、ソース配線電極SW2を第2半導体層120に射影した領域は、ゲート配線電極GW2を第2半導体層120に射影した領域と重なる。
【0066】
ソース電極S1のソース配線電極S1wを第2半導体層120に射影した領域は、ゲート電極G1のゲート配線電極G1wを第2半導体層120に射影した領域と部分的に重なる。ドレイン電極D1のドレイン配線電極D1wを第2半導体層120に射影した領域は、ゲート電極G1のゲート配線電極G1wを第2半導体層120に射影した領域と重ならない。
【0067】
1-8.電極の積層構造
1-8-1.ソース電極およびドレイン電極
ソース電極S1およびドレイン電極D1は、前述のように、第2半導体層120の上に形成されている。第2半導体層120がAlGaN層である場合には、ソース電極S1とドレイン電極D1とは、AlGaN層と接触する。
【0068】
図12は、第1の実施形態の半導体素子100のソース電極S1およびドレイン電極D1の積層構造を示す図である。ソース電極S1は、第2半導体層120の側から順に形成された第1金属層S1a1、第2金属層S1a2、第3金属層S1a3、第4金属層S1a4、第5金属層S1a5、第6金属層S1a6を有する。第3金属層S1a3と第4金属層S1a4との間にはその他の金属層があってもよい。
【0069】
第1金属層S1a1は、例えばVである。第2金属層S1a2は、例えばAlである。第3金属層S1a3は、例えばTiである。第4金属層S1a4は、例えばTiである。第5金属層S1a5は、例えばAuである。第6金属層S1a6は、例えばAuである。上記は例示であり、上記以外の金属または合金を用いてもよい。
【0070】
第1金属層S1a1の膜厚は、例えば、5nm以上60nm以下である。第2金属層S1a2の膜厚は、例えば、20nm以上400nm以下である。第3金属層S1a3の膜厚は、例えば、5nm以上60nm以下である。第4金属層S1a4の膜厚は、例えば、5nm以上60nm以下である。第5金属層S1a5の膜厚は、例えば、50nm以上400nm以下である。第6金属層S1a6の膜厚は、例えば、1000nm以上15000nm以下である。上記は例示であり、上記以外の数値を用いてもよい。
【0071】
第1金属層S1a1から第5金属層S1a5までの金属層は、例えば、ソースコンタクト電極S1cに該当する。第6金属層S1a6は、例えば、ソース配線電極S1wに該当する。
【0072】
ドレイン電極D1は、第2半導体層120の側から順に形成された第1金属層D1a1、第2金属層D1a2、第3金属層D1a3、第4金属層D1a4、第5金属層D1a5、第6金属層D1a6を有する。これらの金属層における金属の種類および膜厚は、ソース電極S1と同様である。もちろん、これらの金属層における金属の種類および膜厚は、ソース電極S1と異なっていてもよい。
【0073】
1-8-2.ゲート電極
図13は、第1の実施形態の半導体素子100のゲート電極G1の積層構造を示す図である。ゲート電極G1は、第4半導体層140の側から順に形成された第1金属層G1a1、第2金属層G1a2、第3金属層G1a3、第4金属層G1a4を有する。
【0074】
第1金属層G1a1は、例えばNiである。第2金属層G1a2は、例えばAuである。第3金属層G1a3は、例えばNiである。第4金属層G1a4は、例えばAuである。上記は例示であり、上記以外の金属または合金を用いてもよい。
【0075】
第1金属層G1a1の膜厚は、例えば、5nm以上100nm以下である。第2金属層G1a2の膜厚は、例えば、5nm以上300nm以下である。第3金属層G1a3の膜厚は、例えば、5nm以上100nm以下である。第4金属層G1a4の膜厚は、例えば、50nm以上400nm以下である。上記は例示であり、上記以外の数値を用いてもよい。
【0076】
第1金属層G1a1から第3金属層G1a3までの金属層は、例えば、ゲートコンタクト電極G1cに該当する。第4金属層G1a4は、例えば、ゲート配線電極G1wに該当する。また、第1金属層G1a1から第4金属層G1a4までの金属層が、ゲートコンタクト電極G1cに該当し、その上にゲート配線電極G1wが存在してもよい。
【0077】
2.半導体素子の動作原理
2-1.2次元電子ガスおよび2次元ホールガス
図14は、第1の実施形態の半導体素子100の2次元電子ガスおよび2次元ホールガスを示す図である。
図15は、第1の実施形態の半導体素子100のバンド構造を示す図である。
【0078】
図14に示すように、第1半導体層110と第2半導体層120とはヘテロ接合されている。これにより、ピエゾ分極および自発分極が生じ、第1半導体層110側の第2半導体層120に正の固定電荷が誘起される。また、第2半導体層120と第3半導体層130とはヘテロ接合されている。これにより、ピエゾ分極および自発分極が生じ、第3半導体層130側の第2半導体層120に負の固定電荷が誘起される。
【0079】
これにより、
図14および
図15に示すように、第2半導体層120側の第1半導体層110の内部に2次元電子ガス(2DEG)が発生し、第2半導体層120側の第3半導体層130の内部に2次元ホールガス(2DHG)が発生する。
【0080】
また、p型の第4半導体層140が第3半導体層130に接触している。このため、第3半導体層130における第2半導体層120側の価電子帯の上端のエネルギーが引き上げられる。このため、2次元ホールガス(2DHG)の発生が促進される。
【0081】
このようにして、
図14および
図15に示すように、ヘテロ界面に2次元電子ガス(2DEG)および2次元ホールガス(2DHG)が発生する。
【0082】
2-2.閾値電圧
ゲート電極G1に印加するゲート電圧が閾値電圧Vth以上である場合には、前述のようにピエゾ分極および自発分極が生じる。そして、2次元電子ガス(2DEG)および2次元ホールガス(2DHG)が発生する。この状態では、ソース電極S1とドレイン電極D1との間に電流が流れる。閾値電圧Vthは、例えば、-5V程度である。
【0083】
ゲート電極G1に印加するゲート電圧が閾値電圧Vth未満である場合には、ピエゾ分極および自発分極が生じない。そのため、ソース電極S1とドレイン電極D1との間に電流がほとんど流れない。実際には、ソース電極S1とドレイン電極D1との間に微小なリーク電流が流れる。
【0084】
ゲート電圧を閾値電圧Vth未満にすると、第4半導体層140からホールが引き抜かれる。このため、ゲート電極G1から第3半導体層130に正電荷が供給されず、2次元電子ガス(2DEG)および2次元ホールガス(2DHG)がほぼ同時に消失する。
【0085】
ドレイン電流は、ドレイン電極D1、第2半導体層120、第1半導体層110の2次元電子ガス(2DEG)、第2半導体層120、ソース電極S1、の経路で流れる。2次元ホールガス(2DHG)は、半導体素子100のオン・オフの際に2次元電子ガス(2DEG)とともに発生するのみであり、半導体素子100に電流を流すために直接利用されるわけではない。
【0086】
3.半導体素子の電気的特性
ここで、半導体素子100の構造と半導体素子100の電気的特性との間の関係について説明する。
【0087】
図16は、第1の実施形態の半導体素子100のゲート電極G1に逆バイアスが印加された場合の電界を概念的に示す模式図である。
図16の横軸は、半導体素子100の位置を示している。
図16の縦軸は、電界である。逆バイアスが印加されたときには、半導体素子100中のホールが引き抜かれる。このため、2次元電子ガス(2DEG)および2次元ホールガス(2DHG)が消失する。そして、第1半導体層110と第2半導体層120と第3半導体層130とは空乏化する。その結果、
図16における分極超接合領域PSJ1の幅方向にわたって、電界の強度が一様になる。ここで、
図16に示す電界の面積が電圧に相当する。
【0088】
半導体素子100のソース電極S1とドレイン電極D1との間に高い電圧が印加されたとしても、ゲート電極に逆バイアスを印加することにより、
図16のように電界を空間的に広く分布させることができる。つまり、この半導体素子100は、局所的に強い電界が形成されることを抑制することができる。したがって、半導体素子100の耐圧性は高い。
【0089】
本明細書においてFETの耐圧とは、ゲート電圧Vgを-10V印加したオフ状態で、ドレイン電圧Vdを印加したときにドレイン電流Idが1×10-4Aに達するドレイン電圧Vdの値のことをいう。本実施形態においては、半導体素子100の常温での定格電流は数A~数十A程度である。上記のドレイン電流Idは、この定格電流から5桁程度低い値である。
【0090】
3-1.分極超接合領域
分極超接合領域PSJ1があると、分極超接合領域PSJ1を空乏化させることができる。ゲート電極G1に大きな逆バイアスが印加されたとしても、分極超接合領域PSJ1にわたって一様な電界分布が形成される。一方、従来のFETではゲート近傍に強い電界が形成されることが多い。このため、ゲート電極G1近傍に形成される電界強度は同様な条件下の従来のFETに比べて十分に小さい。このように、半導体素子100においては、ゲート近傍への電界集中が緩和されている。このため、分極超接合領域PSJ1の長さである分極超接合長Lpsjが長いほど、半導体素子100の耐圧性は高い傾向にある。
【0091】
一方、分極超接合長Lpsjが短いと、ソース電極S1とドレイン電極D1との間の距離は短い。このため、分極超接合長Lpsjが短いほど、半導体素子100のオン抵抗は低い傾向にある。
【0092】
3-2.ゲート長
ゲート長Lgは、ソース電極接触領域SC1からドレイン電極接触領域DC1までの最短距離を結ぶ方向における第4半導体層140の長さである。ゲート長Lgが短いほど、応答時間は短い傾向にある。ゲート長Lgが短い場合には、ゲート長Lg方向の空乏層領域が短い。空乏層領域が狭くなるため、ゲート電荷容量は小さくてよい。つまり、半導体素子100にスイッチング動作をさせる際に、ゲート電極G1が空乏層領域に供給または排出する電荷量が少なくて済む。これにより、半導体素子100のスイッチング速度は向上する。
【0093】
3-3.ゲート幅
ゲート幅は、ソース電極接触領域SC1からドレイン電極接触領域DC1までの最短距離を結ぶ方向に直交する方向おける第4半導体層140の長さである。つまり、ゲート幅は、ゲート電極接触領域GC1がソース電極接触領域SC1の周囲を囲む長さである。複数のソース電極接触領域SC1が離散的に配置されているため、実際には、ゲート幅は、複数のゲート電極接触領域GC1が複数のソース電極接触領域SC1の周囲を囲む長さの和である。
【0094】
ゲート幅が長いほど、半導体素子100に電流を流す領域を大きくすることができる。このため、ゲート幅が長いほど、ドレイン電圧Vdが2Vのときの電流値が大きくなる傾向にある。第1の実施形態では、このゲート幅を長くするために、ソース電極接触領域SC1を棒状形状にし、ドレイン電極接触領域DC1を櫛歯形状にしている。
【0095】
なお、ドレイン電流がソース電極S1とドレイン電極D1との間に流れることから、ソース幅またはドレイン幅を長くするという考え方をとることができる。ドレイン電流は、ソース幅とドレイン幅とのうち短いほうに依存して制限されると考えられる。ソース幅は、ソース電極接触領域SC1の外周長である。ドレイン幅は、ドレイン電極接触領域DC1の外周長である。ただし、ソース幅またはドレイン幅は、ソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1とが対面していない領域の長さを差し引いてもよい。
【0096】
3-4.絶縁層の突出部
図5に示すように、第2半導体層120は、絶縁層IL1の突出部IL1aの箇所では絶縁層IL1に接触している。
図8に示すように、第2半導体層120は、絶縁層IL1の突出部IL1a以外の箇所ではポリイミド層PI1に接触している。ポリイミド層PI1は、絶縁層IL1よりも厚膜を成膜することに適している。そのため、ポリイミド層PI1が半導体層の周囲のより多くの領域を絶縁する。
【0097】
図5に示すように、ゲート配線電極G1wの直下の領域においては、絶縁層IL1が半導体層とその周囲の材料とを絶縁する。
図8に示すように、ゲート配線電極G1wの直下以外の領域においては、ポリイミド層PI1が半導体層とその周囲の材料とを絶縁する。
【0098】
ここで、ゲート配線電極G1wの直下以外の領域において、絶縁層IL1が半導体層とその周囲の材料とを絶縁することを仮定する。ドレイン電極接触領域DC1には高い電位が印加される。このため、ドレイン電極接触領域DC1からソース電極接触領域SC1またはゲート電極接触領域GC1に絶縁層IL1の表面を介してリーク電流が発生するおそれがある。本実施形態では、ゲート配線電極G1wの直下以外の領域においては、ポリイミド層PI1が半導体層とその周囲の材料とを絶縁するため、絶縁層IL1の表面を介したリーク電流が抑制される。
【0099】
図5に示すように、突出部IL1aの箇所では、サファイア基板Subの側から第1半導体層110、第2半導体層120、第3半導体層130、第4半導体層140、絶縁層IL1、ゲート配線電極G1wの順で積層されている。絶縁層IL1が酸化物であれば、この積層構造はMOS構造になっている。この突出部IL1aの箇所と、ゲートコンタクト電極G1cと第4半導体層140とが直接接触している箇所とでは、分極超接合領域PSJ1を空乏化するためのゲート電圧が異なる。
【0100】
第1の実施形態の半導体素子100では、第2半導体層120と絶縁層IL1との接触箇所が、突出部IL1aに限定されている。さらに、ゲート電極接触領域GC1を第2半導体層120に射影した領域がソース電極接触領域SC1の周囲を取り囲んでいる。このため、リーク電流が抑制される。
【0101】
4.半導体素子の製造方法
4-1.半導体層形成工程
図17に示すように、サファイア基板Sub1の上に、バッファ層Bf1、第1半導体層110、第2半導体層120、第3半導体層130、第4半導体層140をこの順序で成長させる。そのために、例えば、MOCVD法を用いればよい。または、その他の気相成長法、液相成長法等を用いてもよい。
【0102】
4-2.凹部形成工程
図18に示すように、凹部X1、X2、X3を形成する。そのためにICP等のドライエッチングを用いればよい。エッチングガスは、例えば、Cl
2 、BCl
3 、SiCF
4 等の塩素系ガスである。ドライエッチングの際に、フォトレジスト等を用いればよい。凹部X1は、ソース電極S1を形成する領域である。凹部X2は、ドレイン電極D1を形成する領域である。凹部X3は、分極超接合領域PSJ1となる領域である。
【0103】
凹部X1および凹部X2の底部には、第2半導体層120が露出する。凹部X3の底部には、第3半導体層130が露出する。そのため、まず、第3半導体層130まで露出させた後、凹部X1、X2を形成する領域のみを再度エッチングし、第2半導体層120を露出させればよい。または、別々の2工程を実施してもよい。ここで、凹部X1、X2の深さは同程度であるが、凹部X1、X2はつながっていない。凹部X1は棒状の形状であり、凹部X2は櫛歯形状である。
【0104】
また、素子機能領域FR1の外側の領域では、溝U1および溝U2を形成して第1半導体層110を露出させる。これにより、ソース電極接触領域SC1、ドレイン電極接触領域DC1、ゲート電極接触領域GC1、分極超接合領域PSJ1が存在する領域以外の領域に、電流の経路が形成されない。つまり、半導体素子100の能動領域が限定される。
【0105】
4-3.絶縁層形成工程
第1半導体層110の溝U1および溝U2の上に絶縁層IL1を成膜する。そのために、例えば、CVD法を用いればよい。
【0106】
4-4.電極形成工程
図19に示すように、ソース電極S1とドレイン電極D1とゲート電極G1とを形成する。ソース電極S1およびドレイン電極D1は、電極の積層構造が同じであるため、同一工程で実施すればよい。ゲート電極G1の積層構造は、ソース電極S1およびドレイン電極D1と異なるため、別工程で実施する。これらの電極の形成のために、スパッタリング、ALD法、EB蒸着法等の成膜技術を用いればよい。この工程により、絶縁層IL1は、ソース電極S1とドレイン電極D1とゲート電極G1と、第1半導体層110と、の間に配置される。
【0107】
4-5.保護層形成工程
次に、露出している半導体層の表面をポリイミドで覆う。ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を半導体の露出部分に塗布する。その後、ウエハを250℃以上500℃以下で加熱し、ポリイミド層PI1を形成する。
【0108】
4-6.素子分離工程
そして、ウエハから半導体素子100を切り出し、各々の独立した半導体素子100を製造する。
【0109】
4-7.その他の工程
配線電極またはパッド電極を形成する工程、熱処理工程等、その他の工程を適宜実施してもよい。以上により、半導体素子100が得られる。
【0110】
5.第1の実施形態の効果
5-1.ソース電極接触領域およびドレイン電極接触領域
ソース電極接触領域SC1は、棒状形状である。ドレイン電極接触領域DC1は、櫛歯形状である。そして、ドレイン電極接触領域DC1の櫛歯の間にソース電極接触領域SC1の棒状形状が配置されている。ソース電極接触領域SC1の外周部とドレイン電極接触領域DC1の外周部とが構成する経路は長い。電流は、ソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との間に挟まれた領域の半導体層に流れる。このため、この半導体素子100は、大電流を流すことができる。
【0111】
5-2.ゲート電極接触領域
半導体素子100においては、ゲート電極G1と第4半導体層140とが接触するゲート電極接触領域GC1を第2半導体層120に射影した領域は、ソース電極S1と第2半導体層120とが接触するソース電極接触領域SC1を第2半導体層120に射影した領域の周囲を非接触で囲んでいる。このため、ドレイン電極D1と第2半導体層120とが接触するドレイン電極接触領域DC1と、ソース電極接触領域SC1と、の間に、ゲート電極接触領域GC1が必ず存在することとなる。したがって、半導体素子100は、オフ時のリーク電流を抑制することができる。
【0112】
5-3.分極超接合領域
半導体素子100は、分極超接合領域PSJ1を有する。分極超接合領域PSJ1があることにより、空乏化領域を広くすることができる。このため、半導体素子100は高い耐圧性を備えている。
【0113】
5-4.ゲート長
半導体素子100は、比較的長いゲート長Lgを有する。ゲート長Lgが比較的長いため、空乏化領域を広くすることができる。
【0114】
6.変形例
6-1.装置
第1の実施形態の技術は、半導体素子100を有する装置に応用することが可能である。このような装置として、例えば、パッケージ、モジュール、送信機、通信機、電力電送機などが挙げられる。
【0115】
6-2.半導体層
第1の実施形態では第2半導体層120はAlGaNである。第2半導体層120はAlX InY Ga(1-X-Y) N(X>0)であってもよい。第1半導体層110および第3半導体層130は、AlX InY Ga(1-X-Y) N(X≧0)であってもよい。ただし、第1半導体層110および第3半導体層130のバンドギャップは、第2半導体層120のバンドギャップよりも小さい。また、第1半導体層110および第3半導体層130の組成は、同じでなくてもよい。
【0116】
6-3.ソース電極接触領域およびドレイン電極接触領域
第1の実施形態では、ソース電極接触領域SC1が棒状形状を有し、ドレイン電極接触領域DC1が櫛歯形状を有する。その代わりに、ソース電極接触領域SC1が櫛歯形状を有し、ドレイン電極接触領域DC1が棒状形状を有していてもよい。
【0117】
したがって、ソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との一方が、棒状形状を有する。ソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との他方が、櫛歯形状を有する。ソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との一方の棒状形状が、ソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との他方の櫛歯形状の間に配置されている。
【0118】
6-4.電極接触領域の形状
ソース電極接触領域SC1の棒状形状の先端部分は円弧形状である。しかし、先端部分は円弧に限らない。棒状形状の先端部分は、弧状の弧状部である。棒状形状の先端部分以外の部分は、直線形状の棒状部である。
【0119】
6-5.ソースコンタクト電極およびドレインコンタクト電極
ソースコンタクト電極S1cおよびドレインコンタクト電極D1cは、第2半導体層120に直接接触している。凹部X1、X2が第2半導体層120の途中にまで達しているためである。しかし、凹部X1、X2の底部が第2半導体層120に十分に近ければ、ソースコンタクト電極S1cおよびドレインコンタクト電極D1cは、第2半導体層120に直接接触している必要はない。この場合には、凹部X1、X2が第3半導体層130の途中にまで達している。そして、ソースコンタクト電極S1cおよびドレインコンタクト電極D1cは、非常に薄い第3半導体層130に接触している。第3半導体層130の非常に薄い部分の厚みは、例えば、10nm以下である。このとき、第3半導体層130は、凹部X1、X2の箇所で薄く、凹部X1、X2以外の箇所では凹部X1、X2の箇所より厚い。この場合であっても、半導体素子はソース・ドレイン間に十分な大きさの電流を流すことができる。
【0120】
したがって、ソース電極S1およびドレイン電極D1は、第2半導体層120または第3半導体層130の上に形成されている。ソース電極接触領域SC1は、ソース電極S1と第2半導体層120または第3半導体層130とが接触する領域である。ドレイン電極接触領域DC1は、ドレイン電極D1と第2半導体層120または第3半導体層130とが接触する領域である。
【0121】
6-6.ゲート電極接触領域
ゲート電極接触領域GC1は、ドレイン電極接触領域DC1を囲んでもよい。この場合においても、オフ時のリーク電流が抑制される。この場合には、ゲート電極接触領域GC1を第2半導体層120に射影した領域は、ソース電極接触領域SC1またはドレイン電極接触領域DC1を第2半導体層120に射影した領域の周囲を囲んでいる。
【0122】
6-7.配線電極
ソース電極S1とドレイン電極D1との位置関係を入れ替えてもよい。この場合には、ソース配線電極S1wを第2半導体層120に射影した領域とドレイン配線電極D1wを第2半導体層120に射影した領域との2つの領域のうちの一方は、ゲート配線電極G1wを第2半導体層120に射影した領域と部分的に重なり、ソース配線電極S1wを第2半導体層120に射影した領域とドレイン配線電極D1wを第2半導体層120に射影した領域との2つの領域のうちの他方は、ゲート配線電極G1wを第2半導体層120に射影した領域と重ならない。
【0123】
また、ソース配線電極S1wを第2半導体層120に射影した領域とドレイン配線電極D1wを第2半導体層120に射影した領域との2つの領域のうちの一方と、ゲート配線電極G1wを第2半導体層120に射影した領域と、が部分的に重なる箇所では、ソース配線電極S1wまたはドレイン配線電極D1wと第1半導体層110との間の距離は、ゲート配線電極G1wと第1半導体層110との間の距離よりも大きい。
【0124】
6-8.保護膜
半導体層を保護する保護膜は、ポリイミド以外の絶縁層であってもよい。絶縁層は、無機誘電体膜と有機誘電体膜との少なくとも一方を有するとよい。例えば、絶縁層は、SiO2 、SiX NY 、SiON、Al2 O3 、AlN、AlON、ZrO2 、ZrN、ZrON、Ta2 O3 、TaN、TaON、HfO2 、HfN2 、HfON、TiO2 、TiN、TiON、ポリイミドのいずれか1つ以上を有する。
【0125】
6-9.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてよい。
【0126】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
【0127】
1.半導体素子
図20は、第2の実施形態の半導体素子200の上面図である。ソース電極S1と第2半導体層120とが接触するソース電極接触領域SC1が、棒状形状である。ドレイン電極D1と第2半導体層120とが接触するドレイン電極接触領域DC1が、櫛歯形状である。ソース電極接触領域SC1の棒状形状が、ドレイン電極接触領域DC1の櫛歯形状の間に配置されている。
【0128】
半導体素子200では、距離Lpsj2が距離Lpsj1以上である。距離Lpsj1は、ソース電極接触領域SC1の先端部分以外の棒状部分における分極超接合長である。距離Lpsj2は、ソース電極接触領域SC1の先端部分における分極超接合長である。
【0129】
このように、棒状形状の先端部分におけるソース電極接触領域SC1からドレイン電極接触領域DC1までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域PSJ2の長さが、棒状形状の先端部分以外の部分におけるソース電極接触領域SC1からドレイン電極接触領域DC1までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域PSJ1の長さ以上である。
【0130】
棒状形状の先端部分以外の部分におけるソース電極接触領域SC1からドレイン電極接触領域DC1までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域PSJ1の長さに対する、棒状形状の先端部分におけるソース電極接触領域SC1からドレイン電極接触領域DC1までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域PSJ2の長さが、1.05以上3以下であるとよい。
【0131】
半導体素子200では、距離Lsd2が距離Lsd1以上である。距離Lsd1は、ソース電極接触領域SC1の先端部分以外の棒状部分におけるソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との間の距離である。距離Lsd2は、ソース電極接触領域SC1の先端部分におけるソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との間の距離である。
【0132】
すなわち、棒状形状の先端部分におけるソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との間の距離が、棒状形状の先端部分以外の部分におけるソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との間の距離以上である。
【0133】
棒状形状の先端部分は、弧状の弧状部である。棒状形状の先端部分以外の部分は、直線形状の棒状部である。
【0134】
2.第2の実施形態の効果
ソース電極S1のソース電極接触領域SC1の先端部分は、先端部分以外の棒状部分に比べて電界が強くなりやすい。第2の実施形態の半導体素子200では、その先端部分において、分極超接合領域PSJの分極超接合長Lpsj2の長さを長くしている。また、同様の理由で、距離Lsd2を大きくしている。このため、半導体素子200は、より高い耐圧性を備えている。
【0135】
3.変形例
3-1.ソース電極接触領域およびドレイン電極接触領域
ソース電極接触領域SC1が櫛歯形状を有し、ドレイン電極接触領域DC1が棒状形状を有していてもよい。その場合であっても、棒状形状の先端部分におけるソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との間の距離が、棒状形状の先端部分以外の部分におけるソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との間の距離以上である。
【0136】
3-2.弧状部
弧状部は、例えば、円弧形状である。しかし、弧状部は、円弧以外の弧状形状であってもよい。
【0137】
3-3.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてよい。
【0138】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。
【0139】
1.半導体素子
図21は、第3の実施形態の半導体素子300の積層構造を示す図である。ソース電極S1は、凹部X1の上に形成されている。ドレイン電極D1は、凹部X2の上に形成されている。
【0140】
ここで、ドレイン電極接触領域DC1と第3半導体層130との間の距離Ldが、ソース電極接触領域SC1と第3半導体層130との間の距離Lsより大きい。ドレイン電極接触領域DC1と第3半導体層130との間の距離Ldは、例えば、1μm以上10μm以下である。
【0141】
また、ソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1とゲート電極接触領域GC1とを第2半導体層120に射影した場合に、ドレイン電極接触領域DC1を射影した領域とゲート電極接触領域GC1を射影した領域との間の距離Ldgが、ソース電極接触領域SC1を射影した領域とゲート電極接触領域GC1を射影した領域との間の距離Lsgよりも大きい。
【0142】
2.第3の実施形態の効果
半導体素子300の動作時には、ドレイン電極D1とゲート電極G1との間の電位差(電圧)は、ソース電極S1とゲート電極G1との間の電位差(電圧)よりも十分に大きいことがある。このため、第3の実施形態では、ドレイン電極接触領域DC1とゲート電極接触領域GC1との間の距離Ldgをソース電極接触領域SC1とゲート電極接触領域GC1との間の距離Lsgよりも十分に大きくとっている。ドレイン電極D1に高い電位が印加されるため、ドレイン・ゲート間の電界強度がソース・ゲート間の電界強度よりも強い。このため、距離Ldgを距離Lsgよりも十分に大きくしている。
【0143】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について説明する。
【0144】
図22は、第4の実施形態の半導体素子400のゲートパッド電極の周辺を示す図である。
【0145】
ソース電極S2は、ソースコンタクト電極S2cと、ソース配線電極S2wと、ソースパッド電極S2pと、を有する。ソースコンタクト電極S2cは、第2半導体層120と直接接触している。ソース配線電極S2wは、ソースコンタクト電極S2cとソースパッド電極S2pとを連結する。ソースパッド電極S2pは、外部電源と電気的に接続するための電極である。
【0146】
ゲート電極G2は、ゲートコンタクト電極G2cと、ゲート配線電極G2wと、ゲートパッド電極G2pと、を有する。ゲートコンタクト電極G2cは、第4半導体層140と直接接触している。ゲート配線電極G2wは、ゲートコンタクト電極G2cとゲートパッド電極G2pとを連結する。ゲートパッド電極G2pは、外部電源と電気的に接続するための電極である。
【0147】
ソース配線電極S2wは、ソースパッド電極S2pとの連結箇所に弧状に湾曲する湾曲部S2rを有する。ゲート配線電極G2wは、ゲートパッド電極G2pとの連結箇所に弧状に湾曲する湾曲部G2rを有する。
【0148】
2.絶縁層
図23は、第4の実施形態の半導体素子400のドレイン電極露出領域の周辺の断面構造を示す図である。
図23に示すように、半導体素子400は、絶縁層IL1の他に、絶縁層IL2と、絶縁層IL3と、絶縁層IL4と、を有する。絶縁層IL2は、絶縁層IL1の上に位置している。絶縁層IL3は、絶縁層IL2の上に位置している。絶縁層IL4は、絶縁層IL3の上に位置している。
【0149】
絶縁層IL1および絶縁層IL2の材質は、無機誘電体膜である。無機誘電体膜は、例えば、SiO2 である。また、絶縁層IL3および絶縁層IL4の材質は、有機誘電体膜である。有機誘電体膜は、例えば、ポリイミドである。SiO2 等の硬い膜の上に有機誘電体膜を形成するとよい。
【0150】
絶縁層IL2および絶縁層IL3が絶縁層IL1と第2半導体層120との間の隙間を埋めている。絶縁層IL2は、半導体層の側面および表面を埋めている。また、絶縁層IL2はソース電極S1とドレイン電極D1とゲート電極G1のコンタクト電極を埋めている。絶縁層IL4は、最上層である。
【0151】
2.第4の実施形態の効果
半導体素子400は、高い耐圧性を備えている。このため、使用時において、半導体素子400に高電圧が印加されることがある。このように高電圧が印加された場合であっても、湾曲部S2rおよび湾曲部G2rの周囲に強い電界が形成されることが抑制される。また、絶縁層内の内部応力も緩和されると考えられる。
【0152】
3.変形例
3-1.ドレイン電極
ドレイン電極においても、ドレイン配線電極は、ドレインパッド電極との連結箇所に弧状に湾曲する湾曲部を有するとよい。
【0153】
3-2.パッド電極の数
図24は、第4の実施形態の変形例における半導体素子の上面図である。
図24に示すように、半導体素子は、複数のソースパッド電極S2pを有していてもよい。つまり、ゲート電極G2とソース電極S2とドレイン電極D2とのうちの少なくとも一つは、複数のパッド電極を有していてもよい。
図24に示すように、ゲートパッド電極G2pは、ソースパッド電極S2pとソースパッド電極S2pとの間に挟まれた状態で配置されている。
【0154】
図25は、第4の実施形態の変形例における半導体素子におけるゲートパッド電極の周辺の拡大図である。
図25に示すように、ソースパッド電極S2pとソースパッド電極S2pとを連結する連結部S2iにも湾曲形状S2i1が形成されている。
【0155】
3-3.パッド電極の形状
ソースパッド電極S2pとゲートパッド電極G2pとドレインパッド電極とのうちの少なくとも一つの角は、湾曲形状になっていてもよい。
【0156】
3-4.絶縁層
絶縁層は、無機誘電体膜と有機誘電体膜との少なくとも一方を有するとよい。例えば、絶縁層は、SiO2 、SiX NY 、SiON、Al2 O3 、AlN、AlON、ZrO2 、ZrN、ZrON、Ta2 O3 、TaN、TaON、HfO2 、HfN2 、HfON、TiO2 、TiN、TiON、ポリイミドのいずれか1つ以上を有する。
【0157】
3-5.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてよい。
【0158】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について説明する。
【0159】
1.半導体素子
半導体素子の基本構造は、第1の実施形態と同様である。
【0160】
第2半導体層120における転位密度は、例えば、1×106 cm-2以上1×1010cm-2以下である。転位密度は、5×109 cm-2以下であるとよい。また、第1半導体層110における転位密度は、例えば、1×106 cm-2以上1×1010cm-2以下である。転位密度は、5×109 cm-2以下であるとよい。
【0161】
第2半導体層120と第3半導体層130との間の接触面積が、ゲート幅方向の1μm当たり、10μm2 以上200μm2 以下である。
【0162】
ゲート長Lgが、0.1μm以上6μm以下である。また、ゲート長Lgが、0.3μm以上5μm以下であってもよい。さらに、ゲート長Lgが、1μm以上4μm以下であってもよい。
【0163】
第2半導体層120と第3半導体層130との間の接触面積と耐圧とが、次式(1)
101x-810 ≦ y ≦ 235x+585 ………(1)
x:ゲート幅方向の1μm当たりの第2半導体層と第3半導体層との間の接触面積
y:耐圧
を満たす。
【0164】
2.半導体素子の電気的特性
第5の実施形態の半導体素子における300Vスイッチングでの立ち上がり時間(tr)および立ち下がり時間(tf)がいずれも3ns以上30ns以下である。
【0165】
第5の実施形態の半導体素子の耐圧は1500V以上20000V以下である。また、半導体素子の耐圧は3000V以上10000V以下であってもよい。
【0166】
3.転位密度
半導体層の転位密度を低減するために、スパッタリングによりAlNバッファ層を成膜する方法、基板に凹凸形状を形成する方法、VPEにより数十μm以上の厚膜を成膜する方法等を用いるとよい。
【0167】
(第6の実施形態)
第6の実施形態について説明する。
【0168】
1.半導体素子
半導体素子の基本構造は、第1の実施形態と同様である。
【0169】
分極超接合長Lpsjが1μm以上50μm以下である。分極超接合長Lpsjが2μm以上40μm以下であってもよい。分極超接合長Lpsjが3μm以上30μm以下であってもよい。
【0170】
ゲート長Lgが、0.1μm以上6μm以下である。また、ゲート長Lgが、0.3μm以上5μm以下であってもよい。さらに、ゲート長Lgが、1μm以上4μm以下であってもよい。
【0171】
2.半導体素子の電気的特性
第6の実施形態の半導体素子における300Vスイッチングでの立ち上がり時間(tr)および立ち下がり時間(tf)がいずれも3ns以上30ns以下である。立ち上がり時間(tr)および立ち下がり時間(tf)が4ns以上20ns以下であってもよい。立ち上がり時間(tr)および立ち下がり時間(tf)が5ns以上10ns以下であってもよい。
【0172】
第6の実施形態の半導体素子における規格化オン抵抗が、1mΩ・cm2 以上20mΩ・cm2 以下である。規格化オン抵抗が、2mΩ・cm2 以上17mΩ・cm2 以下であってもよい。規格化オン抵抗が、3mΩ・cm2 以上15mΩ・cm2 以下であってもよい。
【0173】
(第7の実施形態)
第7の実施形態について説明する。
【0174】
1.半導体素子
半導体素子の基本構造は、第1の実施形態と同様である。
【0175】
アクティブ領域面積が、2.2mm2 以上100mm2 以下である。アクティブ領域面積が、2.5mm2 以上90mm2 以下であってもよい。アクティブ領域面積が、3mm2 以上80mm2 以下であってもよい。
【0176】
アクティブ領域面積は、第1半導体層110に電流が実質的に流れる面積である。アクティブ領域面積は、第2半導体層120における第3半導体層130側の面積から、ソース電極接触領域SC1およびドレイン電極接触領域DC1の面積と、最も外側のソース電極接触領域SC1と第2半導体層120の外周部との間に挟まれた領域の面積と、を引いた面積である。
【0177】
ゲート長Lgが、0.1μm以上6μm以下である。また、ゲート長Lgが、0.3μm以上5μm以下であってもよい。さらに、ゲート長Lgが、1μm以上4μm以下であってもよい。
【0178】
ゲート幅が、300mm以上12000mm以下である。ゲート幅が、350mm以上11000mm以下であってもよい。ゲート幅が、400mm以上10000mm以下であってもよい。
【0179】
半導体素子の外周長が13mm以上520mm以下である。半導体素子の外周長が15mm以上500mm以下であってもよい。半導体素子の外周長が20mm以上480mm以下であってもよい。外周長は、半導体素子のサファイア基板Sub1の4辺の長さの和である。
【0180】
2.半導体素子の電気的特性
第7の実施形態の半導体素子における300Vスイッチングでの立ち上がり時間(tr)および立ち下がり時間(tf)がいずれも3ns以上30ns以下である。
【0181】
第7の実施形態の半導体素子におけるドレイン電圧Vdが2Vのときの電流値は、30A以上1200A以下である。ドレイン電圧Vdが2Vのときの電流値は、オン状態において電流飽和領域ではない領域の電流値である。
【0182】
(第8の実施形態)
1.ショットキーバリアダイオード
図26は、第8の実施形態の半導体素子500の積層構造を示す図である。半導体素子500は、ショットキーバリアダイオードである。半導体素子500は、サファイア基板Sub2と、バッファ層Bf2と、第1半導体層510と、第2半導体層520と、第3半導体層530と、第4半導体層540と、カソード電極C1と、アノード電極A1と、を有する。
【0183】
バッファ層Bf2は、サファイア基板Sub2の上に形成されている。第1半導体層510は、バッファ層Bf2の上に形成されている。第2半導体層520は、第1半導体層510の上に形成されている。第3半導体層530は、第2半導体層520の上に形成されている。第4半導体層540は、第3半導体層530の上に形成されている。
【0184】
第1半導体層510と第2半導体層520と第3半導体層530と第4半導体層540とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層520のバンドギャップは、第1半導体層510および第3半導体層530のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層510と第2半導体層520と第3半導体層530とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層540は、p型半導体層である。
【0185】
カソード電極C1は、第2半導体層520の上に形成されている。凹部Y1は、第4半導体層540から第2半導体層520の途中まで達している。カソード電極C1は、凹部Y1の上に形成されている。
【0186】
アノード電極A1は、第4半導体層540の上に形成されている。凹部Y2は、第4半導体層540から第1半導体層510の途中まで達している。アノード電極A1は、凹部Y2の底面から第4半導体層540までにわたって形成されている。このため、アノード電極A1は、第1半導体層510と第2半導体層520と第3半導体層530と第4半導体層540とに接触している。アノード電極A1は、第1半導体層510の底面および側面と、第2半導体層520および第3半導体層530の側面と、第4半導体層540の側面および上面と、に接触している。
【0187】
図27は、第8の実施形態の半導体素子500の電極形成領域を示す図である。
図27に示すように、半導体素子500は、カソード電極C1と第2半導体層520とが接触するカソード電極接触領域CC1と、アノード電極A1と第4半導体層540とが接触するアノード電極接触領域AC1と、を有する。
【0188】
カソード電極C1と第2半導体層520とが接触するカソード電極接触領域CC1は、櫛歯形状を有する。アノード電極A1と第1半導体層510および第4半導体層540とが接触するアノード電極接触領域AC1は、棒状形状を有する。アノード電極接触領域AC1を第1半導体層510に射影した領域の棒状形状は、カソード電極接触領域CC1を第1半導体層510に射影した領域の櫛歯形状の間の位置に配置されている。
【0189】
分極超接合領域は、第3半導体層530が形成されているとともに第4半導体層540が形成されていない領域であってアノード電極接触領域AC1とカソード電極接触領域CC1との間に位置する。
【0190】
2.耐圧
本明細書においてショットキーバリアダイオードの耐圧とは、アノード電極A1とカソード電極C1との間に逆方向の電圧Vaを印加したときにアノード電流Iaが1×10-4Aに達するアノード電圧Vaの値のことをいう。
【0191】
3.変形例
3-1.電極接触領域の形状
カソード電極接触領域CC1は、棒状形状を有し、アノード電極接触領域AC1は、櫛歯形状を有していてもよい。すなわち、カソード電極接触領域CC1とアノード電極接触領域AC1との一方が櫛歯形状を有し、カソード電極接触領域CC1とアノード電極接触領域AC1との他方が棒状形状を有してもよい。
【0192】
図28は、第8の実施形態の変形例における半導体素子の電極形成領域を示す図である。カソード電極C1と第2半導体層520とが接触するカソード電極接触領域CC1は、櫛歯形状を有する。アノード電極A1と第1半導体層510および第4半導体層540とが接触するアノード電極接触領域AC1は、櫛歯形状を有する。カソード電極接触領域CC1を第1半導体層510に射影した領域の櫛歯形状は、アノード電極接触領域AC1を第1半導体層510に射影した領域の櫛歯形状と互い違いに配置されている。
【0193】
カソード電極接触領域CC1とアノード電極接触領域AC1との一方の棒状形状(櫛歯形状の先端の棒状部分を含む)が、カソード電極接触領域CC1とアノード電極接触領域AC1との他方の櫛歯形状の間に配置されていればよい。
【0194】
3-2.アノード電極の接触領域
図29は、第8の実施形態の変形例における半導体素子600の積層構造を示す図(その1)である。半導体素子600は、サファイア基板Sub2と、バッファ層Bf2と、第1半導体層510と、第2半導体層520と、第3半導体層530と、第4半導体層540と、カソード電極C1と、アノード電極A1と、を有する。アノード電極A1は、凹部Y3の上に形成されている。凹部Y3は、第4半導体層540から第2半導体層520の途中まで達する。半導体素子600では、アノード電極A1は第1半導体層510に接触していない。
【0195】
図30は、第8の実施形態の変形例における半導体素子700の積層構造を示す図(その2)である。半導体素子700は、サファイア基板Sub2と、バッファ層Bf2と、第1半導体層510と、第2半導体層520と、第3半導体層530と、第4半導体層540と、カソード電極C1と、アノード電極A1と、絶縁層750と、を有する。
【0196】
絶縁層750は、第2半導体層520の一部と、第3半導体層530の側面と、第4半導体層540の一部と、を覆っている。絶縁層750は、第3半導体層530の側面と、第4半導体層540の側面と、アノード電極A1との間に位置している。アノード電極A1は、第2半導体層520と、第4半導体層540と、に接触しており、第3半導体層530に接触していない。
【0197】
このように、アノード電極A1は、第1半導体層510または第2半導体層520と接触していればよい。
【0198】
3-3.カソード電極の接触領域
図31は、第8の実施形態の変形例における半導体素子800の積層構造を示す図(その3)である。
図31に示すように、カソード電極C2は、第1半導体層510の底面および側面と第2半導体層520の側面とに接触している。
【0199】
3-4.分極超接合領域
棒状形状の先端部分におけるカソード電極接触領域CC1からアノード電極接触領域AC1までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域の長さが、棒状形状の先端部分以外の部分におけるカソード電極接触領域CC1からアノード電極接触領域AC1までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域の長さ以上である。
【0200】
3-5.カソード電極と第3半導体層との間の距離
カソード電極接触領域CC1と第3半導体層530との間の距離が、1μm以上10μm以下である。
【0201】
3-6.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてよい。
【0202】
(実施形態の組み合わせ)
第1の実施形態から第8の実施形態までについて、変形例を含めて自由に組み合わせてよい場合がある。
【0203】
(評価試験)
1.実験1
1-1.FETの作製
図32および
図33に示すような、シンプルな構造のFETを製造した。
図32は、ゲート電極接触領域GC1がソース電極接触領域SC1を囲っている場合のFETを示す図である。
図33は、ゲート電極接触領域GC1がソース電極接触領域SC1とドレイン電極接触領域DC1との間にある場合のFETを示す図である。
図33では、ゲート電極接触領域GC1がソース電極接触領域SC1を囲っていない。
【0204】
このように、ゲート電極接触領域GC1がソース電極接触領域SC1を囲っているFETとゲート電極接触領域GC1がソース電極接触領域SC1を囲っていないFETとを製造した。そして、これらのFETのリーク電流を比較した。
【0205】
1-2.実験結果(リーク電流)
図34は、FETのドレイン電極に0.1Vを印加したときのゲート電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
図34の横軸はゲート電圧である。
図34の縦軸はドレイン電流である。
【0206】
図35は、FETのゲート電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
図35の横軸はゲート電圧である。
図35の縦軸はドレイン電流である。
図35に示すように、ゲート電極G1がソース電極S1を囲んでいる場合には、ゲート電圧が-5V以上でFETが動作する。ゲート電圧が-5V未満であっても、オフリーク電流が流れる。オフリーク電流は、1×10
-9A/mmの程度である。
【0207】
図35に示すように、ゲート電極G1がソース電極S1を囲んでいない場合には、ゲート電圧が-4.5V以上でFETが動作する。ゲート電圧が-4.5V未満の場合には、1.0×10
-6A/mmの程度のオフリーク電流が流れる。このように、ゲート電極G1がソース電極S1の周囲を囲むことにより、オフリーク電流が2桁程度小さくなる。
【0208】
図36は、FETのドレイン電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
図36の横軸はドレイン電圧である。
図36の縦軸はドレイン電流である。
図36は、ゲート電極G1がソース電極S1の周囲を囲んでいるFETのドレイン電流を示している。
図36には、ゲート電圧を変えたときのドレイン電流が示されている。
図36に示すように、ゲート電圧を大きくするほど、ドレイン電流は大きくなる。
【0209】
図37は、FETにおけるオフ時のドレイン電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
図37の横軸はドレイン電圧である。
図37の縦軸はドレイン電流である。このときのゲート電圧は-10Vである。
図37は、ゲート電極G1がソース電極S1の周囲を囲んでいるFETのドレイン電流を示している。
図37に示すように、オフ時において、1×10
-9A/mmの程度のリーク電流が流れる。また、ドレイン電圧が大きいほど、ドレイン電流はやや大きくなる。
【0210】
図38は、FETにおけるオフ時のドレイン電圧とゲート電流との間の関係を示すグラフである。
図38の横軸はドレイン電圧である。
図38の縦軸はゲート電流である。このときのゲート電圧は-10Vである。
図38は、ゲート電極G1がソース電極S1の周囲を囲んでいるFETのゲート電流を示している。
図38に示すように、オフ時において、1×10
-9A/mmの程度のリーク電流が流れる。また、ドレイン電圧が大きいほど、ゲート電流はやや大きくなる。
【0211】
以上のように、実際に製造したFETにおいて、リーク電流が抑制されている。なお、
図35から
図38における電流値はゲート幅で規格化されている。
【0212】
2.実験2
2-1.FETの作製
第1の実施形態の半導体素子100と同様のFETを作製した。c面サファイア基板の上にMOCVD法により低温GaNバッファ層、第1のアンドープGaN層、AlGaN層、第2のアンドープGaN層、MgドープpGaN層をこの順に積層した。低温GaNバッファ層、第1のアンドープGaN層、AlGaN層、第2のアンドープGaN層、MgドープpGaN層の膜厚は、それぞれ、30nm、1.0μm、47nm、80nm、53nmであった。低温GaNバッファ層の成膜温度は530℃であった。第1のアンドープGaN層、AlGaN層、第2のアンドープGaN層の成膜温度は1100℃であった。MgドープpGaN層のMg濃度を、5.0×1019cm-3から2.0×1020cm-3まで上昇させ、MgドープGaN層の表面付近のMg濃度を高くした。
【0213】
ゲート電極として、半導体層の側から順にNi、Auを積層した。ソース電極、ドレイン電極として、半導体層の側から順にTi、Al、Ni、Auを積層した。
【0214】
半導体層の転位密度として、3種類のものを用いた。第1の素子の転位密度は5.0×108 cm-2であった。第2の素子の転位密度は2.3×109 cm-2であった。第3の素子の転位密度は9.0×109 cm-2であった。
【0215】
2-2.評価方法
図39は、FETの評価に用いた回路図である。
図40は、FETの評価における出力値を示すグラフである。ドレイン電圧Vdは300Vであった。
【0216】
図41は、FETの立ち上がり時間trおよび立ち下がり時間tfの定義を示す図である。立ち上がり時間trとは、ドレイン電圧Vdが最大値の90%から10%まで下降するのにかかる時間である。立ち下がり時間tfとは、ドレイン電圧Vdが最大値の10%から90%まで上昇するのにかかる時間である。
図40に示したように、ドレイン電圧Vdが下降するのにともなって、ドレイン電流Idは増加している。
図40に示すように、ドレイン電流Idは小刻みに振動しているため、ドレイン電流Idの代わりにドレイン電圧Vdを立ち上がり時間trおよび立ち下がり時間tfの基準としている。
【0217】
2-3.実験結果(応答時間)
図42は、FETの特性を示す表である。実施例1-6では、立ち上がり時間が20ns以下であった。比較例1では、立ち上がり時間が42nsであった。実施例1-6では、ゲート長が4μmであるのに対し、比較例1では、ゲート長が8μmであった。
【0218】
図43は、FETにおける第2のアンドープGaN層(第3半導体層)とMgドープpGaN層(第4半導体層)との接合面積と半導体素子の耐圧との間の関係を示すグラフである。
図43の横軸は、ゲート幅方向1μm当たりの第2のアンドープGaN層(第3半導体層)の面積である。
図43の縦軸は、半導体素子の耐圧である。
【0219】
図43に示すように、前述の式(1)が成り立つ領域において、耐圧が1500V以上である。
101x-810 ≦ y ≦ 235x+585 ………(1)
x:ゲート幅方向の1μm当たりの第2半導体層と第3半導体層との間の接触面積
y:耐圧
【0220】
図44は、FETのゲート長と応答時間との間の関係を示すグラフである。
図44の横軸はゲート長である。
図44の横軸は応答時間である。
図44に示すように、ゲート長が短いほど、応答時間が短い傾向にある。ゲート長が6μm以下の場合には、立ち上がり時間trおよび立ち下がり時間tfは30ns以下である。ゲート長が4μm以下の場合には、立ち上がり時間trおよび立ち下がり時間tfは20ns以下である。
【0221】
図45は、FETにおける分極超接合領域PSJ1を除いた第3半導体層130と第4半導体層140との接合面積と応答時間との間の関係を示すグラフである。
図45の横軸は第3半導体層130と第4半導体層140との接合面積である。
図45の縦軸は応答時間である。
図45に示すように、第3半導体層130と第4半導体層140との接合面積が小さいほど、応答時間が短い傾向にある。
【0222】
図46は、FETにおける転位密度と接合面積との間の関係を示すグラフである。
図46の横軸は転位密度である。
図46の縦軸は第3半導体層130と第4半導体層140との接合面積である。
図46に示すように、大きな耐圧性を持たせるためには、第3半導体層130と第4半導体層140との接合面積を大きくすることが必要である。また、転位密度が高いほど、大きな接合面積をとる必要がある。
【0223】
【0224】
図48は、FETにおける転位密度とソース・ドレイン間距離との間の関係を示すグラフである。
図48の横軸は転位密度である。
図48の縦軸はソース・ドレイン間距離である。
図48に示すように、大きな耐圧性を持たせるためには、ソース・ドレイン間距離を大きくすることが必要である。また、転位密度が高いほど、ソース・ドレイン間距離を大きくとる必要がある。
【0225】
【0226】
図50は、FETにおける転位密度と応答時間との間の関係を示すグラフである。
図50の横軸は転位密度である。
図50の縦軸は応答時間である。
図50に示すように、転位密度が低いほど、立ち上がり時間trおよび立ち下がり時間tfのいずれも、短くなる傾向にある。特に、転位密度の低下により、立ち上がり時間trは、改善の効果が高い。
【0227】
図51は、
図50のデータをまとめた表である。
図50および
図51に示すように、転位密度が5×10
8 cm
-2以下の場合には、立ち上がり時間trは16ns以下である。転位密度が5×10
8 cm
-2以下の場合には、立ち下がり時間tfは10ns以下である。
【0228】
2-4.実験結果(オン抵抗)
図52は、FETにおける分極超接合長Lpsjと規格化オン抵抗との間の関係を示すグラフである。
図52の横軸は分極超接合長である。
図52の縦軸は規格化オン抵抗である。
図52に示すように、分極超接合長Lpsjが長いほど、規格化オン抵抗は上昇する。また、分極超接合長Lpsjが50μm以下の場合に、規格化オン抵抗が20mΩ・cm
2 以下である。分極超接合長Lpsjが2μmの場合に、規格化オン抵抗が1mΩ・cm
2 程度である。
【0229】
図53は、FETにおけるソース・ドレイン間距離と規格化オン抵抗との間の関係を示すグラフである。
図53の横軸はソース・ドレイン間距離である。
図53の縦軸は規格化オン抵抗である。
図53に示すように、ソース・ドレイン間距離が長いほど、規格化オン抵抗は上昇する。また、ソース・ドレイン間距離が60μm以下の場合に、規格化オン抵抗が20mΩ・cm
2 以下である。ソース・ドレイン間距離が11μmの場合に、規格化オン抵抗が1mΩ・cm
2 程度である。
【0230】
2-5.実験結果(転位密度)
図54は、FETにおける転位密度と半導体素子の特性との間の関係を示す表である。
図54に示すように、転位密度が低いほど、X線ロッキングカーブの半値幅の値は小さい。また、転位密度が低いほど、シート抵抗は小さい。そして、転位密度が低いほど、2次元ホールガスの移動度は大きい。シート抵抗は2次元電子ガスの移動度に影響される。したがって、転位密度が低くなり結晶性が向上することにより、2次元電子ガスの移動度が大きくなると考えられる。一方、2次元ホールガスの濃度は、転位密度にほとんど依存しない。
【0231】
2-6.実験結果(アクティブ領域)
図55は、FETのチップサイズとドレイン電圧Vdが2Vのときの電流値との間の関係を示す表である。
図55に示すように、チップサイズが大きいほど、チップ外周長、チップ面積、アクティブ領域面積は大きい。アクティブ領域面積は、オン状態で実際に電流が流れる半導体の領域である。アクティブ領域面積は、素子機能領域FR1の面積から、ソース電極およびドレイン電極と半導体層とが接触している領域の面積と、最も外側のソース電極接触領域と第2半導体層の外周部との間に挟まれた領域の面積と、を引いた面積である。
【0232】
また、チップサイズが大きいほど、ゲート幅も大きい。ゲート幅とは、ゲート電極G1がソース電極S1を囲む線の合計の長さである。
【0233】
図56は、FETのアクティブ領域面積とドレイン電圧Vdが2Vのときの電流値との間の関係を示すグラフである。
図56の横軸はアクティブ領域面積である。
図56の縦軸はドレイン電圧Vdが2Vのときの電流値である。
図56に示すように、アクティブ領域面積が2.2mm
2 以上の場合に、ドレイン電圧Vdが2Vのときの電流値は30A以上である。アクティブ領域面積が5.0mm
2 以上の場合に、ドレイン電圧Vdが2Vのときの電流値は100A以上である。
【0234】
3.実験3
3-1.FETの作製
第2の実施形態の半導体素子200と同様のFETを作製した。分極超接合長Lpsj以外の点については、実験2と同様である。
【0235】
3-2.実験結果(分極超接合長)
図57は、FETにおける分極超接合長Lpsjとソースコンタクト電極S1cとドレインコンタクト電極D1cとの間の距離Lsdを変えたときのFETの耐圧性を示す表である。
図57では、先端部分における分極超接合長Lpsjの最小値と先端部分以外の部分における分極超接合長Lpsjの最小値とを変えた場合を示している。
【0236】
図58は、FETにおける分極超接合長Lpsjとソースコンタクト電極S1cとドレインコンタクト電極D1cとの間の距離Lsdを変えなかったときのFETの耐圧性を示す表である。
図58では、先端部分における分極超接合長Lpsjと先端部分以外の部分における分極超接合長Lpsjとは同じである。
【0237】
図59は、FETにおける分極超接合長LpsjとFETの耐圧性との間の関係を示すグラフである。
図59の横軸は分極超接合長Lpsjである。
図59の縦軸はFETの耐圧性である。
図59に示すように、FETの耐圧性は、分極超接合長Lpsjにほぼ比例する。
【0238】
このように、FETの耐圧は分極超接合長Lpsjの最小値に依存する。
【0239】
4.実験4
4-1.FETの作製
第3の実施形態の半導体素子300と同様のFETを作製した。電極と半導体層との間の距離以外の点については、実験2と同様である。
【0240】
4-2.実験結果(電極と半導体層との間の距離)
図60は、FETにおけるドレイン電極接触領域DC1と分極超接合面との間の距離と耐圧性との間の関係を示すグラフである。
図60の横軸はドレイン電極接触領域DC1と分極超接合面との間の距離である。
図60の縦軸は耐電圧である。
図60に示すように、ドレイン電極接触領域DC1と第3の半導体層130との間の距離が10μm以下と短い場合であっても、半導体素子の耐圧性は十分に高い。
【0241】
図61は、FETにおける分極超接合長Lpsjと半導体素子の耐圧性との間の関係を示すグラフである。
図61の横軸は分極超接合長Lpsjである。
図61の縦軸は半導体素子の耐圧である。
図61に示すように、分極超接合長Lpsjが長いほど、半導体素子の耐圧性は高い。半導体素子の耐圧は、分極超接合長Lpsjにある程度比例する。
【0242】
5.実験5
5-1.FETの作製
第4の実施形態の半導体素子400と同様のFETを作製した。パッド電極以外については実験2と同様である。
【0243】
5-2.実験結果(パッド電極)
図62は、FETのドレイン電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
図62の横軸はドレイン電圧である。
図62の縦軸はドレイン電流である。
図62に示すように、ゲート電圧を上昇させると、ドレイン電流が大きくなる傾向にある。ドレイン電圧が約15V以上でドレイン電流が飽和する。
【0244】
図63は、FETのドレイン電圧が0.1Vのときのゲート電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
図63の横軸はゲート電圧である。
図63の縦軸はドレイン電流である。
【0245】
図64は、FETのオフ時のドレイン電圧とドレイン電流との間の関係を示すグラフである。
図64の横軸はドレイン電圧である。
図64の縦軸はドレイン電流である。ゲート電圧は-10Vである。
【0246】
図65は、FETのオフ時のドレイン電圧とゲート電流との間の関係を示すグラフである。
図65の横軸はドレイン電圧である。
図65の縦軸はゲート電流である。ゲート電圧は-10Vである。
【0247】
図62から
図65における電流値はゲート幅で規格化されている。
【0248】
6.実験6
6-1.ショットキーバリアダイオードの製造
第8の実施形態と同様のショットキーバリアダイオードを製造した。その半導体層の積層構造および製造条件は、実験1と同様である。分極超接合長Lpsjを変えた素子を製造した。
【0249】
6-2.実験結果(逆回復電流)
図66は、分極超接合長Lpsjが20μmのショットキーバリアダイオードの逆回復時間特性を示すグラフである。
図66の横軸は時間である。
図66の縦軸はアノード電流である。逆回復時間は21.8nsであった。逆回復電流のピーク値は5.0Aであった。
【0250】
6-3.実験結果(順方向特性)
図67は、ショットキーバリアダイオードの順方向特性を示すグラフである。
図67の横軸はアノード電圧である。
図67の縦軸はアノード電流である。
図67に示すように、分極超接合長Lpsjが短いほど、アノード電流が大きくなる傾向がある。つまり、分極超接合長Lpsjが短いほど、規格化オン抵抗が小さくなる傾向がある。
【0251】
6-4.実験結果(逆方向特性)
図68は、ショットキーバリアダイオードの逆方向特性を示すグラフである。
図68の横軸はカソード電圧である。
図68の縦軸はアノード電流である。
図68に示すように、分極超接合長Lpsjが短いほど、耐圧性は低い。分極超接合長Lpsjが15μm、20μm、25μm、30μm、40μmである場合に、それぞれ、耐圧性はおよそ2000V、2600V、3000V、3000V超、3000V超であった。
【0252】
6-5.実験結果(分極超接合長)
図69は、分極超接合長Lpsjとアノード電極接触領域AC1とカソード電極接触領域CC1との間の距離Lacを変えたときのショットキーバリアダイオードの耐圧性を示す表である。
図69では、先端部分における分極超接合長Lpsjの最小値と先端部分以外の部分における分極超接合長Lpsjの最小値とを変えた場合を示している。
【0253】
先端部分の分極超接合長Lpsjおよび距離Lacを先端部分以外の分極超接合長Lpsjおよび距離Lac以上にすることにより、ショットキーバリアダイオードの耐圧は向上する。
【0254】
(付記)
1.第1
第1の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層または第3半導体層の上のソース電極およびドレイン電極と、第4半導体層の上のゲート電極と、ゲート電極と第4半導体層とが接触するゲート電極接触領域と、ソース電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するソース電極接触領域と、ドレイン電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するドレイン電極接触領域と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。ゲート電極接触領域を第2半導体層に射影した領域は、ソース電極接触領域またはドレイン電極接触領域を第2半導体層に射影した領域の周囲を囲んでいる。
【0255】
第2の態様における半導体素子においては、ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との一方が、棒状形状を有する。ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との他方が、櫛歯形状を有する。ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との一方の棒状形状が、ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との他方の櫛歯形状の間に配置されている。
【0256】
第3の態様における半導体素子においては、ソース電極は、ソース配線電極を有する。ドレイン電極は、ドレイン配線電極を有する。ソース配線電極を第2半導体層に射影した領域は、ドレイン配線電極を第2半導体層に射影した領域と重ならない。
【0257】
第4の態様における半導体素子においては、ソース電極は、ソース配線電極を有する。ドレイン電極は、ドレイン配線電極を有する。ゲート電極は、ゲート配線電極を有する。ソース配線電極を第2半導体層に射影した領域とドレイン配線電極を第2半導体層に射影した領域との2つの領域のうちの一方は、ゲート配線電極を第2半導体層に射影した領域と部分的に重なる。ソース配線電極を第2半導体層に射影した領域とドレイン配線電極を第2半導体層に射影した領域との2つの領域のうちの他方は、ゲート配線電極を第2半導体層に射影した領域と重ならない。
【0258】
第5の態様における半導体素子においては、ソース配線電極を第2半導体層に射影した領域とドレイン配線電極を第2半導体層に射影した領域との2つの領域のうちの一方と、ゲート配線電極を第2半導体層に射影した領域と、が部分的に重なる箇所では、ソース配線電極またはドレイン配線電極と第1半導体層との間の距離は、ゲート配線電極と第1半導体層との間の距離よりも大きい。
【0259】
第6の態様における半導体素子においては、第1半導体層と第2半導体層とは直接接触している。第1半導体層と第2半導体層とが接触する接触面の形状が、長方形である。棒状形状の長手方向が、長方形の短辺に平行な方向に配置されている。
【0260】
第7の態様における装置は、上記の半導体素子を有する。
【0261】
2.第2
第1の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層または第3半導体層の上のソース電極およびドレイン電極と、第4半導体層の上のゲート電極と、ゲート電極と第4半導体層とが接触するゲート電極接触領域と、ソース電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するソース電極接触領域と、ドレイン電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するドレイン電極接触領域と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との一方が、棒状形状を有する。ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との他方が、櫛歯形状を有する。ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との一方の棒状形状が、ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との他方の櫛歯形状の間に配置されている。
【0262】
第2の態様における半導体素子においては、ゲート電極接触領域を第2半導体層に射影した領域は、ソース電極接触領域またはドレイン電極接触領域を第2半導体層に射影した領域の周囲を囲んでいる。
【0263】
第3の態様における半導体素子においては、ソース電極は、ソース配線電極を有する。ドレイン電極は、ドレイン配線電極を有する。ソース配線電極を第2半導体層に射影した領域は、ドレイン配線電極を第2半導体層に射影した領域と重ならない。
【0264】
第4の態様における半導体素子においては、ソース電極は、ソース配線電極を有する。ドレイン電極は、ドレイン配線電極を有する。ゲート電極は、ゲート配線電極を有する。ソース配線電極を第2半導体層に射影した領域とドレイン配線電極を第2半導体層に射影した領域との2つの領域のうちの一方は、ゲート配線電極を第2半導体層に射影した領域と部分的に重なる。ソース配線電極を第2半導体層に射影した領域とドレイン配線電極を第2半導体層に射影した領域との2つの領域のうちの他方は、ゲート配線電極を第2半導体層に射影した領域と重ならない。
【0265】
第5の態様における半導体素子においては、ソース配線電極を第2半導体層に射影した領域とドレイン配線電極を第2半導体層に射影した領域との2つの領域のうちの一方と、ゲート配線電極を第2半導体層に射影した領域と、が部分的に重なる箇所では、ソース配線電極またはドレイン配線電極と第1半導体層との間の距離は、ゲート配線電極と第1半導体層との間の距離よりも大きい。
【0266】
第6の態様における半導体素子においては、第1半導体層と第2半導体層とは直接接触している。第1半導体層と第2半導体層とが接触する接触面の形状が、長方形である。棒状形状の長手方向が、長方形の短辺に平行な方向に配置されている。
【0267】
第7の態様における装置は、上記の半導体素子を有する。
【0268】
3.第3
第1の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層または第3半導体層の上のソース電極およびドレイン電極と、第4半導体層の上のゲート電極と、ゲート電極と第4半導体層とが接触するゲート電極接触領域と、ソース電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するソース電極接触領域と、ドレイン電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するドレイン電極接触領域と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との一方が、棒状形状を有する。ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との他方が、櫛歯形状を有する。ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との一方の棒状形状が、ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との他方の櫛歯形状の間に配置されている。この半導体素子は、第3半導体層が形成されているとともに第4半導体層が形成されていない領域であってゲート電極接触領域とドレイン電極接触領域との間に位置する分極超接合領域を有する。棒状形状の先端部分におけるソース電極接触領域からドレイン電極接触領域までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域の長さが、棒状形状の先端部分以外の部分におけるソース電極接触領域からドレイン電極接触領域までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域の長さ以上である。
【0269】
第2の態様における半導体素子においては、棒状形状の先端部分は、弧状の弧状部である。棒状形状の先端部分以外の部分は、直線形状の棒状部である。
【0270】
第3の態様における半導体素子においては、棒状形状の先端部分以外の部分におけるソース電極接触領域からドレイン電極接触領域までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域の長さに対する、棒状形状の先端部分におけるソース電極接触領域からドレイン電極接触領域までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域の長さが、1.05以上である。
【0271】
第4の態様における半導体素子においては、棒状形状の先端部分におけるソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との間の距離が、棒状形状の先端部分以外の部分におけるソース電極接触領域とドレイン電極接触領域との間の距離以上である。
【0272】
第5の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層の上のカソード電極と、第4半導体層の上のアノード電極と、カソード電極と第2半導体層とが接触するカソード電極接触領域と、アノード電極と第4半導体層とが接触するアノード電極接触領域と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。アノード電極は、第2半導体層または第1半導体層と接触している。カソード電極接触領域とアノード電極接触領域との一方は、棒状形状を有する。カソード電極接触領域とアノード電極接触領域との他方は、櫛歯形状を有する。カソード電極接触領域とアノード電極接触領域との一方の棒状形状が、カソード電極接触領域とアノード電極接触領域との他方の櫛歯形状の間に配置されている。この半導体素子は、第3半導体層が形成されているとともに第4半導体層が形成されていない領域であってカソード電極接触領域とアノード電極接触領域との間に位置する分極超接合領域を有する。棒状形状の先端部分におけるカソード電極接触領域からアノード電極接触領域までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域の長さが、棒状形状の先端部分以外の部分におけるカソード電極接触領域からアノード電極接触領域までの最短距離を結ぶ方向の分極超接合領域の長さ以上である。
【0273】
第6の態様における半導体素子は、第4半導体層から第2半導体層まで達する第1凹部を有する。カソード電極は、少なくとも第1凹部の上に形成されている。
【0274】
第7の態様における半導体素子においては、カソード電極は、第1半導体層の側面と第2半導体層の側面とに接触している。
【0275】
第8の態様における半導体素子は、アノード電極と第4半導体層とが接触するアノード電極接触領域と、第4半導体層から第1半導体層まで達する第2凹部と、を有する。アノード電極は、第2凹部の上に形成されているとともに第1半導体層または第2半導体層と接触している。
【0276】
第9の態様における半導体素子は、第3半導体層および第4半導体層とアノード電極との間に絶縁層を有する。
【0277】
第10の態様における装置は、上記の半導体素子を有する。
【0278】
4.第4
第1の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層または第3半導体層の上のソース電極およびドレイン電極と、第4半導体層の上のゲート電極と、ゲート電極と第4半導体層とが接触するゲート電極接触領域と、ソース電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するソース電極接触領域と、ドレイン電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するドレイン電極接触領域と、第4半導体層から第2半導体層まで達する第1凹部および第2凹部と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。ソース電極は、第1凹部の上に形成されている。ドレイン電極は、第2凹部の上に形成されている。ドレイン電極接触領域と第3半導体層との間の距離が、ソース電極接触領域と第3半導体層との間の距離より大きい。
【0279】
第2の態様における半導体素子においては、ドレイン電極接触領域と第3半導体層との間の距離が、10μm以下である。
【0280】
第3の態様における半導体素子においては、ソース電極接触領域とドレイン電極接触領域とゲート電極接触領域とを第2半導体層に射影した場合に、ドレイン電極接触領域を射影した領域とゲート電極接触領域を射影した領域との間の距離が、ソース電極接触領域を射影した領域とゲート電極接触領域を射影した領域との間の距離よりも大きい。
【0281】
第4の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層の上のカソード電極と、第4半導体層の上のアノード電極と、カソード電極と第2半導体層とが接触するカソード電極接触領域と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。カソード電極接触領域と第3半導体層との間の距離が、10μm以下である。
【0282】
第5の態様における半導体素子は、第4半導体層から第2半導体層まで達する第1凹部を有する。カソード電極は、少なくとも第1凹部の上に形成されている。
【0283】
第6の態様における半導体素子においては、カソード電極は、第1半導体層の側面と第2半導体層の側面とに接触している。
【0284】
第7の態様における半導体素子は、アノード電極と第4半導体層とが接触するアノード電極接触領域と、第4半導体層から第1半導体層まで達する第2凹部と、を有する。アノード電極は、第2凹部の上に形成されているとともに第1半導体層または第2半導体層と接触している。
【0285】
第8の態様における半導体素子は、第3半導体層および第4半導体層とアノード電極との間に絶縁層を有する。
【0286】
第9の態様における装置は、上記の半導体素子を有する。
【0287】
5.第5
第1の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層または第3半導体層の上のソース電極およびドレイン電極と、第4半導体層の上のゲート電極と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。ゲート電極とソース電極とドレイン電極とのうちの少なくとも一つは、コンタクト電極と配線電極とパッド電極とを有する。配線電極は、コンタクト電極とパッド電極とを連結する。配線電極は、弧状に湾曲する湾曲部を有する。
【0288】
第2の態様における半導体素子においては、ゲート電極とソース電極とドレイン電極とのうちの少なくとも一つは、複数のパッド電極を有する。
【0289】
第3の態様における半導体素子においては、ゲート電極とソース電極とドレイン電極とは、コンタクト電極と配線電極とパッド電極とを有する。この半導体素子は、ゲート電極の配線電極とソース電極の配線電極との間に絶縁層を有する。絶縁層は、第1絶縁層と、第1絶縁層の上の第2絶縁層と、を有する。
【0290】
第4の態様における半導体素子においては、絶縁層は、無機誘電体膜と有機誘電体膜との少なくとも一方を有する。
【0291】
第5の態様における半導体素子においては、第1半導体層と第2半導体層とは直接接触している。第1半導体層と第2半導体層とが接触する接触面の形状が、長方形である。
【0292】
第6の態様における装置は、上記の半導体素子を有する。
【0293】
6.第6
第1の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層または第3半導体層の上のソース電極およびドレイン電極と、第4半導体層の上のゲート電極と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。転位密度が1×106 cm-2以上1×1010cm-2以下である。第2半導体層と第3半導体層との間の接触面積が、ゲート幅方向の1μm当たり、10μm2 以上200μm2 以下である。
【0294】
第2の態様における半導体素子においては、転位密度が、5×109 cm-2以下である。
【0295】
第3の態様における半導体素子においては、第2半導体層と第3半導体層との間の接触面積と耐圧とが、次式
101x-810 ≦ y ≦ 235x+585
x:ゲート幅方向の1μm当たりの第2半導体層と第3半導体層との間の接触面積
y:耐圧
を満たす。
【0296】
第4の態様における半導体素子においては、ソース電極接触領域からドレイン電極接触領域までの最短距離を結ぶ方向における第4半導体層の長さであるゲート長が、6μm以下である。300Vスイッチングでの立ち上がり時間および立ち下がり時間がいずれも、30ns以下である。
【0297】
第5の態様における半導体素子は、上記の半導体素子を有する。
【0298】
7.第7
第1の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層または第3半導体層の上のソース電極およびドレイン電極と、第4半導体層の上のゲート電極と、ソース電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するソース電極接触領域と、ドレイン電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するドレイン電極接触領域と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。この半導体素子は、第3半導体層が形成されているとともに第4半導体層が形成されていない領域であってゲート電極接触領域とドレイン電極接触領域との間に位置する分極超接合領域を有する。ソース電極接触領域からドレイン電極接触領域までの最短距離を結ぶ方向における分極超接合領域の長さである分極超接合長が、50μm以下である。ソース電極接触領域からドレイン電極接触領域までの最短距離を結ぶ方向における第4半導体層の長さであるゲート長が、6μm以下である。
【0299】
第2の態様における半導体素子においては、規格化オン抵抗が、20mΩ・cm2 以下である。
【0300】
第3の態様における半導体素子においては、300Vスイッチングでの立ち上がり時間および立ち下がり時間がいずれも、30ns以下である。
【0301】
第4の態様における装置は、上記の半導体素子を有する。
【0302】
8.第8
第1の態様における半導体素子は、第1半導体層と、第1半導体層より上層の第2半導体層と、第2半導体層より上層の第3半導体層と、第3半導体層より上層の第4半導体層と、第2半導体層または第3半導体層の上のソース電極およびドレイン電極と、第4半導体層の上のゲート電極と、ソース電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するソース電極接触領域と、ドレイン電極と第2半導体層または第3半導体層とが接触するドレイン電極接触領域と、を有する。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層と第4半導体層とは、III 族窒化物半導体層である。第2半導体層のバンドギャップは、第1半導体層および第3半導体層のバンドギャップよりも大きい。第1半導体層と第2半導体層と第3半導体層とは、アンドープの半導体層である。第4半導体層は、p型半導体層である。第2半導体層における第3半導体層側の面積から、ソース電極接触領域およびドレイン電極接触領域の面積と、最も外側のソース電極接触領域と第2半導体層の外周部との間に挟まれた領域の面積と、を引いたアクティブ領域面積が、2.2mm2 以上である。
【0303】
第2の態様における半導体素子においては、ソース電極接触領域からドレイン電極接触領域までの最短距離を結ぶ方向における第4半導体層の長さであるゲート長が、6μm以下である。
【0304】
第3の態様における半導体素子においては、ゲート幅が、300mm以上である。
【0305】
第4の態様における半導体素子においては、半導体素子の外周長が13mm以上である。
【0306】
第5の態様における半導体素子においては、立ち上がり時間および立ち下がり時間がいずれも、30ns以下である。
【0307】
第6の態様における半導体素子においては、ソース電極は、素子外部に露出するソースパッド電極を有する。ドレイン電極は、素子外部に露出するドレインパッド電極を有する。ソースパッド電極およびドレインパッド電極を第2半導体層に射影した領域は、第2半導体層の形成領域と重ならない。
【0308】
第7の態様における半導体素子は、上記の半導体素子を有する。
【符号の説明】
【0309】
100…半導体素子
Sub1…サファイア基板
Bf1…バッファ層
110…第1半導体層
120…第2半導体層
130…第3半導体層
140…第4半導体層
S1…ソース電極
SC1…ソース電極接触領域
D1…ドレイン電極
DC1…ドレイン電極接触領域
G1…ゲート電極
GC1…ゲート電極接触領域