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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】フロントフォーク内蔵油圧緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/20 20060101AFI20240627BHJP
   F16F 9/26 20060101ALI20240627BHJP
   F16F 9/40 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F16F9/20
F16F9/26
F16F9/40 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024010629
(22)【出願日】2024-01-28
【審査請求日】2024-04-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591124536
【氏名又は名称】株式会社オリジナルボックス
(74)【代理人】
【識別番号】100199668
【弁理士】
【氏名又は名称】林 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】江見 久郎
(72)【発明者】
【氏名】國政 九磨
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-521923(JP,A)
【文献】特開2019-052672(JP,A)
【文献】特開2009-275912(JP,A)
【文献】特開2013-096470(JP,A)
【文献】実開平03-035337(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/20
F16F 9/26
F16F 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に連結されるインナーチューブと車輪側に連結されるアウターチューブとで閉塞された自動二輪車のフロントフォークに内設される油圧緩衝器であって、前記油圧緩衝器は前記インナーチューブの中心位置に吊設されたピストンロッドと、前記アウターチューブの中心位置に垂設固定されるワーキングシリンダと、前記ピストンロッドに貫設され減衰力を発生させるメインピストン部と、同じく前記ピストンロッドの先端部近傍に貫設され作動油を加圧する加圧ピストン部とを有し、前記ピストンロッドの両端が前記ワーキングシリンダ内に画成され前記メインピストン部の作動領域であるメインシリンダ領域から其々突出するスルーロッド形式の油圧緩衝器であることを特徴とするフロントフォーク内油圧緩衝器。
【請求項2】
前記フロントフォークの内部には、作動油が所要高さまで満たされたリザーバータンク部の油室と、大気圧の空気が満たされた空気室とを有し、前記ワーキングシリンダは前記メインシリンダ領域の下方に延設された加圧シリンダ領域と、前記加圧シリンダ領域と前記リザーバータンク部との間に作動油の流通が可能となる連通孔とを有し、前記メインピストン部はメインピストンと圧側減衰バルブと、伸び側減衰バルブとを有し、前記加圧ピストン部は加圧ピストンと、前記リザーバータンク部から前記加圧シリンダ領域へ作動油が流入を許容すると共にその逆流を阻止するチェックバルブと、作動油の加圧用の加圧バルブとを有することを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク内油圧緩衝器。
【請求項3】
前記ワーキングシリンダの上端部に嵌合され前記ピストンロッドを摺動自在に貫通させるトップキャップと、前記ワーキングシリンダの所要位置に配設され前記メインシリンダ領域と前記加圧シリンダ領域とを区画すると共に、前記ピストンロッドを貫通させるボトムキャップとを有し、前記トップキャップは前記ピストンロッドを摺動自在とするための軸受部材と、作動油や気泡の流出も可能となる摺動隙間とを有し、前記ボトムキャップは前記ピストンロッドを摺動自在とするための軸受部材と、液密性を得るためのシール部材と、前記加圧シリンダ領域から前記メインシリンダ領域への作動油の流入を許容し逆流は阻止するチェックバルブとを有していることを特徴とする請求項2に記載のフロントフォーク内油圧緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車などのフロントフォークに内蔵される油圧緩衝器に関し、詳しくは、シリンダ内やリザーバータンク内で発生するキャビテーションを抑制し、伸縮作動に応じた所要な減衰力を発生するフロントフォークに内蔵される油圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動二輪車などのフロントフォークに内蔵される油圧緩衝器としてアウターチューブ内にインナーチューブを摺動自在に挿入し、インナーチューブの下端部にボトムピースを嵌装し、このボトムピースからインナーチューブ内にダンパシリンダ(ワーキングシリンダ)を立設し、このダンパシリンダ(ワーキングシリンダ)の下端部には内外を連通する油孔(連通孔)を形成した油圧緩衝器が公開されている。
【0003】
この特許文献1に記載の従来の油圧緩衝器は、図2に示すように、圧縮工程でピストンロッド1がワーキングシリンダ2に進入すると、油室3B内の作動油の一部がピストン部圧側流路7Dを通過し、ピストン部チェックバルブ7Cを開弁して油室3Aに移動する。さらに、ピストンロッド1の進入による体積増加分で、ワーキングシリンダ2の油室3A,3B内の油圧が上昇する。そして、油圧が上昇し所要圧力に達した作動油は、ボトム部圧側流路4Aを通過し、ボトム部バルブ4Bを押し広げ、ワーキングシリンダ2の外部である油室3Cに流出し、圧側の減衰力を発生させる構成となっている。
【0004】
また、特許文献1に記載の従来の油圧緩衝器は、図3に示す伸び工程では、ピストンロッド1がワーキングシリンダ2から退出し、ピストン7より上方の油室3Aの作動油が、ピストン部伸側流路7Aを通過しピストン部バルブ7Bを押し広げ、ピストン7より下方の油室3Bへ流入し伸び側の減衰力を発生させ、退出したピストンロッド1の体積減少分を補給するための作動油を、リザーバータンクの油室3Cからワーキングシリンダ2内の油室3Bへ補給通路4Dを経由し、ボトム部チェックバルブ4Cを開弁して流入させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平3-35337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の油圧緩衝器200は、図2に示す圧縮工程で圧側の減衰力をボトム部バルブ4Bだけで発生させるために、ワーキングシリンダ2の油室3A,3Bが高圧となる。一方、リザーバータンクの油室3Cは略大気圧であるために、ボトム部圧側流路4Aを通過し、ボトム部バルブ4Bを押し広げ流出した作動油は、一気に、高圧から大気圧に減圧されることで、リザーバータンクの作動油中に気泡6が発生するキャビテーションが引き起こされることがある。
【0007】
さらに、キャビテーションでリザーバータンクの作動油中に気泡6が発生した、従来の油圧緩衝器200は、図3に示す伸び工程に移行すると、作動油が油室3Cから油室3Bへ流入すると同時に気泡6も油室3Bに流入する問題がある。
【0008】
また、キャビテーションが発生すると、伸び工程で油室3Bへ補給される作動油の量が、油室3Bへ流入する気泡6の体積分だけ不足する。また、油室3B内に気泡6が流入した状態で、さらに圧縮工程に移行すると、ピストンロッド1がワーキングシリンダ2に進入しても、気泡6が圧縮されるだけで、作動油がリザーバータンクの油室3Cへ流出せず、圧側の減衰力が発生しない遊びのストローク域が発生する問題もある。
【0009】
この圧縮工程終了時点で、ピストン7より下方の油室3Bの作動油量が不足していたことに伴い、ピストン7より上方の油室3Aの作動油量も不足している状態になっている。次に、伸び工程に移行して、ピストンロッド1がワーキングシリンダ2から退出し、油室3Aの作動油がピストン7で圧縮されても、油室3Aの作動油の圧力が直ぐに上昇せず、伸び側の減衰力も発生しない遊びのストローク域が発生すると同時に、ピストン7より下方の油室3Bでは気泡6がふくらみボトム部チェックバルブ4Cが開くタイミングが遅れることで、作動油の補給量はさらに不足し、不足する度合いは増幅する。
【0010】
上述のように、従来の油圧緩衝器200は、作動油の圧力差を利用してボトム部チェックバルブ4Cの開閉を行うために、一度キャビテーションが発生すると作動油の移動遅れが発生して、作動油の補給が上手くできない問題があり、さらに、キャビテーションによって発生する気泡6の影響によって、ピストンロッド1の伸縮作動に対応した所要の減衰力が発生しない遊びのストローク域が発生する問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたものである。詳述するならば、車体側に連結される略円筒形のインナーチューブと、車輪側に連結される略円筒形のアウターチューブとで閉塞された内室を画成する自動二輪車のフロントフォークの径方向中心位置に内設され、前記フロントフォークの伸縮作動に連動して所要の減衰力を発生させる油圧緩衝器であって、前記油圧緩衝器は、前記インナーチューブの径方向中心位置に吊設されたピストンロッドと、前記アウターチューブの径方向中心位置に垂設固定されている略円筒形のワーキングシリンダと、前記ピストンロッドの中間部近傍所要位置に貫設され、減衰力を発生させるメインピストン部と、同じく前記ピストンロッドの先端部近傍に貫設され、補給する作動油を加圧する加圧ピストン部とを有し、前記ピストンロッドの両端部が前記ワーキングシリンダ内に画成され、前記メインピストンの作動領域であるメインシリンダ領域から其々突出するスルーロッド形式の油圧緩衝器である構成が含まれる。
【0012】
本発明のフロントフォーク内油圧緩衝器は、所謂スルーロッド形式の油圧緩衝器であることで、減衰力を発生させるメインシリンダ領域から外部への作動油の流出量が少なく抑えられることに加え、メインシリンダ領域から突出するピストンロッドの先端部近傍に貫設された加圧ピストン部が、ピストンロッドの伸縮作動と連動し、作動油を強制的に補給するので補給遅れがなく、所要量の作動油を常にメインシリンダ領域に確保できる効果がある。
【0013】
本発明には、前記内室は作動油が所要高さまで満たされたリザーバータンク部の油室と、前記油室の上方に大気圧の空気が満たされた空気室とを有し、前記ワーキングシリンダは前記メインシリンダ領域と、前記メインシリンダ領域の下方に延設され、前記加圧ピストン部の作動領域である加圧シリンダ領域とを有し、前記加圧シリンダ領域より下側所要位置に前記ワーキングシリンダと前記リザーバータンク部との間で、作動油の流通が可能となる連通孔とを有し、前記メインピストン部はメインピストンと前記メインピストンの上方側に圧側減衰バルブと、前記メインピストンの下方側に伸び側減衰バルブとを有し、前記加圧ピストン部は加圧ピストンと、前記加圧ピストンの上方に前記リザーバータンク部から前記加圧シリンダ領域へ作動油が流入することを許容すると共に、その逆流を阻止するチェックバルブと、前記加圧ピストンの下方側に作動油の加圧用の加圧バルブとを有する構成が含まれる。
【0014】
本発明のフロントフォーク内油圧緩衝器は、スルーロッド形式の油圧緩衝器であることで、従来の油圧緩衝器は作動油がメインシリンダ領域からリザーバータンク部へ流出する際の大きな圧力差で、リザーバータンク部の作動油内でキャビテーションが発生し易かったが、本発明のフロントフォーク内油圧緩衝器では、作動油の流出量を抑制していることで、キャビテーションの発生を抑止できる効果がある。
【0015】
本発明には、前記ワーキングシリンダの上端部に嵌合され、前記ピストンロッドを摺動自在に貫通させるトップキャップと、前記ワーキングシリンダの所要位置に配設され前記メインシリンダ領域と前記加圧シリンダ領域とを区画すると共に、前記ピストンロッドを貫通させるボトムキャップとを有し、前記トップキャップは前記ピストンロッドを摺動自在とするための軸受部材と、作動油や気泡の流出も可能となる摺動隙間とを有し、前記ボトムキャップは前記ピストンロッドを摺動自在とするための軸受部材と、液密性のためのシール部材と、前記加圧シリンダ領域から前記メインシリンダ領域への作動油の流入を許容し、逆流は阻止するチェックバルブとを有している構成が含まれる。
【0016】
本発明のフロントフォーク内油圧緩衝器は、上述の構成であるから、作動油の流れが、加圧ピストンで供給されオーバーフローする部分以外は、リザーバータンク部から加圧シリンダ領域へ流れ、さらにメインシリンダ領域へ流入し、トップキャップの摺動隙間を通過して上部よりリザーバータンク部に流出する一連の流れとなる。従って、組立時のエア抜き作業も作動油をリザーバータンク部に供給して、伸縮作動をさせるだけで容易に完了し、また、特殊な作動状況などによりキャビテーションが発生したとしても、フロントフォークを伸縮作動させるだけで、自然に気泡が作動油とともにリザーバータンク部に流出し、安定した所要の減衰力を発生することができる効果がある。
【発明の効果】
【0017】
従来の油圧緩衝器は、ワーキングシリンダとリザーバータンク部との間で作動油の移動量が多いことに加えて、そのワーキングシリンダとリザーバータンク部との間の移動は、ワーキングシリンダとリザーバータンク部の圧力差で開弁して作動油の補給を行っていたので、補給が間に合わない問題があったが、本発明のフロントフォーク内油圧緩衝器は、従来の油圧緩衝器に比べ、メインシリンダ領域とリザーバータンク部間での作動油の移動が少なくて済み、さらに、加圧ピストンがピストンロッドに貫設されて、伸縮動作と連動して強制的に作動油を補給することができることで、従来の油圧緩衝器で発生していた、メインシリンダ領域内の作動油が不足する状態が発生しない効果がある。
【0018】
また、トップキャップ部にシール部材を配設しないことで、ピストンロッドとの摩擦抵抗を低減できると同時に、摺動隙間を有することとなるので油圧緩衝器組立時のエア抜きが容易にできると共に、作動油内にキャビテーションで気泡が発生しても、伸縮作動をさせると作動油が上方に流れることで、気泡も自然と摺動隙間からリザーバータンク部に流出し気泡を空気室に移行させることができる。
【0019】
従来の油圧緩衝器は、ワーキングシリンダにピストンロッドが進入して、ワーキングシリンダ内のピストンロッドの体積を増加させることで、少量の作動油を流出させ大きな圧側の減衰力を発生させる構成のためワーキングシリンダ内の圧力が高圧になっていたのに対し、本発明のフロントフォーク内油圧緩衝器は、メインピストンの上下油室間における作動油の移動に依存し、圧側減衰力を発生させるので、同じ減衰力を発生させる場合のピストンロッドとメインピストンの断面積の比較により、メインシリンダ内の圧力上昇を従来の油圧緩衝器の数分の一に抑制できることとなり、作動油内でのキャビテーションの発生も抑制できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るフロントフォーク内油圧緩衝器の実施形態を説明する断面図である。
図2】従来の油圧緩衝器における圧縮工程を説明する断面図である。
図3】従来の油圧緩衝器における伸び工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。ただし、図面は模式的に図示しており、実際の寸法や比率等とは必ずしも一致しない。また、図面相互間において、お互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることがある。尚、本実施形態において、フロントフォーク内油圧緩衝器を説明する場合には、フロントフォーク内油圧緩衝器を車体に取りつけた状態を基準にして車体側を上側、車輪側を下側、フロントフォークの幅方向に沿った向きを径方向と表現することとする。
【0022】
図1に示されるように、フロントフォーク内油圧緩衝器100は、車体側に連結される略円筒形状のインナーチューブ80と、車輪側に連結される略円筒形状のアウターチューブ90とで閉塞された内室を画成するフロントフォークの径方向の略中心位置に内蔵され、フロントフォークの伸縮作動に連動して所要の減衰力を発生させる。
【0023】
そのフロントフォーク内油圧緩衝器100は、インナーチューブ80の径方向の略中心位置に上端部を連結し吊設されたピストンロッド10と、アウターチューブ90の径方向の略中心位置に垂設固定されている略円筒形状のワーキングシリンダ20と、ピストンロッド10の上下方向略中間部所要位置に貫設され、減衰力を発生させるメインピストン部70と、同じくピストンロッド10の下端部近傍に貫設され作動油を補給するために加圧する加圧ピストン部71とで形成されている。
【0024】
さらに、内室は作動油が所要高さまで満たされたリザーバータンク部の油室30Cと、前記油室30Cの上方の上方に位置し、液面Oに隣接し、大気圧の空気が満たされた空気室30Eとで形成されている。
【0025】
また、ワーキングシリンダ20は、メインピストン部70が摺動可能に作動するメインシリンダ領域20Aと、メインシリンダ領域20Aの下方に延設され加圧ピストン部71が摺動自在に作動する作動領域である加圧シリンダ領域20Bとに区画され、メインシリンダ領域20Aはメインピストン部70の上室となる油室30Aと、メインピストン部70の下室となる油室30Bで形成され、加圧シリンダ領域20Bは加圧ピストン部71の上室となる油室30Dと、加圧ピストン部71の下室となる油室30Fとで形成され、油室30Fとリザーバータンク部の油室30Cとの間に、作動油の流通が可能となる連通孔20Cが形成されている。
【0026】
さらに、本実施形態では、ワーキングシリンダ20の上端部に嵌合され、ピストンロッド10を摺動自在に貫通させるトップキャップ21と、ワーキングシリンダ20の所要位置に配設され、メインシリンダ領域20Aと加圧シリンダ領域20Bを区画すると共に、ピストンロッド10を貫通させるボトムキャップ22とを備え、トップキャップ21はピストンロッド10を摺動自在とするための軸受部材23と、作動油や気泡の流出も可能となる摺動隙間24とを備え、ボトムキャップ22はピストンロッド10を摺動自在とするための軸受部材23と、液密性のためのシール部材25と、加圧シリンダ領域20Bの油室30Dからメインシリンダ領域20Aの油室30Bへの作動油の流入を許容し、逆流は阻止するボトムキャップ部チェックバルブ26とで形成されている。ボトムキャップ部チェックバルブ26は、作動油の流路と、ボール形状の開閉弁と、開閉弁を押圧するコイルスプリングとコイルスプリングを固定するストッパーで形成されている。
【0027】
メインピストン部70は、メインピストン70Aとメインピストン70Aの上方側に貫設された環状リーフバルブから成る圧側減衰バルブ70Bと、メインピストン70Aの下方側に貫設された環状リーフバルブから成る伸び側減衰バルブ70Cと、作動油が移動する通路となるメインピストン部伸側流路70Dと、メインピストン部圧側流路70Eとで形成されている。
【0028】
加圧ピストン部71は加圧ピストン71Aと、加圧ピストン71Aの上方に貫設され加圧シリンダ領域20Bの油室30Fから油室30Dへ作動油が流入を許容すると共にその逆流を阻止する加圧ピストン部チェックバルブ71Bと、加圧ピストン71Aの下方に貫設された環状リーフバルブから成り、作動油を加圧するための加圧バルブ71Cとで形成されている。加圧ピストン71Aは、作動油が移動する通路となる加圧ピストン部補給流路71Dと、オーバーフロー流路71Eとで形成されている。また、加圧ピストン部チェックバルブ71Bは、円環形状のリーフバルブと、リーフバルブを押圧するコイルスプリングと、コイルスプリングを固定するストッパーで形成されている。
【0029】
図1に示す本実施形態のフロントフォーク内油圧緩衝器100は、図2および図3に示す従来の油圧緩衝器200とは違い、ピストンロッド10の両端部がワーキングシリンダ20内に画成され、メインピストン部70の作動領域であるメインシリンダ領域20Aの上下方向の外部に、其々突出する所謂スルーロッド形式で形成されている。
【0030】
次に本実施形態の作動油の流れについて説明する。先ず、組立時はリザーバータンク部の油室30Cに、作動油を注入しながら本実施形態のフロントフォーク内油圧緩衝器100をゆっくりと伸縮作動させると、リザーバータンク部の油室30Cから連通孔20Cを経由して油室30Fに作動油が流入する。さらに、油室30Fに溜まった作動油は加圧ピストン部補給流路71Dを経由して、加圧ピストン部チェックバルブ71Bを開弁し油室30Dに流入する。油室30Dに溜まった作動油は、加圧ピストン71Aで加圧され、ボトムキャップ部チェックバルブ26を開弁して、油室30Bに流入し、油室30Bに溜まった作動油はメインピストン部圧側流路70Eを経由して、圧側減衰バルブ70Bを押し広げ油室30Aに流入し、油室30Aを作動油で満たされた状態になり、作動油の注入作業が終了する。この作業中、最初にフロントフォーク内油圧緩衝器100内に内在する空気は、摺動隙間24を経由して、リザーバータンク部の油室30Cに放出されることでエア抜き作業も終了する。
【0031】
作動油の注入作業が終了したフロントフォーク内油圧緩衝器100を伸縮作動させると、メインピストン部70の伸縮作動で所要の減衰力が発生し、作動による温度上昇により膨張した容積分の微量の作動油が、摺動隙間24を経由してリザーバータンク部の油室30Cに放出される、一方、伸縮作動に連動して作動する加圧ピストン部71が、所要量の作動油を油室30Dからボトムキャップ部チェックバルブ26を開弁して、油室30Bに補給し、過剰分の作動油はオーバーフロー流路71Eを経由して油室30Fに逆流させる。この時の加圧力は加圧バルブ71Cで適宜設定すれば良い。
【0032】
上述の通り、本実施形態のフロントフォーク内油圧緩衝器は、減衰力を発生させるメインシリンダ領域から、ピストンロッドの両端部が突出する所謂スルーロッド形式の油圧緩衝器であり、メインシリンダ領域から作動油が流出する量が微量となることと、さらに、ピストンロッドの先端部に加圧ピストンを有していることから、作動油の補給も確実に行えることで、フロントフォークの伸縮作動に応じた所要の減衰力を安定して発生させることができる効果がある。
【0033】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、前記実施形態では、減衰力を発生させるバルブとして、環状のリーフバルブから成る減衰バルブと説明したが、これは形状や形式を限定するものではなく、有効に減衰力を発生できればよいので、コイルスプリングと半球形状弁とで構成される所謂ポペットタイプの減衰力発生機構などを採用しても良い。
【符号の説明】
【0034】
1,10 ピストンロッド
2,20 ワーキングシリンダ
20A メインシリンダ領域
20B 加圧シリンダ領域
20C 連通孔
21 トップキャップ
22 ボトムキャップ
23 軸受部材
24 摺動隙間
25 シール部材
26 ボトムキャップ部チェックバルブ
3A,3B,3C,30A,30B,30C,30D,30F 油室
30E 空気室
4A ボトム部圧側流路
4B ボトム部バルブ
4C ボトム部チェックバルブ
4D 補給通路
6 気泡
7 ピストン
7A ピストン部伸側流路
7B ピストン部バルブ
7C ピストン部チェックバルブ
7D ピストン部圧側流路
70 メインピストン部
70A メインピストン
70B 圧側減衰バルブ
70C 伸び側減衰バルブ
70D メインピストン部伸側流路
70E メインピストン部圧側流路
71 加圧ピストン部
71A 加圧ピストン
71B 加圧ピストン部チェックバルブ
71C 加圧バルブ
71D 加圧ピストン部補給流路
71E オーバーフロー流路
8,80 インナーチューブ
9,90 アウターチューブ
100 フロントフォーク内油圧緩衝器
200 従来の油圧緩衝器
O 液面
【要約】
【課題】自動二輪車などのフロントフォークに内蔵され、内部で発生するキャビテーションを抑制し、伸縮作動に応じた所要な減衰力を発生するフロントフォーク内蔵油圧緩衝器を提供することにある。
【解決手段】車体側に連結されるインナーチューブ80と車輪側に連結されるアウターチューブ90とで閉塞された自動二輪車のフロントフォークに内設される油圧緩衝器100であって、インナーチューブ80に吊設されたピストンロッド10と、アウターチューブ90に垂設固定されるワーキングシリンダ20と、ピストンロッド10に貫設され減衰力を発生させるメインピストン部70と、ピストンロッド10の先端部に貫設された加圧ピストン部71とを有し、ピストンロッド10の両端がメインシリンダ領域20Aから其々突出するスルーロッド形式の油圧緩衝器。
【選択図】図1
図1
図2
図3