(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】新規CDP-リビトール誘導体
(51)【国際特許分類】
C07H 19/10 20060101AFI20240627BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240627BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C07H19/10 CSP
A61K31/7068
A61P21/04
(21)【出願番号】P 2020067017
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-03-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「革新的先端研究開発支援事業ユニットタイプ「メカノバイオロジー機構の解明による革新的医療機器及び医療技術の創出」」「機械受容応答を支える膜・糖鎖環境の解明と筋疾患治療への展開」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願 平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「難治性疾患実用化研究事業」「新規修飾体リビトールリン酸の病態生理機能に着目した福山型 筋ジストロフィーの発症機序の解明と治療法の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金川 基
(72)【発明者】
【氏名】戸田 達史
(72)【発明者】
【氏名】小林 千浩
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 秀紀
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】Glycobiology,2012年,22,1760-1767
【文献】Cell Reports,2016年,14,2209-2223
【文献】J. Chem. Soc.,1959年,2192-2196
【文献】Nature Communications,2022年,13,1847(1-13)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K 31/
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I
1)で表されることを特徴とするCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
[式中、
R
1~R
4は、独立して、H、C
1-6アルキル-カルボニル基、またはC
1-6アルコキシ-カルボニル基を示し、
R
5とR
6は、独立して、H、C
1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC
6-12アリール基
、またはC
6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC
6-12アリール-メチル基を示し、
C
6-12アリール基上の置換基は、C
1-6アルコキシ基、またはC
1-6アルキル-カルボニルオキシ基を示し、
R
7とR
8は、独立して、OH、C
1-6アルキル-カルボニルオキシ基、C
1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基、C
1-6アルコキシ基、またはハロゲノ基を示し、
但し、R
1~R
6がHである場合、R
7とR
8は、独立して、C
1-6アルキル-カルボニルオキシ基、C
1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基、C
1-6アルコキシ基、またはハロゲノ基を示す。]
【請求項2】
CDP-リビトール誘導体が下記式(I
2)で表されるCDP-リビトール誘導体である請求項1に記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【化2】
[式中、R
1~R
8は上記と同義を示す。]
【請求項3】
R
1~R
4が、独立して、C
1-4アルキル-カルボニル基である請求項1または2に記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
5とR
6がHである請求項1~3のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
5とR
6が、独立して、C
6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC
6-12アリール-メチル基である請求項1~3のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R
5とR
6が、独立して、フェニル基上に置換基としてC
1-6アルキル-カルボニルオキシ基を有するベンジル基である請求項1~3のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R
7とR
8がOHである請求項1~6のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩を含有することを特徴とする医薬。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とするジストログリカン異常症治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジストログリカン異常症の治療に有効な新規CDP-リビトール誘導体、当該CDP-リビトール誘導体を含む医薬、および当該CDP-リビトール誘導体を含むジストログリカン異常症治療剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筋ジストロフィーは、進行性の筋力低下が認められる遺伝性疾患の総称であり、50以上の原因遺伝子が解明されている。筋ジストロフィーのうち福山型筋ジストロフィーは日本に多くみられ、その原因はフクチン(fukutinまたはFKTN)遺伝子の異常であることが知られている。肢帯型筋ジストロフィー、先天型筋ジストロフィー、Walker-Warburg症候群など、福山型筋ジストロフィーの類縁疾患は世界中にみられ、福山型も含めてジストログリカン異常症と呼ばれている。
【0003】
ジストログリカンは膜タンパク質であり、ジストロフィンを介して細胞内の細胞骨格と結合していると共に、糖鎖とラミニンを介して細胞外の基底膜とも結合しており、筋収縮に伴う筋細胞の損傷を防ぐ杭のような役割を果たしている。ジストログリカンは、糖鎖形成など様々な翻訳後修飾を受け、本発明者らは、リビトールリン酸という糖アルコールリン酸がジストログリカンの糖鎖の中に存在し、その生合成障害によりジストログリカン異常症が生じることを報告している(非特許文献1)。ジストログリカンの糖鎖中には2分子のリビトールリン酸が含まれており、これらリビトールリン酸は、シチジン二リン酸(CDP)-リビトールからフクチン(FKTN)とFKRPにより糖鎖中に組み込まれる。
【0004】
また、本発明者らは、ISPD(IsoPrenoid synthase Domain containing)がシチジン三リン酸(CTP)とリビトール-5-リン酸からCDP-リビトールを生合成する酵素であることも明らかにしている(非特許文献1)。つまり、ISPD、フクチン、FKRPの遺伝子異常を原因とする疾患は、リビトールリン酸不全症ということができる。そこで本発明者らは、CDP-リビトールを有効成分として含有するジストログリカン糖修飾異常に伴う疾患の治療剤を開発している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/034334号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【文献】Kanagawa Mら,Cell Rep.,2016,14(9),2209-2223
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、本発明者らは、ジストログリカン異常症などジストログリカン糖修飾異常に伴う疾患の治療剤を開発している。しかし、より一層優れたジストログリカン異常症の治療のための有効成分が求められている。
そこで本発明は、ジストログリカン異常症の治療に有効な新規CDP-リビトール誘導体、当該CDP-リビトール誘導体を含む医薬、および当該CDP-リビトール誘導体を含むジストログリカン異常症治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、CDP-リビトールの特定の誘導体が、CDP-リビトール生合成酵素(ISPD)遺伝子をノックダウンした細胞やマウスにおけるジストログリカンの糖鎖形成を回復させることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0009】
[1] 下記式(I
1)で表されることを特徴とするCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
[式中、
R
1~R
4は、独立して、H、C
1-6アルキル-カルボニル基、またはC
1-6アルコキシ-カルボニル基を示し、
R
5とR
6は、独立して、H、C
1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC
6-12アリール基、C
6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC
6-12アリール-アミノ基、またはC
6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC
6-12アリール-メチル基を示し、
C
6-12アリール基上の置換基は、C
1-6アルコキシ基、またはC
1-6アルキル-カルボニルオキシ基を示し、
R
7とR
8は、独立して、OH、C
1-6アルキル-カルボニルオキシ基、C
1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基、C
1-6アルコキシ基、またはハロゲノ基を示し、
但し、R
1~R
6がHである場合、R
7とR
8は、独立して、C
1-6アルキル-カルボニルオキシ基、C
1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基、C
1-6アルコキシ基、またはハロゲノ基を示す。]
[2] CDP-リビトール誘導体が下記式(I
2)で表されるCDP-リビトール誘導体である上記[1]に記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【化2】
[式中、R
1~R
8は上記と同義を示す。]
[3] R
1~R
4が、独立して、C
1-4アルキル-カルボニル基である上記[1]または[2]に記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
[4] R
5とR
6がHである上記[1]~[3]のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
[5] R
5とR
6が、独立して、C
6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC
6-12アリール-メチル基である上記[1]~[3]のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
[6] R
5とR
6が、独立して、フェニル基上に置換基としてC
1-6アルキル-カルボニルオキシ基を有するベンジル基である上記[1]~[3]のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
[7] R
7とR
8がOHである上記[1]~[6]のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩。
[8] 上記[1]~[7]のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩を含有することを特徴とする医薬。
[9] 上記[1]~[7]のいずれかに記載のCDP-リビトール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とするジストログリカン異常症治療剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る新規CDP-リビトール誘導体は、CDP-リビトールに比べて、CDP-リビトール生合成酵素(ISPD)遺伝子をノックダウンした細胞やマウスにおけるジストログリカンの糖鎖形成の回復活性が優れていた。よって本発明に係る新規CDP-リビトール誘導体は、ジストログリカンの糖鎖形成異常を原因とするジストログリカン異常症の治療に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明に係る新規CDP-リビトール誘導体のジストログリカン糖鎖形成の回復効果を示すウェスタンブロット写真である。
【
図2】
図2は、本発明に係る新規CDP-リビトール誘導体のジストログリカン糖鎖形成の回復効果を示すウェスタンブロット写真である。
【
図3】
図3は、本発明に係る新規CDP-リビトール誘導体のジストログリカン糖鎖形成の回復効果を示すウェスタンブロット写真である。
【
図4】
図4は、被検マウスの筋組織のH&E染色写真と、ジストログリカン(DG)の糖鎖に結合する抗体IIH6を用いた免疫染色写真である。
【
図5】
図5は、生理食塩水、CDP-リビトール水溶液、または本発明に係る新規CDP-リビトール誘導体を投与したCDP-リビトール合成酵素(ISPD)遺伝子ノックアウトマウスの筋組織試料のウェスタンブロット写真である。
【
図6】
図6は、被検マウスの筋組織試料をラミニンにより免疫染色して求めた平均筋線維径を示すグラフ[(1)]と筋線維径分布を示すグラフ[(2)]である。
【
図7】
図7は、被検マウスの筋組織試料のF4/80による免疫染色結果を示すグラフ[(1)]と、collagen Iによる免疫染色結果を示すグラフ[(2)]である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
式(I1)で表されるCDP-リビトール誘導体(以下、「CDP-リビトール誘導体(I1)」という)において、絶対構造に関して、還元糖部分はリビトールが好ましく、フラノース部分はリボースが好ましい。即ち、CDP-リビトール誘導体(I1)は生体内で加水分解されて、ヌクレアーゼ耐性および/または活性がCDP-リビトールよりも優れるヌクレオシド二リン酸-還元糖となる可能性もあるが、生体内でCDP-リビトールに変換される式(I2)で表されるCDP-リビトール誘導体(以下、「CDP-リビトール誘導体(I2)」という)が好ましい。以下、CDP-リビトール誘導体(I1)とCDP-リビトール誘導体(I2)をまとめてCDP-リビトール誘導体(I)という。
【0013】
CDP-リビトール誘導体(I)において、R1~R4は、水酸基を構成するH、またはリビトール部分の水酸基の保護基である。R1~R4がHである場合、CDP-リビトール誘導体(I)の親水性は比較的高く、毒性が比較的低いと考えられる。一方、R1~R4がC1-6アルキル-カルボニル基またはC1-6アルコキシ-カルボニル基である場合、CDP-リビトール誘導体(I)の脂溶性は高くなり、細胞内に取り込まれ易くなる一方で、C1-6アルキル-カルボニル基またはC1-6アルコキシ-カルボニル基は、細胞内に取り込まれた後、細胞内のエステラーゼ等の加水分解酵素により除去されると考えられる。特にC1-6アルコキシ-カルボニル基は炭酸エステル構造のため加水分解され易いと考えられる。
【0014】
「C1-6アルキル基」は、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の一価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等である。
【0015】
「C1-6アルコキシ基」は、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素オキシ基をいう。例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ等である。
【0016】
R1~R4のC1-6アルキル-カルボニル基またはC1-6アルコキシ-カルボニル基を構成するC1-6アルキル基またはC1-6アルコキシ基の炭素数が少ないほど毒性が低下する可能性があるため、これら基の炭素数としては1以上、4以下が好ましく、1または2がより好ましく、1がより更に好ましい。特にアセチル基およびメトキシカルボニル基は、生体適合性が高いといえる。但し、これら基の炭素数が多いほど脂溶性が上がり、細胞内取込量が増加する可能性もある。
【0017】
CDP-リビトール誘導体(I)においてR5およびR6がHであるか、更にリン酸基が薬学的に許容される塩になっている場合、CDP-リビトール誘導体(I)の親水性が高く、水溶液または懸濁液である液状医薬へ製剤化し易く、また、毒性が比較的低いと考えられる。一方、R5およびR6の少なくとも一方が、C1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC6-12アリール基、C6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC6-12アリール-アミノ基、またはC6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC6-12アリール-メチル基である場合、CDP-リビトール誘導体(I)の脂溶性が上がり、細胞内取込量が増加する可能性がある。
【0018】
「C6-12アリール基」とは、炭素数が6以上、12以下の一価芳香族炭化水素基をいう。例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、ビフェニル等であり、好ましくはフェニルである。
【0019】
リン酸基の保護基であるC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC6-12アリール基、C6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC6-12アリール-アミノ基、およびC6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC6-12アリール-メチル基のうち、C6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC6-12アリール-アミノ基、およびC6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC6-12アリール-メチル基が細胞内で除去され易く、C6-12アリール基上に置換基を有していてもよいC6-12アリール-メチル基が細胞内でより除去され易く、フェニル基上に置換基を有していてもよいベンジル基が細胞内でより更に除去され易い。特にC6-12アリールまたはフェニル基が置換基としてC1-6アルコキシ基、またはC1-6アルキル-カルボニルオキシ基を有する場合には、その置換位置によって除去され易くなる。例えばベンジル基のp位および/またはo位にC1-6アルコキシ基、またはC1-6アルキル-カルボニルオキシ基、特にC1-6アルキル-カルボニルオキシ基が置換していると、生体内で先ずこれら基が除去されてフェノール性水酸基が生じると、当該フェノール性水酸基が電子を引張り、結果としてリン酸基からこれら基が脱離する。
【0020】
R5およびR6としてのC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましく、C1-2アルキル基がより好ましく、メチルがより更に好ましい。また、C6-12アリール基またはフェニル基上の置換基であるC1-6アルコキシ基、またはC1-6アルキル-カルボニルオキシ基の炭素数としては1以上、4以下が好ましく、1または2がより好ましく、1がより更に好ましい。
【0021】
R7およびR8がOHである場合、リボース本来の機能がそのまま発揮され、また、毒性が低いと考えられる。R7およびR8がC1-6アルキル-カルボニルオキシ基またはC1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基である場合、脂溶性が比較的高くなり細胞内に取り込まれ易くなる一方で、細胞内に取り込まれた後は加水分解されてOHとなり、リボース本来の機能が発揮されると考えられる。また、R7およびR8がC1-6アルキル-カルボニルオキシ基、C1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基、C1-6アルコキシ基、またはハロゲノ基である場合には、CDP-リビトール誘導体(I)のヌクレアーゼ耐性が向上すると考えられる。
【0022】
R7およびR8に含まれるC1-6アルキル基およびC1-6アルコキシの炭素数としては1以上、4以下が好ましく、1または2がより好ましく、1がより更に好ましい。
【0023】
CDP-リビトール誘導体(I)において、R1~R6が全てHである場合、R7とR8は、独立して、C1-6アルキル-カルボニルオキシ基、C1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基、C1-6アルコキシ基、またはハロゲノ基を示す。即ち、CDP-リビトール誘導体(I)には、無置換のCDP-リビトールは含まれない。
【0024】
CDP-リビトール誘導体(I)は、ピロリン酸基により塩を形成することができるが、当該塩は薬学的に許容される塩である。CDP-リビトール誘導体(I)の薬学的に許容される塩を構成するカウンターカチオンとしては、薬学的に許容されるものであれば特に制限されないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属塩イオンや、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等の第2族金属イオンが挙げられる。リン酸基の少なくとも一方は、例えば溶液中で、-O-P(=O)(O-)-O-の状態にあってもよい。また、CDP-リビトール誘導体(I)が全体として塩基性を示し、シトシンのアミノ基により塩が形成される可能性がある。かかる塩は、薬学的に許容される塩であれば特に制限されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;シュウ酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩などの有機酸塩が挙げられる。
【0025】
CDP-リビトール誘導体(I)は、例えば下記スキームにより合成することができる。
【化3】
【0026】
上記反応では、溶媒中、還元糖モノリン酸エステル(II)とモルフォリデート(III)を反応させる。モルフォリデート(III)のリン酸基はモルホリン基により活性化されているため、還元糖に水酸基が残っていたり、R7およびR8が水酸基である場合であっても、容易に還元糖モノリン酸エステル(II)と反応してピロリン酸基を形成する。
【0027】
上記反応で用いる溶媒としては、ジメチルホルムアミドやピリジン等、塩基性を呈する溶媒が好ましい。また、反応の促進のために、テトラゾール、ベンズイミダゾリウムトリフラート、トリクロロ酢酸などを用いてもよい。
【0028】
反応条件は適宜調整すればよい。例えば、溶媒としては脱水したものを用い、水分や酸素の混入を抑制するために、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。また、反応温度は常温でよく、例えば0℃以上、40℃以下とすることができる。反応温度としては、10℃以上または15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、また、35℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。反応時間は、予備実験で決定したり、目的化合物の増量が認められなくなるまでや、クロマトグラフィー等で還元糖モノリン酸エステル(II)またはモルフォリデート(III)の一方が消費されるまでとすればよいが、例えば、10時間以上、10日以下とすることができる。
【0029】
反応終了後は、通常の後処理を行えばよい。例えば、溶媒を留去した後、クロマトグラフィーや再結晶などで目的化合物を精製すればよい。また、水酸基やリン酸基の保護や脱保護、また、R1~R8の変更などを行ってもよい。
【0030】
還元糖モノリン酸エステル(II)は、容易に合成することができる。例えば下記スキームの通り、アルドン酸またはその誘導体のカルボキシ基を還元し、塩化ホスホリル(POCl3)を使って5位にリン酸基を導入する。この際、アルドン酸の水酸基を保護しておくことにより、5位へ選択的にリン酸基を導入することが可能になる。
【0031】
【0032】
また、モルフォリデート(III)は、ヌクレオシドまたはその2’位および/または3’位における誘導体の5’-モノホスフェート体から、常法により合成可能である。
【0033】
本発明に係るCDP-リビトール誘導体(I)またはその薬学的に許容される塩は、細胞に取り込まれた後、細胞内の酵素により加水分解されてCDP-リビトールに変換される。ジストログリカン異常症の原因の一つとして、α-ジストログリカンの糖鎖に2分子のリビトールリン酸が導入されず、糖鎖が完全に形成されないことがある。α-ジストログリカンの糖鎖へのリビトールリン酸の導入は、先ずCDP-リビトール生合成酵素であるISPDによりリビトールリン酸とシチジン三リン酸(CTP)からCDP-リビトールが合成され、次にCDP-リビトールからフクチン(FKTN)とFKRPの作用により実施される。よってジストログリカン異常症は、ISPD、FKTNおよび/またはFKRPの遺伝子の異常により発症すると考えられる。それに対して、本発明に係るCDP-リビトール誘導体(I)またはその薬学的に許容される塩の投与により、ISPD遺伝子に異常があっても細胞内にCDP-リビトールが供給され、また、FKTNとFKRPが完全に欠損していれば生存できないため、ジストログリカン異常症患者は僅かであってもFKTNとFKRPの活性を有しているはずであり、十分量のCDP-リビトールの供給により、FKTNとFKRPの活性が低くてもα-ジストログリカンの糖鎖が形成され、症状が軽減されると考えられる。よって、本発明に係るCDP-リビトール誘導体(I)またはその薬学的に許容される塩は、医薬の有効成分として、特にジストログリカン異常症治療剤の有効成分として利用できる。
【0034】
ジストログリカン異常症は、上記の通りα-ジストログリカンの糖鎖が形成不良により引き起こされる疾患であり、例えば、福山型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、先天型筋ジストロフィー、Walker-Warburg症候群が挙げられる。
【0035】
本発明に係るCDP-リビトール誘導体(I)またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬の形態は特に制限されず、経口剤や非経口剤とすることができる。経口剤としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、丸剤、トローチ剤、舌下剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤などが挙げられる。非経口剤としては、注射剤、軟膏剤、坐剤、クリーム剤などが挙げられる。注射剤は、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与などすることができ、軟膏剤やクリーム剤は、粘膜や局所に塗布すればよい。
【0036】
本発明に係る医薬は、CDP-リビトール誘導体(I)またはその薬学的に許容される塩に加えて、医薬添加剤を含んでいてもよい。医薬添加剤としては、例えば、溶媒、pH調整剤、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素などが挙げられるが、特に制限されない。
【0037】
本発明に係る医薬としては、注射剤が好ましい。注射剤の溶媒としては、水の他、緩衝液や生理食塩水を用いてもよい。また、注射剤は等張または略等張である必要があるため、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、乳酸、ブドウ糖などを含んでいてもよい。
【0038】
本発明に係るCDP-リビトール誘導体(I)またはその薬学的に許容される塩の投与量は、患者の症状、重篤度、年齢、性別などに応じて適宜調整すればよいが、例えば、1日あたり0.01mg以上、60g以下とすることができる。当該投与量としては、0.1mg以上が好ましく、また、24g以下が好ましく、6g以下がより好ましい。また、1日の投与回数は1回以上、5回以下とすることができ、4回以下または3回以下が好ましく、2回以下がより好ましい。また、経過を観察しつつ、1日以上、2週間以下の投与間隔をあけてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0040】
実施例1: CDP-リビトール ジアセテートの合成
(1)2’,3’-ジ-O-アセチル-シチジン 5’-モノホスフェートの合成
【化5】
シチジン 5’-モノホスフェート(2.5g)を水(100mL)に懸濁し、次にトリエチルアミン(2.15mL)を加えて溶解し、pHを7~8に調整した。これに1-アセチルイミダゾール(8.5g)を加えて室温で約3時間攪拌した。次いでトリエチルアミン(215μL)と1-アセチルイミダゾール(2.0g)を追加した。反応溶液を濾過した後に、逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥により目的化合物を得た(粗収量:3.0g(トリエチルアミンを含む)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ7.95(d,1H,J=7.8Hz),6.22(d,1H,J=5.5Hz),6.13(d,1H,J=7.3Hz),5.47(dd,1H,J=3.7,5.5Hz),5.44(dd,1H,J=5.5,5.5Hz),4.51(m,1H),4.16(ddd,1H,J=2.7,4.6,11.9Hz),4.08(ddd,1H,J=2.7,5.0,11.9Hz),2.18(s,3H),2.11(s,3H)
【0041】
(2)2’,3’-ジ-O-アセチル-シチジン 5’-モノホスフェート モルフォリデート 4-モルホリン-N,N’-ジイソプロピルカルボキシアミジン塩の合成
【化6】
2’,3’-ジ-O-アセチル-シチジン 5’-モノホスフェート(2.5g)とモルホリン(1.8mL)をt-ブタノール(50mL)と水(50mL)の混合溶媒に懸濁し、還流した。これにN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(2.7mL)をt-ブタノール(50mL)に溶解した溶液を滴下した。室温に戻した後に、減圧濃縮した。得られた残渣に水を加えて凍結乾燥した。凍結乾燥品(5.2g)を逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥により目的化合物を得た(粗収量:2.0g(溶媒や塩を含む))。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ7.92(d,1H,J=7.3Hz),6.21(d,1H,J=5.0Hz),6.11(d,1H,J=7.8Hz),5.48-5.44(m,2H),4.52(m,1H),4.11(ddd,1H,J=2.3,4.1,11.9Hz),4.05(ddd,1H,J=3.2,5.0,11.9Hz),3.79(br.t,4H,J=4.8Hz),3.75(m,2H),3.67(br.t,4H,J=4.3Hz),3.44(br.t,4H,J=5.0Hz),3.06(m,4H),2.19(s,3H),2.12(s,3H),1.25(d,12H,J=6.4Hz)
【0042】
(3)CDP-リビトール ジアセテート
【化7】
参考文献(J.Med.Chem.,1984,27,717-726)の方法でD-リボース 5-ホスフェートから得られるD-リビトール 5-ホスフェート(970mg)と、トリ-n-オクチルアミン(2.05mL)に脱水DMF(50mL)を加えて減圧濃縮する操作を2回繰り返した。得られた残渣にアルゴン雰囲気下で脱水DMF(50mL)を加えて溶解した(A液)。別途、2’,3’-ジ-O-アセチル-シチジン 5’-モノホスフェート モルフォリデート(2.0g)に脱水DMF(50mL)を加えて減圧濃縮した。得られた残渣にアルゴン雰囲気下で脱水ピリジン(50mL)を加えて溶解した(B液)。A液とB液の2つの溶液を混合し、アルゴン雰囲気下で1H-テトラゾール(294mg)を加えて室温で攪拌した。5日後に反応混合物を減圧濃縮した。得られた残渣を逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥及びイオン交換樹脂に通すことにより、白色粉末であるCDP-リビトール ジアセテートの2Na塩を得た(収量:113mg,収率:4.3%)。
1H-NMRスペクトル(400MHz,D
2O):δ7.94(d,1H,J=7.3Hz),6.22(d,1H,J=5.5Hz),6.15(d,1H,J=7.8Hz),5.48(dd,1H,J=4.1,5.5Hz),5.44(dd,1H,J=5.5,5.5Hz),4.53(m,1H),4.29(ddd,1H,J=2.3,5.0,11.9Hz),4.21(ddd,1H,J=3.2,5.0,11.9Hz),4.15(ddd,1H,J=3.0,5.7,11.0Hz),4.06(m,1H),3.91(m,1H),3.87(m,1H),3.80(dd,1H,J=3.2,11.9Hz),3.76(dd,1H,J=5.9,6.9Hz),3.64(dd,1H,J=6.9,11.9Hz),2.18(s,3H),2.12(s,3H)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
18H
28N
3O
17P
2:[M-H]
-,calcd:620.09,found:620.1
【0043】
実施例2: CDP-リビトール テトラアセテートの合成
(1)2,3,4,5-テトラ-O-アセチル-L-リボン酸
【化8】
L-リボン酸-1,4-ラクトン(2.0g)を水(10mL)に溶解し、1M NaOH水溶液(14.2mL)を加えた。20分後に反応溶液を減圧濃縮した(残渣A)。別の容器に無水酢酸(30mL)を入れて氷冷した。これに70%HClO
4水溶液(1.5mL)を加えることで、淡黄色溶液が得られた。前記残渣Aを0℃以下に冷却し、この淡黄色溶液を加えた。反応混合物を40℃まで昇温した後に、さらに1時間攪拌した。反応溶液を氷冷し、酢酸ナトリウム(2.4g)と水(40mL)を順次加えた。減圧濃縮により得られた残渣に水を加えて再度減圧濃縮した。残渣を逆相系のHPLCで精製し、目的のフラクションを集め、凍結乾燥により白色粉末である目的化合物を得た(収量:3.78g,収率:83%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ5.63(dd,1H,J=2.7,9.2Hz),5.46(d,1H,J=2.3Hz),5.36(ddd,1H,J=2.5,4.3,9.2Hz),4.35(dd,1H,J=2.5,12.6Hz),4.17(dd,1H,J=4.3,12.6Hz),2.17(s,3H),2.10(s,3H),2.07(s,3H),2.03(s,3H)
【0044】
(2)1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リビトールの合成
【化9】
2,3,4,5-テトラ-O-アセチル-L-リボン酸(3.78g)を脱水THF(50mL)に溶解し、-10℃に冷却した。これにN-メチルモルホリン(1.36mL)とクロロギ酸イソブチル(1.61mL)を順次加えて10分間攪拌した。さらにNaBH
4(1.28g)を加えた後に、-50℃に冷却した。これにメタノール(80mL)を10分間で滴下した。氷浴し、6M塩酸(2.7mL)を加えてpHを4に調整した。減圧濃縮し、得られた残渣に酢酸エチルと水を加えて抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過し、濾液と洗浄液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。目的のフラクションを集めて減圧濃縮、乾燥することで白色粉末として目的化合物を得た(収量:2.66g,収率:73%)。なお、目的化合物である2,3,4,5-テトラ-O-アセチル-L-リビトールは、1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リビトールともいう。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ5.37(dd,1H,J=4.6,5.9Hz),5.33(ddd,1H,J=3.2,4.6,6.9Hz),5.07(ddd,1H,J=3.7,5.5,5.5Hz),4.38(dd,1H,J=3.2,11.9Hz),4.16(dd,1H,J=6.9,11.9Hz),3.84(m,1H),3.69(dd,1H,J=5.0,12.8Hz),2.14(s,3H),2.11(s,3H),2.10(s,3H),2.05(s,3H)
【0045】
(3)1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リビトール 5-ホスフェートの合成
【化10】
1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リビトール(1.0g)を脱水THF(20mL)に溶解し、-10℃以下に冷却した。これにジイソプロピルエチルアミン(4.2mL)とPOCl
3(2.0mL)を順次加えて30分間攪拌した。反応混合物を-78℃に冷却し、水(20mL)を徐々に加えた。室温で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和し、減圧濃縮によりTHFを留去した。得られた残渣(水層)に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液とクロロホルムを加えて分液した。有機層に水を加えて抽出し、水層を合わせた。減圧濃縮により液量を減じた。6M塩酸(1.5mL)を加えてpHを1~2に調整した後、逆相HPLCで精製した。目的のフラクションを集めて凍結乾燥し、得られた残渣に水を加えて溶解して再度凍結乾燥し、含水軟性油状物として目的化合物を得た(粗収量:1.11g(水を含む))。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ5.41(dd,1H,J=5.5,5.5Hz),5.35-5.28(m,2H),4.44(dd,1H,J=3.2,12.4Hz),4.31(dd,1H,J=5.9,12.4Hz),4.14(ddd,1H,J=3.2,5.9,11.9Hz),4.04(ddd,1H,J=5.9,6.9,11.9Hz),2.16(s,3H),2.15(s,3H),2.13(s,3H),2.08(s,3H)
【0046】
(4)CDP-リビトール テトラアセテートの合成
【化11】
1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リビトール 5-ホスフェート(1.11g)を脱水DMFに溶解し、トリエチルアミン(0.69mL)を加えて減圧濃縮した。得られた残渣に脱水DMFを加えて減圧濃縮する操作を2回繰り返した。アルゴン雰囲気下、得られた残渣を脱水ピリジンに溶解し、トリエチルアミン(0.69mL)を加えた(A液)。1H-テトラゾール(0.27g)と、別途調製したシチジン 5’-モノホスフェート モルフォリデート(定法によりシチジン 5’-モノホスフェートから調製が可能)(1.89g)をそれぞれ別の容器Bと容器Cに入れ、脱水DMFを加えて減圧濃縮する操作を2回繰り返した。それぞれ得られた残渣をアルゴン雰囲気下で脱水ピリジンに溶解した(順にB液およびC液)。続いてアルゴン雰囲気下でA液に対してB液とC液を順次加えた。溶媒量は合計で約20mLであった。アルゴン雰囲気下、室温で5日間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮した。得られた残渣に脱水DMFを加えて再度減圧濃縮した。残渣を逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥、およびイオン交換樹脂に通すことにより、白色粉末として目的化合物の2Na塩を得た(収量:548mg,収率:28%)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ8.00(d,1H,J=7.3Hz),6.12(d,1H,J=7.3Hz),5.97(d,1H,J=4.1Hz),5.36(dd,1H,J=5.5,5.5Hz),5.31-5.26(m,2H),4.40(dd,1H,J=3.2,12.4Hz),4.35-4.23(m,5H),4.20-4.15(m,2H),4.06(m,1H),2.129(s,3H),2.118(s,3H),2.118(s,3H),2.071(s,3H)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
22H
32N
3O
19P
2:[M-H]
-,calcd:704.11,found:704.0
【0047】
実施例3: CDP-リビトール ヘキサアセテートの合成
【化12】
CDP-リビトール テトラアセテート(250mg)を水(3.34mL)に溶解し、1-アセチルイミダゾール(368mg)を加えて室温で攪拌した。その後、4回に分けて1-アセチルイミダゾール(合計で626mg)を追加した。反応開始から約4時間後に反応混合物を水で希釈して、逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥、およびイオン交換樹脂に通すことにより、白色粉末である目的化合物の2Na塩を得た(収量:228mg,収率:75%)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ7.97(d,1H,J=7.3Hz),6.22(d,1H,J=5.5Hz),6.16(d,1H,J=7.3Hz),5.46(dd,1H,J=4.1,5.5Hz),5.41(dd,1H,J=5.5,5.5Hz),5.36(dd,1H,J=5.5,5.5Hz),5.31-5.26(m,2H),4.52(m,1H),4.41(dd,1H,J=3.2,12.4Hz),4.31-4.26(m,2H),4.20-4.16(m,2H),4.07(m,1H),2.18(s,3H),2.14(s,3H),2.13(s,3H),2.120(s,3H),2.118(s,3H),2.08(s,3H)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
26H
36N
3O
21P
2:[M-H]
-,calcd:788.13,found:788.1
【0048】
実施例4: CDP-リビトール テトラブチレートの合成
(1)1,2,3,4-テトラ-O-ブチリル-5-O-トリチル-D-リビトールの合成
【化13】
参考文献(WO2016/044164)の方法などによりD-リボースから得られる5-O-トリチル-D-リビトール(6.0g)を脱水ピリジン(60mL)に溶解し、4-ジメチルアミノピリジン(0.93g)を加えて氷冷した。これにブタン酸無水物(14.9mL)を加え、続いて脱水クロロホルム(50mL)と脱水ピリジン(60mL)を加えた。反応容器を氷浴からはずして室温で攪拌した。40分後に減圧濃縮し、得られた残渣にジメチルエーテルと水を加えて分液、抽出した。有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水、水、および飽和食塩水で順次洗浄した後に、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過し、濾液と洗浄液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。目的のフラクションを集めて減圧濃縮し、得られた残渣にn-ヘキサンを加えて減圧濃縮および乾燥することで、無色油状物として目的化合物を得た(粗収量:6.73g(溶媒及び試薬由来物を含む))。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.40-7.20(m,15H),5.42(dd,1H,J=5.0,5.9Hz),5.34(ddd,1H,J=3.2,5.9,5.9Hz),5.28(ddd,1H,J=3.2,5.0,6.9Hz),4.32(dd,1H,J=3.2,12.4Hz),4.10(dd,1H,J=6.9,12.4Hz),3.29(dd,1H,J=3.2,10.5Hz),3.16(dd,1H,J=5.9,10.5Hz),2.41-2.06(m,8H),1.75-1.46(m,8H),0.976(t,3H,J=7.3Hz),0.910(t,3H,J=7.3Hz),0.905(t,3H,J=7.3Hz),0.873(t,3H,J=7.3Hz)
【0049】
(2)1,2,3,4-テトラ-O-butyryl-D-リビトールの合成
【化14】
1,2,3,4-テトラ-O-ブチリル-5-O-トリチル-D-リビトール(3.84g)を酢酸(40mL)に溶解し、55℃に加温すると共に水(9mL)を加えた。55℃で3時間攪拌した後に、反応混合物を減圧濃縮した。得られた残渣にジエチルエーテルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水、水および飽和食塩水で順次洗浄した後に、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過し、濾液と洗浄液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。目的のフラクションを集めて減圧濃縮し、残渣にn-ヘキサンを加えて減圧濃縮、乾燥することで、無色油状物である目的化合物を得た(収量:1.51g,収率:61%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ5.39-5.33(m,2H),5.08(ddd,1H,J=3.7,5.5,5.5Hz),4.39(dd,1H,J=3.2,12.4Hz),4.15(dd,1H,J=6.9,12.4Hz),3.83(dd,1H,J=3.7,12.4Hz),3.68(dd,1H,J=5.5,12.4Hz),2.39-2.25(m,8H),1.73-1.60(m,8H),0.968(t,3H,J=7.3Hz),0.967(t,3H,J=7.3Hz),0.954(t,3H,J=7.3Hz),0.935(t,3H,J=7.3Hz)
ESI-MSスペクトル(positive mode) C
21H
36O
9Na:[M+Na]
+,calcd:455.23,found:455.2
【0050】
(3)1,2,3,4-テトラ-O-ブチリル-D-リビトール 5-ホスフェートの合成
【化15】
1,2,3,4-テトラ-O-ブチリル-D-リビトール(1.51g)を脱水THF(30mL)に溶解し、-10℃以下に冷却した。これにジイソプロピルエチルアミン(4.86mL)とPOCl
3(2.27mL)を順次加えて40分間攪拌した。反応混合物を-78℃に冷却し、水(20mL)を徐々に加えた。室温で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和後に減圧濃縮により液量を減じ、残渣(水層)をn-ヘキサンで2回洗浄し、ジエチルエーテル(150mL)を加えて氷冷、攪拌した。6M塩酸(14mL)を加えてpHを1~2に調整した後に分液した。分離した水層にジエチルエーテルを加えて抽出し、有機層を合わせた。これを水と飽和食塩水で順次洗浄後に、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過し、濾液と洗浄液を合わせ、トリエチルアミン(0.48mL)を加えて減圧濃縮、乾燥することで、無色油状物である目的化合物を得た(粗収量:1.95g(トリエチルアミンを含む))。
1H-NMR(400 MHz,D
2O):δ5.44(dd,1H,J=5.5,5.5Hz),5.37(ddd,1H,J=2.7,5.9,5.9Hz),5.31(m,1H),4.51(dd,1H,J=2.7,12.4Hz),4.30(dd,1H,J=5.9,12.4Hz),4.10(ddd,1H,J=3.2,5.5,11.4Hz),3.98(ddd,1H,J=6.4,6.4,11.4Hz),2.45-2.33(m,8H),1.69-1.55(m,8H),0.936(t,3H,J=7.3Hz),0.929(t,3H,J=7.3Hz),0.923(t,3H,J=7.3Hz),0.900(t,3H,J=7.3Hz)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
21H
36O
12P:[M-H]
-,calcd:511.19,found:511.2
【0051】
(4)CDP-リビトール テトラブチレートの合成
【化16】
1,2,3,4-テトラ-O-ブチリル-D-リビトール 5-ホスフェート(1.95g)を脱水DMFに溶解し、減圧濃縮した。得られた残渣に脱水DMFを加えて減圧濃縮した。得られた残渣をアルゴン雰囲気下で脱水ピリジンに溶解した(A液)。これとは別に、1H-テトラゾール(0.38g)、および別途調製したシチジン 5’-モノホスフェート ホルホリン塩(定法によりシチジン 5’-モノホスフェートから調製が可能)(2.63g)をそれぞれ別の容器Bと容器Cに入れ、同じく脱水DMFを加えて減圧濃縮する操作を2回繰り返し、それぞれ得られた残渣をアルゴン雰囲気下で脱水ピリジンに溶解した(順にB液とC液)。続いてアルゴン雰囲気下でA液に対してB液とC液を順次加えた。更に脱水DMF(5mL)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で19時間攪拌した。脱水DMFを加えて減圧濃縮する操作を2回繰り返して得られたシチジン 5’-モノホスフェート モルフォリデート(0.44g)を脱水DMF(5mL)に溶解して反応混合物に加え、アルゴン雰囲気下室温で終夜攪拌した。減圧濃縮により得られた残渣を逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥により得られた1.12gのうちの0.87gをイオン交換樹脂に通すことにより、白色粉末である目的化合物の2Na塩を得た(収量:710mg,収率:47%)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ8.02(d,1H,J=7.3Hz),6.13(d,1H,J=7.3Hz),5.96(d,1H,J=3.7Hz),5.39(dd,1H,J=4.6,5.9Hz),5.31(m,2H),4.48(dd,1H,J=2.7,12.4Hz),4.33-4.15(m,7H),4.05(ddd,1H,J=6.4,6.4,11.4Hz),2.40-2.32(m,8H),1.65-1.54(m,8H),0.91(br.t,3H+3H+3H,J=7.3Hz),0.89(t,3H,J=7.3Hz)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
30H
48N
3O
19P
2:[M-H]
-,calcd:816.24,found:816.2
【0052】
実施例5: CDP-リビトール テトラブチレート,ジアセテートの合成
【化17】
CDP-リビトール テトラブチレート(257mg)を水(15mL)に溶解し、トリエチルアミン(10μL)を加えてpHを7~8に調整した。これに1-アセチルイミダゾール(277mg)を加えて室温で攪拌した。その後、8回に分けて1-アセチルイミダゾール(合計で2.22g)を追加した。反応開始から約7時間後に反応混合物が入った容器を約6℃の低温下で終夜(約16時間)保管した。翌日、反応混合物を逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥、およびイオン交換樹脂に通すことにより、白色粉末である目的化合物の2Na塩を得た(収量:126mg,収率:52%)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ7.99(d,1H,J=7.3Hz),6.21(d,1H,J=5.5Hz),6.16(d,1H,J=7.3Hz),5.45(dd,1H,J=4.1,5.0Hz),5.41-5.37(m,2H),5.32-5.29(m,2H),4.51(m,1H),4.47(dd,1H,J=2.3,12.4Hz),4.31-4.15(m,4H),4.05(ddd,1H,J=5.9,5.9,11.9Hz),2.41-2.32(m,8H),2.17(s,3H),2.12(s,3H),1.65-1.54(m,8H),0.91(br.t,3H+3H+3H,J=7.3Hz),0.89(t,3H,J=7.3Hz)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
34H
52N
3O
21P
2:[M-H]
-,calcd:900.26,found:900.3
【0053】
実施例6: CDP-リビトール ヘキサブチレートの合成
【化18】
CDP-リビトール テトラブチレートを水(20mL)に溶解し、トリエチルアミン(10μL)を加えてpHを7~8に調整した。これに別途調製した1-ブチリルイミダゾール(0.39mL)を加えて室温で攪拌した。その後、6回に分けて1-ブチリルイミダゾール(合計で1.35mL)を追加した。反応開始から約6時間後に反応混合物が入った容器を約13℃の低温下で終夜(約15時間)保管した。翌日、反応混合物を逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥、およびイオン交換樹脂に通すことにより、白色粉末である目的化合物の2Na塩を得た(収量:89mg,収率:36%)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ7.99(d,1H,J=7.8Hz),6.21(d,1H,J=5.9Hz),6.16(d,1H,J=7.8Hz),5.48(m,1H),5.42(m,1H),5.38(m,1H),5.34-5.28(m,2H),4.50-4.45(m,2H),4.30-4.24(m,2H),4.21-4.15(m,2H),4.05(ddd,1H,J=5.9,5.9,11.9Hz),2.45(t,2H,J=7.3Hz),2.40-2.32(m,10H),1.70-1.54(m,12H),0.97-0.86(m,18H)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
38H
60N
3O
21P
2:[M-H]
-,calcd:956.32,found:956.3
【0054】
実施例7: CDP-リビトール テトライソブチレート,ジアセテートの合成
(1)1,2,3,4-テトラ-O-イソブチリル-5-O-トリチル-D-リビトールの合成
【化19】
D-リボースから誘導した5-O-トリチル-D-リビトール(1.76g,4.46mmol)を脱水ピリジン(18mL)に溶解し、N,N-4-ジメチルアミノピリジン(545mg,4.46mmol)を加えて氷冷した。これにイソブタン酸無水物(4.46mL,26.8mmol)を加え、反応容器を氷浴からはずして室温で攪拌した。1時間30分後にN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(1.39mL,11.15mmol)を加えて未反応のイソブタン酸無水物を分解させた後に減圧濃縮した。得られた残渣にn-ヘキサン-酢酸エチル(2:1)の混合溶媒を加え、水、1M塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水、水、および飽和食塩水で順次洗浄した後に、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過し、濾液と洗浄液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。目的のフラクションを集めて減圧濃縮、乾燥することで、無色油状物である目的化合物を得た(収量:1.89g,収率:63%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.40-7.20(m,15H),5.40(dd,1H,J=5.5,5.5Hz),5.37(ddd,1H,J=3.2,5.9,5.9Hz),5.26(ddd,1H,J=2.8,5.0,7.3Hz),4.31(dd,1H,J=3.2,11.9Hz),4.11(dd,1H,J=7.3,11.9Hz),3.29(dd,1H,J=3.2,10.5Hz),3.19(dd,1H,J=6.4,10.5Hz),2.64(qq,1H,J=6.9,6.9Hz),2.50(qq,1H,J=6.9,6.9Hz),2.44-2.33(m,2H),1.24(d,3H,J=6.9Hz),1.22(d,3H,J=6.9Hz),1.12(d,3H,J=7.3Hz),1.11(d,3H,J=7.3Hz),1.09(d,3H,J=7.3Hz),1.08(d,3H,J=6.9Hz),1.04(d,3H,J=6.9Hz),1.01(d,3H,J=7.3Hz)
ESI-MSスペクトル(positive mode) C
40H
50O
9Na:[M+Na]
+,calcd:697.34,found:697.3
【0055】
(2)1,2,3,4-テトラ-O-イソブチリル-D-リビトールの合成
【化20】
1,2,3,4-テトラ-O-イソブチリル-5-O-トリチル-D-リビトール(1.42g,2.10mmol)に90%ギ酸水(15mL)を加え、さらにメタノール(2mL)を加えて均一な溶液として室温で攪拌した。20分後に反応混合物を減圧濃縮した。得られた残渣をn-ヘキサン:酢酸エチル=1:1の混合溶媒に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水、水、および飽和食塩水で順次洗浄した後に、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過し、濾液と洗浄液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。目的のフラクションを集めて減圧濃縮、乾燥することで、目的化合物を得た(収量:604mg,収率:67%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ5.39-5.34(m,2H),5.07(ddd,1H,J=3.7,5.5,5.5Hz),4.40(dd,1H,J=2.7,12.4Hz),4.16(dd,1H,J=6.9,12.4Hz),3.84(ddd,1H,J=3.7,7.3,12.4Hz),3.68(ddd,1H,J=5.5,5.5,12.4Hz),2.68-2.48(m,4H),2.07(dd,1H,J=6.0,7.3Hz),1.22-1.16(m,18H),1.15(d,3H,J=7.3Hz),1.14(d,3H,J=6.9Hz)
ESI-MSスペクトル(positive mode) C
21H
36O
9Na:[M+Na]
+,calcd:455.23,found:455.2
【0056】
(3)1,2,3,4-テトラ-O-イソブチリル-D-リビトール 5-ホスフェートの合成
【化21】
1,2,3,4-テトラ-O-イソブチリル-D-リビトール(300mg,0.694mmol)を脱水THF(6mL)に溶解し、-10℃以下に冷却した。これにジイソプロピルエチルアミン(944μL,5.55mmol)とPOCl
3(452μL,4.86mmol)を順次加えて2時間攪拌した。反応混合物を-78℃に冷却し、水(計4mL)を加えた。室温で飽和炭酸水素ナトリウム水(計8mL)を加えて中和し、減圧濃縮によりTHFをほぼ留去する際には、途中で飽和炭酸水素ナトリウム水を加えてpHを中性にした。得られた残渣(水層)をn-ヘキサンで洗浄した後に、6M塩酸を加えてpHを1~2に調整した後に、ジエチルエーテルを加えて分液した。分離した水層にジエチルエーテルを加えて抽出し、有機層を合わせた。水および飽和食塩水で順次洗浄後に無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過し、濾液と洗浄液を合わせ、トリエチルアミンを加えて減圧濃縮、乾燥することで、無色油状物である目的化合物を得た(収量:324mg,収率:91%)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ5.45(dd,1H,J=5.0,5.9Hz),5.37(ddd,1H,J=2.8,6.0,6.0Hz),5.30(ddd,1H,J=3.7,4.6,6.9Hz),4.52(dd,1H,J=2.8,12.4Hz),4.30(dd,1H,J=6.0,12.4Hz),4.13(ddd,1H,J=3.2,5.5,11.4Hz),4.00(ddd,1H,J=6.4,6.4,11.4Hz),2.76-2.62(m,3H),2.61(qq,1H,J=6.9,6.9Hz),1.19-1.15(m,18H),1.13(d,3H,J=7.3Hz),1.12(d,3H,J=6.9Hz)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
21H
36O
12P:[M-H]
-,calcd:511.19,found:511.2
【0057】
(4)CDP-リビトール テトライソブチレート,ジアセテートの合成
【化22】
1,2,3,4-テトラ-O-イソブチリル-D-リビトール 5-ホスフェート(319mg,0.622mmol)を脱水ピリジンに溶解し、減圧濃縮する操作を3回繰り返した。得られた残渣をアルゴン雰囲気下で脱水ピリジンに溶解した(A液)。これとは別に、1H-テトラゾール(96.0mg,1.37mmol)と、別途調製した2’,3’-ジ-O-アセチル-シチジン 5’-モノホスフェート モルフォリデート(定法によりシチジン5’-モノホスフェートから調製が可能)(444mg,0.933mmol)をそれぞれ別の容器Bと容器Cに入れ、同じく脱水ピリジンを加えて減圧濃縮する操作を3回繰り返し、それぞれ得られた残渣をアルゴン雰囲気下で脱水ピリジンに溶解した(順にB液とC液)。続いてアルゴン雰囲気下でA液に対してB液とC液を順次加えた。アルゴン雰囲気下、室温で終夜攪拌した。減圧濃縮により得られた残渣に脱水DMFを加えて減圧濃縮した。得られた残渣を逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥、およびイオン交換樹脂に通すことにより、白色粉末である目的化合物の2Na塩を得た(収量:271mg,収率:46%)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ8.00(d,1H,J=7.8Hz),6.20(d,1H,J=5.5Hz),6.16(d,1H,J=7.3Hz),5.44(dd,1H,J=4.6,5.5Hz),5.41-5.37(m,2H),5.31-5.26(m,2H),4.52-4.46(m,2H),4.30-4.13(m,4H),4.06(ddd,1H,J=6.9,6.9,11.4Hz),2.68-2.54(m,4H),2.16(s,3H),2.11(s,3H),1.15-1.12(m,18H),1.11(d,3H,J=6.9Hz),1.10(d,3H,J=6.9Hz)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
34H
52N
3O
21P
2:[M-H]
-,calcd:900.26,found:900.2
【0058】
実施例8: CDP-リビトール テトラメトキシカルボニル,ジアセテート
(1)1,2,3,4-テトラ-O-メトキシカルボニル-5-O-トリチル-D-リビトールの合成
【化23】
D-リボースから誘導した5-O-トリチル-D-リビトール(1.50g,3.80mmol)を脱水クロロホルム(15mL)に溶解し、N,N-4-ジメチルアミノピリジン(2.79g,22.8mmol)を加えて氷冷した。これにクロロギ酸メチル(1.75mL,22.8mmol)を加え、反応容器を氷浴からはずして室温で攪拌した。2時間30分後にクロロギ酸メチル(0.292mL,3.80mmol)を追加し、更に1時間室温で攪拌した。1M塩酸、水および飽和食塩水で順次洗浄した後に、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過し、濾液と洗浄液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。目的のフラクションを集めて減圧濃縮、乾燥することで、無色油状物である目的化合物を得た(収量:1.22g,収率:51%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.43-7.20(m,15H),5.35(dd,1H,J=4.1,5.9Hz),5.22(ddd,1H,J=3.2,3.7,7.3Hz),5.12(ddd,1H,J=3.7,5.5,5.5Hz),4.49(dd,1H,J=3.2,12.4Hz),4.26(dd,1H,J=6.9,12.4Hz),3.82(s,3H),3.77(s,3H),3.74(s,3H),3.72(s,3H),3.38(dd,1H,J=3.2,10.5Hz),3.26(dd,1H,J=5.5,10.5Hz)
ESI-MSスペクトル(positive mode) C
32H
34O
13Na:[M+Na]
+,calcd:649.19,found:649.2
【0059】
(2)1,2,3,4-テトラ- O-メトキシカルボニル-D-リビトールの合成
【化24】
1,2,3,4-テトラ-O-メトキシカルボニル-5-O-トリチル-D-リビトール(1.19g,1.90mmol)に80%ギ酸/メタノール(15mL)を加えて室温で攪拌した。30分後に反応混合物を減圧濃縮した。得られた残渣をn-ヘキサン:酢酸エチル=1:1の混合溶媒に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水、水および飽和食塩水で順次洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過し、濾液と洗浄液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。目的のフラクションを集めて減圧濃縮、乾燥することで目的化合物を得た(収量:388mg,収率:53%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ5.28(dd,1H,J=4.1,5.0Hz),5.25(ddd,1H,J=2.8,4.1,6.9Hz),5.02(ddd,1H,J=4.1,5.5,5.5Hz),4.54(dd,1H,J=2.8,12.4Hz),4.31(dd,1H,J=6.9,12.4Hz),3.94(ddd,1H,J=4.1,6.4,12.4Hz),3.85-3.80(m,7H),3.82(s,3H),3.79(s,3H),2.09(dd,1H,J=6.4,6.4Hz)
ESI-MSスペクトル(positive mode) C
13H
20O
13Na:[M+Na]
+,calcd:407.08,found:407.1
【0060】
(3)1,2,3,4-テトラ-O-メトキシカルボニル-D-リビトール 5-ホスフェートの合成
【化25】
1,2,3,4-テトラ- O-メトキシカルボニル-D-リビトール(335mg,0.872mmol)を脱水THF(15mL)に溶解し、-10℃以下に冷却した。これにジイソプロピルエチルアミン(1.21mL,6.98mmol)とPOCl
3(567μL,6.10mmol)を順次加えて2時間攪拌した。反応混合物を-78℃に冷却し、水(計5mL)を加えた。室温で飽和炭酸水素ナトリウム水(計8mL)を加えて中和し、減圧濃縮によりTHFをほぼ留去する際には途中で飽和炭酸水素ナトリウム水を加えてpHを中性にした。得られた残渣(水層)をジエチルエーテルで洗浄した後に、6M塩酸を加えてpHを1~2に調整した後に酢酸エチルを加えて分液した。分離した水層に酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を合わせた。水と飽和食塩水で順次洗浄後に無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過し、濾液と洗浄液を合わせ、トリエチルアミンを加えて減圧濃縮、乾燥することで、無色油状物である目的化合物を得た(収量:303mg(
1H-NMRの積分値からの補正収量),収率:74%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ5.29(dd,1H,J=4.1,6.4Hz),5.23(ddd,1H,J=3.2,4.1,6.9Hz),5.12(m,1H),4.50(dd,1H,J=3.2,12.4Hz),4.31(dd,1H,J=6.9,12.4Hz),4.21(ddd,1H,J=3.2,5.5,11.9Hz),4.09(ddd,1H,J=5.0,6.9,11.9Hz),3.801(s,3H),3.795(s,3H),3.792(s,3H),3.77(s,3H)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
13H
20O
16P:[M-H]
-,calcd:463.05,found: 463.0
【0061】
(4)CDP-リビトール テトラメトキシカルボニル,ジアセテート
【化26】
1,2,3,4-テトラ-O-メトキシカルボニル-D-リビトール 5-ホスフェート(303mg,0.65mmol)、2’,3’-ジ-O-アセチル-シチジン 5’-モノホスフェート モルフォリデート(697mg,0.98mmol)と1H-テトラゾール(100mg,1.43mmol)を脱水ピリジン(7mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下、室温で2日間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に脱水DMFを加えて減圧濃縮した。得られた残渣を逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥、およびイオン交換樹脂に通すことにより、白色粉末である目的化合物の2Na塩を得た(収量:325mg,収率:55%)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ7.98(d,1H,J=7.3Hz),6.21(d,1H,J=5.0Hz),6.16(d,1H,J=7.8Hz),5.44(dd,1H,J=4.1,5.5Hz),5.40(dd,1H,J=5.5,5.5Hz),5.29(dd,1H,J=5.0,5.0Hz),5.23-5.16(m,2H),4.55(dd,1H,J=3.2,12.8Hz),4.52(m,1H),4.38(dd,1H,J=6.0,12.4Hz),4.30(ddd,1H,J=2.3,4.1,11.9Hz),4.23(ddd,1H,J=3.2,5.5,11.9Hz),4.18(ddd,1H,J=3.2,4.1,11.9Hz),4.11(ddd,1H,J=6.0,6.0,11.9Hz),3.82(m,6H),3.81(s,3H),3.79(s,3H),2.17(s,3H),2.12(s,3H)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
26H
36N
3O
25P
2:[M-H]
-,calcd:852.11,found:852.1
【0062】
実施例9: CDP-リビトール ヘキサアセテート-PB1の合成
(1)2’,3’-ジ-O-アセチル-シチジン-5’-(4-ペンタノイルオキシベンジル N,N-ジイソプソピル ホスホロアミダイトの合成
【化27】
参考文献(Eur.J.Org.Chem.,2009,18,1967-1975)に記載の方法で得られる2’,3’-ジ-O-アセチル-シチジン(0.50g)を脱水DMF(20mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下で氷冷した。これに参考文献(J.Med.Chem.,2015,58,6114-6130)に記載の方法で得られるペンタノイルオキシベンジツ ビス(ジイソプロピルアミノ)-ホスホロアミダイト(1.34g)を加え、更に4,5-ジシアノイミダゾール(0.18g)の脱水DMF(0.80mL)溶液をアルゴン雰囲気下で滴下した。アルゴン雰囲気下、室温で30分間攪拌した後に酢酸エチルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後に濾過し、濾液と洗浄液を合わせて減圧濃縮により得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。目的のフラクションを集めて減圧濃縮、乾燥することで、油状物である目的化合物を得た(粗収量:0.491g(溶媒等を含む))。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.90(d,0.5H,J=7.8Hz),7.72(d,0.5H,J=7.3Hz),7.41(d,1H,J=8.7Hz),7.38(d,1H,J=8.7Hz),7.04(d,1H,J=8.7Hz),7.02(d,1H,J=8.7Hz),6.48(d,0.5H,J=7.3Hz),6.38(d,0.5H,J=5.5Hz),5.42(dd,0.5H,J=4.1,5.5Hz),5.39-5.36(m,1H),5.29(dd,0.5H,J=5.5,7.3Hz),5.01(d,0.5H,J=7.3Hz),4.78(dd,0.5H,J=7.3,12.4Hz),4.74-4.69(m,1H),4.57-4.52(m,1H),4.26(m,1H),4.02(ddd,0.5H,J=2.3,5.5,11.0Hz),3.83-3.81(m,1H),3.79(ddd,0.5H,J=1.4,4.6,11.0Hz),3.75-3.49(m,2H),2.59(t,1H,J=7.3Hz),2.57(t,1H,J=7.3Hz),2.101(s,1.5H),2.096(s,1.5H),2.082(s,1.5H),2.045(s,1.5H),1.77-1.69(m,2H),1.50-1.40(m,2H),1.29-1.20(m,12H),0.980(t,1.5H,J=7.3Hz),0.977(t,1.5H,J=7.3Hz)
ESI-MSスペクトル(positive mode) C
31H
46N
4O
10P:[M+H]
+,calcd:665.30,found:665.3
【0063】
(2)CDP-リビトール ヘキサアセテート-PB1の合成
【化28】
アルゴン雰囲気下で1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リビトール 5-ホスフェート(232mg)、トリエチルアミン(58μL)、および2’,3’-ジ-O-アセチル-シチジン-5’-(4-ペンタノイルオキシベンジル N,N-ジイソプロピル ホスホロアミダイト)(463mg)を脱水アセトニトリル(14mL)に溶解して室温で攪拌した。これに4,5-ジシアノイミダゾール(82mg)を脱水アセトニトリル(1mL)に溶解したものを少しずつ計7回に分けて加えた。20分間攪拌した後に、約5.0M t-ブチルヒドロペルオキシド/デカン溶液(190μL)を加えた。更に40分間攪拌した後に、約5.0M t-ブチルヒドロペルオキシド/デカン溶液(80μL)を追加した。20分後にn-ヘキサンで洗浄した後に、減圧濃縮によりアセトニトリルを留去した。残渣に脱水アセトニトリルを加えて再度減圧濃縮した。得られた残渣を逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥に得られた226mgのうちの140mgをイオン交換樹脂に通すことにより、白色粉末である目的化合物のNa塩を得た(収量:119mg,収率:41%)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ7.60(d,0.5H,J=7.8Hz),7.57(d,0.5H,J=7.3Hz),7.56-7.51(m,2H),7.18-7.12(m,2H),6.10-6.07(m,1H),5.97(d,0.5H, J=7.8 Hz), 5.90(d, 0.5H, J=7.3 Hz), 5.36(dd,0.5H,J=5.5,5.5Hz),5.33(dd,0.5H,J=5.5,5.5Hz),5.28-5.21(m,6H),4.44-4.34(m,3H),4.32-4.22(m,2H),4.20-4.12(m,1H),4.09-4.02(m,1H),2.64(t,1H,J=7.3Hz),2.63(t,1H,J=7.3Hz),2.144(s,3H),2.122(s,1.5H),2.120(s,1.5H),2.103(s,1.5H),2.098(s,3H),2.088(s,3H),2.080(s,1.5H),2.060(s,1.5H),2.057(s,1.5H),1.74-1.66(m,2H),1.46-1.36(m,2H),0.93(t,3H,J=7.3Hz)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
38H
50N
3O
23P
2:[M-H]
-,calcd:978.23,found:978.2
【0064】
実施例10: CDP-リビトール ヘキサアセテート-PB2の合成
(1)1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リビトール-5-(4-ペンタノイルオキシベンジル N,N-ジイソプロピル ホスホロアミダイトの合成
【化29】
1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リビトール(384mg,1.20mmol)を脱水ジクロロメタン(15mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下で氷冷した。これに参考文献(J.Med.Chem.,2015,58,6114-6130)に記載の方法で得られる4-ペンタノイルオキシベンジル ビス(ジイソプロピルアミノ)-ホスホロアミダイト(1.05g,2.40mmol)を加えた。4,5-ジシアノイミダゾール(142mg,120mmol)/脱水DMF(630μL)の溶液を滴下し、反応容器を氷浴からはずしてアルゴン雰囲気下で攪拌した。30分後に酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水、水および飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後に濾過し、濾液と洗浄液を合わせて減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。目的のフラクションを集めて減圧濃縮、乾燥することで目的化合物を得た(粗収量:782mg,粗収率:99%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.36-7.32(m,2H),7.04-7.02(m,2H),5.39(dd,0.5H,J=5.0,6.0Hz),5.35(dd,0.5H,J=5.0,5.0Hz),5.32(m,1H),5.26-5.20(m,1H),4.77-4.57(m,2H),4.34(dd,0.5H,J=3.2,11.9Hz),4.33(dd,0.5H,J=3.2,12.4Hz),4.16(dd,0.5H,J=1.8,12.4Hz),4.15(dd,0.5H,J=1.8,12.4Hz),3.84(ddd,0.5H,J=3.7,6.9,11.4Hz),3.78-3.74(m,1H),3.67(m,0.5H),3.66-3.56(m,2H),2.55(t,2H,J=7.3Hz),2.08(s,1.5H),2.062(s,1.5H),2.056(s,3H),2.046(s,3H),2.034(s,1.5H),2.030(s,1.5H),1.77-1.70(m,2H),1.49-1.40(m,2H),1.21-1.15(m,12H),0.97(t,3H,J=7.3Hz)
ESI-MSスペクトル(positive mode) C
31H
49NO
12P:[M+H]
+,calcd:658.30,found:658.3
【0065】
(2)CDP-リビトール ヘキサアセテート-PB2の合成
【化30】
CMP ジアセテート(270mg,0.663mmol)を脱水DMF(20mL)に溶解し、減圧濃縮する操作を2回繰り返した。得られた残渣を脱水DMF(30mL)に溶解し、トリエチルアミン(83.1μL,0.577mmol)を加えて中和した(A液)。これとは別に、1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リビトール-5-(4-ペンタノイルオキシベンジル N,N-ジイソプロピル ホスホロアミダイト)(479mg,0.729mmol)を脱水アセトニトリル(27mL)に溶解し、これに前記A液を加えた。更に脱水DMF(5mL)で2回洗浄した。続いて4,5-ジシアノイミダゾール(86.1mg,0.729mmol)の脱水DMF(1mL)溶液を室温で加えた。20分間攪拌した後に、70%t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(427μL,3.32mmol)を加えた。更に2時間後に70%t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(171μL,1.33mmol)を追加した。更に1時間30分間攪拌した後に反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣を逆相系のHPLCで精製した。目的のフラクションを集め、凍結乾燥、およびイオン交換樹脂に通すことにより、白色粉末である目的化合物のNa塩を得た(収量:328mg,収率:50%)。
1H-NMR(400MHz,D
2O):δ7.75(d,0.5H,J=7.8Hz),7.73(d,0.5H,J=7.3Hz),7.50(d,2H,J=8.7Hz),7.15(m,2H),6.14(m,1H),5.99(d,0.5H,J=7.8Hz),5.96(d,0.5H,J=7.3Hz),5.39-5.28(m,3H),5.24-5.17(m,4H),4.46(m,1H),4.37-4.13(m,6H),2.64(t,2H,J=7.3Hz),2.155(s,1.5H),2.151(s,1.5H),2.109(s,1.5H),2.104(s,1.5H),2.100(m,3H),2.084(s,1.5H),2.076(m,4.5H),2.06(s,1.5H),2.05(s,1.5H),1.74-1.67(m,2H),1.46-1.37(m,2H),0.94(t,3H,J=7.3Hz)
ESI-MSスペクトル(negative mode) C
38H
50N
3O
23P
2:[M-H]
-,calcd:978.23,found:978.2
【0066】
試験例1: In vitro解析
公知技術(Kanagawa et al,2016)に従って、CDP-リビトール合成酵素(ISPD)をノックアウトしたヒト胎児腎細胞(HEK細胞)を作製した。作製したISPD-KO HEK細胞を6wellプレートに1.0×10
6cells/well播種し、10%非働化ウシ胎児血清(Sigma社製)、100U/mLペニシリン、および100μg/mLストレプトマイシン(WAKO社製)を含有した高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(WAKO社製)で一晩培養して細胞が定着した後、各濃度の被検化合物を添加した。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、1%界面活性剤(Triton X-100)とプロテアーゼ阻害剤(Nacalai社製)を含むTBSにて細胞を剥離した。4℃で1時間撹拌した後、可溶画分に10μLのWheat Germ Agglutinin(WGA)-agarose beads(Vector Laboratories社製)を加え、4℃で16時間撹拌した。0.1%界面活性剤(Triton X-100)を含むTBSにて洗浄後、SDS-PAGE loading bufferにて溶出した。タンパク質を4~15% linear gradient SDS gel(Bio-Rad社製)にて分離し,PVDF膜(Millipor社製)に転写した。ブロットを以下の抗体を用いて標識し、horseradish peroxidase(HRP)-enhanced chemiluminescence reagent(「Supersignal West Pico PLUS or ECL Prime」GE Healthcare社製)にて現像した。また、比較のために、被検化合物を用いない場合と、正常HEK細胞を用いた場合でも同様に実験を行った。結果を
図1~3に示す。
抗体
マウス抗完全糖鎖修飾型-DG(「IIH6」 Millipore社製)
ラット抗-DGコア(「3D7」Ohtsuka et al.,2015)
マウス抗-DG(「8D5」Novocastra社製)
なお、「IIH6」はα-ジストログリカン(DG)の糖鎖に結合し、「3D7」はα-DGのコアに結合し、「8D5」はβ-DGに結合する。
【0067】
(1)CDP-リビトール アセテートの結果
図1に示された結果の通り、CDP-リビトール(CDP-Rbo)は500μMで糖鎖の形成が回復したが、CDP-リビトール テトラアセテート(TetA,実施例2)は200μMで糖鎖の形成が回復しており、CDP-リビトール テトラアセテートによる糖鎖回復効果はCDP-リビトールよりも強いことが示された。
【0068】
(2)CDP-リビトール ブチレートの結果
図2に示された結果の通り、CDP-リビトール テトラアセテート(TetA,実施例2)は200μMで糖鎖の形成が回復したのに対して、CDP-リビトール テトラブチレート(TetB,実施例4)とCDP-リビトール テトラブチレート,ジアセテート(TetB/DiA,実施例5)は100μMで、CDP-リビトール ヘキサブチレート(HexB,実施例6)は50μで糖鎖の形成が回復しており、CDP-リビトール ブチレートはCDP-リビトール アセテートよりも糖鎖回復効果が強い傾向が認められた。
【0069】
(3)CDP-リビトール PBの結果
図3に示された結果の通り、シチジン側のリン酸がエステル化されているCDP-リビトール ヘキサアセテート-PB1CDP-リビトール イソブチレート(BP1,実施例9)は10μMで、リビトール側のリン酸がエステル化されているCDP-リビトール ヘキサアセテート-PB2(BP2,実施例10)は50μMで、糖鎖の形成が回復した。マイナス電荷を有するピロリン酸基がエステル化されることにより、CDP-リビトールの細胞内取込量が増加したことが考えられる。
【0070】
試験例2: In vivo解析 - 筋組織観察
(1)モデルマウスの作製
マウスIspd遺伝子exon2の5’側および3’側にloxP配列をそれぞれ挿入したIspdlox/loxマウス(Lee,et al.,2014)に、筋前駆細胞特異的に発現するMyf5をプロモーターに持つCre発現ノックイン(CreKI)マウスを交配した(Jackson Lab,B6.129S4-Myf5tm3(cre)Sor/J)。更にMyf5-Creを持つIspdloxP/+ヘテロマウスをIspdlox/loxマウスと交配し、Myf5の発現と共にCDP-リビトール合成酵素(ISPD)がノックアウトされたMyf5-Ispd-cKOマウスを作成した。以下、[Ispdlox/lox:Myf5-CreKI(+)]をcKO、[Ispdlox/+:Myf5-CreKI(+)]をHET、[Ispdlox/lox:Myf5-CreKI(-)]をWTと表記する。動物実験は、神戸大学大学院動物実験管理委員会の許可を得て実施した。
なお、cKOはWTに比べて低体重で、WTとHETに比べて短命であり、WTとHETに比べて4週齢でも握力が弱く、筋機能が低かった。
また、cKOはWTとHETに比べて筋重量が低く筋萎縮傾向にあり、且つ筋破壊の指標であるクレアチンキナーゼ(CK)値が高かった。
更に、ウェスタンブロットによれば、WTとHETでは完全に糖鎖化されたジストログリカン(DG)が検出されたが、cKOでは検出されなかった。また、WTとHETでもDGのコアタンパク質は認められたが、糖鎖修飾されたDGのバンドの方が濃く検出された。それに対してcKOでは、糖鎖修飾されていないコアタンパク質のバンドのみが認められた。かかる結果より、cKOの筋組織においてはDGの糖鎖が脱落していることが示された。
【0071】
(2)筋組織試料の作製
マウスから摘出した筋組織をOTCコンパウンド(Sakura Fintek社製)に包埋し、液体窒素で冷却したイソペンタン(Nacalai社製)中で凍結処理した。クリオスタットを用いて7μmの凍結切片を作製し、組織解析と蛍光免疫染色に用いた。
【0072】
(3)H&E染色と免疫染色による病理解析
H&E染色では,ヘマトキシリンで2分間、エオジンで1分間の染色を行った後、エタノールとキシレンで脱水した。
IIH6による免疫染色では、切片を冷エタノール:酢酸=1:1の混合溶媒で1分固定した後、5%ヤギ血清を含むMOMブロッキング試薬(Vector Laboratories社製)を用いて室温で1時間ブロッキングした。MOM希釈液に希釈した1次抗体を用いて、4℃で一晩反応させた。
H&E染色については凍結切片作製用包埋剤として「Permount」Fisher Scientific社製で、免疫染色については「TISSU MOUNT」Shiraimatsu Kikai社製で封入した。切片は蛍光顕微鏡(「Leica DMR」Leica Microsystems社製)で観察した。結果を
図4に示す。
図4に示される結果の通り、cKOの組織では、WTとHETに比べて、筋線維の大小不同、中心核の増加、および線維化の増加など筋ジストロフィーに特徴的な所見が認められた。また、α-ジストログリカン(DG)の糖鎖に結合するIIH6を用いた免疫染色では蛍光信号が低下しており、DGの糖鎖が脱落していることが示された。
【0073】
また、以下の抗体を用いて、免疫染色を行った。
ラット抗laminin(「4H8-2」Alexis Biochemicals社製)
ウサギ抗collagen I(Bio-Rad社製)
ラット抗F4/80(BioLegend社製)
ラミニン、F4/80およびcollagen Iによる免疫染色では、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSを用いて1時間室温で切片をブロッキングした後、1%BSAを含むPBSで希釈した1次抗体を用いて4℃で一晩反応させた。翌日、切片をPBSで洗浄し、色素(「Alexa Fluor 488」または「Alexa Fluor 555」Molecular Probes社製)を用いて2次抗体と室温で30分間反応させた後、PBSにて洗浄した。
ラミニン染色の結果、cKOの筋線維サイズは、WTとHETに比べて大きなものや小さなものが相対的に多く、筋線維サイズが均一でなくばらつきが大きいことが示された。また、cKOの筋組織では、WTに比べて中心核を持つ筋線維の割合が顕著に増加していた。更に、マクロファージマーカーとして汎用されている抗体F4/80による染色の結果、cKOの筋組織においてはWTに比べてマクロファージの浸潤が強く、コラーゲン染色の結果、筋組織の線維化が進行していることが示された。これらはいずれも筋ジストロフィーに典型的な所見であり、筋特異的ISPD欠損マウスであるcKOは、福山型筋ジストロフィー類縁疾患のモデルになるといえる。
【0074】
試験例3: In vivo解析 - ウェスタンブロット解析
7週齢の前記cKOモデルマウス4匹を麻酔した後、CDP-リビトール(CDP-Rbo)またはCDP-リビトール テトラアセテート(TetA,実施例2)を生理食塩水に溶解した0.1M水溶液、または生理食塩水を、前脛骨筋に40μL、腓腹筋に60μL注射し、また、3日後、同様に麻酔してから各水溶液を注射した。2回目の注射から3日目に筋組織を摘出した。
プロテアーゼ阻害剤を添加したTBS中、ポリトロンホモジナイザーを使って筋組織を破砕した後、終濃度1%の界面活性剤(TritonX-100)を添加し、4℃で1時間転倒混和した。可溶画分に10~30μLのWheat Germ Agglutinin(WGA)-agarose beads(Vector Laboratories社製)を加え、4℃で16時間撹拌した。0.1%界面活性剤(Triton X-100)を含むTBSにて洗浄後、SDS-PAGE loading bufferにて溶出した。得られた試料を試験例1と同様にウェスタンブロットに付した。結果を
図5に示す。
図5に示された結果の通り、CDP-リビトールを投与した場合には、生理食塩水を投与した場合に比べて、α-ジストログリカン(DG)の糖鎖形成が僅かに認められた。
それに対して、CDP-リビトール テトラアセテート(TetA)を投与した場合にはDGの糖鎖形成が明確に認められ、高い糖鎖回復活性が示された。また、CDP-リビトール テトラアセテート(TetA)を投与されたモデルマウスは、8週齢の時点で同量の生理食塩水を投与されたモデルマウスと変わるところがなかったことから、CDP-リビトール テトラアセテート(TetA)の毒性は低いと考えられる。
【0075】
試験例4: In vivo解析 - 免疫染色解析
1週あたり2回の投与を3週連続して続けた以外は試験例3と同様にし、最終投与の3日後に組織を摘出し、試験例2と同様の条件でラミニン、F4/80およびcollagen Iによる免疫染色による病理解析を行った。ラミニンによる免疫染色結果を
図6に、F4/80による免疫染色結果を
図7(1)に、collagen Iによる免疫染色結果を
図7(2)に示す。なお、
図6において「*」は、平均値をTurkeyの多重比較検定して一元配置分散分析した結果、p<0.05で有意差がある場合を示し、「***」はp<0.001で有意差がある場合を示す。
図7において、「*」は、Kruskal-Wallis検定の後のDunn’s多重比較でp<0.05で有意差がある場合を示す。
図6に示される結果の通り、対照例(生理食塩水)に比べて、CDP-リビトール(CDP-Rbo)を投与した場合でも筋線維径が僅かに増加する傾向があったが、CDP-リビトール テトラアセテート(TetA)を投与した場合、対照例に比べてもCDP-リビトールを投与した場合に比べても、有意に筋線維径が増加した。筋線維径分布(
図6(2))を見ると、CDP-リビトール テトラアセテート(TetA)を投与した場合には、小径の筋線維が減少し、大径の筋線維が増加したことが分かる。
図7(1)に示される結果の通り、CDP-リビトール テトラアセテート(TetA)を投与した場合には、対照例に比べて、筋組織へのマクロファージの浸潤が有意に減少していた。
また、
図7(2)に示される結果の通り、CDP-リビトール テトラアセテート(TetA)を投与した場合には、対照例に比べてもCDP-リビトールを投与した場合に比べても、筋線維化が有意に減少したことが分かる。
以上の結果は、TetAが福山型筋ジストロフィーおよびその類縁疾患の治療に有効であることを示している。