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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電動式移動棚装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 53/02 20060101AFI20240627BHJP
   B65G 1/10 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A47B53/02 502H
B65G1/10 C
A47B53/02 501C
A47B53/02 501J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020193840
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082346
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229759
【氏名又は名称】日本ファイリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 厚之
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-199014(JP,A)
【文献】特開2005-015120(JP,A)
【文献】特開平11-193113(JP,A)
【文献】特開2010-069185(JP,A)
【文献】特開平09-118406(JP,A)
【文献】特開2009-274815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 53/02
B65G 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の車輪(13)と、前記車輪(13)と一体に回転する車軸(12)と、前記車輪(13)に動力を伝達する電動モータ(20)を備え、床に施設された走行レール(19)上を移動する複数の移動棚(2a)を具備する電動式移動棚装置において、
複数の前記移動棚(2a)ごと別個に、前記電動モータ(20)の停止時に作動して前記車軸(12)の回転を制限する無励磁作動型ブレーキ(31)を備えた制震装置(30)を具備することを特徴とする電動式移動棚装置。
【請求項2】
前記移動棚(2a)は、前記電動モータ(20)の動力が伝達されて前記車輪(13)と一体に回転する駆動車軸(12a)と、
前記駆動車軸(12a)と前記電動モータ(20)のモータ回転軸(22)との間に配設され、前記電動モータ(20)からの回転が減速される減速機(23)を備え、
前記無励磁作動型ブレーキ(31)は、前記モータ回転軸(22)に連結されて前記モータ回転軸(22)の回転を制限することを特徴とする請求項1に記載の電動式移動棚装置。
【請求項3】
前記移動棚(2a)は、前記電動モータ(20)の動力が伝達されて前記車輪(13)と一体に回転する駆動車軸(12a)と、
前記駆動車軸(12a)と前記無励磁作動型ブレーキ(31)との間に配置され、前記駆動車軸(12a)から前記無励磁作動型ブレーキ(31)へ回転力を伝達する回転力伝達機構(80)を備え、 前記無励磁作動型ブレーキ(31)は、前記移動棚(2a)に取り付けられ、前記駆動車軸(12a)の回転を制限することを特徴とする請求項1に記載の電動式移動棚装置。
【請求項4】
前記無励磁作動型ブレーキ(31)は、
前記駆動車軸(12a)との間で動力が伝達されるロータ(35)と、
電力が供給されるコイル(33)と、
前記コイル(33)が固定されるステータ(32)と、
前記コイル(33)への電力の供給・停止により、前記ロータ(35)にとの間の摩擦力の発生が制御されるアーマチュア(45)とを備えることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の電動式移動棚装置。
【請求項5】
前記無励磁作動型ブレーキ(31)は、前記アーマチュア(45)を前記ロータ(35)へ押し付ける付勢力を常時発生する弾性部材(34)を備え、
前記アーマチュア(45)は、前記ロータ(35)の回転軸方向において、前記ロータ(35)と前記ステータ(32)の間に配置され、
前記コイルへ(33)の通電により、前記アーマチュア(45)が前記ステータ(32)に吸着されることを特徴とする請求項4に記載の電動式移動棚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の発生時に地震の揺れによる移動棚の移動を制御して、移動棚の暴走および転倒を防ぎ、移動棚の使用者への衝突や移動棚の間にいる使用者が移動棚に挟まれることを防ぐとともに、収納物の落下を防止することのできる制震装置を備えた電動式移動棚装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地震発生時に移動棚のロック状態を解除し、移動棚の転倒を防止する免震効果を得ることのできる電動式移動棚装置として、特許文献1に示されるようなものがある。
【0003】
この電動式移動棚装置では、駆動源として電動モータを用い、制御回路により移動棚の駆動を制御している。制御回路には、移動棚の移動停止中には電気的なブレーキ力を生起させる発電ブレーキ回路が組み込まれており、移動棚の停止中には、発電ブレーキ回路のスイッチがオンとなり、ブレーキ機能が発揮されている。
【0004】
この電動式移動棚装置は、一定の震度以上の地震が発生したときにこれを検知する感震手段を備えており、地震が発生して感震手段が一定以上の震動を感知したときに、発電ブレーキ回路のスイッチをオフにして発電ブレーキが解除される。発電ブレーキが解除されて、地震による床面の揺れに対して走行車輪が回転することにより、地震エネルギーの移動棚への伝達が絶たれて免震効果を得ているものである。
【0005】
このような電動式移動棚装置では、地震の揺れの大きさや震動の方向によって、感震手段が揺れを検知できずに、発電ブレーキを解除して移動棚の固定状態を解除することができないおそれがある。移動棚の固定状態が解除されない場合には、移動棚の免震効果が得られず移動棚の収納物の落下が発生する。
【0006】
またこのような電動式移動棚装置は、感震手段が揺れを検知して移動棚の固定が解除されて免震効果を得ることができるが、移動棚の車輪の回転の規制が完全に解除されているので、地震の大きさや震動の方向によって、移動棚の暴走や転倒が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開第2003-102562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電動式移動棚装置において、地震の発生の際に、制震装置が確実に作動して移動棚へ適切な制動力を発揮して移動棚の暴走や転倒を防ぐとともに、移動棚の重量や大きさに応じて、地震発生時において必要とされる制動力に適合させることが可能な電動式移動棚装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決することを目的として、走行用の車輪と、前記車輪に動力を伝達する電動モータを備え、床に施設された走行レール上を移動する移動棚を具備する電動式移動棚装置において、
前記電動モータの停止時に作動して前記車輪の回転を制限する無励磁作動型ブレーキを備えた制震装置を具備することを特徴とする電動式移動棚装置である。
【0010】
本発明は前記したように構成されているので、電動式移動棚の電動モータへの電力の供給を停止して移動棚の移動を停止すると、無励磁作動型ブレーキが作動して車輪の回転に制限をかけるブレーキ状態となるので、地震の発生時に制震装置が確実に作動し、確実に移動棚への適切な制動力を発揮するとともに、移動棚の重量や大きさに応じ必要とする制動力に適合させることができる。
【0011】
本発明の好適な実施形態では、前記移動棚は、前記電動モータの動力が伝達されて前記車輪と一体に回転する駆動車軸と、
前記駆動車軸と前記電動モータのモータ回転軸との間に配設され、前記電動モータからの回転が減速される減速機を備え、
前記無励磁作動型ブレーキは、前記モータ回転軸と連結されて前記モータ回転軸の回転を制限する。
【0012】
この実施形態によれば、移動棚の駆動車軸とモータ回転軸との間に減速機が配置され、無励磁作動型ブレーキがモータ回転軸に連結されモータ回転軸の回転を制限するので、地震によって移動棚が移動すると、駆動車軸の回転トルクが減速機を介してモータ回転軸に伝達されるので、無励磁作動型ブレーキは少ない回転トルクでもって、移動棚を制震することが可能となる。
【0013】
本発明の好適な実施形態では、前記移動棚は、前記電動モータの動力が伝達されて前記車輪と一体に回転する駆動車軸と、
前記駆動車軸と前記無励磁作動型ブレーキとの間に配置され、前記駆動車軸から前記無励磁作動型ブレーキへ回転力を伝達する回転力伝達機構を備え、
前記無励磁作動型ブレーキは、前記移動棚に取り付けられ、前記駆動車軸の回転を制限する。
【0014】
この実施形態によれば、無励磁作動型ブレーキの制動力を、回転力伝達機構を介して直接駆動車軸に働かせることができるので、確実に移動棚を制震することが可能なるとともに、無励磁作動型ブレーキの配置の自由度が高くなり、無励磁作動型ブレーキを適切な位置に容易に配置することができる。
【0015】
本発明の好適な実施形態では、前記無励磁作動型ブレーキは、
前記駆動車軸との間で動力が伝達されるロータと、
電力が供給されるコイルと、
前記コイルが固定されるステータと、
前記コイルへの電力の供給・停止により、前記ロータにとの間の摩擦力の発生が制御されるアーマチュアとを備える。
【0016】
この実施形態によれば、移動棚の移動時には電動モータに通電されるとともに、ステータに保持されたコイルにも通電がされるので、ロータはアーマチュアとの間の摩擦力が解除され、ロータから動力が伝達される駆動車軸は回転可能な状態となり、無励磁作動型ブレーキが解除されて、移動棚の固定状態が確実に解除される。
【0017】
さらに、移動棚の電動モータへ電力が供給されなくなると、無励磁作動型ブレーキへの電力の供給が停止されてロータはアーマチュアとの間に摩擦力が発生して制震状態となるので、感震装置が不要となり、感震装置の精度に左右されず、確実に制震状態となる。ロータのトルクが所定値以下の場合には、ロータは回転不能とされ、所定値以上になるとロータの回転力が抑制されつつ回転するので、地震の発生時に移動棚への適切な制動力を発揮し、移動棚の暴走や転倒を防ぐとともに、移動棚の重量や大きさに応じて、移動棚に必要な制動力を適合させることが容易である。
【0018】
本発明の好適な実施形態では、前記無励磁作動型ブレーキは、前記アーマチュアを前記ロータへ押し付ける付勢力を常時発生する弾性部材を備え、
前記アーマチュアは、前記ロータの回転軸方向において、前記ロータと前記ステータの間に配置され、
前記コイルへの通電により、前記アーマチュアが前記ステータに吸着される。
【0019】
この実施形態によれば、アーマチュアは弾性部材により常時ロータへ押し付けられる状態にあり、コイルが通電されることにより、弾性部材の付勢力に抗ってアーマチュアがステータに吸着されるので、アーマチュアとロータ間の摩擦力が発生しなくなり、無励磁作動型ブレーキのブレーキ作動を確実に解除することができる。
【0020】
さらに、コイルへの通電が解除されると、アーマチュアはステータへの吸着が解除されるとともに弾性部材によりロータに押し付けられるので、無励磁作動型ブレーキ31は確実にブレーキ状態となる。さらに、ロータのトルクが所定値となるまでは、ロータはアーマチュアとの摩擦力により回転が阻止され回転不能となるが、ロータのトルクが所定値以上になると、ロータは、アーマチュアとの摩擦力を受けて回転力が抑制されつつ摺動して回転するので、地震の発生時に移動棚への適切な制動力を発揮することが可能となる。さらに、移動棚の重量や大きさに応じて弾性部材等を変更した無励磁作動型ブレーキを用いることにより、移動棚に応じた必要な制動力に適合させることが容易である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電動式移動棚装置は、地震の発生時に制震装置が確実に作動し、地震の揺れによる移動棚の移動を制御し、移動棚の暴走および転倒の発生を確実に防ぐことできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一の実施の形態に係る制震装置を備えた移動棚装置の斜視図である。
図2図1の移動棚装置の側面図である。
図3図1の移動棚装置の間口面から視た図である。
図4図3の部分拡大図であり、移動棚装置の下部は、走行用車輪、車軸、軸受部材、および走行レールが見える状態に切断した切断図である。
図5】単位移動棚の駆動装置を示した概要図である。
図6】制震装置の周辺を示した斜視図である。
図7図6を上から見た平面図である。
図8】無励磁作動型ブレーキの正面図である。
図9】アーマチュアの正面図である。
図10】無励磁作動型ブレーキの図8のX-X矢視断面図である。
図11図8のXI-XI矢視断面において、無励磁作動型ブレーキの非通電時における状態を示した断面図である。
図12図11の無励磁作動型ブレーキの通電時における状態を示した断面図である。
図13】本発明の第二の実施の形態の電動式移動棚装置の要部を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第一の実施の形態の電動式移動棚装置1を、図1ないし図12に基づいて説明する。
【0024】
図1および図2は、本発明の第一の実施の形態の電動式移動棚装置1の斜視図である。電動式移動棚装置1は複数の単位棚2と、床18に固定された走行レール19を備えている。単位棚2は、走行レール19を走行する移動棚としての単位移動棚2aと、床18に固定された単位固定棚2bとの2種類があり、本実施の形態の電動式移動棚装置1では、複数の単位移動棚2aと、走行レール19の端に位置して単位固定棚2bが配置されている。
【0025】
図2に示されるように、単位移動棚2aは物品を収納する間口面3が両面設けられており、単位固定棚2bは間口面3が隣接する単位移動棚2a側にのみ設けられている。複数の走行レール19は、該間口面3に対して直角になるように平行に床18に敷設されている。本実施の形態では、以下、電動式移動棚装置1の間口面3側から電動式移動棚装置1を見た状態に基づいて、上下左右前後と定義して説明する。本実施例の電動式移動棚装置1の単位移動棚2aは、全て両面に間口面3が設けられ、単位固定棚2bは片面にのみ間口面3が設けられているものであるが、単位移動棚2aおよび単位固定棚2bのどちらも、間口面3が片面のみであってもよいし、両面に設けてもよい。
【0026】
単位棚2は、図1および図3に示されるように、走行方向と直角な幅方向に長尺の台枠4に、幅方向に所定間隔を存して複数本の柱5が立設され、柱5の上端に天板6が架設されて骨組みが形成されている。柱5の間には補強のために、間口面から視て斜めに筋交7が複数本取り付けられている。また、図1に示されるように、柱5の図示されない掛止穴に引っ掛けられて棚受け8が柱5に固定され、棚受け8の間には棚板9が乗せられ、物品が収納されるようになっている。多段の棚板9が柱5に支持されて複数の棚小間を構成している。左右両側の柱5には、外側を覆うように側板10が取り付けられている。天板6の上面には、間口面3に平行に照明灯11が設けられている。
【0027】
それぞれの単位移動棚2aの台枠4の下には、図4に示されるように、左右方向に指向した一対の車軸12が、台枠4の下面に垂設された複数対の軸受4aに回転自在に支持されて、前後に設けられている。該車軸12には、対向する軸受4aの間において、走行用の車輪13が嵌着されている。
【0028】
図5に示されるように、一対の車軸12の一方は、電動モータ20から動力が伝達されて駆動する駆動車軸12aとなっており、駆動車輪13aが一体に回転するように取り付けられている。一対の車軸12の他方は、駆動車軸12aによって移動する単位移動棚2aの動きに伴い回転する従動車軸12bとなっており、従動車輪13bが一体に回転するように取り付けられている。
【0029】
台枠4の下面には、電動モータ20が図視されないブラケットにより取り付けられている。電動モータ20は、図6および図7に示されるように、本体21と、本体21に電力が供給されると回転するモータ回転軸22とを備えている。図7に示されるように、モータ回転軸22の回転中心線Lが駆動車軸12aの回転中心線Lと平行になるように配置されている。
モータ回転軸22は、その左側部22aと右側部22bが、電動モータ20の本体21の左面21lおよび右面21rの両面からそれぞれ突出するように本体21に取り付けられている。
【0030】
電動モータ20の駆動力は減速機23を介して駆動車軸12aに伝達される。減速機23は、小径ギア24と、小径ギア24に常時噛合い小径ギア24より径の大きい大径ギア25とから構成されている。小径ギア24は、モータ回転軸22の左側部22aに、回転中心が一致するように取り付けられており、モータ回転軸22と一体に回転する。大径ギア25は、駆動車軸12aの所定の位置に、駆動車軸12aの回転中心と一致するように取り付けられており、駆動車軸12aと一体に回転する。電動モータ20の動力は、減速機23の小径ギア24から大径ギア25を介して、駆動車軸12aに減速して伝達される。
【0031】
電動式移動棚装置1には、図5に示されるように、地震の揺れが発生すると車輪13に適度なブレーキをかけて車輪13の回転を緩やかにし、単位移動棚2aの移動速度を抑制して制震を図るように構成された制震装置30が、単位移動棚2aごとに設けられている。制震装置30は、駆動車軸12aに設けられている。制震装置30は、無励磁作動型ブレーキ31を具備しており、無励磁作動型ブレーキ31は電力の供給が停止されると、ブレーキ機能を発揮する。
【0032】
図6に示されるように、電動モータ20の本体の右面21rには、ブレーキ取付ブラケット26を介して、制震装置30に用いられる無励磁作動型ブレーキ31が取り付けられている。
【0033】
無励磁作動型ブレーキ31は、図6図8および図10に示されるように、電動モータ20に取り付けられたブレーキ取付ブラケット26に、固定ボルト40およびナット41により固定されている。
【0034】
無励磁作動型ブレーキは、図8ないし図10に示されるように、ブレーキ取付ブラケット26に固定されるステータ32と、電動モータ20のモータ回転軸22と連結され一体に回転するロータ35と、ステータ32とロータ35との間に配置されるアーマチュア45と、ロータ35のアーマチュア45と反対側に受圧部材36を備えている。ステータ32は、ブレーキ取付ブラケット26を介して単位移動棚2aに対して相対移動不能に固定される。
【0035】
図10に示されるように、ステータ本体部32aは円筒状に形成され、中心にモータ回転軸22が挿通される挿通孔32bが形成されている。ステータ32は磁性体で構成されている。図10に示されるように、ステータ本体部32aの電動モータ20と反対側の面には、周方向に亘ってコイル収容凹部32cが形成されている。コイル収容凹部32cに、トロイダル状のコイル33が収容されている。コイル33には電源コード(不図示)が接続されており、電源から電源コードを介してコイル33に電力が供給される。
【0036】
図8および図11に示されるように、ステータ本体部32aの電動モータ20と反対側の面には、バネ部材34が収容されるバネ部材収容凹部32dが周方向に亘って、複数形成されている。本実施の形態では、バネ部材収容凹部32dは、周方向に亘って、3個形成されている。バネ部材収容凹部32dには、バネ部材34が、その一端側がステータ本体部32aから突出するように収容され、後述するアーマチュア45に当接し、常時アーマチュア45をロータ35の方向に向かって付勢している。
【0037】
図8および図10に示されるように、ステータ32の周縁付近には、無励磁作動型ブレーキ31を固定するための固定ボルト40が挿通される固定ボルト挿通孔32eが、周方向に亘って複数形成されている。さらに、図8および図11に示されるように、ステータ32の周縁付近に、後述するプレート状の受圧部材36を取り付けるための受圧部材取付ボルト37が挿通される受圧部材取付ボルト挿通孔32fが、周方向に亘って複数形成されている。
【0038】
図10に示されるように、ステータ32の電動モータ20と反対側に位置して、ロータ35が配設されている。ロータ35は、モータ回転軸22が嵌合されるロータ回転中心部35aを備えている。ロータ回転中心部35aは、図8に示されるように、略四角柱の形状であり、一体に回転する円盤部35dが取り付けられている。円盤部34dには、ロータ回転中心部35aが勘合する形状に中心孔35eが形成され、円盤部35dの中心が、ロータ回転中心部35aの回転中心と一致するように取り付けられている。
【0039】
ロータ回転中心部35aの中央には、モータ回転軸挿通孔35bが形成され、モータ回転軸挿通孔35bには凹条部35cが形成されている。モータ回転軸22の端部22bには、凹条部35cに対応した形状の凸条部22cが形成されている。モータ回転軸22をロータ回転中心部35aに挿通すると、モータ回転軸22の凸条部22cがロータ回転中心部35aの凹条部35cに嵌合し、モータ回転軸22とロータ35は一体に回転可能となる。
【0040】
ロータ35の外側に位置して、円盤状の受圧部材36が配設されている。受圧部材36は、円盤部36aに中心に位置してロータ35のロータ回転中心部35aが挿通される中心孔36bが形成されている。受圧部材36の円盤部36a周縁付近には、ステータ32に形成された受圧部材取付ボルト挿通孔32fに対応する位置に取付ボルト挿通孔36cが形成されている。
【0041】
図10に示されるように、ステータ32とロータ35の間に位置して、アーマチュア45が配設されている。図9に示されるように、アーマチュア45は、円盤状の円盤部45aを有し、中央に位置してロータ回転中心部35aが挿通される中心孔45bが形成されている。さらに、アーマチュア45の円盤部45aの周縁には、スペーサ39を配置するための切欠部45c、受圧部材取付ボルト37を取り付けるための切欠部45dが、それぞれ複数形成されている。
【0042】
無励磁作動型ブレーキ31は、ステータ32にバネ部材34を取り付け、ステータ32のコイル33が配置されている側に、ステータ32、ロータ35、スペーサ39、受圧部材36の順で組付け、ステータ32の受圧部材取付ボルト挿通孔32f、スペーサ39、および受圧部材36の取付ボルト挿通孔36cに受圧部材取付ボルト37を挿通し、受圧部材取付ボルト37にナット38を締結して一体にされる。アーマチュア45は、ステータ32に取り付けられたバネ部材34により、ロータ35の円盤部35dに向かって押し付けられる方向に常時付勢されている。
【0043】
このように組付けられた無励磁作動型ブレーキ31は、図8および図10に示されるように、固定ボルト40およびナット41によりブレーキ取付ブラケット26に固定される。
【0044】
図11はコイル33が非通電時状態の無励磁作動型ブレーキ31を示し、図12はコイル33が通電時状態の無励磁作動型ブレーキ31を示している。
【0045】
コイル33が非通電時状態では、図11に示されるように、コイル33に磁力が発生せず、アーマチュア45はバネ部材34により押圧されてロータ35の円盤部35dに向かって付勢される。アーマチュア45により押圧されたロータ35の円盤部35dは、受圧部材36の方向に移動して、受圧部材36とアーマチュア45により挟まれ、ロータ35は受圧部材36とアーマチュア45との摩擦力により回転が規制される。
【0046】
コイル33が通電時状態では、図12に示されるように、通電されたコイル33に磁力が発生し、アーマチュア45はバネ部材34の付勢力に抗って、コイル33が取り付けられたステータ32に側に引き寄せられる。ロータ35の円盤部35dは、アーマチュア45と受圧部材36による挟み付けがなくなり、自在に回転することができるようになる。
【0047】
電動式移動棚装置1の制震状態と、制震解除状態について説明する。
電動式移動棚装置1の所定の単位移動棚2aが、移動の指令を受けた移動指令状態となると、指令を受けた単位移動棚2aの電動モータ20に電力が供給され、電動モータ20が作動してモータ回転軸22が回転を開始するとともに、制震装置30の無励磁作動型ブレーキ31にも電力が供給される。
【0048】
無励磁作動型ブレーキ31に電力が供給されると、制震装置30が制震解除状態となる。図12に示されるように、コイル33が通電され磁力が発生し、アーマチュア45がステータ32側に移動して、ステータ32に吸着する。ロータ35の円盤部35dの回転の規制が解除され、ロータ35のロータ回転中心部35aと一体に回転するモータ回転軸22の回転の規制が解除され、モータ回転軸22は、制震装置30による抑制を受けずに自在に回転することができるブレーキ解除状態となる。モータ回転軸22の回転は、減速機23の小径ギア24および大径ギア25を介して駆動車軸12aに伝達され、駆動車軸12aが回転して駆動車輪13aが回転して、移動の指令を受けた単位移動棚2aは移動する。
【0049】
単位移動棚2aへの移動の指令が解除された移動指令解除状態となると、電動モータ20への電力の供給が停止されるとともに、制震装置30の無励磁作動型ブレーキ31への電力の供給も停止される。無励磁作動型ブレーキ31への電力の供給が停止されると、図11に示されるように、コイル33の磁力が発生しなくなるので、コイル33の磁力によりステータ32に吸着されていたアーマチュア45は、ステータ32のバネ部材34による付勢力により、ロータ35の円盤部35dを押圧する。ロータ35の円盤部35dは、ステータ32と受圧部材36とにより挟まれて回転が規制される。ロータ35と一体に回転するモータ回転軸22の回転も規制されて、制震装置30は制震状態となる。
【0050】
このような状態で地震が発生して、単位移動棚2aが震動を受け走行レール19上を移動しようとして車輪13に回転トルクが発生すると、車軸12、減速機23、モータ回転軸22を介して、ロータ35に回転トルクが伝達される。
【0051】
制震装置30の制震状態では、図11に示されるように、ロータ35の円盤部35dは、ステータ32が保持したバネ部材34の付勢力を受けたアーマチュア45と、受圧部材36により挟まれているので、ロータ35の回転は規制されている。ロータ35にかかる回転トルクが所定値以下の場合には、ロータ35の円盤部35dは、アーマチュア45と受圧部材36との摩擦力により、摩擦力により回転が阻止されるので、ロータ35に連結されているモータ回転軸22の回転が規制され、単位移動棚2aの移動が阻止される。
【0052】
単位移動棚2aの震動が大きくなって、ロータ35の回転トルクが所定値以上になると、モータ回転軸22と一体に回転するロータ35の円盤部35dは、アーマチュア45と受圧部材36とに挟まれて摩擦力を受けながら、アーマチュア45と受圧部材36に対して摺動しつつ回転するので、単位移動棚2aは、制震装置30による制動を受けながら移動する。
【0053】
このように単位移動棚2aが移動指令解除状態になり、電動モータ20への電力の供給が停止されると、同時に制震装置30の無励磁作動型ブレーキ31への電力の供給も停止されブレーキ作動状態となるので、単位移動棚2aの移動が停止されると制震装置30は自動的に制震状態となる。
【0054】
単位移動棚2aが移動指令解除状態になると、すぐさま単位移動棚2aは制震装置30が制震状態となりブレーキ機能が発揮された状態となるので、地震の発生の際には単位移動棚2aはスピードが抑えられた状態で移動するので、単位移動棚2aが暴走することがない。さらに、単位移動棚2aは完全に固定された状態とはなっておらず、ブレーキがかかった状態で移動することができるので、単位移動棚2aに収納された収納物の落下を防止することができる。また、地震による震動を検知する感震装置が不要となり、感震装置の誤作動のおそれがない。
【0055】
本実施の形態の電動式移動棚装置1の制震装置30は、前記したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0056】
本発明の実施形態の電動式移動棚装置1は、走行用の車輪13と車輪13に動力を伝達する電動モータ20を備え床に施設された走行レール19上を移動する単位移動棚2aを具備し、単位移動棚2aは、電動モータ20の停止時に作動して車輪13の回転を制限する無励磁作動型ブレーキ31を備えた制震装置30を具備するので、電動式移動棚装置1の電動モータ20への電力の供給を停止して単位移動棚2aの移動を停止すると、無励磁作動型ブレーキ31への電力の供給も停止されて、無励磁作動型ブレーキ31のブレーキ機能が作動するので、単位移動棚2aの停止時に車輪13の回転に制限をかけ、地震の発生時に制震装置30が確実に作動し、単位移動棚2aへの適切な制動力を発揮することのできる制震状態になるとともに、単位移動棚2aの重量や大きさに応じ必要とする制動力に適合させることができる。
【0057】
さらに単位移動棚2aは、電動モータ20の動力が伝達されて車輪13と一体に回転する駆動車軸12aと、駆動車軸12aと電動モータ20のモータ回転軸22との間に配設されて電動モータ20からの回転が減速される減速機23を備えており、無励磁作動型ブレーキ31は、モータ回転軸22と連結してモータ回転軸22の回転を制限するので、地震によって単位移動棚2aが移動すると、駆動車軸12aの回転トルクは、減速機23を介してモータ回転軸22に伝達されるので、無励磁作動型ブレーキ31は少ない回転トルクでもって単位移動棚2aを制震することが可能となる。
【0058】
また、無励磁作動型ブレーキ31は、駆動車軸12aとの間で動力が伝達されるロータ35と、電力が供給されるコイル33と、コイル33が保持されるステータ32と、コイル33への電力の供給・停止により、ロータ35との間の摩擦力の発生が制御されるアーマチュア45とを備えているので、単位移動棚2aの移動時には電動モータ20に通電されるとともに、ステータ32に保持されたコイル33にも通電がされ、ロータ35はアーマチュア45との間の摩擦力が解除され、ロータ35から動力が伝達される駆動車軸12aは回転可能な状態となり、無励磁作動型ブレーキ31が解除されて単位移動棚2aの固定状態が確実に解除される。
【0059】
単位移動棚2aの電動モータ20へ電力が供給されなくなると、無励磁作動型ブレーキ31への電力の供給が停止されて、ロータ35はアーマチュア45との間に摩擦力が発生し、単位移動棚2aは制震状態となるので、感震装置が不要となり、感震装置の精度に左右されず、電動式移動棚装置1を確実に制震状態とすることができる。ロータ35のトルクが所定値以下の場合には、ロータ35は回転不能とされ、所定値以上になるとロータ35の回転力が抑制されつつ回転するので、地震の発生時に単位移動棚2aへの適切な制動力を発揮し、単位移動棚2aの暴走や転倒を防ぐとともに、無励磁作動型ブレーキ31の選択により単位移動棚2aの重量や大きさに応じた必要な制動力を満たすことが容易となる。
【0060】
無励磁作動型ブレーキ31は、アーマチュア45をロータ35へ押し付ける付勢力を常時発生するバネ部材34を備え、アーマチュア45は、ロータ35の回転軸方向において、ロータ35とステータ32の間に配置され、コイルへ33の通電によりアーマチュア45がステータ32に吸着されるので、アーマチュア45はバネ部材34により常時ロータ35へ押し付けられる状態にあるが、コイル33が通電されることにより、バネ部材34の付勢力に抗ってアーマチュア45がステータ32に吸着され、アーマチュア45とロータ35間の摩擦力が発生しなくなり、無励磁作動型ブレーキ31のブレーキ作動を確実に解除することができる。
【0061】
コイル33への通電が解除されると、アーマチュア45はステータ32への吸着が解除されるとともにバネ部材34によりロータ35に押し付けられ、ロータ35の円盤部35dは、アーマチュア45と受圧部材36に挟まれて摩擦力が発して、無励磁作動型ブレーキ31はブレーキ状態となる。さらに、ロータ35のトルクが所定値となるまでは、ロータ35はアーマチュア45と受圧部材36との摩擦力により回転が阻止され回転不能となるが、ロータ35のトルクが所定値以上になると、ロータ35はアーマチュア45および受圧部材36との間の摩擦力により回転力が抑制されつつ摺動して回転するので、地震の発生時に単位移動棚2aへの適切な制動力を発揮することが可能となる。さらに、単位移動棚2aの重量や大きさに応じてバネ部材34等を変更した無励磁作動型ブレーキ31を用いることにより、単位移動棚2aに応じた必要な制動力に適合させることが容易となる。
【0062】
次に、第二の実施の形態の電動式移動棚装置70について、図13に基づいて説明する。図13は、第二の実施の形態の電動式移動棚装置70の要部の斜視図を示したものである。電動式移動棚装置70において、第一の実施の形態の電動式移動棚装置1と同じ構成は同じ符号を付して説明する。
【0063】
第一の実施形態の電動式移動棚装置1では、図6に示されるように、無励磁作動型ブレーキ31は、電動モータ20にブレーキ取付ブラケット26を介して取り付けられ、モータ回転軸22はロータ35に連結され、電動式移動棚装置70の車輪13の回転トルクは、減速機23およびモータ回転軸22を介して無励磁作動型ブレーキ31に伝達されている。第二の実施の形態の電動式移動棚装置70の制震装置71は、図13に示されるように、無励磁作動型ブレーキ31は、単位移動棚2aの所定位置に取り付けられたブレーキ取付ブラケット75に固定されており、駆動車軸12aと無励磁作動型ブレーキ31との間の回転力は、回転力伝達機構80により伝達される。
【0064】
回転力伝達機構80は、大径ギア81と、大径ギア81に常時噛合い大径ギア81より径の小さい小径ギア82とを備えている。大径ギア81は、駆動車軸12aの所定の位置に、駆動車軸12aの回転中心と一致するように取り付けられており、駆動車軸12aと一体に回転する。小径ギア82は、小径ギア回転軸83に一体に回転するように取り付けられており、小径ギア回転軸83は、無励磁作動型ブレーキ31のロータ35のロータ回転中心部35aに、回転中心が一致し一体に回転するように取り付けられている。
【0065】
単位移動棚2aの移動指令解除状態において、地震が発生する等、単位移動棚2aの車輪13に回転トルクが発生すると、車輪13の回転トルクは、車軸12、回転力伝達機構80の大径ギア81から小径ギア82を介して、無励磁作動型ブレーキ31に伝達される。車輪13の回転トルクが所定値以下の場合には、無励磁作動型ブレーキに31により単位移動棚2aの移動が規制される。車輪13の回転トルクが所定値以上になると、ロータ35は無励磁作動型ブレーキ31に回転を規制されて回転力を抑制されつつ回転するので、地震発生時に単位移動棚2aの暴走を防ぐことができる。
【0066】
第二の実施の形態の電動式移動棚装置70では、駆動車軸12aから無励磁作動型ブレーキ31へ回転力を伝達する回転力伝達機構80が、モータ回転軸22を介さずに、駆動車軸12aと無励磁作動型ブレーキ31との間に配置されているので、無励磁作動型ブレーキ31の制動力を、回転力伝達機構80を介して直接的に駆動車軸12aに働かせることができるので、確実に単位移動棚2aを制震することが可能なるとともに、無励磁作動型ブレーキ31の配置の自由度が高くなり、無励磁作動型ブレーキ31を適切な位置に容易に配置することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。なお、説明の便宜上、図示の実施形態の左右配置のものについて説明したが、左右配置の異なるものであっても、発明の要旨の範囲であれば本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1…電動式移動棚装置、2…単位棚、2a…単位移動棚、2b…単位固定棚、
12…車軸、12a…駆動車軸、13…車輪、13a…駆動車輪、18…床、19…走行レール、
20…電動モータ、21…本体、22…モータ回転軸、23…減速機、24…小径ギア、25…大径ギア、
30…制震装置、31…無励磁作動型ブレーキ、32…ステータ、33…コイル、34…バネ部材、35…ロータ、36…受圧部材、
45…アーマチュア、
70…電動式移動棚装置、71…制震装置、75…ブレーキ取付ブラケット、80…回転力伝達機構、81…大径ギア、82…小径ギア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13